債権総論 4-2 責任財産の保全 詐害行為取消権

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

詐害行為取消権

1.詐害行為取消権の意義と性質
(1)意義
債権者が、債務者の責任財産を保全するために、債権者を害することを知りながら行った債務者の法律行為の取消しを裁判所に請求できる権利

+(詐害行為取消権)
第四百二十四条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

(2)法的性質
ⅰ)形成権説
意思表示の瑕疵に基づく取消しと同様に、詐害行為を債権者の一方的意思表示により取消し、その効力を遡及的に無効にする形成権であるとする。

ⅱ)請求権説
詐害行為によって責任財産から逸出した財産の返還を請求する債権的権利である。
→給付訴訟である

ⅲ)折衷説(通説)

・内容
詐害行為取消権は詐害行為を取消し、かつ、これを根拠として逸出した財産の取戻しを請求する権利

被告は受益者または転得者(×債務者)

取消しの総体的無効=債権者と受益者間でのみ無効となる
=債務者・受益者間では依然として有効

請求の内容として
債権者は、詐害行為の取消しと財産の返還または金銭賠償を請求してもよいし
詐害行為の取消しだけを請求してもよい

返還された財産については、
債務者に対する債務名義に基づいて強制執行をかけることになる

ⅳ)責任説
債務者の責任財産から逸出した財産に対する強制執行を可能にする準備段階であり、「責任無効」(逸出による責任財産でなくなったという効果のみを無効にする=当該財産は受益者に帰属したままで債務者の責任財産を構成)という効果を生じる形成権である

責任無効という効果を発生させる形成訴訟+責任訴訟(強制執行忍容訴訟)

2.詐害行為取消権の要件
①詐害行為前に被保全債権が発生していること
②債務者が債権者を害することを知って法律行為をしたこと
③受益者または転得者の悪意が存在すること

(1)詐害行為前の被保全債権の発生
ⅰ)被保全債権の種類
・金銭債権

・金銭債権以外
金銭債権以外の債権も究極には金銭債権に変わり、債務者の責任財産により担保されなければならないから、債務者が目的物を処分することによって無資力となった場合には、債権者は債務者の処分行為を詐害行為として取り消すことができる

+判例(S36.7.19)
理由
 上告代理人今野佐内の上告理由第一点(一)について。
 民法四二四条の債権者取消権は、総債権者の共同担保の保全を目的とする制度であるが、特定物引渡請求権(以下特定物債権と略称する)といえどもその目的物を債務者が処分することにより無資力となつた場合には、該特定物債権者は右処分行為を詐害行為として取り消すことができるものと解するを相当とする。けだし、かかる債権も、窮極において損害賠償債権に変じうるのであるから、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様だからである。大審院大正七年一〇月二六日民事連合部判決(民録二四輯二〇三六頁)が、詐害行為の取消権を有する債権者は、金銭の給付を目的とする債権を有するものでなければならないとした見解は、当裁判所の採用しないところである。本件において、原判決の確定したところによれば、被上告人は昭和二五年九月三〇日訴外Aとの間に本件家屋を目的とする売買契約を締結し、同人に対しその引渡請求権を有していたところ、Aは、他に見るべき資産もないのに、同二七年六月頃右家屋に債権額八万円の抵当権を有する訴外Bに対し、その債権に対する代物弁済として、一〇万円以上の価格を有する右家屋を提供し、無資力となつたというのである。右事実に徴すれば、本件家屋の引渡請求権を有する被上告人は、右代物弁済契約を詐害行為として取り消しうるものというべく、したがつて、原判決が「債務者がその特定物をおいて他に資産を有しないにかかわらず、これを処分したような場合には、この引渡請求権者において同条の取消権を有するものと解すべきである」とした部分は結局正当に帰する
 なお、論旨は、原判決のような判断が許されるときは、被上告人は登記を了しないのに、既に登記した上告人に対し所有権の移転を対抗し得ると同一の結果となり、民法一七七条の法意に反すると主張するが、債権者取消権は、総債権者の利益のため債務者の一般財産の保全を目的とするものであつて、しかも債務者の無資力という法律事実を要件とするものであるから、所論一七七条の場合と法律効果を異にすることは当然である。所論は採用できない。
 同第一点(二)、(三)について。
 債務者が目的物をその価格以下の債務の代物弁済として提供し、その結果債権者の共同担保に不足を生ぜしめた場合は、もとより詐害行為を構成するものというべきであるが、債権者取消権は債権者の共同担保を保全するため、債務者の一般財産減少行為を取り消し、これを返還させることを目的とするものであるから、右の取消は債務者の詐害行為により減少された財産の範囲にとどまるべきものと解すべきである。したがつて、前記事実関係によれば本件においてもその取消は、前記家屋の価格から前記抵当債権額を控除した残額の部分に限つて許されるものと解するを相当とする。そして、詐害行為の一部取消の場合において、その目的物が本件の如く一棟の家屋の代物弁済であつて不可分のものと認められる場合にあつては、債権者は一部取消の限度において、その価格の賠償を請求するの外はないものといわなければならない。然るに、原審は本件家屋の価格および取消の範囲等につき十分な審理を遂げることなく、たやすく本件代物弁済契約の全部の取消を認め、上告人に対し右家屋の所有権移転登記手続を命じたのは、民法四二四条の解釈を誤つた結果として審理不尽、理由不備の違法をあえてしたものであつて、所論は結局理由あるに帰し、原判決はこの点において破棄を免れない。よつて、本件を原審に差し戻すべく、民訴四〇七条に従い、裁判官下飯坂潤夫、同奥野健一、同山田作之助の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

・詐害行為がなされた時点では被保全債権は金銭債権である必要はない。
・直接自己に移転登記するように求めることはできない

ⅱ)被保全債権の発生時期
・詐害行為より先に発生していなければならない
←債権者は、債権取得時の債務者の責任財産を引き当てにしているから。

・被保全債権は詐害行為前に発生した債権であればよく、詐害行為時に履行期にある必要はない。

・詐害行為後に被保全債権が譲渡された場合は、譲受人が取消権を行使できる。

(2)債務者の詐害行為の存在
ⅰ)序説
債務者が債権者を害することを知って法律行為をしたこと

法律行為の詐害性×債務者の詐害意思=詐害行為

ⅱ)法律行為の詐害性

+(詐害行為取消権)
第四百二十四条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

・債権者を害するとは債務者が無資力となること

・債務者の無資力は、詐害行為時に存在するだけでなく、債権者が取消権を行使する時にも存在していることが必要

ⅲ)詐害行為取消権の対象となる法律行為
財産権を目的とする法律行為でなければならない

+(詐害行為取消権)
第四百二十四条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない

①離婚に伴う財産分与
②離婚に伴う慰謝料支払いの合意

+判例(H12.3.9)
理由
 第一 上告代理人柴田龍彦の上告理由第一の四について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
 第二 同第一の一ないし三について
 一 原審の確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
 1 被上告人は、Bに対し、平成三年五月一五日に貸し付けた貸金債権を有し、これにつき、Bから被上告人に六〇〇五万九七一四円及び内金五九二八万一三九六円に対する平成四年二月一四日から支払済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払うべき旨の確定判決を得ている。
 2 Bは、C工業株式会社(以下「訴外会社」という。)の取締役であったところ、多額の負債を抱えて借入金の利息の支払にも窮し、平成四年一月、訴外会社の取締役を退任し、収入が途絶え、無資力となった。
 3 上告人とBは、平成二年一〇月ころから同居し、平成三年一〇月五日、婚姻の届出をしたが、Bは、働かずに飲酒しては上告人に暴力を振るうようになり、平成六年六月一日、上告人と協議離婚した。
 4 上告人とBは、他の債権者を害することを知りながら、平成六年六月二〇日、Bが上告人に対し、生活費補助として同月以降上告人が再婚するまで毎月一〇万円を支払うこと及び離婚に伴う慰謝料として二〇〇〇万円を支払うことを約し(以下「本件合意」という。)、これに基づき、執行認諾文言付きの慰謝料支払等公正証書が作成された。
 5 被上告人は、Bに対する前記確定判決に基づき、大阪地方裁判所に対し、前記貸金債権の内金五〇〇万円を請求債権として、Bの訴外会社にする給料及び役員報酬債権につき差押命令を申し立て、同裁判所は、平成七年八月二三日、差押命令を発した。
 上告人は、Bに対する前記公正証書に基づき、大阪地方裁判所に対し、生活費補助二二〇万円及び慰謝料二〇〇〇万円の合計二二二〇万円を請求債権として、Bの訴外会社に対する給料及び役員報酬債権につき差押命令を申し立て、同裁判所は、平成八年四月一八日、差押命令を発した。
 6 訴外会社は、平成八年六月二四日、大阪法務局に二六一万〇四三三円を供託した。
 7 大阪地方裁判所は、上告人と被上告人の各配当額を各請求債権額に応じて案分して定めた配当表(以下「本件配当表」という。)を作成したところ、被上告人は、配当期日において、異議の申出をした。
 二 本訴において、被上告人は、主位的請求として、本件合意が通謀虚偽表示により無効であるとして、本件配当表につき、全額を被上告人に配当するよう変更することを求め、予備的請求として、詐害行為取消権に基づき、上告人とBとの間の本件合意を取り消し、本件配当表を同様に変更することを求めた。
 三 第一審は、本件合意は通謀虚偽表示により無効であるとして、主位的請求を認容した。これに対して、原審は、本件合意が通謀虚偽表示であるとはいえないが、本件合意における生活費補助及び慰謝料の額は、その中に財産分与的要素が含まれているとみても不相当に過大であって、財産分与に仮託してされたものであり、詐害行為に該当するとして、予備的請求を認容した(原判決主文は、単に控訴を棄却するというものであるが、これは、主位的請求につき第一審判決を取り消して請求を棄却し、予備的請求につきこれを認容して第一審判決と同じ主文を言い渡す趣旨のものと解される。)。
 四 しかしながら、原審の右判断のうち予備的請求に関する部分は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 1 本件合意は、Bが上告人に対し、扶養的財産分与の額を毎月一〇万円と定めてこれを支払うこと及び離婚に伴う慰謝料二〇〇〇万円の支払義務があることを認めてこれを支払うことを内容とするものである。
 2 離婚に伴う財産分与は、民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない(最高裁昭和五七年(オ)第七九八号同五八年一二月一九日第二小法廷判決・民集三七巻一〇号一五三二頁)。このことは、財産分与として金銭の定期給付をする旨の合意をする場合であっても、同様と解される。
 そして、【要旨一】離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、右特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきものと解するのが相当である。
 3 離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は、配偶者の一方が、その有責行為及びこれによって離婚のやむなきに至ったことを理由として発生した損害賠償債務の存在を確認し、賠償額を確定してその支払を約する行為であって、新たに創設的に債務を負担するものとはいえないから、詐害行為とはならないしかしながら、【要旨二】当該配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分については、慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約ないし対価を欠いた新たな債務負担行為というべきであるから、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。
 4 これを本件について見ると、上告人とBとの婚姻の期間、離婚に至る事情、Bの資力等から見て、本件合意はその額が不相当に過大であるとした原審の判断は正当であるが、この場合においては、その扶養的財産分与のうち不相当に過大な額及び慰謝料として負担すべき額を超える額を算出した上、その限度で本件合意を取り消し、上告人の請求債権から取り消された額を控除した残額と、被上告人の請求債権の額に応じて本件配当表の変更を命じるべきである。これと異なる見解に立って、本件合意の全部を取り消し得ることを前提として本件配当表の変更を命じた原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は右の趣旨をいうものとして理由があり、原判決中被上告人の予備的請求に関する部分は破棄を免れない。
 第三 さらに、職権をもって判断するに、被上告人の予備的請求につき、主文において本件合意を取り消すことなく詐害行為取消しの効果の発生を認め、本件配当表の変更の請求を認容すべきものとした原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決中被上告人の予備的請求に関する部分は、この点においても破棄を免れない。
 第四 結論
 以上のとおりであるから、原判決中被上告人の予備的請求に関する部分を破棄し、右部分については、本件合意のうち取り消すべき範囲及びこれに基づく配当表の変更につき、更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋一友 裁判官 大出峻郎)

③相続放棄
相続放棄は財産を積極的に減少させる行為というよりは消極的に増加を妨げる行為に過ぎない
身分行為である
→取消権の対象にならない

④遺産分割協議
+(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条  共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
2  遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
3  前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

・遺産分割協議は、その性質上財産権を目的とする法律行為であるから、相続人の債権者は取消権を行使できる。

+判例(H11.6.11)

ⅳ)債務者の詐害意思
・法律行為によって無資力になることについての認識が債務者にあれば足り、特定の債権者を害する意図までは必要としない
・債務者の詐害意思は、法律行為時に存在することが必要
知らない限り債務者の過失があっても取消権は認められない

・詐害意思の存在は債権者が主張立証。

(3)詐害行為の具体例
ⅰ)不動産の売却
不動産を相当な価格で売却した場合にも詐害行為になる。
←消費や隠匿のしやすい金銭に代えることは債務者の資力を削減することになる

しかし、有用の資金(家族の生活費等)に充てる目的での売却は例外的に詐害行為にならない。

ⅱ)弁済
債権者の平等を破るような一部の債権者に対する弁済
原則として詐害行為とならない
←債権者には弁済を求める当然の権利があり、債務者も弁済をすべき当然の義務がある。
そして、どの債権者に弁済するかは債務者の自由であり、債権者が平等の弁済を受けるのは、破産手続きによってなされるべきである!!

例外的に、債務者が一部の債権者と通謀し、他の債権者を害する意思をもって弁済した場合は詐害行為となる。

ⅲ)代物弁済
債権額に相当する価格の物による代物弁済
債務者に詐害意思があれば詐害行為となる。
←弁済の場合と異なり、債務者が代物弁済をするかは自由である

これに対し、一部の債権者が執拗に代物弁済を要求し、債務者が他の債権者を害する積極的な意思を持たずに代物弁済をした場合は詐害行為とならない。

ⅳ)物的担保の設定
①既存債務のための物的担保の設定の場合
一部の既存債権者のための物的担保の設定は、その債権者に優先弁済権を与える反面、総債権者の共同担保である債務者の責任財産を減少させることになるので、詐害行為となる

しかし、目的によっては、詐害行為とならない場合も

②新たな借り入れのための物的担保の設定
共同担保である責任財産を減少させることになるので詐害行為になる。
例外的に、借り入れの目的が是認されるものであればならない。

(4)受益者または転得者の悪意
ⅰ)悪意の意義
受益者または転得者が、行為時、債務者の法律行為が債権者を害すべき事実を知っていたこと
債権者を害する意図は必要ではなく、債権者を害することを認識しておけばよい。

・受益者転得者が自己の善意を主張立証

ⅱ)善意悪意の関係
①受益者転得者ともに悪意の場合
債権者は受益者に価格賠償を請求してもよいし、転得者に目的物の返還請求をしてもよい

②受益者悪意・転得者善意
債権者は転得者に目的物の返還を請求できず、受益者に価格賠償を請求するしかない

③受益者善意・転得者悪意
転得者を相手に取消権を行使できる
←取消しの相対的無効を前提とする限り、受益者と転得者間では当該法律行為は有効のままであるから、受益者が転得者から追奪担保責任を追及されることはなく、受益者は影響を受けないから。

3.詐害行為取消権の行使
(1)行使の方法
債権者が自己の名において(債権者の資格で)訴えの方法で行使=×抗弁、○反訴
←要件充足の有無を裁判所に判断させるため

詐害行為を取り消して逸出した財産を取り戻す

(2)行使の相手方と請求の内容
受益者または転得者を被告とし、債務者を被告とすることはできない。

①債務者が悪意の受益者に売却。転得者に転売はされていない場合。
受益者を被告として売買の取消しと、債務者名義の登記の回復を請求
受益者債務者間の不当利得返還

②土地が受益者から転得者に転売された場合
受益者転得者のいずれかを被告とする

(3)取消しの範囲
ⅰ)詐害行為の目的物が可分の場合
詐害行為当時の取消し債権者の債権額が限度

ⅱ)詐害行為の目的物が不可分の場合
行為全体を取消すことができる

例外
抵当権が付着している場合、代物弁済全体の取消しを認めると、代物弁済によって抵当権がしょうめつしているため、債権者は抵当権の付着していない財産を取り戻すこととなり不当に優遇されてしまう。
→取消しは詐害行為により減少した財産の範囲にとどめられるべき
一部取り消しの限度で価格賠償の請求をする。

(4)行使期間の制限
+(詐害行為取消権の期間の制限)
第四百二十六条  第四百二十四条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

取消しの原因を知った時
=債務者が債権者を害することを知って法律行為をした事実を債権者が知ったこと
詐害の客観的事実を知っただけでは足りず、債務者の詐害意思をも知ったことが必要!!!
もっとも、詐害の客観的事実を知った場合には、詐害意思も知ったものと推定される。

4.詐害行為取消権の効果
(1)425条の意味
+(詐害行為の取消しの効果)
第四百二十五条  前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。

債務者の責任財産として回復され、総債権者の共同担保になる。

(2)個々の財産
ⅰ)不動産
登記の抹消または債務者への移転登記を請求
直接自己への移転登記は請求できない

ⅱ)動産と金銭
自己に引き渡すよう請求できる

・債権者が金銭の引渡しを受けた場合、他の債権者は自己への分配を請求できるか
請求できない(債権者は分配を成すべき義務を負わない)
←分配の時期、手続上の法定手続が存在しないから

・受益者も債権者の1人である場合、取消債権者からの引渡し請求に対し、自己に分配されるべき金額の支払を拒めるか
拒めない
←総債権者の利益を無視することになるから


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});