7-2 事案の解明 主張の規律

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1.「事実上の主張」と「法律上の主張」
・主張
=立証と並んで、裁判所に判断資料を提出する当事者の行為

・事実上の主張
=主要事実、間接事実、補助事実、事情などの存否および内容に関する主張

・狭義の法律上の主張
=実体法規に主要事実を当てはめた結果としての具体的な権利(権利の発生・変更・消滅などの法律効果)の主張

・広義の法律上の主張
=法規の存否・内容・解釈に関する主張

2.主張の種類
・請求原因事実
=原告が主張責任を負う事実であって請求を直接的に理由づける事実

・抗弁事実
=被告が主張責任を負う事実であって、請求原因と両立しながら、請求原因によって生じる法律効果の発生の障害、消滅、阻止をもたらす事実

・再抗弁事実
=抗弁と両立しながら、抗弁によって生じる法律効果の発生の障害消滅阻止をもたらす事実

・予備的主張、予備的抗弁の順序
裁判所は当事者が付した順位には原則として拘束されない。
←いずれの主張を認めるかは判決理由中の判断であるが、これには既判力が生じないので、いずれを先に判断しても差異を生じないから。
(相殺の抗弁の場合は別。)

・権利抗弁
法律効果発生の障害、消滅、阻止をもたらすためには、単にその主要事実を主張しただけでは足りず、これらをもたらす権利を行使する旨の意思表示も必要とされる抗弁
権利抗弁という考え方は、実体法が権利利益の享受を権利主体の意思にかからしめている場合に、訴訟法上もそれを尊重しようとするもので、処分権主義と共通の原理に立脚する。

3.相手方の事実上の主張に対する態度
(1)否認
相手方の主張を明白に争う応答

・否認された事実は、証拠に基づく証明がなされない限り裁判所はこれを認定できない(証拠裁判主義)!

・単純否認
=特に理由を述べずに相手方の主張を否定

・理由付否認
=相手方の主張する事実と両立しない事実を積極的に主張して行う

・否認は間接事実である。

(2)自白
相手方の主張を明白に認める応答
自白された事実については証拠裁判主義が排除され、証拠による証明が不要になる!
+(証明することを要しない事実)
第百七十九条  裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

(3)不知・沈黙
・不知
相手方の主張した事実に対し、これを知らない旨の陳述

不知の陳述は否認と推定される(159条2項)
=否認の効果を認めるのが不合理な場合を除いて、否認として扱うという趣旨
=否認の効果が生じるのは、その事実が不知の陳述をした者に不利な場合に限られる。

+(自白の擬制)
第百五十九条  当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない
2  相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する
3  第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。

・沈黙
=相手方が主張した事実を争うことを明らかにしない態度

沈黙は、弁論の全種子から争っていると認められる場合を除いて自白とみなされる(159条1項)

(4)擬制自白
口頭弁論または弁論準備手続において、当事者が相手方の主張した事実を明らかに争わず、弁論の全趣旨に照らしても争っていると認められないため、その事実について自白が成立したものとみなされる状態

・当事者は原則として口頭弁論終結時に至るまで、相手方の主張を争う陳述をすることができるので、擬制自白は、原則として口頭弁論終結時に成立する。

4.相手方の法律上の主張に対する態度
裁判所の専権に属する事項であるので、事実上の影響は別として、弁論主義が適用される事実上の主張のような裁判所に対する法的効果はない。

5.有理性審査
主張の有理性
=当事者の事実上の主張は、実体法に照らして理由があるものでなければならない。

当事者の主張がそれ自体として有理性を欠く場合を主張自体失当という。

有理性審査は、無駄な証拠調べによる司法資源の浪費を防ぎ、相手方や裁判所が余計な負担を被ることを避ける意味がある。


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