民法択一 物権 所有権 共同所有関係


・255条と958条の3との適用関係
共有持分は、他の相続財産と共に、958条の3の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象になる。=958条の3が優先的に適用される。
+第255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
++255条について
この規定は、相続財産が共有持分の場合にも相続人不存在の場合の前記取扱い(951条・・・)を貫くと、国と他の共有者との間に共有関係が生じ、国としても財産管理上の手数がかかるなど不便であり、また、そうすべき実益もないので、むしろ、そのような場合にはその持分を他の共有者に帰属させた方がよいという考慮から、相続財産の国庫帰属に対する例外として設けられたものであり、法二五五条は法九五九条一項の特別規定であったと解すべき。
法二五五条により共有持分である相続財産が他の共有者に帰属する時期は、相続財産が国庫に帰属する時期と時点を同じくするものであり、前記清算後なお当該相続財産が承継すべき者のないまま残存することが確定したときということになり、法二五五条にいう「相続人ナクシテ死亡シタルトキ」とは、相続人が存在しないこと、並びに、当該共有持分が前記清算後なお承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときと解するのが相当

・各共有者は、共有物の全部についてその持分に応じた使用をすることができる(249条)→共有持分の価格の過半数を有することを理由に、共有物を現に占有する他の共有者に対して当然にその明渡しを請求できるものではない!!!
理由
けだし、このような場合、右の少数持分権者は自己の持分によつて、共有物を使用収益する権原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。従つて、この場合、多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである。

・共有持分権者から使用を許された第三者は、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は第三者に対して当然には共有物の明渡を請求することはできない!

・不動産の共有者の1人は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができる。→不実の持分移転登記がされている場合は、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じている→持分権に基づく保存行為(注あり)として単独で当該持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
+この訴訟は、当該不動産の共有者の一部の者が、自己の共有持分割合自体については当該不実の持分移転登記によって侵害状態が生じていなくても、同登記の抹消登記手続を請求することができるかどうかが争われた訴訟。

++共有者の一人から登記名義を有する他の共有者に対する請求の場合はどうか?(乙)
数名の者の共有に属する不動産につき共有者のうちの一部の者が勝手に自己名義で所有権移転登記を経由した場合に、共有者の一人がその共有持分に対する妨害排除として登記を実体的権利に合致させるため右の名義人に対し請求することができるのは、自己の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であると解するのが相当である。

+++共有者の一人が、白己の共有持分を超える部分についても、実体に合致しない登記の抹消登記手続を請求することを認めているが、乙類型の事件では、実体に合致しない部分があっても、自己の共有持分の範囲内においてのみ一部抹消(更正)登記手続を請求できるにすぎないとされているかのようにみえる。これらの違いをどう整合的に説明するかが問題となる。

++++保存行為について
民法二五二条ただし書にいう保存行為は共有物の滅失・毀損を防止してその現状を維持する行為であるから、不実登記の抹消を求めることまで保存行為であるというのは保存行為概念を広げすぎたものであるとの批判あり→共有持分権は共有物の全部に及ぶものであり、その円満な状態を回復するためには、物の全部の上の妨害の全部を除去すべきであり、妨害が違法な登記による場合にも同様であるから、共有持分権に基づく妨害排除請求権を根拠とすべき。

・内縁の夫婦が共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用していたときは、特段の事情のない限り、両者間において、その一方が死亡した後は他方がその不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認される!!!=相続人に対する不当利得返還義務は原則として成立しない!!

・共有物の所有権確認訴訟を提起するには、共有者全員が原告となることが必要!!=必要的共同訴訟!!!!!!

・各共有者は、その持分権に基づき、その土地の一部が自己の所有に属すると主張する第三者に対し、単独で係争地が自己の共有持分権に属することの確認を訴求することができる!!!←共有持分権の及ぶ範囲は、共有地の全部にわたる(249条)から

・各共有者は、単独で、第三者に対し、裁判上の主張をもって、自己の持分についての時効中断をすることができる!!←時効の中断が共有物の保存行為(252条ただし書き)に当たることから、共有者の共有持分権の主張につき裁判上の請求(147条1号)として、単独での主張を認めている!!

・共有者の一部が、他の共有者の同意を得ることなく共有物を物理的に損傷しあるいはこれを改変するなど共有物に変更を加える行為をしている場合には、他の共有者は、各自の共有持分権に基づいて、右行為の全部の禁止を求めることができる!!共有物を原状に復することが不能であるなどの特段の事情がある場合を除き、右行為により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることもできる!!!

・土地の共有者がその所有権に基づいて地上の建物の所有者である共同相続人を相手方とし、建物収去土地明渡を請求する訴訟は、固有必要的共同訴訟ではない!
また、898条の「共有」は、249条以下の「共有」とその性質を異にするものではない(←この論点忘れずに)ので、上記判例は共有一般に妥当。→建物収去土地明渡しの訴えを提起するときは、AB双方を被告とする必要はない!!
+理由
けだし、右の場合、共同相続人らの義務はいわゆる不可分債務であるから、その請求において理由があるときは、同人らは土地所有者に対する関係では、各自係争物件の全部についてその侵害行為の全部を除去すべき義務を負うのであつて、土地所有者は共同相続人ら各自に対し、順次その義務の履行を訴求することができ、必ずしも全員に対して同時に訴を提起し、同時に判決を得ることを要しないからである。
もし論旨のいうごとくこれを固有必要的共同訴訟であると解するならば、共同相続人の全部を共同の被告としなければ被告たる当事者適格を有しないことになるのであるが、そうだとすると、原告は、建物収去土地明渡の義務あることについて争う意思を全く有しない共同相続人をも被告としなければならないわけであり、また被告たる共同相続人のうちで訴訟進行中に原告の主張を認めるにいたつた者がある場合でも、当該被告がこれを認諾し、または原告がこれに対する訴を取り下げる等の手段に出ることができず、いたずらに無用の手続を重ねなければならないことになるのである。のみならず、相続登記のない家屋を数人の共同相続人が所有してその敷地を不法に占拠しているような場合には、その所有者が果して何びとであるかを明らかにしえないことが稀ではない。そのような場合は、その一部の者を手続に加えなかつたために、既になされた訴訟手続ないし判決が無効に帰するおそれもあるのである。以上のように、これを必要的共同訴訟と解するならば、手続上の不経済と不安定を招来するおそれなしとしないのであつて、これらの障碍を避けるためにも、これを必要的共同訴訟と解しないのが相当である。
また、他面、これを通常の共同訴訟であると解したとしても、一般に、土地所有者は、共同相続人各自に対して債務名義を取得するか、あるいはその同意をえたうえでなければ、その強制執行をすることが許されないのであるから、かく解することが、直ちに、被告の権利保護に欠けるものとはいえないのである。

・共有地上の樹木全部の伐採行為は、変更行為(251条)にあたる。そして、変更行為をするには、共有者全員の同意が必要である!

・建物の売却は変更行為(251条)にあたる。→共有者全員の同意が必要!!

・各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払う義務を負う(253条1項)。

・共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる(254条)。→立替金の支払いとか。

・共同相続人が、共同相続人の中の1人を借主とする使用貸借を解除するのは、252条本文の管理行為に当たるから、持分の価格に従い過半数の同意がなければ、解除を行うことができない!!=単独ではダメ。
+使用貸借の解除原因は、借主(×貸主)の死亡だよ!(599条)

・共有物を目的とする賃貸借契約を解除することは、252条本文の管理行為に当たる。その解除については544条1項の適用はない!!!!!→各共有者の持分価格に従いその過半数の同意があればすることができる。

・共有にかかる土地が不法に占有されたことを理由として、共有者の全員又はその一部の者から右不法行為者に対してその損害賠償を求める場合には、右共有者は、それぞれその共有持分権の割合に応じて請求すべきものである!!!!

・共有者が1年以内に管理費用支払義務(253条1項)を履行しない場合は、他の共有者は、相当の償金を支払って、そのものの持分を取得することができる(253条2項)!!!ヘー

・各共有者は原則としていつでも共有物の分割を請求することができる(256条1項本文)。もっとも、相隣者の共有に属する境界線、囲障、障壁、溝および堀は、共有物であっても分割請求をすることはできない(257条)!!!

・裁判上の分割(258条1項)にいう「共有者間に協議が調わないとき」とは、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をなしえない場合を含む。必ずしも現実に協議をしたうえで不調に終わった場合に限られるものではない!!

・共有物の分割請求(256条1項本文)において、裁判所としては、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得されるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、全面的価格賠償の方法(=自らが本件不動産を単独で取得し、その持分の価格を賠償する方法)による分割も許される!!!
=民法258条2項は、共有物の分割方法をすべての場合に現物分割又は競売による分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されず、その他の方法によることも許される。
←民法二五八条二項は、共有物分割の方法として、現物分割を原則としつつも、共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著しく価格を損じるおそれがあるときは、競売による分割をすることができる旨を規定している。
ところで、この裁判所による共有物の分割は、民事訴訟上の訴えの手続により審理判断するものとされているが、その本質は非訟事件であって、法は、裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平を保ちつつ、当該共有物の性質や共有状態の実状に合った妥当な分割が実現されることを期したものと考えられる。したがって、右の規定は、すべての場合にその分割方法を現物分割又は競売による分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されない。
そうすると、共有物分割の申立てを受けた裁判所としては、現物分割をするに当たって、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることができる(最高裁昭和五九年(オ)第八〇五号同六二年四月二二日大法廷判決・民集四一巻三号四〇八頁参照)のみならず、当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるものというべきである。

・各共有者は5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができ(256条1項ただし書き)、当該契約は、更新することができる(同条2項本文)!!!

・260条は、共有者から共有物の権利者に対する分割協議を行う旨の通知義務を課してはいない!→共有者は分割協議の通知をしなかったとしても、分割協議の結果を抵当権者に対抗できる!!!
+260条
1項 共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。
2項 前項の規定による参加の請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができない。

・遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない!!!→BC間の遺産分割の結果、甲土地をCの帰属とすることとしたときでも、Bは相続開始から遺産分割までの間に甲土地から生ずるDに対する賃料債権を、相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する!!!
+理由
遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当(=遺産たる賃貸不動産から生じた賃料債権は,可分債権であるから,民法427条により,当然に分割されて,共有者である共同相続人がその共有持分である法定相続分に応じて,単独分割債権として取得するものと解される)である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。

+遺産中に金銭債権その他の可分債権があるときは,その債権は,相続開始と同時に,当然に,相続分に応じて分割されて,各共同相続人の分割単独債権となる

+遺産中の特定の不動産が相続人全員の同意によって売却された場合には,その不動産は遺産から逸出するとともに,その売却代金は,これを遺産分割の対象に含める合意をするなどの特段の事情のない限り,相続分に応じて分割されて,各共同相続人の分割単独債権となる

・共有物の購入資金として他から借り入れた債務は、「共有物について」他の共有者に対して負担する債務に該当しないから、共有持分の譲受人に承継されない!!!!!→Aから共有持分を譲り受けたCは、ABが建物購入資金として他から借り入れた債務のうち、Aの負担部分を承継するものではない!!!