読書 渋谷秀樹 憲法への招待 2 憲法とは何か 権利の規定に比べて義務の規定が少ないのはなぜか

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憲法とは何か
2.権利の規定に比べて義務の規定が少ないのはなぜか

(1)憲法にある義務
・+第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

自由権利の保持義務
自由権利を濫用しない義務
自由権利を公共の福祉のために利用する義務

・+第二十六条  すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
○2  すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

教育の義務

・+第二十七条  すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
○2  賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
○3  児童は、これを酷使してはならない。

勤労の義務

・+第二十八条  勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

納税の義務

・+第九十九条  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

憲法尊重擁護義務
(公務員に課せられた憲法遵守義務)

(2)法的義務か?
・12条の一般的義務と27条の勤労の義務はモラルを規定したもの。

・教育の義務
=子女が持つ「教育を受ける権利」に対応して、保護者が子女に対して負う義務。
×保護者が政府に対して負う
×子女が負う

政府は、保護者が義務を履行しない場合に、子女のいわば後見人として保護者に義務を実行させ、あるいは代わって義務を履行するために登場。

・納税の義務
「法律の定めるところにより」に重点がある
=政府が課税するには必ず法律を作り内容や取り立て方法を定める必要がある。
84条の代表なければ課税なしという原則を、30条は権利自由を守る観点から重ねて規定している

+第八十四条  あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

・国民の義務は、すべて国民の自由権利の実現や保護に直接還元されるものであり、国民に本当の意味での法的義務を課している規定ではない。

(3)授権規範と制限規範
・王権神授説
神的権威に統治権の正当性を求める
→政府はあらゆる義務を国民に課せる。

・社会契約説
主体的な個人が統治権を契約によって政府に委ねた
憲法は支配権を委ねる授権規範としての特質をもつ。授権規範性。

そのうえで、
自然状態を闘争と考え、無秩序を克服するために絶対無制限の権力が必要と考える(リヴァイアサン)
→授権を根拠に義務を課せる可能性

一方、
個人の自律こそが重要
社会契約である憲法には、政府の活動は授権された範囲内にとどまらねばならない
=制限規範としての特質。制限規範性。
政府が違反すると、国民に抵抗権・革命権

・立憲主義的憲法は、政府に「法的な制約」を課す(義務を課す)制限規範としての特質。
→個々人に対して直接的に課される法的義務を憲法に盛り込むことはできない。

(4)政府に義務を課すこと
・権利と義務は表裏一体
個人の権利にはそれに対応する政府の義務がある

×権利の行使には行使する者に同時に義務が課されている
←これは行使しようとする権利の限界の問題

+第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
○2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

2項のように直接政府に義務を課しているものもある。

・人権規定、すべての規定は政府に対して義務を課すルールとして定められている。
→政府の立法活動を制限

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読書 渋谷秀樹 憲法への招待 1 憲法とは何か 聖徳太子の17条の憲法は憲法か?




憲法とは何か
1.聖徳太子の17条憲法は「憲法」か

(1)西欧起源の憲法
・「憲法」には漢字的に、ルールや規範のニュアンスが込められていた。
人間の勝手な心の動きや見方を上から抑える
もろもろのルールを統括

constitution=構造・構成・組織

社会契約思想・自然権思想
→権利の保障と権力の分立が備わった憲法こそが真の意味での憲法

(2)国家はどう作られたか
・国王はどういう理由で統治権を持つのか?
=国家権力の正当性をめぐる議論

・高次法思想
王権すらも制約する法がある

・自然権思想
人間は生まれながらにして何によっても侵されない固有の権利を持つ

・社会契約思想
政府は市民との契約によって統治権が与えられた

このような思想の具体的な産物が真の意味での憲法

(3)国家は想像の産物か
・国家を構成する不可欠の要素
領土・人・統治権

・統治権とは
立法権・行政権・司法権

・統治権は形として存在するわけではない、
人々が頭の中で「それが確かにある」と想定して初めて存在する。
まるで実体のないフィクション
しかし、約束事に過ぎない統治権が、最終的には強制力をもって私たちの生活を支配している。

・日々の生活を安全で快適に送るために、有効で便利なシステムとして作ったのが国家であり、国家の持つ統治権であり、それを行使する政府。
それが本当に有益であるようにするためには、統治権や政府はどのようにあるべきかということについての約束事が憲法。

(4)聖徳太子の17条の憲法
法というか職業倫理。
立憲主義的憲法ではない。

 

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読書 憲法への招待 0 はじめに

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憲法への招待
はじめに

・憲法を意識しなくてもよいのはうまく機能した状態だから。

・憲法が議論されようとしているのは社会が変革期に入ろうとしている兆候 

・憲法を支えている知恵
立憲主義
=個人の尊重が人間社会において一番大切な価値である。
個人を尊重することを目的に基本的ルールを作らなければならない。
かかるルールが憲法であり、政府はそれに沿って政治を行わなければならない

・個人を尊重するためには
生命を大切にすること・存在価値が平等であること・自由に考えてそれぞれの価値観を持つこと・その価値観に基づいて自由に行動し生活すること
を政府が保証しなければならない。

・9条の定める平和主義は、戦争の禁止を地球規模の視点から規定したものである。
立憲主義の到達点を示したもの。

・組織原理
法の支配の原理
=政治の担当者の行動を憲法の下に置く

権力分立主義
=政治の担当者の相互チェック

民主主義
=主権者たる国民の意思を政府の政策作りに反映

・特定秘密保護法
権力者の手元にある情報を国民には見せない根拠を政府に与える危険性。
政治の現状と政策を国民が知る権利を侵害して民主主義の基礎を切り崩そうとするもの

国民相互の監視と密告を奨励して監視社会を築き上げてしまう危険性
真理を追求しようとする科学的精神を委縮させ得る危険性


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憲法 1-1 政府と統治権

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政府と統治権

一.国家と政府
1.社会学的国家論

(1)国家の3要素
領土・人(国民とは限定されない)・権力

・国家=
一定の限定された地域を基礎として、その地域に定住する人間が、強制力を持つ統治権の下に法的に組織されるようになった社会

(2)統治と政府
国家の要素として重要なのは「統治」

政府は国家の第三の要素が帰属する主体として把握されることになる。

2.法学的国家論
法学的国家論は国家を観念的・法規範的・当為的観点から捉える

(1)国家法人説
国家法人説は、統治権の具体的な行使の担い手として機関を想定し、期間の権限行使の法的限界を明らかにした点に功績がある

(2)法秩序説
国家は規範秩序、法秩序そのもの、条件と結論を命令によって結合する規範論理的な体系

3.総括
国家作用は、事実によってまずその正当化根拠が付与され、最終的に社会生活のなかに結果が表れる。

二.統治権の内容と正統性
1.統治権の内容
(1)統治権と国家
国権と統治権を峻別する実益はない

(2)統治権の基本的内容
自主組織権
領土主権
対人主権

2.統治権の正当性
(1)統治契約と社会契約
武力・精神的な基礎付け・統治権を行使する者の能力魅力・既成事実

・統治契約

・社会契約
統治契約の延長

(2)日本国憲法における統治権の根拠
+第一条  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

+前文
  日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

・「国政」とは統治活動をいい、その根拠が国民の信託、すなわち契約(合同行為)による統治権行使の委任にあるとした。


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