佐々木毅 民主主義という不思議な仕組み 2 代表制を伴った民主政治の誕生

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1.「契約に基づく権力」と「法の支配」の新展開
(1)封建制から特権と「条件付」契約へ
マグナ・カルタ
最高権力者である王に封建領主らの特権を認めさせ、その限りで「法の支配」を実現した文書。
臣下の王に対する服従はあくまで「条件付」。支配服従契約。

法の支配と政治的支配を、契約関係として考える発想を生み出した。

政治的権力が契約関係に基づくということは、契約が解除されれば政治権力は崩壊する。

(2)人間の人間としての権利
・絶対主義
「法の支配」と「契約に基づく権力」という発想から権力者が自由になろうとする政治的企て。

・「人間の人間としての権利」(基本的人権)を擁護する立場の登場。
不変的、抽象的、一般的な権利を擁護するもの。
当時の特権擁護派(マグナ・カルタでよいとする派閥)には社会に無秩序と混乱を招くものに映った。

・自然権とは、
各人が、かれ自身の自然すなわちかれ自身の生命を維持するために、かれ自身の欲するままにかれ自身の力を用いるという、各人の自由。
byホッブス

=自然権における人間の平等
自分の生命を維持する権利
そのために必要なことを行う権利
何がそのために必要なことかを判断する権利
からなる自由が含まれている。

→自然権から他人の生命を奪う権利も容認
=「万人の万人による戦争状態」

そうした自由の暴走をとめるための自然法。
自然法による自然権の制限が承認されることによって、自然権は社会の構成原理として安定した地位を占めるようになった。

・基本的人権の台頭は支配服従契約の見直しをも促すものになる。
←人間が互いに自由平等であるということになれば、支配する者と支配される者がはっきりとした形で存在しているという前提が崩れる。

政治全体を組みなおす必要。
→社会契約という発想。

・社会契約
自由で平等な人間がお互いの契約によって、政治社会と政治権力を創設するという発想。

社会契約の目的は、
人間の自由と権利を確固としたものにすること。
「法の支配」の実現。

(3)フランス革命と国民国家
フランス革命
自由で平等な人間からなる政治社会、国民国家の誕生。
自然権が政治の仕組みの基本原則になる。

・「あらゆる主権の原理は、本質的に国民に存する」という大原則は、国民が憲法を制定する権利を持つという形で現れた。
しかし、憲法にどのような政治の仕組みを書き込むかは国民に憲法を制定する権利があることからすぐには導かれない。

2.アメリカ合衆国の政治的実験
(1)民主政治に内在する悩み
人民主権と民主政治を当然の出発点としながら、政治の仕組みをどう整備したらいいのかという問題。

・なぜ強力な連邦政府を今作る必要があるのか。
外交上の必要。
民衆の統治に付きまとう派閥の弊害を抑制できる。
=多数派の専制という問題。単なる多数決は問題の解決策にはならない。

(2)共和政と国家のサイズ
・政治参加の自由と派閥とは切り離せない関係にある。
可能なのは派閥の弊害を抑制すること。
単純な民主制は、派閥と多数派の横暴がむき出しになる。

・共和政は大きなサイズの国家にも適用可能。
サイズが大きければ優れた人材を代表者として登用し得る。
派閥の数が増え、互いに牽制しあう。同じ派閥もたがいに結びつくのが難しくなる。

・古代の民主制と異なり、濃密な共同体としての性格を失い、より機械的なメカニズムに近い者になる。

・権力分立制
立法権、行政権、司法権を分離するだけでなく、それらが互いに抑制均衡する仕組み。
←議会が国民の代表者としての地位を利用して強大化し、他の機関の権力を奪い取るのではないかという心配から。

さらに、議会を両院に分割し、議会のなかに抑制均衡の仕組みをもう一つ組み込んだ!!!

3.大統領制と議会制
(1)イギリス議会制の特徴
・アメリカの仕組みは権限分散的で、政策の精力的な遂行に必要な求心力を持っていない。
抑制均衡型の仕組みにおいては、政策の動向と国民の政治的関心との敏感な結合がみられず、政治的無関心が広がりやすい。

・イギリス議会制は、議会と内閣が一体となった集権型の仕組み。ダイナミック。

(2)二つのモデルとその後の変遷
近代の民主政治は古代のものと異なり、各人の自由と平等に基礎を持ち、道義的な強さをもっている。
民主政治は道義的な強みを持つが、そのことから直ちにもろもろの問題解決能力を保障することにはならない。


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債権総論1-1 債権法序論 債権の意義と性質

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1.債権の意義

(1)債権とは何か
特定の人が特定の人に対して一定の行為を請求できる権利
or
特定の人が特定の人に対して一定の行為を請求し、その行為の結果をその者との関係で適法に保持できる権利
債権者
一定の行為を請求できる者
債務者
一定の行為をすべき法的義務を負っている者
・請求の対象(債権の目的)となるのは、債権者の一定の行為であり、これを給付という。
(2)債権と請求権
債権の内容は請求力に尽きるわけではなく、給付保持力や掴取力といった機能も含む。
2.債権の法的性質~物権との対比~
物権とは、
特定の物を直接的かつ排他的に支配できる権利
(1)直接性の欠如
・物権の直接性
他人の行為を介在しないで権利者自ら物を支配することによって権利の内容を実現することができる
債権には直接性がない。
債権では、常に債務者という他人の行為(給付)がなされることによってのみ権利の内容が実現される。
(2)平等性
・物権の排他性
物権は物を直接支配できる権利であるから、同一物の上に内容の衝突する物権は複数成立できない。
ある物の上に成立した物権は、内容の衝突する物権が後にその同一物権の上に成立することを排斥できる。
債権者平等の原則
債権者の行為を請求する債権は、行為をしようとする債務者の意思に基づいて実現される権利であるから排他性がなく、同一内容の債権が複数併存することが可能である。
債権には排他性がないことから、同一の債務者に対する複数の債権者は、債権の成立の先後やその内容の如何に関係なくすべて平等に扱われる。
欠く債権者は債権額に応じた比例配分によって弁済を受ける。
(3)相対性
・物権の絶対性
物権は誰に対しても主張できる権利であり、権利者以外のすべての者が物権を侵害してはならない義務(不可侵義務)を負う。
債権の相対性
債権は債権者に対してのみ主張できる権利であり、債務者のみが債権を侵害しない義務を負う。
・今日では、第三者の債権侵害による不法行為の成立が認められているし、不動産賃借権による妨害排除請求権も認められているので、上記性質の重要性は低下してきている。
(4)譲渡性の有無
債権は人に対する権利だから、譲渡性が制限されたり、当事者の特約により譲渡性が否定されたりする。


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佐々木毅 民主主義という不思議な仕組み 1 民主主義のルーツを言葉から考える

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ギリシャのポリスにルーツがある。民主制。
政治における新しい言葉の誕生は、新しい現実が発生したことを示している。

1.ポリスにみる民主主義の原点
(1)珍しい政治の仕組み
民主主義は最近の2世紀を除けば、歴史上ほぼ痕跡がない。

ギリシャの民主制
法(ノモス)の権威のもとに団結し、「事由」を唱える市民団からなるポリス

(2)ペルシャとギリシャ~自由の理解の違い
・ペルシャ式
大王や指揮官の鞭に対する恐怖が、当地の基本原則になっている。
これは人間が特定の人間に対する恐怖によってのみコントロールできる。それ以外にはコントロールできないという考え方に立っている。
そうでないならば、人間たちは互いにバラバラになってしまい、そこには放任状態としての「自由」しか残らない。

・ギリシャ式
法という共通の非人格的ルールに対する服従が全てに優先。法に対する自発的な服従が広く定着。
自由は個々人にそくして考えれば放任状態とは無縁であり、各人の法への厳格な服従によって初めて実現する。

(3)ギリシャの民主制がたどった道
日当とくじ引きの制度化によって、ギリシャの民主制は頂点に達する。

民主政と寡頭政の争い。
そして、争いの果てに法の権威が地に堕ちた。
法はもはや、一方の党派が他方を支配するための道具に成り果ててしまった。

2.民主制という政治の仕組み
(1)アリストテレスが唱えた6つの政治体制
支配者の数と共通の利益に基づく者かどうかを基準に分類。

王政⇔僭主政
貴族政⇔寡頭政
国制⇔民主政

民主政=自由人の生まれで財産のない者が多数であって支配者
寡頭政=富裕で生まれの良い者が少数であって支配者

法の権威を無視し、民衆が独裁者となって専制政治を行う形態は、僭主政に近い最悪なものである。

法の支配が確保されるためには民会が例外的にのみ開かれるようにすることが大事であり、そのためには多くの人が政治に参加する権利を持っていても、実は現実に参加するだけの経済的余裕と「閑暇」がないような状態が好ましい。

国制=極端でない民主政と極端でない寡頭政との混合物

総じて極端な政体は自らその生命を縮めることになる

(2)民主制が抱えた障害
極端な民主政では、合理的な政策判断は到底期待できない。

古代においては、民主政が基本的人権にかなう政治の仕組みであるという道義的・倫理的な論拠に基づく議論はされてはいなかった。
あくまで他の政体と横並びで比較されている。

王、貴族、大衆が互いに抑制均衡しあうことによって、権力の濫用を防止する仕組みの発生。
→権力分立論

・民主制が直接民主制を意味する限り政治的スペースの問題が生じる。


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佐々木毅 民主主義という不思議な仕組み はじめに

・民主主義とは、
人民の、人民による、人民のための政治

しかし、
その実態が大衆が右往左往するだけの衆愚政治である限り、「人民による政治」が「人民のための政治」を実現できるのか疑問。

優れた徳のある、十分な教育を受けた少数の人間が政治を取り仕切る方が良いのではないかという主張。

民主主義の欠陥を見据えながらそれを具体的に改善する方法を探る。

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12-7 多数当事者訴訟 訴訟告知

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1.訴訟告知の意義
訴訟告知
法律上の形式に則って、当事者の一方が、訴訟係属を第三者に知らせ、参加を促す行為。

告知者
訴訟係属を知らせる者

被告知者
知らせを受ける者

意義
①訴訟係属を第三者に知らせ、第三者にとっての参加の機会を実質化する。
②告知者の利益を保護する。
非告知者が実際に参加するか否かにかかわらず、一定の場合には告知者と被告知者との間に参加的効力が発生することになるため、告知者は、かかる効力によって被告智者との間で後に提起される訴訟を有利に進めることができる。

2.訴訟告知の要件と手続
(1)訴訟告知の要件
+(訴訟告知)
第五十三条  当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる
2  訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。
3  訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。
4  訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。

・上告審に係属中であってもよい。

・告知者は、当事者に限らず、補助参加人、非告知者であってもよい。

・告知者側だけでなく、相手方に参加することもできる。

(2)訴訟告知の手続
告知の理由とは
非告知者がその訴訟に参加するにあたって有する利益

訴訟の程度とは、
当該訴訟の進行状況

・裁判所は、訴訟告知書が提出された段階で参加的効力発生の有無を判断せず、参加的効力の有無は、告知者と非告知者との後訴が提起された段階で初めて判断される。

3.参加的効力の要件
(1)補助参加の利益
+(訴訟告知)
第五十三条  当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。
2  訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。
3  訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。
4  訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす

補助参加以外の参加をすることができる非告知者が参加しなかった場合に参加的効力が生じることは想定されていない。

(2)告知者と非告知者との間の実体関係
・参加的効力の根拠
実際に訴訟追行した参加人も被参加人と共に敗訴の責任を負担するのが衡平である。

・伝統的通説
補助参加の利益で足りる

・有力説
これに加えて、被告知者による告知者に対する協力が正当に期待できることも必要!

協力が正当に期待できる場合とは、
告知者が敗訴した場合、それを直接の原因として告知者が被告知者に求償ないし賠償を求め得るような実体関係がある場合をいう。

・告知者と被告知者の認識が異なる場合に参加的効力が発生するかどうかについては争いがある。

(3)補助参加が現実になされた場合
・被告知者が相手方に補助参加した場合に、訴訟告知に基づく参加的効力が告知者と被告知者との間に生じるか?

訴訟告知は、告知者に参加的効力を得させることを目的とする制度であることを強調すると、
告知者の主観による利害と被告知者の主観による利害が食い違った場合には前者を優先する。
→参加的効力は告知者と被告知者との間に生じる。

補助参加に基づく参加的効力のみが生じるとする立場も。
←補助参加をしても訴訟告知の効果が残存するとしたら、被告知者による相手方への参加を制限することになってしまう。
訴訟告知は参加を誘引するものであるから、現実の参加がなされれば訴訟告知は背後に退く。


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12-6 多数当事者訴訟 補助参加

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1.補助参加の意義
+(補助参加)
第四十二条  訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる

補助参加
当事者の一方の勝訴について法律上の利害関係を有する第三者が、その当事者を補助して訴訟追行するために訴訟に参加することを補助参加という。

補助参加人
第三者のこと

被参加人
補助される当事者

・補助参加人は、自ら請求を定立するものではなく、判決の名宛人にもならない。
しかし、一定の要件のもと、当事者の意思に反してでもすることができ、また、補助参加人は自らの名と費用において訴訟追行をすることができる。
←補助参加の趣旨が、当事者の一方を勝訴させることを通じて自らの法的利益を保護する機会を補助参加人に与えることだから。

2.補助参加の要件
(1)訴訟係属
補助参加は、他人間で訴訟が係属している間に限りすることができる。
←判決確定後であっても、補助参加を申し出つつ、再審の訴えを提起することは許される(45条1項)、と定められていることとの整合性に配慮したため
再審の場合を除いては訴訟係属は必要。

+(補助参加人の訴訟行為)
第四十五条  補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができる。ただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない。
2  補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない。
3  補助参加人は、補助参加について異議があった場合においても、補助参加を許さない裁判が確定するまでの間は、訴訟行為をすることができる。
4  補助参加人の訴訟行為は、補助参加を許さない裁判が確定した場合においても、当事者が援用したときは、その効力を有する。

(2)補助参加の利益
ⅰ)補助参加の利益の意義
+(補助参加についての異議等)
第四十四条  当事者が補助参加について異議を述べたときは、裁判所は、補助参加の許否について、決定で、裁判をする。この場合においては、補助参加人は、参加の理由を疎明しなければならない。
2  前項の異議は、当事者がこれを述べないで弁論をし、又は弁論準備手続において申述をした後は、述べることができない。
3  第一項の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

補助参加は訴訟関係の複雑化、訴訟遅延という不利益を当事者に与える可能性があるため、当事者が異議を述べた場合には、参加申出人が参加をすることに十分な利益を有する場合に限り補助参加を認める趣旨。

当事者が異議を述べない場合は補助参加の利益が職権で審査されることはない。
←補助参加人は参加時の訴訟状態を承認しなければならないなど権限が限定されており、補助参加の利益を職権で調査するほどには訴訟関係の複雑化や訴訟遅延による司法資源の浪費は生じないと考えられたから。

ⅱ)補助参加の利益の判断
他人間の訴訟の結果が、参加申出人の法的利益に対して、事実上の影響を及ぼす場合に認められる

a)訴訟の結果
①判決主文中の判断、つまり訴訟物たる権利関係の存否についての判断(訴訟物限定説)
訴訟物たる権利関係に関する判断が、実体法上、参加申出人と一方当事者との間の権利関係の論理的前提にあるといえる場合にのみ訴訟の結果についての利害関係を認める立場

②42条の訴訟の結果は、理由中の判断も含むとする見解(訴訟物非限定説)
そもそも既判力に復するわけではない第三者にとっては、判決主文中の判断も理由中の判断も事実上の影響を及ぼすにすぎず、区別する根拠はない。

①を支持する理由
一定の争点についてのみ被参加者を支援するための補助参加というものは想定されていない以上、訴訟物限定説の方が素直
訴訟物に利害関係のない者まで上訴や再審の訴えをなしうるとするのは疑問
補助参加人は、参加不許の裁判が確定するまでは訴訟行為をなし得るとされている以上、参加の利益の有無についての判断は迅速にされなければならないが、訴訟物非限定説だと争点整理終了までは参加の利益の有無について判断しえないという事態が発生する恐れがある。

+判例(H13.2.22)
理由
 抗告代理人大下慶郎、同納谷廣美、同西修一郎、同石橋達成の抗告理由について
1 記録によれば、本件の経緯は次のとおりである。
 (1) 本件の本案訴訟(宇都宮地方裁判所平成10年(行ウ)第14号労災不支給処分取消請求事件)は、抗告人の小山工場に勤務していたAの妻である相手方が、Aの死亡は長時間労働の過労によるもので、業務起因性があるとして、栃木労働基準監督署長に対し労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づいて遺族補償給付等の請求をしたところ、これを支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたので、その取消しを求める行政訴訟である。
 (2) 抗告人は、本案訴訟においてAの死亡につき業務起因性を肯定する判断がされると、相手方から労働基準法(以下「労基法」という。)に基づく災害補償又は安全配慮義務違反による損害賠償を求める訴訟を提起された場合に自己に不利益な判断がされる可能性があり、また、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下「徴収法」という。)12条3項により次年度以降の保険料が増額される可能性があると主張し、栃木労働基準監督署長に対する補助参加を申し出たが、相手方はこれに対して異議を述べた。
2 原審は、概要次のとおり判示して、抗告人の補助参加の申出を却下すべきものとした。
 (1) 本案訴訟において業務起因性を肯定する判断がされたとしても、これによって相手方の抗告人に対する安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償請求訴訟において当然に相当因果関係を肯定する判断がされるものではない上、後訴における抗告人の責任の有無、賠償額の範囲は、使用者の故意又は過失、過失相殺等の判断を経て初めて確定されるものであるから、本案訴訟における業務起因性についての判断が後訴における判断に事実上不利益な影響を及ぼす可能性があることをもって抗告人が本件訴訟の結果について法律上の利害関係を有するということはできない
 (2) 徴収法12条3項は、本案訴訟の結果により当然に保険料が増額されることを定めたものではないから、保険料増額の可能性があることをもって抗告人が本件訴訟の結果について法律上の利害関係を有するということはできない。
3 しかしながら、原審の判断のうち上記(1)は是認することができるが、(2)は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 (1) 労基法84条によると、労災保険法に基づいて労基法の災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合においては、使用者は補償の責を免れるものとされているから、本案訴訟において本件処分が取り消され、相手方に対して労災保険法に基づく遺族補償給付等を支給する旨の処分がされた場合には、使用者である抗告人は、労基法に基づく遺族補償給付等の支払義務を免れることになる。そうすると、本案訴訟において被参加人となる栃木労働基準監督署長が敗訴したとしても、抗告人が相手方から労基法に基づく災害補償請求訴訟を提起されて敗訴する可能性はないから、この点に関して抗告人の補助参加の利益を肯定することはできない。また、本案訴訟における業務起因性についての判断は、判決理由中の判断であって、労災保険法に基づく保険給付(以下「労災保険給付」という。)の不支給決定取消訴訟と安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟とでは、審判の対象及び内容を異にするのであるから、抗告人が本案訴訟の結果について法律上の利害関係を有するということはできない。原決定中、抗告人の上記主張を排斥した部分は、これと同旨をいうものとして、是認することができる。この点に関する論旨は採用することができない。
 (2) 徴収法12条3項によると、同項各号所定の一定規模以上の事業については、当該事業の基準日以前3年間における「業務災害に係る保険料の額に第1種調整率を乗じて得た額」に対する「業務災害に関する保険給付の額に業務災害に関する特別支給金の額を加えた額から労災保険法16条の6第1項2号に規定する遺族補償一時金及び特定疾病にかかった者に係る給付金等を減じた額」の割合が100分の85を超え又は100分の75以下となる場合には、労災保険率を一定範囲内で引き上げ又は引き下げるものとされている。そうすると、徴収法12条3項各号所定の一定規模以上の事業においては、労災保険給付の不支給決定の取消判決が確定すると、行政事件訴訟法33条の定める取消判決の拘束力により労災保険給付の支給決定がされて保険給付が行われ、次々年度以降の保険料が増額される可能性があるから、当該事業の事業主は、労働基準監督署長の敗訴を防ぐことに法律上の利害関係を有し、これを補助するために労災保険給付の不支給決定の取消訴訟に参加をすることが許されると解するのが相当である。したがって、抗告人の小山工場(小山工場につき徴収法9条による継続事業の一括の認可がされている場合には、当該認可に係る指定事業)が徴収法12条3項各号所定の一定規模以上の事業に該当する場合には、本件処分が取り消されると、次々年度以降の保険料が増額される可能性があるから、抗告人は、栃木労働基準監督署長を補助するために本案訴訟に参加することが許されるというべきである。原決定中、これと異なる見解に立って抗告人の補助参加の利益を否定した部分には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるというべきである。論旨はこの趣旨をいう限度で理由がある。
4 以上の次第で、原決定は破棄を免れず、本件については、抗告人の小山工場(小山工場につき徴収法9条による継続事業の一括の認可がされている場合には、当該認可に係る指定事業)が徴収法12条3項各号所定の一定規模以上の事業に該当するかどうかにつき更に審理を尽くす必要があるから、これを原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 深澤武久 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 大出峻郎 裁判官 町田顯)

b)参加人の法的利益
他人間の訴訟の結果が事実上の影響を与える対象は、参加申出人の法的利益でなければならない。
法的利益は、財産法上のものに限らず、身分法条のものでも公法上刑事法条のものでもよい。

c)事実上の影響を及ぼす場合
他人間の訴訟の結果が参加人の法的地位に対して及ぼす影響は、法律上のものである必要はなく、事実上のもので足りる。
=既判力が直接補助参加人に及ぶことまでは必要なく、当事者間の判決の主文における判断または理由中の判断が(訴訟物限定説では主文における判断に限る)、補助参加人の法的地位の論理的前提となっている結果、被参加人が敗訴すれば、参加人に対する義務履行の請求がなされるであろうことが予想される、あるいは、被参加人と相手方との間になされた判決が、補助参加人を当事者とする後訴において参考にすることが予想される、という程度で足りる。

3.補助参加の手続
(1)補助参加の申出
+(補助参加の申出)
第四十三条  補助参加の申出は、参加の趣旨及び理由を明らかにして、補助参加により訴訟行為をすべき裁判所にしなければならない
2  補助参加の申出は、補助参加人としてすることができる訴訟行為とともにすることができる。

・参加申出はいつでも取り下げることができるといわれている。
①参加の申出は遡及的になかったものになるという理解
→参加的効力は当然には発生しないことになるため、取下げには、参加的効力の発生を期待していた被参加人の同意が必要であると解する
or
訴訟告知がなされたのと同視し得るため、参加的効力はなお発生することより、被参加人の同意は不要。

②遡及的に参加申出がなかったことになるわけではなく、ただ、以後参加人として訴訟行為をし、訴訟書類の送達を受ける権利を放棄したに過ぎないとする理解
→参加的効力は当然には消滅しないのであるから、申出の取下げに被参加人の同意は必要ない。

(2)補助参加の許否
+(補助参加についての異議等)
第四十四条  当事者が補助参加について異議を述べたときは、裁判所は、補助参加の許否について、決定で、裁判をする。この場合においては、補助参加人は、参加の理由を疎明しなければならない
2  前項の異議は、当事者がこれを述べないで弁論をし、又は弁論準備手続において申述をした後は、述べることができない
3  第一項の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

4.補助参加人の地位
(1)請求の非定立
補助参加人は自らの固有の請求を持たない。

補助参加人は、証人となることも鑑定人となることもできる。

(2)独立的地位
+(補助参加人の訴訟行為)
第四十五条  補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができる。ただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない。
2  補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない。
3  補助参加人は、補助参加について異議があった場合においても、補助参加を許さない裁判が確定するまでの間は、訴訟行為をすることができる。
4  補助参加人の訴訟行為は、補助参加を許さない裁判が確定した場合においても、当事者が援用したときは、その効力を有する。

補助参加人は、被参加人とは独立した手続的地位を有する

・判決正本は補助参加人にも送達されるが、補助参加人の上訴期間は独自に算定すべきか?
被参加人の上訴期間経過後に補助参加人が上訴する余地を認めない。

(3)従属的地位
+(補助参加人の訴訟行為)
第四十五条  補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができる。ただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない
2  補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない
3  補助参加人は、補助参加について異議があった場合においても、補助参加を許さない裁判が確定するまでの間は、訴訟行為をすることができる。
4  補助参加人の訴訟行為は、補助参加を許さない裁判が確定した場合においても、当事者が援用したときは、その効力を有する。

・補助参加人の手続的地位は従属的である。
①補助参加人は、参加時に訴訟状態を承認しなければならない(45条1項ただし書き)
←参加による訴訟の遅延や混乱を最低限に抑制する趣旨

②補助参加人は、訴訟自体を処分することはできない。
←他人の請求について処分権を持たないことを反映した規律。
被参加人に不利であるからなしえないという面も。

③補助参加人は、被参加人の行為と抵触する行為をすることはできない。
←参加人の訴訟行為と被参加人の訴訟行為が抵触する場合には、被参加人の訴訟行為を優先させる趣旨。
なお、被参加人が相手方の主張を争わない場合、参加人はこの主張を争うことができる!!!
←争わないというのみでは被参加人の行為と抵触するとはいえないから!!!!

④補助参加人は被参加人に帰属する形成権を行使できない。
←被参加人に帰属する権利を行使するか否かは、被参加人に委ねられるべきだから。

⑤補助参加人につき訴訟手続の中止または中断事由が生じても訴訟手続は停止しない。

・補助参加人による自白の取扱い
補助参加人の自白は、被参加人に不利な訴訟行為として、そもそも効力を生じないとする見解もある。
←被参加人に不利に働く行為をするのは補助参加の趣旨に反する
いったん自白として効力が生じた後に、被参加人の抵触行為によって、その効力が失われるとすれば相手方の信頼が害される。


補助参加人は一切の訴訟行為をすることができるとする45条1項からは、裁判上の自白についてのみ他の訴訟行為と異なる取扱いをすることは説明しにくい
補助参加人が抗弁を提出する場合、原告の主張する事実を一定の限度で認めないと、主張の説得力を十分に維持しえない恐れが生じることもある
被参加人による撤回があり得るということが明らかであるかぎりは、補助参加人による自白を認めたとしても相手方の信頼が過度に害されるとはいえない。

5.参加的効力
(1)参加的効力の意義
+(補助参加人に対する裁判の効力)
第四十六条  補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一  前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二  前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三  被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四  被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。

・参加的効力
被参加人が敗訴した後、被参加人と補助参加人との間で訴訟となった場合、敗訴の原因となった認定について補助参加人はもはや争えない。
衡平上の要件であるため、当事者による援用がなければ、参加的効力は顧慮されない(⇔既判力は職権調査事項)。

+判例(S45.10.22)
理由
 上告代理人土田吉清の上告理由一ないし四、八および九について。
 まず、民訴法七〇条の定める判決の補助参加人に対する効力の性質およびその効力の及ぶ客観的範囲について考えるに、この効力は、いわゆる既判力ではなく、それとは異なる特殊な効力、すなわち、判決の確定後補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力であつて、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものと解するのが相当である。けだし、補助参加の制度は、他人間に係属する訴訟の結果について利害関係を有する第三者、すなわち、補助参加人が、その訴訟の当事者の一方、すなわち、被参加人を勝訴させることにより自己の利益を守るため、被参加人に協力して訴訟を追行することを認めた制度であるから、補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し、または、これに協力しえたにもかかわらず、被参加人が敗訴の確定判決を受けるに至つたときには、その敗訴の責任はあらゆる点で補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうというべきであるし、また、民訴法七〇条が判決の補助参加人に対する効力につき種々の制約を付しており、同法七八条が単に訴訟告知を受けたにすぎない者についても右と同一の効力の発生を認めていることからすれば、民訴法七〇条は補助参加人につき既判力とは異なる特殊な効力の生じることを定めたものと解するのが合理的であるからである。
 そこで、本件についてみるに、原審が適法に確定したところによれば、訴外兵庫建設株式会社(旧商号兵庫県住宅建設株式会社)が、本件建物は同会社の所有であると主張して、被上告人株式会社テレビ西日本(以下被上告会社という。)に対し、その建物の一部である本件貸室の明渡などを請求した別件訴訟(大阪地裁昭和三四年(ワ)第五八三号、大阪高裁昭和三八年(ネ)第五三二号、同第六七七号、最高裁昭和三九年(オ)第一二〇九号)において、上告人は、その訴訟が第一審に係属中に、被上告会社側に補助参加し、以来終始、本件建物の所有権は、上告人が被上告会社に本件貸室を賃貸した昭和三三年五月三一日当時から、訴外兵庫建設株式会社にではなく、上告人に属していたと主張して、右請求を争う被上告会社の訴訟の追行に協力したが、それにもかかわらず、被上告会社は、その訴訟の結果、本件建物の所有権は、右賃貸当時から、訴外兵庫建設株式会社に属し、上告人には属していなかつたとの理由のもとに、全部敗訴の確定判決を受けるに至つたというのである。
 してみれば、右別件訴訟の確定判決の効力は、その訴訟の被参加人たる被上告会社と補助参加人たる上告人との間においては、その判決の理由中でなされた判断である本件建物の所有権が右賃貸当時上告人には属していなかつたとの判断にも及ぶものというべきであり、したがつて、上告人は、右判決の効力により、本訴においても、被上告会社に対し、本件建物の所有権が右賃貸当時上告人に属していたと主張することは許されないものと解すべきである。
 以上と同旨に出た原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。なお、民訴法七〇条所定の判決の補助参加人に対する効力に関する所論引用の大審院判例(昭和一四年(オ)第一二〇五号・同一五年七月二六日判決・民集一九巻一三九五頁)は、前記判示の限度において、変更すべきものである。したがつて、論旨は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。
 同五ないし七について。
 原判決に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、上告人が原審において主張しなかつた事項について原判決を非難し、または、独自の見解に立つて原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三)

(2)参加的効力の要件
参加的効力を生じさせるためには補助参加人が十分に争う機会を保障されたということが必要である。
←敗訴の結果に補助参加人も加担したというのが、参加的効力の根拠だから。

具体的に
+(補助参加人に対する裁判の効力)
第四十六条  補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一  前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき
二  前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき
三  被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき
四  被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき

(3)参加的効力の客観的範囲・主体的範囲
・参加的効力は、訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけでなく、判決理由中の判断にも生じる。

しかし、訴訟告知に基づく参加的効力についての判断ではあるが、
あらゆる理由中の判断について生じるのではなく、判決の主文を導き出すために必要な主要事実にかかる法律判断についてのみ生じるとする。

+判例(H14.1.22)
理由
 上告代理人洪性模、同許功、同安由美の上告理由について
 1 本件訴訟は、被上告人が上告人に対し、家具等の商品(以下「本件商品」という。)の売買代金の支払を求めるものである。原審の確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。
  (1) 上告人は、カラオケボックス(以下「本件店舗」という。)建築のため、平成六年一〇月、白柳美佐男との間で店舗新築工事請負契約を締結した。
  (2) 被上告人は、白柳に対し、本件商品を含む家具等の商品を販売したとして、平成七年九月一八日、和歌山地方裁判所にその残代金の支払を求める訴えを提起した(同裁判所平成七年(ワ)第四六六号。以下、同訴訟を「前訴」という。)。
 前訴において、白柳は、被上告人が本件店舗に納入した本件商品を含む商品について、施主である上告人が被上告人から買い受けたものであると主張したことから、被上告人は、上告人に対し、平成八年一月二七日送達の訴訟告知書により訴訟告知をした。しかし、上告人は、前訴に補助参加しなかった。
  (3) 前訴につき、本件商品に係る代金請求部分について、被上告人の請求を棄却する旨の判決が言い渡され確定したが、その理由中に、本件商品は上告人が買い受けたことが認められる旨の記載がある。
 2 以上の事実関係の下において、原審は、旧民訴法七八条、七〇条所定の訴訟告知による判決の効力が被告知人である上告人に及ぶことになり、上告人は、本訴において、被上告人に対し、前訴の判決の理由中の判断と異なり、本件商品を買い受けていないと主張することは許されないとして、被上告人の請求を認容した。
 3 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
  (1) 旧民訴法七八条、七〇条の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは、訴訟告知を受けた者が同法六四条にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られるところ、ここにいう法律上の利害関係を有するとは、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される(最高裁平成一二年(許)第一七号同一三年一月三〇日第一小法廷決定・民集五五巻一号三〇頁参照)。
 また、旧民訴法七〇条所定の効力は、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものであるが(最高裁昭和四五年(オ)第一六六号同年一〇月二二日第一小法廷判決・民集二四巻一一号一五八三頁参照)、この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは、判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって、これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解されるけだし、ここでいう判決の理由とは、判決の主文に掲げる結論を導き出した判断過程を明らかにする部分をいい、これは主要事実に係る認定と法律判断などをもって必要にして十分なものと解されるからである。そして、その他、旧民訴法七〇条所定の効力が、判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない。
  (2) これを本件についてみるに、前訴における被上告人の白柳に対する本件商品売買代金請求訴訟の結果によって、上告人の被上告人に対する本件商品の売買代金支払義務の有無が決せられる関係にあるものではなく、前訴の判決は上告人の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすものではないから、上告人は、前訴の訴訟の結果につき法律上の利害関係を有していたとはいえない。したがって、上告人が前訴の訴訟告知を受けたからといって上告人に前訴の判決の効力が及ぶものではない。しかも、前訴の判決理由中、白柳が本件商品を買い受けたものとは認められない旨の記載は主要事実に係る認定に当たるが、上告人が本件商品を買い受けたことが認められる旨の記載は、前訴判決の主文を導き出すために必要な判断ではない傍論において示された事実の認定にすぎないものであるから、同記載をもって、本訴において、上告人は、被上告人に対し、本件商品の買主が上告人ではないと主張することが許されないと解すべき理由もない。
 4 以上によれば、前訴の判決の理由中に本件商品は上告人が被上告人から買い受けたことが認められる旨の記載があるからといって、前訴の判決の効力が上告人に及び、上告人が本件商品の買主であるとして売買代金の支払を認めるべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、上告人の本件商品の売買代金支払債務の有無について更に審理を遂げさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道)

・参加的効力は、補助参加人と被参加人との間にのみ生じる。

6.共同訴訟的補助参加
(1)共同訴訟的補助参加の意義
40条を一定程度類推適用することで補助参加人の権限を強化する共同訴訟的補助参加
解釈によって認められている。
←参加的効力の発生を待たずとも判決効が拡張するような場合にまで参加人に従属を強いるならば、参加人は、十分に手続権を行使しえないまま、自らの利益ないし権利を奪われる恐れがある。

+判例(S45.1.22)
理由
 上告代理人中村信逸の上告理由第一点について。
 およそ、民訴法七一条に基づく独立当事者参加の申出は、常に原被告双方を相手方としなければならず、当事者の一方のみを相手方とする参加の申出は、不適法であることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和三九年(オ)第七九七号同四二年九月二七日大法廷判決民集二一巻七号一九二五頁参照)。また、独立当事者参加の申出は、参加人が当該訴訟において裁判を受けるべき請求を提出しなければならず、単に当事者一方の請求に対して訴却下または請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されないものと解するを相当とする。けだし、この種の参加の申出は、訴の提起たるの実質を有し、またもし参加人が訴却下または請求棄却の判決を求めるのみであるとすれば、当事者と参加人との間に審理裁判の対象となるべき請求が存しないこととなるからである。本件についてこれをみるに、被上告人Aは、第一審において、上告人と被上告人株式会社関口本店(以下被上告会社という)との間の訴訟につき民訴法七一条に基づく独立当事者参加の申出をしたが、上告人の被上告会社に対する訴につき、請求棄却および訴却下の判決を求めただけであつて、被上告人Aは被参加訴訟の当事者である上告人および被上告会社に対し何らの請求をもしなかつたことが、記録上明らかである。したがつて、被上告人Aの本件独立当事者参加の申出は不適法であるといわなければならない。これと見解を異にし、同被上告人の右参加の申出を適法とした原審および第一審の判断は違法であり、原判決中同被上告人に関する部分は、他の上告理由について判断するまでもなく破棄を免れず、第一審判決中同部分を取り消し、同被上告人の本件独立当事者参加の申出を却下することとする。
 もつとも、被上告人Aは、予備的に民訴法六四条により被上告会社のために補助参加の申出をしていることは、記録上明らかであるところ、上告人の被上告会社に対する主位的請求および予備的請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有するから、右補助参加はいわゆる共同訴訟的補助参加であり、この種の補助参加については、同法六九条二項の適用はなく、同法六二条の準用をみるべきものである(最高裁昭和三七年(オ)一一二八号同四〇年六月二四日第一小法廷判決民集一九巻四号一〇〇一頁参照)。したがつて、原審が被上告人Aの訴訟行為につき、同法六九条二項を適用することなく、同法六二条の規定により被上告会社の利益に効力を生ずるものとして審理裁判したことは、上告人と被上告会社との間の訴訟手続に関する限り結局相当であり、論旨は、被上告会社に対する関係においては理由がないものといわなければならない。

 上告代理人鈴木八郎の上告理由第一点ないし第五点ならびに同中村信逸の上告理由第二点および第三点について。
 上告人の被上告会社に対する本件主位的請求および予備的請求のうち、清算人Cを解任し、Aを清算人に選任する旨の決議に関する部分については、原審において第一審判決を取り消し、これを大阪地方裁判所に差し戻す旨の判決をしている。控訴審において、第一審判決を取り消し、事件を第一審に差し戻す旨の判決があつた場合に、差戻を受けた第一審は、裁判所法四条の定めるところにより、右判決の取消の理由となつた法律上および事実上の判断に拘束されるのであるから(最高裁昭和二八年(オ)第八一七号同三〇年九月二日第二小法廷判決民集九巻一〇号一一九七頁参照)、同条所定の拘束力が生ずる取消の理由となつた控訴審判決の判断に不服のある控訴人は、右判決に対して上告をする利益を有し右判断の違法をいうことができるのであるが、控訴人において右判決の理由に不服があつても、これが取消の理由に対するものでない場合には、右控訴人は右判決に対し上告の利益を有しないものと解するのを相当とする。論旨は、原判決の違法をいうが、いずれも、原審が第一審判決を取り消す理由とした同条所定の拘束力のある判断の違法をいうものではないから、上告人の被上告会社に対する請求中清算人Cを解任し、Aを清算人に選任する旨の決議に関する部分については、上告適法の理由とすることができない。
 次に、論旨を、上告人の被上告会社に対する請求のうち、Bを監査役に選任する旨の決議に関する部分について審按する。およそ、社員として有する権利の行使の停止またはかかる権利行使許容の仮処分決定においては、裁判所が右仮処分によりみだりに会社の経営権争奪に介入することがないよう厳に戒しむべきものであることはいうまでもなく、右仮処分の申請はその必要最少限度においてのみ認容せらるべきものといわなければならない。そして、この種の仮処分決定は、右の趣旨に照らし、その決定中に明示された部分に限りその効力を生ずるものというべきである。したがつて、原審の認定した本件仮処分決定中いわゆる社員権行使許容を命じた部分は、右仮処分申請人である被上告人Aに対し、D名義の同決定判示の株式一五〇〇株についてのみ、株主としての権利行使を許しただけであつて、定款により株主総会における議決権行使の代理資格を株主に制限している被上告会社において、被上告人Aに株主Eの本件株主総会における議決権を代理行使する資格をも与えたものと解することはできないものといわなければならない。してみれば、右仮処分決定が右の効力をも有するものとし、被上告人AのしたEの議決権の代理行使を有効とした原審の判断は違法である。また、株式を相続により準共有するに至つた共同相続人は、商法二〇三条二項の定めるところに従い、当該株式につき株主の権利を行使すべき者一人を定めて会社に通知すべきところ、原審は、亡F名義の株式二〇〇〇株につき、その共同相続人から会社に対し、右の通知をしたかどうか、また何人が株主の権利を行使すべき者として定められたかについて、何ら判示するところがない。そして、被上告人AのしたEの議決権の代理行使を無効とする以上は、右通知の存否、内容のいかんによつては、本件株主総会においてBを監査役に選任する旨の議決は、成立しなかつたことになる。昭和三八年五月六日同人につき監査役選任の登記がされたことは原審の認定するところであり、したがつて、上告人の被上告会社に対する右決議の効力がないことの確定を求める本件主位的請求をたやすく排斥した原判決には、審理不尽、理由不備の違法があるものといわなければならない。論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れず、原判決と同旨の第一審判決も取り消すべく、第一審において更に審理を尽くさせるのを相当とし、右主位的請求を破棄差戻すべきものとする以上予備的請求の当否につき判断をする必要をみない場合もありうべきであるから、右決議に関する部分につき主位的請求に併せて予備的請求も大阪地方裁判所に差し戻すべきものとする。
 よつて、民訴法四〇八条、四〇七条一項、三八六条、三八九条、三九六条、三八四条、九四条、九五条、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 岩田誠 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 大隅健一郎)

(2)共同訴訟的補助参加の要件
・判決効が参加申出人に拡張する場合であること。
共同訴訟的補助参加の場合でも補助参加の利益は必要

・補助参加人は、補助参加の申出をする際に共同訴訟的補助参加であることを明示する必要はない。
裁判所は共同訴訟的補助参加の要件を満たす限り、そのように取り扱わなければならない。

・共同訴訟参加が可能である場合に補助参加が申し出られた場合には単純な補助参加として扱われる。
←共同訴訟的補助参加は明文規定のある参加形態では不十分な場合にのみ補充的に認められるという解釈

(3)共同訴訟的補助参加人の地位
・共同訴訟的補助参加人は、被参加人の訴訟行為と積極的に抵触する訴訟行為をなしうる(45条2項は適用されない)。

・参加人が、被参加人に上訴期間が経過した後も、自らの上訴期間内であれば上訴し得るかについては争いがある。

・参加人に中断または中止事由が生じた場合の取り扱いについても争いがある。

・参加人自身が、訴えの取り下げ、請求の放棄認諾、訴訟上の和解などの訴訟処分行為をなしえないことに争いはないが、
被参加人によるこれらの行為は、参加人と共に行わない限り効力を生じないといいうるかについても争いがある。

・参加人が、参加時に訴訟状態に拘束されるかという点も明らかではない。
従前の被参加人の訴訟追行が詐害的であるような場合は、詐害防止参加に委ねれば足りると考える立場も。


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12-5 多数当事者訴訟 主体的追加的併合

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1.主体的追加的併合の意義
訴えの提起後に共同訴訟が発生する場合で、当事者の訴訟行為に基づく場合。

2.原告がイニシアティヴをとる場合
(1)原告の申立てによる主体的追加的併合の意義
原告にとっては便宜かもしれない。

しかし、
新たに追加される被告が従前の審理の結果について十分に関与できないとすれば、手続保障の観点から問題がある。
新たに追加される被告に従前の審理結果について改めて十分な手続関与を認めるとすれば、従前の被告および裁判所はある程度の訴訟遅延を甘受せざる得ない。

(2)主体的追加的併合の適法性
通常共同訴訟が成立する場合について主体的追加的併合を認めない。
←①併合前の訴訟状態を新たに追加された当事者との間で当然に利用できる保障はない
②軽率な提訴ないし濫訴が増える恐れ
③事後的に共同訴訟を作り出したければ、新たに被告として追加したい者を相手取って別訴を提起したうえで、裁判所による弁論の併合を待てば足りる。

+判例(S62.7.17)
理由
 上告人の上告状及び上告理由書記載の上告理由について
 所論は、要するに、上告人が井上利行を被告として提起している東京地方裁判所昭和五五年(ワ)第八八一号事件の請求(以下「旧請求」という。)と上告人が被上告人を被告として提起している本件訴えにかかる請求とは民訴法(以下「法」という。)五九条所定の共同訴訟の要件を具備しているから、本件訴えを旧請求の訴訟に追加的に併合提起することが許されるべきであるところ、右の両請求の経済的利益が共通しているから、上告人は本件訴えにつき手数料を納付する必要はない、というのである。
 しかし、甲が、乙を被告として提起した訴訟(以下「旧訴訟」という。)の係属後に丙を被告とする請求を旧訴訟に追加して一個の判決を得ようとする場合は、甲は、丙に対する別訴(以下「新訴」という。)を提起したうえで、法一三二条の規定による口頭弁論の併合を裁判所に促し、併合につき裁判所の判断を受けるべきであり、仮に新旧両訴訟の目的たる権利又は義務につき法五九条所定の共同訴訟の要件が具備する場合であっても、新訴が法一三二条の適用をまたずに当然に旧訴訟に併合されるとの効果を認めることはできないというべきである。けだし、かかる併合を認める明文の規定がないのみでなく、これを認めた場合でも、新訴につき旧訴訟の訴訟状態を当然に利用することができるかどうかについては問題があり、必ずしも訴訟経済に適うものでもなく、かえって訴訟を複雑化させるという弊害も予想され、また、軽率な提訴ないし濫訴が増えるおそれもあり、新訴の提起の時期いかんによっては訴訟の遅延を招きやすいことなどを勘案すれば、所論のいう追加的併合を認めるのは相当ではないからである。
 右と同旨の見解に立ち、上告人の被上告人に対する本件訴えは新訴たる別事件として提起されたものとみるべきであるから、新訴の訴訟の目的の価額に相応する手数料の納付が必要であるとして、上告人が手数料納付命令に応じなかつたことを理由に本件訴えは不適法として却下を免れないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でない。右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、失当である。論旨は、ひつきよう、独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
 よつて、法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 坂上壽夫 裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦 裁判官 長島敦)


弁論の併合をするためには既に係属中の訴訟と新たに提訴された訴訟とが官署として同一の裁判所に係属していることが必要であるが、前者の裁判所が後者の訴訟について管轄を有する保障はない。
主体的追加併合なら、既に訴訟が係属している裁判所が新たな被告に対する訴えにつき固有の管轄を有していないとしても、関連裁判籍を認める7条の類推適用を導くことができる。

⇔⇔
別訴を提起する際にも、同時に38条前段の要件を満たすような共同訴訟を成立させる弁論の併合を求めるのであれば7条を類推適用するという解釈を採用することは可能である。
新たに追加される被告の管轄の利益という観点からは、7条の類推適用を認めることが当然に好ましいとも言い難い。

・被告の側で訴訟共同の必要がある場合において、欠けている被告を追加するために主体的追加的併合を用いることの適法性は、異なる解釈をする余地がある。
上記①②③の理由は妥当する者の、主体的追加的併合を許さないとした場合、訴えは不適法になるため、原告にとって酷に過ぎると考えることができるから。
もっとも、裁判所が弁論を併合することによって、かかる不都合は回避できる。

3.被告がイニシアティヴをとる場合
被告が、原告が定めた当事者の範囲っを変更することを望む場合。

原告がイニシアティヴを採る場合に関して述べたのと同様、いずれについても別訴の提起と弁論の併合の組み合わせでほぼ対応することができる。

4.第三者がイニシアティヴをとる場合
追加的選定(30条3項)は、選定者の請求が追加されるか否かは選定を受けた者の意思にかかるため、かかる追加的選定のみで訴外の被害者にとって十分というわけではない。
+(選定当事者)
第三十条  共同の利益を有する多数の者で前条の規定に該当しないものは、その中から、全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定することができる。
2  訴訟の係属の後、前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定したときは、他の当事者は、当然に訴訟から脱退する。
3  係属中の訴訟の原告又は被告と共同の利益を有する者で当事者でないものは、その原告又は被告を自己のためにも原告又は被告となるべき者として選定することができる
4  第一項又は前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定した者(以下「選定者」という。)は、その選定を取り消し、又は選定された当事者(以下「選定当事者」という。)を変更することができる。
5  選定当事者のうち死亡その他の事由によりその資格を喪失した者があるときは、他の選定当事者において全員のために訴訟行為をすることができる。

そこで、主体的追加的併合の可否が問題となるが、
別訴の提起と弁論の併合で対処すれば足りる。


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12-4 多数当事者訴訟 必要的共同訴訟

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1.必要的共同訴訟の意義
必要的共同訴訟
=訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定する必要のある共同訴訟

合一確定の必要とは、
共同訴訟人間で訴訟資料と手続進行を統一することによって判決の内容を統一することが要求されること

・固有必要的共同訴訟
訴訟共同の必要がある場合。複数人が共同原告となり、または複数人を共同被告として訴えを提起しなければ当事者適格を欠くことになるために訴えが不適法になる場面。
共同原告または共同被告は訴訟追行権を共同でのみ行使することができることから、その結果として合一確定がもたらされる。

・類似必要的共同訴訟
訴訟共同の必要があるわけではないが、共同訴訟となった場合は、合一確定が要請される。
合一確定の要請は、
互いに判決効が拡張する場合があることから、判決効の矛盾抵触を回避するためには判決内容を統一する必要があるという観点から説明。

2.固有必要的共同訴訟
(1)固有必要的共同訴訟の意義
訴訟共同の必要がある訴訟形態。

固有必要的共同訴訟の範囲は、個別の実体法の規定の趣旨を探り、時には訴訟的な考慮も加味することによって確定される。

(2)共同の管理処分権の行使が必要とされている場合
管理処分権を共同行使すべき場合である以上、訴訟追行権も共同して行使する必要がある。

(3)他人間の法律関係に変動を生じさせる訴訟
他人間の法律関係に変動を生じさせる形成訴訟の場合、当該法律関係の主体全員を共同被告としなければならない。

(4)共同所有の場合
ⅰ)共同所有者から第三者に対する訴え
  a)総有以外の場合
・共有持分権の確認を求める訴訟は固有必要的共同訴訟ではない
←共有持分権は各共同所有者に帰属する権利である以上、訴訟追行も各共同所有者の自由に委ねられるべき。

+判例(S40.5.20)
理由
 上告代理人柴田健太郎の上告理由第一点について。
 共有持分権の及ぶ範囲は、共有地の全部にわたる(民法二四九条)のであるから、各共有者は、その持分権はもとづき、その土地の一部が自己の所有に属すると主張する第三者に対し、単独で、係争地が自己の共有持分権に属することの確認を訴求することができるのは当然である(昭和三年一二月一七日大審院判決、民集七巻一〇九五頁参照)。これと同趣旨にでた原判決の判断は正当であり、論旨は独自の見解であつて、採用できない。
 同第二点について。
 本件において所有権の帰属につき争があるのは、被上告人らの主張する共有地の全部ではなく、その一部であること原判文上明らかであるのに、原判決は、共有地の全部が被上告人らの共有持分の及ぶ範囲であることを確認していること論旨指摘のとおりである。一筆の土地であつても、所有権確認の利益があるのは、相手方の争つている地域のみであつて、争のない地域については確認の利益がないこというまでもない。すなわち、原判決は、確認の利益のない部分について確認の判決をした違法があるといわざるをえない。論旨は理由があり、原判決中確認の訴を認容した部分を破棄し、争のある土地の範囲を特定させるため、原審に差し戻すべきものとする。
 同第三点について。
 甲乙両山林の境界についての原判決の事実認定は、挙示する証拠関係に照らして首肯しえなくはない。論旨は、原審の裁量に属する証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、採用することができない。
 よつて、その余の部分に対する上告を棄却し、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田誠)

・ABCの共有に属することの確認を求める訴えを第三者に対して提起する場合は、ABC全員が原告にならなければならない。
←共同所有者全員の有する1個の所有権そのものが紛争の対象となっている以上、共同所有者全員が共同して訴訟追行権を行使すべきであること、その紛争の解決いかんについては共同所有者全員が法律上利害関係を有することから、判決による解決は全員に矛盾なくされることが要請される。

+判例(S46.10.7)
理由
 上告代理人荒井素佐夫、同山本孝の上告理由第四点について。
 本件記録によれば、被上告人らの本訴請求は、被上告人らが共同して本件土地を訴外Aから買い受けてその所有権を取得したが、都合により上告人名義に所有権移転登記を経由したもので、その登記は実体関係に合致しないものであるとの理由で、上告人に対し本件土地の共有権の確認および右登記の抹消登記手続に代えて所有権移転登記手続を求めるものであるところ、被上告人Bは、本件第一審係属中に本訴を取り下げる旨の昭和三七年九月一〇日付書面を提出し、上告人がその取下げに同意する旨の同月一一日付書面を提出していることが明らかである。
 そして、原審は、被上告人Bのした右訴の取下げは無効であると判示しているところ、論旨は、要するに、被上告人らの提起した本件訴訟は、通常の共同訴訟であつて、被上告人Bの取下げによつて、同人と上告人との間の訴訟は終了したものというべく、原判決には民訴法六二条の解釈適用を誤つた違法があるというのである。
 思うに、一個の物を共有する数名の者全員が、共同原告となり、いわゆる共有権(数人が共同して有する一個の所有権)に基づき、その共有権を争う第三者を相手方として、共有権の確認を求めているときは、その訴訟の形態はいわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当である(大審院大正一一年(オ)第八二一号同一三年五月一九日判決、民集三巻二一一頁参照)。けだし、この場合には、共有者全員の有する一個の所有権そのものが紛争の対象となつているのであつて、共有者全員が共同して訴訟追行権を有し、その紛争の解決いかんについては共有者全員が法律上利害関係を有するから、その判決による解決は全員に矛盾なくなされることが要請され、かつ、紛争の合理的解決をはかるべき訴訟制度のたてまえからするも、共有者全員につき合一に確定する必要があるというべきだからである。また、これと同様に、一個の不動産を共有する数名の者全員が、共同原告となつて、共有権に基づき所有権移転登記手続を求めているときは、その訴訟の形態も固有必要的共同訴訟と解するのが相当であり(大審院大正一一年(オ)第二五六号同年七月一〇日判決、民集一巻三八六頁参照)、その移転登記請求が真正な所有名義の回復の目的に出たものであつたとしても、その理は異ならない。
 それゆえ、このような訴訟の係属中に共同原告の一人が訴の取下げをしても、その取下げは効力を生じないものというべきである。これと同趣旨の原判決に所論の違法はなく、所論引用の判例は、いずれも本件と事案を異にして適切ではない。したがつて、論旨は採用することができない。
 同第一点、第二点、第三点一ないし三について。
 本件土地は被上告人両名が訴外Aから買い受けてその所有権を取得したものであり、単に所有権移転登記を経由するに際して便宜上上告人名義を用いたにすぎない旨の原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠関係に照らして肯認するに足り、原判決に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、原審の認定にそわない事実をも合わせ主張して原判決の認定判断を非難するか、または、原判決を正解しないでその判断を非難するにすぎず、採用することができない。
 同第三点四について。
 原判決は、本件土地の所有権の帰属を証拠によつて適法に認定判断しているのであるから、もはや登記の推定力を問題とする余地のないことは明らかである。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 大隅健一郎 裁判官 岩田誠 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸盛一)

・不動産の共同所有者の1人が当該不動産の登記簿上の所有名義者に対してその登記の抹消を求める訴えは固有必要的共同訴訟ではない。
持分権は共有物全体に及んでおり、持分権に基づく妨害排除請求権として自らの持分割合を超えた部分についても抹消登記を請求できるため、各持分権者が提訴できてよいから
+(抹消登記請求は民法252条ただし書きの保存行為(現状を維持するもので、他の共同所有者の不利益にならない行為)に属するから。)

+判例(S31.5.10)
理由
 上告代理人弁護士桑江常善の上告理由第一点について。
 本件におけるがごとくある不動産の共有権者の一人がその持分に基ずき当該不動産につき登記簿上所有名義者たるものに対してその登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求に外ならずいわゆる保存行為に属するものというべく、従つて、共同相続人の一人が単独で本件不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めうる旨の原判示は正当であると認められるから、論旨は採ることができない。
 同第二点について。
 原判決挙示の証拠によれば、Aが実弟たる控訴人(上告人)名義に仮装して本件登記をなしたとの原判示認定を肯認することができるし、また、原判決は、第一審判決とは異つて被上告人等が共同相続をしたとの被上告人の主張事実を是認したものであるから、所論の審理不尽は認められない。なお、不法原因給付であるとの主張は、原審で主張しなかつたところであるから、原判決が民法七〇八条の解釈を誤つたとの主張は採用することができない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

・共有地全体に関する移転登記請求訴訟は固有必要的共同訴訟である。
←共有地全体についての移転登記請求は持分権を基礎としてできるわけではない。
移転登記請求の場合、いかなる持分割合での移転登記をするかが原告の意思にかかっており、保存行為の範疇をこえる。

  b)総有の場合
・ある土地が複数の入会権者の総有に属することの確認を求める訴訟においては総有権者たる入会権者全員が原告とならなければならない。

+判例(S41.11.25)
理由
 職権をもつて調査するに、入会権は権利者である一定の部落民に総有的に帰属するものであるから、入会権の確認を求める訴は、権利者全員が共同してのみ提起しうる固有必要的共同訴訟というべきである(明治三九年二月五日大審院判決・民録一二輯一六五頁参照)。この理は、入会権が共有の性質を有するものであると、共有の性質を有しないものであるとで異なるとこるがない。したがつて、上告人らが原審において訴の変更により訴求した「本件土地につき共有の性質を有する入会権を有することを確認する。若し右請求が理由がないときは、共有の性質を有しない入会権を有することを確認する」旨の第四、五次請求は、入会権者全員によつてのみ訴求できる固有必要的共同訴訟であるというべきところ、本件右請求が入会権者と主張されている部落民全員によつて提起されたものでなく、その一部の者によつて提起されていることは弁論の全趣旨によつて明らかであるから、右請求は当事者適格を欠く不適法なものである。本件土地を上告人らが総有することを請求原因として被上告人に対しその所有権取得登記の抹消を求める第二次請求もまた同断である。
 さらに、上告人らの本件第三次請求は、本件土地が又重財産区の所有に属することを請求原因として、被上告人に対しその所有権取得登記の抹消を求めるものである。そうとすれば、本請求の正当な原告は又重財産区であつて、上告人らは当事者適格を有しないものというべきである。本訴もまた不適法である。
 よつて、上告人ら代理人森吉義旭、同浅石大和の上告理由中前文および第一点ないし第一〇点に対する判断を省略し、本件第二ないし第五次請求について本案の判断をした第一、二審判決を破棄し、右請求を却下すべきものとする。
 同第一一、一二点について。
 論旨は、上告人らが時効により本件土地の共有権を取得したことを請求原因とし、被上告人に対しそれぞれ持分三三〇分の一の移転登記を求める上告人らの第一次請求を排斥した原判決の判断に、法令違背、事実誤認、判断遺脱の違法がある、という。
 しかし、上告人らが時効取得の基礎として主張する占有は、又重部落民全員ないしは又重部落としての団体的占有であることもその主張自体に照して明らかであるところ、このような団体的占有によつて個人的色彩の強い民法上の共有権が時効取得されるとは認めらないから、本請求は、その主張自体失当であるというべきである。そうとすれば、論旨はすべて無用の論議に帰するから採用することができない。
 よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官山田作之助は退官につき署名押印することができない。裁判長裁判官 奥野健一)

・入会地に関する地上権設定登記の抹消を求める訴訟についても入会権者全員が原告にならなければならない。
←総有においては、通常の享有におけるような持分権を観念できない以上、構成員各自において入会権自体に対する妨害排除としての抹消登記を請求することはできない。民法252条ただし書きを経由した個別訴訟の可能性を否定。

+判例(S57.7.1)
理由
 上告代理人奥野健一、同伊豆鉄次郎、同早瀬川武の上告理由第一点について
 入会部落の構成員が入会権の対象である山林原野において入会権の内容である使用収益を行う権能は、入会部落の構成員たる資格に基づいて個別的に認められる権能であつて、入会権そのものについての管理処分の権能とは異なり、部落内で定められた規律に従わなければならないという拘束を受けるものであるとはいえ、本来、各自が単独で行使することができるものであるから、右使用収益権を争い又はその行使を妨害する者がある場合には、その者が入会部落の構成員であるかどうかを問わず、各自が単独で、その者を相手方として自己の使用収益権の確認又は妨害の排除を請求することができるものと解するのが相当である。これを本件についてみると、原審が適法に確定したところによれば、当事者参加人らは、本件山林について入会権を有する山中部落の構成員の一部であつて、各自が本件山林において入会権に基づきその内容である立木の小柴刈り、下草刈り及び転石の採取を行う使用収益権を有しているというのであり、右使用収益権の行使について特別の制限のあることは原審のなんら認定しないところであるから、当事者参加人らの上告人及び被上告人神社に対する右使用収益権の確認請求については、当事者参加人らは当然各自が当事者適格を有するものというべく、また、上告人に対する地上権設定仮登記の抹消登記手続請求についても、それが当事者参加人らの右使用収益権に基づく妨害排除の請求として主張されるものである限り、当事者参加人ら各自が当事者適格を有するものと解すべきである。これと同旨の原審の判断は正当であつて、その過程に所論の違法はない。所論引用の判例は、入会部落の構成員の一部の者が入会部落民に総有的に帰属する入会権そのものの確認及びこれに基づく妨害排除としての抹消登記手続を求めた場合に関するものであつて、事案を異にし本件に適切でない。
 しかしながら、職権をもつて、当事者参加人らの請求中本件山林について経由された地上権設定仮登記の抹消登記手続請求の当否について検討するに、当事者参加人らが有する使用収益権を根拠にしては右抹消登記手続を請求することはできないものと解するのが相当である。けだし、原審が適法に確定したところによれば、当事者参加人らが入会部落の構成員として入会権の内容である使用収益を行う権能は、本件山林に立ち入つて採枝、採草等の収益行為を行うことのできる権能にとどまることが明らかであるところ、かかる権能の行使自体は、特段の事情のない限り、単に本件山林につき地上権設定に関する登記が存在することのみによつては格別の妨害を受けることはないと考えられるからである。もつとも、かかる地上権設定に関する登記の存在は、入会権自体に対しては侵害的性質をもつといえるから、入会権自体に基づいて右登記の抹消請求をすることは可能であるが、かかる妨害排除請求権の訴訟上の主張、行使は、入会権そのものの管理処分に関する事項であつて、入会部落の個々の構成員は、右の管理処分については入会部落の一員として参与しうる資格を有するだけで、共有におけるような持分権又はこれに類する権限を有するものではないから、構成員各自においてかかる入会権自体に対する妨害排除としての抹消登記を請求することはできないのである。しかるに、原審は、なんら前記特段の事情のあることを認定することなしに、当事者参加人らが入会権の内容として有する使用収益権に特別の効力を認め、右使用収益権はその法的効力においてはいわば内容において限定を受けた持分権叉は地上権と同様の性質を持つものと解したうえ、当事者参加人らは、右各自の使用収益権に基づく保存行為として本件山林について経由された地上権設定仮登記の抹消登記手続を請求することができるものと判断しているのであつて、右判断には、入会権に関する法律の解釈適用を誤つた違法があるものといわなければならず、右違法が原判決中右抹消登記手続請求に関する部分に影響を及ぼすことは明らかである。
 したがつて、論旨は、理由がなく、採用の限りでないが、原審が当事者参加人らの請求中本件山林について経由された地上権設定仮登記の抹消登記手続請求を認容したことは失当であるから、原判決中右請求に関する部分を破棄し、第一審判決中右請求に関する部分を取り消し、右請求を棄却すべきである。
 同第二点について
 記録によれば、所論の主張は、本件山林が被上告人神社の所有であつて同神社は上告人との間で適法かつ有効に地上権設定契約を締結したことを強調する趣旨に出たものにとどまり、独立の抗弁として主張する趣旨と解することはできないから、原審が所論の主張について判断を加えていないからといつて所論の違法があるとはいえない。のみならず、記録によれば、当事者参加人らは、上告人主張の地上権設定契約は本件山林について処分権限のない被上告人神社との間で締結された無効なものであると主張して民訴法七一条に基づき本件訴訟に当事者として参加し、上告人及び被上告人神社の双方に対し、右地上権設定契約に基づく上告人の請求とは両立しえない請求をしていることが明らかであつて、本件山林はその実質においては山中部落の総有であつて被上告人神社はなんらの処分権限を有しないものとして当事者参加人らの入会権の内容である使用収益権の確認請求を認容する限り、右地上権設定契約を有効なものと認めて上告人の被上告人神社に対する請求を認容することは、論理的に不可能であるといわなければならない。そうとすれば、たとえ所論のように、被上告人神社には上告人との関係で右地上権設定契約の無効を主張することの許されない特段の事情があるとしても、処分権限のない被上告人神社が締結した右契約を有効なものと認めて上告人の請求を認容する余地はないから、仮に原審において所論の主張がされていたにもかかわらず原審がこれについての判断を遺脱したものであるとしても、右は判決の結論に影響を及ぼすものではないというべきである。論旨は、結局、採用することができない。
 同第三点について
 原審が確定したところによれば、本件山林について被上告人神社名義に所有権移転登記が経由されたのは、入会部落である山中部落が独立の法人格を有せず、払下げを受けるにあたつて部落有地としての登記方法がなかつたためやむをえず行つたもので、所有権の信託的譲渡があつたものではない、というのであり、右事実は原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができる。もつとも、右事実によれば、被上告人神社に対する右所有権移転登記が入会権者である山中部落民の承諾を得て経由されたものであることを否定することはできないが、入会権については現行法上これを登記する途が開かれていないため(不動産登記法一条参照)、入会権の対象である山林原野についての法律関係は、登記によつてではなく実質的な権利関係によつて処理すべきものであるから、本件山林について被上告人神社名義に所有権移転登記が経由されていることをとらえて、入会権者と被上告人神社との間で仮装の譲渡契約があつたとか又はこれと同視すべき事情があつたものとして、民法九四条二項を適用又は類推適用するのは相当でないものというべきである(最高裁昭和四二年(オ)第五二四号同四三年一一月一五日第二小法廷判決・裁判集民事九三号二三三頁)。右と結論を同じくする原審の判断は正当として是認することができる。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でない。論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九三条、九二条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 本山亨 裁判官 団藤重光 裁判官 藤﨑萬里 裁判官 中村治朗 裁判官 谷口正孝)

・使用収益権の確認を各入会権者が単独で求めることはできる。

  c)共同所有者の一部が提訴を拒否する場合
・提訴に同調しない入会権者を被告とすることでこの訴えを適法に提起することができる。
←提訴を拒否する構成員は被告とされる限り、訴訟に関与することができる以上、利害を害されるとはいえないから。

+判例(H20.7.17)
理由
 上告代理人中尾英俊、同増田博、同蔵元淳の上告受理申立て理由について
 1 本件は、上告人らが、第1審判決別紙物件目録記載1~4の各土地(以下、同目録記載の土地を、その番号に従い「本件土地1」などといい、併せて「本件各土地」という。)は鹿児島県西之表市A集落の住民を構成員とする入会集団(以下「本件入会集団」という。)の入会地であり、上告人ら及び被上告人Y2(以下「被上告会社」という。)を除く被上告人ら(以下「被上告人入会権者ら」という。)は本件入会集団の構成員であると主張して、被上告人入会権者ら及び本件各土地の登記名義人から本件各土地を買い受けた被上告会社に対し、上告人ら及び被上告人入会権者らが本件各土地につき共有の性質を有する入会権を有することの確認を求める事案である。
 2 原審が確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
 被上告会社は、本件土地1についてはその登記名義人である被上告人Y3及び同Y4から、本件土地2~4についてはその登記名義人である被上告人Y5及び同Y6から、それぞれ買い受け、その所有権を取得したとして、平成13年5月29日、共有持分移転登記を了した。
 3 原審は、次のとおり判示して、本件訴えを却下すべきものとした。
 (1) 入会権は権利者である入会集団の構成員に総有的に帰属するものであるから、入会権の確認を求める訴えは、権利者全員が共同してのみ提起し得る固有必要的共同訴訟であるというべきである。
 (2) 本件各土地につき共有の性質を有する入会権自体の確認を求めている本件訴えは、本件入会集団の構成員全員によって提起されたものではなく、その一部の者によって提起されたものであるため、原告適格を欠く不適法なものであるといわざるを得ない。本件のような場合において、訴訟提起に同調しない者は本来原告となるべき者であって、民訴法にはかかる者を被告にすることを前提とした規定が存しないため、同調しない者を被告として訴えの提起を認めることは訴訟手続的に困難というべきである上、入会権は入会集団の構成員全員に総有的に帰属するものであり、その管理処分については構成員全員でなければすることができないのであって、構成員の一部の者による訴訟提起を認めることは実体法と抵触することにもなるから、上告人らに当事者適格を認めることはできない。
 4 しかしながら、原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 上告人らは、本件各土地について所有権を取得したと主張する被上告会社に対し、本件各土地が本件入会集団の入会地であることの確認を求めたいと考えたが、本件入会集団の内部においても本件各土地の帰属について争いがあり、被上告人入会権者らは上記確認を求める訴えを提起することについて同調しなかったので、対内的にも対外的にも本件各土地が本件入会集団の入会地であること、すなわち上告人らを含む本件入会集団の構成員全員が本件各土地について共有の性質を有する入会権を有することを合一的に確定するため、被上告会社だけでなく、被上告人入会権者らも被告として本件訴訟を提起したものと解される。
 特定の土地が入会地であることの確認を求める訴えは、原審の上記3(1)の説示のとおり、入会集団の構成員全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟である。そして、入会集団の構成員のうちに入会権の確認を求める訴えを提起することに同調しない者がいる場合であっても、入会権の存否について争いのあるときは、民事訴訟を通じてこれを確定する必要があることは否定することができず、入会権の存在を主張する構成員の訴権は保護されなければならない。そこで、入会集団の構成員のうちに入会権確認の訴えを提起することに同調しない者がいる場合には、入会権の存在を主張する構成員が原告となり、同訴えを提起することに同調しない者を被告に加えて、同訴えを提起することも許されるものと解するのが相当である。このような訴えの提起を認めて、判決の効力を入会集団の構成員全員に及ぼしても、構成員全員が訴訟の当事者として関与するのであるから、構成員の利益が害されることはないというべきである
 最高裁昭和34年(オ)第650号同41年11月25日第二小法廷判決・民集20巻9号1921頁は、入会権の確認を求める訴えは権利者全員が共同してのみ提起し得る固有必要的共同訴訟というべきであると判示しているが、上記判示は、土地の登記名義人である村を被告として、入会集団の一部の構成員が当該土地につき入会権を有することの確認を求めて提起した訴えに関するものであり、入会集団の一部の構成員が、前記のような形式で、当該土地につき入会集団の構成員全員が入会権を有することの確認を求める訴えを提起することを許さないとするものではないと解するのが相当である。
 したがって、特定の土地が入会地であるのか第三者の所有地であるのかについて争いがあり、入会集団の一部の構成員が、当該第三者を被告として、訴訟によって当該土地が入会地であることの確認を求めたいと考えた場合において、訴えの提起に同調しない構成員がいるために構成員全員で訴えを提起することができないときは、上記一部の構成員は、訴えの提起に同調しない構成員も被告に加え、構成員全員が訴訟当事者となる形式で当該土地が入会地であること、すなわち、入会集団の構成員全員が当該土地について入会権を有することの確認を求める訴えを提起することが許され、構成員全員による訴えの提起ではないことを理由に当事者適格を否定されることはないというべきである。
 以上によれば、上告人らと被上告人入会権者ら以外に本件入会集団の構成員がいないのであれば、上告人らによる本件訴えの提起は許容されるべきであり、上告人らが本件入会集団の構成員の一部であることを理由に当事者適格を否定されることはない。
 5 以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、第1審判決を取り消した上、上告人らと被上告人入会権者ら以外の本件入会集団の構成員の有無を確認して本案につき審理を尽くさせるため、本件を第1審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉徳治 裁判官 才口千晴 裁判官 涌井紀夫)

・提訴拒否者がいる場合のほかの共同所有者による提訴困難という問題について。
給付訴訟においては権利の帰属主体と主張する者のみが原告適格を有するという原則が妥当する。提訴拒否者を被告に回すという処理をすることは、第三者の権利を確認対象とすることも当然には否定されない確認訴訟以上に困難では。

・境界確定訴訟における固有必要的共同訴訟
提訴を拒否する共同所有者を被告に回すという処理
←公簿上の境界を定めるにあたって、裁判所は当事者の主張に拘束されずに境界線を定めることができるという境界確定訴訟の特殊性

+判例(H11.11.9)
理由
 上告代理人森脇勝、同河村吉晃、同今村隆、同植垣勝裕、同小沢満寿男、同岩松浩之、同田中泰彦、同山本了三、同麦谷卓也の上告理由について
 一 原審の適法に確定した事実関係は、(1) Bの相続人である被上告人らは、第一審判決別紙物件目録記載(1)の土地(以下「本件土地」という。)を持分各四分の一ずつの割合で相続した、(2) 本件土地は、その北側が上告人所有の道路敷(以下「本件道路敷」という。)に、南側が同人所有の河川敷(以下「本件河川敷」という。)に、それぞれ隣接している(以下、本件道路敷及び本件河川敷を併せて「上告人所有地」という。)、(3) 被上告人らの間においてBの遺産の分割について協議が調わず、被上告人Cを除く同Aら三名(以下「被上告人Aら」という。)が同Cを相手方として申し立てた遺産分割の審判が京都家庭裁判所に係属しているところ、本件土地と上告人所有地との境界が確定していないために右手続が進行しないでいる、(4) 被上告人Aらは、本件土地と上告人所有地との境界を確定するために、被上告人Cと共同して、上告人を被告として境界確定の訴えを提起しようとしたが、被上告人Cがこれに同調しなかったことから、同人及び上告人を被告として、本件境界確定の訴えを提起した、というものである。
 二 第一審は、本件土地と本件道路敷との境界は第一審判決別紙図面記載イ、ロ、ハ、ニの各点を結ぶ直線であり、本件土地と本件河川敷との境界は同図面記載ホ、ヘ、トの各点を結ぶ直線であると確定した。上告人は、被上告人Aらを被控訴人として控訴を提起し、原審において、土地の共有者が隣接する土地との境界の確定を求める訴えは共有者全員が原告となって提起すべきものであると主張し、本件訴えの却下を求めた。原審は、本件訴えを適法なものであるとし、被上告人Cも被控訴人の地位に立つとした上で、被上告人Aらと上告人との間及び被上告人Aらと同Cとの間で、それぞれ第一審と同一の境界を確定した。
 三 境界の確定を求める訴えは、隣接する土地の一方又は双方が数名の共有に属する場合には、共有者全員が共同してのみ訴え、又は訴えられることを要する固有必要的共同訴訟と解される(最高裁昭和四四年(オ)第二七九号同四六年一二月九日第一小法廷判決・民集二五巻九号一四五七頁参照)。したがって、共有者が右の訴えを提起するには、本来、その全員が原告となって訴えを提起すべきものであるということができるしかし、【要旨】共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいるときには、その余の共有者は、隣接する土地の所有者と共に右の訴えを提起することに同調しない者を被告にして訴えを提起することができるものと解するのが相当である。
 けだし、境界確定の訴えは、所有権の目的となるべき公簿上特定の地番により表示される相隣接する土地の境界に争いがある場合に、裁判によってその境界を定めることを求める訴えであって、所有権の目的となる土地の範囲を確定するものとして共有地については共有者全員につき判決の効力を及ぼすべきものであるから、右共有者は、共通の利益を有する者として共同して訴え、又は訴えられることが必要となる。しかし、共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいる場合であっても、隣接する土地との境界に争いがあるときにはこれを確定する必要があることを否定することはできないところ、右の訴えにおいては、裁判所は、当事者の主張に拘束されないで、自らその正当と認めるところに従って境界を定めるべきであって、当事者の主張しない境界線を確定しても民訴法二四六条の規定に違反するものではないのである(最高裁昭和三七年(オ)第九三八号同三八年一〇月一五日第三小法廷判決・民集一七巻九号一二二〇頁参照)。このような右の訴えの特質に照らせば、共有者全員が必ず共同歩調をとることを要するとまで解する必要はなく、共有者の全員が原告又は被告いずれかの立場で当事者として訴訟に関与していれば足りると解すべきであり、このように解しても訴訟手続に支障を来すこともないからである
 そして、共有者が原告と被告とに分かれることになった場合には、この共有者間には公簿上特定の地番により表示されている共有地の範囲に関する対立があるというべきであるとともに、隣地の所有者は、相隣接する土地の境界をめぐって、右共有者全員と対立関係にあるから、隣地の所有者が共有者のうちの原告となっている者のみを相手方として上訴した場合には、民訴法四七条四項を類推して、同法四〇条二項の準用により、この上訴の提起は、共有者のうちの被告となっている者に対しても効力を生じ、右の者は、被上訴人としての地位に立つものと解するのが相当である。
 右に説示したところによれば、本件訴えを適法なものであるとし、被上告人Cも被控訴人の地位に立つとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の各判例のうち、最高裁昭和三九年(オ)第七九七号同四二年九月二七日大法廷判決・民集二一巻七号一九二五頁は、本件と事案を異にし適切でなく、その余の各判例は、所論の趣旨を判示したものとはいえない。論旨は、右と異なる見解に立って原判決を非難するものであって、採用することができない。なお、原審は、主文三項の1において被上告人Aらと上告人との間で、同項の2において被上告人Aらと同Cとの間で、それぞれ本件土地と上告人所有地との境界を前記のとおり確定すると表示したが、共有者が原告と被告とに分かれることになった場合においても、境界は、右の訴えに関与した当事者全員の間で合一に確定されるものであるから、本件においては、本件土地と上告人所有地との境界を確定する旨を一つの主文で表示すれば足りるものであったというべきである。
 よって、裁判官千種秀夫の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

ⅱ)第三者から共同所有者に対する訴え
・土地所有者の相続人に対する買主からの移転登記請求訴訟について、
各相続人の移転登記義務は不可分債務であり、買主は各相続人に対して全部の履行を請求し得る。
=共同訴訟の必要はない。

・所有権に基づく建物収去土地明渡しを求める訴えについて、
建物の共同所有者全員を被告にする必要はない。
←建物収去土地明渡しの義務は不可分債務に当たる
建物の共同所有者を具体的に把握することの困難さを考えれば、固有必要的共同訴訟とするのはいたずらに原告に大きな負担を課すことになる。
訴訟共同の必要を否定しても、原告は共同所有者に対して債務名義を取得するか、あるいはその同意を得たうえでなければ、その強制執行をすることが許されない以上は、他の共同所有者の保護に欠けることはない。

+判例(S43.3.15)
理由
 上告代理人金綱正己、同根本孔衛、同鶴見祐策の上告理由第一、二点について。
 所論の準備書面には所論のような記載があるが、右準備書面が原審口頭弁論期日に陳述された形跡は認められない。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断を非難するにすぎず、所論引用の原判示に所論の違法はなく、論旨は理由がない。
 同第四点について。
 所論違憲の主張は前提を欠くことが明らかであるから、採用できない。
 同第五点について。
 被上告人の被告Aに対する本訴請求が本件土地の所有権に基づいてその地上にある建物の所有者である同被告に対し建物収去土地明渡を求めるものであることは記録上明らかであるから、同被告が死亡した場合には、かりにBが同被告の相続人の一人であるとすれば、Bは当然に同被告の地位を承継し、右請求について当事者の地位を取得することは当然である。しかし、土地の所有者がその所有権に基づいて地上の建物の所有者である共同相続人を相手方とし、建物収去土地明渡を請求する訴訟は、いわゆる固有必要的共同訴訟ではないと解すべきである。けだし、右の場合、共同相続人らの義務はいわゆる不可分債務であるから、その請求において理由があるときは、同人らは土地所有者に対する関係では、各自係争物件の全部についてその侵害行為の全部を除去すべき義務を負うのであつて、土地所有者は共同相続人ら各自に対し、順次その義務の履行を訴求することができ、必ずしも全員に対して同時に訴を提起し、同時に判決を得ることを要しないからである。もし論旨のいうごとくこれを固有必要的共同訴訟であると解するならば、共同相続人の全部を共同の被告としなければ被告たる当事者適格を有しないことになるのであるが、そうだとすると、原告は、建物収去土地明渡の義務あることについて争う意思を全く有しない共同相続人をも被告としなければならないわけであり、また被告たる共同相続人のうちで訴訟進行中に原告の主張を認めるにいたつた者がある場合でも、当該被告がこれを認諾し、または原告がこれに対する訴を取り下げる等の手段に出ることができず、いたずらに無用の手続を重ねなければならないことになるのである。のみならず、相続登記のない家屋を数人の共同相続人が所有してその敷地を不法に占拠しているような場合には、その所有者が果して何びとであるかを明らかにしえないことが稀ではない。そのような場合は、その一部の者を手続に加えなかつたために、既になされた訴訟手続ないし判決が無効に帰するおそれもあるのである。以上のように、これを必要的共同訴訟と解するならば、手続上の不経済と不安定を招来するおそれなしとしないのであつて、これらの障碍を避けるためにも、これを必要的共同訴訟と解しないのが相当である。また、他面、これを通常の共同訴訟であると解したとしても、一般に、土地所有者は、共同相続人各自に対して債務名義を取得するか、あるいはその同意をえたうえでなければ、その強制執行をすることが許されないのであるから、かく解することが、直ちに、被告の権利保護に欠けるものとはいえないのである。そうであれば、本件において、所論の如く、他に同被告の承継人が存在する場合であつても、受継手続を了した者のみについて手続を進行し、その者との関係においてのみ審理判決することを妨げる理由はないから、原審の手続には、ひつきよう、所論の違法はないことに帰する。したがつて、論旨は採用できない。
 上告人C、同D、同E、同F、同G、同H、同I、同J、同K、同有限会社舘野箔押所、同L、同M、同Nの各上告理由について。
 所論は、いずれも、原判決に憲法の解釈の誤り、その他憲法の違背あること、または判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違背のあることを主張するものではないから、論旨はすべて採用に値しない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)

・共同所有者に対する所有権移転登記の抹消を求める訴えについては固有必要的共同訴訟になる・・・。

ⅲ)共同所有者間の訴え
・持分確認訴訟は固有必要的共同訴訟ではない。
←持分権については各共同所有者が管理処分権を有しており、個別に訴えを提起することができるから。

・共有関係の管理処分権が全法定相続人に帰属するうえ、遺産帰属性は遺産分割の前提問題である以上、相続人間で合一的に確定している必要が高いことから、全法定相続人を当事者としなければならない固有必要的共同訴訟である。

訴訟法的な考慮は、相続人の地位不存在確認訴訟を相続人全員が当事者とならなければならない固有必要的共同訴訟であるとした判決においてより色濃く表れている。

3.類似必要的共同訴訟
(1)類似必要的共同訴訟の意義
権利関係の合一確定の必要が高いため、第三者での判決効の拡張が予定されている訴訟類型。
婚姻取消しの訴え
株主代表訴訟

(2)類似必要的共同訴訟の要件
ある共同訴訟人の受けた判決の既判力が、勝訴の場合も敗訴の場合も他の共同訴訟人に及ぶ場合。

反射効の拡張は類似必要的共同訴訟を基礎付けない。
反射効は実体法上の効果であって、既判力の矛盾抵触とは関係がないから。

4.必要的共同訴訟の審理と判決
訴訟資料と手続進行を統一しなければならない

+(必要的共同訴訟)
第四十条  訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる
2  前項に規定する場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる。
3  第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる。
4  第三十二条第一項の規定は、第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人が提起した上訴について他の共同訴訟人である被保佐人若しくは被補助人又は他の共同訴訟人の後見人その他の法定代理人のすべき訴訟行為について準用する。

・訴えの取り下げ
訴訟共同の必要を伴う固有必要的共同訴訟は、共同訴訟人全員が行わなければ効力を生じない。
類似必要的共同訴訟においては、訴訟共同の必要がないため、訴えの取り下げは各共同訴訟人が自由になし得る。

・上訴
固有必要的共同訴訟においては、全共同訴訟人が上訴人となる。
類似必要的共同訴訟は、他の共同訴訟人は上訴人にならない。
←訴訟共同の必要がない訴訟類型であるから、全体として確定が遮断し、移審するという効果が確保されていれば足りるから。


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外山滋比古 思考の整理学 5 寝させる

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寝させる

思考を生み出すのには、寝させるのが必須である。

長い間心の中であたためられていたものには不思議な力がある。
なにごともむやみと急いではならない。
人間には意思の力だけではどうにもならないことがある。
それは時間が自然のうちに、意識を超えたところで、落ち着くところへ落ち着かせてくれる。

努力をしてもできないことはある。それには、時間をかけるしか手がない。
幸運は寝て待つのが賢明である。

いずれにしても、
無意識の時間を使って考えを生み出すということに、もっと関心を抱くべきである。


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