3-3 裁判所 裁判官の除斥・忌避・回避

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1.除斥
(1)除斥の意義
除斥とは、
法定の原因がある場合に、裁判官が法律上当然に職務を執行できなくなること。
+(裁判官の除斥)
第二十三条  裁判官は、次に掲げる場合には、その職務の執行から除斥される。ただし、第六号に掲げる場合にあっては、他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことを妨げない。
一  裁判官又はその配偶者若しくは配偶者であった者が、事件の当事者であるとき、又は事件について当事者と共同権利者、共同義務者若しくは償還義務者の関係にあるとき。
二  裁判官が当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき。
三  裁判官が当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
四  裁判官が事件について証人又は鑑定人となったとき。
五  裁判官が事件について当事者の代理人又は補佐人であるとき、又はあったとき。
六  裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき。
2  前項に規定する除斥の原因があるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、除斥の裁判をする。

(2)除斥原因

2.忌避
(1)忌避の意義
忌避とは、法定の除斥原因以外の事由により、裁判の公正を妨げるべき事情がある場合に、当事者の申立てに基づき、裁判によって裁判官を職務執行から排除すること。
+(裁判官の忌避)
第二十四条  裁判官について裁判の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避することができる
2  当事者は、裁判官の面前において弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判官を忌避することができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。

(2)忌避の原因
当該裁判官と、当該事件または当事者との関係からみて、一方当事者が不公平な裁判がされるおそれがあると考えるのももっともだといえる客観的事情。

具体的な事件や当事者と直接関係のない、裁判官の行状、思想、法律上の意見などは忌避の原因に当たらない。

(3)除斥・忌避の裁判
+(除斥又は忌避の裁判)
第二十五条  合議体の構成員である裁判官及び地方裁判所の一人の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判官の所属する裁判所が、簡易裁判所の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判所の所在地を管轄する地方裁判所が、決定で、裁判をする。
2  地方裁判所における前項の裁判は、合議体でする。
3  裁判官は、その除斥又は忌避についての裁判に関与することができない。
4  除斥又は忌避を理由があるとする決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5  除斥又は忌避を理由がないとする決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(4)訴訟手続きの停止
+(訴訟手続の停止)
第二十六条  除斥又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについての決定が確定するまで訴訟手続を停止しなければならない。ただし、急速を要する行為については、この限りでない。

3.回避
裁判官が除斥原因や忌避原因があると自ら判断する場合に、自発的に職務執行を避けること


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3-2 管轄

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1.管轄の意義
管轄とは、
特定の事件についてどの裁判所が裁判権を行使するかについての定め

2.管轄の種類
法定管轄
指定管轄
合意管轄
応訴管轄

法定管轄は、当事者の意思や態度によって変更できるかという拘束力の違いにより専属管轄と任意管轄に分けられる

法定管轄の定めは、管轄分割の指標の違いにより、職分管轄、事物管轄、土地管轄にわけられる

(1)管轄の発生根拠

ⅰ)法定管轄
法律の規定により、指定、合意等によらず直ちに特定の裁判所の管轄が生じる。

ⅱ)指定管轄
上級裁判所が決定で定めることによって発生する管轄
+(管轄裁判所の指定)
第十条  管轄裁判所が法律上又は事実上裁判権を行うことができないときは、その裁判所の直近上級の裁判所は、申立てにより、決定で、管轄裁判所を定める
2  裁判所の管轄区域が明確でないため管轄裁判所が定まらないときは、関係のある裁判所に共通する直近上級の裁判所は、申立てにより、決定で、管轄裁判所を定める。
3  前二項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

ⅲ)合意管轄
当事者の合意によって生じる裁判所の管轄
+(管轄の合意)
第十一条  当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる
2  前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
3  第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

・法令に専属管轄の定めがある場合には合意管轄は認められない。
+(専属管轄の場合の適用除外等)
第十三条  第四条第一項、第五条、第六条第二項、第六条の二、第七条及び前二条の規定は、訴えについて法令に専属管轄の定めがある場合には、適用しない
2  特許権等に関する訴えについて、第七条又は前二条の規定によれば第六条第一項各号に定める裁判所が管轄権を有すべき場合には、前項の規定にかかわらず、第七条又は前二条の規定により、その裁判所は、管轄権を有する。

・合意管轄は、専属管轄以外の法定管轄(任意管轄)が当事者間の訴訟追行上の利害の調整や公平を主に考慮して定められているので、当事者双方が合意して法定管轄と異なる管轄を定める場合にはその意思に基づいて管轄を認めることが妥当。

・専属管轄は、公益上の要請に基づいて定められているので、これを当事者の合意で変更することはできない。

・その当事者間の生来のすべての訴訟について管轄を合意するという定めは、訴えを起こされる側(被告)の利益を著しく害し、無効である。

ⅳ)応訴管轄
+(応訴管轄)
第十二条  被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判所は、管轄権を有する。

・本案とは、請求の理由の有無に関する事項をいう。

(2)専属管轄と任意管轄
・専属管轄
裁判の適正や迅速等の公益上の要請に基づいて、法律がとくにその裁判所のみが管轄権を管轄権を有すると定めている法定管轄であって、当事者の意思や態度によって法律の定めと異なる管轄を生じさせることを許さない趣旨のもの

・任意管轄
主として当事者間の訴訟追行上の利害の調整や公平を図るために定められた法定管轄であり、当事者がその意思や態度によってこれと異なる管轄を定めることができる。

・専属管轄の違反は控訴の理由になる
+(第一審の管轄違いの主張の制限)
第二百九十九条  控訴審においては、当事者は、第一審裁判所が管轄権を有しないことを主張することができないただし、専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)については、この限りでない
2  前項の第一審裁判所が第六条第一項各号に定める裁判所である場合において、当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときは、前項ただし書の規定は、適用しない。

・絶対的上告理由にもなる。
+(上告の理由)
第三百十二条  上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
2  上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
一  法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二  法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
二の二  日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。
三  専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四  法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
五  口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六  判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。
3  高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。

・1審が任意管轄に違反していても、訴訟経済の要請から、控訴裁判所はそれを理由に第1審を取り消せない。

(3)管轄分割の指標
ⅰ)職分管轄は、
各種の事件に対する裁判権の作用をどの裁判所の役割とするかの定め

ⅱ)事物管轄は、
第1審裁判所を地方裁判所と簡易裁判所とのいずれにするかの定め
訴訟の目的の価格が140万円以下かどうか

ⅲ)土地管轄とは、
管轄地域が異なる同種の裁判所が同種の職分を分担するための定め。

・普通裁判籍
訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の土地管轄に属する。
+(普通裁判籍による管轄)
第四条  訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2  人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
3  大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人が前項の規定により普通裁判籍を有しないときは、その者の普通裁判籍は、最高裁判所規則で定める地にあるものとする。
4  法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
5  外国の社団又は財団の普通裁判籍は、前項の規定にかかわらず、日本における主たる事務所又は営業所により、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
6  国の普通裁判籍は、訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。

←訴えを起こされる側(被告)の生活の拠点に訴えを起こす側(原告)が出向くことが公平であるとの考慮。

・特別裁判籍
特定の種類の事件について方が認められた裁判籍

特別裁判籍(独立裁判籍)
+(財産権上の訴え等についての管轄)
第五条  次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。
一  財産権上の訴え
     義務履行地
二  手形又は小切手による金銭の支払の請求を目的とする訴え
     手形又は小切手の支払地
三  船員に対する財産権上の訴え
     船舶の船籍の所在地
四  日本国内に住所(法人にあっては、事務所又は営業所。以下この号において同じ。)がない者又は住所が知れない者に対する財産権上の訴え
     請求若しくはその担保の目的又は差し押さえることができる被告の財産の所在地
五  事務所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するもの
     当該事務所又は営業所の所在地
六  船舶所有者その他船舶を利用する者に対する船舶又は航海に関する訴え
     船舶の船籍の所在地
七  船舶債権その他船舶を担保とする債権に基づく訴え
     船舶の所在地
八  会社その他の社団又は財団に関する訴えで次に掲げるもの
     社団又は財団の普通裁判籍の所在地
イ 会社その他の社団からの社員若しくは社員であった者に対する訴え、社員からの社員若しくは社員であった者に対する訴え又は社員であった者からの社員に対する訴えで、社員としての資格に基づくもの
ロ 社団又は財団からの役員又は役員であった者に対する訴えで役員としての資格に基づくもの
ハ 会社からの発起人若しくは発起人であった者又は検査役若しくは検査役であった者に対する訴えで発起人又は検査役としての資格に基づくもの
ニ 会社その他の社団の債権者からの社員又は社員であった者に対する訴えで社員としての資格に基づくもの
九  不法行為に関する訴え
     不法行為があった地
十  船舶の衝突その他海上の事故に基づく損害賠償の訴え
     損害を受けた船舶が最初に到達した地
十一  海難救助に関する訴え
     海難救助があった地又は救助された船舶が最初に到達した地
十二  不動産に関する訴え
     不動産の所在地
十三  登記又は登録に関する訴え
     登記又は登録をすべき地
十四  相続権若しくは遺留分に関する訴え又は遺贈その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え
     相続開始の時における被相続人の普通裁判籍の所在地
十五  相続債権その他相続財産の負担に関する訴えで前号に掲げる訴えに該当しないもの
     同号に定める地

義務履行地に土地管轄が認められることは、実体法上の持参債務の定め(民法484条、商法516条1項)が広く適用されることと相まって、原告となる債権者の住所、営業所等の所在地で債務者をうったえることが多くの場合に可能となり、被告の普通裁判籍の所在地をもって一般的な土地管轄の根拠とした4条1項の趣旨が損なわれるのではないかという問題。
→被告に不利益が生じて当事者間の衡平を害する場合には、17条に基づく移送によって対処される!!!

・特別裁判籍(関連裁判籍)
+(併合請求における管轄)
第七条  一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る

数人の被告に対する請求に関しては、原告の併合請求をする利益は客観的併合と同様に認められるが、被告のうち1人について管轄があるというだけで、他の被告が住所地から遠く離れた裁判所に訴えられるのでは、その被告の利益を不当に害するのではないかという問題。
→7条ただし書きは、共同訴訟の要件が認められる場合のうち、姓旧相互の関連性が比較的強い38条前段の場合にかぎっって併合請求の裁判籍を肯定。

+(共同訴訟の要件)
第三十八条  訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。

3.管轄の調査
・職権調査事項である
+(職権証拠調べ)
第十四条  裁判所は、管轄に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。

・管轄違いの訴えは却下されるわけではなく、移送の対象となるにとどまる
+(管轄違いの場合の取扱い)
第十六条  裁判所は、訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する
2  地方裁判所は、訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。ただし、訴訟がその簡易裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合は、この限りでない。

4.管轄の標準時
標準時は訴えの提起時である。
+(管轄の標準時)
第十五条  裁判所の管轄は、訴えの提起の時を標準として定める。

5.移送
ある裁判所に訴えられた訴訟を、その裁判所の裁判によって、他の裁判所に移すことをいう

(1)管轄違いの場合の移送(16条)

+判例(H20.7.18)
理由
 抗告代理人西尾剛の抗告理由について
 1 記録によれば、本件の経緯の概要は、次のとおりである。
 (1) 抗告人は、貸金業者である相手方との間で利息制限法1条1項所定の制限利率を超える利息の約定で金銭の借入れと弁済を繰り返した結果、過払金が発生しており、かつ、相手方は過払金の受領が法律上の原因を欠くものであることを知っていたとして、相手方に対し、不当利得返還請求権に基づく過払金664万3639円及び民法704条前段所定の利息の支払を求める訴訟(以下「本件訴訟」という。)を抗告人の住所地を管轄する大阪地方裁判所に提起した。
 (2) 相手方は、抗告人の主張に係る金銭消費貸借契約の契約証書には「訴訟行為については、大阪簡易裁判所を以て専属的合意管轄裁判所とします。」との条項があり、大阪簡易裁判所を専属的管轄とする合意が成立していると主張して、民訴法16条1項に基づき、本件訴訟を大阪簡易裁判所に移送することを求める申立てをした。
 (3) これに対し、抗告人は、上記専属的管轄の合意の成立及び効力を争った上、本件訴訟においては期限の利益の喪失の有無及び悪意を否定する特段の事情の有無等が争点となることが予想されるから、地方裁判所において審理及び裁判をするのが相当であると主張した。
 2 原々審は、相手方主張の専属的管轄の合意の成立及びその効力が過払金の返還等を求める本件訴訟にも及ぶことを認めた上で、本件訴訟が、その訴額において簡易裁判所の事物管轄に属する訴額をはるかに超えるものであり、その判断にも相当の困難を伴うものであること等を理由に、本件訴訟は、民訴法16条2項本文の適用に当たり地方裁判所において自ら審理及び裁判をする(以下「自庁処理」という。)のが相当と認められるものであるから、相手方の移送申立ては理由がないとして、これを却下する旨の決定をした。
 原審は、専属的管轄の合意により簡易裁判所に専属的管轄が生ずる場合に地方裁判所において自庁処理をするのが相当と認められるのは、上記合意に基づく専属的管轄裁判所への移送を認めることにより訴訟の著しい遅滞を招いたり当事者間の衡平を害することになる事情があるときに限られ、本件訴訟において上記事情があるとはいえないから、地方裁判所において自庁処理をするのが相当とは認められないと判断して、原々決定を取り消し、本件訴訟を大阪簡易裁判所に移送する旨の決定をした。
 3 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 民訴法16条2項の規定は、簡易裁判所が少額軽微な民事訴訟について簡易な手続により迅速に紛争を解決することを特色とする裁判所であり(裁判所法33条、民訴法270条参照)、簡易裁判所判事の任命資格が判事のそれよりも緩やかである(裁判所法42条、44条、45条)ことなどを考慮して、地方裁判所において審理及び裁判を受けるという当事者の利益を重視し、地方裁判所に提起された訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属するものであっても、地方裁判所が当該事件の事案の内容に照らして地方裁判所における審理及び裁判が相当と判断したときはその判断を尊重する趣旨に基づくもので、自庁処理の相当性の判断は地方裁判所の合理的な裁量にゆだねられているものと解される。そうすると、地方裁判所にその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され、被告から同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合においても、当該訴訟を簡易裁判所に移送すべきか否かは、訴訟の著しい遅滞を避けるためや、当事者間の衡平を図るという観点(民訴法17条参照)からのみではなく、同法16条2項の規定の趣旨にかんがみ、広く当該事件の事案の内容に照らして地方裁判所における審理及び裁判が相当であるかどうかという観点から判断されるべきものであり、簡易裁判所への移送の申立てを却下する旨の判断は、自庁処理をする旨の判断と同じく、地方裁判所の合理的な裁量にゆだねられており、裁量の逸脱、濫用と認められる特段の事情がある場合を除き、違法ということはできないというべきである。このことは、簡易裁判所の管轄が専属的管轄の合意によって生じた場合であっても異なるところはない(同法16条2項ただし書)
 4 以上によれば、原審の前記判断には裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある。論旨は理由があり、原決定は破棄を免れない。そして、以上説示したところによれば、原々審が本件訴訟の事案の内容に照らして自庁処理を相当と認め、相手方の移送申立てを却下したのは正当であるから、原々決定に対する抗告を棄却することとする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 今井功 裁判官 津野修 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀)

(2)遅滞を避ける等ための移送(17条)
裁量移送
当事者の住所、証拠の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、または、当事者間の衡平を図るため必要があること。

(3)簡易裁判所から地方裁判所への裁量移送(18条)
+(簡易裁判所の裁量移送)
第十八条  簡易裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。

(4)必要的移送(19条)
+(必要的移送)
第十九条  第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者の申立て及び相手方の同意があるときは、訴訟の全部又は一部を申立てに係る地方裁判所又は簡易裁判所に移送しなければならないただし、移送により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき、又はその申立てが、簡易裁判所からその所在地を管轄する地方裁判所への移送の申立て以外のものであって、被告が本案について弁論をし、若しくは弁論準備手続において申述をした後にされたものであるときは、この限りでない
2  簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。ただし、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合は、この限りでない。

(5)移送の裁判
+(即時抗告)
第二十一条  移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる
(移送の裁判の拘束力等)
第二十二条  確定した移送の裁判は、移送を受けた裁判所を拘束する
2  移送を受けた裁判所は、更に事件を他の裁判所に移送することができない。
3  移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。


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3-1 裁判所 裁判所の概念

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1.裁判所の意義
・官署としての裁判所
=国法上の意味の裁判所

・裁判機関としての裁判所
=訴訟法上の意味の裁判所
民事訴訟手続を取り扱う場合には受訴裁判所という。

2.裁判体
(1)合議制と単独制
裁判体
=裁判機関としての裁判所の構成

合議制
=裁判体を複数の裁判官で構成する

単独制
=1人の裁判官で構成

(2)合議体の構成、裁判長の権限等
裁判長が行使すべき権限は、合議体の代表者としての権限と、裁判長が合議体から独立して行使する権限とに分けられる。
前者については、当事者の異議に基づく合議体の裁判によって裁判長の行為の効果が覆されることがある。

(3)受命裁判官・受託裁判官
受命裁判官
=合議制の場合、法定の事項の処理を構成員である一部の裁判官に委任することができ、委任を受けた裁判官を受命裁判官という。

受託裁判官
=受訴裁判所は、裁判所間の共助に基づき、他の裁判所に法定の事項の処理を委託することができ、その処理を担当する裁判官を受託裁判官という

3.裁判官の種類

4.裁判所書記官等
・固有の権限
送達に関する事務(98条2項)
口頭弁論調書の作成(160条1項)
訴訟費用の負担額の確定(71条1項)

5.専門委員
+(専門委員の関与)
第九十二条の二  裁判所は、争点若しくは証拠の整理又は訴訟手続の進行に関し必要な事項の協議をするに当たり、訴訟関係を明瞭にし、又は訴訟手続の円滑な進行を図るため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。この場合において、専門委員の説明は、裁判長が書面により又は口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日において口頭でさせなければならない。
2  裁判所は、証拠調べをするに当たり、訴訟関係又は証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、証拠調べの期日において専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。この場合において、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人質問の期日において専門委員に説明をさせるときは、裁判長は、当事者の同意を得て、訴訟関係又は証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするために必要な事項について専門委員が証人、当事者本人又は鑑定人に対し直接に問いを発することを許すことができる
3  裁判所は、和解を試みるに当たり、必要があると認めるときは、当事者の同意を得て、決定で、当事者双方が立ち会うことができる和解を試みる期日において専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。

(音声の送受信による通話の方法による専門委員の関与)
第九十二条の三  裁判所は、前条各項の規定により専門委員を手続に関与させる場合において、専門委員が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、同条各項の期日において、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が専門委員との間で音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、専門委員に同条各項の説明又は発問をさせることができる。

(専門委員の関与の決定の取消し)
第九十二条の四  裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、専門委員を手続に関与させる決定を取り消すことができる。ただし、当事者双方の申立てがあるときは、これを取り消さなければならない


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