債権総論 5-1 債権の消滅 序説


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

債権の消滅 序説

1.債権消滅の意義
債権
=債権者が債務者に対して一定の行為(給付)を請求できる権利

給付の内容の実現
実現不能等
により消滅する

2.債権の消滅原因
(1)消滅原因の種類
①法律行為
契約:代物弁済・弁済供託・更改
単独行為:相殺・免除

②準法律行為
弁済

③事件
混同

他に、契約の場合は、取消し・解除・解除条件の成就・終期の到来

(2)消滅原因の分類
・内容の実現による消滅

・内容の実現不能による消滅

・内容の実現不必要による消滅


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

トマ・ピケティ 21世紀の資本 8 二つの世界

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

二つの世界

・世界の格差の歴史的展開

1.単純な事例~20世紀フランスにおける格差の縮小~
不労所得生活者の減少と高額資本所得の崩壊
格差縮小の一般性ある構造的なプロセスは長期的には作用していない

2.格差の歴史~混沌とした政治的な歴史~
富の分配の歴史は国の歴史を解釈するための手段となる

3.不労所得生活者から経営者社会へ
資本所得が重要になるのはトップ千分位

トップ百分位においては労働所得で生活

不労所得生活者の没落し、経営者よりも下に

4.トップ10分位の各種世界
トップ10分位の中で、労働所得のシェアは高い層に行くほど減少し、資本所得のシェアは急増する

5.所得税申告の限界
キャピタルゲインの存在
申告所得を生み出した資本をどうやって手に入れたのかがわからない

6.両大戦の混沌

7.一時的影響の衝突

8.1980年以降のフランスにおける格差の拡大
相続財産の重要性復活
トップ層の報酬の高額化

9.もっと複雑な事例~米国における格差の変容~

10.1980年以降の米国の格差の爆発的拡大
2008年の金融危機があっても格差の構造的拡大は止まっていない

11.格差の拡大が金融危機を引き起こしたのか?
経済成長分につき、社会集団間で極端な格差がある。

12.超高額給与の台頭

13.トップ百分位内の共存


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

債権総論 4-2 責任財産の保全 詐害行為取消権

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

詐害行為取消権

1.詐害行為取消権の意義と性質
(1)意義
債権者が、債務者の責任財産を保全するために、債権者を害することを知りながら行った債務者の法律行為の取消しを裁判所に請求できる権利

+(詐害行為取消権)
第四百二十四条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

(2)法的性質
ⅰ)形成権説
意思表示の瑕疵に基づく取消しと同様に、詐害行為を債権者の一方的意思表示により取消し、その効力を遡及的に無効にする形成権であるとする。

ⅱ)請求権説
詐害行為によって責任財産から逸出した財産の返還を請求する債権的権利である。
→給付訴訟である

ⅲ)折衷説(通説)

・内容
詐害行為取消権は詐害行為を取消し、かつ、これを根拠として逸出した財産の取戻しを請求する権利

被告は受益者または転得者(×債務者)

取消しの総体的無効=債権者と受益者間でのみ無効となる
=債務者・受益者間では依然として有効

請求の内容として
債権者は、詐害行為の取消しと財産の返還または金銭賠償を請求してもよいし
詐害行為の取消しだけを請求してもよい

返還された財産については、
債務者に対する債務名義に基づいて強制執行をかけることになる

ⅳ)責任説
債務者の責任財産から逸出した財産に対する強制執行を可能にする準備段階であり、「責任無効」(逸出による責任財産でなくなったという効果のみを無効にする=当該財産は受益者に帰属したままで債務者の責任財産を構成)という効果を生じる形成権である

責任無効という効果を発生させる形成訴訟+責任訴訟(強制執行忍容訴訟)

2.詐害行為取消権の要件
①詐害行為前に被保全債権が発生していること
②債務者が債権者を害することを知って法律行為をしたこと
③受益者または転得者の悪意が存在すること

(1)詐害行為前の被保全債権の発生
ⅰ)被保全債権の種類
・金銭債権

・金銭債権以外
金銭債権以外の債権も究極には金銭債権に変わり、債務者の責任財産により担保されなければならないから、債務者が目的物を処分することによって無資力となった場合には、債権者は債務者の処分行為を詐害行為として取り消すことができる

+判例(S36.7.19)
理由
 上告代理人今野佐内の上告理由第一点(一)について。
 民法四二四条の債権者取消権は、総債権者の共同担保の保全を目的とする制度であるが、特定物引渡請求権(以下特定物債権と略称する)といえどもその目的物を債務者が処分することにより無資力となつた場合には、該特定物債権者は右処分行為を詐害行為として取り消すことができるものと解するを相当とする。けだし、かかる債権も、窮極において損害賠償債権に変じうるのであるから、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様だからである。大審院大正七年一〇月二六日民事連合部判決(民録二四輯二〇三六頁)が、詐害行為の取消権を有する債権者は、金銭の給付を目的とする債権を有するものでなければならないとした見解は、当裁判所の採用しないところである。本件において、原判決の確定したところによれば、被上告人は昭和二五年九月三〇日訴外Aとの間に本件家屋を目的とする売買契約を締結し、同人に対しその引渡請求権を有していたところ、Aは、他に見るべき資産もないのに、同二七年六月頃右家屋に債権額八万円の抵当権を有する訴外Bに対し、その債権に対する代物弁済として、一〇万円以上の価格を有する右家屋を提供し、無資力となつたというのである。右事実に徴すれば、本件家屋の引渡請求権を有する被上告人は、右代物弁済契約を詐害行為として取り消しうるものというべく、したがつて、原判決が「債務者がその特定物をおいて他に資産を有しないにかかわらず、これを処分したような場合には、この引渡請求権者において同条の取消権を有するものと解すべきである」とした部分は結局正当に帰する
 なお、論旨は、原判決のような判断が許されるときは、被上告人は登記を了しないのに、既に登記した上告人に対し所有権の移転を対抗し得ると同一の結果となり、民法一七七条の法意に反すると主張するが、債権者取消権は、総債権者の利益のため債務者の一般財産の保全を目的とするものであつて、しかも債務者の無資力という法律事実を要件とするものであるから、所論一七七条の場合と法律効果を異にすることは当然である。所論は採用できない。
 同第一点(二)、(三)について。
 債務者が目的物をその価格以下の債務の代物弁済として提供し、その結果債権者の共同担保に不足を生ぜしめた場合は、もとより詐害行為を構成するものというべきであるが、債権者取消権は債権者の共同担保を保全するため、債務者の一般財産減少行為を取り消し、これを返還させることを目的とするものであるから、右の取消は債務者の詐害行為により減少された財産の範囲にとどまるべきものと解すべきである。したがつて、前記事実関係によれば本件においてもその取消は、前記家屋の価格から前記抵当債権額を控除した残額の部分に限つて許されるものと解するを相当とする。そして、詐害行為の一部取消の場合において、その目的物が本件の如く一棟の家屋の代物弁済であつて不可分のものと認められる場合にあつては、債権者は一部取消の限度において、その価格の賠償を請求するの外はないものといわなければならない。然るに、原審は本件家屋の価格および取消の範囲等につき十分な審理を遂げることなく、たやすく本件代物弁済契約の全部の取消を認め、上告人に対し右家屋の所有権移転登記手続を命じたのは、民法四二四条の解釈を誤つた結果として審理不尽、理由不備の違法をあえてしたものであつて、所論は結局理由あるに帰し、原判決はこの点において破棄を免れない。よつて、本件を原審に差し戻すべく、民訴四〇七条に従い、裁判官下飯坂潤夫、同奥野健一、同山田作之助の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

・詐害行為がなされた時点では被保全債権は金銭債権である必要はない。
・直接自己に移転登記するように求めることはできない

ⅱ)被保全債権の発生時期
・詐害行為より先に発生していなければならない
←債権者は、債権取得時の債務者の責任財産を引き当てにしているから。

・被保全債権は詐害行為前に発生した債権であればよく、詐害行為時に履行期にある必要はない。

・詐害行為後に被保全債権が譲渡された場合は、譲受人が取消権を行使できる。

(2)債務者の詐害行為の存在
ⅰ)序説
債務者が債権者を害することを知って法律行為をしたこと

法律行為の詐害性×債務者の詐害意思=詐害行為

ⅱ)法律行為の詐害性

+(詐害行為取消権)
第四百二十四条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

・債権者を害するとは債務者が無資力となること

・債務者の無資力は、詐害行為時に存在するだけでなく、債権者が取消権を行使する時にも存在していることが必要

ⅲ)詐害行為取消権の対象となる法律行為
財産権を目的とする法律行為でなければならない

+(詐害行為取消権)
第四百二十四条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない

①離婚に伴う財産分与
②離婚に伴う慰謝料支払いの合意

+判例(H12.3.9)
理由
 第一 上告代理人柴田龍彦の上告理由第一の四について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
 第二 同第一の一ないし三について
 一 原審の確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
 1 被上告人は、Bに対し、平成三年五月一五日に貸し付けた貸金債権を有し、これにつき、Bから被上告人に六〇〇五万九七一四円及び内金五九二八万一三九六円に対する平成四年二月一四日から支払済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払うべき旨の確定判決を得ている。
 2 Bは、C工業株式会社(以下「訴外会社」という。)の取締役であったところ、多額の負債を抱えて借入金の利息の支払にも窮し、平成四年一月、訴外会社の取締役を退任し、収入が途絶え、無資力となった。
 3 上告人とBは、平成二年一〇月ころから同居し、平成三年一〇月五日、婚姻の届出をしたが、Bは、働かずに飲酒しては上告人に暴力を振るうようになり、平成六年六月一日、上告人と協議離婚した。
 4 上告人とBは、他の債権者を害することを知りながら、平成六年六月二〇日、Bが上告人に対し、生活費補助として同月以降上告人が再婚するまで毎月一〇万円を支払うこと及び離婚に伴う慰謝料として二〇〇〇万円を支払うことを約し(以下「本件合意」という。)、これに基づき、執行認諾文言付きの慰謝料支払等公正証書が作成された。
 5 被上告人は、Bに対する前記確定判決に基づき、大阪地方裁判所に対し、前記貸金債権の内金五〇〇万円を請求債権として、Bの訴外会社にする給料及び役員報酬債権につき差押命令を申し立て、同裁判所は、平成七年八月二三日、差押命令を発した。
 上告人は、Bに対する前記公正証書に基づき、大阪地方裁判所に対し、生活費補助二二〇万円及び慰謝料二〇〇〇万円の合計二二二〇万円を請求債権として、Bの訴外会社に対する給料及び役員報酬債権につき差押命令を申し立て、同裁判所は、平成八年四月一八日、差押命令を発した。
 6 訴外会社は、平成八年六月二四日、大阪法務局に二六一万〇四三三円を供託した。
 7 大阪地方裁判所は、上告人と被上告人の各配当額を各請求債権額に応じて案分して定めた配当表(以下「本件配当表」という。)を作成したところ、被上告人は、配当期日において、異議の申出をした。
 二 本訴において、被上告人は、主位的請求として、本件合意が通謀虚偽表示により無効であるとして、本件配当表につき、全額を被上告人に配当するよう変更することを求め、予備的請求として、詐害行為取消権に基づき、上告人とBとの間の本件合意を取り消し、本件配当表を同様に変更することを求めた。
 三 第一審は、本件合意は通謀虚偽表示により無効であるとして、主位的請求を認容した。これに対して、原審は、本件合意が通謀虚偽表示であるとはいえないが、本件合意における生活費補助及び慰謝料の額は、その中に財産分与的要素が含まれているとみても不相当に過大であって、財産分与に仮託してされたものであり、詐害行為に該当するとして、予備的請求を認容した(原判決主文は、単に控訴を棄却するというものであるが、これは、主位的請求につき第一審判決を取り消して請求を棄却し、予備的請求につきこれを認容して第一審判決と同じ主文を言い渡す趣旨のものと解される。)。
 四 しかしながら、原審の右判断のうち予備的請求に関する部分は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 1 本件合意は、Bが上告人に対し、扶養的財産分与の額を毎月一〇万円と定めてこれを支払うこと及び離婚に伴う慰謝料二〇〇〇万円の支払義務があることを認めてこれを支払うことを内容とするものである。
 2 離婚に伴う財産分与は、民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない(最高裁昭和五七年(オ)第七九八号同五八年一二月一九日第二小法廷判決・民集三七巻一〇号一五三二頁)。このことは、財産分与として金銭の定期給付をする旨の合意をする場合であっても、同様と解される。
 そして、【要旨一】離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、右特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきものと解するのが相当である。
 3 離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は、配偶者の一方が、その有責行為及びこれによって離婚のやむなきに至ったことを理由として発生した損害賠償債務の存在を確認し、賠償額を確定してその支払を約する行為であって、新たに創設的に債務を負担するものとはいえないから、詐害行為とはならないしかしながら、【要旨二】当該配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分については、慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約ないし対価を欠いた新たな債務負担行為というべきであるから、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。
 4 これを本件について見ると、上告人とBとの婚姻の期間、離婚に至る事情、Bの資力等から見て、本件合意はその額が不相当に過大であるとした原審の判断は正当であるが、この場合においては、その扶養的財産分与のうち不相当に過大な額及び慰謝料として負担すべき額を超える額を算出した上、その限度で本件合意を取り消し、上告人の請求債権から取り消された額を控除した残額と、被上告人の請求債権の額に応じて本件配当表の変更を命じるべきである。これと異なる見解に立って、本件合意の全部を取り消し得ることを前提として本件配当表の変更を命じた原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は右の趣旨をいうものとして理由があり、原判決中被上告人の予備的請求に関する部分は破棄を免れない。
 第三 さらに、職権をもって判断するに、被上告人の予備的請求につき、主文において本件合意を取り消すことなく詐害行為取消しの効果の発生を認め、本件配当表の変更の請求を認容すべきものとした原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決中被上告人の予備的請求に関する部分は、この点においても破棄を免れない。
 第四 結論
 以上のとおりであるから、原判決中被上告人の予備的請求に関する部分を破棄し、右部分については、本件合意のうち取り消すべき範囲及びこれに基づく配当表の変更につき、更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋一友 裁判官 大出峻郎)

③相続放棄
相続放棄は財産を積極的に減少させる行為というよりは消極的に増加を妨げる行為に過ぎない
身分行為である
→取消権の対象にならない

④遺産分割協議
+(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条  共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
2  遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
3  前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

・遺産分割協議は、その性質上財産権を目的とする法律行為であるから、相続人の債権者は取消権を行使できる。

+判例(H11.6.11)

ⅳ)債務者の詐害意思
・法律行為によって無資力になることについての認識が債務者にあれば足り、特定の債権者を害する意図までは必要としない
・債務者の詐害意思は、法律行為時に存在することが必要
知らない限り債務者の過失があっても取消権は認められない

・詐害意思の存在は債権者が主張立証。

(3)詐害行為の具体例
ⅰ)不動産の売却
不動産を相当な価格で売却した場合にも詐害行為になる。
←消費や隠匿のしやすい金銭に代えることは債務者の資力を削減することになる

しかし、有用の資金(家族の生活費等)に充てる目的での売却は例外的に詐害行為にならない。

ⅱ)弁済
債権者の平等を破るような一部の債権者に対する弁済
原則として詐害行為とならない
←債権者には弁済を求める当然の権利があり、債務者も弁済をすべき当然の義務がある。
そして、どの債権者に弁済するかは債務者の自由であり、債権者が平等の弁済を受けるのは、破産手続きによってなされるべきである!!

例外的に、債務者が一部の債権者と通謀し、他の債権者を害する意思をもって弁済した場合は詐害行為となる。

ⅲ)代物弁済
債権額に相当する価格の物による代物弁済
債務者に詐害意思があれば詐害行為となる。
←弁済の場合と異なり、債務者が代物弁済をするかは自由である

これに対し、一部の債権者が執拗に代物弁済を要求し、債務者が他の債権者を害する積極的な意思を持たずに代物弁済をした場合は詐害行為とならない。

ⅳ)物的担保の設定
①既存債務のための物的担保の設定の場合
一部の既存債権者のための物的担保の設定は、その債権者に優先弁済権を与える反面、総債権者の共同担保である債務者の責任財産を減少させることになるので、詐害行為となる

しかし、目的によっては、詐害行為とならない場合も

②新たな借り入れのための物的担保の設定
共同担保である責任財産を減少させることになるので詐害行為になる。
例外的に、借り入れの目的が是認されるものであればならない。

(4)受益者または転得者の悪意
ⅰ)悪意の意義
受益者または転得者が、行為時、債務者の法律行為が債権者を害すべき事実を知っていたこと
債権者を害する意図は必要ではなく、債権者を害することを認識しておけばよい。

・受益者転得者が自己の善意を主張立証

ⅱ)善意悪意の関係
①受益者転得者ともに悪意の場合
債権者は受益者に価格賠償を請求してもよいし、転得者に目的物の返還請求をしてもよい

②受益者悪意・転得者善意
債権者は転得者に目的物の返還を請求できず、受益者に価格賠償を請求するしかない

③受益者善意・転得者悪意
転得者を相手に取消権を行使できる
←取消しの相対的無効を前提とする限り、受益者と転得者間では当該法律行為は有効のままであるから、受益者が転得者から追奪担保責任を追及されることはなく、受益者は影響を受けないから。

3.詐害行為取消権の行使
(1)行使の方法
債権者が自己の名において(債権者の資格で)訴えの方法で行使=×抗弁、○反訴
←要件充足の有無を裁判所に判断させるため

詐害行為を取り消して逸出した財産を取り戻す

(2)行使の相手方と請求の内容
受益者または転得者を被告とし、債務者を被告とすることはできない。

①債務者が悪意の受益者に売却。転得者に転売はされていない場合。
受益者を被告として売買の取消しと、債務者名義の登記の回復を請求
受益者債務者間の不当利得返還

②土地が受益者から転得者に転売された場合
受益者転得者のいずれかを被告とする

(3)取消しの範囲
ⅰ)詐害行為の目的物が可分の場合
詐害行為当時の取消し債権者の債権額が限度

ⅱ)詐害行為の目的物が不可分の場合
行為全体を取消すことができる

例外
抵当権が付着している場合、代物弁済全体の取消しを認めると、代物弁済によって抵当権がしょうめつしているため、債権者は抵当権の付着していない財産を取り戻すこととなり不当に優遇されてしまう。
→取消しは詐害行為により減少した財産の範囲にとどめられるべき
一部取り消しの限度で価格賠償の請求をする。

(4)行使期間の制限
+(詐害行為取消権の期間の制限)
第四百二十六条  第四百二十四条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

取消しの原因を知った時
=債務者が債権者を害することを知って法律行為をした事実を債権者が知ったこと
詐害の客観的事実を知っただけでは足りず、債務者の詐害意思をも知ったことが必要!!!
もっとも、詐害の客観的事実を知った場合には、詐害意思も知ったものと推定される。

4.詐害行為取消権の効果
(1)425条の意味
+(詐害行為の取消しの効果)
第四百二十五条  前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。

債務者の責任財産として回復され、総債権者の共同担保になる。

(2)個々の財産
ⅰ)不動産
登記の抹消または債務者への移転登記を請求
直接自己への移転登記は請求できない

ⅱ)動産と金銭
自己に引き渡すよう請求できる

・債権者が金銭の引渡しを受けた場合、他の債権者は自己への分配を請求できるか
請求できない(債権者は分配を成すべき義務を負わない)
←分配の時期、手続上の法定手続が存在しないから

・受益者も債権者の1人である場合、取消債権者からの引渡し請求に対し、自己に分配されるべき金額の支払を拒めるか
拒めない
←総債権者の利益を無視することになるから


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

トマ・ピケティ 21世紀の資本 7 格差と集中~予備的な見通し~

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});


格差と集中

・両世界大戦と公共政策が20世紀における格差縮小に大きな役割を果たした

労働所得の格差
所有資本とそれが生む所得の格差
相互作用

1.ヴォートランのお説教
勤勉さより遺産の方が価値のある社会

2.重要な問題~労働か遺産か~

3.労働と資本の格差

4.資本~常に労働よりも分配が不平等~

5.格差と集中の規模感

6.下流、中流、上流階級

7.階級闘争、あるいは百分位闘争?

8.労働の格差~ほどほどの格差~

9.資本の格差~極端な格差~
もっとも平等な国の富の格差ですら、賃金についてもっとも不平等な国の賃金格差よりも大きい
富の大きな部分は常に金融と事業資産が主体

10.20世紀の大きなイノベーション~世襲型の中流階級~

11.総所得の格差~2つの世界~
極端な格差が維持できるかどうかは、抑圧装置の有効性だけでなく、格差を正当化する仕組みの有効性に左右される。

高水準の格差を達成する方法
①超世襲社会
②超能力主義社会

12.総合指標の問題点
ジニ係数
0=平等
1=不平等

過度に事象を単純化しすぎている

13.公式発表を覆う慎みのベール
最上位を無視する方法論の採用は中立的ではない
故意に不平等を楽観視するような操作が加えられている

14.社会構成表と政治算術に戻る


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

トマ・ピケティ 21世紀の資本 6 21世紀における資本と労働の分配

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

21世紀における資本と労働の分配

1.資本/所得比率から資本と労働の分配へ
核となるのは、資本の収益率

2.フロー~ストックより更に推計が困難~

3.純粋な資本収益という概念

4.歴史的に見た資本収益率
純粋資本収益率の事実上の安定

5.21世紀初期の資本収益率
税を考慮すると、資本による純粋な経済収益率と、所有者個人にもたらされる収益率に大きな差が生じる

民間資産の大半を占める不動産や金融商品への投資で、平均収益率を引き上げている

6.実体資産と名目資産
名目資産はインフレのリスクがある。

7.資本は何に使われるか
住居の提供
他の財サービスを生み出す生産要素

8.資本の限界生産性という概念
資本を1単位追加したことによる生産増加分の価値

9.過剰な資本は資本収益率を減らす
限界生産性は量がある閾値を超えると減少する
代替弾力性の数値により異なる

10.コブ=ダグラス型生産関数を超えて
~資本と労働の分配率の安定性という問題~
代替弾力性が1の場合に相当。

11.21世紀の資本と労働の代替
~弾力性が1より大きい~

12.伝統的農業社会
~弾力性が1より小さい~

13.人的資本は幻?
土地建物金融資本が所得に占める割合を減少させたのは、人的資本の力が高まったせい?


労働によって都合の良い方向に技術が変化したとしても、超長期的な資本シェアが減少するとは限らない
資本の有用性は変わっていない

14.資本と労働の分配の中期的変化

15.再びマルクスと利潤率の低下
無限蓄積の原理
資本家たちが資本を蓄積しすぎると収益率が下がる
→自滅

16.二つのケンブリッジを超えて

17.低成長レジームにおける資本の復権
低成長社会が大きな資本ストックを再構築する

18.技術のきまぐれ
資本と所有からくる所得フローの重要性を減らす自然の力は存在しない

経済的技術的合理性を追求した進歩が、必ずしも民主的能力主義的合理性に向かう進歩を意味するわけではない

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

9-6-9 既判力 既判力の主体的範囲

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

既判力の主体的範囲

1.相対的解決の原則
既判力
=その拘束を受ける者にとっては、既判力の生じた確定判決の内容をもはや訴訟上で争うことはできない
←前訴の判断内容を争う機会を十分に保障されていた

→前訴の当事者は、既判力による拘束を受けるが、それ以外の者はそうした地位を保障されなかった以上、既判力による拘束を受けないのが原則!

+(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一  当事者
二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。

・判決の相対効・相対的解決の原則
確定判決の既判力は、前訴の両当事者の間でのみ拘束力を有するのが原則である

もっとも、第三者に既判力が及ぶ場合も。
115条2~4号、反射効

+法人格否認の法理による既判力の拡張
法人格否認の法理が適用される場合であっても、手続の明確、安定を重んずる訴訟手続においては、その手続の性格上判決の既判力の拡張を認めることはできない・・・(批判はあるが)

2.被担当者に対する拡張

+(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一  当事者
二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。

←当事者が紛争の蒸し返しを防止するために既判力拡張の必要がある
担当者は、被担当者に代わって訴訟追行をする権能を認められているのだから、担当者に手続保障を与えておけば、被担当者との関係でも既判力による拘束を正当化できる

→後訴において前訴当事者が当事者適格を有していたことが認められない場合は既判力は拡張されない

=債権者代表訴訟の場合で債権者の債務者に対する債権が認められないとされた場合等。
(としても、債権者代位訴訟において告知を要求する立場において債権者の当事者適格を争わなかった債務者は信義則上争いえない可能性もある)

3.承継人に対する拡張

+(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一  当事者
二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。

一般承継人には既判力は当然及ぶ
特定承継人には問題がある

(1)既判力拡張の根拠
・権利の保護ないし紛争解決という確定判決の機能をはたすためには既判力の拡張が必要

・承継人は、自らは前訴において当事者として手続保障を与えられた者ではないが、実体法上、元来前主のした処分の結果を承継すべき地位にあるから、不利益を甘受しても已むをえない

・承継が口頭弁論終結後にされている以上、相手方当事者としては、承継人に対する手続保障を講じるための手段は前訴当時存在しなかったので、承継人に対する手続保障を求めるのは相当でない

要するに
前訴の勝訴当事者の地位の安定という要請
VS
承継人に対する手続保障

(2)承継の対象
訴訟物である権利義務関係そのものを承継した者がこの承継人に当たる点は争いがない。
⇔しかし、結果を潜脱される可能性
(所有権確認請求訴訟の口頭弁論終結後に係争物を譲り受けた者、
建物収去土地明渡請求訴訟の口頭弁論終結後に家屋を譲り受けたり賃借した者)

そこで、拡張を試みる説
①当事者適格を承継する説
②紛争の主体たる地位の承継とする
③訴訟物に関連する実体法上の地位の承継
その訴訟物について原告または被告となることを適切なものとするような実体法上の地位

(3)承継の時期
事実審の口頭弁論終結後の承継人に限られる

口頭弁論終結前の承継人については、訴訟承継の手段によって、承継以後はその者を訴訟当事者として手続保障を講じる必要がある(訴訟承継主義)

(4)承継人の範囲
承継に際して、前訴判決について善意悪意を問わない

(5)承継人に対する既判力拡張の内容
・既判力は、原則として訴訟物たる権利義務関係の存否についての判断についてのみ生じる
→前訴と後訴の訴訟物が同一であるか、先決関係か矛盾関係にある場合に限って作用する

・訴訟物たる権利義務関係が承継される場合
前訴の訴訟物は、承継人を当事者とする後訴の訴訟物の先決問題となるから、前訴の既判力の拡張が有効に機能する。

・承継の対象を拡張する場合
いろいろ問題が生じる

4.所有者に対する拡張

+(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一  当事者
二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。

当事者等のために所持するとは、
目的物の所持について自己固有の利益が認められないことを意味する
所持を開始した時期を問わない

所持者による請求意義の主張を封じる。

所持者が目的物について固有の利益を有していない以上、当事者等とは別に独立の手続保障を与える必要はない

5.対世効
(1)意義
115条の規定に加えて第三者に判決効が及ぶ明文の規定がある場合がある

対世効が認められるのは、多数の関係人の間で法律関係を画一的に確定する必要があり
かつ、既判力の拡張を受けるべき第三者の範囲を一律に画定することが難しい場合

人事訴訟法24条1項
会社法383条

(2)対世効を受ける第三者の利益保護

6.反射効
(1)意義
判決が、当事者に実体法上依存または従属する地位にある第三者との関係で、反射的に有利または不利な効果を及ぼすもの
(主債務者と保証人)

反射効は実体法上関連する紛争について、解決がまちまちに分かれる事態を防ぎ、関係人間において実体法上整合性のある処理を図る

(2)見解
①反射効肯定説
②既判力拡張説

③否定説
訴訟物ごとに十全な手続保障が必要
第三者の有利にのみ既判力を拡張することは、敗訴当事者の敗訴の負担を一方的に増大させ公平に反する


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

トマ・ピケティ 21世紀の資本 5 長期的に見た資本/所得比率

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

長期的に見た資本/所得比率

1.資本主義の第二基本法則

資本/所得比率 (β)= 貯蓄率(s)/成長率(g)

→たくさん蓄えてゆっくり成長する国は、長期的には莫大な資本ストックを蓄積し、社会構造と富の分配に大きな影響を与える
停滞した社会では過去に蓄積された富が大きな重要性を持つ

2.長期的法則
第二法則の実現には時間がかかる
第二法則が有効なのは人間が蓄積できる資本に注目した場合のみ
第二法則は資産価格が平均で見て、消費者物価と同様に推移する場合のみ

3.1970年代以降の富裕国における資本の復活
経済成長の鈍化、人口増加の低迷、貯蓄率の高さ
→第二法則

民営化
長期的なキャッチアップ現象

4.バブル以外のポイント~低成長、高貯蓄~

5.民間貯蓄の構成要素二つ
・民間個人が直接行った貯蓄

・企業がその所有者である民間個人にかわり、直接的あるいは金融投資を通じて間接的に行う貯蓄

・純貯蓄のみが資本ストックを増加させられる。

6.耐久財と貴重品
民間財産には家計による耐久財の購入は含まれない
貴重品は含む

7.可処分所得の年数で見た民間資本
・可処分所得
世帯が直接処分する家計収入のこと

8.財団などの資本保有者について

9.富裕国における富の民営化

10.資産価格の歴史的回復

11.富裕国の国民資本と純外国資産

12.21世紀の資本/所得比率はどうなるか?
U字曲線をかく

13.地価の謎
資本/所得比率の上昇は、純粋な市街地の価値増加では説明できない


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

債権総論 4ー1 責任財産の保全 債権者代位権

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});


債権者代位権

1.債権者代位権の意義
(1)意義
債権者が債務者に代わって第三債務者に対する財産権を行使して、債務者の責任財産の保全を図る
+(債権者代位権)
第四百二十三条  債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2  債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
被保全債権
=保全される債権者の債権
被代位権利
=代位行使される債務者の権利
(2)債権者代位権と強制執行制度

強制執行と比べて債権者代位権は
①債務名義が要らない
②代位行使できる権利が債務者の債権に限られない。
形成権(取消権解除権)や保存行為等
③非金銭債権を保全するために行使できる

2.債権者代位権の要件
要件
①保全の必要性
②債務者が自己の権利を行使していないこと
③被代位権利が債務者の一身専属権ではない
④被保全債権が履行期にある

(1)債権保全の必要性
債権者代位権は強制執行準備のために債務者の責任財産を維持することを目的としていた
→債務者の無資力を意味する

転用事例の時は無資力は要求されない

(2)債務者の権利不行使
・債務者に対する不当な干渉にならないように
・債務者による行使の方法結果にかかわらず行使できなくなる

++判例(S28.12.14)

・債権者はその訴訟に補助参加や独立当事者参加をする

・この要件の主張立証責任について
代位債権者が債務者の権利不行使を主張(請求原因説)
第三者が、債務者が権利を行使したことを主張(抗弁説)

(3)被代位債権の要件
ⅰ)代位行使できる権利
請求権
形成権
消滅時効の援用権
債権者代位権
登記所への登記申請行為

ⅱ)代位行使できない権利
~債務者の一身専属権~
行使上の一身専属権=権利を行使するかどうかが権利者の自由な意思にゆだねられていて、他人が行使できない=債務者の意思決定に対する干渉となる
(⇔帰属上の一身専属権=権利者のみに帰属し、譲渡や相続できない)

①一定の親族法条の身分と結びついた純粋の身分権
=婚姻・養子縁組の取消権
嫡出否認権
認知請求権
親権

②身分上の権利であるが、財産的内容を有する身分財産権
夫婦間の契約の取消権
親族間の扶養請求権
遺留分減殺請求権については
遺留分権利者が、これを第三者に譲渡するなど、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合にのみ代位行使できる

+判例(H13.11.22.)
理由
 上告代理人冨永長建の上告理由について
 1 本件は、遺言によって被上告人が相続すべきものとされた不動産につき、当該遺言で相続分のないものとされた相続人に対して貸金債権を有する上告人が、当該相続人に代位して法定相続分に従った共同相続登記を経由した上、当該相続人の持分に対する強制競売を申し立て、これに対する差押えがされたところ、被上告人がこの強制執行の排除を求めて提起した第三者異議訴訟である。上告人は、上記債権を保全するため、当該相続人に代位して遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をし、その遺留分割合に相当する持分に対する限度で上記強制執行はなお効力を有すると主張した。
 2 【要旨】遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、これを第三者に譲渡するなど、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位の目的とすることができないと解するのが相当である。その理由は次のとおりである。
 遺留分制度は、被相続人の財産処分の自由と身分関係を背景とした相続人の諸利益との調整を図るものである。民法は、被相続人の財産処分の自由を尊重して、遺留分を侵害する遺言について、いったんその意思どおりの効果を生じさせるものとした上、これを覆して侵害された遺留分を回復するかどうかを、専ら遺留分権利者の自律的決定にゆだねたものということができる(1031条、1043条参照)。そうすると、遺留分減殺請求権は、前記特段の事情がある場合を除き、行使上の一身専属性を有すると解するのが相当であり、民法423条1項ただし書にいう「債務者ノ一身ニ専属スル権利」に当たるというべきであって、遺留分権利者以外の者が、遺留分権利者の減殺請求権行使の意思決定に介入することは許されないと解するのが相当である。民法1031条が、遺留分権利者の承継人にも遺留分減殺請求権を認めていることは、この権利がいわゆる帰属上の一身専属性を有しないことを示すものにすぎず、上記のように解する妨げとはならない。なお、債務者たる相続人が将来遺産を相続するか否かは、相続開始時の遺産の有無や相続の放棄によって左右される極めて不確実な事柄であり、相続人の債権者は、これを共同担保として期待すべきではないから、このように解しても債権者を不当に害するものとはいえない
 3 以上と同旨の見解に基づき、本件において遺留分減殺請求権を債権者代位の目的とすることはできないとして、被上告人の第三者異議を全部認容すべきとした原審の判断は、正当として是認することができる。所論引用の判例は、所論の趣旨を判示したものではなく、上記判断はこれと抵触するものではない。論旨は採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 深澤武久 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 町田顯)

③人格権侵害による慰謝料請求権
精神的苦痛を賠償させるかは被害者自身の自由な意思により決定されるべきものである
ただし、合意や判決で具体的な慰謝料額が決定した場合や、それ以前の段階で被害者が死亡した場合は、代位行使の対象となる

~差押禁止の債権~
差押禁止の部分において責任財産を構成しないので、代位行使の対象とならない

(4)被保全債権の履行期の到来
被保全債権が履行期にあること

・例外的に
①裁判上の代位(423条2項本文)
履行期前に代位権を行使しないと債権者の債権の保全が不可能または困難になる場合は、債権者は、裁判所の許可を得て代位権を行使できる

+(債権者代位権)
第四百二十三条  債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2  債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない

②保存行為の代位(同条同項ただし書き)
保存行為
債務者の財産の減少を防ぐ行為(消滅時効中断行為等)
←債務者の不利益にならないし、急を要するから
裁判所の許可は必要ない

3.債権者代位権の行使
(1)行使の方法
債権者は自己の名において債務者の債権を行使
裁判上でも裁判外でも行使可能
(詐害行為取消権は裁判上の行使しかできない)

(2)代位行使の範囲
債権保全に必要な範囲に限られる

(3)代位権行使の相手方の抗弁
代位権行使の相手方は、債務者に対して持っているすべての抗弁を代位債権者に対して主張できる。

(4)請求の内容
直接代位債権者自身への支払や引渡しを請求できる
←債務者が第三者から給付目的物を自発的に受け取らないときは、代位権行使の目的が達成されないことになるから。

4.債権者代位権の効果
(1)債務者の処分権の制限
・履行期前の債権に基づく裁判上の代位の場合
裁判上の代位の申請が許可されると、許可の裁判は職権で債務者に告知され、子の告知を受けた債務者はこの権利を行使できなくなる

+非訟事件手続法
(代位の許可等)
第八十八条  裁判所は、第八十五条の規定による申立てを理由があると認めるときは、担保を立てさせて、又は立てさせないで、裁判上の代位を許可することができる。
2  前項の規定による許可の裁判は、債務者に告知しなければならない
3  前項の規定による告知を受けた債務者は、その代位に係る権利の処分をすることができない
4  第七十二条第二項及び第三項の規定は、第一項の規定により担保を立てる場合における供託及び担保について準用する。

・履行期後の債権に基づく代位権行使の場合
債権者が債務者にこれを通知するか、または債務者がこれを知った後は債務者は権利を処分できない。

+判例(S48.4.24)※
理由
 上告代理人今野佐内の上告理由(一)について。
 所論は、参加人(被上告人)の被告(上告人)に対する訴の訴訟物は、原告(被上告人)の被告に対する訴の訴訟物と同一であつて重複起訴になり不適法である、というのである。
 所論に関する本件の訴訟関係は、つぎのとおりである。すなわち、原告は参加人からその所有の第一審判決添付別紙目録(一)の土地(以下「本件土地」という。)を含む土地を賃借しているとして、その一部である本件土地につき賃貸人たる参加人に代位しその所有権にもとづき本件土地上に同目録(二)の建物部分(以下「本件建物」という。)を所有して本件土地を占有している被告に対し、本件建物収去本件土地明渡を求めたのが本訴であるところ、参加人は、原告が本件土地を被告に無断転貸したから本件土地についての賃貸借契約を解除したとして、原告に対し原告が本件土地について賃借権を有しないことの確認を求めるとともに、被告に対し所有権にもとづき本件建物収去本件土地明渡を求めて民訴法七一条により本訴に参加したものである。

 思うに、債権者が民法四二三条一項の規定により代位権を行使して第三債務者に対し訴を提起した場合であつても、債務者が民訴法七一条により右代位訴訟に参加し第三債務者に対し右代位訴訟と訴訟物を同じくする訴を提起することは、民訴法二三一条の重複起訴禁止にふれるものではないと解するのが相当である。けだし、この場合は、同一訴訟物を目的とする訴訟の係属にかかわらず債務者の利益擁護のため訴を提起する特別の必要を認めることができるのであり、また、債務者の提起した訴と右代位訴訟とは併合審理が強制され、訴訟の目的は合一に確定されるのであるから、重複起訴禁止の理由である審判の重複による不経済、既判力抵触の可能性および被告の応訴の煩という弊害がないからである。したがつて、債務者の右訴は、債権者の代位訴訟が係属しているというだけでただちに不適法として排斥されるべきものと解すべきではない。もつとも、債権者が適法に代位権行使に着手した場合において、債務者に対しその事実を通知するかまたは債務者がこれを了知したときは、債務者は代位の目的となつた権利につき債権者の代位権行使を妨げるような処分をする権能を失い、したがつて、右処分行為と目される訴を提起することができなくなる(大審院昭和一三年(オ)第一九〇一号同一四年五月一六日判決・民集一八巻九号五五七頁参照)のであつて、この理は、債務者の訴提起が前記参加による場合であつても異なるものではない。したがつて、審理の結果債権者の代位権行使が適法であること、すなわち、債権者が代位の目的となつた権利につき訴訟追行権を有していることが判明したときは、債務者は右権利につき訴訟追行権を有せず、当事者適格を欠くものとして、その訴は不適法といわざるをえない反面、債権者が右訴訟追行権を有しないことが判明したときは、債務者はその訴訟追行権を失つていないものとして、その訴は適法ということができる

 本件についてみるに、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)が適法に確定した事実関係によれば、原告の代位原因たる本件土地の賃借権は、その発生原因である賃貸借契約が原告において被告に対してした無断転貸を理由として参加人により解除されたため消滅したものということができるから、原告の代位訴訟はその代位原因を欠くものとして却下を免れず、したがつて、参加人が本訴に参加し被告に対して所有権にもとづいて本件建物収去本件土地明渡を求めた訴は適法というべきである。
 右と結論を同じくする原判決は相当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 同(二)について。
 所論は、参加人の被告に対する請求は権利の濫用である、というのである。
 しかし、原判決が適法に確定した事実関係によれば、参加人の右請求が権利の濫用に当らないとした原判決の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。引用の判例は本件に適切でなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 坂本吉勝 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 江里口清雄)

(2)効果の帰属
代位行使の効果はすべて債務者に帰属する

Q。直接目的物の引渡しを受けた代位債権者は弁済としてそれを取得できるか
・目的物が動産の場合
自己の債権の弁済に充てることはできず、債務者に返却しなければならない
←債権者代位権は債務者の責任財産を保全する制度だから
→強制執行の手続きを取る必要がある
ただ、代位権行使のために費やした費用について共益費用の一般先取特権を有する

+(一般の先取特権)
第三百六条  次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一  共益の費用
二  雇用関係
三  葬式の費用
四  日用品の供給

(共益費用の先取特権)
第三百七条  共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。
2  前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。

・目的物が金銭の場合
自己の被保全債権を自働債権として、返還債権(不当利得による返還債務)と相殺することができる
=事実上の優先弁済

・目的物が不動産の場合
代位債権者への明渡請求を認める必要はない
←債務者への明渡し請求と移転登記請求ができれば十分だから

ただし、不動産賃借人による妨害排除請求権の代位行使の場合には、代位債権者(賃借人)への明渡し請求が認められる

(4)代位訴訟の判決の効力
Q.既判力は債務者にも及ぶか

・債務者が代位訴訟に独立当事者参加をした場合、債務者に対して訴訟告知がされた場合には、既判力が債務者に及ぶ。

・訴訟参加や訴訟告知がない場合は
債権者は法定訴訟担当当事者に当たるとして、代位訴訟の既判力は債務者にも及ぶとする

5.債権者代位権の転用
(1)債権者代位権制度の二分的構成
・本来型
責任財産の保全のために行使
債務者の無資力が要件

・転用型
特定債権の実現を図る目的
債務者の無資力は要件とされない

(2)債権者代位権の転用例
ⅰ)登記請求権の代位行使
登記は共同申請が原則

中間者の同意がなければ、中間省略登記請求権は認められない
→移転登記請求権を代位行使

ⅱ)不動産賃借人による賃貸人の妨害排除請求権の代位行使
賃借人が第三者の妨害排除をするための方法

①占有の訴え(占有訴権)の行使
引渡しを受けて占有している場合
+(占有保持の訴え)
第百九十八条  占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

②賃借権に基づく妨害排除請求権
不動産賃借権が対抗力を備えている場合、賃借権に基づく妨害排除請求権

③賃貸人の妨害排除請求権の代位行使
賃貸人の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使
直接賃借人に明け渡すよう請求できる

ⅲ)金銭債権保全のための登記請求権の代位行使
・債務者の有する同時履行の抗弁権を消滅させるために、債務者の無資力を問題とせずに金銭債権者による債権者代位権の行使が認められたケース

+判例(S50.3.6)
理由
 上告人の上告理由第一点及び第二点について。
 被相続人が生前に土地を売却し、買主に対する所有権移転登記義務を負担していた場合に、数人の共同相続人がその義務を相続したときは、買主は、共同相続人の全員が登記義務の履行を提供しないかぎり、代金全額の支払を拒絶することができるものと解すべく、したがつて、共同相続人の一人が右登記義務の履行を拒絶しているときは、買主は、登記義務の履行を提供して自己の相続した代金債権の弁済を求める他の相続人に対しても代金支払を拒絶することができるものと解すべきである。そして、この場合、相続人は、右同時履行の抗弁権を失わせて買主に対する自己の代金債権を保全するため、債務者たる買主の資力の有無を問わず、民法四二三条一項本文により、買主に代位して、登記に応じない相続人に対する買主の所有権移転登記手続請求権を行使することができるものと解するのが相当である。原審の判断はこれと同旨であつて、正当として是認することができる。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切ではなく、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

 同第三点について。
 金銭債権の相続については、各共同相続人はその相続分に応じて法律上当然に分割された権利を承継するというのが、当裁判所の判例とするところであつて(最高裁昭和二七年(オ)第一一一九号同二九年四月八日第一小法廷判決・民集八巻四号八一九頁参照)、いまこれを変更する要をみない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、その前提を欠くことになり、採用することができない。

 同第四点について。
 本件記録によれば、原審において、上告人は、本件売買契約が買主の債務不履行を理由とする上告人の解除の意思表示により消滅したと主張するにあたり、その前提として、買主がその残代金の一部につき先履行義務を負担する旨所論の主張をしているものであるところ、原審は、多数当事者の契約関係にあつては当事者一人による解除は許されないとして、上告人の右解除の主張を排斥していることが、原判決に照らして明らかである。右原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、判決の結論に影響を及ぼさない部分を非難するものであつて、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 団藤重光 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸盛一 裁判官 岸上康夫)

+α 抵当権者が抵当不動産の不法占拠者を排除するために、債権者代位権を使用
判例(H11.11.24)
理由
 上告代理人佐久間信司の上告理由について
 一 原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
 1 被上告人は、平成元年一一月一〇日、Bとの間で、同人所有の第一審判決別紙物件目録記載の土地及び建物(以下、「本件不動産」といい、このうち建物を「本件建物」という。)について、債務者をB、極度額を三五〇〇万円、被担保債権の範囲を金銭消費貸借取引等とする根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)の設定契約を締結した。
 2 被上告人は、平成元年一一月一七日、Bに対し、二八〇〇万円を、平成二年二月以降毎月一五日に元金一一万七〇〇〇円を当月分の利息と共に支払うなどの約定により貸し付けた(以下、これによる債権を「本件貸金債権」という。)。
 3 上告人らは、平成五年五月ころから、本件建物を権原なく占有している。
 4 被上告人は、本件貸金債権の残額につき期限の利益が失われた後である平成五年九月八日、名古屋地方裁判所に対し、本件不動産につき本件根抵当権の実行としての競売を申し立て、同裁判所は、同日、不動産競売の開始決定をした。右事件の開札期日は平成七年五月一七日と指定されたが、上告人らが本件建物を占有していることにより買受けを希望する者が買受け申出をちゅうちょしたため、入札がなく、その後競売手続は進行していない。

 二 本件は、被上告人が、上告人らが本件建物を権原なく占有していることが不動産競売手続の進行を阻害し、そのために本件貸金債権の満足を受けることができないとして、上告人らに対し、本件根抵当権の被担保債権である本件貸金債権を保全するため、Bの本件建物の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使して、本件建物の明渡しを求めるものである。
 原審は、次のように判示し、被上告人の請求を認容すべきものとした。
 1 本件不動産についての不動産競売手続が進行しないのは、上告人らが本件建物を占有していることにより買受けを希望する者が買受け申出をちゅうちょしたためであり、この結果、被上告人は、本件貸金債権の満足を受けることができなくなっている。したがって、被上告人には、本件貸金債権を保全するため、Bの本件建物の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使する必要があると認められる。
 2 被上告人が請求することができるのは、本件建物の所有者であるBへの明渡しに限定されるものではなく、被上告人は、保全のために必要な行為として、上告人らに対し、本件建物を被上告人に明け渡すことを求めることができる。

 三 抵当権は、競売手続において実現される抵当不動産の交換価値から他の債権者に優先して被担保債権の弁済を受けることを内容とする物権であり、不動産の占有を抵当権者に移すことなく設定され、抵当権者は、原則として、抵当不動産の所有者が行う抵当不動産の使用又は収益について干渉することはできない
 しかしながら、第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、これを抵当権に対する侵害と評価することを妨げるものではない。そして、抵当不動産の所有者は、抵当権に対する侵害が生じないよう抵当不動産を適切に維持管理することが予定されているものということができる。したがって、右状態があるときは、抵当権の効力として、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し、その有する権利を適切に行使するなどして右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を有するというべきである。そうすると、【要旨第一】当権者は、右請求権を保全する必要があるときは、民法四二三条の法意に従い、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができると解するのが相当である。
 なお、第三者が抵当不動産を不法占有することにより抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求として、抵当権者が右状態の排除を求めることも許されるものというべきである。
 最高裁平成元年(オ)第一二〇九号同三年三月二二日第二小法廷判決・民集四五巻三号二六八頁は、以上と抵触する限度において、これを変更すべきである。
 四 本件においては、本件根抵当権の被担保債権である本件貸金債権の弁済期が到来し、被上告人が本件不動産につき抵当権の実行を申し立てているところ、上告人らが占有すべき権原を有することなく本件建物を占有していることにより、本件不動産の競売手続の進行が害され、その交換価値の実現が妨げられているというのであるから、被上告人の優先弁済請求権の行使が困難となっていることも容易に推認することができる
 【要旨第二】右事実関係の下においては、被上告人は、所有者であるBに対して本件不動産の交換価値の実現を妨げ被上告人の優先弁済請求権の行使を困難とさせている状態を是正するよう求める請求権を有するから、右請求権を保全するため、Bの上告人らに対する妨害排除請求権を代位行使し、Bのために本件建物を管理することを目的として、上告人らに対し、直接被上告人に本件建物を明け渡すよう求めることができるものというべきである。
 五 本件請求は、本件根抵当権の被担保債権をもって代位の原因とするが、本件根抵当権に基づいて、その交換価値の実現を阻害する上告人らの占有の排除を求めるため、所有者に代位して、上告人らに対して本件建物の明渡しを請求する趣旨を含むものと解することができるから、被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって、裁判官奥田昌道の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

トマ・ピケティ 21世紀の資本 4 古いヨーロッパから新世界へ

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

古いヨーロッパから新世界へ

1.ドイツ~ライン型資本主義と社会的所有~
インフレで公的債務を埋めた。

民間財産が国富のほぼすべてを占めている。

ドイツの民間財産が英仏に比べて少ないのは、住宅の価格の統制と、ドイツ企業の市場価格の低さにある。

ドイツ企業の市場価値の低さはライン型資本主義(利害関係者モデル)の反映らしい。
=利害関係者(労働者代表等)の参加

2.20世紀の資本が受けた打撃
2階の戦争が財政と政治に与えた打撃の方が、実際の戦闘よりも大きな破壊的影響を資本にもたらした。

金融規制、配当課税、利潤課税

3.米国の資本~ヨーロッパより安定~
20世紀の米国の
資本/所得比率
は、ヨーロッパに比べてはるかに安定

4.新世界と外国資本
米国の対外投資は、外国が保有している債権に支払う額をはるかに上回る収益をもたらし続けた。
←ドルに対する信頼がもたらした特権

5.カナダ~王国による所有が長期化~

6.新世界と旧世界~奴隷制の重要性~

奴隷制度に基づく富は、富の集中の最たるものであった。
南部では奴隷資本が土地資本を補い、上回っていた

7.奴隷資本と人的資本


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

憲法 1-1 政府と統治権

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

政府と統治権

一.国家と政府
1.社会学的国家論

(1)国家の3要素
領土・人(国民とは限定されない)・権力

・国家=
一定の限定された地域を基礎として、その地域に定住する人間が、強制力を持つ統治権の下に法的に組織されるようになった社会

(2)統治と政府
国家の要素として重要なのは「統治」

政府は国家の第三の要素が帰属する主体として把握されることになる。

2.法学的国家論
法学的国家論は国家を観念的・法規範的・当為的観点から捉える

(1)国家法人説
国家法人説は、統治権の具体的な行使の担い手として機関を想定し、期間の権限行使の法的限界を明らかにした点に功績がある

(2)法秩序説
国家は規範秩序、法秩序そのもの、条件と結論を命令によって結合する規範論理的な体系

3.総括
国家作用は、事実によってまずその正当化根拠が付与され、最終的に社会生活のなかに結果が表れる。

二.統治権の内容と正統性
1.統治権の内容
(1)統治権と国家
国権と統治権を峻別する実益はない

(2)統治権の基本的内容
自主組織権
領土主権
対人主権

2.統治権の正当性
(1)統治契約と社会契約
武力・精神的な基礎付け・統治権を行使する者の能力魅力・既成事実

・統治契約

・社会契約
統治契約の延長

(2)日本国憲法における統治権の根拠
+第一条  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

+前文
  日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

・「国政」とは統治活動をいい、その根拠が国民の信託、すなわち契約(合同行為)による統治権行使の委任にあるとした。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});