これからの政治の課題とは

1.21世紀の政治を振り返って
(1)大戦争と政治の不安定化
戦争のなかで、相互の理解と寛容を前提にしたそれまでの立憲政治を時代遅れにした。
国際経済秩序の解体も政治の緊張を高めた。
(2)戦後の日本政治を振り返る
冷戦のなか、もっぱら国内体制の整備に関心を集中させ、経済優先の政策がとられた。
自由主義陣営は経済的利害対立に神経を尖らせ、その抑制を試みた。
→完全雇用と福祉国家
合意の政治
自民党が多くの利益集団の面倒を見ることを通して、政権政党としての地位を再生産した。
70年代後半から、合意の政治が大きな政府を産み出したとして批判されるようになる。
→利益政治の没落
政府が国民の面倒を見る体制を見直すことになる
2.これからの政治課題を展望する
(1)合理的な利益政治を求めて
財政的な制約から、何に使うのかの優先順位をはっきりさせるべき。
(2)鍵としての教育
グローバル化のなかで政府が企業を守ることが難しくなった。
=企業を守ることを通して個人の生活を守れない。
→個人が競争力を持てるように教育が必要。
先端的知識を制するものが将来を制する
(3)グローバル化と政府の役割
グローバル化によって格差の拡大。
政治は結果の平等を実現できなくなった。
必要最低限度の生活水準を守ることが大切。
これがあればこそ思いきった挑戦ができる。
機会の平等を可能な限り国民へ提供。
(4)ナショナリズムの問題
グローバル化による反動という面
自己同一性をめぐる政治
ナショナリズムは集団的な自己主張の現れ
民主主義は集団的自己決定の現れ
この二つは容易に混合する。
政治はナショナリズムに呑み込まれることなく、管理し指導しなければならない。
(5)軍事力の再登場
人道目的のための軍事力の行使
ただ、軍事力にできることは相手の軍事組織の破壊であり、民主政治を創出することはできない。
(6)環境・資源問題と民主政治を

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民法 事例から民法を考える 20 どっちもどっち?


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Ⅰ はじめに
・調停前置主義
・裁判での離婚請求
法定の離婚事由が存するときのみ離婚請求が認容される

+(裁判上の離婚)
第七百七十条  夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一  配偶者に不貞な行為があったとき。
二  配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三  配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四  配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五  その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
2  裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる

・5号に基づく離婚請求において婚姻当事者の有責性といかに考慮するのか

+判例(S62.9.2)
理由
上告代理人菊地一夫の上告理由について
所論は、要するに、上告人と被上告人との婚姻関係は破綻し、しかも、両者は共同生活を営む意思を欠いたまま三五年余の長期にわたり別居を継続し、年齢も既に七〇歳に達するに至つたものであり、また、上告人は別居に当たつて当時有していた財産の全部を被上告人に給付したのであるから、上告人は被上告人に対し、民法七七〇条一項五号に基づき離婚を請求しうるものというべきところ、原判決は右請求を排斥しているから、原判決には法令の解釈適用を誤つた違法がある、というのである。
一1 民法七七〇条は、裁判上の離婚原因を制限的に列挙していた旧民法(昭和二二年法律第二二二号による改正前の明治三一年法律第九号。以下同じ。)八一三条を全面的に改め、一項一号ないし四号において主な離婚原因を具体的に示すとともに、五号において「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」との抽象的な事由を掲げたことにより、同項の規定全体としては、離婚原因を相対化したものということができる。また、右七七〇条は、法定の離婚原因がある場合でも離婚の訴えを提起することができない事由を定めていた旧民法八一四条ないし八一七条の規定の趣旨の一部を取り入れて、二項において、一項一号ないし四号に基づく離婚請求については右各号所定の事由が認められる場合であつても二項の要件が充足されるときは右請求を棄却することができるとしているにもかかわらず、一項五号に基づく請求についてはかかる制限は及ばないものとしており、二項のほかには、離婚原因に該当する事由があつても離婚請求を排斥することができる場合を具体的に定める規定はない。以上のような民法七七〇条の立法経緯及び規定の文言からみる限り、同条一項五号は、夫婦が婚姻の目的である共同生活を達成しえなくなり、その回復の見込みがなくなつた場合には、夫婦の一方は他方に対し訴えにより離婚を請求することができる旨を定めたものと解されるのであつて、同号所定の事由(以下「五号所定の事由」という。)につき責任のある一方の当事者からの離婚請求を許容すべきでないという趣旨までを読みとることはできない
他方、我が国においては、離婚につき夫婦の意思を尊重する立場から、協議離婚(民法七六三条)、調停離婚(家事審判法一七条)及び審判離婚(同法二四条一項)の制度を設けるとともに、相手方配偶者が離婚に同意しない場合について裁判上の離婚の制度を設け、前示のように離婚原因を法定し、これが存在すると認められる場合には、夫婦の一方は他方に対して裁判により離婚を求めうることとしている。このような裁判離婚制度の下において五号所定の事由があるときは当該離婚請求が常に許容されるべきものとすれば、自らその原因となるべき事実を作出した者がそれを自己に有利に利用することを裁判所に承認させ、相手方配偶者の離婚についての意思を全く封ずることとなり、ついには裁判離婚制度を否定するような結果をも招来しかねないのであつて、右のような結果をもたらす離婚請求が許容されるべきでないことはいうまでもない
2 思うに、婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもつて共同生活を営むことにあるから、夫婦の一方又は双方が既に右の意思を確定的に喪失するとともに、夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態に至つた場合には、当該婚姻は、もはや社会生活上の実質的基礎を失つているものというべきであり、かかる状態においてなお戸籍上だけの婚姻を存続させることは、かえつて不自然であるということができよう。しかしながら、離婚は社会的・法的秩序としての婚姻を廃絶するものであるから、離婚請求は、正義・公平の観念、社会的倫理観に反するものであつてはならないことは当然であつて、この意味で離婚請求は、身分法をも包含する民法全体の指導理念たる信義誠実の原則に照らしても容認されうるものであることを要するものといわなければならない
3 そこで、五号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合において、当該請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たつては有責配偶者の責任の態様・程度を考慮すべきであるが、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係、たとえば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子らの状況等が斟酌されなければならず、更には、時の経過とともに、これらの諸事情がそれ自体あるいは相互に影響し合つて変容し、また、これらの諸事情のもつ社会的意味ないしは社会的評価も変化することを免れないから、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないのである。
そうであつてみれば、有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできないものと解するのが相当である。けだし、右のような場合には、もはや五号所定の事由に係る責任、相手方配偶者の離婚による精神的・社会的状態等は殊更に重視されるべきものでなく、また、相手方配偶者が離婚により被る経済的不利益は、本来、離婚と同時又は離婚後において請求することが認められている財産分与又は慰藉料により解決されるべきものであるからである。
4 以上説示するところに従い、最高裁昭和二四年(オ)第一八七号同二七年二月一九日第三小法廷判決・民集六巻二号一一〇頁、昭和二九年(オ)第一一六号同年一一月五日第二小法廷判決・民集八巻一一号二〇二三頁、昭和二七年(オ)第一九六号同二九年一二月一四日第三小法廷判決・民集八巻一二号二一四三頁その他上記見解と異なる当裁判所の判例は、いずれも変更すべきものである。
二 ところで、本件について原審が認定した上告人と被上告人との婚姻の経緯等に関する事実の概要は、次のとおりである。
(一) 上告人と被上告人とは、昭和一二年二月一日婚姻届をして夫婦となつたが、子が生まれなかつたため、同二三年一二月八日訴外Aの長女B及び二女Cと養子縁組をした。(二) 上告人と被上告人とは、当初は平穏な婚姻関係を続けていたが、被上告人が昭和二四年ころ上告人とAとの間に継続していた不貞な関係を知つたのを契機として不和となり、同年八月ころ上告人がAと同棲するようになり、以来今日まで別居の状態にある。なお、上告人は、同二九年九月七日、Aとの間にもうけたD(同二五年一月七日生)及びE(同二七年一二月三〇日生)の認知をした。(三) 被上告人は、上告人との別居後生活に窮したため、昭和二五年二月、かねて上告人から生活費を保障する趣旨で処分権が与えられていた上告人名義の建物を二四万円で他に売却し、その代金を生活費に当てたことがあるが、そのほかには上告人から生活費等の交付を一切受けていない。(四) 被上告人は、右建物の売却後は実兄の家の一部屋を借りて住み、人形製作等の技術を身につけ、昭和五三年ころまで人形店に勤務するなどして生活を立てていたが、現在は無職で資産をもたない。(五) 上告人は、精密測定機器の製造等を目的とする二つの会社の代表取締役、不動産の賃貸等を目的とする会社の取締役をしており、経済的には極めて安定した生活を送つている。(六) 上告人は、昭和二六年ころ東京地方裁判所に対し被上告人との離婚を求める訴えを提起したが、同裁判所は、同二九年二月一六日、上告人と被上告人との婚姻関係が破綻するに至つたのは上告人がAと不貞な関係にあつたこと及び被上告人を悪意で遺棄してAと同棲生活を継続していることに原因があるから、右離婚請求は有責配偶者からの請求に該当するとして、これを棄却する旨の判決をし、この判決は同年三月確定した。(七) 上告人は、昭和五八年一二月ころ被上告人を突然訪ね、離婚並びにB及びCとの離縁に同意するよう求めたが、被上告人に拒絶されたので、同五九年東京家庭裁判所に対し被上告人との離婚を求める旨の調停の申立をし、これが成立しなかつたので、本件訴えを提起した。なお、上告人は、右調停において、被上告人に対し、財産上の給付として現金一〇〇万円と油絵一枚を提供することを提案したが、被上告人はこれを受けいれなかつた。
三 前記一において説示したところに従い、右二の事実関係の下において、本訴請求につき考えるに、上告人と被上告人との婚姻については五号所定の事由があり、上告人は有責配偶者というべきであるが、上告人と被上告人との別居期間は、原審の口頭弁論の終結時まででも約三六年に及び、同居期間や双方の年齢と対比するまでもなく相当の長期間であり、しかも、両者の間には未成熟の子がいないのであるから、本訴請求は、前示のような特段の事情がない限り、これを認容すべきものである。
したがつて、右特段の事情の有無について審理判断することなく、上告人の本訴請求を排斥した原判決には民法一条二項、七七〇条一項五号の解釈適用を誤つた違法があるものというべきであり、この違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、この趣旨の違法をいうものとして論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件については、右特段の事情の有無につき更に審理を尽くす必要があるうえ、被上告人の申立いかんによつては離婚に伴う財産上の給付の点についても審理判断を加え、その解決をも図るのが相当であるから、本件を原審に差し戻すこととする。
よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官角田禮次郎、同林藤之輔の補足意見、裁判官佐藤哲郎の意見があるほか、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

Ⅱ 婚姻の破綻を理由とする離婚請求における有責性の考慮
1.問題の所在

2.判例の状況
(1)前提
・5号事由は、離婚関係が深刻に破綻し、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがない場合(不治的破綻)をいう
・不治的破綻は当事者の主観に即して判断されるわけではない!

(2)昭和62年判決
・5号の解釈として、有責配偶者からの離婚請求を一切許容すべきでないとまではいえない!
・他方で、離婚請求が、信義則に照らして容認されない場合がある!

・基準(三要件基準)
夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められないこと

・相手方配偶者の状態のうち、経済的不利益については、本来、離婚と同時に又は離婚後において請求することが認められている財産分与又は慰謝料により解決されるべきものである!

(3)昭和62年判決以後の状況

・10年間の別居で離婚請求が認められた事例

・未成熟子が存在する場合でも離婚請求が認められた事例
+判例(H6.2.8)
理由
上告代理人岡崎守延の上告理由について
原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
(1) 上告人(昭和一三年九月一〇日生)と被上告人(昭和一一年九月一五日生)は、昭和三九年二月二八日婚姻の届出をし、同四〇年八月一四日に長女Aを、同四二年八月一〇日に長男Bを、同四五年七月一三日に二男Cを、同五〇年一二月一六日に三男Dをもうけた。
(2) 被上告人は、会社の経営に行き詰まり、昭和五四年二月八日に家出して行方をくらました。上告人は、四人の子を育て、被上告人の帰りを待っていたが、子らが幼いため仕事も思うようすることができず、自宅も競売に付され、ついに生活保護を受けるに至った。一方、被上告人は、昭和五六年ころ二児を抱える乙野月子と知り合い、同五八年に同女と同せいを始め、現在勤務している会社には同女を妻として届け出ている。
(3) 上告人は、昭和六〇年六月ころ、被上告人が乙野及び同女の子らと同居している事実を知り、被上告人に対して再三にわたり手紙や電話で積年の恨みの気持ちをぶつけ、自分のもとに戻ってくるよう強く求めたが、被上告人は、かえって上告人への嫌悪感を募らせ、離婚して乙野と正式な婚姻生活に入りたいとする意思を一層固めるようになった。
(4) 昭和六三年九月に被上告人に対し婚姻費用として毎月一七万円(ただし、毎年七月は五三万円、一二月は六五万円)の支払を命ずる家庭裁判所の審判がされた。その後、被上告人は、上告人に対し、毎月一五万円(毎年七月と一二月は各四〇万円)を送金している。
(5) 被上告人は、いまや上告人との同居生活を回復する意思を全く持っておらず、強く離婚を望み、離婚に伴う給付として七〇〇万円を支払うとの提案をしている。上告人は、三男Dを養育していく上では父親の存在が欠かせないとの理由で離婚に反対している。長女Aは平成元年三月一九日に婚姻し、長男B及び二男Cも既に成人して独立している。
ところで、民法七七〇条一項五号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら又は主として責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合において、右請求が信義誠実の原則に照らしてもなお容認されるかどうかを判断するには、有責配偶者の責任の態様・程度、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係、たとえば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子らの状況等がしんしゃくされなければならず、更には、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないものというべきである(最高裁昭和六一年(オ)第二六〇号同六二年九月二日大法廷判決・民集四一巻六号一四二三頁参照)。したがって、有責配偶者からされた離婚請求で、その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもって右請求を排斥すべきものではなく、前記の事情を総合的に考慮して右請求が信義誠実の原則に反するとはいえないときには、右請求を認容することができると解するのが相当である。
これを本件についてみるのに、前記事実関係の下においては、上告人と被上告人との婚姻関係は既に全く破綻しており民法七七〇条一項五号所定の事由があるといわざるを得ず、かつ、また被上告人が有責配偶者であることは明らかであるが上告人が被上告人と別居してから原審の口頭弁論終結時(平成五年一月二〇日)までには既に一三年一一月余が経過し、双方の年齢や同居期間を考慮すると相当の長期間に及んでおり、被上告人の新たな生活関係の形成及び上告人の現在の行動等からは、もはや婚姻関係の回復を期待することは困難であるといわざるを得ず、それらのことからすると、婚姻関係を破綻せしめるに至った被上告人の責任及びこれによって上告人が被った前記婚姻後の諸事情を考慮しても、なお、今日においては、もはや、上告人の婚姻継続の意思及び離婚による上告人の精神的・社会的状態を殊更に重視して、被上告人の離婚請求を排斥するのは相当でない
上告人が今日までに受けた精神的苦痛、子らの養育に尽くした労力と負担、今後離婚により被る精神的苦痛及び経済的不利益の大きいことは想像に難くないが、これらの補償は別途解決されるべきものであって、それがゆえに、本件離婚請求を容認し得ないものということはできない
そして、現在では、上告人と被上告人間の四人の子のうち三人は成人して独立しており、残る三男Dは親の扶養を受ける高校二年生であって未成熟の子というべきであるが、同人は三歳の幼少時から一貫して上告人の監護の下で育てられてまもなく高校を卒業する年齢に達しており、被上告人は上告人に毎月一五万円の送金をしてきた実績に照らしてDの養育にも無関心であったものではなく、被上告人の上告人に対する離婚に伴う経済的給付もその実現を期待できるものとみられることからすると、未成熟子であるDの存在が本件請求の妨げになるということもできない
以上と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、右と異なる見解に立って原判決の違法をいうものであって、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官園部逸夫 裁判官佐藤庄市郎 裁判官可部恒雄 裁判官大野正男 裁判官千種秀夫)

・過酷条項
+判例(H16.11.18)
理由
上告代理人今井光の上告受理申立て理由について
1 原審が適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 被上告人(昭和44年11月25日生)は,平成元年7月ことからa東税務署に勤務し,平成3年夏ころ,同署においてアルバイトとして働いていた上告人(昭和45年6月30日生)と知り合い,交際を始めた。
(2) 被上告人は,b税務署への転勤後の平成6年11月19日に上告人とa市内で結婚式を挙げ(婚姻の届出は同年12月2日),b市内の公務員宿舎で新婚生活を始め,平成8年3月26日に長男をもうけた。
(3) 被上告人は,婚姻をした当初は,上告人がきれい好きな人であるとして好感を持っていた。しかし,被上告人は,上告人の要望により,<1>帰宅すると,玄関で靴下を脱いで室内用靴下に履き替え,玄関のすぐ横の被上告人の部屋で,室内用の服に着替えをして,敷いた新聞紙の上にかばんを置くものとされたこと,<2>衣類は一度洗濯してから着るものとされ,被上告人が子供と公園の砂場等で遊んで帰ってきたときには,居間等に入る前に必ず風呂場でシャワーを浴びるものとされたこと,<3>居間等で寝転ぶときは,頭の油で汚れることを理由に,頭の下に広告の紙を敷くものとされたことなどから,次第に,上告人との生活に不快感を覚えるようになった。
(4) 被上告人は,平成10年7月にc税務署へ転勤となり,家族3人でc市内の公務員宿舎で生活をするようになった。
(5) 被上告人は,平成11年7月から平成12年6月まで,埼玉県d市所在のe校で研修を受け,その間,同校の独身寮で単身生活をし,同期の女性の研修生Aと知り合った。上告人と長男は,その間,a市所在の上告人の実家で過ごした。
(6) 被上告人は,上記研修後の同年7月にf国税局に転勤となり,家族3人でf市内の公務員宿舎で生活をするようになった。
被上告人は,同月1日,上告人に対し,「友達が来るから飲んで泊まるかもしれない」などと言って外出し,同日から翌日にかけて,Aのためにg市内の観光案内をし,同市で一泊した。
(7) 被上告人は,上記公務員宿舎が古くて狭く,汚い状況にあることについて上告人が不満を述べたことから,上司に相談したところ,上司から,同年秋に完成予定の新築の宿舎があり,被上告人が入居できる見込みがあることを告げられた。そこで,被上告人は,上告人に対し,上記宿舎が完成するまで実家に帰ることを勧め,これに応じて,上告人と長男は,実家で暮らすようになった。
(8) 上記宿舎が完成したことから,被上告人は,同年9月,上告人及び長男と共に,上記宿舎に入居し,家族3人の生活を再開したが,同年10月初めころ,被上告人は,突然,上告人に対し,「好きな人がいる,その人が大事だ」,「2馬力で楽しい人生が送れる」,「女の人を待たせている」などと言って,離婚を申し入れた。その際,被上告人は,上告人からその女性との関係を問いただされ,その女性と「ホテルにもよく行く」などと性関係を持っていることを認める趣旨の発言をした。
被上告人は,遅くとも同年7月ころから,Aと性関係にあったものと推認される。
(9) 被上告人は,上告人に対し,同年10月か11月に九州でAと会う約束をしていることを明らかにしたので,上告人は,双方の両親に事情を話して相談した。その結果,家族会議を開くこととなり,同年11月4日,被上告人のbの実家で,上告人,被上告人夫婦及び双方の両親が一堂に会して被上告人の女性問題について話合いをした。その際,被上告人の母親が,被上告人に対し,Aとの結婚は許さないと断言したことから,被上告人は,上記の九州への旅行を断念した。
その後,平成13年3月及び同年4月に,上告人,被上告人夫婦間の離婚問題について双方の両親を交えた話合いが行われたが,合意には至らなかった。
(10) 被上告人が離婚話を持ち出して以降,夫婦間にはほとんど会話がなくなり,上告人は被上告人に対し極めて冷淡になった。上告人は,被上告人がトイレを使用したり,蛇口をひねって手を洗ったりするとすぐにトイレや蛇口の掃除をしたり,被上告人が夜遅く帰宅すると,起床して被上告人が歩いたり触れたりした箇所を掃除したりするようになった。
(11) 被上告人は,同年6月,上記宿舎を出て,f市内のアパートで一人暮らしをするようになり,それ以降,長男と会うこともないまま,別居生活を続けている。
被上告人は,別居後,上告人に対し,毎月,給与(手取り額約30万円)の中から生活費として8万円を送金し,かつ,上告人が居住する上記宿舎の家賃や光熱費等を負担している。
上告人は,被上告人と一緒に暮らしたいとは思っていないが,子宮内膜症にり患しており,就職して収入を得ることが困難であり,将来に経済的な不安があることや子供のためにも,離婚はしたくないと考えている。
2 本件は,被上告人が,上告人に対し,両者の間の婚姻関係は既に破たんしており,民法770条1項5号所定の事由があると主張して,離婚を求めるとともに,長男の親権者を被上告人と定めることを求める事案である。
3 原審は,前記の事実関係の下において,次のとおり判断し,被上告人の離婚請求を認容し,長男の親権者を上告人と定めた。
(1) 上告人は,離婚を拒絶しているが,それは,法律的な婚姻関係の継続により経済的な安定を維持できるからであって,被上告人に対する情愛によるものではなく,被上告人と同居して生活する意思はないこと,被上告人が上告人及び長男と別居してから約2年4か月が経過しており,その間,被上告人は長男とさえ会っておらず,家族としての交流がないこと等を併せ考慮すると,上告人と被上告人とが,将来,婚姻関係を修復し,正常な夫婦として共同生活を営むことはできないものと解され,その婚姻関係は既に破たんしており,民法770条1項5号所定の事由があるというべきである。
(2) 被上告人は,遅くとも平成12年7月ころから,Aと性関係にあったものと推認されるのであり,これが婚姻関係破たんの原因となったことは明らかであるから,被上告人は,上記破たんにつき主たる責任があるというべきである。
(3) しかしながら,上告人は,かなり極端な清潔好きの傾向があり,これを被上告人に強要するなどした上告人の前記の生活態度には問題があったといわざるを得ず,上告人にも婚姻関係破たんについて一端の責任がある。これに加えて,上記のとおり,上告人と被上告人とは互いに夫婦としての情愛を全く喪失しており,既に別居生活を始めてから約2年4か月が経過していること,その間,上告人,被上告人夫婦間には家族としての交流もなく,将来,正常な夫婦として生活できる見込みもないこと,上告人の両親は健在であり,経済的にも比較的余裕があること等の点を考慮すると,被上告人が不貞に及んだことや上告人が子宮内膜症にり患しているため就職して収入を得ることが困難であることを考慮しても,被上告人の離婚請求を信義誠実の原則に反するものとして排斥するのは相当ではないというべきである。

4 しかしながら,原審の上記(3)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
民法770条1項5号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら又は主として責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合において,当該請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たっては,有責配偶者の責任の態様・程度,相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情,離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・経済的状態,夫婦間の子,殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況,別居後に形成された生活関係等が考慮されなければならず,更には,時の経過とともに,これらの諸事情がそれ自体あるいは相互に影響し合って変容し,また,これらの諸事情の持つ社会的意味ないしは社会的評価も変化することを免れないから,時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないものというべきである。
そうだとすると,有責配偶者からされた離婚請求については,<1>夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるか否か,<2>その間に未成熟の子が存在するか否か,<3>相手方配偶者が離婚により精神的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような事情が存するか否か等の諸点を総合的に考慮して,当該請求が信義誠実の原則に反するといえないときには,当該請求を認容することができると解するのが相当である(最高裁昭和61年(オ)第260号同62年9月2日大法廷判決・民集41巻6号1423頁参照)。
上記の見地に立って本件をみるに,前記の事実関係によれば,<1>上告人と被上告人との婚姻については民法770条1項5号所定の事由があり,被上告人は有責配偶者であること,<2>上告人と被上告人との別居期間は,原審の口頭弁論終結時(平成15年10月1日)に至るまで約2年4か月であり,双方の年齢や同居期間(約6年7か月)との対比において相当の長期間に及んでいるとはいえないこと,<3>上告人と被上告人との間には,その監護,教育及び福祉の面での配慮を要する7歳(原審の口頭弁論終結時)の長男(未成熟の子)が存在すること,<4>上告人は,子宮内膜症にり患しているため就職して収入を得ることが困難であり,離婚により精神的・経済的に苛酷な状況に置かれることが想定されること等が明らかである。
以上の諸点を総合的に考慮すると,被上告人の本件離婚請求は,信義誠実の原則に反するものといわざるを得ず,これを棄却すべきものである。
5 以上によれば,被上告人の本件離婚請求を認容した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,被上告人の請求は理由がなく,これを棄却した第1審判決は相当であるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉德治 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴)

(4)「有責配偶者からの離婚請求」に該当するのはどのような場合か
・有責性とは婚姻の破綻状態を招いたことに対する責任を指すため、婚姻が破綻した後の不貞行為などがあっても、離婚請求が否定される理由にはならない!!!

・請求者に有責性が存しても、主として破綻の原因が相手方にある場合には、離婚請求が認められる!

3.有責配偶者からの離婚請求の許否判断基準の検討
(1)検討の視点
①婚姻観
婚姻は愛情に基づくもの・・・
一方で制度としての安定性

②離婚の効果との関係
③離婚事由の客観化

(2)検討~別居要件を中心に
外形的な別居・・・
寝室の別・・・

4.設問1にあてはめる
(1)婚姻を継続し難い事由の存否
(2)「有責配偶者からの離婚請求」であるか
(3)離婚請求が信義則に反するか
①三要件基準を手がかりに
不治的破綻の認定と信義則に反するかの認定は別・・・
②諸条件の考慮と客観化の試み

(4)離婚の効果との関係

Ⅲ 財産分与の性質及び算定の際に考慮される一切の事情
1.序
・財産分与には、清算、慰謝料、扶養の要素がある!

2.財産分与の性質と考慮される事情
(1)清算
・主に妻が専業主婦である婚姻を念頭において、一方配偶者の稼働した財産についても、取得について他方の協力があったものとみて、実質的に夫婦の共有財産として生産するという解釈。

(2)慰謝料
・請求可能な慰謝料につき、財産分与手続と別途の不法行為請求訴訟によるのではなく、財産分与の要素として考慮することを認める

(3)扶養
補充的なもの。

(4)婚姻費用分担の態様
離婚前の別居期間中における婚姻費用分担の態様も財産分与を算定する際の事情として考慮できる。

3.財産分与の手続
(1)離婚請求との同時解決について
・財産分与は、本来家事審判事件とされる処分であるが、
離婚訴訟において当事者が附帯申立てをし、離婚と同時解決を図ることができる!

(2)財産分与と慰謝料請求権

Ⅳ おわりに


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刑法 刑事実体法演習 第8講 強盗罪、共犯の因果性


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1.設例へのアプローチ
(1)Aの罪責について
(2)Bの罪責について
(3)Cの罪責について

2.Aの罪責
(1)Vに対する昏睡強盗未遂
ア 問題の所在

+(未遂罪)
第二百四十三条  第二百三十五条から第二百三十六条まで及び第二百三十八条から第二百四十一条までの罪の未遂は、罰する。

+(昏酔強盗)
第二百三十九条  人を昏酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。

イ 設例の検討
・実行行為=構成要件的結果を現実に引き起こす現実的危険のある行為をいう。

・酒を飲ませる行為も、飲ませ方によっては昏睡の現実的危険があるから、昏睡強盗の実行行為となりうる。

(2)Vに対する強盗
+(強盗)
第二百三十六条  暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

(3)Vに対する強姦
ア 問題の所在
+(強盗強姦及び同致死)
第二百四十一条  強盗が女子を強姦したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。よって女子を死亡させたときは、死刑又は無期懲役に処する。

イ 共同正犯の処罰根拠
(ア)問題の所在
(イ)因果的共犯論
・共同正犯については、意思の連絡という心理的な働きかけによって共犯者の行為の結果に因果性を与えたから処罰される。

+判例(H1.6.26)
理由
弁護人田中清治の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でなく、その余は、事実誤認の主張であり、被告人本人の上告趣意は、事実誤認の主張であり、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
所論にかんがみ、職権により判断する。
一 傷害致死の点について、原判決(原判決の是認する一審判決の一部を含む。)が認定した事実の要旨は次のとおりである。(1) 被告人は、一審相被告人のAの舎弟分であるが、両名は、昭和六一年一月二三日深夜スナツクで一緒に飲んでいた本件被害者のBの酒癖が悪く、再三たしなめたのに、逆に反抗的な態度を示したことに憤慨し、同人に謝らせるべく、車でA方に連行した。(2) 被告人は、Aとともに、一階八畳間において、Bの態度などを難詰し、謝ることを強く促したが、同人が頑としてこれに応じないで反抗的な態度をとり続けたことに激昂し、その身体に対して暴行を加える意思をAと相通じた上、翌二四日午前三時三〇分ころから約一時間ないし一時間半にわたり、竹刀や木刀でこもごも同人の顔面、背部等を多数回殴打するなどの暴行を加えた。(3) 被告人は、同日午前五時過ぎころ、A方を立ち去つたが、その際「おれ帰る」といつただけで、自分としてはBに対しこれ以上制裁を加えることを止めるという趣旨のことを告げず、Aに対しても、以後はBに暴行を加えることを止めるよう求めたり、あるいは同人を寝かせてやつてほしいとか、病院に連れていつてほしいなどと頼んだりせずに、現場をそのままにして立ち去つた。(4) その後ほどなくして、Aは、Bの言動に再び激昂して、「まだシメ足りないか」と怒鳴つて右八畳間においてその顔を木刀で突くなどの暴行を加えた。(5)Bは、そのころから同日午後一時ころまでの間に、A方において甲状軟骨左上角骨折に基づく頸部圧迫等により窒息死したが、右の死の結果が被告人が帰る前に被告人とAがこもごも加えた暴行にようて生じたものか、その後のAによる前記暴行により生じたものかは断定できない
二 右事実関係に照らすと、被告人が帰つた時点では、Aにおいてなお制裁を加えるおそれが消滅していなかつたのに、被告人において格別これを防止する措置を講ずることなく、成り行きに任せて現場を去つたに過ぎないのであるから、Aとの間の当初の共犯関係が右の時点で解消したということはできず、その後のAの暴行も右の共謀に基づくものと認めるのが相当である。そうすると、原判決がこれと同旨の判断に立ち、かりにBの死の結果が被告人が帰つた後にAが加えた暴行によつて生じていたとしても、被告人は傷害致死の責を負うとしたのは、正当である。
よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項本文、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 角田禮次郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 佐藤哲郎 裁判官 四ツ谷巌 裁判官 大堀誠一)

ウ 共謀の有無の検討
・共同して犯罪を実行した(60条)
=相互に教唆又は心理的幇助を行い、心理的影響を及ぼしあう関係に基づいて犯罪が実行されたことが必要。

(4)Vに障害を負わせた点
ア 問題の所在
イ 共謀関係からの離脱
共謀による因果性が消滅すれば共同正犯としての責任を免れる。

ウ 共謀関係から離脱が認められるのはいかなる場合か

+判例(H21.6.30)
理由
弁護人須藤純正の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、いずれも事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお、所論にかんがみ、第1審判示第3の事実(以下「本件」という。)について、職権で判断する。
1 原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば、本件の事実関係は、次のとおりである。
(1) 被告人は、本件犯行以前にも、第1審判示第1及び第2の事実を含め数回にわたり、共犯者らと共に、民家に侵入して家人に暴行を加え、金品を強奪することを実行したことがあった。
(2) 本件犯行に誘われた被告人は、本件犯行の前夜遅く、自動車を運転して行って共犯者らと合流し、同人らと共に、被害者方及びその付近の下見をするなどした後、共犯者7名との間で、被害者方の明かりが消えたら、共犯者2名が屋内に侵入し、内部から入口のかぎを開けて侵入口を確保した上で、被告人を含む他の共犯者らも屋内に侵入して強盗に及ぶという住居侵入・強盗の共謀を遂げた。
(3) 本件当日午前2時ころ、共犯者2名は、被害者方の窓から地下1階資材置場に侵入したが、住居等につながるドアが施錠されていたため、いったん戸外に出て、別の共犯者に住居等に通じた窓の施錠を外させ、その窓から侵入し、内側から上記ドアの施錠を外して他の共犯者らのための侵入口を確保した。
(4) 見張り役の共犯者は、屋内にいる共犯者2名が強盗に着手する前の段階において、現場付近に人が集まってきたのを見て犯行の発覚をおそれ、屋内にいる共犯者らに電話をかけ、「人が集まっている。早くやめて出てきた方がいい。」と言ったところ、「もう少し待って。」などと言われたので、「危ないから待てない。先に帰る。」と一方的に伝えただけで電話を切り、付近に止めてあった自動車に乗り込んだ。その車内では、被告人と他の共犯者1名が強盗の実行行為に及ぶべく待機していたが、被告人ら3名は話し合って一緒に逃げることとし、被告人が運転する自動車で現場付近から立ち去った
(5) 屋内にいた共犯者2名は、いったん被害者方を出て、被告人ら3名が立ち去ったことを知ったが、本件当日午前2時55分ころ、現場付近に残っていた共犯者3名と共にそのまま強盗を実行し、その際に加えた暴行によって被害者2名を負傷させた。
2 上記事実関係によれば、被告人は、共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀したところ、共犯者の一部が家人の在宅する住居に侵入した後、見張り役の共犯者が既に住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい、先に帰る」などと一方的に伝えただけで、被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく待機していた場所から見張り役らと共に離脱したにすぎず、残された共犯者らがそのまま強盗に及んだものと認められる。そうすると、被告人が離脱したのは強盗行為に着手する前であり、たとえ被告人も見張り役の上記電話内容を認識した上で離脱し、残された共犯者らが被告人の離脱をその後知るに至ったという事情があったとしても、当初の共謀関係が解消したということはできず、その後の共犯者らの強盗も当初の共謀に基づいて行われたものと認めるのが相当である。これと同旨の判断に立ち、被告人が住居侵入のみならず強盗致傷についても共同正犯の責任を負うとした原判断は正当である。
よって、刑訴法414条、386条1項3号、181条1項ただし書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 那須弘平 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官 田原睦夫 裁判官 近藤崇晴)

++解説
[解 説]
1 本件は,共犯関係の解消の成否が争われた事案であり,その職権判示に係る事案の概要は,被告人が,共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀したところ,共犯者の一部が家人の在宅する住居に侵入した後,見張り役の共犯者が既に住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい,先に帰る」などと一方的に伝えただけで,待機していた場所から見張り役らと共に離脱し,残された共犯者らがそのまま強盗に及んだというものである。
2 第1審判決は,「被告人が犯行をやめることについて,共犯者らが了承した事実はないし,共犯者らが犯行を実行するのを防止する措置を講じてもいない」として,共犯関係の解消を否定し,被告人からの控訴を受けた原判決も第1審判決の判断を是認したため,被告人が更に上告に及んだ。
弁護人は,上告趣意で,当初の共謀と被告人の離脱前までの加担行為は,後の強盗行為に何ら物理的ないし心理的因果的影響力を有していないとして,被告人の離脱により共犯関係が解消したと認めるべきである旨主張した。
本決定は,所論は適法な上告理由に当たらず,不適法であるとした上で,職権で,被告人は,共犯者数名と住居に侵入して強盗に及ぶことを共謀したところ,共犯者の一部が家人の在宅する住居に侵入した後,見張り役の共犯者が既に住居内に侵入していた共犯者に電話で「犯行をやめた方がよい,先に帰る」などと一方的に伝えただけで,被告人において格別それ以後の犯行を防止する措置を講ずることなく待機していた場所から見張り役らと共に離脱したにすぎず,残された共犯者らがそのまま強盗に及んだものと認められ,そうすると,被告人が離脱したのは強盗行為に着手する前であり,たとえ被告人も見張り役の上記電話内容を認識した上で離脱し,残された共犯者らが被告人の離脱をその後知るに至ったという事情があったとしても,当初の共謀関係が解消したということはできず,その後の共犯者らの強盗も当初の共謀に基づいて行われたものと認めるのが相当である旨判示した。

3 共犯関係ないし共謀関係の解消の問題については,これまで「共犯の離脱」と呼ばれ,離脱の時期が実行の着手前か着手後かで類型を分けて論じられており,多数説は,共犯の処罰根拠は結果との因果性にあるという因果的共犯論を前提に,最初の共犯行為によって設定された結果への因果性がどのような場合に切断されるのかという問題であるとし,共犯行為による物理的因果性及び心理的因果性の両者を除去することにより,共犯関係が解消されるとする。なお,文献等では,「離脱」という用語について,実際にその場から離れるという事実行為としての意味で用いたり,共犯関係の解消という法的評価を加えた意味で用いたりする例があるが,本決定は,「離脱」を事実行為の意味でのみ用いており,法的評価を加えた場合には「離脱」ではなく「共謀関係の解消」(「共犯関係の解消」でもよいであろう。)とする。用語の意味を明確にするという観点からすると,本決定のような用法が適切であると思われる。

4 共犯関係(共謀関係)の解消につき,判例は,法益侵害の危険が質的に異なる実行の着手の前後で区別して判断していると整理されるのが通常であり,その概要は,実行着手前は比較的緩やかに,実行着手後はより厳格に処理されていると理解されている。すなわち,実行着手前に離脱した場合についての最高裁の判例はないものの,下級審の裁判例の一応の傾向としては,離脱者による離脱の意思の表明及び他の共犯者による離脱の了承により,共犯関係(共謀関係)の解消を認めてきており,最近では,例外的に,首謀者が離脱した事案については,離脱者において共謀関係がなかった状態に復元させなければ共謀関係は解消しないとする例もある。例えば,東京高判昭25.9.14高刑3巻3号407頁は,被告人が,窃盗の共謀をしたが犯行に行く途中で思いとどまり,単身引き返したという事案につき,着手前に実行を中止する旨を明示して他の共謀者もこれを了承し,同人らだけの共謀に基づき犯行を実行した場合には,前の共謀は全くなかったものと同一に評価すべきであるとして,窃盗罪につき無罪としたもので,大阪高判昭41.6.24高刑19巻4号375頁,判タ196号155頁は,被告人ほか2名が,共犯者Aと共に,B女を強姦する共謀を遂げ,B女を旅館に連れ込んだが,被告人ほか2名は旅館主から入室を拒絶されたため,強姦着手前に犯行を断念する意思を表明してAの了承を得た上,退去した事案につき,共謀関係は消滅し,その後のAによるB女に対する強姦行為について,被告人ほか2名は共同正犯の責任を負わないとしたものである。また,福岡高判昭28.1. 12高刑6巻1号1頁は,強盗の共謀をした被告人が実行着手前に明示的に離脱の表意もせずに立ち去ったという実行着手前の離脱の事案で,離脱の事実を認識した他の共謀者らのみで犯行を遂行したときには,黙示の表意を受領したと認められるとして,他の共犯者らがその後行った強盗について責任を負わないとし,強盗予備の限度で有罪としたもので,「黙示の表意を受領した」とあり,「離脱の了承」という構成をとることなく共謀関係の解消を認めたものである。これに対し,松江地判昭51.11.2刑月8巻11=12号495頁,判時845号127頁は,暴力団の若頭である被告人が,配下組員らと殺人の共謀をしたが,殺害の実行着手前に実行者とされた組員が躊躇して引き返してきたことから,いったんは上記組員を連れて帰るように指示した後,配下組員らだけで協議して殺害の実行に及んだという事案につき,組員を統制支配する立場にあり,殺人の共謀でも中心となっていた被告人としては,殺害計画のとりやめを周知徹底させ,共謀以前の状態に回復させることが必要であり,上記指示だけをした首謀者である被告人について共謀関係の解消を否定した。
実行の着手後に離脱した場合については,最一小決平1.6.26刑集43巻6号567頁,判タ699号184頁があり,これは,被告人が,共犯者と共謀の上,こもごも被害者に暴行を加えた後,被告人が「おれ帰る」と言っただけで共犯者と被害者を残したまま現場を立ち去ったところ,ほどなくして共犯者が被害者の言動に再び激昂してさらに暴行を加え,被害者が死亡した事案について,「被告人が帰った時点では,共犯者においてなお制裁を加えるおそれが消滅していなかったのに,被告人において格別これを防止する措置を講ずることなく,成り行きに任せて現場を去ったに過ぎないのであるから,共犯者との間の当初の共犯関係が右の時点で解消したということはできず,その後の共犯者の暴行も右の共謀に基づくものと認めるのが相当である。」としたものである。

5 これを本件に当てはめて検討すると,本件で問題となる離脱は,強盗については実行着手前であるが,住居侵入・強盗という共謀した犯行全体でみれば,その一部について着手した後となっており,このような事案について判断した裁判例は見当たらない。
前記のとおり,判例の一応の傾向としては,実行着手前の離脱については,離脱者による離脱の意思の表明及び他の共犯者による離脱の了承により,共犯関係(共謀関係)の解消を比較的緩やかに認め,着手後は比較的厳格に考えられているようであるが,ここでいう「離脱意思の表明と了承」という要件は,絶対的なものではなく,因果性の遮断を認定するための一つの指針に過ぎないのであるから,実質的に見れば,共犯行為による物理的因果性及び心理的因果性の両者を遮断したかどうかについてを具体的に判断するという枠組みが重要であって,この枠組み自体は,実行着手前と実行着手後とで異なるものではないはずである。
そこで,本件について見ると,共謀による心理的影響がさほど強くない平均的な共謀者の離脱が問題となっているケースであり,被告人自身による行為ではないが,家人が在宅する民家での住居侵入・強盗の事案であって,共謀に基づき共犯者らが現実に被害者方に侵入した以上,それによりその後の強盗に至るおそれが既に生じているといえ,屋内にいた共犯者2名以外にも,現場付近には未だ3名の共犯者が残っており,それらの者だけでもその後の強盗が実行可能な状態であったといえる。そうすると,平成元年の応用事例ともいえ,実質的には実行着手後に近い類型であるといえる。すなわち,当初の共謀に基づく住居侵入の実行行為による物理的・心理的な効果はなお残存しており,これを利用してなお犯行が継続され,強盗に至る危険性が十分あったにもかかわらず,既に住居侵入の実行行為に及んでいる共犯者に格別それ以後の犯行を止めさせる措置を講ずることなく,現場を立ち去って離脱したというだけであって,当初の共謀関係が解消したということはできないものと思われる。しかも,本件においては,屋内にいた共犯者2名がいったんは被害者方を出たものの,残された共犯者らと一緒に再び被害者方に侵入し,それまでの状態を利用し,当初の共謀どおりの強盗等の犯行に及んだというのであり,共謀した内容をいったん中止したとか,新たな共謀を形成したという事情も認められない
そうすると,いったん住居侵入・強盗の共謀が成立し,その一部である住居侵入に着手し,それに基づく物理的・心理的効果が残存し,それがゆえに残余者の心理に対して影響をなお与え続けているといえ,物理的因果性のみならず心理的因果性もなお切断されておらず,外形的には意思の連絡が途切れたかのようにも見えるからといって,単に幇助犯や教唆犯の責任しか負わないということにはならないものと解するのが相当と思われる。
6 本決定は,事例判断ではあるが,共犯関係ないし共謀関係の解消について,単に実行の着手前後で区別するのではなく,事案に応じた具体的な事情を考慮して判断すべきであるとの考え方を示したものといえ,住居侵入・強盗の共謀をした者が住居侵入後強盗着手前に離脱した事案についての先例はなく,実務において参照価値が高いものと思われる。

+判例(名古屋高判H14.8.29)
理由
本件控訴の趣意は、弁護人田邊正紀作成の控訴趣意書に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 控訴趣意中事実誤認の主張について
論旨は、要するに、被告人は、原判示檜原公園駐車場において主犯格のBらとの共謀に基づき、Bと一緒に被害者に対して暴行(第一の暴行)を加えた後、Bの暴行を制止して被害者と話をし始めたところBから殴打されて気を失い、Bらと行動をともにすることができない状態になってしまったから、共犯関係からの離脱(あるいは共犯関係の解消)を認めるべき場合であるのに、これを認めず、その後Bが行った衣浦港岸壁における暴行(第二の暴行)の結果生じた傷害についてまで刑事責任を負わせた原判決は事実を誤認したものであって、これが判決に影響することは明らかである、というのである。
そこで、原審記録を調査して検討するに、原判決挙示の関係証拠を総合すれば、本件の事実関係は原判決が(補足説明)(2)の<1>ないし<9>及び(3)において認定説示するとおりと認められる。これを要するに、被告人は共犯者Bとともに上記駐車場で被害者に暴行(第一の暴行)を加えたところ、これを見ていたCがやりすぎではないかと思って制止したことをきっかけとして同所における暴行が中止され、被告人が被害者をベンチに連れて行って「大丈夫か」などと問いかけたのに対し、勝手なことをしていると考えて腹を立てたBが、被告人に文句を言って口論となり、いきなり被告人に殴りつけて失神させた上、被告人(及びD子)をその場に放置したまま他の共犯者と一緒に被害者ともども上記岸壁に赴いて同所で第二の暴行に及び、さらに逮捕監禁を実行したものであり、被害者の負傷は(1)通院加療約二週間を要する上顎左右中切歯亜脱臼、(2)通院加療約一週間を要する顔面挫傷、左頭頂部切傷、(3)安静加療約一週間を要した頸部、左大腿挫傷、右大腿挫傷挫創、(4)安静加療約一週間を要した両手関節、両足関節挫傷挫創であるが、(1)は第一の暴行によって生じ、(4)は第二の暴行後の逮捕監禁行為によって生じたものと認められるが、(2)及び(3)は第一、第二のいずれの暴行によって生じたか両者あいまって生じたかが明らかでないものである。このような事実関係を前提にすると、Bを中心とし被告人を含めて形成された共犯関係は、被告人に対する暴行とその結果失神した被告人の放置というB自身の行動によって一方的に解消され、その後の第二の暴行は被告人の意思・関与を排除してB、Cらのみによってなされたものと解するのが相当である。したがって、原判決が、被告人の失神という事態が生じた後も、被告人とBらとの間には心理的、物理的な相互利用補充関係が継続、残存しているなどとし、当初の共犯関係が解消されたり、共犯関係からの離脱があったと解することはできないとした上、(2)及び(3)の傷害についても被告人の共同正犯者としての刑責を肯定したのは、事実を誤認したものというほかない(なお、原判決が(4)の傷害についてまで被告人の刑責を肯定したものでないことは、その補足説明(3)及び(4)に照らし明らかである。)。しかしながら、叙上の事実関係によれば、被告人は第一の暴行の結果である(1)の傷害について共同正犯者として刑責を負うだけでなく、(2)及び(3)の各傷害についても同時傷害の規定によって刑責を負うべきものであって、被害者の被った最も重い傷が(1)の傷害である本件においては、(2)及び(3)の各傷害について訴因変更の手続をとることなく上記規定による刑責を認定することが許されると解されるから、結局、原判決が(2)及び(3)の各傷害についての被告人の責任を肯認したことに誤りはなく、原判決はその根拠ないしは理由について誤りを犯したにすぎないことになる。原判決の誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかなものとはいえず、論旨は理由がない。
二 控訴趣意中量刑不当の主張について
論旨は、要するに、原判決の量刑が重すぎて不当である、というものである。
そこで、原審記録を調査し、当審における事実取調べの結果も加えて検討するに、本件は、被告人が共犯者らとともに被害者に焼き入れと称して集団で暴行を加えて加療約二週間の傷害を負わせた事案であるが、知人の女性らの虚言を盲信して短絡的に犯行に及んだというその経緯や動機に特に酌むべき点がない上、態様も無抵抗の被害者を車から引きずり出して一方的かつ執拗に暴行を加えるなど悪質であって、被害者の受けた肉体的・精神的苦痛が大きいこと、平成一一年八月に恐喝未遂罪により懲役一年六月、五年間刑執行猶予に処せられたにもかかわらず、その後二年余りで本件に及んでいること、事件当時の生活状況も芳しいものではなかったことなどに照らせば、被告人の刑責は重いというべきである。
しかしながら、さらに子細に検討すると、被告人はBに誘われて犯行に加担したものであり、直接の関与は第一の暴行のみであって、被告人の刑責とBのそれとの間には相当の差異があること、負傷の程度が約二週間にとどまること、被害者にも被告人らの怒りを誘発した側面があること、被害者との間で共犯者を含めて示談が成立し、これに基づいて六〇万円が支払われていて、被害者が宥恕していること、原審公判廷において事実関係を認めて反省の態度を示していること、父親が更生に協力する旨誓っていること等被告人のために斟酌すべき事情も多々存在する。これら諸般の事情を総合して考慮すると、被告人に対する実刑は免れないものの、懲役一年二月に処した原判決の量刑は、重きにすぎるといわざるを得ない。論旨は理由がある。
三 よって、刑訴法三九七条一項、三八一条により原判決を破棄し、同法四〇〇条ただし書に従い当裁判所において更に判決する。
原判決が認定した犯罪事実(ただし、その一二行目の「暴行を加え、」の次に「その結果、同人に通院加療約二週間を要する上顎左右中切歯亜脱臼の傷害を負わせ、」を加え、さらにその一五行目の「同人に」以下を「通院または安静加療約一週間を要する顔面挫傷、左頭頂部切傷、頸部、左大腿挫傷、右大腿挫傷挫創の傷害を負わせたが、その傷害が上記駐車場における被告人とBの暴行により生じたものか、上記岸壁におけるBの暴行により生じたものか、これらがあいまって生じたものか知ることができない。」と改める。)に法令を適用すると、被告人の所為は包括して刑法六〇条、二〇四条に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期の範囲内で被告人を懲役一〇月に処することとし、刑法二一条を適用して原審における未決勾留日数中一一〇日をその刑に算入し、なお原審及び当審の訴訟費用については刑訴法一八一条一項ただし書によりこれらを被告人に負担させないこととして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 堀内信明 裁判官 久保豊 手﨑政人)

エ 設例の検討

(5)Wに対する強盗
ア 問題の所在
+(強盗致死傷)
第二百四十条  強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

イ 強盗の機会
・人の傷害の結果が強盗の機会に生じればよい。
+判例(S24.5.28)
理由
弁護人若林清の上告趣意第一点について。
しかし原判決はその摘示事実と之に照応する挙示の証拠とによつて、被告人を所論強盗罪の共同正犯に問擬したことは明白であるから、原判決が当該事実に対する擬律において刑法第二三六条と同時に同第六〇条を適用したことは明かである。たゞ後者を併せて掲記することを遺脱したに過ぎない。このように判決書に刑法総則の法条を遺脱しても判文全体よりその遺脱が明白な場合は所論のように擬律錯誤の違法ありというべきでない。論旨は理由がない。
同第二点について。
弁護人は原審第六回公判期日においてAとB二人の証人申請について「裁判所において再度御召喚方御取計い願いましたが何れも送達不能につきこの外には別に証拠申請はありません」と述べているところより察するに、右は少くとも弁護人においてこれら証人の申請を固執する趣旨でないことを伺うに難くはない。裁判所は審理の進行に伴い心証を形成するに機が熟して、これら証人の事案に対する関係において必しもその重要性を認めざるに至り、旁々弁護人の前記陳述の趣旨にも鑑み原審公判調書にも記載しているように原審は「送達不能の証人尋問は之を為さず」として曩にした証人喚問の決定を取消したものと解せられる。果して然らば証拠調の範囲、限度を定めるのは事実審の専権に属するところであるから、前記の決定をしたからといつて直ちに憲法第三七条第二項の規定に違反するということはできない。論旨は理由がない。
同第三点について。
刑法第二四〇条後段の強盗殺人罪は強盗犯人が強盗をなす機会において他人を殺害することによりて成立する罪である。原判決の摘示した事実によれば、家人が騒ぎ立てたため他の共犯者が逃走したので被告人も逃走しようとしたところ同家表入口附近で被告人に追跡して来た被害者両名の下腹部を日本刀で突刺し死に至らしめたというのである。即ち殺害の場所は同家表入口附近といつて屋内か屋外か判文上明でないが、強盗行為が終了して別の機会に被害者両名を殺害したものではなく、本件強盗の機会に殺害したことは明である。然らば原判決が刑法第二四〇条に問擬したのは正当であつて所論のような違法はない。論旨は理由がない。
同第四点について。
所論日本刀及鞘が被告人Cの父Dの所有物であつたことは記録上明であるが、同時に右Dが生駒警察署に提出した始末書には「御署において然るべく処置して頂いて結構で御座います」という記載があつて右Dは所論日本刀の返還請求権を拠棄したものと認められる。然らば原判決が犯人以外のものゝ所有に属しないとして没収したのは正当であつて所論のような違法はない。論旨は理由がない。
被告人左達Cの上告趣意について。
論旨は要するに原審の専権に属する証拠の取捨、事実の認定、証拠調の限度を攻撃するの外寛大な処置を願うというに帰するから、いずれも上告適法の理由とならない。
よつて、刑訴施行法第二条、旧刑訴法第四四六条に則り主文のとおり判決する。
右は裁判官全員の一致した意見である
検察官 岡本梅次郎関与。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官藤田八郎は出張中につき署名捺印することができない。裁判長裁判官 霜山精一)

ウ 設例の検討

(6)罪数
昏睡強盗未遂と強盗は手段が異なるものの、1個の法益に向けられた行為といえるから、包括して強盗罪が成立する。
強盗罪と強盗致傷は保護法益が少し違う・・・。併合罪でいくか。

3.Bの罪責
(1)Vに対する昏睡強盗未遂
(2)Vに対する強盗
ア 問題の所在
イ 共犯の錯誤
因果的共犯論
→共同正犯は、共犯者の犯行及びその結果に対して因果性を与えたことを理由に処罰
因果性を与えていても、自らが認識認容していた限度に限られる!

昏睡強盗と強盗の間で重なっている部分については認識認容していたことになる。

・手段についての異なる認識
+判例(東京地判H7.10,9)

ウ 小括

(3)Vに対する強姦

(4)Wに対する強姦致傷
ア 問題の所在
イ 共謀関係からの離脱の有無
ウ 致傷結果に対する主観的要件
結果的加重犯→基本犯について認識認容があれば、結果的加重犯の重い結果については、故意過失がなくても、結果的加重犯の認識認容にかけるところはない。

(5)結論

4.Cの罪責
(1)Vから100万円を奪取した点
ア 問題の所在
イ 承継的共同正犯
(ア)問題の所在
(イ)学説の状況
(ウ)判例

+判例(H24.11.6)
理 由
 弁護人長谷川紘一の上告趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み,傷害罪の共同正犯の成立範囲について,職権で判断する。
 1 原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,本件の事実関係は,次のとおりである。
 (1) A及びB(以下「Aら」という。)は,平成22年5月26日午前3時頃,愛媛県伊予市内の携帯電話販売店に隣接する駐車場又はその付近において,同店に誘い出したC及びD(以下「Cら」という。)に対し,暴行を加えた。その態様は,Dに対し,複数回手拳で顔面を殴打し,顔面や腹部を膝蹴りし,足をのぼり旗の支柱で殴打し,背中をドライバーで突くなどし,Cに対し,右手の親指辺りを石で殴打したほか,複数回手拳で殴り,足で蹴り,背中をドライバーで突くなどするというものであった。
 (2) Aらは,Dを車のトランクに押し込み,Cも車に乗せ,松山市内の別の駐車場(以下「本件現場」という。)に向かった。その際,Bは,被告人がかねてよりCを捜していたのを知っていたことから,同日午前3時50分頃,被告人に対し,これからCを連れて本件現場に行く旨を伝えた。
 (3) Aらは,本件現場に到着後,Cらに対し,更に暴行を加えた。その態様は,Dに対し,ドライバーの柄で頭を殴打し,金属製はしごや角材を上半身に向かって投げつけたほか,複数回手拳で殴ったり足で蹴ったりし,Cに対し,金属製はしごを投げつけたほか,複数回手拳で殴ったり足で蹴ったりするというものであった。これらの一連の暴行により,Cらは,被告人の本件現場到着前から流血し,負傷していた。
 (4) 同日午前4時過ぎ頃,被告人は,本件現場に到着し,CらがAらから暴行を受けて逃走や抵抗が困難であることを認識しつつAらと共謀の上,Cらに対し,暴行を加えた。その態様は,Dに対し,被告人が,角材で背中,腹,足などを殴打し,頭や腹を足で蹴り,金属製はしごを何度も投げつけるなどしたほか,Aらが足で蹴ったり,Bが金属製はしごで叩いたりし,Cに対し,被告人が,金属製はしごや角材や手拳で頭,肩,背中などを多数回殴打し,Aに押さえさせたCの足を金属製はしごで殴打するなどしたほか,Aが角材で肩を叩くなどするというものであった。被告人らの暴行は同日午前5時頃まで続いたが,共謀加担後に加えられた被告人の暴行の方がそれ以前のAらの暴行よりも激しいものであった。
 (5) 被告人の共謀加担前後にわたる一連の前記暴行の結果,Dは,約3週間の安静加療を要する見込みの頭部外傷擦過打撲,顔面両耳鼻部打撲擦過,両上肢・背部右肋骨・右肩甲部打撲擦過,両膝両下腿右足打撲擦過,頚椎捻挫,腰椎捻挫の傷害を負い,Cは,約6週間の安静加療を要する見込みの右母指基節骨骨折,全身打撲,頭部切挫創,両膝挫創の傷害を負った。
 2 原判決は,以上の事実関係を前提に,被告人は,Aらの行為及びこれによって生じた結果を認識,認容し,さらに,これを制裁目的による暴行という自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用する意思の下に,一罪関係にある傷害に途中から共謀加担し,上記行為等を現にそのような制裁の手段として利用したものであると認定した。その上で,原判決は,被告人は,被告人の共謀加担前のAらの暴行による傷害を含めた全体について,承継的共同正犯として責任を負うとの判断を示した。
 3 所論は,被告人の共謀加担前のAらの暴行による傷害を含めて傷害罪の共同正犯の成立を認めた原判決には責任主義に反する違法があるという。
 そこで検討すると,前記1の事実関係によれば,被告人は,Aらが共謀してCらに暴行を加えて傷害を負わせた後に,Aらに共謀加担した上,金属製はしごや角材を用いて,Dの背中や足,Cの頭,肩,背中や足を殴打し,Dの頭を蹴るなど更に強度の暴行を加えており,少なくとも,共謀加担後に暴行を加えた上記部位についてはCらの傷害(したがって,第1審判決が認定した傷害のうちDの顔面両耳鼻部打撲擦過とCの右母指基節骨骨折は除かれる。以下同じ。)を相当程度重篤化させたものと認められる。この場合,被告人は,共謀加担前にAらが既に生じさせていた傷害結果については,被告人の共謀及びそれに基づく行為がこれと因果関係を有することはないから,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によってCらの傷害の発生に寄与したことについてのみ,傷害罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。原判決の上記2の認定は,被告人において,CらがAらの暴行を受けて負傷し,逃亡や抵抗が困難になっている状態を利用して更に暴行に及んだ趣旨をいうものと解されるが,そのような事実があったとしても,それは,被告人が共謀加担後に更に暴行を行った動機ないし契機にすぎず,共謀加担前の傷害結果について刑事責任を問い得る理由とはいえないものであって,傷害罪の共同正犯の成立範囲に関する上記判断を左右するものではない。そうすると,被告人の共謀加担前にAらが既に生じさせていた傷害結果を含めて被告人に傷害罪の共同正犯の成立を認めた原判決には,傷害罪の共同正犯の成立範囲に関する刑法60条,204条の解釈適用を誤った法令違反があるものといわざるを得ない。
 もっとも,原判決の上記法令違反は,一罪における共同正犯の成立範囲に関するものにとどまり,罪数や処断刑の範囲に影響を及ぼすものではない。さらに,上記のとおり,共謀加担後の被告人の暴行は,Cらの傷害を相当程度重篤化させたものであったことや原判決の判示するその余の量刑事情にも照らすと,本件量刑はなお不当とはいえず,本件については,いまだ刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
 よって,同法414条,386条1項3号,181条1項ただし書,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

+補足意見
なお,裁判官千葉勝美の補足意見がある。
私は,法廷意見に補足して,次の点について私見を述べておきたい。
 1 法廷意見の述べるとおり,被告人は,共謀加担前に他の共犯者らによって既に被害者らに生じさせていた傷害結果については,被告人の共謀及びそれに基づく行為がこれと因果関係を有することはないから,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の暴行によって傷害の発生に寄与したこと(共謀加担後の傷害)についてのみ責任を負うべきであるが,その場合,共謀加担後の傷害の認定・特定をどのようにすべきかが問題となる。
 一般的には,共謀加担前後の一連の暴行により生じた傷害の中から,後行者の共謀加担後の暴行によって傷害の発生に寄与したことのみを取り出して検察官に主張立証させてその内容を特定させることになるが,実際にはそれが具体的に特定できない場合も容易に想定されよう。その場合の処理としては,安易に暴行罪の限度で犯罪の成立を認めるのではなく,また,逆に,この点の立証の困難性への便宜的な対処として,因果関係を超えて共謀加担前の傷害結果まで含めた傷害罪についての承継的共同正犯の成立を認めるようなことをすべきでもない。
 この場合,実務的には,次のような処理を検討すべきであろう。傷害罪の傷害結果については,暴行行為の態様,傷害の発生部位,傷病名,加療期間等によって特定されることが多いが,上記のように,これらの一部が必ずしも証拠上明らかにならないこともある。例えば,共謀加担後の傷害についての加療期間は,それだけ切り離して認定し特定することは困難なことが多い。この点については,事案にもよるが,証拠上認定できる限度で,適宜な方法で主張立証がされ,罪となるべき事実に判示されれば,多くの場合特定は足り,訴因や罪となるべき事実についての特定に欠けることはないというべきである。もちろん,加療期間は,量刑上重要な考慮要素であるが,他の項目の特定がある程度されていれば,「加療期間不明の傷害」として認定・判示した上で,全体としてみて被告人に有利な加療期間を想定して量刑を決めることは許されるはずである。本件を例にとれば,共謀加担後の被告人の暴行について,凶器使用の有無・態様,暴行の加えられた部位,暴行の回数・程度,傷病名等を認定した上で,被告人の共謀加担後の暴行により傷害を重篤化させた点については,「安静加療約3週間を要する背部右肋骨・右肩甲部打撲擦過等のうち,背部・右肩甲部に係る傷害を相当程度重篤化させる傷害を負わせた」という認定をすることになり,量刑判断に当たっては,凶器使用の有無・態様等の事実によって推認される共謀加担後の暴行により被害者の傷害を重篤化させた程度に応じた刑を量定することになろう。また,本件とは異なり,共謀加担後の傷害が重篤化したものとまでいえない場合(例えば,傷害の程度が小さく,安静加療約3週間以内に止まると認定される場合等)には,まず,共謀加担後の被告人の暴行により傷害の発生に寄与した点を証拠により認定した上で,「安静加療約3週間を要する共謀加担前後の傷害全体のうちの一部(可能な限りその程度を判示する。)の傷害を負わせた」という認定をするしかなく,これで足りるとすべきである。
仮に,共謀加担後の暴行により傷害の発生に寄与したか不明な場合(共謀加担前の暴行による傷害とは別個の傷害が発生したとは認定できない場合)には,傷害罪ではなく,暴行罪の限度での共同正犯の成立に止めることになるのは当然である。
 2 なお,このように考えると,いわゆる承継的共同正犯において後行者が共同正犯としての責任を負うかどうかについては,強盗,恐喝,詐欺等の罪責を負わせる場合には,共謀加担前の先行者の行為の効果を利用することによって犯罪の結果について因果関係を持ち,犯罪が成立する場合があり得るので,承継的共同正犯の成立を認め得るであろうが,少なくとも傷害罪については,このような因果関係は認め難いので(法廷意見が指摘するように,先行者による暴行・傷害が,単に,後行者の暴行の動機や契機になることがあるに過ぎない。),承継的共同正犯の成立を認め得る場合は,容易には想定し難いところである。
(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官小貫芳信)

(エ)設例の検討
・因果的共犯論をとると、承継的共同正犯を説明しにくい点に注意。

(2)Vに暴行を加え、姦淫した点
+(強盗強姦及び同致死)
第二百四十一条  強盗が女子を強姦したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。よって女子を死亡させたときは、死刑又は無期懲役に処する。

(3)Vの傷害についての評価
強盗強姦罪と強盗致傷罪(両罪は観念的競合)

(4)Aに暴行を加え、気絶させた点
気絶と傷害
+判例(S27.6.6)
理由
弁護人堂野達也の上告趣意第一点について
しかし、傷害罪は他人の身体の生理的機能を毀損するものである以上、その手段が何であるかを問はないのであり、本件のごとく暴行によらずに病毒を他人に感染させる場合にも成立するのである。従つて、これと見解を異にする論旨は採用できない(所論引用の判例は暴行を手段とした傷害の案件に関するものであつて、本件には適切でない。)
同第二点について
性病を感染させる懸念あることを認識して本件所為に及び他人に病毒を感染させた以上、当然傷害罪は成立するのであるから論旨は理由なき見解というべく、憲法違反の問題も成立する余地がない。
よつて刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

+判例(H24.1.30)
理 由
 弁護人門馬博ほかの上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み,職権で判断する。
 原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,被告人は,大学病院内において,フルニトラゼパムを含有する睡眠薬の粉末を混入した洋菓子を同病院の休日当直医として勤務していた被害者に提供し,事情を知らない被害者に食させて,被害者に約6時間にわたる意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせ,6日後に,同病院の研究室において,医学研究中であった被害者が机上に置いていた飲みかけの缶入り飲料に上記同様の睡眠薬の粉末及び麻酔薬を混入し,事情を知らない被害者に飲ませて,被害者に約2時間にわたる意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせたものである。
 所論は,昏酔強盗や女子の心神を喪失させることを手段とする準強姦において刑法239条や刑法178条2項が予定する程度の昏酔を生じさせたにとどまる場合には強盗致傷罪や強姦致傷罪の成立を認めるべきでないから,その程度の昏酔は刑法204条の傷害にも当たらないと解すべきであり,本件の各結果は傷害に当たらない旨主張する。
しかしながら,上記事実関係によれば,被告人は,病院で勤務中ないし研究中であった被害者に対し,睡眠薬等を摂取させたことによって,約6時間又は約2時間にわたり意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせ,もって,被害者の健康状態を不良に変更し,その生活機能の障害を惹起したものであるから,いずれの事件についても傷害罪が成立すると解するのが相当である。所論指摘の昏酔強盗罪等と強盗致傷罪等との関係についての解釈が傷害罪の成否が問題となっている本件の帰すうに影響を及ぼすものではなく,所論のような理由により本件について傷害罪の成立が否定されることはないというべきである。
 したがって,本件につき傷害罪の成立を認めた第1審判決を維持した原判断は正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 田原睦夫 裁判官 那須弘平 裁判官 岡部喜代子 裁判官大谷剛彦 裁判官 寺田逸郎)

(5)Wに暴行を加え、傷害を負わせた点

(6)罪責

・被害者の数だけ強盗致傷罪が成立し、併合罪となる。
+判例(S26.8.9)
理  由
被告人古川和夫の弁護人古川豊吉の上告趣意第一点について。
所論は、第一審の訴訟手続の違法を主張するに過ぎないから、明らかに刑訴四〇五条に定める上告理由に当らない。そして、被告人が在廷する公判廷における口頭の罰条追加の場合には裁判所が特に被告人に対しこれが通知の手続を執る必要のないことは多言を要しないし、また、犯罪事実認定の資料となるべき医師の診断書は刑訴三二一条、三二六条等の要件あるを以て足り(本件では同三二六条の同意があること記録上明白である。)、同二七八条刑訴規則一八三条所定の事実を記載するの必要ないこと勿論であるから、刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。
同第二点について。
所論は、刑の量定不当の主張であるから、刑訴四〇五条所定の事由に当らないし、また、記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
被告人伊藤恒廷の上告趣意について。
所論一点は、第一審判決は相被告人古川和夫といずれが主犯であるかその他犯罪の動機等につき重大な事実の誤認があるというのであり、同二点は、被害者に暴行及び傷害を加えたことがないのに虚偽の診断書並びに証言でこれを認定したのは法令の違反があるというのであり、同三点は第一審判決当時満一八歳以上であったが判決後昭和二六年一月一日から新少年法が施行になり刑の変更があったというのであるから、いずれも刑訴四〇五条に定める上告理由に当らない。また、記録を精査しても(ことに新少年法が施行されても被告人は現に満二〇歳以上である)同四一一条を適用すべきものとは認められない。
被告人伊藤恒廷の弁護人薬師寺志光の上告趣意について。
所論は、明らかに刑訴四〇五条に当らない。また、犯罪の箇数は所論のごとく犯人の内心に生ずる犯意の度数のみによって決すべきではなく、そして、第一審判決は、のぶえ並に康輔の両名に対し夫々判示の暴行を加え、因って両名に対し夫々判示傷害を加えたものと認定したのであるから、二箇の強盗傷人の併合罪として処断したからといって法の適用を誤ったとはいえない。その他記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三八六条一項三号に従い各上告を棄却し被告人伊藤恒廷に対する未決勾留日数の算入につき刑法二一条に則り主文のとおり決定する。
この決定は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)


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