ロバートBライシュ 最後の資本主義 8 執行のメカニズム




執行のメカニズム

 

何を執行しないかについての判断は公表されない。

 

1.執行体制の空洞化

・議会が法律の執行に必要な予算を割り振れないようにする。

・特定の法律を望ましく思っていないが、明白に反対の立場をとって国民の反発を買うことを避けたい場合は、法の執行資金を潤沢に与えないように動く。

 

2.骨抜きにされる「法」

事実上執行不可能になるように、法文に抜け穴や例外を書き込む。

先物取引により消費者物価が高騰→富裕層への再分配

・政府は費用対効果を図るべきである。だが、大企業は計測してくれる専門家を抱えており、有利。

・資本主義に対する不信と政治の荒廃

 

3.痛くない罰金

潜在的な利益に比べて罰金が小さい場合、事業を遂行する上での単なるコストとみなされてしまう。

 

4.罪と罰のアンバランス

法律に反対しているとは思われたくないが、骨抜きにしたい場合に、罰を軽く設定。

政府は、わずかな予算では長期の裁判に耐えられないため、和解を希望することになる。法執行メカニズムの弱体化。

 

5.裁判官と選挙資金

判事が企業側からもらう資金が多ければ多いほど企業に有利な判決をする傾向

 

6.難しくなる集団代表訴訟

弁護団を結成できる大企業は有利。

義務的仲裁条項が訴訟をやりにくくしている。



ロバートBライシュ 最後の資本主義 7 新しい時代の倒産の形




 

新しい時代の倒産の形

 

・やり直しがきくのは破産法を自分に都合よく変えられるだけの政治的影響力を持つ大企業等。

倒産:犠牲の分かち合い

クレジットカード会社と銀行が大部分を作成。

 

1.逃げ切るCEO

・労働組合との間の契約を反故にするための倒産。

 

2.破産できない住宅ローン

住宅ローンのコストが高くなるという主張

 

3.解消できない学費ローン

 

4.富めるデトロイト、貧するデトロイト

オークランド郡とデトロイト市

郊外へ裕福な市民は逃げ出した。

 

5.犠牲は分かち合えるか

痛みを分かち合う「私たち」とはだれか?

 


ロバートBライシュ 最後の資本主義 6 新しい時代の契約の形




 

新しい時代の契約の形

 

新しい時代の契約にまつわる事柄に政治的な影響が入り込む素地

売春:貧困層からの搾取につながるおそれ

契約したがっている特定の契約を禁じても、闇市場で履行されてしまう。

 

1.ウォール街の「法貨」

超高速取引の出現により、インサイダー取引を定義することが難しくなっている。

証券市場において秘密情報は法貨である。

⇔欧州では秘密情報に基づく取引は違法

インサイダー取引を禁じると市場の効率性は落ちるが、、、小口投資家が不利益を

 

2.強要される契約

大企業が市場を封じ込めた場合、契約に選択肢がなくなる。

利用条件に同意させて、ユーザーに法的権利を放棄させる。

・独占企業は、犠牲者からすべての法的手段を効果的に奪う契約を強要することに独占的権力を使っている

・契約は受け入れを強要する力を持った巨大企業が生み出す既成事実

・大企業は、契約が法的にどの程度許容され、どの程度強制可能かを決めることにおいてまで、強大な力を持つ。

 


ロバートBライシュ 最後の資本主義 5 新しい時代の独占の形




新しい時代の独占の形

 

・十分な市場支配力があれば、投資やイノベーションを起こそうという動機づけになる。一方消費者価格を上昇させる。

・市場支配力は政治力へも転換される。

・問題は特定の企業が過度に市場支配力を持つことが許されるか、判断がどのようになされ、社会にどんな影響を与えるのか。

・市場独占により、新規企業の参入が難しくなる。

 

1.米国のインターネットが遅いワケ

ケーブル業界における独占の問題。コムキャスト。

敷設を行った者が独占をしてしまう。

組織ぐるみの主張に説得力があると思いがち。

 

2.農業にもある独占

モンサント社。取引業者に競合他社の趣旨を補完することを禁じ、残った会社を買収。種を作らない作物の開発。

趣旨の価格の上昇。遺伝的多様性の減少。

経済力を駆使して政治的権力を得て、その政治力を使って市場支配力を高める。

 

3.ICTにみる「独占」

主要な特許を取得→特許を守り他社を特許侵害で訴える→ライセンス契約を締結して自社製品を使うことを強要→業界標準を確立→政治力を駆使して全経済分野への拡大。

・プラットフォームの所有者が持つ力が増大するにつれ、イノベーターが自分の貢献への対価を有利に交渉する力は縮小する。

・ルールが標準プラットフォームの所有者に都合よく変えられている。

ネットワークを支配する。

 

4.ウォール街の支配

企業の上場を事実上支配

政界とウォール街の癒着

金融市場の操作

 

5.保険業界のパワー

保険会社と巨大病院

 

6.独禁法の効用

経済支配力の集結によって過度な政治的影響力が生じるのを防ぐ

・エドワードGライアン

「社会を支配するのは富なのか人間なのか。主導するのはカネなのか知性なのか。」

抑制のきかない経済力と政治力

・自由は富を生み、富は自由を壊す。



ロバートBライシュ 最後の資本主義 4 新しい時代の所有権




新しい時代の所有権

 

・私有財産とは、自由市場に基づく資本主義において最も基本的な構成要素

ただ、政府は所有権を規定し強制する方法を多く持っている。

・私有財産は共有財産に比べてメリットがある。

共有地の悲劇=合理的だが利己的な個人は共有資源を大切にしないおそれ。

 

・何をどのような条件でどれくらいの期間所有することができるのか。

 

1.現代の所有権

・所有は自由市場がかくあれと指定するわけではなく、財産取り決めや契約によって規定される。

・会社は誰のものか?

企業の業績に利害を持つすべての者→株主のもの??

・将来に備えて希少な資源を促進するとか、希少資源を必要とする人たちがそれをきちんと使えるようにする技術に投資を促す場合にも、所有権が使われる。

 

2.ニューエコノミーの所有権

知的財産・・・誰がどの部分をどのような条件で所有できるかを政府が決める。

・発明しようという気になるほど十分な所有権を発明家に付与することと、発見の成果物を一般の人々が負担可能な費用で利用できるようにするバランスを。

 

3.法曹界と特許

所有権を持つ者の経済的な力が、その権利をさらに強力で永続的にするための政治力や法的な力に変容する。

 

4.製薬ビジネスと著作権

一時的独占権が、特許が切れるはずの期間が満了した後もなお継続されている問題。

←既存特許に対する些細な変更をも新規情報とみなして、特許が延長されるため。

処方薬のマーケティング

海外薬局からの購入禁止

処方した医師への報酬支払

ジェネリックへの遅延料契約

 

5.ミッキーマウス法のカラクリ

著作権者の利益が増大するに従い、政治的影響力も高まった。

企業がより多くの利益を得る一方、消費者は高いコストを支払う

 


ロバートBライシュ 最後の資本主義 3 自由と権力




 

自由と権力

合理的で不変な自由市場を支持している者ほど市場メカニズムに影響力を持ち、ルールを都合よく変えている。

・企業に言論の自由を認めた→相対的に市民の「聞いてもらう自由」が損なわれる

・大企業と富豪がゲームのルールに影響力を行使しようと企てる方策として「自由」が利用される。

選挙戦への献金、裁判所を使用したルール作り、公務員に転職先を紹介する子どで癒着、自らに有利なシンクタンクや広告の作成

・言論の自由・・・誰にとっての自由か

・見込まれる経済的利益が十分に大きければ、個人の自由を侵害するおそれが大きい。

・自由とは権力について触れることなしには意味をなさない。

 


ロバートBライシュ 最後の資本主義 2 資本主義の5つの構成要素




 

資本主義の5つの構成要素

自由市場を実現するために

・所有権→所有できるものは何か

・独占→どの程度の市場支配力が許容されるか

・契約→売買可能なものは何で、それはどんな条件か

・破産→買い手が代金を支払えないときはどうなるか

・執行→ルールを欺くことがないようにするにはどうするか

 

これらの決まりそのものが自由市場を構成している

ルールが公正に選ばれたものであれば、平均的な市民の考え方が反映されているはず。自由市場は大多数の人々の福利にかなうような結果を生み出すはず。

 

・市場の勝者と敗者を分かつのに大きな影響を及ぼしているのは政府による市場構築の仕方である。

・権力や影響力は市場ルール形成過程に潜んでいるため、そこから出てくる経済的な損益は非人間的な市場の力によってもたらされる中立的な結果であると誤解されている。

 


ロバートBライシュ 最後の資本主義 1 支配的な見方




 

支配的な見方

・この世のどこかに「自由市場」という概念が存在しており、そこに政府が「介入する」というのは誤り。

これを認めると、市場が作り出す不平等を肯定することになってしまう。

・どんな市場にも政府による規制と執行が必要。政府は自由市場に介入するどころか政府が市場を創造する。

・自由市場と政府のどちらがましかという不毛な議論を続けていれば、誰が権力を行使し、どんな恩恵を得ているのかを調べることが困難になる。

・大銀行が窮地に陥った場合には政府が補助してくれる暗黙の了解→財務上の優位→金融界全体への支配→政治力を高め、自分の望むルールを作らせる。

・昨今の取引できる物は複雑なものが多い。かかる複雑さが特定の者が利益を得るルールであることをわかりにくくしている。

 


ロバートBライシュ 最後の資本主義 0 はじめに




 

はじめに

経済とは将来への希望を生み出すものだった。世の中のルールは公正に機能していた。

⇔今は・・・恣意的な采配や不公正が横行

自由経済の基本理念に寄せる人々の信頼感が損なわれた。

・資本主義を脅かしているのは、現代社会の成長と安定に不可欠な「信用」の弱体化。成功の機会が公平に与えられていると信じなくなった。

→人々の自発的な協力という暗黙の社会契約によって成り立つ現代社会が瓦解。

・経済資源は徐々に生産するためのものから、既にあるものを守るためのものへと変質する。

・グローバル化と技術革新が多くの人から競争力を奪ってしまった。

解決策として、富裕層へ増税して、貧困層へ再分配、及び教育への投資。

 

1.問題は政府のサイズではなく、ルールの作られ方

政治権力が企業や金融セクターのエリートたちにより集中するようになり、経済を動かすルールにまで影響を与えるようになっている。

・中間層の弱体化→富裕層がさらに富を蓄積するために作り出した新たな市場

市場の内部で富裕層への事前分配が起きたのだが、市場の内部の出来事であったため、気づかれにくかった。

・ワーキングプアとノンワーキングリッチの両方が同時に急増している。

=報酬と努力が連動していないことを証明している。

・市場内部で未分配のまま富がトップに集中していくために、市場の外では税金や給与を通じた再分配が求められている。

・大多数の人々を拮抗勢力として再集結させるために組織化して統一すること。

・自分を利することのない市場ルールに不満を持つ者が政治不満を広げる。

 

2.資本主義を救え

資本主義を大多数の人々を利するものに変える。

社会の上層にある過剰な政治力や経済力を懸念