12-2 多数当事者訴訟 共同訴訟および訴訟参加の諸類型

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.共同訴訟の諸類型
共同訴訟
=1つの訴訟に複数の原告または複数の被告が関与する訴訟

・訴訟共同の必要がある
=共同訴訟にしないと訴え自体が不適法となる場合。

・合一確定の必要がある
=共同訴訟が成立した場合、共同訴訟人の足並みをそろわせて、それによって判決の内容の統一を図る必要がある場合。

・通常共同訴訟
=訴訟共同の必要も合一確定の必要もない

・固有必要的共同訴訟
=訴訟共同の必要と合一確定の必要の双方がある

・類似必要的共同訴訟
=訴訟共同の必要はないが、合一確定の必要はある

・通常共同訴訟(同時審判申出訴訟)
=訴訟共同の必要はなく、合一確定の必要もないが、弁論の分離及び一部判決が禁じられる

2.訴訟参加の諸類型
訴訟参加
=第三者が自らの利益を守ることを目的として既存の訴訟に参加するための手段

・当事者参加
参加人が当事者として参加
参加人は、自ら請求を定立したうえで、他人間の訴訟において訴訟追行を行う

・補助参加
参加人が当事者とならずに参加する形態
参加人は、自ら請求を定立せずに、既存当事者の一方を勝訴させることを目的として他人間の訴訟において訴訟追行をする。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

7-3 事案の解明 裁判上の自白

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.自白の意義
・自白
=相手方の主張を争わない旨の当事者の陳述(行為としての自白)または、その結果として生じた当事者間に争いのない状態(状態としての自白)

・裁判外の自白は、裁判手続きの外における過去の出来事であるから、他の事実一般と異なるところはない。
=事実認定の対象として自由心証に基づいて審理される。

・裁判上の自白
=訴訟の口頭弁論または弁論準備手続の期日における弁論としての陳述

・裁判上の自白の効果
①証明不要効
自白された事実は証拠による証明を要しない

②審理排除効
裁判所は自白された事実に関して審理を行ってはならない

③判断拘束効
裁判所は自白された事実を必ず判断の基礎にしなければならない。

④撤回制限効
当事者は自白の撤回ができなくなる

2.自白の成立要件
①口頭弁論または弁論準備手続における弁論としての陳述(弁論としての陳述)
②事実としての陳述(事実の陳述)
③相手方の主張と一致(主張の一致)
④自己に不利益な陳述(不利益性)

(1)弁論としての陳述
・口頭弁論または弁論準備手続期日における事実上の主張としての陳述でなければならない
→裁判外で相手方の主張を認めても自白にはならない
当事者尋問の中での陳述は証拠資料になるだけであり、自白にはならない

・弁論準備手続きにおける陳述でも自白は成立する。
←179条は自白は裁判所における行為であることを規定するのみであり、口頭弁論に限定していない。
弁論準備手続において自白の成立を認めないとすると、争点整理の過程で争点縮小機能が働かないことになって不都合

・争点整理作業が完了するまでは、自白の撤回は、争点整理後よりも柔軟に認められるものと解すべき。
←争点整理の段階では、当事者は相手方の主張への戦略的な対応として自白をすることもあるが、争点整理の進展により状況が変化した場合には、それに応じて自白を撤回する必要が生じる。かかる場合、当事者の合理的意思解釈として、当初の自白は、相手方の主張の変化を黙示の解除条件とするものと考えることができる。

・擬制自白についても、弁論準備手続においても認められる。
+(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条  裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
2  裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる。
3  裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。
4  前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
5  第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。

+(自白の擬制)
第百五十九条  当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2  相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3  第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。

ただし、擬制自白には撤回すべき陳述がないので撤回制限効は観念できず、審理排除効は、審理の最初または途中に自白が成立した場合に、以後の審理を排除する効果なので、審理終了時に生じる擬制自白とは相いれないものであり、判断拘束効は口頭弁論終結時に発生するので、弁論準備手続の終結時点で効果の発生が観念し得るのは証明不要効のみ。

(2)事実の陳述
ⅰ)間接事実の自白
・判例は自白の効果が生じるのは主要事実のみであり、間接事実の自白には裁判所拘束力はなく、当事者拘束力もないとする。

+判例(S31.5.25)
理由
 上告代理人根本松男、同松本乃武雄の上告理由第一点乃至第三点について。
 被上告代理人が、第一審口頭弁論において上告代理人主張にかかる「被上告人が上告人の父A(被上告人の叔父)から金一一万円を受取つた事実」を認める旨述べたことは所論のとおりである。しかしながら右の事実は、本件主要の争点たる「本件土地をBから買受けた者は被上告人なりや上告人なりや」の点に関し、この事実認定の資料となり得べき、いわゆる間接事実に過ぎないであつて、かかる事実については、たとえ当事者の自白ありとしても、裁判所は必ずしも、その自白に拘束されるものではなく、当事者が後にその自白の内容を訂正した場合において、裁判所はその訂正された自白の内容を真実に合するものとして主要争点たる事実の有無の判断の資料としてもさしつかえないものと解すべきである。原審は、その判示するところから推測すれば、結局被上告代理人が後に訂正した自白の内容に従つて、たとえかかる事実ありとしても、本件不動産の買主を被上告人であると認定するにその反証とするに足らないと判断したに帰着するものであつて、何等違法はなく、論旨は、右自白にかかる事実がいわゆる「間接事実」に関するものであることを度外しての立論であつて採用することはできない。
 同第四点について。
 原判決の認定するところによれば、本件土地は被上告人の所有であり、上告人名義の所有権取得の登記は事実に吻合しないものであること明らかであるから、特段の契約関係等のみとめられない本件において、被上告人が上告人に対し右登記の抹消を請求し得るものとした原判決は正当であつて論旨は理由がない。同第五点について。
 所論は結局原審が適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰着するものであつて適法な上告の理由とならない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

+判例(S41.9.22)
理由
 上告代理人渡辺大司の上告理由(一)について。
 上告人の父Aの被上告人らに対する三〇万円の貸金債権を相続により取得したことを請求の原因とする上告人の本訴請求に対し、被上告人らが、Aは右債権を訴外Bに譲渡した旨抗弁し、右債権譲渡の経緯について、Aは、Bよりその所有にかかる本件建物を代金七〇万円で買い受けたが、右代金決済の方法としてAが被上告人らに対して有する本件債権をBに譲渡した旨主張し、上告人が、第一審において右売買の事実を認めながら、原審において右自白は真実に反しかつ錯誤に基づくものであるからこれを取り消すと主張し、被上告人らが、右自白の取消に異議を留めたことは記録上明らかである。
 しかし、被上告人らの前記抗弁における主要事実は「債権の譲渡」であつて、前記自白にかかる「本件建物の売買」は、右主要事実認定の資料となりうべき、いわゆる間接事実にすぎないかかる間接事実についての自白は、裁判所を拘束しないのはもちろん、自白した当事者を拘束するものでもないと解するのが相当である。しかるに、原審は、前記自白の取消は許されないものと判断し、自白によつて、AがBより本件建物を代金七〇万円で買い受けたという事実を確定し、右事実を資料として前記主要事実を認定したのであつて、原判決には、証拠資料たりえないものを事実認定の用に供した違法があり、右違法が原判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨はこの点において理由があり、原判決は破棄を免れない。
 よつて、その余の論旨に対する判断を省略し、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田誠)

ⅱ)補助事実の自白
・判例は裁判所拘束力、当事者拘束力を否定
+判例(S52.4.15)
理由
 上告代理人桑名邦雄、同中村喜三郎の上告理由書記載の上告理由第一点及び第二点について
 論旨は、所論の各書証の成立の真正についての被上告人の自白が裁判所を拘束するとの前提に立つて、右自白の撤回を許した原審の措置を非難するが、書証の成立の真正についての自白は裁判所を拘束するものではないと解するのが相当であるから、論旨は、右前提を欠き、判決に影響を及ぼさない点につき原判決を非難するに帰し、失当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 同第三点ないし第一一点及び上告状記載の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、上告理由第一、二点について裁判官吉田豊の意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

・補助事実は、証拠能力や証拠の証明力に影響を与える事実のことであるから、当事者による自治的な争点の設定の問題ではなく、基本的には証拠の評価の問題であって、主として裁判所の自由心証が支配する領域である。

・文書の成立の真正については、証拠として採用されるか否かが左右されるという点で他の補助事実とは位置づけが異なる
→主要事実の自白に匹敵するものと考える余地も。
処分証書についても同様。

ⅲ)公知の事実の自白
・当事者が意図的に公知の事実に反する自白をしている場合は、当事者の私的自治の範囲内の問題として、自白の効果を認めるべき!

(3)主張の一致
時間的順序としては、いずれの主張が先であってもよい。

(4)不利益性
いかなる陳述を不利益と考えるか
ⅰ)証明責任説
相手方が証明責任を負う事実を他方の当事者が認める場合

+判例(S54.7.31)
理由
 上告代理人小竹耕、同山根祥利の上告理由について
 原判決及び記録によると、原審は、被上告人が訴外西田とめによる本件土地の取得時効を主張するにあたり、まず同女が大正年間に訴外広瀬吉蔵から本件土地を賃借してその占有を開始した旨を主張し、後に本件土地の取得時効の成立を争う上告人が右主張を援用するに及んでこれを撤回し、上告人がその撤回に異議を述べたのに対して、占有開始原因がどのようなものであるかは取得時効の要件ではなく、したがつて占有の開始が賃貸借による旨の被上告人の主張は自白にあたらないとの見解のもとに、その撤回を認め、訴外西田とめが大正一五年六月三〇日当時本件土地に居住していたとの事実に基づいて同日を始期とする本件土地の取得時効の成立を認めたことが明らかである。
 しかしながら 占有者は所有の意思で占有するものと推定されるのであるから(民法一八六条一項)、占有者の占有が自主占有にあたらないことを理由に取得時効の成立を争う者は右占有が他主占有にあたることについての立証責任を負うというべきであり、占有が自主占有であるかどうかは占有開始原因たる事実によつて外形的客観的に定められるものであつて、賃貸借によつて開始された占有は他主占有とみられるのであるから(最高裁昭和四五年(オ)第三一五号同年六月一八日第一小法廷判決・裁判集民事九九号三七五頁参照)、取得時効の効果を主張する者がその取得原因となる占有が賃貸借によつて開始された旨を主張する場合において相手方が右主張を援用したときは、取得時効の原因となる占有が他主占有であることについて自白があつたものというべきである。
 してみると、本件においては、本件土地の占有が賃貸借によつて開始されたとする被上告人の供述が自由にあたることが明らかであるから、まず自白の撤回の点について右自白が真実に反しかつ錯誤に基づくものであるかどうかを審理し、その結果、自白の撤回が許される場合には本件土地の自主占有開始の時期及び原因について、自白の撤回が許されない場合には賃貸借による占有が自主占有に変更されたことを裏付ける新権原の存否について、それぞれ審理する必要があるものというべきであるところ、これと反する見解のもとに、これらの点について何ら審理をすることなく、訴外西田とめによる本件土地の取得時効の成立を認めた原判決には、法令の解釈の誤りによる審理不備の違法があるというべきであつて、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
 そして、叙上の点についてはさらに審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すのが相当である。
 よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
  (横井大三 江里口清雄 高辻正己 環昌一)

・自白をしたことで証明責任からの解放という有利な地位を与えたのであり、自白の撤回により一方的にその期待的地位を奪うことは許されない!

・ある事実の自白の撤回制限効は、その事実の証明責任を負う当事者には生じず、その相手方にのみ生じる。

ⅱ)敗訴可能性説
敗訴につながる可能性のある事実を他方の当事者が認める場合
自白が相手方に与える期待的地位は、証明責任からの解放のみに限られるわけではない。

ⅲ)「要件」としての意義
不利益性は、自白の成立要件ではなく撤回制限効の発生要件として考えるべきでは?

ⅳ)不利益要件不用説
争点整理手続の結果を尊重する観点からは、ひとたび両当事者の事実主張に一致があれば、いずれの当事者も、それをみだりに撤回することは許されない。

3.自白の効果
(1)証明不要効
証拠裁判主義は、事実認定の過程における公正性や客観性を担保するための手段であるところ、当事者の間で事実に関する主張が一致している場合には、民事訴訟の対象が私的な紛争である以上、あえて費用や時間を要する証拠調べを行うことによって公正性や客観性を担保する必要はない。

+(証明することを要しない事実)
第百七十九条  裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

・証明不要効については、間接事実や補助事実であれ肯定される。

(2)判断拘束効
裁判所は、自白された事実と異なる事実認定をすることは許されなくなる
←弁論主義のもとでは訴訟資料の提出は当事者の権能であり、当事者双方が一致して主張した事実を尊重すべきであるので、裁判所は自白された事実に拘束されるものと考えられるから。

(3)審判排除効
自白が成立すると、その事実に関する裁判所の以後の審理が許されなくなる

(4)撤回制限効
自白を構成する事実上の主張を当事者が事後に撤回することが制限される。

・根拠
自白機能保障説
自白は、その結果として審判排除効や判断拘束効が生じることから、相手方に審理の予定や証拠確保の不要性などに関する信頼をもたらすとともに、争点整理における効率的な審理という公益を生じさせる行為である。また、自白は、通常の訴訟行為のような一方的な行為ではなく、相手方との主張の一致をともなううえに、裁判所を交えた3者間の争点整理の中でなされる意思表示であるから、審理上の契約に準じた意味を持つともいえる。
このように、自白には通常の訴訟行為と異なる特別な効果や機能があるので、そうした効果や機能を保障するために、自由な撤回が制限される!!!

・自白撤回の要件
①相手方が自白の撤回に同意した場合
←撤回制限効の重要な目的は相手方の信頼の保護であるし、争点整理の実効性の確保も両当事者の納得と協力が不可欠であるので、相手方が同意する以上はそれに従ってよいからである。
相手方の同意は明示である必要はなく、撤回に異議を述べずに応答すれば同意があったものとして扱われる。

+判例(S34.9.17)
理由
 上告代理人人見福松の上告理由第一、二点について。
 しかし民訴三六三条二項は、訴の取下についての同法二三六条二項を準用していないから、控訴の取下をなすについては、相手方の同意を要しないものと解すべきである。また、控訴の取下を書面を以てする場合はその書面を裁判所に提出するを以て足るのであり、それが相手方に送達されることを必要とするものではない。尤も、民訴三六三条二項によつて準用される同法二三六条四項は「訴状送達ノ後ニ在リテハ取下ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス」と規定しているが、右は右送達により相手方に控訴取下の事実を知らしめこれに対処するについて遺漏なからしめんとした便宜的な趣旨に出ているものであつて、控訴取下の効力の発生要件を規定したものではないのである。
 本件において、被上告人は、第一審で敗訴した部分につき、原審に附帯控訴の申立てをしたが、その後、昭和二九年一〇月八日附帯控訴取下書を原審に提出したのであるから、これとともに、附帯控訴は相手方に対する送達をまたずして、取下となつたものといわなければならない。
 されば原判決には、所論の違法はなく、論旨はいずれも採用しがたい。
 同第三点について。
 しかし本件債務は取立債務ではなく、持参債務と認むべきものであることは、原審が証拠によつて認定したところであつて、その認定は挙示の証拠に照して是認できる。所論はひつきよう原審がその裁量権の範囲内において、適法にした証拠の取捨判断並びに事実認定を非難するに帰するから採るを得ない。されば所論信義則および経験則違反の主張もその前提を欠くものであるから、これまた採用し得ない。
 同第四点について。
 しかし所論の点に関し、原審が、判示の如き理由によつて、所論書面は上告人に対してなされた催告並びに条件付契約解除の意思表示として有効であるとした判断は正当であつて、当裁判所にも支持される。その末尾に所論の「右書面による催告を無効とすべきでない」と判示している趣旨は、ただ単に催告だけについていうのではなく、条件付契約解除の意思表示をも含めての意味であることは、判文の全趣旨によつて首肯するにかたくないから論旨はいずれも理由がない。
 同第五点について。
 しかし被上告人が第一審においてなした所論指摘の主張事実が、原審昭和三〇年三月五日の口頭弁論において、原判決事実摘示のとおり訂正されたことは記録上明らかである。そして昭和一九年五月二〇日に当初の賃貸借が成立したことは当事者間に争いがなかつたのであるから、右の訂正は、自白の撤回に当るものというべきところ、上告人はこれに対して異議を述べた形跡を認めることはできないから、右自白の撤回は有効になされたものといわなければならない
 ところで、右訂正された被上告人の主張によれば、右昭和一九年五月二〇日に締結された賃貸借は、上告人らの主張する如く、一旦解除されたが、判示の如き事情から、その後、さらに、従前の契約と同一条件で賃貸されるに至つたというのであり、原審はこれを認めて、判示のように認定するに至つたのである。右原審の事実認定は挙示の証拠に照して首肯するにかたくない。
 論旨は、このような場合には、「被上告人の自白に反する供述はそのままでは証拠にならない」旨主張するが、採証上そのような法則はないから論旨は採るを得ない。
 論旨はまた、原審は被上告人の新たな主張に基き一審と異なる事実を認定したのであるから、かかる場合には、一審判決を破棄すべきである旨主張するが、既に前叙の如く、上告人は訂正された右新たな事実の主張に異議を述べなかつたのであるし、右主張事実の訂正は訴訟物の同一性を左右するものではないのであつて、訴を変更したものともいうことを得ないのであるから、このような場合に、一審判決を取消すべきものでないことは、多くいうをまたないところである。それゆえ原判決には所論の違法はなく、論旨は採るを得ない。
 同第六点について。
 しかし所論支払猶予の事実は、原審の是認しないところであるから、原審がその確定した事実関係のもとにおいて、所論弁済の提供は、催告期間経過後のものであること、したがつて催告に対する提供としては不適法のものであるとした判断は正当である。この点に関する所論はひつきよう原審の認定に副わない事実を前提とするものであるから採るを得ない。
 ただ原審が、所論昭和二六年一月分から同年五月二六日までの分の弁済供託をも不適法のものなるが如く判示した部分は、その真の趣意は兎に角として、表現の方法において誤解の生じ易い点のあることを否定し得ない。しかしこの部分は、原審において弁論の対象とはなつていないのであるから(附帯控訴の取下があつたことによつて)、右の部分の判示は蛇足であつたといわなければならない。それゆえ仮に所論の違法が認められるとしても、その違法は原判決に影響を及ぼさないものと考えられる。さればこの点に関する論旨も理由ないものとして採用しがたい。
 同第七点について。
 しかし所論の点に関する原審判断の正当であることは第四点において説明したとおりであり、所論はひつきよう独自の見解を前提として原判決に所論の違法ある如く主張するものであるから採るを得ない。
 同第八点について。
 所論はひつきよう原審の裁量に属する証拠の証明力を争うものに過ぎないから適法の上告理由にはならない。よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 高木常七 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

②相手方または第三者の刑事上罰すべき行為によって自白をするに至った場合
←このような場合は再審事由に該当するものとされており(338条1項5号)、適正手続きの観点からも撤回を許容すべき。
ただし、本来の再審の場合と異なり、確定判決の既判力を解除するものではないので、有罪判決の確定等(338条2項)は必要ない。
+判例(S36.10.5)
理由
 上告代理人岩沢誠、同藤井正章の上告理由第一点について。
 しかし、判決確定前に民訴四二〇条一項五号前段所定の刑事上罰すべき他人の行為による自白が効力がない旨の主張をするには、同条二項の要件を具備する必要がないものと解するを相当とするから、原判決には所論の違法はない。
 同第二点について。
 しかし、原判決は、その理由の冒頭において前控訴審証人Aの判示証言部分は、判示各証拠と対照すると措信できず、他に本件手形が控訴人(被上告人、被告)によつて正当に振出されたものと認めるに足りる証拠がない旨説示しているから、原判決には所論の判断遺脱はない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

+(再審の事由)
第三百三十八条  次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。
一  法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二  法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
三  法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
四  判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯したこと。
五  刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。
六  判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものであったこと。
七  証人、鑑定人、通訳人又は宣誓した当事者若しくは法定代理人の虚偽の陳述が判決の証拠となったこと。
八  判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと。
九  判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。
十  不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること。
2  前項第四号から第七号までに掲げる事由がある場合においては、罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。
3  控訴審において事件につき本案判決をしたときは、第一審の判決に対し再審の訴えを提起することができない。

③自白された事実が真実であるという誤信に基づいて自白がなされた場合。
反真実と錯誤の両方がともに要件であるが、反真実の証明があれば錯誤が証明される。
+判例(S25.7.11)

 上告代理人高井吉兵衛上告理由は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。
 第一点について。
 論旨は、訴訟上自白の徹回は、相手方において其の自白を援用する以上其自白は錯誤に出でたること及び其取消を主張することの二事実があつて初めて裁判所はその自白の取消の適否を判断すべきものであると主張する。しかし記録を調べて見るに、被上告人(被控訴人)は所論三万円の小切手について従前の主張を徹回し之と相容れない事実を主張したことが明らかであるから被上告人(被控訴人)は右三万円の小切手についての自白の取消を主張したものと解すべきは当然である。そして原審においては、被上告人(被控訴人)が右三万円についての主張を徹回したのは錯誤に出でにるものであることが明らかであると認定して居り其の認定は相当であると認められるから、原審において自白の取消につき所論のように判断をしたことは当然であつて何等違法はない。
 第二点第三点について。
 当事者の自白した事実が真実に合致しないことの証明がある以上その自白は錯誤に出たものと認めることができるから原審において被上告人の供述其他の資料により被上告人の自白を真実に合致しないものと認めた上之を錯誤に基くものと認定したことは違法とはいえない。論旨は独自の見解に基くものであるから採用し難い。
 よつて民法第四〇一条、第八九条、第九五条により主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 (裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

・自白の撤回の効果
従前の自白を構成する陳述は、新たな主張や変更された認否に置き換えられることになる。

4.権利自白
・「法規の存否や内容」や「法的評価概念」に関する相手方の主張については、これを認める陳述には格別の法的効果はない。

・「先決権利関係」や「法的評価概念」に関する主張を認める応答については議論がある。
事実自白といえども、その結果は最終的に法律効果の発生や不発生に結びつくことを考えると、事実自白と権利自白の間に本質的な差異を見出すべきではない。また、請求の認諾に法的効果が認められている以上、権利自白に法的効果を認めない理由は認めがたい。
たしかに、権利自白は事実自白よりも当事者の誤解に基づいてなされる可能性は高いとはいえようが、それは裁判所が当事者の真意をいかに確認するかという次元の問題であり、権利自白の法的効果を否定する根拠にはならない。

・他の立場として
一般的には権利自白の法的効果を認めないが、通常人が日常的に用いる程度の法概念については、事実自白と同様に当事者が理解をして処分し得るので、事実自白と同様に法的効果を認めることができるという見解。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

7-2 事案の解明 主張の規律

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.「事実上の主張」と「法律上の主張」
・主張
=立証と並んで、裁判所に判断資料を提出する当事者の行為

・事実上の主張
=主要事実、間接事実、補助事実、事情などの存否および内容に関する主張

・狭義の法律上の主張
=実体法規に主要事実を当てはめた結果としての具体的な権利(権利の発生・変更・消滅などの法律効果)の主張

・広義の法律上の主張
=法規の存否・内容・解釈に関する主張

2.主張の種類
・請求原因事実
=原告が主張責任を負う事実であって請求を直接的に理由づける事実

・抗弁事実
=被告が主張責任を負う事実であって、請求原因と両立しながら、請求原因によって生じる法律効果の発生の障害、消滅、阻止をもたらす事実

・再抗弁事実
=抗弁と両立しながら、抗弁によって生じる法律効果の発生の障害消滅阻止をもたらす事実

・予備的主張、予備的抗弁の順序
裁判所は当事者が付した順位には原則として拘束されない。
←いずれの主張を認めるかは判決理由中の判断であるが、これには既判力が生じないので、いずれを先に判断しても差異を生じないから。
(相殺の抗弁の場合は別。)

・権利抗弁
法律効果発生の障害、消滅、阻止をもたらすためには、単にその主要事実を主張しただけでは足りず、これらをもたらす権利を行使する旨の意思表示も必要とされる抗弁
権利抗弁という考え方は、実体法が権利利益の享受を権利主体の意思にかからしめている場合に、訴訟法上もそれを尊重しようとするもので、処分権主義と共通の原理に立脚する。

3.相手方の事実上の主張に対する態度
(1)否認
相手方の主張を明白に争う応答

・否認された事実は、証拠に基づく証明がなされない限り裁判所はこれを認定できない(証拠裁判主義)!

・単純否認
=特に理由を述べずに相手方の主張を否定

・理由付否認
=相手方の主張する事実と両立しない事実を積極的に主張して行う

・否認は間接事実である。

(2)自白
相手方の主張を明白に認める応答
自白された事実については証拠裁判主義が排除され、証拠による証明が不要になる!
+(証明することを要しない事実)
第百七十九条  裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

(3)不知・沈黙
・不知
相手方の主張した事実に対し、これを知らない旨の陳述

不知の陳述は否認と推定される(159条2項)
=否認の効果を認めるのが不合理な場合を除いて、否認として扱うという趣旨
=否認の効果が生じるのは、その事実が不知の陳述をした者に不利な場合に限られる。

+(自白の擬制)
第百五十九条  当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない
2  相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する
3  第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。

・沈黙
=相手方が主張した事実を争うことを明らかにしない態度

沈黙は、弁論の全種子から争っていると認められる場合を除いて自白とみなされる(159条1項)

(4)擬制自白
口頭弁論または弁論準備手続において、当事者が相手方の主張した事実を明らかに争わず、弁論の全趣旨に照らしても争っていると認められないため、その事実について自白が成立したものとみなされる状態

・当事者は原則として口頭弁論終結時に至るまで、相手方の主張を争う陳述をすることができるので、擬制自白は、原則として口頭弁論終結時に成立する。

4.相手方の法律上の主張に対する態度
裁判所の専権に属する事項であるので、事実上の影響は別として、弁論主義が適用される事実上の主張のような裁判所に対する法的効果はない。

5.有理性審査
主張の有理性
=当事者の事実上の主張は、実体法に照らして理由があるものでなければならない。

当事者の主張がそれ自体として有理性を欠く場合を主張自体失当という。

有理性審査は、無駄な証拠調べによる司法資源の浪費を防ぎ、相手方や裁判所が余計な負担を被ることを避ける意味がある。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

7-1 事案の解明 弁論主義

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.弁論主義の意義
(1)弁論主義の趣旨
弁論主義とは、
裁判における事実の認定に必要な資料の収集および訴訟の場への提出が、当事者の「権能」でありかつ「責任」であるとする原則。

当事者の権能
=当事者による自治が裁判所による職権に優先することを意味する!

当事者の責任
=訴訟資料が不十分なときは当事者の自己責任として処理されること。

・弁論主義は、当事者と裁判所の関係を規律する原理であり、当事者相互の関係までを規律するものではない。

・公益性の高い訴訟要件の審理については、弁論主義ではなく職権探知主義が妥当。

(2)弁論主義の根拠
本質説
民事訴訟の対象たる訴訟物は「私人間」の権利であり、当事者の自由な処分を認める「私的自治の原則」が妥当するので、訴訟物の判断のための訴訟資料の収集と提出についても、同じく私的自治の原則が妥当することに弁論主義の実質的根拠を求める。

手段説
有利な結果を得たいという当事者の利己心を通じて、もっとも効果的に事案の解明ができることに根拠を求める見解!

(3)弁論主義の内容
ⅰ)主張原則
・裁判所は、当事者のいずれもが主張しない事実を、裁判の基礎にしてはならない。
=どのような事実を審理対象とするかについては、当事者が決定する権限を有している!

・証拠資料と主張資料の峻別
裁判所は、たとえ証拠調べの結果からある事実の存否について心証を得たとしても、その事実が当事者のいずれかからも口頭弁論で主張されていなければ、その事実を基礎として裁判をすることはできない。

・弁論主義の不意打ち防止機能

ⅱ)自白原則
裁判所は、当事者の間で争いのない事実については、証拠調べなしに裁判の基礎にしなければならない

+(自白の擬制)
第百五十九条  当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2  相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3  第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。

+(証明することを要しない事実)
第百七十九条  裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない

ⅲ)証拠原則
当事者間に争いのある事実について証拠調べをするときは、当事者の申し出た証拠によらなければならない。
職権証拠調べの禁止

一方で
裁判所は、当事者の申し出た証拠方法を取り調べるかどうかの裁量権を有する。
また、当事者尋問(207条1項)や調査嘱託(186条)では職権証拠調べが許されている。

←証拠原則において、当事者自治が徹底していないのは、証拠調べの段階に至った後では、当事者自治よりも事案解明の要請が高くなるものと立法者が考えたから。

(4)主張責任
当事者の一方にとって有利な事実が口頭弁論に現れないことによって、当事者の一方が裁判において不利益を受ける場合の不利益

(5)主張共通の原則
主張責任を負わない当事者によって主張された場合でも、ある事実が口頭弁論に現れていれば、裁判所はこれを裁判の基礎とすることができる。

2.弁論主義の対象
(1)事実の種類

要件事実
=訴訟物の発生・障害・消滅・阻止などを導く実体法上の抽象的な法律要件に当たる事実

主要事実
=抽象的な要件事実に該当する具体的な事実

間接事実
=主要事実の存否を経験則によって推認させる具体的な事実

補助事実
=証拠の評価に関わる事実
=証拠能力や証明力に影響を与える事実

事情
=事件の由来や経過など紛争の背後に存在する事実関係

(2)弁論主義が適用される事実
ⅰ)伝統的な見解
弁論主義が適用されるのは主要事実のみ
←間接事実と証拠の等質性
自由心証主義の制約の廃除

=間接事実と証拠はともに主要事実の存否を推認させるという点で同様の機能を営むから、間接事実も証拠と同じく当事者の主張の有無による制約を受けないと解すべき
間接事実にも弁論主義が及ぶものとすると、裁判所は既に証拠から判明している間接事実を用いることができなくなり、不自然で窮屈な判断を強いられることになるので、自由心証主義を認めた趣旨に反することになる。

ⅱ)弁論主義と間接事実
有力説
間接事実については、重要な間接事実に限って弁論主義が適用される。
重要な間接事実とは、主要事実の存否を推認する蓋然性の程度が高い事実であり、訴訟の勝敗を左右し得る事実、あるいは訴訟の勝敗に直結する事実

ⅲ)弁論主義と補助事実
補助事実は、証拠の証拠能力や証明力に対して影響を与える事実であり、基本的には争点が設定された後の段階で問題になる事実。
補助事実は、争点の設定には関与しないことが普通であるし、証拠調べの段階では、むしろ裁判所の自由心証を尊重することが必要であることを考えると、原則として補助事実には主張原則は適用されない。

(3)規範的要件と弁論主義
ⅰ)規範的要件における主要事実
過失のような規範的要件は事実ではなく、事実に対する法的な評価(評価根拠概念)であって、評価の対象であるわき見運転や整備不良などの事実こそが、主要事実であると解する。

ⅱ)公益性の高い規範的要件
・公序良俗違反のような公益性の高い規範的要件については弁論主義が適用されない!!
←弁論主義は当事者の私的自治に根拠を有するものであるが、公益性の高い規範的要件は、私的自治の範疇を超えるから。

・裁判所は、一定の事実が公序良俗違反と評価されることについては、法的観点詩的義務を負うものと解すべき!

3.職権探知主義
(1)職権探知主義の趣旨
職権探知主義とは、
裁判に必要な訴訟資料の収集を当事者の権限と責任にのみ委ねるのではなく、裁判所が必要に応じて補完すべきであるとする原則

職権探知主義のもとでも、訴訟資料の収集における主導的な役割は当事者が担っている。

職権探知主義のもとでも結果責任としての主張責任や証明責任は存在する。

・職権探知主義がとられる理由
裁判の対象が当事者の自由な処分を許す法律関係ではないから
真実発見の要請が優先されるため、裁判所の後見的な関与の可能性を確保しておく必要がある

(2)職権探知主義の内容
①裁判所は、当事者のいずれもが主張しない事実であっても、裁判の基礎として採用することができる
②裁判所は、当事者間で争いのない事実であっても、裁判の基礎にしないことができる。
③裁判所は、当事者の申し出ていない証拠であっても、職権で取り調べることができる。

・裁判所の権能のみならず、職権探知主義は、職権探知の義務をも内包する。

(3)職権探知主義と弁論権
職権探知主義のもとにおいても、弁論権は否定されない!
弁論権は、訴訟において問題となる事項について、訴訟資料を提出する機会の補償を受ける権利であるが、これは憲法の裁判を受ける権利に由来するものであって、弁論主義であると職権探知主義であるとを問わず、等しく妥当する!

4.釈明権及び釈明義務
(1)釈明権・釈明義務の意義
・釈明権
=裁判所は、当事者の主張や立証を正確に受領するためや、当事者にできるだけ十分な手続保障の機会を与えるために、当事者に対して事実上または法律上の事項について問いを発し、または立証を促すことができる。

・釈明権と釈明義務の関係
釈明権と釈明義務は表裏の関係にあり、両者の範囲は一致するが、上告審での破棄事由となるのは釈明義務違反の一部にとどまるとする考え方。
←事実審の行為規範としての釈明義務の範囲は釈明権と一致するが、上告審の評価規範としての釈明義務は行為規範としての釈明義務よりも狭くなるものと解すべきだから。

・釈明権は、個々の裁判官ではなく「裁判所」に帰属する権能である
+(釈明権等)
第百四十九条  裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる
2  陪席裁判官は、裁判長に告げて、前項に規定する処置をすることができる
3  当事者は、口頭弁論の期日又は期日外において、裁判長に対して必要な発問を求めることができる
4  裁判長又は陪席裁判官が、口頭弁論の期日外において、攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について第一項又は第二項の規定による処置をしたときは、その内容を相手方に通知しなければならない。

(訴訟指揮等に対する異議)
第百五十条  当事者が、口頭弁論の指揮に関する裁判長の命令又は前条第一項若しくは第二項の規定による裁判長若しくは陪席裁判官の処置に対し、異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。

・釈明処分
+(釈明処分)
第百五十一条  裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。
一  当事者本人又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずること。
二  口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。
三  訴訟書類又は訴訟において引用した文書その他の物件で当事者の所持するものを提出させること。
四  当事者又は第三者の提出した文書その他の物件を裁判所に留め置くこと。
五  検証をし、又は鑑定を命ずること。
六  調査を嘱託すること。
2  前項に規定する検証、鑑定及び調査の嘱託については、証拠調べに関する規定を準用する。

・裁判所から釈明を求められた当事者は、これに応じる義務があるわけではない。しかし、釈明に応じなかったことによって、結果としてふりな判決を受けることはあり得る。

(2)釈明権と弁論主義の関係
・釈明権は弁論主義と対立関係にはなく、むしろ弁論主義を補完するものである。
=弁論主義を形式的に適用すると当事者の注意力や力不足などによって不当な結果が生じ、適正かつ公平な裁判の実現が阻害されるおそれがある。そこで、こうした弁論主義に伴う不都合を補完するものとして釈明権がもうけられている。

・釈明権の趣旨
①当事者の真意が適切に訴訟手続に反映されることを確保することにより、当事者の弁論権ないし手続保障を実質化する
②訴訟の結果に対する当事者の納得や受容を確保するために必要な制度

(3)釈明権の範囲
・裁判所の行為規範として、釈明権の行使にどのような限界があるか

釈明権が過渡にわたる場合の危険
①裁判所に対する依存を助長するおそれ
②当事者の公平を損なう危険
③真相を裁判所の意向に沿って曲げる恐れ
④判決による紛争解決の受容を妨げるおそれ
⑤司法の中立に対する社会の信頼を失わせるおそれ

→それまでの審理経過や訴訟資料から合理的に予想できる範囲を超えて一方当事者に申立てや主張を促したり、実質的に職権証拠調べに当たるような形で証拠の提出を示唆するなどの釈明権の行使は許されない!

・もっとも、上級審がとりうる効果的な是正手段はない!!
←違法不当な釈明権の行使がなされ、それに応じて当事者が主張や立証を行った場合に、これを無効として処理すると、かえって当事者にとって不利になってしまうから!

・結局、釈明権の犯意については、評価規範としての違法はほとんど考えられず、基本的には裁判所の行為規範にとどまる。

(4)釈明義務の範囲
・釈明義務については、裁判所の行為規範としてのみならず、評価規範として上級審による違法審査の対象となり得る。
控訴審が釈明権を適切に行使すれば、下級審における釈明義務違反の瑕疵は治癒される。

・消極的釈明
=当事者の申立てや主張が不明瞭または矛盾している場合に、その趣旨を問いただす釈明権の行使

・積極的釈明
=当事者が申立てや主張をしていない場合に、これを積極的に示唆する釈明権の行使

・消極的釈明がなされない場合には、釈明義務違反が認められやすい。

・積極的釈明が釈明義務違反となる場合の考慮要素
判決における逆転可能性
当事者による法的構成の当否
当事者自治の期待可能性
当事者の実質的公平

(5)法的観点指摘義務
裁判官が当該事案に関して採用を考えている法的観点について、そのことを当事者に示すべき義務
=当事者が事実の主張や立証に際してある法的観点を前提としているときに、裁判所が別の法的構成の方が妥当であると考えた場合には、裁判所がこれを当事者に示すことによって、当事者に裁判所と議論する機会や再考の機会を与える
これを怠ると、当事者は不意打ちを受けることになって手続保障の侵害が生じる。

・弁論主義のと関係では
裁判所は、当事者が主張しない事実を判決の基礎とするわけではないので、弁論主義違反の問題は直接的には生じない。

・弁論権との関係では、
攻撃防御を行うのに必要な情報が与えられていないことになるので、裁判所が法的観点指摘義務を十分に果たさない場合には弁論権の侵害となる!


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

6-4 審理の準備 情報収集制度

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.情報依収集制度の必要性

2.当事者照会
+(当事者照会)
第百六十三条  当事者は、訴訟の係属中、相手方に対し、主張又は立証を準備するために必要な事項について、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照会をすることができる。ただし、その照会が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一  具体的又は個別的でない照会
二  相手方を侮辱し、又は困惑させる照会
三  既にした照会と重複する照会
四  意見を求める照会
五  相手方が回答するために不相当な費用又は時間を要する照会
六  第百九十六条又は第百九十七条の規定により証言を拒絶することができる事項と同様の事項についての照会

・照会を受けた者は、信義則に基づく解答義務を負うものと解されるが、回答拒絶等に対する制裁はない。

3.提訴前の証拠収集処分等
・提訴前の照会
+(訴えの提起前における照会)
第百三十二条の二  訴えを提起しようとする者が訴えの被告となるべき者に対し訴えの提起を予告する通知を書面でした場合(以下この章において当該通知を「予告通知」という。)には、その予告通知をした者(以下この章において「予告通知者」という。)は、その予告通知を受けた者に対し、その予告通知をした日から四月以内に限り、訴えの提起前に、訴えを提起した場合の主張又は立証を準備するために必要であることが明らかな事項について、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照会をすることができる。ただし、その照会が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一  第百六十三条各号のいずれかに該当する照会
二  相手方又は第三者の私生活についての秘密に関する事項についての照会であって、これに回答することにより、その相手方又は第三者が社会生活を営むのに支障を生ずるおそれがあるもの
三  相手方又は第三者の営業秘密に関する事項についての照会
2  前項第二号に規定する第三者の私生活についての秘密又は同項第三号に規定する第三者の営業秘密に関する事項についての照会については、相手方がこれに回答することをその第三者が承諾した場合には、これらの規定は、適用しない。
3  予告通知の書面には、提起しようとする訴えに係る請求の要旨及び紛争の要点を記載しなければならない。
4  第一項の照会は、既にした予告通知と重複する予告通知に基づいては、することができない。

第百三十二条の三  予告通知を受けた者(以下この章において「被予告通知者」という。)は、予告通知者に対し、その予告通知の書面に記載された前条第三項の請求の要旨及び紛争の要点に対する答弁の要旨を記載した書面でその予告通知に対する返答をしたときは、予告通知者に対し、その予告通知がされた日から四月以内に限り、訴えの提起前に、訴えを提起された場合の主張又は立証を準備するために必要であることが明らかな事項について、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照会をすることができる。この場合においては、同条第一項ただし書及び同条第二項の規定を準用する。
2  前項の照会は、既にされた予告通知と重複する予告通知に対する返答に基づいては、することができない。

・証拠収集処分の制度
+(訴えの提起前における証拠収集の処分)
第百三十二条の四  裁判所は、予告通知者又は前条第一項の返答をした被予告通知者の申立てにより、当該予告通知に係る訴えが提起された場合の立証に必要であることが明らかな証拠となるべきものについて、申立人がこれを自ら収集することが困難であると認められるときは、その予告通知又は返答の相手方(以下この章において単に「相手方」という。)の意見を聴いて、訴えの提起前に、その収集に係る次に掲げる処分をすることができる。ただし、その収集に要すべき時間又は嘱託を受けるべき者の負担が不相当なものとなることその他の事情により、相当でないと認めるときは、この限りでない。
一  文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。以下この章において同じ。)の所持者にその文書の送付を嘱託すること。
二  必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体(次条第一項第二号において「官公署等」という。)に嘱託すること。
三  専門的な知識経験を有する者にその専門的な知識経験に基づく意見の陳述を嘱託すること。
四  執行官に対し、物の形状、占有関係その他の現況について調査を命ずること。
2  前項の処分の申立ては、予告通知がされた日から四月の不変期間内にしなければならない。ただし、その期間の経過後にその申立てをすることについて相手方の同意があるときは、この限りでない。
3  第一項の処分の申立ては、既にした予告通知と重複する予告通知又はこれに対する返答に基づいては、することができない。
4  裁判所は、第一項の処分をした後において、同項ただし書に規定する事情により相当でないと認められるに至ったときは、その処分を取り消すことができる。

4.証拠保全
+(証拠保全)
第二百三十四条  裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる

・改ざんの誘惑の大きい状況にあるという抽象的なおそれで足りる。

+(管轄裁判所等)
第二百三十五条  訴えの提起後における証拠保全の申立ては、その証拠を使用すべき審級の裁判所にしなければならない。ただし、最初の口頭弁論の期日が指定され、又は事件が弁論準備手続若しくは書面による準備手続に付された後口頭弁論の終結に至るまでの間は、受訴裁判所にしなければならない。
2  訴えの提起前における証拠保全の申立ては、尋問を受けるべき者若しくは文書を所持する者の居所又は検証物の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にしなければならない
3  急迫の事情がある場合には、訴えの提起後であっても、前項の地方裁判所又は簡易裁判所に証拠保全の申立てをすることができる。

+(職権による証拠保全)
第二百三十七条  裁判所は、必要があると認めるときは、訴訟の係属中、職権で、証拠保全の決定をすることができる。

+(不服申立ての不許)
第二百三十八条  証拠保全の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

=証拠保全の申立てを却下する決定に対しては広告できる!!

+(口頭弁論における再尋問)
第二百四十二条  証拠保全の手続において尋問をした証人について、当事者が口頭弁論における尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない。

証拠保全で証人尋問が行われれば、本案でも証人尋問が行われたことになるのであり、証人尋問調書が書証として扱われるわけではない!

5.弁護士会照会
照会先は、公務所または公私の団体であり、個人に対する照会はできない。

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

6-3 審理の準備 審理の計画

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.進行協議期日
口頭弁論をスムーズに進行させるために、口頭弁論の期日外で、裁判所と双方の当事者が、訴訟の進行に関して必要な事項を協議するために、民事訴訟法上に設けられた特別の期日

2.計画審理
(1)計画的進行主義
+(訴訟手続の計画的進行)
第百四十七条の二  裁判所及び当事者は、適正かつ迅速な審理の実現のため、訴訟手続の計画的な進行を図らなければならない。

(2)審理計画
+(審理の計画)
第百四十七条の三  裁判所は、審理すべき事項が多数であり又は錯そうしているなど事件が複雑であることその他の事情によりその適正かつ迅速な審理を行うため必要があると認められるときは、当事者双方と協議をし、その結果を踏まえて審理の計画を定めなければならない
2  前項の審理の計画においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一  争点及び証拠の整理を行う期間
二  証人及び当事者本人の尋問を行う期間
三  口頭弁論の終結及び判決の言渡しの予定時期
3  第一項の審理の計画においては、前項各号に掲げる事項のほか、特定の事項についての攻撃又は防御の方法を提出すべき期間その他の訴訟手続の計画的な進行上必要な事項を定めることができる。
4  裁判所は、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、当事者双方と協議をし、その結果を踏まえて第一項の審理の計画を変更することができる。

+(審理の計画が定められている場合の攻撃防御方法の却下)
第百五十七条の二  第百四十七条の三第三項又は第百五十六条の二(第百七十条第五項において準用する場合を含む。)の規定により特定の事項についての攻撃又は防御の方法を提出すべき期間が定められている場合において、当事者がその期間の経過後に提出した攻撃又は防御の方法については、これにより審理の計画に従った訴訟手続の進行に著しい支障を生ずるおそれがあると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。ただし、その当事者がその期間内に当該攻撃又は防御の方法を提出することができなかったことについて相当の理由があることを疎明したときは、この限りでない。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

6-2 審理の準備 争点整理手続

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.争点整理手続の意義
・争点とは、
実体法規の適用において意味のある事実であって、当事者間に争いのある事実を指す(事実上の争点)

・争点整理の目的
争点の範囲を縮小するとともに争点の中味を深化させること。

・争点の範囲の縮小
争点を相手方の争い方や提出が可能な証拠との関係などを通して、真の争点に絞り込んでいく作業

・争点の中身の深化
争点の対象を主要事実から間接事実や補助事実などへと展開していくこと

2.争点整理手続
(1)各種の手続とその選択

(2)準備的口頭弁論
公開法廷で双方当事者の対席のもとに実施される

+(準備的口頭弁論の開始)
第百六十四条  裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、この款に定めるところにより、準備的口頭弁論を行うことができる。

準備的口頭弁論はあくまでも口頭弁論の一種であるから、その実施について当事者の意見を聴くことは要求されない。

証人尋問や当事者尋問も含めて、およそ口頭弁論において実施が認められているあらゆる行為を行うことができる。

+(当事者の不出頭等による終了)
第百六十六条  当事者が期日に出頭せず、又は第百六十二条の規定により定められた期間内に準備書面の提出若しくは証拠の申出をしないときは、裁判所は、準備的口頭弁論を終了することができる。

(2)弁論準備手続
ⅰ)弁論準備手続の意義
弁論準備手続
=口頭弁論期日以外の期日において、受訴裁判所または受命裁判官が主宰して行う争点整理手続

+(受命裁判官による弁論準備手続)
第百七十一条  裁判所は、受命裁判官に弁論準備手続を行わせることができる
2  弁論準備手続を受命裁判官が行う場合には、前二条の規定による裁判所及び裁判長の職務(前条第二項に規定する裁判を除く。)は、その裁判官が行う。ただし、同条第五項において準用する第百五十条の規定による異議についての裁判及び同項において準用する第百五十七条の二の規定による却下についての裁判は、受訴裁判所がする。
3  弁論準備手続を行う受命裁判官は、第百八十六条の規定による調査の嘱託、鑑定の嘱託、文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)を提出してする書証の申出及び文書(第二百二十九条第二項及び第二百三十一条に規定する物件を含む。)の送付の嘱託についての裁判をすることができる。

+(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条  裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
2  裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる
3  裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。
4  前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
5  第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。

ⅱ)弁論準備手続の実施
+(弁論準備手続の開始)
第百六十八条  裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができる。

←当事者の協力が得られなければ、弁論準備手続における円滑な争点整理は期待できないから

+(弁論準備手続に付する裁判の取消し)
第百七十二条  裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、弁論準備手続に付する裁判を取り消すことができる。ただし、当事者双方の申立てがあるときは、これを取り消さなければならない

・実施の時期
訴え提起後にまず第1回口頭弁論期日を開き、審理の進め方を決定したうえで事件を弁論準備手続に付すことが一般的。

ⅲ)弁論準備手続でなしうる行為
証拠調べは原則として実施できないが、例外的に文書の証拠調べは行うことができる(170条2項後段)。
←争点整理には書証の認否を経ることが不可欠であること、人証の必要性の判断には文書の取調べが必要であること、文書の取調べには裁判官が閲読して行うので公開法廷で行う意味が少ないこと

ⅳ)公開主義との関係
関係者公開
+(弁論準備手続の期日)
第百六十九条  弁論準備手続は、当事者双方が立ち会うことができる期日において行う。
2  裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。ただし、当事者が申し出た者については、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き、その傍聴を許さなければならない

ⅴ)双方審尋主義との関係
当事者双方が立ち会うことができる期日において行う(169条1項)

・交互面接方式
交互面接方式は原則として双方審尋主義に反して許されないが、弁論準備手続では当事者が同席面接を受ける権利を行使しないことはできるので、当事者が裁判所の要請に応じて任意に退席した場合は適法とする見解がある。

(4)書面による準備手続
+(書面による準備手続の開始)
第百七十五条  裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続(当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続をいう。以下同じ。)に付することができる
(書面による準備手続の方法等)
第百七十六条  書面による準備手続は、裁判長が行う。ただし、高等裁判所においては、受命裁判官にこれを行わせることができる。
2  裁判長又は高等裁判所における受命裁判官(次項において「裁判長等」という。)は、第百六十二条に規定する期間を定めなければならない。
3  裁判長等は、必要があると認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、争点及び証拠の整理に関する事項その他口頭弁論の準備のため必要な事項について、当事者双方と協議をすることができる。この場合においては、協議の結果を裁判所書記官に記録させることができる。
4  第百四十九条(第二項を除く。)、第百五十条及び第百六十五条第二項の規定は、書面による準備手続について準用する。

3.争点整理手続の終結
・準備的口頭弁論、弁論準備手続の場合。
+(証明すべき事実の確認等)
第百六十五条  裁判所は、準備的口頭弁論を終了するに当たり、その後の証拠調べにより証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする。
2  裁判長は、相当と認めるときは、準備的口頭弁論を終了するに当たり、当事者に準備的口頭弁論における争点及び証拠の整理の結果を要約した書面を提出させることができる。

+(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条  裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
2  裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる。
3  裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。
4  前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
5  第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。

・書面による弁論準備手続の場合
+(証明すべき事実の確認)
第百七十七条  裁判所は、書面による準備手続の終結後の口頭弁論の期日において、その後の証拠調べによって証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする。

←書面による弁論準備手続の終了の場合は、争点及び証拠の整理は完成していないので、その手続内において、その後の証拠調べによって証明すべき事実の確認をすることができないから。

4.口頭弁論への移行
・弁論準備手続の場合
+(弁論準備手続の結果の陳述)
第百七十三条  当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。

5.攻撃防御方法の提出制限
(1)争点整理手続後の攻撃防御方法の提出
+(準備的口頭弁論終了後の攻撃防御方法の提出)
第百六十七条  準備的口頭弁論の終了後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない

+(弁論準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
第百七十四条  第百六十七条の規定は、弁論準備手続の終結後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。

+(書面による準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
第百七十八条  書面による準備手続を終結した事件について、口頭弁論の期日において、第百七十六条第四項において準用する第百六十五条第二項の書面に記載した事項の陳述がされ、又は前条の規定による確認がされた後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、その陳述又は確認前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない。

(2)時機に後れた攻撃防御方法
+(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)
第百五十七条  当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる
2  攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。

・適時提出主義(156条)の理念を実現するため

・要件
①時機に後れた提出であること
②当事者の故意または重過失に基づくこと
③それを審理することで訴訟の完結が遅延すること

・時機に後れた
=より早期の適切な時機に提出できたことを意味する。
争点整理手続が行われたときは、その終了後の提出は特段の事情のない限り、時機に後れたものと判断される。
控訴審での提出は、続審制がとられているので、控訴審の手続のみで判断するのではなく、第1審からの手続の経過を通じて判断すべき!
+判例(S30.4.5)
理由
 上告代理人青柳孝、同青柳洋の上告理由第一点について。
 所論引用の大審院判例(昭和八年二月七日判決)が、控訴審における民訴一三九条の適用について、第一審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであり、そして時機に後れた攻撃防禦の方法であつても、当事者に故意又は重大な過失が存すること及びこれがため訴訟の完結を延滞せしめる結果を招来するものでなければ、右の攻撃防禦の方法を同条により却下し得ない趣旨を判示していることは所論のとおりであつて、この解釈は現在もなお維持せらるべきものと認められる。
 記録によつて調べてみると、所論の買取請求権行使は、原審第二回の口頭弁論において(第一回は控訴代理人の申請により延期)はじめて陳述されたものであるところ、上告人が第一審第一回口頭弁論において陳述した答弁書によれば、本件賃借権の譲渡について被上告人の承諾を得ないことを認め、右不承諾を以て権利らん用であると抗弁していることがうかがわれるから、すでに第一審において少くとも前記買取請求権行使に関する主張を提出することができたものと認めるのを相当とし、所論のように、上告人が第一審において当初の主張にのみ防禦を集中したというだけの理由をもつて、上告人が第二審において始めてなした買取請求権行使に関する主張が、故意又は重大なる過失により時機に後れてなされた防禦方法でないと断定することはできない。しかし時機に遅れた防禦方法なるが故に上告人の右主張を却下するためには、その主張を審理するために具体的に訴訟の完結を遅延せしめる結果を招来する場合でなければならないこと前示のとおりであるところ、借地法第一〇条の規定による買取請求権の行使あるときは、これと同時に目的家屋の所有権は法律上当然に土地賃貸人に移転するものと解すベきであるから、原審の第二回口頭弁論期日(実質上の口頭弁論が行われた最初の期日)において、上告人が右買取請求権を行使すると同時に本件家屋所有権は被上告人に移転したものであり、この法律上当然に発生する効果は、前記買取請求権行使に関する主張が上告人の重大なる過失により時期に後れた防禦方法として提出されたものであるからといつて、なんらその発生を妨げるものではなく、またこのため特段の証拠調をも要するものではないから、上告人の前記主張に基き本件家屋所有権移転の効果を認めるについて、訴訟の完結を遅延せしめる結果を招来するものとはいえない。従って訴訟の完結を遅延せしめることを理由として、前記所有権移転の効果を無視し、なんらの判断をも与えずに判決することは許されないものといわなければならない。
 以上のとおりであるから、右第二回口頭弁論期日において結審することなく第六回の口頭弁論期日において弁論を終結したこと記録上明らかな本件において前記上告人の主張を時機に後れた抗弁として排斥し、本件家屋所有権移転の効果を無視したものと認められる原判決は、民訴一三九条の解釈適用を誤つた違法があるを免れない。所論はこの点において理由があるから他の論点について判断するまでもなく、原判決を破棄し右の点につき更に審理をなさしめるため本件を原審に差戻すのを相当とする。
 よつて民訴四〇七条により全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

・故意または重過失
故意または重過失の判断は、攻撃防御方法の種類を考慮して判断

・訴訟の完結の遅延
攻撃防御方法を却下した場合に想定される訴訟完結時と、その攻撃防御方法の審理を続行したい場合に想定される訴訟完結時とを比較して判断する。
その場ですぐに取り調べが可能な証拠の申出などは、訴訟の完結を遅延させるとはいえない。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

6-1 審理の準備 準備書面

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.準備書面の意義
準備書面とは、
口頭弁論や弁論準備手続などの期日における当事者の陳述内容を相手方に予告する書面

+(準備書面)
第百六十一条  口頭弁論は、書面で準備しなければならない
2  準備書面には、次に掲げる事項を記載する。
一  攻撃又は防御の方法
二  相手方の請求及び攻撃又は防御の方法に対する陳述
3  相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載した事実でなければ、主張することができない

・準備書面の機能
当事者が次回期日に陳述する内容を事前に予告しておくことによって、相手方は、それに対する認否や反論を準備することができるし、裁判所も、事前に内容を理解して必要に応じて釈明を求めるなどの準備ができるなどの、迅速かつ充実した手続の進行に資するとことにある。

2.準備書面の記載事項
自らの攻撃防御方法と、相手方の請求および攻撃防御方法に対する応答

3.準備書面の提出
+(準備書面等の提出期間)
第百六十二条  裁判長は、答弁書若しくは特定の事項に関する主張を記載した準備書面の提出又は特定の事項に関する証拠の申出をすべき期間を定めることができる。

4.準備書面の効果
・尋び書面に記載のない事実は、相手方が期日に出席していれば主張することができるが、相手方が欠席しているときは、主張することができない(161条3項)

・事実の主張には証拠の申出を含む
証拠調べに立ち会う機会やその結果に対する陳述の機会を奪うことも同様に不公平であるから。

ただし、相手方が出席当事者による事実の主張や証拠の申出を合理的に予測できた場合には、相手方に対して不公平とはいえないので、主張や証拠の申出を認めてよい。

・陳述擬制
+(訴状等の陳述の擬制)
第百五十八条  原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。

+(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条  裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
2  裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる。
3  裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。
4  前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
5  第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。

←原告に陳述の擬制を認めるのであれば被告にも認めないと均衡を失することになるから、最初の期日に限って陳述の擬制を認めることにした。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

5-3 審理の原則 審理手続の進行


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.手続の進行に関する諸制度
(1)職権進行主義と訴訟指揮権
・訴訟手続の進行については、裁判所が権限と責任を持つ職権進行主義がとられている。

・訴訟指揮に関する裁判はいつでも取り消すことができる
+(訴訟指揮に関する裁判の取消し)
第百二十条  訴訟の指揮に関する決定及び命令は、いつでも取り消すことができる。

←絶対的に拘束されるとすると、かえって手続の適正または円滑を阻害するから。

(2)期日
裁判所、当事者等の訴訟関係人が会合して、訴訟に関する行為をするために定められる時間のことをいう。

+(期日の指定及び変更)
第九十三条  期日は、申立てにより又は職権で、裁判長が指定する。
2  期日は、やむを得ない場合に限り、日曜日その他の一般の休日に指定することができる。
3  口頭弁論及び弁論準備手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り許す。ただし、最初の期日の変更は、当事者の合意がある場合にも許す。
4  前項の規定にかかわらず、弁論準備手続を経た口頭弁論の期日の変更は、やむを得ない事由がある場合でなければ、許すことができない。

+(期日の呼出し)
第九十四条  期日の呼出しは、呼出状の送達、当該事件について出頭した者に対する期日の告知その他相当と認める方法によってする。
2  呼出状の送達及び当該事件について出頭した者に対する期日の告知以外の方法による期日の呼出しをしたときは、期日に出頭しない当事者、証人又は鑑定人に対し、法律上の制裁その他期日の不遵守による不利益を帰することができない。ただし、これらの者が期日の呼出しを受けた旨を記載した書面を提出したときは、この限りでない。

・期日の変更
=期日が開始する前に、その指定を取消し、新たな期日を指定すること

・期日の延期
=期日を開始したうえで、予定の訴訟行為を全くしないで、次回以降の期日を指定すること

・期日の続行
=期日を実施し、訴訟行為をしたうえで、これを継続して行うために、次回以降の期日を指定すること。

(3)期間
・裁定期間と法定期間のうちの通常期間は裁判所が伸縮することができるが、不変期間は伸縮できない。
+(期間の伸縮及び付加期間)
第九十六条  裁判所は、法定の期間又はその定めた期間を伸長し、又は短縮することができる。ただし、不変期間については、この限りでない。
2  不変期間については、裁判所は、遠隔の地に住所又は居所を有する者のために付加期間を定めることができる。

(4)訴訟行為の追完

+(訴訟行為の追完)
第九十七条  当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後一週間以内に限り、不変期間内にすべき訴訟行為の追完をすることができる。ただし、外国に在る当事者については、この期間は、二月とする。
2  前項の期間については、前条第一項本文の規定は、適用しない。

訴訟代理人に過失があったことは、当事者の責めに帰することができない事由があるとはいえない。

(5)口頭弁論における訴訟指揮
・口頭弁論の制限
+(口頭弁論の併合等)
第百五十二条  裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる
2  裁判所は、当事者を異にする事件について口頭弁論の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。

口頭弁論の制限
=弁論や証拠調べの対象となる事項が複数ある場合に、そのうちの一部についてのみ弁論を集中して行うよう当事者に命じ、その部分についてのみ審理をするという裁判所の決定。

・口頭弁論の終結
裁判所がその審級での審理を終えること

・口頭弁論の再開
+(口頭弁論の再開)
第百五十三条  裁判所は、終結した口頭弁論の再開を命ずることができる。

口頭弁論の終結後、判決の言渡しまでの間に、裁判所が、さらに審理が必要であると考えることにより口頭弁論の再開
事情によっては義務となる。

(6)訴訟記録
各訴訟事件について、裁判所、当事者その他の関係人が作成または提出した書類の総体

・訴訟記録の閲覧は誰でも請求することができる
+(訴訟記録の閲覧等)
第九十一条  何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる
2  公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録については、当事者及び利害関係を疎明した第三者に限り、前項の規定による請求をすることができる。
3  当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、訴訟記録の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は訴訟に関する事項の証明書の交付を請求することができる
4  前項の規定は、訴訟記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について当事者又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。
5  訴訟記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、訴訟記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。

訴訟記録の一般公開(91条1項)は、憲法82条1項の定める一般公開主義から当然に導かれるものではないが、その趣旨をより実質化するもの。

2.送達
(1)送達の意義
送達とは、
当事者その他の訴訟関係人に対して、訴訟上の書類の内容を知らせるために、法定の方式に従って書類を交付する、または、交付を受ける機会を与える裁判所の訴訟行為

(2)送達しなければならない書類
訴状
期日の呼出状
反訴状
など

(3)送達に関する機関
職権送達の原則
+(職権送達の原則等)
第九十八条  送達は、特別の定めがある場合を除き、職権でする。
2  送達に関する事務は、裁判所書記官が取り扱う。

(4)受送達者
当事者に訴訟代理人がいる場合は、訴訟代理人が受送達者となるのが通常であるが、本人に対する送達も適法である。

数人が共同して代理権を行うべき場合には、送達はその1人に対してすればよい。
+(訴訟無能力者等に対する送達)
第百二条  訴訟無能力者に対する送達は、その法定代理人にする。
2  数人が共同して代理権を行うべき場合には、送達は、その一人にすれば足りる。
3  刑事施設に収容されている者に対する送達は、刑事施設の長にする。

(5)送達の方法
ⅰ)交付送達
交付送達の原則
+(交付送達の原則)
第百一条  送達は、特別の定めがある場合を除き、送達を受けるべき者に送達すべき書類を交付してする。

+(送達場所)
第百三条  送達は、送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所(以下この節において「住所等」という。)においてする。ただし、法定代理人に対する送達は、本人の営業所又は事務所においてもすることができる。
2  前項に定める場所が知れないとき、又はその場所において送達をするのに支障があるときは、送達は、送達を受けるべき者が雇用、委任その他の法律上の行為に基づき就業する他人の住所等(以下「就業場所」という。)においてすることができる。送達を受けるべき者(次条第一項に規定する者を除く。)が就業場所において送達を受ける旨の申述をしたときも、同様とする。

・就業場所送達(103条2項)

・出会送達
+(出会送達)
第百五条  前二条の規定にかかわらず、送達を受けるべき者で日本国内に住所等を有することが明らかでないもの(前条第一項前段の規定による届出をした者を除く。)に対する送達は、その者に出会った場所においてすることができる。日本国内に住所等を有することが明らかな者又は同項前段の規定による届出をした者が送達を受けることを拒まないときも、同様とする。

・補充送達
+(補充送達及び差置送達)
第百六条  就業場所以外の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは、使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる。郵便の業務に従事する者が日本郵便株式会社の営業所において書類を交付すべきときも、同様とする。
2  就業場所(第百四条第一項前段の規定による届出に係る場所が就業場所である場合を含む。)において送達を受けるべき者に出会わない場合において、第百三条第二項の他人又はその法定代理人若しくは使用人その他の従業者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものが書類の交付を受けることを拒まないときは、これらの者に書類を交付することができる。
3  送達を受けるべき者又は第一項前段の規定により書類の交付を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは、送達をすべき場所に書類を差し置くことができる。

7歳9か月の女子は相当のわきまえのある者ではない。

同居人であっても受送達者の訴訟の相手方である場合には代人となりえない。

他方、受送達者と同居人が対立当事者ではなく、実質的に利害関係が対立するにとどまる場合、判例は、同居人に対する訴状や期日呼び出し状の補充送達を適法とする!!!
+判例(H19.3.20)
理由
 抗告代理人伊藤諭、同田中栄樹の抗告理由について
 1 本件は、抗告人が、相手方の抗告人に対する請求を認容した確定判決につき、民訴法338条1項3号の再審事由があるとして申し立てた再審事件である。
 2 記録によれば、本件の経過は次のとおりである。
 (1) 相手方は、平成15年12月5日、横浜地方裁判所川崎支部に、抗告人及びAを被告とする貸金請求訴訟(以下「前訴」という。)を提起した。
 相手方は、前訴において、〈1〉B1及びB2は、平成9年10月31日及び同年11月7日、Aに対し、いずれも抗告人を連帯保証人として、各500万円を貸し付けた、〈2〉相手方は、Bらから、BらがAに対して有する上記貸金債権の譲渡を受けたなどと主張して、抗告人及びAに対し、上記貸金合計1000万円及びこれに対する約定遅延損害金の連帯支払を求めた。
 (2) Aは、抗告人の義父であり、抗告人と同居していたところ、平成15年12月26日、自らを受送達者とする前訴の訴状及び第1回口頭弁論期日(平成16年1月28日午後1時10分)の呼出状等の交付を受けるとともに、抗告人を受送達者とする前訴の訴状及び第1回口頭弁論期日の呼出状等(以下「本件訴状等」という。)についても、抗告人の同居者として、その交付を受けた。
 (3) 抗告人及びAは、前訴の第1回口頭弁論期日に欠席し、答弁書その他の準備書面も提出しなかったため、口頭弁論は終結され、第2回口頭弁論期日(平成16年2月4日午後1時10分)において、抗告人及びAが相手方の主張する請求原因事実を自白したものとみなして相手方の請求を認容する旨の判決(以下「前訴判決」という。)が言い渡された。
 (4) 抗告人及びAに対する前訴判決の判決書に代わる調書の送達事務を担当した横浜地方裁判所川崎支部の裁判所書記官は、抗告人及びAの住所における送達が受送達者不在によりできなかったため、平成16年2月26日、抗告人及びAの住所あてに書留郵便に付する送達を実施した。上記送達書類は、いずれも、受送達者不在のため配達できず、郵便局に保管され、留置期間の経過により同支部に返還された。
 (5) 抗告人及びAのいずれも前訴判決に対して控訴をせず、前訴判決は平成16年3月12日に確定した。
 (6) 抗告人は、平成18年3月10日、本件再審の訴えを提起した。
 3 抗告人は、前訴判決の再審事由について、次のとおり主張している。
 前訴の請求原因は、抗告人がAの債務を連帯保証したというものであるが、抗告人は、自らの意思で連帯保証人になったことはなく、Aが抗告人に無断で抗告人の印章を持ち出して金銭消費貸借契約書の連帯保証人欄に抗告人の印章を押印したものである。Aは、平成18年2月28日に至るまで、かかる事情を抗告人に一切話していなかったのであって、前訴に関し、抗告人とAは利害が対立していたというべきである。したがって、Aが抗告人あての本件訴状等の交付を受けたとしても、これが遅滞なく抗告人に交付されることを期待できる状況にはなく、現に、Aは交付を受けた本件訴状等を抗告人に交付しなかった。以上によれば、前訴において、抗告人に対する本件訴状等の送達は補充送達(民訴法106条1項)としての効力を生じていないというべきであり、本件訴状等の有効な送達がないため、抗告人に訴訟に関与する機会が与えられないまま前訴判決がされたのであるから、前訴判決には民訴法338条1項3号の再審事由がある(最高裁平成3年(オ)第589号同4年9月10日第一小法廷判決・民集46巻6号553頁参照)。
 4 原審は、前訴において、抗告人の同居者であるAが抗告人あての本件訴状等の交付を受けたのであるから、抗告人に対する本件訴状等の送達は補充送達として有効であり、前訴判決に民訴法338条1項3号の再審事由がある旨の抗告人の主張は理由がないとして、抗告人の再審請求を棄却すべきものとした。
 5 原審の判断のうち、抗告人に対する本件訴状等の送達は補充送達として有効であるとした点は是認することができるが、前訴判決に民訴法338条1項3号の再審事由がある旨の抗告人の主張は理由がないとした点は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 (1) 民訴法106条1項は、就業場所以外の送達をすべき場所において受送達者に出会わないときは、「使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるもの」(以下「同居者等」という。)に書類を交付すれば、受送達者に対する送達の効力が生ずるものとしており、その後、書類が同居者等から受送達者に交付されたか否か、同居者等が上記交付の事実を受送達者に告知したか否かは、送達の効力に影響を及ぼすものではない(最高裁昭和42年(オ)第1017号同45年5月22日第二小法廷判決・裁判集民事99号201頁参照)。
 したがって、受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等が、その訴訟において受送達者の相手方当事者又はこれと同視し得る者に当たる場合は別として(民法108条参照)、その訴訟に関して受送達者との間に事実上の利害関係の対立があるにすぎない場合には、当該同居者等に対して上記書類を交付することによって、受送達者に対する送達の効力が生ずるというべきである。
 そうすると、仮に、抗告人の主張するような事実関係があったとしても、本件訴状等は抗告人に対して有効に送達されたものということができる
 以上と同旨の原審の判断は是認することができる。
 (2) しかし、本件訴状等の送達が補充送達として有効であるからといって、直ちに民訴法338条1項3号の再審事由の存在が否定されることにはならない同事由の存否は、当事者に保障されるべき手続関与の機会が与えられていたか否かの観点から改めて判断されなければならない
 すなわち、受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等と受送達者との間に、その訴訟に関して事実上の利害関係の対立があるため、同居者等から受送達者に対して訴訟関係書類が速やかに交付されることを期待することができない場合において、実際にもその交付がされなかったときは、受送達者は、その訴訟手続に関与する機会を与えられたことにならないというべきである。そうすると、上記の場合において、当該同居者等から受送達者に対して訴訟関係書類が実際に交付されず、そのため、受送達者が訴訟が提起されていることを知らないまま判決がされたときには、当事者の代理人として訴訟行為をした者が代理権を欠いた場合と別異に扱う理由はないから、民訴法338条1項3号の再審事由があると解するのが相当である。
 抗告人の主張によれば、前訴において抗告人に対して連帯保証債務の履行が請求されることになったのは、抗告人の同居者として抗告人あての本件訴状等の交付を受けたAが、Aを主債務者とする債務について、抗告人の氏名及び印章を冒用してBらとの間で連帯保証契約を締結したためであったというのであるから、抗告人の主張するとおりの事実関係が認められるのであれば、前訴に関し、抗告人とその同居者であるAとの間には事実上の利害関係の対立があり、Aが抗告人あての訴訟関係書類を抗告人に交付することを期待することができない場合であったというべきである。したがって、実際に本件訴状等がAから抗告人に交付されず、そのために抗告人が前訴が提起されていることを知らないまま前訴判決がされたのであれば、前訴判決には民訴法338条1項3号の再審事由が認められるというべきである。
 抗告人の前記3の主張は、抗告人に前訴の手続に関与する機会が与えられないまま前訴判決がされたことに民訴法338条1項3号の再審事由があるというものであるから、抗告人に対する本件訴状等の補充送達が有効であることのみを理由に、抗告人の主張するその余の事実関係について審理することなく、抗告人の主張には理由がないとして本件再審請求を排斥した原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は、以上の趣旨をいうものとして理由があり、原決定は破棄を免れない。そして、上記事由の有無等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 堀籠幸男 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖 裁判官 那須弘平 裁判官 田原睦夫)

・差置送達(106条3項)

・裁判所書記官送達
+(裁判所書記官による送達)
第百条  裁判所書記官は、その所属する裁判所の事件について出頭した者に対しては、自ら送達をすることができる。

ⅱ)書留郵便等に付する送達(付郵便送達)
+(書留郵便等に付する送達)
第百七条  前条の規定により送達をすることができない場合には、裁判所書記官は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場所にあてて、書類を書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項 に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項 に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして最高裁判所規則で定めるもの(次項及び第三項において「書留郵便等」という。)に付して発送することができる。
一  第百三条の規定による送達をすべき場合
     同条第一項に定める場所
二  第百四条第二項の規定による送達をすべき場合
     同項の場所
三  第百四条第三項の規定による送達をすべき場合
     同項の場所(その場所が就業場所である場合にあっては、訴訟記録に表れたその者の住所等)
2  前項第二号又は第三号の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その後に送達すべき書類は、同項第二号又は第三号に定める場所にあてて、書留郵便等に付して発送することができる。
3  前二項の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その発送の時に、送達があったものとみなす。

ⅲ)公示送達
+(公示送達の方法)
第百十一条  公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする。

+(公示送達の要件)
第百十条  次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
一  当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二  第百七条第一項の規定により送達をすることができない場合
三  外国においてすべき送達について、第百八条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
四  第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
2  前項の場合において、裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。
3  同一の当事者に対する二回目以降の公示送達は、職権でする。ただし、第一項第四号に掲げる場合は、この限りでない。

+(公示送達の効力発生の時期)
第百十二条  公示送達は、前条の規定による掲示を始めた日から二週間を経過することによって、その効力を生ずる。ただし、第百十条第三項の公示送達は、掲示を始めた日の翌日にその効力を生ずる。
2  外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、前項の期間は、六週間とする。
3  前二項の期間は、短縮することができない。

(6)送達場所等の届出
+(送達場所等の届出)
第百四条  当事者、法定代理人又は訴訟代理人は、送達を受けるべき場所(日本国内に限る。)を受訴裁判所に届け出なければならない。この場合においては、送達受取人をも届け出ることができる。
2  前項前段の規定による届出があった場合には、送達は、前条の規定にかかわらず、その届出に係る場所においてする。
3  第一項前段の規定による届出をしない者で次の各号に掲げる送達を受けたものに対するその後の送達は、前条の規定にかかわらず、それぞれ当該各号に定める場所においてする。
一  前条の規定による送達
     その送達をした場所
二  次条後段の規定による送達のうち郵便の業務に従事する者が日本郵便株式会社の営業所(郵便の業務を行うものに限る。第百六条第一項後段において同じ。)においてするもの及び同項後段の規定による送達
     その送達において送達をすべき場所とされていた場所
三  第百七条第一項第一号の規定による送達
     その送達においてあて先とした場所

3.当事者欠席の場合の取扱い
(1)当事者の一方の欠席
・陳述擬制
+(訴状等の陳述の擬制)
第百五十八条  原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる

+(準備書面)
第百六十一条  口頭弁論は、書面で準備しなければならない。
2  準備書面には、次に掲げる事項を記載する。
一  攻撃又は防御の方法
二  相手方の請求及び攻撃又は防御の方法に対する陳述
3  相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載した事実でなければ、主張することができない

・擬制自白
+(自白の擬制)
第百五十九条  当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2  相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3  第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない

・続行期日には擬制陳述はできない。

・審理の現状に基づく判決
+第二百四十四条  裁判所は、当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合において、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、終局判決をすることができる。ただし、当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合には、出頭した相手方の申出があるときに限る。

・訴え取り下げの擬制
+(訴えの取下げの擬制)
第二百六十三条  当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、一月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。当事者双方が、連続して二回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする。

(2)当事者双方の欠席
・当事者双方が欠席した場合、証拠調べ(183条)および判決の言渡し(251条2項)はできるが、それ以外の行為はすることができない。

・訴え取り下げの擬制(263条)

4.申立権と責問権
(1)申立権
当事者がその申立てについて裁判所に判断を求めることができる権利

+(抗告をすることができる裁判)
第三百二十八条  口頭弁論を経ないで訴訟手続に関する申立てを却下した決定又は命令に対しては、抗告をすることができる。
2  決定又は命令により裁判をすることができない事項について決定又は命令がされたときは、これに対して抗告をすることができる。

(2)責問権(異議権)の意義
+(訴訟手続に関する異議権の喪失)
第九十条  当事者が訴訟手続に関する規定の違反を知り、又は知ることができた場合において、遅滞なく異議を述べないときは、これを述べる権利を失う。ただし、放棄することができないものについては、この限りでない。

(3)責問権の放棄・喪失
ⅰ)責問権の放棄・喪失の意義と趣旨
・責問権の喪失
私益保護の意味の強い訴訟手続規定違反の場合に、これによって利益を保護されている当事者が、その違反を知り、または知ることができたのに、遅滞なく異議を述べなかったときには、異議を述べる権利を失うとした
訴訟行為をできるだけ有効として手続きの安定化を図り、訴訟経済を害さないようにしている。

・責問権の放棄
当事者の裁判所に対する意思表示によって放棄することも可能
責問権の放棄は、違法となる訴訟行為が行われた後にすることを要し、あらかじめこれを放棄することはできない。
←任意訴訟禁止の原則に反するから。

ⅱ)責問権の放棄・喪失が認められない場合
公益を保護する趣旨の規定に違反する訴訟行為については、当事者の異議が遅れたことを理由として、有効と取り扱うことはできないし、責問権の放棄もできない。

6.訴訟手続の停止
(1)訴訟手続きの停止の意義と効果
全ての当事者が攻撃防御方法の提出を十分に尽くす機会を平等に与えられる必要があるという双方審尋主義の要請から。

停止期間中に裁判所や当事者がした行為は原則として無効(132条1項の反対解釈)

ただし、訴訟手続の停止はもっぱら当事者の利益保護のための制度であり、公益的理由に基づくものではないので、停止によって利益を保護されたはずの当事者が責問権を喪失・放棄したときは、無効の主張ができなくなり、その瑕疵は治癒される。

(2)訴訟手続きの中断の意義と要件
+(訴訟手続の中断及び受継)
第百二十四条  次の各号に掲げる事由があるときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、それぞれ当該各号に定める者は、訴訟手続を受け継がなければならない。
一  当事者の死亡
     相続人、相続財産管理人その他法令により訴訟を続行すべき者
二  当事者である法人の合併による消滅
     合併によって設立された法人又は合併後存続する法人
三  当事者の訴訟能力の喪失又は法定代理人の死亡若しくは代理権の消滅
     法定代理人又は訴訟能力を有するに至った当事者
四  次のイからハまでに掲げる者の信託に関する任務の終了 当該イからハまでに定める者
イ 当事者である受託者 新たな受託者又は信託財産管理者若しくは信託財産法人管理人
ロ 当事者である信託財産管理者又は信託財産法人管理人 新たな受託者又は新たな信託財産管理者若しくは新たな信託財産法人管理人
ハ 当事者である信託管理人 受益者又は新たな信託管理人
五  一定の資格を有する者で自己の名で他人のために訴訟の当事者となるものの死亡その他の事由による資格の喪失
     同一の資格を有する者
六  選定当事者の全員の死亡その他の事由による資格の喪失
     選定者の全員又は新たな選定当事者
2  前項の規定は、訴訟代理人がある間は、適用しない。
3  第一項第一号に掲げる事由がある場合においても、相続人は、相続の放棄をすることができる間は、訴訟手続を受け継ぐことができない。
4  第一項第二号の規定は、合併をもって相手方に対抗することができない場合には、適用しない。
5  第一項第三号の法定代理人が保佐人又は補助人である場合にあっては、同号の規定は、次に掲げるときには、適用しない。
一  被保佐人又は被補助人が訴訟行為をすることについて保佐人又は補助人の同意を得ることを要しないとき。
二  被保佐人又は被補助人が前号に規定する同意を得ることを要する場合において、その同意を得ているとき。

当然承継
=当事者の死亡等の要件の発生によって法律上当然に効果が生じるもの

・訴訟手続の受継
中断していた訴訟手続きを進行させるためには、新追行者に訴訟を受け継がせるための一定の訴訟行為が必要。
受継の申立て(124条、126条)と裁判所による受継の裁判(128条)

+(相手方による受継の申立て)
第百二十六条  訴訟手続の受継の申立ては、相手方もすることができる。

+(受継についての裁判)
第百二十八条  訴訟手続の受継の申立てがあった場合には、裁判所は、職権で調査し、理由がないと認めるときは、決定で、その申立てを却下しなければならない。
2  判決書又は第二百五十四条第二項(第三百七十四条第二項において準用する場合を含む。)の調書の送達後に中断した訴訟手続の受継の申立てがあった場合には、その判決をした裁判所は、その申立てについて裁判をしなければならない。

+(受継の通知)
第百二十七条  訴訟手続の受継の申立てがあった場合には、裁判所は、相手方に通知しなければならない。

+(職権による続行命令)
第百二十九条  当事者が訴訟手続の受継の申立てをしない場合においても、裁判所は、職権で、訴訟手続の続行を命ずることができる。

(3)訴訟手続きの中止
+(裁判所の職務執行不能による中止)
第百三十条  天災その他の事由によって裁判所が職務を行うことができないときは、訴訟手続は、その事由が消滅するまで中止する。
(当事者の故障による中止)
第百三十一条  当事者が不定期間の故障により訴訟手続を続行することができないときは、裁判所は、決定で、その中止を命ずることができる。
2  裁判所は、前項の決定を取り消すことができる。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});