朝飯前
簡単なことだから、朝飯前なのではなく、朝の食事の前にするために、本来は、決して簡単でもなんでもないことが、さっさとできてしまい、いかにも簡単そうに見える。
朝の頭はそれだけ能率がよい。
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時事法律問題を考える
朝飯前
簡単なことだから、朝飯前なのではなく、朝の食事の前にするために、本来は、決して簡単でもなんでもないことが、さっさとできてしまい、いかにも簡単そうに見える。
朝の頭はそれだけ能率がよい。
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不幸な逆説
学校が熱心になればなるほど、また、知識を与えるのに有能であればあるほど、学習者を受け身にしてしまう。
自分で新しい知識情報を習得しようとする力が育たない。
「なぜ」を問うことを忘れないように。
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1.通常共同訴訟の意義
通常共同訴訟
=訴訟共同の必要も合一確定の必要もない共同訴訟形態
請求を併合審理に付すことで、審理の効率化および統一的な解決を図る
もともと訴訟共同の必要はないのであるから、各当事者の訴訟追行の自由は可能な限り尊重される。
共同訴訟形態が維持されたとしても、常に論理的に矛盾のない判決がなされることまで保障されているわけではない。
2.通常共同訴訟の要件
+(共同訴訟の要件)
第三十八条 訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。
①訴訟の目的である権利又は義務が数人において共通であるとき
=訴訟物が同一であること、または、訴訟の基礎となる法律関係に共通性が認められること。
ex同一土地に関する所有権確認請求訴訟を、複数人を共同被告として提起
主債務者と保証人を共同被告にする場合
②訴訟の目的である権利または義務が同一の事実上および法律上の原因に基づくとき
ex共同不法行為による被害者が複数の加害者に対して訴えを提起する場合
③訴訟の目的である権利又は義務が同種であって、事実上および法律上の同種の原因に基づくとき
ex貸金業者が複数の借主に対して貸金返還訴訟を提起する場合
①②と③では、管轄の規律について違いが生じる。
・38条の要件は、職権調査事項ではなく、被告の意義がある場合に限り審査される!
←38条の保護法益は早期解決に対する被告の利益であり、裁判所が効率的な審理について有する利益ではないから。
・裁判所は弁論の分離を通じて、審理の効率化を図ることができる(152条1項)
+(口頭弁論の併合等)
第百五十二条 裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
2 裁判所は、当事者を異にする事件について口頭弁論の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。
・共同訴訟は複数の訴訟物が併合審理に付されているという意味で客観的併合でもある。したがって客観的併合の要件を満たす必要があり、各請求は同種の手続に服するものでなければならない。
←この要件は職権調査事項
・7条の関連裁判籍は常に認められるわけではなく、38条前段の要件を満たした場合にのみ認められる。
+(併合請求における管轄)
第七条 一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。
3.共同訴訟人独立の原則
(1)共同訴訟人独立の原則の意義
+(共同訴訟人の地位)
第三十九条 共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。
←通常共同訴訟は、本来個別訴訟を提起することも許される。
(2)共同訴訟人間の主張共通
主張共通は認めなかった
+判例(S43.9.12)
理由
上告代理人田中一男の上告理由について。
本訴のうち、上告人が被上告人Aを除くその余の被上告人ら(以下「被上告人五名」という。)に対して本件土地の所有権に基づき本件建物からの退去ないしその収去による本件土地の明渡を求める請求については、被上告人五名から、抗弁として、本件土地の占有権限につき、被上告人Bは、さきに被上告人Cが上告人から設定を受けていた本件土地の賃借権を上告人の承諾を得て譲り受け、その賃借権に基づいて本件土地を占有し、また、被上告人五名のうちその余の者は、被上告人Bの家族または同被上告人の所有にかかる本件建物の借家人としてそれぞれ本件土地を占有するものである旨を主張したのに対し、原審が、被上告人総と上告人との間に、昭和三五年七月七日、本件土地に関して原判決理由第一の二の(二)に摘示する(1)項ないし(5)項の約定を内容とする契約が成立した事実を認定したうえ、上告人は、被上告人Bに対し、本件土地を他に売却することが実現するに至るまで、または右契約(4)項の約旨に従つて被上告人Bが本件建物を収去するまでの間、これを同被上告人に賃貸する旨を約したものであるが、右不確定期限の到来したことは上告人においてなんら主張しないところであるから、右賃貸借関係はなお継続しているものとし、また、被上告人五名のうち同Bを除く者は、Bの承諾に基づいて本件建物に居住しているものとして、被上告人五名に対する請求を棄却したことは、その判文に照らして明らかである。
しかし、原審認定の契約には、一方において「上告人は本件土地が売却できるまで、あるいは被上告人Bが本件建物を収去するまで本件土地を同被上告人に対して一ケ月七、二八〇円の貸料をもつて賃貸する」旨の約定(原判示(5)項)が存在するけれども、他方において「被上告人Bが本件建物を買い戻した後一年半を経過するもなお本件土地の売却ができないときは、右土地売却促進のため、同被上告人は任意本件建物を収去して本件土地を上告人に明渡す」旨の約定(原判示(4)項)も存在するのであつて、右契約の成立に至るまでの経緯、ことに上告人が本件土地を他に売却しようと企てながら右契約を締結した事情と契約条項全体の趣旨にかんがみれば、右契約の趣旨は、原判決のように、本件土地の売却が建物の買戻後一年半以内に実現しない場合においては、被上告人Bにおいて本件建物を収去しないかぎり、その賃貸期限が到来しない趣旨に解すべきではなく、本件建物の売却がその買戻後一年半以内に実現すればその時まで、実現しなければ右買戻後一年半を経過するまでの間、本件土地を被上告人Bに賃貸することとし、売却が実現できないまま右一年半を経過したときは、被上告人Bは上告人に対して本件建物の収去義務を負担するとともに、右収去に至るまでその実質は損害金として賃料相当の一ケ月七、二八〇円の金員を支払うことを約したものと解するのが当事者の意思に合致するものというべきである。そして、原審は、前記のように、右賃貸借についてその期限が到来したことは、上告人において何ら主張しないところと判示するけれども、上告人は、被上告人五名の主張した前記被上告人Bによる賃貸借承継の抗弁事実を否認しつつ、上告人と被上告人総との間に原審認定の前示契約とほぼ同一内容の契約が成立したことを主張し、該契約に定めた期間も経過したため(被上告人Bが、昭和三六年一二月二三日、被上告人Aから本件建物を買い受けて、同三七年一月二七日、その旨の所有権移転登記を経由したことは、原審の確定するところである。)、被上告人らに対し本訴を提起したものである旨主張していることは、原判文に照らして明らかであるから、もし原審認定の契約が全体として有効なものであるならば、上告人は、他に特段の事情のないかぎり、被上告人五名に対して本件土地の明渡を求めうるものといわなければならない。
そうであるとすると、原審は、その認定にかかる契約の趣旨についての解釈を誤つた結果、被上告人Bの上告人に対する賃借権を肯認し、たやすく上告人の請求を排斥した違法があることに帰するから、右の違法をいう論旨は理由があり、原判決中被上告人五名に対する請求を排斥した部分は、その余の論旨について判断を加えるまでもなく、破棄を免れない。
つぎに、上告人の被上告人Aに対する本件土地の不法占有を理由とする損害賠償請求について、原審は、「本件共同訴訟人である被控訴人(被上告人)服部C及び同服部Bは右期間中の賃料弁済を主張しているから、右主張は被控訴人(被上告人)田渕Aについてもその効力を及ぼすものと解するのを相当とする(いわゆる共同訴訟人間の補助参加関係)。」としたうえ、被上告人Aが本件土地を不法に占有したことによつて上告人が蒙つた損害は、被上告人B、同Cにおいて右不法占有期間中の本件土地の賃料を上告人に支払つたことにより補填された旨認定判断し、もつて上告人の被上告人Aに対する請求をも排斥したことが、その判文に照らして明らかである。
しかし、通常の共同訴訟においては、共同訴訟人の一人のする訴訟行為は他の共同訴訟人のため効力を生じないのであつて、たとえ共同訴訟人間に共通の利害関係が存するときでも同様である。したがつて、共同訴訟人が相互に補助しようとするときは、補助参加の申出をすることを要するのである。もしなんらかかる申出をしないのにかかわらず、共同訴訟人とその相手方との間の関係から見て、その共同訴訟人の訴訟行為が、他の共同訴訟人のため当然に補助参加がされたと同一の効果を認めるものとするときは、果していかなる関係があるときこのような効果を認めるかに関して明確な基準を欠き、徒らに訴訟を混乱せしめることなきを保しえない。
されば、本件記録上、なんら被上告人C、同Bから補助参加の申出がされた事実がないのにかかわらず、被上告人C、同Bの主張をもつて被上告人Aのための補助参加人の主張としてその効力を認めた原判決の判断は失当であり、右の誤りは判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点に関し同旨をいう論旨は理由があり、原判決は右請求に関する部分についても破棄を免れない。
そして、上告人の被上告人五名に対する請求については、原審の認定にかかる前示契約の借地法上の性質、その効力、右被上告人らが抗弁として主張する本件土地賃借権と右契約との関係等につきなお審理を尽させる必要があり、また、被上告人Aに対する請求についても、その理由の有無に関してさらに審理をする必要があると認められるので、本件を原審に差し戻すべきものとする。
よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎)
主張しないという選択をした当事者に対する不当な干渉となり得る、積極的な訴訟活動を行っていないにもかかわらず有利な判決を得る共同訴訟人が生じ得るのは、相手方に対して不意打ちとなり得る。
(3)共同訴訟人間の証拠共通
ある共同訴訟人が申し出た証拠の取調べの結果裁判所が得た証拠資料は、すべての請求の審判に関して用いることができる。
←共同訴訟人間の証拠共通を認めないと、裁判所に対して矛盾する事実認定を強い、自由心証主義に対する不当な制約となる
共同訴訟においては同一期日に審判がなされる以上、ある共同訴訟人が申し出た証拠の取調べ
については他の共同訴訟人も関与する機会が与えられているという点を共同訴訟人間の証拠共通を支える根拠として強調する見解。
⇔152条2項が制定されたことによりかかる解釈は取りづらくなった
+(口頭弁論の併合等)
第百五十二条 裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
2 裁判所は、当事者を異にする事件について口頭弁論の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。
4.同時審判申出共同訴訟
(1)同時審判申出共同訴訟の意義
・弁論の分離や信義に反する結果が生じてしまう危険がある。
→主体的予備的併合を使う?
主体的予備的併合とは
主位的請求が認容されることを解除条件として、予備的請求についての判決を求める併合形態。
予備的併合である結果、弁論の分離は禁じられるという効果が得られ、また、同時に双方の認容判決を要求しているわけではないことになる結果、不当な二重取りであるとの非難も回避できる。
もっとも、判例は主体的予備的併合を不適法としている。
←主位的請求が認容された場合、予備的請求に係る被告は判決を得られないことになるが、この者をそのような不安定な地位におくことは許されないから。
+判例(S43.3.8)
理由
上告代理人羽生長七郎、同江幡清の上告理由第一点について。
記録によれば、所論の主張は原審においてなされていないことが明らかであるから、所論は採用することができない。
同追加上告理由一について。
記録によれば、原審は、被上告人Aが原判示の経緯により本件土地所有権を取得したと認定し、上告人の被上告人Aに対する本訴請求を棄却していることが明らかであつて、挙示の証拠によれば、原審の右認定および判断は、これを是認することができる。所論は、原判決を正解せず、独自の見解に基づき原判決を非難するものであつて、採用することができない。なお、弁済期に関する所論は、原判決の結論に影響のない主張であるから、この点に関する所論も採用のかぎりではない。
同上告理由第二点および追加上告理由二について。
訴の主観的予備的併合は不適法であつて許されないとする原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法は存しない。所論は、独自の見解に基づき原判決を非難するに帰し、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎)
そこで、同時審判申出共同訴訟
+(同時審判の申出がある共同訴訟)
第四十一条 共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告の申出があったときは、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。
2 前項の申出は、控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならない。
3 第一項の場合において、各共同被告に係る控訴事件が同一の控訴裁判所に各別に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。
複数の請求が単純併合に付された通常共同訴訟の一種であるが、弁論の分離が禁じられるという新たな訴訟形態を認めることで、原告の利益に配慮しつつ、被告の地位の不安定を解消する。
(2)同時審判申出共同訴訟の要件
弁論の分離禁止は、被告や裁判所に対して審理の複雑化や遅延という不利益をもたらす可能性があるため、41条の規律が適用される範囲はある程度限定せざる得ない。
「法律上併存し得ない関係」
事実上ではダメ。
控訴審の口頭弁論終結時までに原告が同時審判の申出をすること。
既に通常共同訴訟が成立していること。
(3)同時審判申出訴訟の審理
弁論の分離と一部判決を禁じるのみであり、その他については通常共同訴訟の規律が妥当する。
・共同被告の1人について中断事由が生じた場合
+(共同訴訟人の地位)
第三十九条 共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。
しかし、同時審判申出共同訴訟においては、一部判決が禁じられているため、一部の被告について訴訟手続きを進めることに大きな意味があるわけではない。
早期解決を欲する原告の利益保護も、受継の申立てまたは同時審判の申出の撤回に委ねれば足りる。
中断事由のない被告の有する早期に訴訟から解放される利益も、一部判決ができないかぎりは保護されないのであるから、特別な配慮をする必要はない。
・上訴
第1審においてY1に対する請求が認容され、Y2に対する請求が棄却されたという事例でY1のみが上訴する場合。
この場合、XのY2に対する請求を棄却する第1審は確定するため、控訴審の審理次第では、Xは両負けするおそれがある。
→XはY2を相手取って控訴を選択しておく必要がある。
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4.鑑定
(1)鑑定の意義
鑑定
=裁判官の判断能力を補充するために、学識経験を有する第三者に、その専門知識または専門知識を具体的事実に適用して得た判断を報告させる証拠調べ
鑑定における証拠方法は「鑑定人」
証拠資料は「鑑定意見」
鑑定は、欠格事由(212条2項)や当事者による忌避(214条)が認められるなど、中立性や公正性を担保するための手続が整備されている。
+(鑑定義務)
第二百十二条 鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う。
2 第百九十六条又は第二百一条第四項の規定により証言又は宣誓を拒むことができる者と同一の地位にある者及び同条第二項に規定する者は、鑑定人となることができない。
+(忌避)
第二百十四条 鑑定人について誠実に鑑定をすることを妨げるべき事情があるときは、当事者は、その鑑定人が鑑定事項について陳述をする前に、これを忌避することができる。鑑定人が陳述をした場合であっても、その後に、忌避の原因が生じ、又は当事者がその原因があることを知ったときは、同様とする。
2 忌避の申立ては、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官にしなければならない。
3 忌避を理由があるとする決定に対しては、不服を申し立てることができない。
4 忌避を理由がないとする決定に対しては、即時抗告をすることができる。
専門的な学識により知り得た具体的な知見を報告する者は「鑑定証人」であり、鑑定ではなく証人尋問の手続による(217条)
+(鑑定証人)
第二百十七条 特別の学識経験により知り得た事実に関する尋問については、証人尋問に関する規定による。
(2)鑑定人
学識経験を有する第三者の中から、裁判所によって鑑定人として指定された者(212条1項・213条)
+(鑑定義務)
第二百十二条 鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う。
2 第百九十六条又は第二百一条第四項の規定により証言又は宣誓を拒むことができる者と同一の地位にある者及び同条第二項に規定する者は、鑑定人となることができない。
(鑑定人の指定)
第二百十三条 鑑定人は、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官が指定する。
鑑定人には代替性があるので、勾引は認められていない(216条による194条の不準用)
(3)鑑定の手続
・鑑定の開始は当事者の申出による
=職権鑑定は原則として否定
+(証拠の申出)
第百八十条 証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない。
2 証拠の申出は、期日前においてもすることができる。
+(鑑定人質問)
第二百十五条の二 裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合には、鑑定人が意見の陳述をした後に、鑑定人に対し質問をすることができる。
2 前項の質問は、裁判長、その鑑定の申出をした当事者、他の当事者の順序でする。
3 裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
4 当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
・調査嘱託
+(調査の嘱託)
第百八十六条 裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。
調査嘱託は、裁判所が職権で行うことができるので、弁論主義の証拠原則に対する明文の例外。
調査嘱託は特殊な証拠調べの手続であり、嘱託に対する回答がそのまま直接に証拠資料となる。
・鑑定嘱託
+(鑑定の嘱託)
第二百十八条 裁判所は、必要があると認めるときは、官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は相当の設備を有する法人に鑑定を嘱託することができる。この場合においては、宣誓に関する規定を除き、この節の規定を準用する。
2 前項の場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、官庁、公署又は法人の指定した者に鑑定書の説明をさせることができる。
鑑定嘱託は、裁判所が職権で行うことができるので、弁論主義の証拠原則に対する明文の例外
(4)私鑑定
当事者が任意に学識経験ある第三者に専門的な知見の提供や専門家としての判断を依頼し、その報告書を書証のための文書として裁判所に提出すること
民事訴訟では書証の対象となる文書の性質に制限はないことや、専門家の適格性や判断の内容については、必要があればその者に対する証人尋問によって確認することができることなどを挙げて、書証として取り扱うことに問題はないとする立場。
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3.当事者尋問
(1)当事者尋問の意義
・当事者尋問とは、
当事者に対して口頭で質問して口頭で陳述を得るという方法で行われる証拠調べ
・当事者とは、
当事者本人またはこれに準じる法定代理人(211条)
+(法定代理人の尋問)
第二百十一条 この法律中当事者本人の尋問に関する規定は、訴訟において当事者を代表する法定代理人について準用する。ただし、当事者本人を尋問することを妨げない。
・共同訴訟人は共通の利害関係がある事項については、他の共同訴訟人に対する関係で当事者尋問の対象となる。
・主張としての弁論は、訴訟資料のうちの主張資料を提出する主体的な訴訟行為。
・当事者尋問における陳述は、証拠調べの客体である証拠方法として証拠資料を提供するもの。
(2)補充性原則の撤廃
平成8年改正前は、当事者尋問は、他の証拠方法を取り調べても裁判所が心証を得ることができないときに限って、補充的に行われるとされてきた。
・証拠調べの順序については、証人尋問を先に行うことを原則としている。
+(当事者本人の尋問)
第二百七条 裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる。この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる。
2 証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする。ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる。
上記は少額訴訟では適用されない
+(証人等の尋問)
第三百七十二条 証人の尋問は、宣誓をさせないですることができる。
2 証人又は当事者本人の尋問は、裁判官が相当と認める順序でする。
3 裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方と証人とが音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、証人を尋問することができる。
(3)当事者尋問の手続
+(証人尋問の規定の準用)
第二百十条 第百九十五条、第二百一条第二項、第二百二条から第二百四条まで及び第二百六条の規定は、当事者本人の尋問について準用する。
+(当事者本人の尋問)
第二百七条 裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる。この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる。
2 証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする。ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる。
+(不出頭等の効果)
第二百八条 当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
(虚偽の陳述に対する過料)
第二百九条 宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3 第一項の場合において、虚偽の陳述をした当事者が訴訟の係属中その陳述が虚偽であることを認めたときは、裁判所は、事情により、同項の決定を取り消すことができる。
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2.証人尋問
(1)証人尋問の意義
証人尋問とは、証人に対して口頭で質問して口頭で証言を得るという方法で行われる証拠調べ
ⅰ)証人の概念
・証人とは、
過去に自分が認識した経験事実を裁判所において報告することを求められる第三者である
当事者本人およびその法定代理人以外の者
・証人と当事者の識別は、
当事者が形式的当事者概念により定まるので、比較的容易
・証人と鑑定人の識別は、
証人が事故の経験した過去の事実を報告する者であるのに対し、鑑定人は客観的な立場から意見や知識を報告する者
・鑑定証人
専門的な学識があることで得られた知見を報告する者
鑑定証人は、過去に自分が認識した経験事実を報告する者であるので、その本質は証人であり、証人尋問に関する手続きが適用される
+(鑑定証人)
第二百十七条 特別の学識経験により知り得た事実に関する尋問については、証人尋問に関する規定による。
ⅱ)証人能力
証人になり得る能力
原則として、誰でも証人能力を有する
訴訟の結果について利害関係を有する者であっても証人能力が認められる。
たとえ宣誓能力を欠くことはあっても、証人能力は有する。ただしその証言の証明力に影響する。
+(宣誓)
第二百一条 証人には、特別の定めがある場合を除き、宣誓をさせなければならない。
2 十六歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができない。
3 第百九十六条の規定に該当する証人で証言拒絶の権利を行使しないものを尋問する場合には、宣誓をさせないことができる。
4 証人は、自己又は自己と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは、宣誓を拒むことができる。
5 第百九十八条及び第百九十九条の規定は証人が宣誓を拒む場合について、第百九十二条及び第百九十三条の規定は宣誓拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に証人が正当な理由なく宣誓を拒む場合について準用する。
(2)証人義務
ⅰ)証人義務の意義
公法上の一般義務として証人義務が規定されている
+(証人義務)
第百九十条 裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができる。
ⅱ)証人義務の内容
・出頭義務
適法な呼出しに応じて、指定された日時に指定の場所に出頭し、退去を許されるまでとどまる義務
出頭義務が具体化するのは、裁判所が特定の者を証人として尋問する旨決定し(181条1項参照)、適法な呼出し(94条1項)をしたときである。
正当な理由なく出頭しないとき
+(不出頭に対する過料等)
第百九十二条 証人が正当な理由なく出頭しないときは、裁判所は、決定で、これによって生じた訴訟費用の負担を命じ、かつ、十万円以下の過料に処する。
2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(不出頭に対する罰金等)
第百九十三条 証人が正当な理由なく出頭しないときは、十万円以下の罰金又は拘留に処する。
2 前項の罪を犯した者には、情状により、罰金及び拘留を併科することができる。
(勾引)
第百九十四条 裁判所は、正当な理由なく出頭しない証人の勾引を命ずることができる。
2 刑事訴訟法 中勾引に関する規定は、前項の勾引について準用する。
・宣誓義務
証言に際して法定の方式に従って先生する義務。
宣誓をした証人が偽証をすれば、刑法上の偽証罪が成立する。
・証言義務
尋問に応じて真実を供述する義務。
証言義務は、一定の限度における調査義務を伴なうことになる。
(3)証言拒絶権
ⅰ)証言拒絶権の意義
証言拒絶権
一般証人義務を負う者が証言を求められた場合に、一定の事項について証言を拒絶し得る公法上の権利。
←公平かつ適正な司法を場合によっては犠牲にしても、守られるべき社会的価値があるとの理念から。
ⅱ)証言拒絶権の内容
+(証言拒絶権)
第百九十六条 証言が証人又は証人と次に掲げる関係を有する者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときは、証人は、証言を拒むことができる。証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関するときも、同様とする。
一 配偶者、四親等内の血族若しくは三親等内の姻族の関係にあり、又はあったこと。
二 後見人と被後見人の関係にあること。
第百九十七条 次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。
一 第百九十一条第一項の場合
二 医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、弁護人、公証人、宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合
三 技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合
2 前項の規定は、証人が黙秘の義務を免除された場合には、適用しない。
(証言拒絶の理由の疎明)
第百九十八条 証言拒絶の理由は、疎明しなければならない。
(証言拒絶についての裁判)
第百九十九条 第百九十七条第一項第一号の場合を除き、証言拒絶の当否については、受訴裁判所が、当事者を審尋して、決定で、裁判をする。
2 前項の裁判に対しては、当事者及び証人は、即時抗告をすることができる。
拒絶権の行使の方法不行使の方法
証言のみを拒む
宣誓のみを拒む
両方拒む
両方拒まない
ⅲ)証言拒絶の種類
・自己負罪拒否権・名誉
証人の基本的人権が実質的に危険にさらされるような場合。
←自己負罪供述拒否権(憲法38条1項)およびプライバシー権(憲法13条)などの証人自身が有する基本的人権の保護。
・公務員の秘密保護義務
+第百九十一条 公務員又は公務員であった者を証人として職務上の秘密について尋問する場合には、裁判所は、当該監督官庁(衆議院若しくは参議院の議員又はその職にあった者についてはその院、内閣総理大臣その他の国務大臣又はその職にあった者については内閣)の承認を得なければならない。
2 前項の承認は、公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合を除き、拒むことができない。
実質秘であることを要する。
公務員等による疎明の正当性を裁判所が判断する権限を有するか?
肯定説
証人義務について裁判所が判断権限を有さないと解することは不当であるし、198条が証言拒絶の理由の疎明を求めている以上、それに対する応答として裁判所が正当性を判断するのは当然。
監督官庁に承認を求めたところ、その承認が拒絶された場合、裁判所がその判断の内容を審査して覆すことができるか?
否定的
監督官庁は、秘密の管理について権限と義務を持ち、一定の裁量権を有するから。
・法定専門職の守秘義務
秘密主体である患者や依頼者等の信頼を保護する趣旨
「黙秘すべきもの」
=一般的に知られていない事実のうち、それを隠すことについて秘密主体が利益を有し、公表されれば経済的損失が生じるもの
単に主観的利益があるだけでは足りず、客観的に見て保護に値する利益でなければならない
+判例(H16.11.26)
理由
第1 事案の概要
1 記録によれば、本件の経緯等は次のとおりである。
(1) 本件の本案訴訟(東京高等裁判所平成15年(ネ)第833号損害賠償請求本訴、利益配当金支払請求反訴事件)のうち、本訴請求事件は、生命保険事業を営む株式会社である相手方が、損害保険事業を営む相互会社である抗告人を被告として、抗告人から抗告人についての虚偽の会計情報を提供されたことにより抗告人に対し300億円の基金を拠出させられたなどとして、不法行為による損害賠償を求めるものであり、反訴請求事件は、抗告人が、相手方を被告として、相手方の株主たる地位に基づく利益配当金の支払を求めるものである。
本件は、相手方が、抗告人の旧役員らが故意又は過失により虚偽の財務内容を公表し、真実の財務内容を公表しなかったという事実を証明するためであると主張して、抗告人が所持する原決定別紙文書目録記載1の調査報告書(以下「本件文書」という。)につき文書提出命令を申し立てた事案である。抗告人は、本件文書は、民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たり、かつ、同号ハ所定の「第197条第1項第2号に規定する事実で黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書」に当たると主張している。
(2) 抗告人は、平成12年5月1日、金融監督庁長官により、保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項、241条に基づき、業務の一部停止命令並びに保険管理人による業務及び財産の管理を命ずる処分を受け、公認会計士真砂由博及び弁護士山岸良太が保険管理人(以下「本件保険管理人」という。)に選任された。
金融監督庁長官は、同法313条1項、242条3項に基づき、本件保険管理人に対し、抗告人の破たんにつき、その旧役員等の経営責任を明らかにするため、弁護士、公認会計士等の第三者による調査委員会を設置し、調査を行うことを命じた。これを受けて本件保険管理人は、同月25日、弁護士及び公認会計士による調査委員会(以下「本件調査委員会」という。)を設置した。本件調査委員会は、抗告人の従業員等から、任意に資料の提出を受けたり、事情を聴取するなどの方法によって調査を進め、その調査の結果を記載した本件文書を作成して、本件保険管理人に提出した。本件保険管理人は、本件文書等に基づき、平成13年3月29日、抗告人の経営難が平成7年から始まったことを公表するとともに、抗告人が、平成11年3月に関係会社に対し所有不動産を時価よりも高い価格で売却し、決算で利益を計上し、税金9億3000万円を支払ったこと、平成12年3月に債務超過であったにもかかわらず基金を拠出していた企業に利息を支払ったことなどにつき、旧役員11名に対し、21億2075万円の損害賠償請求をすることを公表した。抗告人は、平成13年4月1日、保険契約の全部を他に移転したことにより、保険業法152条3項1号に基づき解散した。
2 原審は、本件文書は、民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないし、本件保険管理人が本件文書等に基づき旧役員に対する損害賠償請求をすることを公表したことによって本件文書に記載された事実につき黙秘の義務が免除されたものであるから、同号ハ所定の「第197条第1項第2号に規定する事実で黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書」にも当たらないなどと判断して、抗告人に対して本件文書の提出を命じた。
第2 抗告代理人相原亮介ほかの抗告理由第2について
ある文書が、作成の目的、記載の内容、現在の所持者がこれを所持するに至るまでの経緯などの事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成されたものであり、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されることによって個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思の形成が阻害されたりするなど、開示によってその文書の所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる(最高裁平成11年(許)第2号同年11月12日第二小法廷決定・民集53巻8号1787頁参照)。
これを本件についてみるに、前記第1の1(2)記載の本件の経緯等によれば、次のことが明らかである。
1 本件保険管理人は、金融監督庁長官から、保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項、242条3項に基づき、抗告人の破たんにつき、その旧役員等の経営責任を明らかにするため、調査委員会を設置し、調査を行うことを命じられたので、上記命令の実行として、弁護士及び公認会計士を委員とする本件調査委員会を設置し、本件調査委員会に上記調査を行わせた。本件文書は、本件調査委員会が上記調査の結果を記載して本件保険管理人に提出したものであり、法令上の根拠を有する命令に基づく調査の結果を記載した文書であって、専ら抗告人の内部で利用するために作成されたものではない。また、本件文書は、調査の目的からみて、抗告人の旧役員等の経営責任とは無関係な個人のプライバシー等に関する事項が記載されるものではない。
2 保険管理人は、保険会社の業務若しくは財産の状況に照らしてその保険業の継続が困難であると認めるとき、又はその業務の運営が著しく不適切であり、その保険業の継続が保険契約者等の保護に欠ける事態を招くおそれがあると認めるときに、金融監督庁長官によって、保険会社の業務及び財産の管理を行う者として選任されるものであり(同法313条1項、241条)、保険管理人は、保険業の公共性にかんがみ、保険契約者等の保護という公益のためにその職務を行うものであるということができる。また、本件調査委員会は、本件保険管理人が、金融監督庁長官の上記命令に基づいて設置したものであり、保険契約者等の保護という公益のために調査を行うものということができる。
以上の点に照らすと、本件文書は、民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」には当たらないというべきである。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。なお、所論引用の最高裁平成11年(許)第26号同12年3月10日第一小法廷決定・裁判集民事197号341頁は、事案を異にし本件に適切でない。論旨は採用することができない。
第3 同第3について
民訴法197条1項2号所定の「黙秘すべきもの」とは、一般に知られていない事実のうち、弁護士等に事務を行うこと等を依頼した本人が、これを秘匿することについて、単に主観的利益だけではなく、客観的にみて保護に値するような利益を有するものをいうと解するのが相当である。前記のとおり、本件文書は、法令上の根拠を有する命令に基づく調査の結果を記載した文書であり、抗告人の旧役員等の経営責任とは無関係なプライバシー等に関する事項が記載されるものではないこと、本件文書の作成を命じ、その提出を受けた本件保険管理人は公益のためにその職務を行い、本件文書を作成した本件調査委員会も公益のために調査を行うものであること、本件調査委員会に加わった弁護士及び公認会計士は、その委員として公益のための調査に加わったにすぎないことにかんがみると、本件文書に記載されている事実は、客観的にみてこれを秘匿することについて保護に値するような利益を有するものとはいえず、同号所定の「黙秘すべきもの」には当たらないと解するのが相当である。
したがって、本件文書は、同法220条4号ハ所定の「第197条第1項第2号に規定する事実で黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書」には当たらないというべきである。所論の点に関する原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 滝井繁男 裁判官 福田博 裁判官 北川弘治 裁判官 梶谷玄 裁判官 津野修)
・技術または職業の秘密
秘密主体が有する技術や従事する職業自体の社会的価値の保護を目的とする
証人自身が法律上の秘密主体でなくともよいが、契約その他の法律関係に基づいて秘密主体に準ずる立場になければならない。
「技術の秘密」
=その秘密が公開されると技術の有する社会的価値が下落し、これによる活動が不可能または困難になるものをいう。
「職業の秘密」
=その秘密が公開されるとその職業に深刻な影響を与え、以後の遂行が困難になるもの
証言拒絶の対象となるのは、技術または職業の秘密のうちで、とくに保護に値するものだけであり、
保護に値するかどうかは、秘密の公表によって秘密主体が受ける不利益と、証言拒絶によって犠牲になる真実発見および裁判の公正との比較衡量によって決定される。
比較衡量に際しては、秘密の重大性、代替証拠の有無、立証事項の証明責任の所在、当該事件の公共性の程度などが斟酌されるべき
+判例(H18.10.3)
理由
抗告代理人松尾翼、同松本貴一朗、同青木龍一の抗告理由について
1 抗告人らは、アメリカ合衆国を被告として合衆国アリゾナ州地区連邦地方裁判所に提起した損害賠償請求事件(以下「本件基本事件」という。)における開示(ディスカバリー)の手続として、日本に居住する相手方の証人尋問を申請した。そこで、同裁判所は、この証人尋問を日本の裁判所に嘱託し、同証人尋問は、国際司法共助事件として新潟地方裁判所(原々審)に係属した。記者として本件基本事件の紛争の発端となった報道に関する取材活動をしていた相手方は、原々審での証人尋問において、取材源の特定に関する証言を拒絶し、原々審はその証言拒絶に理由があるものと認めた。これに対し、抗告人らは、上記証言拒絶に理由がないことの裁判を求めて抗告したが、原審がこれを棄却したために、当審への抗告の許可を申し立て、これが許可されたものである。
2 記録によれば、本件の経緯等は次のとおりである。
(1) A社(以下「A社」という。)は、健康・美容アロエ製品を製造、販売する企業グループの日本における販売会社である。抗告人X1は、上記企業グループの合衆国における関連会社であり、その余の抗告人らは、A社の社員持分の保有会社、その役員等である。
(2) 日本放送協会(以下「NHK」という。)は、平成9年10月9日午後7時のニュースにおいて、A社が原材料費を水増しして77億円余りの所得隠しをし、日本の国税当局から35億円の追徴課税を受け、また、所得隠しに係る利益が合衆国の関連会社に送金され、同会社の役員により流用されたとして、合衆国の国税当局も追徴課税をしたなどの報道をし(以下「本件NHK報道」という。)、翌日、主要各新聞紙も同様の報道をし、合衆国内でも同様の報道がされた(以下、これらの報道を一括して「本件報道」という。)。相手方は、本件NHK報道当時、記者として、NHK報道局社会部に在籍し、同報道に関する取材活動をした。
(3) 抗告人らは、合衆国の国税当局の職員が、平成8年における日米同時税務調査の過程で、日本の国税庁の税務官に対し、国税庁が日本の報道機関に違法に情報を漏えいすると知りながら、無権限でしかも虚偽の内容の情報を含むA社及び抗告人らの徴税に関する情報を開示したことにより、国税庁の税務官が情報源となって本件報道がされ、その結果、抗告人らが、株価の下落、配当の減少等による損害を被ったなどと主張して、合衆国を被告として、上記連邦地方裁判所に対し、本件基本事件の訴えを提起した。
(4) 本件基本事件は開示(ディスカバリー)の手続中であるところ、上記連邦地方裁判所は、今後の事実審理(トライアル)のために必要であるとして、平成17年3月3日付けで、二国間共助取決めに基づく国際司法共助により、我が国の裁判所に対し、上記連邦地方裁判所の指定する質問事項について、相手方の証人尋問を実施することを嘱託した。
(5) 上記嘱託に基づき、平成17年7月8日、相手方の住所地を管轄する原々審において相手方に対する証人尋問が実施されたが、相手方は、上記質問事項のうち、本件NHK報道の取材源は誰かなど、その取材源の特定に関する質問事項について、職業の秘密に当たることを理由に証言を拒絶した(以下「本件証言拒絶」という。)。
(6) 原々審は、抗告人ら及び相手方を書面により審尋した上、本件証言拒絶に正当な理由があるものと認める決定をし、抗告人らは、本件証言拒絶に理由がないことの裁判を求めて原審に抗告したが、原審は、報道関係者の取材源は民訴法197条1項3号所定の職業の秘密に該当するなどとして、本件証言拒絶には正当な理由があるものと認め、抗告を棄却した。
3 民訴法は、公正な民事裁判の実現を目的として、何人も、証人として証言をすべき義務を負い(同法190条)、一定の事由がある場合に限って例外的に証言を拒絶することができる旨定めている(同法196条、197条)。そして、同法197条1項3号は、「職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合」には、証人は、証言を拒むことができると規定している。ここにいう「職業の秘密」とは、その事項が公開されると、当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいうと解される(最高裁平成11年(許)第20号同12年3月10日第一小法廷決定・民集54巻3号1073頁参照)。もっとも、ある秘密が上記の意味での職業の秘密に当たる場合においても、そのことから直ちに証言拒絶が認められるものではなく、そのうち保護に値する秘密についてのみ証言拒絶が認められると解すべきである。そして、保護に値する秘密であるかどうかは、秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられるというべきである。
報道関係者の取材源は、一般に、それがみだりに開示されると、報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ、将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり、報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されるので、取材源の秘密は職業の秘密に当たるというべきである。そして、当該取材源の秘密が保護に値する秘密であるかどうかは、当該報道の内容、性質、その持つ社会的な意義・価値、当該取材の態様、将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容、程度等と、当該民事事件の内容、性質、その持つ社会的な意義・価値、当該民事事件において当該証言を必要とする程度、代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきことになる。
そして、この比較衡量にあたっては、次のような点が考慮されなければならない。
すなわち、報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものである。したがって、思想の表明の自由と並んで、事実報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にあることはいうまでもない。また、このような報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない(最高裁昭和44年(し)第68号同年11月26日大法廷決定・刑集23巻11号1490頁参照)。取材の自由の持つ上記のような意義に照らして考えれば、取材源の秘密は、取材の自由を確保するために必要なものとして、重要な社会的価値を有するというべきである。そうすると、当該報道が公共の利益に関するものであって、その取材の手段、方法が一般の刑罰法令に触れるとか、取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく、しかも、当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため、当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く、そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には、当該取材源の秘密は保護に値すると解すべきであり、証人は、原則として、当該取材源に係る証言を拒絶することができると解するのが相当である。
4 これを本件についてみるに、本件NHK報道は、公共の利害に関する報道であることは明らかであり、その取材の手段、方法が一般の刑罰法令に触れるようなものであるとか、取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情はうかがわれず、一方、本件基本事件は、株価の下落、配当の減少等による損害の賠償を求めているものであり、社会的意義や影響のある重大な民事事件であるかどうかは明らかでなく、また、本件基本事件はその手続がいまだ開示(ディスカバリー)の段階にあり、公正な裁判を実現するために当該取材源に係る証言を得ることが必要不可欠であるといった事情も認めることはできない。
したがって、相手方は、民訴法197条1項3号に基づき、本件の取材源に係る事項についての証言を拒むことができるというべきであり、本件証言拒絶には正当な理由がある。
以上によれば、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官 那須弘平)
・取材機関の取材源の秘匿
上記判例を参照。
(4)証人尋問の手続
ⅰ)証人尋問の申出
ⅱ)証人の出頭
呼出証人
=裁判所から呼び出しを受けて出頭する証人
+(期日の呼出し)
第九十四条 期日の呼出しは、呼出状の送達、当該事件について出頭した者に対する期日の告知その他相当と認める方法によってする。
2 呼出状の送達及び当該事件について出頭した者に対する期日の告知以外の方法による期日の呼出しをしたときは、期日に出頭しない当事者、証人又は鑑定人に対し、法律上の制裁その他期日の不遵守による不利益を帰することができない。ただし、これらの者が期日の呼出しを受けた旨を記載した書面を提出したときは、この限りでない。
・同行証人
=証人尋問を申し出た当事者が、期日に同行して出頭させることを約束した証人
ⅲ)宣誓の実施
+(宣誓)
第二百一条 証人には、特別の定めがある場合を除き、宣誓をさせなければならない。
2 十六歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができない。
3 第百九十六条の規定に該当する証人で証言拒絶の権利を行使しないものを尋問する場合には、宣誓をさせないことができる。
4 証人は、自己又は自己と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは、宣誓を拒むことができる。
5 第百九十八条及び第百九十九条の規定は証人が宣誓を拒む場合について、第百九十二条及び第百九十三条の規定は宣誓拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に証人が正当な理由なく宣誓を拒む場合について準用する。
ⅳ)交互尋問の実施
+(尋問の順序)
第二百二条 証人の尋問は、その尋問の申出をした当事者、他の当事者、裁判長の順序でする。
2 裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
3 当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
・隔離尋問の原則
後の証人が、前の証人による証言に暗示を受けたり、迎合した証言をしたりすることがあるので、それを防ぐため。
⇔同席尋問にも長所があるので厳格に適用すべきでない。
ⅴ)公開主義・直接主義の原則とその例外
公開法廷で受訴裁判所の面前で行うのが原則
例外
+(受命裁判官等による証人尋問)
第百九十五条 裁判所は、次に掲げる場合に限り、受命裁判官又は受託裁判官に裁判所外で証人の尋問をさせることができる。
一 証人が受訴裁判所に出頭する義務がないとき、又は正当な理由により出頭することができないとき。
二 証人が受訴裁判所に出頭するについて不相当な費用又は時間を要するとき。
三 現場において証人を尋問することが事実を発見するために必要であるとき。
四 当事者に異議がないとき。
+(裁判所外における証拠調べ)
第百八十五条 裁判所は、相当と認めるときは、裁判所外において証拠調べをすることができる。この場合においては、合議体の構成員に命じ、又は地方裁判所若しくは簡易裁判所に嘱託して証拠調べをさせることができる。
2 前項に規定する嘱託により職務を行う受託裁判官は、他の地方裁判所又は簡易裁判所において証拠調べをすることを相当と認めるときは、更に証拠調べの嘱託をすることができる。
+(大規模訴訟に係る事件における受命裁判官による証人等の尋問)
第二百六十八条 裁判所は、大規模訴訟(当事者が著しく多数で、かつ、尋問すべき証人又は当事者本人が著しく多数である訴訟をいう。)に係る事件について、当事者に異議がないときは、受命裁判官に裁判所内で証人又は当事者本人の尋問をさせることができる。
+(映像等の送受信による通話の方法による尋問)
第二百四条 裁判所は、次に掲げる場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、証人の尋問をすることができる。
一 証人が遠隔の地に居住するとき。
二 事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるとき。
ⅵ)口頭陳述の原則
+(書類に基づく陳述の禁止)
第二百三条 証人は、書類に基づいて陳述することができない。ただし、裁判長の許可を受けたときは、この限りでない。
←書類を見て自己の経験しない事実を陳述することを防ぐため。
例外
++規則
(文書等の質問への利用)
第百十六条 当事者は、裁判長の許可を得て、文書、図面、写真、模型、装置その他の適当な物件(以下この条において「文書等」という。)を利用して証人に質問することができる。
2 前項の場合において、文書等が証拠調べをしていないものであるときは、当該質問の前に、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。ただし、相手方に異議がないときは、この限りでない。
3 裁判長は、調書への添付その他必要があると認めるときは、当事者に対し、文書等の写しの提出を求めることができる。
++規則
(書面による質問又は回答の朗読・法第百五十四条)
第百二十二条 耳が聞こえない証人に書面で質問したとき、又は口がきけない証人に書面で答えさせたときは、裁判長は、裁判所書記官に質問又は回答を記載した書面を朗読させることができる。
+法(尋問に代わる書面の提出)
第二百五条 裁判所は、相当と認める場合において、当事者に異議がないときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる。
ⅶ)陳述書
第三者又は当事者が見聞した事実に関する供述を記載した書面
主尋問の相当部分に代替するものとして、書証の形で利用されることが多い。この場合、口頭陳述の原則との抵触が問題になる。
主尋問では、争いのある主要な争点を導くために、先行的に争いのない事項や事実の経過を尋問することがあるが、こうした部分については陳述書を利用することに格別の問題はなく、むしろ効果的に利用すべき。
しかし、主尋問のすべてを陳述書で代替することは許されない。実質的に争いのある主要な争点については、供述者の態度やニュアンスをみることのできる口頭尋問によるべき。
ⅷ)証人保護の措置
(付添い)
第二百三条の二 裁判長は、証人の年齢又は心身の状態その他の事情を考慮し、証人が尋問を受ける場合に著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判長若しくは当事者の尋問若しくは証人の陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、その証人の陳述中、証人に付き添わせることができる。
2 前項の規定により証人に付き添うこととされた者は、その証人の陳述中、裁判長若しくは当事者の尋問若しくは証人の陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。
3 当事者が、第一項の規定による裁判長の処置に対し、異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
(遮へいの措置)
第二百三条の三 裁判長は、事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係(証人がこれらの者が行った犯罪により害を被った者であることを含む。次条第二号において同じ。)その他の事情により、証人が当事者本人又はその法定代理人の面前(同条に規定する方法による場合を含む。)において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、その当事者本人又は法定代理人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる。
2 裁判長は、事案の性質、証人が犯罪により害を被った者であること、証人の年齢、心身の状態又は名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる。
3 前条第三項の規定は、前二項の規定による裁判長の処置について準用する。
(映像等の送受信による通話の方法による尋問)
第二百四条 裁判所は、次に掲げる場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、証人の尋問をすることができる。
一 証人が遠隔の地に居住するとき。
二 事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるとき。
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1.総説
(1)集中証拠調べ
+(集中証拠調べ)
第百八十二条 証人及び当事者本人の尋問は、できる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行わなければならない。
(2)証拠の申出
ⅰ)証拠申出の意義
証拠の申出
=裁判所に対して特定の証拠方法を取り調べることを求める当事者の申立て
ⅱ)証拠申出の時期
+(証拠の申出)
第百八十条 証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない。
2 証拠の申出は、期日前においてもすることができる。
+(準備書面等の提出期間)
第百六十二条 裁判長は、答弁書若しくは特定の事項に関する主張を記載した準備書面の提出又は特定の事項に関する証拠の申出をすべき期間を定めることができる。
・争点及び証拠の整理のために、準備的口頭弁論、弁論準備手続または書面による準備手続が行われた場合には、手続の終了までに証拠の申出を完了しなければならない。
提出する場合、説明義務を果たさなければならない。
場合によっては時機に後れた攻撃防御方法として却下される。
ⅲ)証拠申出の方式
+(証拠の申出)
第百八十条 証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない。
2 証拠の申出は、期日前においてもすることができる。
ⅳ)証拠申出の撤回
・証拠の申出は、証拠調べが実際に行われるまでは、いつでも撤回することができる。
・証拠調べが開始された後は、証拠共通の原則が働く結果、相手方に有利な結果を生ずる可能性があるので、相手方の同意がなければ撤回はできない。
・証拠調べが完了した後は、既に証拠の申出は目的を達成しているし、裁判官の心証も形成されているので、もはや撤回は許されない。
+判例(S58.5.26)
理由
上告代理人安田進の上告理由について
記録によれば、所論の鑑定結果については、原審第一二回口頭弁論期日において、上告人からその結果の陳述があり、原審の心証形成のための資料に供されたこと、同第一三回口頭弁論期日において、上告人が右鑑定結果を援用しない旨陳述したことが明らかである。ところで、一たん受訴裁判所の心証形成の資料に供された証拠については、その証拠の申出を撤回することは許されず、また、裁判所は右証拠がその申出をした者にとつて有利であるか否かにかかわらず当事者双方に共通する証拠としてその価値の判断をしなければならないものであつて、原審が右鑑定結果を証拠として事実認定をしたことに所論の違法はないというべきである。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(団藤重光 藤﨑萬里 中村治朗 谷口正孝 和田誠一)
(3)証拠の採否
+(証拠調べを要しない場合)
第百八十一条 裁判所は、当事者が申し出た証拠で必要でないと認めるものは、取り調べることを要しない。
2 証拠調べについて不定期間の障害があるときは、裁判所は、証拠調べをしないことができる。
・証拠を取り調べる範囲、順序、時期についても、裁判所の裁量に委ねられえている。
+判例(S38.11.7)
理由
上告代理人白井源喜の上告理由第一点について。
論旨は、要するに、上告人は本件立木所有権に基づく引渡請求権の執行保全のため、「被上告人の右立木の占有を解き、執行吏の占有に移し、被上告人に対し売買、譲渡、伐採その他一切の処分を禁ずる、執行吏は右条項につき適当なる公示方法を施せ」との仮処分命令を得て執行したのであるから、右仮処分執行は本件立木所有権が上告人に属することの公示方法として十分であり、被上告人に対抗できると解すべきであるのに、これを認容しなかつた原判決は法解釈を誤り、判例に違背すると主張する。しかし、立木の物権変動の対抗要件たる明認方法たるためには、何人がその立木の現在所有者であるかを明らかならしめることを要するのであつて、所有権に基づく引渡請求権ありとして、その執行を保全するため、仮処分命令を得てこれが執行として該立木の占有を執行吏に移し且これが売買、譲渡、伐採その他一切の処分を禁ずる旨の公示をなさしめても、右公示によつては、当該立木の所有権が係争中であつて、その占有が国家機関である執行吏の手中に存することが一般世人に公示さるるのみであつて、未だ該立木の所有権が右仮処分債権者に属することの公示方法とするには足らないことは、従来の判例(昭和一二年(オ)第一、一三四号同年一〇月三〇日大審院判決民集一、五六五頁参照)とするところであり、今ここに右判例を変更する要を見ない。従つて、これと同趣旨の判断をした原判決には所論違法はなく、引用の判例は本件に適切でないから、所論は採用できない。
同第二点について。
論旨は、原審が弁論期日に出頭しなかつた上告代理人に対し判決言渡期日を通知せず、又上告人が予備的請求について唯一の証拠であるA外一名の証人申請をしたのに、これを取調べずに結審したのは審理不尽の違法があると主張する。しかし、適法な呼出をうけて期日に欠席した当事者に対しては、期日における言渡期日の告知は効力を有し、更に呼出状の送達を要しないことは当裁判所の判例(昭和二三年(オ)第一九号同年五月一八日第三小法廷判決民集二巻五号一一五頁参照)とするところである。又申請の証拠調の範囲、時期、順序は裁判所の訴訟指揮に任せられている事項であり、立証事項が証明を必要とする事項でなければ、たとい、唯一の証拠方法であつても取調べる必要はないのである。本件において、上告人の予備的請求は、所論仮処分執行が法律上明認方法として効力を有することを前提としているのであるから、これを有効と認めなかつた原審が、その余の上告人の主張事実について証拠調をするまでもなく、上告人の請求を排斥したのは当然であつて、右証拠調をしなかつたことを以つて審理不尽として攻撃することは当らない。よつて論旨は採用しない。よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斎藤朔郎)
・証拠の採否の判断が裁判所の裁量に属することから、証拠の申出を却下する場合にも、却下の理由は示さなくてもよい!!!
・文書提出命令の申立てを却下する場合も、文書提出義務がないことを理由とするのではなく、証拠調べの必要性を欠くことを理由とする場合は、証拠採否に関する受訴裁判所の裁量の問題なので、その必要性があることを理由として不服申し立てをすることはできない!!!
+判例(H12.3.10)
理由
抗告代理人井上俊治、同松葉知幸、同小野範夫、同水間頼孝の抗告理由第一について
【要旨一】証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては、右必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできないと解するのが相当である。論旨は採用することができない。
同第二について
一 記録によれば、主文第一項の文書に係る本件の経緯は次のとおりである。
1 本件の本案の請求は、大阪地方裁判所平成四年(ワ)第八一七八号事件判決別紙電話機目録記載の電話機器類(以下「本件機器」という。)を購入し利用している抗告人らが、本件機器にしばしば通話不能になる瑕疵があるなどと主張して、相手方に対し、不法行為等に基づく損害賠償を請求するものである。
2 本件は、抗告人らが、本件機器の瑕疵を立証するためであるとして、本件機器の回路図及び信号流れ図(以下「本件文書」という。)につき文書提出命令の申立てをした事件であり、相手方は、本件文書は民訴法二二〇条四号ロ所定の「第百九十七条第一項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書」及び同号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるとして、本件文書につき文書提出の義務を負わないと主張した。
二 原審は、本件文書は、本件機器を製造したメーカーが持つノウハウなどの技術上の情報が記載されたものであって、これが明らかにされると右メーカーが著しく不利益を受けることが予想されるから、民訴法二二〇条四号ロ所定の文書に当たり、また、本件文書は、本件機器のメーカーがこれを製造するために作成し、外部の者に見せることは全く予定せず専ら当該メーカー、相手方及びその関連会社の利用に供するための文書であるから、同号ハ所定の文書にも当たり、相手方は本件文書を提出すべき義務を負わないとして、本件文書提出命令の申立てを却下した。
三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
1 【要旨二】民訴法一九七条一項三号所定の「技術又は職業の秘密」とは、その事項が公開されると、当該技術の有する社会的価値が下落しこれによる活動が困難になるもの又は当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいうと解するのが相当である。
本件において、相手方は、本件文書が公表されると本件機器のメーカーが著しい不利益を受けると主張するが、本件文書に本件機器のメーカーが有する技術上の情報が記載されているとしても、相手方は、情報の種類、性質及び開示することによる不利益の具体的内容を主張しておらず、原決定も、これらを具体的に認定していない。したがって、本件文書に右技術上の情報が記載されていることから直ちにこれが「技術又は職業の秘密」を記載した文書に当たるということはできない。
2 ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるということは、当審の判例とするところである(平成一一年(許)第二号同年一一月一二日第二小法廷決定・民集五三巻八号登載予定)。
これを本件についてみると、原決定は、本件文書が外部の者に見せることを全く予定せずに作成されたものであることから直ちにこれが民訴法二二〇条四号ハ所定の文書に当たると判断しており、その具体的内容に照らし、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生じるおそれがあるかどうかについて具体的に判断していない。
四 以上によれば、本件文書に関する原審の前記判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は裁判の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原決定中、本件文書に係る部分は破棄を免れない。そして、右に説示したところに従い更に審理を尽くさせるため、右部分について本件を原審に差し戻すのが相当である。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 井嶋一友 裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 藤井正雄 裁判官 大出峻郎)
ⅱ)唯一証拠の原則
当事者が申し出た証拠が、争点ごとに審級全体を通じて唯一である場合には、その申出を却下することは原則として違法である。
例外
証拠申出が時機に後れたものである場合
証拠方法が争点の判断に適切ではない場合
申請者の怠慢のために適切に証拠調べができない場合
証拠調べに不定期間の障害がある場合
ⅲ)証拠決定
当事者の証拠申出に対して、裁判所による証拠調べをするかどうかについての判断は、決定で行う。
・裁判所が証拠の採否を判断する場合、常に使用子決定すべきか。
必ずしも証拠決定をする必要はないという考え方。
黙示の証拠決定がなされたと考えることも。
・証拠決定は、相当と認める方法で告知すれば足りる(119条)
+(決定及び命令の告知)
第百十九条 決定及び命令は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
(4)証拠調べの実施
ⅰ)方式に応じた証拠調べ
自由な証明が許される場合はこの限りではない。
ⅱ)直接主義・公開主義
証拠調べは、直接主義・公開主義の要請から、受訴裁判所が裁判所の法廷で行うのが原則である。
・法定外での証拠調べ
+(裁判所外における証拠調べ)
第百八十五条 裁判所は、相当と認めるときは、裁判所外において証拠調べをすることができる。この場合においては、合議体の構成員に命じ、又は地方裁判所若しくは簡易裁判所に嘱託して証拠調べをさせることができる。
2 前項に規定する嘱託により職務を行う受託裁判官は、他の地方裁判所又は簡易裁判所において証拠調べをすることを相当と認めるときは、更に証拠調べの嘱託をすることができる。
・書証については、文書の記載内容を裁判官が閲読して行うという性格上、公開主義の要請は必ずしも働かないので、一般公開がなされない弁論準備手続でも行うことができる(170条2項)
+(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条 裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
2 裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる。
3 裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。
4 前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
5 第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。
ⅲ)証拠調べにおける当事者の手続権
当事者の反論の機会やその他の当事者権を確保するために、裁判所は証拠調べに立ち会う機会を保障する必要がある。
・裁判所は、証拠調べが実施される期日と場所を当事者に告知して、呼び出さなければならない(240条・94条)!
+(期日の呼出し)
第二百四十条 証拠調べの期日には、申立人及び相手方を呼び出さなければならない。ただし、急速を要する場合は、この限りでない。
+(期日の呼出し)
第九十四条 期日の呼出しは、呼出状の送達、当該事件について出頭した者に対する期日の告知その他相当と認める方法によってする。
2 呼出状の送達及び当該事件について出頭した者に対する期日の告知以外の方法による期日の呼出しをしたときは、期日に出頭しない当事者、証人又は鑑定人に対し、法律上の制裁その他期日の不遵守による不利益を帰することができない。ただし、これらの者が期日の呼出しを受けた旨を記載した書面を提出したときは、この限りでない。
・ただし、呼び出しを受けた当事者の一方または双方が期日に欠席した場合であっても、裁判所は証拠調べを実施することができる(183条)
←当事者の手続保障のためには証拠調べに立ち会う機会を与えれば足り、また出頭した証人等の迷惑を避ける必要もあるから。
+(当事者の不出頭の場合の取扱い)
第百八十三条 証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合においても、することができる。
・証拠調べが実施されたときは、当事者に証拠弁論の機会を与えることが必要。
証拠弁論とは、証拠調べの結果について、受訴裁判所の面前で意見を述べること。
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1.訴訟上の和解の意義
(1)和解の意義と種類
・和解
=当事者が、一定の法律関係に関して、互いに譲歩して(互譲)、合意によってその間に存する争いをやめることをいう。
・裁判外の和解(民法695条、696条)
・裁判上の和解
訴訟上の和解(起訴後の和解)+即決和解(起訴前の和解)(275条)
+(訴え提起前の和解)
第二百七十五条 民事上の争いについては、当事者は、請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立てをすることができる。
2 前項の和解が調わない場合において、和解の期日に出頭した当事者双方の申立てがあるときは、裁判所は、直ちに訴訟の弁論を命ずる。この場合においては、和解の申立てをした者は、その申立てをした時に、訴えを提起したものとみなし、和解の費用は、訴訟費用の一部とする。
3 申立人又は相手方が第一項の和解の期日に出頭しないときは、裁判所は、和解が調わないものとみなすことができる。
4 第一項の和解については、第二百六十四条及び第二百六十五条の規定は、適用しない。
・訴訟上の和解とは、
訴訟係属中に受訴裁判所または受命裁判官もしくは受託裁判官が関与して行われる、当事者の合意による事件の解決を目的とした手続または、その結果当事者間に成立した合意をいう。
(2)積極的和解論と謙抑的和解論
・和解の長所
自由かつ柔軟に、紛争の実情に即した公正妥当かつ実効的な解決を早期に図ることができるし、当事者間の関係を悪化させずに、将来に向けた双方に有益な良好な関係を築くことも可能である。
判決に比べて和解の方が義務の任意の履行を期待しやすい。
・和解の短所
和解では、当事者の正当な権利主張が貫徹されないし、裁判所または一方当事者が和解による解決にこだわるあまり、訴訟手続が無駄に遅延することがある。
受訴裁判所の裁判官が和解手続きを主宰するので、和解手続きの中で裁判官が得た情報がその事実認定上の心証に影響するおそれかある。
訴訟上の和解は、裁判官や当事者が十分納得しないまま仕方なく妥協した結果成立している場合が少なからずある。
(3)訴訟上の和解の法的性質
①訴訟行為説
訴訟上の和解は当事者間でされた和解を裁判所に示す訴訟行為であるとする。
→私法上の無効原因によって和解は無効とならない。
②私法行為説
訴訟上の和解も当事者間の合意としての和解契約がその本質であり、訴訟の終了は和解によって紛争が消滅したことに伴う当然の結果であって、裁判所の調書も和解内容を公証するものに過ぎない。
→私法上の無効原因があれば私法上の和解として無効となるが、それは裁判所の公証行為に影響を及ぼすものではなく、訴訟終了効はなくならない。
③併存説
訴訟上の和解には訴訟を終了させる訴訟行為と私法上の和解契約とが併存している。
私法上の無効原因があれば私法行為としては無効であるが、訴訟行為としては有効であり、訴訟終了効を有する。また、訴訟行為として無効原因があったとしても、当然に実体法上の効果が否定されない。
+新併存説
私法上の和解が訴訟上の和解の原因となっているので、私法上の無効原因があれば連動して訴訟上の和解も無効となる。
④両性説
訴訟上の和解には訴訟行為と私法上の和解の両面がある
訴訟行為として無効であれば私法上も無効であり、私法上の無効原因があれば訴訟行為としても無効である。
2.訴訟上の和解の要件
訴訟上の和解は、受訴裁判所または、受命裁判官もしくは受託裁判官の面前で行われる必要がある。
・和解による合意の対象は、当事者が実体法上の処分権限を有する事項であることを要する。
・訴訟上の和解の要件として、訴えが訴訟要件を具備していることは必ずしも必要ない。
←訴訟要件は本案判決の要件である
訴訟要件の具備に関する当事者間の見解の相違をとりあえず拾象して訴訟上の和解をすることも想定してよいこと
訴訟係属を前提としない即決和解にも和解調書の効力が認められていること
⇔請求の放棄・認諾については、それぞれ請求棄却や請求認容の本案判決と同様の効果を有することから訴訟要件の具備を要する。
3.訴訟上の和解の手続
(1)和解勧試と和解の成立
和解勧試は、訴訟係属中であれば、審理のどの段階でも可能である。
+(和解の試み)
第八十九条 裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。
・和解が成立した場合には裁判所書記官が和解の内容を記載した調書を作成する(267条)
+(和解調書等の効力)
第二百六十七条 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。
(2)和解条項案の書面による受諾等
ⅰ)和解条項案の書面による受諾
+(和解条項案の書面による受諾)
第二百六十四条 当事者が遠隔の地に居住していることその他の事由により出頭することが困難であると認められる場合において、その当事者があらかじめ裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が口頭弁論等の期日に出頭してその和解条項案を受諾したときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。
ⅱ)裁判所が定める和解条項
+(裁判所等が定める和解条項)
第二百六十五条 裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
2 前項の申立ては、書面でしなければならない。この場合においては、その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。
3 第一項の規定による和解条項の定めは、口頭弁論等の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。
4 当事者は、前項の告知前に限り、第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。
5 第三項の告知が当事者双方にされたときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。
++簡易裁判賜与での和解に代わる決定
(和解に代わる決定)
第二百七十五条の二 金銭の支払の請求を目的とする訴えについては、裁判所は、被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合において、被告の資力その他の事情を考慮して相当であると認めるときは、原告の意見を聴いて、第三項の期間の経過時から五年を超えない範囲内において、当該請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをして、当該請求に係る金銭の支払を命ずる決定をすることができる。
2 前項の分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならない。
3 第一項の決定に対しては、当事者は、その決定の告知を受けた日から二週間の不変期間内に、その決定をした裁判所に異議を申し立てることができる。
4 前項の期間内に異議の申立てがあったときは、第一項の決定は、その効力を失う。
5 第三項の期間内に異議の申立てがないときは、第一項の決定は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
4.訴訟上の和解の効果
(1)訴訟終了効
+(和解調書等の効力)
第二百六十七条 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。
(2)執行力・形成力
267条の「確定判決と同一の効力」に執行力が含まれる。
(3)既判力の有無
判例は、裁判上の和解に既判力がある旨を述べている。
他方で、裁判上の和解にかかる意思表示に瑕疵がある場合にはそれが無効になることを認めている。
+判例(S33.6.14)
理由
上告代理人岡田実五郎、同佐々木熈の上告理由第一点について。
しかし、原判決の適法に確定したところによれば、本件和解は、本件請求金額六二万九七七七円五〇銭の支払義務あるか否かが争の目的であつて、当事者である原告(被控訴人、被上告人)、被告(控訴人、上告人)が原判示のごとく互に譲歩をして右争を止めるため仮差押にかかる本件ジャムを市場で一般に通用している特選金菊印苺ジャムであることを前提とし、これを一箱当り三千円(一罐平均六二円五〇銭相当)と見込んで控訴人から被控訴人に代物弁済として引渡すことを約したものであるところ、本件ジャムは、原判示のごとき粗悪品であつたから、本件和解に関与した被控訴会社の訴訟代理人の意思表示にはその重要な部分に錯誤があつたというのであるから、原判決には所論のごとき法令の解釈に誤りがあるとは認められない。
同第二点について。
しかし、原判決は、本件代物弁済の目的物である金菊印苺ジャムに所論のごとき暇疵があつたが故に契約の要素に錯誤を来しているとの趣旨を判示しているのであり、このような場合には、民法瑕疵担保の規定は排除されるのであるから(大正一〇年一二月一五日大審院判決、大審院民事判決録二七輯二一六〇頁以下参照)、所論は採るを得ない。
同第三点について。
しかし、原判決は、被控訴人(被上告人)主張の本訴請求原因たる事実は、すべて当事者間に争がない旨判示しているのであるから、被控訴人の本訴請求を認容するには、控訴人(上告人)の抗弁について判断すれば足り、所論の点について触れなくとも、所論の違法があるとはいえない。
同第四点について。
しかし、原判決は、本件和解は要素の錯誤により無効である旨判示しているから、所論のごとき実質的確定力を有しないこと論をまたない。それ故、所論は、その前提において採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)
・制限既判力説
訴訟上の和解には既判力が生じるが、その和解に詐欺や要素の錯誤等の意思表示の瑕疵がある場合には、和解の効力が否定される。
←和解の紛争解決機能の充実、すなわち、第三者への拘束力も含めた法的安定性を図るためには既判力を肯定する必要がある。
訴訟上の和解が実体法上の合意という性質も有することからすると、意思表示の瑕疵による無効を認めず、再審事由がないかぎり既判力を覆すことができないとするのは行き過ぎである。
・既判力の範囲
訴訟物に関する条項のみならず他の条項についても既判力が生じる
←和解をする当事者の認識としては訴訟物であるか否かによってその重要度に違いがあるわけではなく、和解条項を全体として安定したものとする必要性があるため。
・既判力が生じる裁判上の和解の種類
即決和解や民事保全手続の過程で成立した和解も含め、裁判上の和解には上記のような意味での既判力がある。
(4)和解の無効原因の主張方法
制限的既判力説に立つ場合には、意思表示の瑕疵を主張するなどして和解の無効を主張することが許される。
判例・実務は、当該訴訟について期日指定の申立てをする方法、和解無効確認の訴えを提起する方法、和解が無効であることを前提とする請求意義の訴えを提起する方法の3通りのいずれも肯定している。
(5)和解の解除
・債務不履行を理由とする解除はできる。
・和解の解除によっても訴訟終了効はなくならない。
←解除事由は和解の後に発生するものであって和解自体に付着した瑕疵ではないこと、
民法の解除制度の趣旨からして訴訟終了効の消滅まで含むとは解されない。
+判例(S43.2.15)
理由
上告代理人後藤英橘の上告理由第一点について。
訴訟が訴訟上の和解によつて終了した場合においては、その後その和解の内容たる私法上の契約が債務不履行のため解除されるに至つたとしても、そのことによつては、単にその契約に基づく私法上の権利関係が消滅するのみであつて、和解によつて一旦終了した訴訟が復活するものではないと解するのが相当である。従つて右と異なる見解に立つて、本件の訴提起が二重起訴に該当するとの所論は採用し得ない。
同第二点ないし第五点について。
所論は違憲を主張する点もあるが、その実質は原判決の単なる法令違反の主張に過ぎず、原審の認定判断はすべて、原判決(その引用する第一審判決を含む。)挙示の証拠関係に照らし是認することができ、所論引用の判例はいずれも事案を異にし、本件に適切でない。また、原審の認定した事実関係のもとにおいては、被上告人の本訴請求が公序良俗に反するものとも認められない。原判決には何ら所論の違法はなく、所論は、原審の認定しない事実を主張して原判決を非難しまたは独自の見解に基づいて原審の判断を非難するもので採るを得ない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岩田誠 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 大隅健一郎)
・解除の主張の方法は、
訴訟終了効はなくならないので、和解無効確認の訴えや請求意義の訴えなどの新訴の提起による。
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グライダー
・学校の生徒は、先生と教科書にひっぱられて勉強する。独力で知識を得るのではない。自力で飛び上がることができない点いわばグライダーのようなものだ。
・人間には受動的に知識を得る能力(グライダー能力)と、自分でものごとを発明、発見する能力(飛行機能力)がある。
・指導者がいて、目標がはっきりしているところでは、受動的に知識を得る能力が高く評価されるが、新しい文化の創造には自分で物事を発見発明する能力が必要。
学校教育は後者の能力を抑圧してはいまいか。
・上記の両方の能力が必要である。特に後者の能力がなければ、コンピュータ主流の社会で仕事を奪われるだろう。
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1.証明および証拠の基本理念
事実認定が原則として証拠による必要があるのは、訴訟における判断過程の公平性と客観性を担保するため。
2.証明および証拠の諸概念
(1)証明と疎明
・証明度
=裁判官の心証の程度が、いかなるレベルに達した場合に事実認定をすべきかについての基準
・心証度
=証明度の基準にあてはめる裁判官の心証の程度
・証明
=裁判官の心証度が証明度を超えた状態
・民事訴訟の証明度
要証事実が存在することについての「高度の蓋然性」であり、その判定は通常人が疑いをさしはさまない程度の確信を持ちうるものであることが必要。
+判例(S50.10.24)
理由
上告代理人萩沢清彦、同内藤義憲の上告理由第一点及び第三点について
一 訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。
二 これを本件についてみるに、原審の適法に確定した事実は次のとおりである。
1 上告人(当時三才)は、化膿性髄膜炎のため昭和三〇年九月六日被上告人の経営する東京大学医学部附属病院小児科へ入院し、医師A、同Bの治療を受け、次第に重篤状態を脱し、一貫して軽快しつつあつたが、同月一七日午後零時三〇分から一時頃までの間にB医師によりルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入、以下「本件ルンバール」という。)の施術を受けたところ、その一五分ないし二〇分後突然に嘔吐、けいれんの発作等(以下「本件発作」という。)を起し、右半身けいれん性不全麻痺、性格障害、知能障害及び運動障害等を残した欠損治癒の状態で同年一一月二日退院し、現在も後遺症として知能障害、運動障害等がある。
2 本件ルンバール直前における上告人の髄膜炎の症状は、前記のごとく一貫して軽快しつつあつたが、右施術直後、B医師は、試験管に採取した髄液を透して見て「ちつともにごりがない。すつかりよくなりましたね。」と述べ、また、病状検査のため本件発作後の同年九月一九日に実施されたルンバールによる髄液所見でも、髄液中の細胞数が本件ルンバール施術前より減少して病状の好転を示していた。
3 一般に、ルンバールはその施術後患者が嘔吐することがあるので、食事の前後を避けて行うのが通例であるのに、本件ルンバールは、上告人の昼食後二〇分以内の時刻に実施されたが、これは、当日担当のB医師が医学会の出席に間に合わせるため、あえてその時刻になされたものである。そして、右施術は、嫌がつて泣き叫ぶ上告人に看護婦が馬乗りとなるなどしてその体を固定したうえ、B医師によつて実施されたが、一度で穿刺に成功せず、何度もやりなおし、終了まで約三〇分間を要した。
4 もともと脆弱な血管の持主で入院当初より出血性傾向が認められた上告人に対し右情況のもとで本件ルンバールを実施したことにより脳出血を惹起した可能性がある。
5 本件発作が突然のけいれんを伴う意識混濁ではじまり、右半身に強いけいれんと不全麻痺を生じたことに対する臨床医的所見と、全般的な律動不全と左前頭及び左側頭部の限局性異常波(棘波)の脳波所見とを総合して観察すると、脳の異常部位が脳実質の左部にあると判断される。
6 上告人の本件発作後少なくとも退院まで、主治医のA医師は、その原因を脳出血によるものと判断し治療を行つてきた。
7 化膿性髄膜炎の再燃する蓋然性は通常低いものとされており、当時他にこれが再燃するような特別の事情も認められなかつた。
三 原判決は、以上の事実を確定しながら、なお、本件訴訟にあらわれた証拠によつては、本件発作とその後の病変の原因が脳出血によるか、又は化膿性髄膜炎もしくはこれに随伴する脳実質の病変の再燃のいずれによるかは判定し難いとし、また、本件発作とその後の病変の原因が本件ルンバールの実施にあることを断定し難いとして上告人の請求を棄却した。
四 しかしながら、(1)原判決挙示の乙第一号証(A医師執筆のカルテ)、甲第一、第二号証の各一、二(B医師作成の病歴概要を記載した書翰)及び原審証人Aの第二回証言は、上告人の本件発作後少なくとも退院まで、本件発作とその後の病変が脳出血によるものとして治療が行われたとする前記の原審認定事実に符合するものであり、また、鑑定人Cは、本件発作が突然のけいれんを伴う意識混濁で始り、後に失語症、右半身不全麻痺等をきたした臨床症状によると、右発作の原因として脳出血が一番可能性があるとしていること、(2)脳波研究の専門家である鑑定人Dは、結論において断定することを避けながらも、甲第三号証(上告人の脳波記録)につき「これらの脳波所見は脳機能不全と、左側前頭及び側頭を中心とする何らかの病変を想定せしめるものである。即ち鑑定対象である脳波所見によれば、病巣部乃至は異常部位は、脳実質の左部にあると判断される。」としていること、(3)前記の原審確定の事実、殊に、本件発作は、上告人の病状が一貫して軽快しつつある段階において、本件ルンバール実施後一五分ないし二〇分を経て突然に発生したものであり、他方、化膿性髄膜炎の再燃する蓋然性は通常低いものとされており、当時これが再燃するような特別の事情も認められなかつたこと、以上の事実関係を、因果関係に関する前記一に説示した見地にたつて総合検討すると、他に特段の事情が認められないかぎり、経験則上本件発作とその後の病変の原因は脳出血であり、これが本件ルンバールに困つて発生したものというべく、結局、上告人の本件発作及びその後の病変と本件ルンバールとの間に因果関係を肯定するのが相当である。
原判決の挙示する証人E、同Fの各証言鑑定人C、同G、同D及び同Fの各鑑定結果もこれを仔細に検討すると、右結論の妨げとなるものではない。
五 したがつて、原判示の理由のみで本件発作とその後の病変が本件ルンバールに困るものとは断定し難いとして、上告人の本件請求を棄却すべきものとした原判決は、因果関係に関する法則の解釈適用を誤り、経験則違背、理由不備の違法をおかしたものというべく、その違法は結論に影響することが明らかであるから、論旨はこの点で理由があり、原判決は、その余の上告理由についてふれるまでもなく破棄を免れない。そして、担当医師らの過失の有無等につきなお審理する必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。
よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官大塚喜一郎の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
+判例(H12.7.18)
・疎明
=証拠による裏付けが証明の程度に至らない状態であっても、裁判官が一応確からしいとの心証に基づいて事実認定を行ってもよいとするもの
+(疎明)
第百八十八条 疎明は、即時に取り調べることができる証拠によってしなければならない。
(2)厳格な証明と自由な証明
・厳格な証明
=民事訴訟に規定された法定の手続に基づいて行われる証明
・自由な証明
=法定の手続によらずに行われる証明
・訴訟物の判断をするための証明については、厳格な証明。
職権調査事項は自由な証明で足りる。
←職権調査事項について、迅速かつ柔軟な手続の進行を確保するため。
(3)証拠の種類
・証拠
=当事者間に争いがある事実の存否を確定するために、裁判所が判断資料として用いるための客観的な資料。
・証拠方法
=人間が感知できる証拠調べの対象となるもの。
有形物であると無形物であるとを問わない。
人証
=証人・当事者・鑑定人
物証
=書証・検証
・証拠能力
=人や物が証拠方法となりうる法律上の適性
・証拠資料
=証拠方法の取り調べによって得られた情報
・証明力
=証拠資料が要証事実の認定に役立つ程度
自由心証主義のもとでは、証明力の判断は、原則として裁判官の自由な判断にゆだねられている。
自由心証主義の内在的制約として、経験則に反する判断はできない。
・証拠原因
=要証事実の認定において裁判官の心証形成の原因となったもの
(4)証拠能力の制限
民事訴訟では、原則として証拠能力に制限はない
例外
+(疎明)
第百八十八条 疎明は、即時に取り調べることができる証拠によってしなければならない。
+(忌避)
第二百十四条 鑑定人について誠実に鑑定をすることを妨げるべき事情があるときは、当事者は、その鑑定人が鑑定事項について陳述をする前に、これを忌避することができる。鑑定人が陳述をした場合であっても、その後に、忌避の原因が生じ、又は当事者がその原因があることを知ったときは、同様とする。
2 忌避の申立ては、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官にしなければならない。
3 忌避を理由があるとする決定に対しては、不服を申し立てることができない。
4 忌避を理由がないとする決定に対しては、即時抗告をすることができる。
+(証拠調べの制限)
第三百五十二条 手形訴訟においては、証拠調べは、書証に限りすることができる。
2 文書の提出の命令又は送付の嘱託は、することができない。対照の用に供すべき筆跡又は印影を備える物件の提出の命令又は送付の嘱託についても、同様とする。
3 文書の成立の真否又は手形の提示に関する事実については、申立てにより、当事者本人を尋問することができる。
4 証拠調べの嘱託は、することができない。第百八十六条の規定による調査の嘱託についても、同様とする。
5 前各項の規定は、裁判所が職権で調査すべき事項には、適用しない。
+少額訴訟において
(証拠調べの制限)
第三百七十一条 証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができる。
・証拠制限契約がある場合
←弁論主義から有効。
ただし、既に取り調べが終わった証拠方法を事後的に提出されなかったものとする合意は、いったん形成された裁判所の自由心証を侵害するので許されない。
・違法収集証拠
証拠が著しく反社会的な手段を用いて人の人権侵害を伴う方法によって収集されたものであるときは、その証拠能力を否定されることがある。
・証拠方法が証拠能力を欠くものと判断された場合には、その証拠は取り調べをすることなく却下される。
(5)証拠の機能
・直接証拠
=主要事実を証明するための証拠
・間接証拠
=間接事実や補助事実を証明するための証拠
・証拠共通の原則
得られた証拠資料は、証拠の申出をした当事者のために有利に利用されるだけではなく、相手方の有利に利用することもできる
←弁論主義が、当事者と裁判所の間の役割分担に関する原則であり、裁判所はいずれの当事者がその証拠を申し出たかに関係なく、証拠調べの結果に基づいて自由に心証を形成することができるから。
3.事実認定の方法
(1)事実認定の資料
+(自由心証主義)
第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
・私知利用の禁止
裁判官が訴訟手続外で入手した私知を用いることは、判断過程の客観性が担保されないことを意味し、ひいては当事者の手続保障を不当に害することになるので許されない。
・証拠調べの結果
=当事者が申し出た証拠方法について裁判所と当事者によって法定の証拠調べを行った結果得られた証拠資料としての情報のこと。
+(証拠の申出)
第百八十条 証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない。
2 証拠の申出は、期日前においてもすることができる。
(証拠調べを要しない場合)
第百八十一条 裁判所は、当事者が申し出た証拠で必要でないと認めるものは、取り調べることを要しない。
2 証拠調べについて不定期間の障害があるときは、裁判所は、証拠調べをしないことができる。
・口頭弁論の全趣旨
=証拠調べの結果を除く口頭弁論に現れた一切の資料
・口頭弁論の全趣旨のみによって事実認定が認められるかどうかについては争いがある。
(2)自由心証主義
=裁判における事実の認定において、証拠方法の採否と取り調べた証拠の証明力の評価を原則として裁判官の自由な心証に委ねる建前
=証拠方法の自由選択+証明力の自由評価
・証拠方法の自由選択については、証拠能力を制限する明文規定、証拠制限契約、違法収集証拠に関する法理などの例外がある。
・証明力の自由評価については、合理的な事実認定を担保するための内在的な制約として経験則による拘束がある。
経験則とは、経験から帰納された法則や知識
・事実上の推定
=経験則に従って行われる推論
・経験則に違反した事実認定は247条に違反するものとして上告理由となりうる(312条3項)
+(上告の理由)
第三百十二条 上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
2 上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
一 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
二の二 日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。
三 専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
五 口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六 判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。
3 高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。
(3)損害額の認定
ⅰ)248条の意義
+(損害額の認定)
第二百四十八条 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
損害金額の立証が困難であるために損害賠償自体が認められないとするのは不当であり、社会の納得を得られないため。
ⅱ)248条の法的性質
・証明度軽減説
損害額の認定は損害発生の認定と同様にあくまでも事実証明の問題であるという理解を前提として、事実認定のために一般に必要とされる証明度を損害額の認定のために特に引き下げたもの。
・裁量評価説
損害額の認定はそもそも証拠による事実認定の問題ではなく、裁判所による法的評価であることを確認したもの、または裁量評価における自由度を規律したものとして理解。
ⅲ)248条の適用範囲
・慰謝料型
証拠による損害額の認定が理論的に不可能な場合については、実体法(民法710条)が裁量評価を認めているものと考えられる。
→裁量評価説に従えば248条の適用があることは当然。
証明度軽減説による場合にも、裁量評価によって損害金額を認定(証明度軽減説では248条ではなく、民法710条の解釈による!)。
・将来予測型
裁量評価説では当然に248条の対象になるが、証明度軽減説では難しい。
←将来予測型の事案では、損害額を認定するための最低限の資料すら存在せず、証明度を軽減しても意味がないから。
・減失動産型
裁量評価説によらなければ248条の適用は困難である。
・裁量評価説によれば、依拠し得る証拠がほとんどない場合でも248条を適用できる。
ⅳ)248条の適用結果
裁量評価説によれば、最低限の証拠すら存在しない場合であっても、損害額の算定が可能である。
しかし、証拠資料、弁論の全趣旨、経験則、論理的整合性、公平の見地、一般常識などに照らして、相当かつ合理的なものでなければならない。
4.証明の対象
(1)証明の対象となる事項
ⅰ)事実
要証事実
=証拠による認定が必要と判断される事実
ⅱ)経験則
・一般常識に属する経験則については、証拠による証明なく利用しても裁判の客観性が害されることはない。
証拠による証明は不要。
+判例(S36.4.28)
理由
上告代理人吉本英雄、同高島信之の上告理由第一点の(一)、(二)について。
船の停泊時における方位測定の目的が錨地の安全性を確かめるとともに投錨後における船の位置の移動の有無を知ることにあること、従つてこの目的を達するためには同一地物を対象として方位を測定することがもつとも容易かつ便利であることは自明のことがらであるから、原審が、特段の事情のない本件においては、その容易かつ便利な方法が選ばれたものと推定すべきであるとしたことは相当である。かように、裁判官の通常の知識により認識し得べき推定法則の如きは、その認識のためにとくに鑑定等の特別の証拠調を要するものではなく、またかかる推定の生ずる根拠につきとくに説示することを要するものではない。そして、原審は、右のような方位測定の目的と甲一号証の午前四時における甲船の方位照合記載に対象地物の表示がないこととを綜合して、右甲号証の方位照合記載は従前と同一地物を対照としてなされたものである旨を認定したものと解すべきであつて、右認定は相当である。所論は、右に反する独自の見解の下に原審の事実認定を攻撃するものであつて、すべて採用のかぎりでない。
・専門的な経験則や特殊な経験則については、証明を要する。
←客観性の担保のため。
ⅲ)法規
・国内の制定法については証明の必要はない。
・外国法規、慣習法は証明の対象となる。
なお、自由な証明で足りる。裁判所は職権探知の義務を負う。
(2)証明を要しない事項
ⅰ)裁判上の自白
ⅱ)顕著な事実
証拠による証明なしに裁判の基礎として利用したとしても、当事者や一般人が疑念を抱かないような事実。
=公正性と客観性の担保に支障がない。
・顕著な事実に付与されている法的効果は証拠裁判主義の解除のみであり、主張の局面には何ら影響を及ぼさない!
=弁論主義が適用される事実については、顕著な事実といえども、当事者からの主張がなければ裁判の基礎とすることはできない!
・公知の事実
=一定の地域において不特定かつ多数の人々が信じて疑わない程度に認識されており(公知性)、裁判官もそれを知っている事実。
公知性に疑いがある場合には、事実自体の証明が必要である。
=公知性それ自体の証明ではダメ。
公知の事実は証明不要効を有するが、当事者の反証の権利は奪われない。
・職務上知り得た事実
当該事件を担当する裁判官が職務の遂行過程において当然に知ることができた事実であり、現在も明確な記憶が残っているものをいう。
合議体の場合は、構成員の過半数が知っていることが必要!
職務遂行と無関係に知り得た事実は私知であるので、職務上知り得た事実に当たらない。
判決の結果は職務上知り得た事実となり得るが、
判決理由中の認定は、職務上知り得た事実には当たらない。
←裁判の独立、直接主義、当事者の手続保障
5.証明責任
(1)証明責任の概念
証明責任
法規不適用説
=事実の審議不明の場合に必然的に生じる法規不適用という結果の裏面を表す概念
(2)証明責任の機能
証明責任
=ある事実が審理を尽くしても真偽不明に終わった場合に、結果的に当事者の一方が負うことになる不利益を指す概念
審理を終結した後の判断段階において機能する
=結果責任
・証明責任の対象となる事実は、要件事実に該当する具体的な事実としての主要事実である。
(3)「証明の必要」と「主観的証明責任」
証明の必要
=現実の負担
被告は事実を真偽不明に追い込みさえすれば足りるなど・・・
本証
=事実の存在について証明度を超える立証をする
反証
=真偽不明に追い込む
主観的証明責任
=証明責任の派生的な機能である行為責任としての側面をとらえたもの
(4)証明責任の分配
ⅰ)法律要件分類説の考え方
証明責任は、自己に有利な法律効果の発生が認められない不利益であるから、当事者は、自己に有利な法律効果の要件となる事実の証明責任を負うべき。
有利かどうかは、実体法規相互の論理関係に求める。
権利根拠規定
=権利の発生を定める規定
権利障害規定
=権利の発生を原始的に妨げる規定
権利消滅規定
=いったん発生した権利を消滅させる規定
権利阻止規定
=権利の行使を妨げる規定
・法律要件分類説は、法律要件を定めた実体法規をいくつかの種類に分類し、それぞれがいずれの当事者に有利に働くかによって、証明責任の分配を決しようとする見解。
・法律要件分類説(規範説)
実体法木の表現形式をとくに重視
ⅱ)利益衡量説
証明責任の分配は、当事者間の公平の観点から、証拠との距離、立証の南緯、事実の蓋然性を基準として判断すべき。
ⅲ)法律要件分類説の修正
・債務不履行責任の追及
債務者が、帰責事由の不存在という事実の証明責任を負う
・準消費貸借における旧債務の存在
債務者が旧債務の不存在の事実について証明責任を負う
←準消費貸借契約を結んでいる以上は、もともと旧債務が存在していた蓋然性が高いし、準消費貸借契約を結ぶ際には旧債務の証書を債務者に返還するのが通常なので、債権者に旧債務の存在について証明責任を負わせるのは不当だから。
(5)証明責任の転換
ⅰ)証明責任の転換の意義
一般的な実体法規における証明責任の分配を特別法によって変更し、反対事実について相手方に証明責任を負わせる立法作用。
自賠法3条など。
ⅱ)証明妨害と証明責任の転換
・証明妨害
=当事者の一方が、故意または過失により、相手方の立証を不可能または困難にすることをいう。
・証明妨害の法理
妨害があった場合、証明責任の転換などの妥当な解決をはかる
(6)法律上の推定
ⅰ)法律上の推定の意義
・事実上の推定
=自由心証により経験則を用いてある事柄から他の事柄を推認する作用
・法律上の推定
=推定という概念を用いて経験則を法規に高めたもの
ⅱ)法律上の事実推定
・法律上の事実推定は、証明主題の変更によって当事者間の立証負担の公平を図るもの。
・民法186条2項など。
ⅲ)法律上の権利推定
証明主題の変更により当事者間の立証負担の公平をはかる。
より証明しやすい要件事実を用意して、当事者に要件事実の選択を認めるもの。
民法188条など
ⅳ)暫定真実
ある法律効果に要件事実Aと要件事実Bが存在する場合に、要件事実Bの証明責任を相手方に転換したものである。
前提事実は要件事実とは別個の事実でなければならないという法律上の推定の本質に反することから、法律上の推定ではない。
民法186条1項など。
ⅴ)法定意思解釈
一定の意思表示について、その意思解釈を法定する趣旨で「推定」という語を用いている規定。
推定事実が実体法規の要件事実ではないので法律上の推定とは異なるし、証明責任の転換でもない。
民法136条1項など。
この推定を覆滅させるには、債務者の利益のための合意の不存在を証明するだけでは足りず、この意思解釈規定の効果を排除する合意、すなわち債権者の利益のためとする特別の存在を積極的に証明する必要がある。
ⅵ)法定証拠法則
裁判官の事実認定のあり方を法定するものであり、自由心証主義に対する例外の定め。
法律上の事実推定は推定事実が実体法規の要件事実でなければならないところ、法定証拠法則の規定は実体法規の要件事実ではない。
反対証明の程度は反証でよい。
ⅶ)各種の「推定」規定の意味
・暫定真実は、証明責任の転換を定めたもの。
・法律上の事実推定と権利推定は証明責任の転換ではないが、実質的にそれに近い機能を営む。
・法定意思解釈と法定証拠法則は証明責任の転換とは関係ない。
・共通するのは、
経験則の存在や政策的な考慮を背景として、一定の類型的な事情が存在する場合に、当事者の通常の立証責任の所在を変更または修正し、それによって実質的な公平と公正を実現しようとするものである。
(7)主張立証負担の軽減
ⅰ)一応の推定(表見証明)
主張・立証負担を軽減するための道具概念
主として、不法行為における「過失」などの規範的要件を認定する場面で用いられる。
過失に該当する具体的な事実の立証が十分でなくとも、一定の経験則を強く働かせることにより、要件事実の充足を認めて損害賠償請求を認容してよいとする法理
ⅱ)択一的認定・概括的認定
本質は、規範的要件において主要事実をどのように捉えるかという実体法上の問題
立証の容易な事実を証明主題として選択することにより、作用としては主張立証負担の軽減の手法として機能する。
ⅲ)疫学的証明
原因と結果の間の因果経路が、病理的なメカニズムとしては十分に解明されていなくとも、集団的医学現象である疫学的なメカニズムとして一定の蓋然性があることが証明されれば、因果関係を肯定することができる。
ⅳ)事案解明義務の理論
証明責任を負う当事者が事案解明のための事実および証拠に接近する機会に乏しく、他方において相手方がその機会を持つ場合は、証明責任を負う当事者が自己の主張を裏付ける具体的な手がかりを示しているなど一定の要件を満たせば、証明責任を負わない相手方に事案解明義務が生じるという考え方。
ⅴ)模索的証明
当事者が事実関係の情報を十分に有さず、主張及び立証の対象とすべき具体的事実や効率的な立証手段がよくわからない場合に、新たな情報屋証拠を得ることを目的として、証明主題を明確に特定することなく、一般的または抽象的な主張にとどめたままで、広く探りを入れるために網をかける形で行われる立証活動。
・模索的証明は、相手方当事者や承認などが無用の労力と時間を費やすことにもなりかねないので、これを無条件で認めることはできない。しかし、他方において、挙証者が情報や証拠から隔絶された地位にある場合は、一定の模索的証明を認めないと、当事者の実質的平等を達成することはできない。
そこで、情報や証拠が相手方の支配領域内にある場合において、挙証者が自己の主張を裏付ける一定の手がかりを示している場合には、当該状況で期待される限度の範囲内で模索的証明を認めるべきである。
ⅵ)主張立証負担の軽減のあり方
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