民法択一 物権 用益物権 地役権


・地役権は、要役地から分離して譲り渡すことはできない!!他の権利の目的とすることもできない!!!!!(281条2項)

・地役権については、要役地の共有者の1人についての時効取得の完成により、他の者も地役権を取得する(284条1項)。!!!!!

・地役権の取得時効において共有者全員に対して時効中段を主張するためには、地役権を行使する各共有者に対して行わなければならない(284条2項)!!!=地役権を行使する1人に対してするのみでは、他の共有者の時効取得を妨げることはできない!!

・地役権についても、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限って時効によって取得することができる(283条)!!

・地役権は「所有権以外の財産権」として20年の消滅時効にかかる(167条2項)。

・その期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じたときから起算する(291条)!!!→通路を開設する通行地役権は、20年の消滅時効にかかり、その期間は通路が破壊されるというような事実があった時から起算する!

・承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権は、これによって消滅する(289条)!!=承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をした場合、当該占有者は、地役権の負担のついてない土地の所有権を時効取得する!!

・要役地上に地上権又は永小作権の設定を受けた者は当然に地役権を行使する!!!←地役権は、要役地上に存する他の権利の目的となる(281条1項本文後段)から!!!
+第281条
1項 地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2項 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。

・地役権設定者、永小作権設定者、地役権を設定した承役地の所有者のいずれも目的物の修繕義務を負わない!!!

・地上権、永小作権はいずれも物権であるので、原則として、自由に譲渡することができる(272条本文参照)。

・地役権は、要役地から分離して譲渡することはできないが、要役地の所有権の従たる権利として、要役地の所有権とともに移転する(281条1項本文前段)。

・地上権永小作権の譲渡性及び地役権の随伴性は特約で排除することができる(272条ただし書き、281条1項ただし書き)。

・かかる特約については、永小作権、地役権の場合は登記することができ、登記すれば第三者に対抗することができる(不動産登記法79条3号、80条1項3号)。

地上権の場合は登記することができず、特約を第三者に対抗することはできない!!!!!!

・地役権も物権であるため、177条が適用され、対抗要件として登記が必要になる!そして、地役権の付従性(281条1項本文)について、地役権の設定行為に別段の定めがあるときは、その旨を登記することもできる(281条1項ただし書き、不動産登記法80条1項3号)


民法択一 物権 用益物権 永小作権


・永小作権は、必ず定期の小作料を支払う(270条)!!!!⇔地上権は無償で設定することもできる(265条266条1項参照)

・永久の永小作権は禁止されている(278条参照)!!⇔民法において、地上権と地役権の存続期間については特に制限はないので、永久の存続させることも認められる。

・永小作権の存続期間は、20年以上50年以下としなければならず、設定行為で50年より長い期間を定めた場合、その期間は50年とされる(278条1項)=無効となるわけではない!

・永小作人は、不可抗力により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない(274条)!!!

・地上権が消滅したときの地上権者の収去権と土地の所有者の買取請求権を定めた269条1項は、永小作権に準用されている(279条)!!→永小作権者は、その権利が消滅したときに、土地を原状に復してその地上物を収去することができるが、土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、永小作権者は、正当な理由がなければこれを拒むことができない!!!!!

・永小作人は、土地に回復することができない損害を生ずるような変更を加えることはできない(271条)!!!この規定に違反した場合、541条による解除が認められる!!

・永小作人が引き続き2年以上小作料の支払いを怠ったときは、土地の所有者は、永小作権の消滅を請求することができる(当然消滅するわけではない)!!


民法択一 物権 用益物権 地上権


・用益物権は不動産のみに成立する!!!←民法上の用益物権は、地上権(265条)・永小作権(270条)・地役権(280条)・入会権(263条、294条)の4種類。いずれも土地を目的としている!

・区分地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があれば、設定することができる(269条の2第2項)。→第三者がすでに永小作権を有する土地についても、区分地上権を設定することはできる。

・法定の用益物権も存在する。=法定地上権(388条)

・地上権は土地を使用する物権であり(265条)、地上権者は土地を占有すべき権利を有するので、本件に基づく返還請求権を行使できる。→土地所有者に対しても返還請求権を行使することができる。

・地上権を譲渡することは、設定者の承諾を要することなく自由にできる!←地上権は土地に対する直接の使用権である(265条)

・地上権において、地代の支払は要素とされていない!!!=無償の地上権も認められる!!!

・地上権者が定期の地代を支払わなければならない場合において、不可抗力により収益について損失を受けたときは、永小作権に関する274条が準用され(266条1項)、地上権者は、地代の免除又は減額を請求することはできない!!!!!
+第266条
1項 第274条から第276条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。
2項 地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。
+第274条
永小作人は、不可抗力により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない。

・土地の所有者は、地上権者が附属させた工作物について、時価相当額を提供して買い取ることができる(269条1項ただし書き)

・また、建物所有目的の地上権が設定されている場合には、地上権者の側からも、借地権設定者に対して建物の買取りを請求することができる!!!

・当事者間で提起の地代を支払う旨の特約を定めた場合、賃貸借に関する規定が準用され(266条2項)、賃借物の一部減失による賃料の減額請求に関する規定の適用を受ける(611条1項)=土地の一部が地上権者の過失によらず減失したときは、地上権者は、その減失した部分の割合に応じて、地代の減額を請求することができる!!
+第611条
1項 賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
2項 前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

・相隣関係の規定は、原則として、地上権者間又は地上権者と土地所有者との相隣土地利用関係について準用される(267条本文)!!←相隣関係の規定は土地の利用の調節を趣旨とするものであるところ、これは土地の利用を目的とする地上権にも打倒するため!

・土地所有者は、隣地の竹林の根が境界線を越えているときは、その根を切り取ることができる(233条2項)。

・上記規定は、地上権者と土地の所有者との間について準用されている(267条本文)

・存在期間なき地上権については、特段の慣習がない限り、地上権者は、自由にその権利を放棄することができる(268条1項本文)。


民法択一 物権 所有権 共同所有関係


・255条と958条の3との適用関係
共有持分は、他の相続財産と共に、958条の3の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象になる。=958条の3が優先的に適用される。
+第255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
++255条について
この規定は、相続財産が共有持分の場合にも相続人不存在の場合の前記取扱い(951条・・・)を貫くと、国と他の共有者との間に共有関係が生じ、国としても財産管理上の手数がかかるなど不便であり、また、そうすべき実益もないので、むしろ、そのような場合にはその持分を他の共有者に帰属させた方がよいという考慮から、相続財産の国庫帰属に対する例外として設けられたものであり、法二五五条は法九五九条一項の特別規定であったと解すべき。
法二五五条により共有持分である相続財産が他の共有者に帰属する時期は、相続財産が国庫に帰属する時期と時点を同じくするものであり、前記清算後なお当該相続財産が承継すべき者のないまま残存することが確定したときということになり、法二五五条にいう「相続人ナクシテ死亡シタルトキ」とは、相続人が存在しないこと、並びに、当該共有持分が前記清算後なお承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときと解するのが相当

・各共有者は、共有物の全部についてその持分に応じた使用をすることができる(249条)→共有持分の価格の過半数を有することを理由に、共有物を現に占有する他の共有者に対して当然にその明渡しを請求できるものではない!!!
理由
けだし、このような場合、右の少数持分権者は自己の持分によつて、共有物を使用収益する権原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。従つて、この場合、多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである。

・共有持分権者から使用を許された第三者は、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は第三者に対して当然には共有物の明渡を請求することはできない!

・不動産の共有者の1人は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができる。→不実の持分移転登記がされている場合は、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じている→持分権に基づく保存行為(注あり)として単独で当該持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
+この訴訟は、当該不動産の共有者の一部の者が、自己の共有持分割合自体については当該不実の持分移転登記によって侵害状態が生じていなくても、同登記の抹消登記手続を請求することができるかどうかが争われた訴訟。

++共有者の一人から登記名義を有する他の共有者に対する請求の場合はどうか?(乙)
数名の者の共有に属する不動産につき共有者のうちの一部の者が勝手に自己名義で所有権移転登記を経由した場合に、共有者の一人がその共有持分に対する妨害排除として登記を実体的権利に合致させるため右の名義人に対し請求することができるのは、自己の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であると解するのが相当である。

+++共有者の一人が、白己の共有持分を超える部分についても、実体に合致しない登記の抹消登記手続を請求することを認めているが、乙類型の事件では、実体に合致しない部分があっても、自己の共有持分の範囲内においてのみ一部抹消(更正)登記手続を請求できるにすぎないとされているかのようにみえる。これらの違いをどう整合的に説明するかが問題となる。

++++保存行為について
民法二五二条ただし書にいう保存行為は共有物の滅失・毀損を防止してその現状を維持する行為であるから、不実登記の抹消を求めることまで保存行為であるというのは保存行為概念を広げすぎたものであるとの批判あり→共有持分権は共有物の全部に及ぶものであり、その円満な状態を回復するためには、物の全部の上の妨害の全部を除去すべきであり、妨害が違法な登記による場合にも同様であるから、共有持分権に基づく妨害排除請求権を根拠とすべき。

・内縁の夫婦が共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用していたときは、特段の事情のない限り、両者間において、その一方が死亡した後は他方がその不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認される!!!=相続人に対する不当利得返還義務は原則として成立しない!!

・共有物の所有権確認訴訟を提起するには、共有者全員が原告となることが必要!!=必要的共同訴訟!!!!!!

・各共有者は、その持分権に基づき、その土地の一部が自己の所有に属すると主張する第三者に対し、単独で係争地が自己の共有持分権に属することの確認を訴求することができる!!!←共有持分権の及ぶ範囲は、共有地の全部にわたる(249条)から

・各共有者は、単独で、第三者に対し、裁判上の主張をもって、自己の持分についての時効中断をすることができる!!←時効の中断が共有物の保存行為(252条ただし書き)に当たることから、共有者の共有持分権の主張につき裁判上の請求(147条1号)として、単独での主張を認めている!!

・共有者の一部が、他の共有者の同意を得ることなく共有物を物理的に損傷しあるいはこれを改変するなど共有物に変更を加える行為をしている場合には、他の共有者は、各自の共有持分権に基づいて、右行為の全部の禁止を求めることができる!!共有物を原状に復することが不能であるなどの特段の事情がある場合を除き、右行為により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることもできる!!!

・土地の共有者がその所有権に基づいて地上の建物の所有者である共同相続人を相手方とし、建物収去土地明渡を請求する訴訟は、固有必要的共同訴訟ではない!
また、898条の「共有」は、249条以下の「共有」とその性質を異にするものではない(←この論点忘れずに)ので、上記判例は共有一般に妥当。→建物収去土地明渡しの訴えを提起するときは、AB双方を被告とする必要はない!!
+理由
けだし、右の場合、共同相続人らの義務はいわゆる不可分債務であるから、その請求において理由があるときは、同人らは土地所有者に対する関係では、各自係争物件の全部についてその侵害行為の全部を除去すべき義務を負うのであつて、土地所有者は共同相続人ら各自に対し、順次その義務の履行を訴求することができ、必ずしも全員に対して同時に訴を提起し、同時に判決を得ることを要しないからである。
もし論旨のいうごとくこれを固有必要的共同訴訟であると解するならば、共同相続人の全部を共同の被告としなければ被告たる当事者適格を有しないことになるのであるが、そうだとすると、原告は、建物収去土地明渡の義務あることについて争う意思を全く有しない共同相続人をも被告としなければならないわけであり、また被告たる共同相続人のうちで訴訟進行中に原告の主張を認めるにいたつた者がある場合でも、当該被告がこれを認諾し、または原告がこれに対する訴を取り下げる等の手段に出ることができず、いたずらに無用の手続を重ねなければならないことになるのである。のみならず、相続登記のない家屋を数人の共同相続人が所有してその敷地を不法に占拠しているような場合には、その所有者が果して何びとであるかを明らかにしえないことが稀ではない。そのような場合は、その一部の者を手続に加えなかつたために、既になされた訴訟手続ないし判決が無効に帰するおそれもあるのである。以上のように、これを必要的共同訴訟と解するならば、手続上の不経済と不安定を招来するおそれなしとしないのであつて、これらの障碍を避けるためにも、これを必要的共同訴訟と解しないのが相当である。
また、他面、これを通常の共同訴訟であると解したとしても、一般に、土地所有者は、共同相続人各自に対して債務名義を取得するか、あるいはその同意をえたうえでなければ、その強制執行をすることが許されないのであるから、かく解することが、直ちに、被告の権利保護に欠けるものとはいえないのである。

・共有地上の樹木全部の伐採行為は、変更行為(251条)にあたる。そして、変更行為をするには、共有者全員の同意が必要である!

・建物の売却は変更行為(251条)にあたる。→共有者全員の同意が必要!!

・各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払う義務を負う(253条1項)。

・共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる(254条)。→立替金の支払いとか。

・共同相続人が、共同相続人の中の1人を借主とする使用貸借を解除するのは、252条本文の管理行為に当たるから、持分の価格に従い過半数の同意がなければ、解除を行うことができない!!=単独ではダメ。
+使用貸借の解除原因は、借主(×貸主)の死亡だよ!(599条)

・共有物を目的とする賃貸借契約を解除することは、252条本文の管理行為に当たる。その解除については544条1項の適用はない!!!!!→各共有者の持分価格に従いその過半数の同意があればすることができる。

・共有にかかる土地が不法に占有されたことを理由として、共有者の全員又はその一部の者から右不法行為者に対してその損害賠償を求める場合には、右共有者は、それぞれその共有持分権の割合に応じて請求すべきものである!!!!

・共有者が1年以内に管理費用支払義務(253条1項)を履行しない場合は、他の共有者は、相当の償金を支払って、そのものの持分を取得することができる(253条2項)!!!ヘー

・各共有者は原則としていつでも共有物の分割を請求することができる(256条1項本文)。もっとも、相隣者の共有に属する境界線、囲障、障壁、溝および堀は、共有物であっても分割請求をすることはできない(257条)!!!

・裁判上の分割(258条1項)にいう「共有者間に協議が調わないとき」とは、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をなしえない場合を含む。必ずしも現実に協議をしたうえで不調に終わった場合に限られるものではない!!

・共有物の分割請求(256条1項本文)において、裁判所としては、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得されるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、全面的価格賠償の方法(=自らが本件不動産を単独で取得し、その持分の価格を賠償する方法)による分割も許される!!!
=民法258条2項は、共有物の分割方法をすべての場合に現物分割又は競売による分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されず、その他の方法によることも許される。
←民法二五八条二項は、共有物分割の方法として、現物分割を原則としつつも、共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著しく価格を損じるおそれがあるときは、競売による分割をすることができる旨を規定している。
ところで、この裁判所による共有物の分割は、民事訴訟上の訴えの手続により審理判断するものとされているが、その本質は非訟事件であって、法は、裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平を保ちつつ、当該共有物の性質や共有状態の実状に合った妥当な分割が実現されることを期したものと考えられる。したがって、右の規定は、すべての場合にその分割方法を現物分割又は競売による分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されない。
そうすると、共有物分割の申立てを受けた裁判所としては、現物分割をするに当たって、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることができる(最高裁昭和五九年(オ)第八〇五号同六二年四月二二日大法廷判決・民集四一巻三号四〇八頁参照)のみならず、当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるものというべきである。

・各共有者は5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができ(256条1項ただし書き)、当該契約は、更新することができる(同条2項本文)!!!

・260条は、共有者から共有物の権利者に対する分割協議を行う旨の通知義務を課してはいない!→共有者は分割協議の通知をしなかったとしても、分割協議の結果を抵当権者に対抗できる!!!
+260条
1項 共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。
2項 前項の規定による参加の請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができない。

・遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない!!!→BC間の遺産分割の結果、甲土地をCの帰属とすることとしたときでも、Bは相続開始から遺産分割までの間に甲土地から生ずるDに対する賃料債権を、相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する!!!
+理由
遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当(=遺産たる賃貸不動産から生じた賃料債権は,可分債権であるから,民法427条により,当然に分割されて,共有者である共同相続人がその共有持分である法定相続分に応じて,単独分割債権として取得するものと解される)である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。

+遺産中に金銭債権その他の可分債権があるときは,その債権は,相続開始と同時に,当然に,相続分に応じて分割されて,各共同相続人の分割単独債権となる

+遺産中の特定の不動産が相続人全員の同意によって売却された場合には,その不動産は遺産から逸出するとともに,その売却代金は,これを遺産分割の対象に含める合意をするなどの特段の事情のない限り,相続分に応じて分割されて,各共同相続人の分割単独債権となる

・共有物の購入資金として他から借り入れた債務は、「共有物について」他の共有者に対して負担する債務に該当しないから、共有持分の譲受人に承継されない!!!!!→Aから共有持分を譲り受けたCは、ABが建物購入資金として他から借り入れた債務のうち、Aの負担部分を承継するものではない!!!


民法択一 物権 所有権 所有権の取得


・所有権の取得原因
①承継取得(特定承継+包括承継)
特定承継=売買・贈与・・・
包括承継=相続・合併・・・
②原始取得=時効取得・無主物先占・遺失物取得・埋蔵物発見・添付・即時取得

・所有者のない不動産は、国庫に帰属する(239条2項)!=所有の意思をもって占有することによって、所有権を取得するわけではない!

・所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する(239条1項無主物先占)

・他人の動産に工作を加えた者(加工者)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。

・ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超える場合は、加工者がその加工物の所有権を取得する(246条1項ただし書き)

・246条1項ただし書きの適用により損害を受けた者は、不当利得の規定に従い、その償金を請求することができる(248条)。

・賃借人による増改築部分について、それ自体独立性を有しない場合、当該部分の所有権は、本体建物の所有権に符合(242条本文)する。また、242条ただし書きは適用されないとし、賃貸人の承諾があっても結論は左右されない!

・いまだ独立の不動産に至らない建築途中の建前に、第三者が工事を加え完成させた場合における所有権の帰属は、加工の規定(246条2項)(×動産の付合(243条))によって決せられる!!!
+けだし、このような場合には、動産に動産を単純に附合させるだけでそこに施される工作の価値を無視してもよい場合とは異なり、右建物の建築のように、材料に対して施される工作が特段の価値を有し、仕上げられた建物の価格が原材料のそれよりも相当程度増加するような場合には、むしろ民法の加工の規定に基づいて所有権の帰属を決定するのが相当であるからである。

・所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったとき、及び分離するのに過分の費用を要するとき(←コレモ!!)は、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する(243条)。

・付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合時における価格の割合に応じて(×現在の価格の割合)その合成物を共有する(244条)!!!


民法択一 物権 所有権 物権的請求権


・物権的請求権は物権に随伴する。物権的請求権のみを債権のように譲渡することはできない。

・賃貸借契約の成立による占有権原の抗弁
賃貸借契約の成立要件は、目的物の賃借、すなわち使用収益させる旨及びその対価として賃料を支払う旨の合意のみであるが(601条)、同契約に基づく土地の占有権原を主張する場合は、占有の適法性を根拠付けるため、合意に基づき目的物の引き渡しを受けた旨も要件事実となる。

・地上権の成立による占有権原の抗弁
要件事実は地上権の設定を受ける旨の合意と、基づく引渡し
地上権設定登記をした事実を主張立証しても、請求棄却判決を得ることはできない!
=登記は事実上の推定力を有するにすぎず、地上権の設定登記を受けた事実を主張立証しても
、それにより適法に地上権の設定があったことは推定されず、請求棄却の判決を得ることはできない。

・他人の土地を占有する権原がないにもかかわらず、その土地上に建物を所有し、これを第三者に賃貸している賃貸人は、当該建物の間接占有者であるから、当該土地を不法に占有する者にほかならず、当該土地の所有者は、賃貸人に対して、所有権に基づき、当該土地の返還を請求することができる。

・土地の所有権に基づく物上請求権の訴訟においては、現実に家屋を所有することによって現実にその土地を占有して土地の所有権を侵害している者を被告としなければならない!
+建物所有者と登記名義人が異なる場合も原則として同様。

・同時履行の抗弁(633条本文)や留置権の抗弁(295条1項)の法的性質は権利抗弁である。
→請負代金債権の弁済があるまでは、甲土地を引き渡さないとの権利主張が必要。→認められたら引換給付判決。

・建物の所有権を有しない者は、たとえ、所有者との合意により、建物につき自己のための所有権保存登記をしていたとしても、建物を収去する機能を有しないから、建物の敷地所有者の所有権に基づく請求に対し、建物収去義務を負うものではない。!!(=原則は現実の建物所有者とすべきってこと。)
+なお、一定の要件のもと例外アリ!下へ↓

・他人の土地上に無権原で建てられた建物の所有権を取得した者が、自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合、その者は、建物を他に譲渡しても引き続き登記名義を保有しているときは、土地所有者に対し、譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去土地明渡の義務を免れることはできない!!!

・土地の所有者は、その土地に起因して、隣地所有者の権利を侵害し又は侵害の危険を生じさせている場合には、その侵害又は危険が自己の行為に基づくものと否とを問わず、その侵害の除去又は侵害の危険を防止すべき義務がある。!!!
+隣地との境界線上から垂直に約2尺4寸掘下げて素畑地を水田にしたため、隣地の土砂が水田内に崩壊し、かつ境界より約1間を隔てて人の住居に供する家屋が存し、隣地の地質が砂地のため自然崩壊の危険があるときは、隣地所有者は危険の防止に必要な相当設備を請求する権利がある。


民法択一 物権 所有権 所有権の内容


・土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる(209条1項本文)

・隣地所有者の承諾(同項ただし書き)が得られない場合には、裁判所に請求して承諾に代わる判決を求めたうえで、立ち入ることができる(414条2項ただし書き)

+414条2項
債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思に代えることができる。

・袋地の所有権を取得した者は、所有権取得登記を経由していなくても、囲繞地の所有者又はこれにつき利用権を有する者に対して、囲繞地通行権を主張することができる。

・分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地(残余地)のみを通行することができ、償金の支払いを要しない(213条1項)。

・公道に至るための他の土地の通行権は、残余地について特定承継が生じた場合にも消滅するものではない!

・他人の設置した給排水設備をその給排水のため使用することが他の方法に比べて合理的であるときは、その使用により当該給排水設備に予定される効用を著しく害するなどの特段の事情がない限り、220条及び221条の類推適用により、当該給排水設備を使用することができる。フム
=宅地の所有者が、他の土地を経由しなければ、水道事業者の敷設した排水管から当該宅地に給水を受け、その下水を公流、下水道まで排出することができない場合、当該宅地の給排水のために、他人の設置した給排水設備を使用することができる場合がある!

・他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができ(210条1項)、この通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる(211条2項)。


民法択一 物権 占有権 占有権の消滅と準占有

・占有権は占有者が占有物の所有を失うことによって消滅するのであり、ただ、占有者は、同条のただし書きにより、占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、現実に占有しなかった間も占有を失わず、占有が継続していたものと擬制される!!

・賃貸人が自己の所有する物を賃貸し、賃借人が占有している場合、賃貸借契約が終了しても、代理占有関係は消滅しない!!=代理権の消滅のみによっては消滅しない。

・代理占有が消滅する場合
本人が代理人に占有させる意思を放棄したこと(204条1項1号)
代理人が本人に対して以後自己または第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと(204条1項2号)
代理人が占有物の所持を失ったこと(204条1項3号)


民法択一 物権 占有権 占有権の効力


・占有訴権は占有権の効果として認められるところ、占有権を取得するためには目的物を所持することが必要であり(180条)、子の所持は独立したものでなければならない。そのため、他人の手足として補助的に物を支配しているにすぎない占有補助者は、占有権を取得することはできない!!→占有補助者である家事使用人は、占有回収の訴え(200条1項)を提起することはできない!!!!

・法人の機関等には、独立の所持が認められず、本人のために事実上物を保持するものにすぎない。←占有補助者(占有機関)だから
→法人の機関には占有訴権の原告適格は認められない!

・占有保持の訴えは、妨害の存する間又は消滅した後1年以内に提起しなければならない(201条本文)

・占有訴権の要件比較
占有保持の訴え=占有者の占有が妨害されているとき
占有保全の訴え=占有を妨害されるおそれがあるとき
占有回収の訴え=占有者の占有が奪われたとき

・占有保持の訴え(198条)を提起するための要件として、占有妨害の客観的事実があればよく、妨害者の故意または過失は不要!!

・占有者が妨害者に対して、妨害を除去し、原状回復を求める場合、その費用は妨害者が負担する!!←占有保持の訴え(198条)における「妨害の停止」とは、妨害者の費用で妨害を排除し、原状回復させることである。

・占有者がその占有を妨害されるおそれがある場合、占有保全の訴えによって、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる!!←いずれかの請求により目的が達成されるから!

・占有者がその占有を奪われた場合、占有回収の訴えを提起することができる(200条1項)。占有の侵奪とは、占有者が意思に基づかずにその所有を奪われることである!!!→賃借人が、占有権限を失った後に(賃貸借契約の終了など)占有を継続していても、賃貸人の占有を奪ったことにはならないので、占有回収の訴えを適することはできない!!!!!注!

・占有回収の訴えは、占有者のみならず、一般に所有の意思を有しない他人のために占有する者も提起することができる(197条後段)!!ヘー

・占有者は、その占有を奪われた場合、その占有が正当な権原に基づかないとしても、占有回収の訴え(200条1項)により損害賠償請求が認められる!!!!(占有侵害の事実があれば足りる!)

・詐取された場合は「占有を奪われたとき」(200条1項)に当たらない!!→占有回収の訴えは提起できない。

・遺失の場合も占有回収の訴えを提起できない←占有者の意思に反して奪われていないから!

・占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りではない(200条2項)

・侵奪物の占有がいったん善意の特定承継人に移転すれば、その後の特定承継人がたまたま占有侵奪の事実につき知っているとしても、そのものに対し占有回収の訴えを提起することはできない!!

・不法に他人の占有を侵奪した者がその目的物を他人に貸与したとしても借受人は貸主のために代理占有(181条)しているので、貸主である侵奪者は、目的物を占有しており、被侵奪者は侵奪者に対して占有回収の訴え(200条1項)を提起することができる。

・寄託を受けた者は特定承継人に当たる!!→寄託を受けた者が侵奪の事実に悪意の場合は、この者に対して占有回収の訴えを提起できる!

・占有回収の訴えは占有を奪われた時から(×知った時から)1年以内に提起しなければならない(201条3項)!!!!

占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることはできない(202条2項)!!!→裁判所は、占有回収の訴えに対して原告が係争物について所有権を有しないことを理由に請求を棄却することはできない!!!

・占有の訴に対し防御方法として本権の主張をなすことは許されないが、これに対し本権に基づく反訴を提起することは許される。

・占有者が占有物のうえに行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(188条)、譲受人たる占有取得者がそのように信じることについて過失のないものと推定される。

・他人の所有地上の建物に居住している者がその敷地を占有する正権原があると主張するときには、占有者がその正権原の立証責任を負う!!=188条を援用して自己の正権原を所有者に対抗することはできない!!

・189条1項の「善意の占有者」とは、所有権、賃借権等の本権がないのにそれがあると確信して占有する者をいう!悪意の占有者とは、本権がないことを知り、又はその有無につき疑いを持ちながら占有する者をいう!!→土地の占有者が、その土地につき果実収取権をともなった本権を自身が有するかどうかについて疑いを抱いている場合には、善意の占有者による果実の取得を規定した189条1項の「善意の占有者」にはあたらない。

・善意の占有者が本件の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から(×判決の確定時)悪意の占有者とみなされる(189条2項)!!!

・占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合に、その回復者に対し、善意の自主占有者が負う賠償義務の範囲はその損傷によって現に利益を受けている限度に限定される(191条)。←占有の特殊性に着目して不法行為、不当利得等の特則として、善意の自主占有者を保護し、その賠償義務の範囲を制限する趣旨!

・占有者が占有物を返還する場合、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は占有者の負担に帰する(196条1項ただし書き)。固定資産税は、甲建物の保管に通常必要となる費用であり、通常の必要費に当たる!
→善意の占有者は、甲建物を占有したことによって得た利益(使用利益)を取得する(189条1項)から、占有期間中の固定資産税を負担しなければならない!!


民法択一 物権 占有権 占有の態様・種類


・占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有するものと推定する(×みなされる)(186条1項)

・占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によって外形的客観的に定められるべきものである!!!→賃貸借により取得した占有は、たとえ所有の意思があっても、他主占有であるというべき!!!

・権原の性質上、占有者に所有の意思表示がないものとされる場合において、占有者が新たな権原によりさらに所有の意思をもって占有を始めた場合、その占有の性質は、所有の意思をもってする占有に変更される(185条)!!!←永続した事実状態の尊重という時効制度の趣旨の貫徹と、所有の意思の表示や新権原を要求することで真の権利者に時効中断の機会を与えて保護する点との調和を図るため。フム

・相続人は、原則として被相続人の財産に属する権利義務を包括承継する(806条本文)→占有権も承継

・占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を合わせて主張することができる(187条1項)。
+187条1項は相続のごとき包括承継の場合にも適用され、相続人は必ずしも被相続人の占有についての善意・悪意の地位をそのまま承継するものではない!

・相続人が被相続人の死亡により相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始しその占有に所有の意思があると認められる場合には、被相続人の占有が他主占有であったときにも相続人は185条にいう「新たな権原」により所有の意思をもって占有を始めたものというべきである!!!!!
+相続人が、自己の占有が独自に要件を充たすことを主張立証する!

・相続人の占有の性質は被相続人の占有の性質から決定されるから、被相続人の占有が自主占有であることに対する相続人の知不知にかかわらず、相続開始と同時に所有の意思をもっての占有(被相続人が所有の意思をもって占有していた場合)となる。

・売買契約に基づいて開始される占有は、解除条件が付されている場合であっても、162条にいう所有の意思をもってする占有であるというを妨げず、かつ、現に解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、この占有が所有の意思をもってする占有でなくなるというものではない!!!!!

・共同相続人の1人が単独に相続したものと信じて相続開始とともに相続財産を現実に占有し管理使用を専行(←自分の判断で行うこと=独断専行ナド)し、公租公課も支払っていたなどの事情があり、他の相続人が何ら関心をもたず意義も述べなかった場合、相続人は相続の時から相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得する。