不法行為法 1 不法行為制度

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.不法行為制度とはどのような制度か?
他人の行為または他人の物により権利を侵害された者(被害者)が、その他人または他人とかかわりのある人に対して、侵害からの救済を求めることのできる制度。

2.不法行為制度のもとでの救済~損害賠償が原則~

+(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

不法行為を理由として、被害者が、他人の行為の差止めを求めたり、自分の権利をもと通りにすること(原状回復)を求めたりすることは、法律に特別の規定がない限り認められない!!!

3.損害賠償の基本原理~どのような場合に損害賠償が認められるのか~
過失責任の原則
加害者に故意または過失がなければ、不法行為を理由とする損害賠償請求権は発生しない。

×原因責任・結果責任

4.過失責任の原則が採用された理由~過失責任を支える基本的な考え方~
・過失責任の原則の背後
私人の行為の自由は、国家により、憲法秩序のもとで基本権として保障される。
過失責任の原則は、
権利侵害の結果を行使者に負担させるための原理であるとともに、行為者に対し行動の自由を保障するための原理でもある。

5.過失責任の原則の例外~無過失責任~
民法に特別の条文があるか、特別の立法で無過失責任が採用されている場合。

6.無過失責任を支える基本的考え方
・危険責任の原理
危険源を創造したり、危険源を管理したりしている者は、その危険源から生じた損害について、責任を負担しなければならない。

・報償責任の原理
自らの活動から利益を上げている者は、その活動の結果として生じた損害について、責任を負担しなければならない。

7.過失責任の枠内での修正へのインセンティブ~過失の主張立証責任~
・過失があったかどうかについての真偽不明のリスクは被害者が負担する。

8.「過失責任の原則」の修正
(1)過失における注意義務の高度化
加害者に課される注意義務を厳しくすればするほど、注意義務違反の事実、つまり加害者に過失があった事実を立証しやすくなる。

(2)過失についての「事実上の推定」
過失があったとの評価を根拠づける具体的事実とはいえないまでも、それに関連する一定の事実(間接事実)があれば経験的に裁判官が、過失があったのではないかという心証を抱く。

+判例(H8.1.23)
要約
医師が医薬品を使用するに当たって医薬品の添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り当該医師の過失が推定される。

・事実上の推定と間接反証
加害者としては裁判官の心証を動揺させ、真偽不明の状態に持ち込めばよい。

(3)過失についての「法律上の推定」(立証責任の転換)
真偽不明の場合には、立証責任の分配に関する原則と違い、真偽不明のリスクは加害者が負担することになる。

9.709条に基づく損害賠償請求
請求原因
①Xの権利(または法律上保護された利益)が侵害されたこと
②Yが行為をするにあたり、Yに故意があったこと、または、Yに過失があったことの評価を根拠付ける事実
③請求原因②の行為(故意行為過失行為)と①の権利侵害との間の因果関係
④Xに生じた損害(およびその金額)
⑤請求原因①の権利侵害と④の損害との間の因果関係

(③⑤を合体させ、②④を1つの因果関係でつなぐ考え方もある)

+α
・法律要件と法律効果
法律要件
法律効果の発生原因のこと。

要件事実
法律要件に該当する事実のこと

・要件事実についての主張責任・立証責任
主張責任
ある事実が弁論で主張されなかったときに、敗訴してしまう不利益を原告被告のいずれが負担するかという問題
主張責任は、要件事実が弁論において主張されなかったことによるリスクを、主張責任を負担する者に課すことで、相手方を不意打ちの危険から保護し、相手方の防御の機会を保障することを目的としたもの。

立証責任
要件事実について真偽不明のときに、その要件事実は存在しないものとして扱われ、その要件事実が存在しておれば適用されたであろう実体法規範が適用されないことをいう。
要するに、真偽不明のリスク負担。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

2-2-2 総論 構成要件該当性 主体

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.自然人
「者」=自然人
法人はこれに含まれず、それを処罰の対象とする特別の罰則がある場合にのみ、例外的限定的に処罰されるにとどまる。

・構成的身分犯(真正身分犯)
行為者に身分が存しない場合には、およそ犯罪の成立が認められないことになる場合

・加減的身分犯(不真正身分犯)
行為者に身分がなくとも犯罪となるが、身分があることによって刑が加重または減軽される

身分犯において、犯罪の成立要件として一定の身分を要求するのは、実質的に見れば、身分の存在によって行為の違法性や責任に影響があるから。

・疑似身分犯
犯罪の成立に必要な結果を発生させるため、一定の属性の存在が行為者に事実上要求されるが、犯罪の主体はその属性を備えたものに限定されていない犯罪。
ex強姦罪

2.法人
法人は、一般の罰則にいう「者」には含まれず、それを処罰する規定が存在する場合にのみ犯罪の主体となる。

・業務主処罰規定によって自然人の業務主が処罰される根拠
過失推定説
業務主として行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽くさなかった過失の存在を推定する規定であると解する
→業務主が注意を尽くしたことの証明がされない限り、刑事責任を免れない。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

2-2-1 総論 構成要件該当性 構成要件の意義

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

・構成要件とは、
立法者が犯罪として法律上規定した行為の類型

・構成要件を限定する要素としての故意過失を、構成要件的故意・構成要件的過失という。

・構成要件要素
①行為の主体
②行為
③結果
④行為と結果との間の因果関係
⑤故意過失
(⑥一定の状況)
(⑦特別の主観的要素)


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

2-1 総論 犯罪論の体系

・犯罪とは、
構成要件に該当する、違法で有責な行為をいう。

・犯罪は行為でなければならない。
単なる思想、内心の状態は処罰の対象にならない。

・構成要件
=法律により犯罪として決められた行為の類型。

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1-3 序論 罪刑法定主義

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.総説
法益に対する加害行為が、法律によって事前に犯罪として定められた行為についてのみ犯罪の成立を肯定することができる。

+憲法
第三十一条  何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

「法律の定める手続」には、犯罪を認定して刑罰を科す手続である刑事訴訟を規律する手続法ばかりでなく、そこにおいて運用される実体法も含まれる。

+憲法
第三十九条  何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

・罪刑法定主義の背後には民主主義の原理が存在する
=何が犯罪として処罰の対象となる家は、国民が正当に選挙された国会における代表者を通じて自ら決定するという原理。

・罪刑法定主義の背後には自由主義の原理が存在する。
何が犯罪かは法律によって定められるだけでは足りず、それが事前に定められている必要がある。
行為の予測可能性を担保
遡及処罰の禁止・事後法の禁止

2.法律主義
何が犯罪で、それに対していかなる刑罰が科せられるかは、国会が法律により定める必要がある。

+憲法
第七十三条  内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一  法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二  外交関係を処理すること。
三  条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四  法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五  予算を作成して国会に提出すること。
六  この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない
七  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

「委任」には委任に関する事項が特定されたものでなくてはならず、一般的包括的な委任は許されない。
←民主主義の原理から

・政令に罰則を定めるためには、実施されるべき法律に具体的な委任が存在することが必要

・国家公務員法による違反行為の人事規則への委任が憲法の許容する限度を超えるかどうか?
国公法102条1項が、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行為類型に属する政治的行為を具体的に定めることを委任するものであることは、同条項の合理的な解釈により理解し得る。

・条令について、より上位の法形式である政令については許されない罰則の一般的・包括的委任が規定されている点について。
法律主義は、形式的には法律による罰則の制定を要請するものであるが、その実質的根拠は、何が犯罪かは国民が決定するという民主主義の原理にある。
条例は住民の選挙により選出された議員によって議会により選定されるものであるから、その中に罰則を定めることを認めても、何ら民主主義の原理には反しない。
→条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておれば足りる

・判例法、慣習法による処罰の否定
裁判所は、罰則を適用することなく処罰することは許されない

・類推解釈の禁止
罰則を適用する場合には、解釈により罰則において処罰の対象とされていると解される行為のみを処罰することができる。

類推解釈とは、
問題となる行為が、罰則による処罰の対象に含まれないことを認めつつ、それにもかかわらず、処罰の対象となっている行為と害悪性において同等であることを理由に、処罰の対象とするもの。

3.事後法の禁止
・遡及処罰の禁止
事後的に制定された罰則を適用し、処罰することは許されない。
→行動に関する予測可能性が失われ、遡及処罰の可能性による委縮効果が発生し、国民の行動の自由が著しく害されるから。

・違法ではあっても刑罰が科されていなかった行為に事後的に刑罰を科すことも、処罰はされないという意味での予測可能性を害し行動の自由を損なうとともに、不可罰であった行為の遡及処罰自体不公正な処罰でもあるから、同様に、事後法禁止の原則に反すると解する余地がある。

+(刑の変更)
第六条  犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。

・訴訟法規定に関しては、新規定を適用することが原則であると解されており、公訴時効期間の廃止・延長についてその遡及適用が肯定されている。

・判例は不利益に変更した判例を遡及適用することにより犯人を処罰しても憲法39条に違反しない。
←刑法においては判例は形式的には法源ではありえない。
→被告人の救済は、具体的な事情に照らし、違法性の意識の可能性の欠如による免責などに求められるべき。

4.刑罰法規の適正
(1)総説
国民の権利自由を正当な理由なく侵害する罰則は、それが憲法の個別の条項に直接に違反するものでなくとも、違憲無効となる。
=実体的デュー・プロセス

(2)明確性の原則
不明確な罰則は、実質的に罪刑法定主義に違反し、許されない。
罰則の明確性の有無は、罰則自体について、一般的抽象的に判断されなければならない。
←あいまいな罰則の存在自体が委縮効果を持ち、国民の自由を侵害する。

・あいまいかどうかは、
通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによって決定すべき。

3.内容の適正さ
明確な罰則であっても、国民の自由を不当に侵害する罰則は、違憲無効であると解される。

・無害な行為を処罰する罰則は、根拠なく国民の自由を侵害するものであり、許されない。

・規制の目的に照らし、過度に広範な処罰規定は、国民の自由を不当に侵害するもので許されない。

+判例(S60.10.23)
理由
 一 被告人本人の上告趣意第一部の二ないし四及び第二部の一ないし四は、福岡県青少年保護育成条例(以下、「本条例」という。)一〇条一項、一六条一項の規定は、一三歳以上、特に婚姻適齢以上の青少年とその自由意思に基づいて行う性行為についても、それが結婚を前提とする真摯な合意に基づくものであるような場合を含め、すべて一律に規制しようとするものであるから、処罰の範囲が不当に広汎に過ぎるものというべきであり、また、本条例一〇条一項にいう「淫行」の範囲が不明確であるから、広く青少年に対する性行為一般そ検挙、処罰するに至らせる危険を有するものというべきであつて、憲法一一条、一三条、一九条、二一条の規定に違反すると主張し、弁護人立田廣成は、当審弁論において、被告人の右主張は憲法三一条違反をも併せ主張する趣旨である旨陳述するとともに、その上告趣意第一において、右の「淫行」の範囲に関し、青少年を相手とする結婚を前提としない性行為のすべてを包含するのでは広きに過ぎるから、「淫行」とは、青少年の精神的未成熟や情緒不安定に乗ずること、すなわち、誘惑、威迫、立場利用、欺罔、困惑、自棄につけ込む等の手段を用いたり、対価の授受を伴つたり、第三者の観覧に供することを目的としたり、あるいは不特定・多数人を相手とする乱交の一環としてなされる性行為等、反論理性の顕著なもののみを指すと解すべきであると主張する。
 そこで検討するのに、本条例は、青少年の健全な育成を図るため青少年を保護することを目的として定められ(一条一項)、他の法令により成年者と同一の能力を有する者を除き、小学校就学の始期から満一八歳に達するまでの者を青少年と定義した(三条一項)上で、「何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつの行為をしてはならない。」(一〇条一項)と規定し、その違反者に対しては二年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金を科し(一六条一項)、違反者が青少年であるときは、これに対して罰則を適用しない(一七条)こととしている。これらの条項の規定するところを総合すると、本条例一〇条一項、一六条一項の規定(以下、両者を併せて「本件各規定」という。)の趣旨は、一般に青少年が、その心身の未成熟や発育程度の不均衡から、精神的に未だ十分に安定していないため、性行為等によつて精神的な痛手を受け易く、また、その痛手からの回復が困難となりがちである等の事情にかんがみ、青少年の健全な育成を図るため、青少年を対象としてなされる性行為等のうち、その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止することとしたものであることが明らかであつて、右のような本件各規定の趣旨及びその文理等に徴すると、本条例一〇条一項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為をいうものと解するのが相当である。けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものをも含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目して単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とするこのような解訳は通常の判断能力を有する一般人の理解にも適うものであり、「淫行」の意義を右のように解釈するときは、同規定につき処罰の範囲が不当に広過ぎるとも不明確であるともいえないから、本件各規定が憲法三一条の規定に違反するものとはいえず、憲法一一条、一三条、一九条、二一条違反をいう所論も前提を欠くに帰し、すべて採用することができない。
 なお、本件につき原判決認定の事実関係に基づいて検討するのに、被告人と少女との間には本件行為までに相当期間にわたつて一応付合いと見られるような関係があつたようであるが、当時における両者のそれぞれの年齢、性交渉に至る経緯、その他両者間の付合いの態様等の諸事情に照らすと、本件は、被告人において当該少女を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性行為をした場合に該当するものというほかないから、本件行為が本条例一〇条一項にいう「淫行」に当たるとした原判断は正当である。
 二 被告人本人の上告趣意第二部の五(一)は、青少年に対する淫行につき地域により規制上差異があることを理由に本件各規定が憲法一四条の規定に違反すると主張するが、地方公共団体が青少年に対する淫行につき規制上各別に条例を制定する結果その取扱いに差異を生ずることがあつても憲法一四条の規定に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和二九年(あ)第二六七号同三三年一〇月一五日判決・刑集一二巻一四号三三〇五頁)の趣旨に徴し明らかであるかち、所論は理由がない
 三 被告人本人の上告趣意第二部の五(二)は、本件各規定は一八歳未満の者のみに対する性行為を禁止処罰の対象とし、一八歳未満の者と一八歳以上の者との間で異なる取扱いをしているところ、右年齢による差別に合理的な理由はないから、憲法一四条の規定に違反すると主張するが、この点は、青少年の範囲をどのように定めるかという立法政策に属する問題であるにとどまり、憲法適否の問題ではないから、所論は前提を欠く。
 四 被告人本人の上告趣意第二部の六は、児童福祉法三四条一項六号は「児童に淫行をさせる行為」のみを規制し、その適用範囲を児童の自由意思に属しない淫行に限つているにもかかわらず、本件各規定は青少年に対し淫行をする行為のすべてを規制の対象としていて明らかに法律の範囲を逸脱しているから、本件各規定は憲法九四条の規定に違反すると主張するが、児童福祉法三四条一項六号の規定は、必ずしも児童の自由意思に基づかない淫行に限つて適用されるものでない(最高裁昭和二九年(あ)第三九九号同三〇年一二月二六日第三小法廷判決・刑集九巻一四号三〇一八頁参照)のみならず、同規定は、一八歳未満の青少年との合意に基づく淫行をも条例で規制することを容認しない趣旨ではないと解するのが相当であるから、所論は前提を欠く。
 五 被告人本人の上告趣意第二部の七は、本条例は憲法九五条にいう特別法であるところ、同条所定の制定手続を経ていないから、本件各規定は憲法九五条の規定に違反すると主張するが、本条例が憲法九五条にいう特別法に当たらないことは明らかであるから、所論は前提を欠く。
 六 弁護人立田廣成及び被告人本人のその余の上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、いずれも適法な上告理由に当たらない。
 よつて、刑訴法四一四条、三九六条、一八一条一項但書により、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官牧圭次、同長島敦の各補足意見、裁判官伊藤正己、同谷口正孝、同島谷六郎の各反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。

4.罪刑の均衡
・定められた犯罪に対して、きわめて著しく均衡を失する法定刑を定める罰則は、立法最良の範囲を超え、憲法31条に反し、違憲無効と解すべき。

限定的法律解釈として、均衡を失する部分の法定刑の適用を制限することは可能。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1-2 序論 刑法の基礎

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.総説
①犯罪がもたらす害悪の側面で、いかなる行為が犯罪として処罰の対象となるのかという問題

②犯罪とされた行為を行った行為者の主観面で、いかなる条件が充たされたとき犯罪を行ったとして行為者が処罰の対象となるのかという問題

個人のいかなる行為を刑罰により国家が規制するかという問題であるから、個人と社会・国家の関係についての一定の理解を前提とした政策的考慮によって決められるべきものである。

2.法益保護主義
法的に保護に値する利益の保護を目的とし、法益を侵害し、または法益侵害の危険をもたらす行為を犯罪として禁止・処罰する

現在は社会倫理の異時・強制自体は国家の任務ではないとする理解から、法益保護主義の立場が支持される。

・刑法の補充性
刑罰は、他の保護手段では法益保護のために不十分なときのみ、最後の手段として用いられるべきもの

・刑法の断片性
法益を侵害しまたは危険をもたらす行為すべてが犯罪とされているわけではなく、処罰が必要かという視点から限定された範囲の行為だけが、部分的断片的に犯罪とされているに過ぎない。

3.責任主義
行為者に加害行為を行ったことについての責任が認められることが必要

責任が要求されることは、犯罪に対する反作用・正妻としての刑罰に非難の意味が含まれていることに関係する。
非難に値する行為のみが犯罪として処罰の対象となり得る。
→非難可能性という意味での責任の要件
=その行為に出ないことが可能であったこと(他行為可能性)が必要。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1-1 序論 刑法~犯罪と刑罰の法~

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

・刑法とは、
いかなる行為が犯罪であり、それに対していかなる刑罰が科されるかを規定した法。

+(他の法令の罪に対する適用)
第八条  この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。

・犯罪とは、
それに対して刑罰が科されるべき行為

刑法総論
およそ犯罪となるために必要である一般的な成立要件を明らかにすることを目的にする。

刑法各論
刑法総論において明らかにされた一般的な成立要件を前提としつつ、個別の犯罪における固有の成立要件を明らかにする

・刑罰は、
犯罪に対する反作用であり、犯罪を行ったものに対して科される制裁

・刑罰の目的
応報刑論
=犯罪に対する応報

目的刑論
=将来の犯罪防止

犯罪から国民を保護することをその任務とする現代国家においては、基本的に犯罪予防の見地から理解されるべき。

・一般予防
刑罰の予告と賦課により、一般国民による犯罪遂行を抑止すること

・特別予防
犯罪を犯した者に刑罰を賦課することにより、当該犯罪者が将来犯罪を行うことを抑止すること

・刑罰には、それが賦課される者にとって苦痛となるという害悪性が必要であるが、さらにそこには非難という特別の意味が込められている。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

佐々木毅 民主主義という不思議な仕組み 3 「みなし」の積み重ねの上で民主政治は動く

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

多くの人々が政治に参加し、限られた時間内に意思決定を行うための仕組み開発。

1.代表と代理
(1)人民を代表するとは?
・代表者を人民の使用人であるとする考え方には、代表を代理に読み替える姿勢もある。
←一般意思は代表されえないとするルソーの立場

・代理の場合、代理人が自主的に行動する余地は極めて狭い。
代理は人民の意思を伝達し、それに適合的な意思表示をする役割に徹することになる。

しかし、政治の舞台においては、
「誰が本人であるか」「どのようにしてその意思を確認するか」は、単純ではない。
←人民とは抽象的な概念だから。
下手をすると人民というものは雲散霧消する危険もある。

直接民主制の強みは人民をあくまでも見えるものとして現存させることによって、雲散霧消させないようにしている点。

・代表は代理に比べると、代表者がより自由度を持つ。能動的であり裁量の範囲が広い。

代表制が機能するためには、
代表者が人民を代表していると「みなす」ことが不可欠。
みなすことによって代表者は初めて、決定を下し、物事の処理をすることができる。

代表者は人民にはない「賢明な判断力」をもっているという積極的な意味もある。

代表制は「みなす」の論理を内包しながら、ルーズにならないようにしないといけない。
ルーズになると「人民のための独裁者」が出現

選挙は「みなす」ということの意味を実質的なものにし、それを限定するうえで大切。

(2)選挙~政策と選択のための環境づくり~
・全国的に衡平な競争が繰り広げられること、有権者が実質的に「選択」できることが大事な条件になる。
「人民による政治」は、公平な競争と一体のものとして考えるべき。

・選挙は政策を選択するというよりは、誰を、あるいはそれを通してどの政党を自分たちの代表とみなすかをめぐって、政策の担い手を選択する場となる。

・選択のための環境整備をする必要がある。
公職選挙法やマスコミの関与
規制は厳しければよいというものでもない。候補者の名前を連呼することしかできなくなる。

・マニフェストは願望の羅列になってしまってはならない。
マニフェストの存在意義は「みなし」の選択の空洞化を防ぐために、何を約束したのかを明確にし、政治責任の問題を「積み重ねて」議論できるようにする点にある。

2.「代表する」と「代表させる」
(1)選挙民を代表するとは
・代表する側は誰を代表するのか?
国民を代表するのか、選挙民を代表するのか。

・国民を代表するとしても、国民とはだれのことか。
選挙民が直ちに国民とはならないとしても、選挙民ではないこと以上に特定できるのか。

・選挙民を代表するとしても、選挙民の関心や利益が何かを確定することは難しい。
結局、代表したい人々を代表することに帰着する。

(2)政党と先寄与制度の役割
・政党に属することによって、議員たちは、国民と選挙民のどちらを代表するかという問題から相当程度解放される。

・政党とは何か
政党あっての議員か?
政党は議院の寄せ集めにすぎないか?

寄せ集めに過ぎないとすると、政党の求心力が弱く、実質のある政権公約が作れない。派閥の内部抗争が起きやすくなる。

・「みなし」の論理が暴走するのを防ぐために選挙という手続が重要。

・二大政党が小選挙区制で政権を争うとすれば、国民は事実上政権を選択することができる。
比例代表の場合、多党制となり、背英検は政党間の話し合いで決まり、国民が政権を事実上選択することはできない。

日本で中選挙区が廃止されたのは、政策面での政党間の競争が阻害され、候補者個人の選挙民に対するサービス合戦になってしまっていたから。

(3)民主政治における「強い少数者」の存在
・選挙がないとしても、強い要望を持つ人たちは、政治への働きかけを止めることはない。
自らの主張を政治に「代表させる」ために政治に積極的に働きかける。

強い主張や意向といっても当事者にとって「見返り」のはっきりしたものでなければならない。
この点で政治全体を動かさなければ実現できないような主張や意向は、あまりに大きな組織力やお金が必要であるためおのずから除外される。
→狭い(目標と見返りがはっきりしている)ながらも強い利益や要求が残る。
=狭い業界利益こそが関係者を強力に動かし、資金を提供させる力を持つ。

選挙時以外の日々において「代表させる」チャンスをもっているのはむしろ狭い業界的利益である。
少数者の結束力と組織力がものをいう。

・この観点から、選挙で表明された多数者の意向によって、政治をどう現実に拘束するかが問題となる。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

債権総論1-3 債権法序論 債権総論の内容

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.債権総論の内容
(1)債権の目的
給付内容の違いに着目していくつかの種類の再建を取り上げ、債権の種類ごとに内容的な規律を定めている。

種類として、
特定物債権
種類債権
利息債権
選択債権
・・・

(2)債権の効力
債務者が債務を任意に履行しない場合において、
履行の強制
債務不履行による損害賠償

債権は債務者に対してのみ主張でき、債務者以外の第三者には主張できないのが原則(債権の相対性)
ところが、
債権の最終的な引当になるのは債務者の有する財産(責任財産)であることから、責任財産を充実させたり不当な現象を防止したりすることが認められている。

債権者代位権
詐害行為取消権

(3)多数当事者の債権関係
債権者または債務者が複数いる場合。

分割債権関係
不可分債権関係
連帯債務
保証債務
・・・

(4)債権譲渡
債権者の交代

他にも、
債務者の交代に当たる債務引受
契約当事者の地位が移転する契約上の地位の譲渡

(5)債権の消滅
債権の消滅原因

弁済
代物弁済
供託
相殺
更改
免除
混同


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

債権総論1-2 債権法序論 債権法の意義と内容

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.債権法の意義
(1)財貨移転秩序に関する法としての債権法
債権法は財貨移転秩序を規律する法であるといえる。
物権法は財貨帰属秩序に関する法といえる。

(2)債権法の意義

2.債権法の内容と特色
(1)債権法の内容
・債権法総則
債権の目的
債権の効力
多数当事者の債権及び債務
債権の譲渡
債権の消滅

・契約
・事務管理
・不当利得
・不法行為

(2)債権法の特色
・任意法規性
契約法を中心とする債権法は、原則として任意法規である。
←債権には排他性がないので、第三者に影響を与えることが少なく、契約中の原則などの当事者の意思を尊重するシステムがとられている。

・普遍性
国際的に統一される傾向

・信義則の支配
債権債務関係は当事者の信頼関係の上に成り立つものであるから。
債権法において特に強く働く。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});