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1.責任無能力の抗弁
責任能力は抗弁と位置づけられる。
+(責任能力)
第七百十二条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
第七百十三条 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
2.責任能力の意義
責任能力は、
法の命令・禁止を理解しえない人間を、損害賠償責任から解放することによって保護するとの政策的価値判断に基づきたてられた概念。
保護されるか否かを振り分けるための知的・精神的能力
←共同体主義の観点から。
・責任能力の定義
=自己の行為の是非を判断できるだけの知能
(善悪の判断能力・違法性認識能力)
・責任能力の有無は、
個々の具体的行為者の能力を基準に判断される
⇔過失の有無が判断されるときには合理人の注意が基準になるのとは対照的
・責任能力の有無は、加害行為の種類態様ごとに異なってくる。
3.誰が責任無能力者か
・+(責任能力)
第七百十二条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
一律には判断できないが大体12歳くらい
・+第七百十三条 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
4.責任無能力者の監督義務者の責任
(1)帰責と免責の仕組み
+(責任無能力者の監督義務者等の責任)
第七百十四条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
・家族関係の特殊性を考慮して、監督義務者が家族共同体内で責任無能力者の福利厚生・教育を図るという身分上の監護権ないし監護をすることのできる地位にある点に注目し、監督義務者に監督上の過失(監督過失)があることを根拠として、この者に損害賠償責任を課している。
・監督過失についての主張・立証責任が被害者側から監督義務者側に転換されている。
=中間責任
・請求原因
①Xの権利が侵害されたこと
②A(責任無能力者)の行為につき、Aに故意があったこと、またはAに過失があったことの評価を根拠付ける具体的事実
③損害の発生(およびその金額)
④①の権利侵害(③の損害)と②の行為との間の因果関係
⑤②の行為の当時、Aに責任能力がなかったこと
⑥②の行為当時、YがAの監督義務者であったこと
・抗弁
自らが責任無能力者の監督義務を怠らなかったこと
ここでいう監督義務とは、結果の発生を回避するための包括的な監督義務を意味する
監督上の過失と権利侵害との間の因果関係の不存在を主張立証
(2)監督義務を怠らなかったといえる場合
ⅰ)総論
・判例は、714条1項ただし書きにいう監督義務も門峰709条にいう過失の前提となる行為義務と異ならず、他人の権利・法益を害しないように注意して行動すべき義務(結果回避義務)であると捉えている。
=身分関係・生活関係から導かれる監護教育義務・身上配慮義務(820条・858条など)とは異質なものである。
→民法714条1項ただし書きによる免責の抗弁は、監督面での無過失の抗弁に他ならない!!
・監督義務者と被監督者との身分関係・生活関係に照らして捉えられる結果回避のための包括的な監督義務とその違反の有無が問われる!
=当該権利法益侵害を回避するために監督義務者がどのような個別具体的な監督行為をするべきであったかが問われているわけではない!
ⅱ)未成年者の不法行為と監督義務者の免責可能性
・責任能力のない未成年者の親権者は、その直接的な監視下にない子の行動について、人身に危険が及ばないように注意して行動するよう日頃から指導監督する義務がある
通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特段の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきでない。
+判例(H27.4.9)サッカーゴール事件
714条1項ただし書きの監督義務違反を民法709条の過失と同義と捉え、かつ、
日常的に見られる通常は人身の危険が及ぶようなものではない行為から常態ではない経緯を経た結果であって、この結果を行為者がその意思により招致させたものでないものについては、責任無能力者の当該行為について具体的に予見可能であったなどの特段の事情があったと認められない限り、一般的な監護義務を尽くしていていれば、監督義務違反を問わない。
ⅲ)認知症高齢者の不法行為と監督義務者の免責可能性
・+(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
第八百五十八条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
←民法858条の身上配慮義務は、成年後見人の権限等に照らすと、成年後見人が契約等の法律行為をする際に成年後見人の身上について配慮すべきことを求めるものであって、成年後見人に対し事実行為として成年被後見人の現実の介護を行うことや、成年被後見人の行動を監視することを求めるものと解すことはできない!!!!
=保護者や成年後見人であることだけでは、直ちに法定の監督義務者に該当するということはできない。
・+(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
←夫婦間で同居協力扶助の義務を負うのであって、第三者との関係で夫婦の一方に何らかの作為義務を課すものではない。
同居の義務については性質上履行を強制できないものであり、それ自体抽象的
→752条の規定をもって、714条1項にいう責任無能力者を監督する義務を定めたものということはできない。
・もっとも、法定の監督義務者に該当しない者であっても、
責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、
衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視して、その者に対し714条に基づく損害賠償責任を問うことができる!!!!!
=「法定の監督責任者に準ずべき者」として、714条1項が類推適用される
・法定の監督義務者に準ずべき者かの考慮要素など
その者自身の生活状況や心身の状況
精神障害者との親族関係の有無・濃淡
同居の有無その他の日常的な接触の程度
精神障害者の財産管理への関与の状況などその者と精神障害者とのかかわりの実情
精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容
これらに対応しておこなわれている監護や介護の実態など諸般の事情を総合考慮して、
その者が精神障害者を現に監督しているか、または監督することが可能かつ容易であるなど、衡平の見地からその者に対し精神障害者の行為に係る責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるか否かという観点から判断。
+判例(H28.3.1)JR東海事件
5.行為者に責任能力がある場合の保護者の損害賠償責任
・不法行為者に責任能力があった時には、被害者は、714条に基づき監督義務者に損害賠償請求をすることはできない。
→709条で。
監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する
714条の規定が右解釈を妨げるものではない。
714条の場合のように広範かつ包括的な監督義務違反とは違い、
結果回避に向けられた具体的かつ特定の監督措置を内容とするもの
6.その他の抗弁~違法性阻却事由といわれているもの~
(1)正当防衛の抗弁
+(正当防衛及び緊急避難)
第七百二十条 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
2 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
・他人の不法行為が原因となっていること
第三者に対する不法行為でもよい
・自己または第三者の権利を防衛するために加害行為をしたこと
・加害行為がやむを得ないものであったこと
防衛行為の必要性と加害行為の相当性
・要件事実
①Yまたは第三者の権利
②①の権利に対する他人の侵害行為
③請求原因に挙げられたYの故意過失行為(加害行為)が、②の行為から①の権利を防衛するために行われたものであること
④③の行為がやむを得ずに行われたものであること(必要性と相当性)
(2)緊急避難(対物防衛)の抗弁
+(正当防衛及び緊急避難)
第七百二十条 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
2 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
民法における緊急避難とは主に対物防衛
民法の場合は、反撃を加える対象が危難を生じさせたその物に場合に限定される!
・要件事実
緊急避難の抗弁
①Yの権利
②①の権利に対して、請求原因に挙げられたXの物から急迫の危難が生じた事
③請求原因に挙げられたYの故意過失行為(物の損傷行為)が、②の危難を避けるためにされたものであること
④③の行為がやむを得ずに行われたものであること(必要性と相当性)
(3)法令による行為・正当業務行為の抗弁
(4)被害者承諾の抗弁
被害者は、みずから処分権限を有する事項についてのみ、承諾をすることができる。
(5)自力救済の抗弁
判例は自力救済を原則として禁止
法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能または著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存在する場合においてのみ、その必要な限度を超えない範囲内で、例外的に許される。
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