佐々木毅 民主主義という不思議な仕組み 3 「みなし」の積み重ねの上で民主政治は動く

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多くの人々が政治に参加し、限られた時間内に意思決定を行うための仕組み開発。

1.代表と代理
(1)人民を代表するとは?
・代表者を人民の使用人であるとする考え方には、代表を代理に読み替える姿勢もある。
←一般意思は代表されえないとするルソーの立場

・代理の場合、代理人が自主的に行動する余地は極めて狭い。
代理は人民の意思を伝達し、それに適合的な意思表示をする役割に徹することになる。

しかし、政治の舞台においては、
「誰が本人であるか」「どのようにしてその意思を確認するか」は、単純ではない。
←人民とは抽象的な概念だから。
下手をすると人民というものは雲散霧消する危険もある。

直接民主制の強みは人民をあくまでも見えるものとして現存させることによって、雲散霧消させないようにしている点。

・代表は代理に比べると、代表者がより自由度を持つ。能動的であり裁量の範囲が広い。

代表制が機能するためには、
代表者が人民を代表していると「みなす」ことが不可欠。
みなすことによって代表者は初めて、決定を下し、物事の処理をすることができる。

代表者は人民にはない「賢明な判断力」をもっているという積極的な意味もある。

代表制は「みなす」の論理を内包しながら、ルーズにならないようにしないといけない。
ルーズになると「人民のための独裁者」が出現

選挙は「みなす」ということの意味を実質的なものにし、それを限定するうえで大切。

(2)選挙~政策と選択のための環境づくり~
・全国的に衡平な競争が繰り広げられること、有権者が実質的に「選択」できることが大事な条件になる。
「人民による政治」は、公平な競争と一体のものとして考えるべき。

・選挙は政策を選択するというよりは、誰を、あるいはそれを通してどの政党を自分たちの代表とみなすかをめぐって、政策の担い手を選択する場となる。

・選択のための環境整備をする必要がある。
公職選挙法やマスコミの関与
規制は厳しければよいというものでもない。候補者の名前を連呼することしかできなくなる。

・マニフェストは願望の羅列になってしまってはならない。
マニフェストの存在意義は「みなし」の選択の空洞化を防ぐために、何を約束したのかを明確にし、政治責任の問題を「積み重ねて」議論できるようにする点にある。

2.「代表する」と「代表させる」
(1)選挙民を代表するとは
・代表する側は誰を代表するのか?
国民を代表するのか、選挙民を代表するのか。

・国民を代表するとしても、国民とはだれのことか。
選挙民が直ちに国民とはならないとしても、選挙民ではないこと以上に特定できるのか。

・選挙民を代表するとしても、選挙民の関心や利益が何かを確定することは難しい。
結局、代表したい人々を代表することに帰着する。

(2)政党と先寄与制度の役割
・政党に属することによって、議員たちは、国民と選挙民のどちらを代表するかという問題から相当程度解放される。

・政党とは何か
政党あっての議員か?
政党は議院の寄せ集めにすぎないか?

寄せ集めに過ぎないとすると、政党の求心力が弱く、実質のある政権公約が作れない。派閥の内部抗争が起きやすくなる。

・「みなし」の論理が暴走するのを防ぐために選挙という手続が重要。

・二大政党が小選挙区制で政権を争うとすれば、国民は事実上政権を選択することができる。
比例代表の場合、多党制となり、背英検は政党間の話し合いで決まり、国民が政権を事実上選択することはできない。

日本で中選挙区が廃止されたのは、政策面での政党間の競争が阻害され、候補者個人の選挙民に対するサービス合戦になってしまっていたから。

(3)民主政治における「強い少数者」の存在
・選挙がないとしても、強い要望を持つ人たちは、政治への働きかけを止めることはない。
自らの主張を政治に「代表させる」ために政治に積極的に働きかける。

強い主張や意向といっても当事者にとって「見返り」のはっきりしたものでなければならない。
この点で政治全体を動かさなければ実現できないような主張や意向は、あまりに大きな組織力やお金が必要であるためおのずから除外される。
→狭い(目標と見返りがはっきりしている)ながらも強い利益や要求が残る。
=狭い業界利益こそが関係者を強力に動かし、資金を提供させる力を持つ。

選挙時以外の日々において「代表させる」チャンスをもっているのはむしろ狭い業界的利益である。
少数者の結束力と組織力がものをいう。

・この観点から、選挙で表明された多数者の意向によって、政治をどう現実に拘束するかが問題となる。


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