民法780条 認知能力
(認知能力)
第七百八十条 認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。
・認知能力
制限行為能力者も同意なしに認知をすることができる。
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時事法律問題を考える
民法780条 認知能力
(認知能力)
第七百八十条 認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。
・認知能力
制限行為能力者も同意なしに認知をすることができる。
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民法779条 認知
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(認知)
第七百七十九条 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。
・任意認知と強制認知(認知の訴え)がある。
・母の認知は不要である
←非嫡出母子関係は分娩の事実により当然に生じる
・強制認知の性質は形成訴訟である。
+判例(S29.4.30)
理由
上告代理人の上告理由について、
認知の訴は、昭和一七年の民法の改正により、父母の死後も提起できることになり、法文も「父又ハ母ニ対シ認知ヲ求ムルコトヲ得」とあつたのを、離婚や離縁の訴と同じように「認知ノ訴ヲ提起スルコトヲ得」と改められ(旧民法八三五条)、それと同趣旨が現行法に引き継がれたものと解すべきであり(民法七八七条)、またこの訴につき言い渡された判決は、第三者に対しても効力を有するのであり(人訴三二条、一八条)、そして認知は嫡出でない子とその父母との間の法律上の親子関係を創設するものであること等を考えると、認知の訴は、現行法上これを形成の訴であると解するのを相当とする。本件において、第一審判決の主文は、「被告は原告を認知すべし」と判示して、あたかも被告(上告人)に対し認知の意思表示を命じたかのような文言を用いてあることは所論のとおりであるが、右判決の趣旨とするところは、要するに原告(被上告人)の被告に対する認知請求権の存在することを認め、これによつて両者間に法律上の親子関係を発生せしめることを宣言したものに外ならないと云うことができるのであつて、結局用語が妥当でなかつたにすぎない。そして原判決もまたこの趣旨の下に控訴を棄却したものと認められるから、原判決には所論のような法令の違背はなく、論旨は採るをえない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)
・嫡出でない子と父との間の法律上の親子関係は認知によってはじめて発生し、非嫡出子は認知によらずに父子関係存在確認の訴えを提起できない!
+判例(H2.7.19)
理由
上告代理人○○○○の上告理由について
嫡出でない子と父との間の法律上の親子関係は、認知によってはじめて発生するものであるから、嫡出でない子は、認知によらないで父との間の親子関係の存在確認の訴えを提起することができない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は、右のような訴えの提起を認める趣旨を判示したものとはいえない。論旨は、違憲をいう点を含め、ひっきょう、独自の見解に立って原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうものにすぎず、採用することができない。
よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大内恒夫 裁判官 角田禮次郎 裁判官 四ツ谷巖 裁判官 大堀誠一 裁判官 橋元四郎平)
・任意認知は認知する子が他人の嫡出子として戸籍に記載されている場合は、それが事実に反することを明らかにしてからでなければすることができない。
←戸籍管理者は形式的審査権しかなく、真実の親子関係の有無を審査することができないから。
→嫡出推定が及んでいると、推定が破られない限り、他の男性が認知できないし、子の側からの認知の訴えもできない。
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民法778条
第七百七十八条 夫が成年被後見人であるときは、前条の期間は、後見開始の審判の取消しがあった後夫が子の出生を知った時から起算する。
・提訴期間は後見開始の審判の取消しがあった後、子の出生を知った時(×子の生まれた時)から1年以内である
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民法777条 嫡出否認の訴えの出訴期間
(嫡出否認の訴えの出訴期間)
第七百七十七条 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。
・提訴期間は出生を知った時から(×生まれたとき)1年間である!!!
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民法776条 嫡出の承認
(嫡出の承認)
第七百七十六条 夫は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、その否認権を失う。
・子に対する命名や出生の届出は、嫡出性の承認(776条)とはいえない。
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民法775条 嫡出否認の訴え
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(嫡出否認の訴え)
第七百七十五条 前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。
・推定される嫡出子で推定の及ぶ場合に使用。
・提訴権者は原則として夫のみ(×妻)
←夫婦間の問題に第三者の干渉をいれさせないようにするため。
例外
夫が成年後見人の場合における後見監督人又は後見人(人事訴訟法14条)
夫が訴えを起こさずに死亡した場合において、その子のために相続権を侵害される者、その他亡き夫の3親等内の親族(人事訴訟法41条1項)
・訴えの相手方は
子又は親権を行う母、特別代理人
・提訴期間は知った時から1年(777条)
・婚外子を妻の子として嫡出子出生届をしたときは、嫡出否認の訴え(775条)によって父子関係を争うことはできず、親子関係不存在確認の訴えによって争うこととなる。
+親子関係不存在確認の訴え
・推定される嫡出子で推定の及ばない場合、推定されない嫡出子の場合に使用される。
・提訴権者は利害関係者
・相手方は
確認を求める当事者
当事者の一方が死亡した場合は検察官
・第三者からの親子関係不存在確認の訴えがあったときで、その親子の一方が死亡している場合は生存している者のみを被告とすれば足り、死亡した者について検察官を相手に加える必要はない
+判例(S56.10.1)
理由
上告代理人川坂二郎の上告理由について
第三者が親子関係存否確認の訴を提起する場合において、親子の双方が死亡しているときには、第三者は検察官を相手方として右訴を提起することが必要であるが(最高裁昭和四三年(オ)第一七九号同四五年七月一五日大法廷判決・民集二四巻七号八六一頁)、親子のうちの一方のみが死亡し他方が生存しているときには、第三者は生存している者のみを相手方として右訴を提起すれば足り、死亡した者について検察官を相手方に加える必要はないものと解するのが相当である(人事訴訟手続法二条二項の類推適用)。そして、本件において、亡A及び亡Bへと上告人との間に親子関係があるかどうかを確定することは、単に現に係属中の遺産分割申立事件との関連において相続人の範囲を決定するためばかりでなく、被上告人と上告人との間の身分関係を明らかにし、戸籍の記載を真実の身分関係に適合するように訂正し、また、右親子関係を基本的前提とする諸般の法律関係を明確にする等のためにも必要であるから、右遺産分割申立事件の前提問題として親子関係の存否を争うことができるからといつて、そのために本訴についての訴の利益がないということはできない。更に、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、被上告人がした本件訴の提起は信義則に反し権利の濫用にわたるものではないと認められる。
原判決に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする違憲の主張はその前提を欠く。論旨は、いずれも採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する
(裁判長裁判官 谷口正孝 裁判官 団藤重光 裁判官 藤﨑萬里 裁判官 本山亨 裁判官 中村治朗)
・他人夫婦の子として出生届がなされ、その旨戸籍に記載されている場合、子の戸籍の記載を改めるには、まず親子関係不存在確認の訴えが必要である。
・母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を待たず、分娩の事実により当然に発生するため、親子関係存否確認の訴えの対象となる!
+判例(S37.4.27)
理由
上告代理人敦沢八郎の上告理由について。
被上告人が上告人を分娩した旨の原審(その引用する第一審判決)の事実認定は、その挙示する証拠に徴し、首肯するに足り、これに所論のような違法は認められない。所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を争うこ帰し、採用するをえない。
なお、附言するに、母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生すると解するのが相当であるから、被上告人が上告人を認知した事実を確定することなく、その分娩の事実を認定したのみで、その間に親子関係の存在を認めた原判決は正当である。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)
・真実の実親子関係と戸籍の記載が異なる場合には、実親子関係が存在しないことの確認を求めることができるのが原則
ただし、権利の濫用とされる場合もある。
+判例(H18.7.7)
理由
上告代理人木津川迪洽、同石川慶一郎の上告受理申立て理由について
1 本件は、被上告人が、戸籍上被上告人の子とされている上告人との間の実親子関係が存在しないことの確認を求める事案である。
2 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
(1) 被上告人(明治41年生まれ)と亡A(明治40年生まれ)は、昭和12年▲月▲日、婚姻の届出をした。同年▲月▲日、被上告人とAの夫婦(以下「A夫婦」という。)の間に長男Bが出生した。
(2) Aは、上告人について、A夫婦間に昭和18年▲月▲日に出生した子として出生の届出をしたが、上告人はA夫婦の実子ではなく、この届出は虚偽の届出であった。上告人は、同月ころから、A夫婦の下でその子として養育され、高校卒業後、Aが経営していたそば店を手伝うようになった。
(3) Aは、昭和51年▲月▲日に死亡した。上告人は、Aの相続人としてAの遺産の約3分の1相当を取得したものとされた。
(4) 被上告人は、平成6年ころ、上告人を相手方として、実親子関係不存在確認を求める調停を申し立てたが、後でこれを取り下げた。
(5) 被上告人は、平成16年4月ころ、上告人を相手方として、再度、実親子関係不存在確認を求める調停を申し立てたが、同調停は、同年6月、不成立により終了した。
3 上告人は、被上告人が上告人との間で長期間親子としての社会生活を送ってきたものであり、Aの死後も平成6年まで実親子関係不存在確認調停の申立て等の手続を採ることなく、しかも、同年に申し立てた調停を取下げにより終了させていること、本訴請求は被上告人の相続を有利にしようとするBの意向によること、判決をもって上告人の戸籍上の地位が訂正されると上告人が精神的苦痛を受けることなどの事情に照らすと、本訴請求は権利の濫用であると主張した。
4 原審は、次のとおり判断して、被上告人の請求を認容すべきものとした。
身分関係存否確認訴訟は、身分法秩序の根幹を成す基本的親族関係の存否について関係者間に紛争がある場合に対世的効力を有する判決をもって画一的確定を図り、ひいてはこれにより身分関係を公証する戸籍の記載の正確性を確保する機能を有する。被上告人は真実の身分関係の確定を求めて本件訴訟を提起したものであるから、上告人と被上告人との間で長年にわたり親子と同様の生活の実体があったこと、被上告人がAの死亡後も長期間にわたり実親子関係不存在確認訴訟を提起しなかったことなどを考慮しても、被上告人の本訴請求が権利の濫用に当たるとはいえない。仮に本訴請求が相続を有利にしようとするBの意向によるものであるとしても、上記判断を左右しない。
5 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
実親子関係不存在確認訴訟は、実親子関係という基本的親族関係の存否について関係者間に紛争がある場合に対世的効力を有する判決をもって画一的確定を図り、これにより実親子関係を公証する戸籍の記載の正確性を確保する機能を有するものであるから、真実の実親子関係と戸籍の記載が異なる場合には、実親子関係が存在しないことの確認を求めることができるのが原則である。しかしながら、上記戸籍の記載の正確性の要請等が例外を認めないものではないことは、民法が一定の場合に戸籍の記載を真実の実親子関係と合致させることについて制限を設けていること(776条、777条、782条、783条、785条)などから明らかである。真実の親子関係と異なる出生の届出に基づき戸籍上甲の嫡出子として記載されている乙が、甲との間で長期間にわたり実の親子と同様に生活し、関係者もこれを前提として社会生活上の関係を形成してきた場合において、実親子関係が存在しないことを判決で確定するときは、乙に軽視し得ない精神的苦痛、経済的不利益を強いることになるばかりか、関係者間に形成された社会的秩序が一挙に破壊されることにもなりかねない。また、虚偽の出生の届出がされることについて乙には何ら帰責事由がないのに対し、そのような届出を自ら行い、又はこれを容認した甲が、当該届出から極めて長期間が経過した後になり、戸籍の記載が真実と異なる旨主張することは、当事者間の公平に著しく反する行為といえる。そこで、甲がその戸籍上の子である乙との間の実親子関係の存在しないことの確認を求めている場合においては、甲乙間に実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ、判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより乙及びその関係者の受ける精神的苦痛、経済的不利益、甲が実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び請求をする動機、目的、実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に甲以外に著しい不利益を受ける者の有無等の諸般の事情を考慮し、実親子関係の不存在を確定することが著しく不当な結果をもたらすものといえるときには、当該確認請求は権利の濫用に当たり許されないものというべきである。
そして、本件においては、前記事実関係によれば、次のような事情があることが明らかである。
(1) 上告人は、昭和18年5月ころ以降、A夫婦の下で実子として養育され、被上告人が平成6年に第1回目の調停を申し立てるまでの約51年間にわたり、上告人と被上告人との間で実の親子と同様の生活の実体があり、かつ、被上告人は、第1回目の調停申立てまでの間、上告人が被上告人の実子であることを否定したことはなかった。
(2) 判決をもって上告人と被上告人との間の実親子関係の不存在が確定されるならば、上告人が受ける精神的苦痛は、軽視し得ないものであることが予想され、また、被上告人は、Aの遺産の相当部分を相続したことがうかがわれるので、被上告人の相続が発生した場合に、上告人が受ける経済的不利益も軽視し得ないものである可能性が高い。
(3) 被上告人が、上記第1回目の調停申立てをした動機、目的は明らかでないし、その申立てを取り下げた理由も明らかではない。その後、約10年が経過して再度調停を申し立て、更には本件訴訟を提起するに至ったことについても、被上告人が上告人との間の実親子関係を否定しなければならないような合理的な事情があることはうかがわれない。
以上によれば、上告人と被上告人との間で長期間にわたり実親子と同様の生活の実体があったことを重視せず、また、上告人が受ける精神的苦痛、経済的不利益、被上告人が上告人との実親子関係を否定するため再度調停を申し立てるなどした動機、目的等を十分検討することなく、被上告人において上記実親子関係の存在しないことの確認を求めることが権利の濫用に当たらないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上の見解の下に被上告人の上記確認請求が権利の濫用に当たるかどうかについて更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 古田佑紀 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野修 裁判官 今井功 裁判官 中川了滋)
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民法774条 嫡出の否認
(嫡出の否認)
第七百七十四条 第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。
・嫡出の推定の働く場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。
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民法733条 父を定めることを目的とする訴え
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(父を定めることを目的とする訴え)
第七百七十三条 第七百三十三条第一項の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。
・二重の推定が及ぶ場合に使用される。
・提訴権者は
子・母・前夫・後夫
・子又は母が原告の場合
前夫及び後夫に対して
・後夫が原告の場合
前夫に対して
・前夫が原告の場合
後夫に対して
・被告となるべき者が死亡している場合
検察官に対して
・提訴期間に制限はない。
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民法772条 嫡出の推定
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二 第一審は、本件訴えを却下したが、原審は、本件訴えの適法性につき次のとおり判断し、第一審判決を取り消して事件を第一審に差し戻す旨の判決をした。
1 民法上嫡出の推定を受ける子に対し、父がその嫡出性を否定するためには、同法の規定にのっとり嫡出否認の訴えによることを原則とするが、嫡出推定及び嫡出否認の制度の基盤である家族共同体の実体が既に失われ、身分関係の安定も有名無実となった場合には、同法七七七条所定の期間が経過した後においても、父は、父子間の自然的血縁関係の存在に疑問を抱くべき事実を知った後相当の期間内であれば、例外的に親子関係不存在確認の訴えを提起することができるものと解するのが相当である。
2 本件においては、被上告人と花子との婚姻関係は消滅しているのであるから、被上告人と上告人をめぐる家族共同体の実体が失われていることは明らかである。また、被上告人が上告人との間に自然的血縁関係がないのではないかとの疑いを高めたのは、平成七年一月二二日に花子からその旨の電話を受けた時であり、被上告人は、その後速やかに本件訴えを提起している。
3 したがって、本件においては、被上告人は、上告人に対し、親子関係不存在確認の訴えを提起し得るものと解すべきであり、本件訴えは適法といえる。
三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
民法七七二条により嫡出の推定を受ける子につき夫がその嫡出であることを否認するためには、専ら嫡出否認の訴えによるべきものとし、かつ、右訴えにつき一年の出訴期間を定めたことは、身分関係の法的安定を保持する上から十分な合理性を有するものということができる(最高裁昭和五四年(オ)第一三三一号同五五年三月二七日第一小法廷判決・裁判集民事一二九号三五三頁参照)。そして、夫と妻との婚姻関係が終了してその家庭が崩壊しているとの事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、右の事情が存在することの一事をもって、嫡出否認の訴えを提起し得る期間の経過後に、親子関係不存在確認の訴えをもって夫と子との父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である。
もっとも、民法七七二条二項所定の期間内に妻が出産した子について、妻が右子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には、右子は実質的には民法七七二条の推定を受けない嫡出子に当たるということができるから、同法七七四条以下の規定にかかわらず、夫は右子との間の父子関係の存否を争うことができると解するのが相当である(最高裁昭和四三年(オ)第一一八四号同四四年五月二九日第一小法廷判決・民集二三巻六号一〇六四頁、最高裁平成七年(オ)第二一七八号同一〇年八月三一日第二小法廷判決・裁判集民事一八九号四九七頁参照)。しかしながら、本件においては、右のような事情は認められず、他に本件訴えの適法性を肯定すべき事情も認められない。
そうすると、本件訴えは不適法なものであるといわざるを得ず、これと異なる原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、本件訴えは却下すべきものであるから、右と結論を同じくする第一審判決は正当であって、被上告人の控訴はこれを棄却すべきものである。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官千種秀夫 裁判官元原利文 裁判官金谷利廣 裁判官奥田昌道)
2.推定される嫡出子で推定の及ばない子
親子関係不存在確認の訴えで争う。
推定の及ばない子とは、妻が夫によって懐胎することが不可能な事情があるが本条に該当する子をいう
ex
事実上の離婚状態にあり夫婦関係が断絶していた場合
夫は行方不明の場合、夫が海外滞在中や在監中であった場合
+判例(H10.8.31)
理由
上告代理人池上徹、同石井宏治の上告理由について
一 本件は、上告人の戸籍上の父とされているA男が死亡した後、その遺産相続をめぐって紛争が生じ、A男の養子である被上告人が上告人に対し、亡A男と上告人との間の親子関係不存在確認を求める訴えを提起した事案である。記録によって認められる事実関係の概要は、次のとおりである。
1 A男とB女は、昭和一八年一〇月一日に結婚式を挙げ、同居生活を開始した。なお、婚姻の届出は同月二二日にされた。
2 A男は、昭和一八年一〇月一三日に応召し、同月一九日に下関港から出征して、南方各地の戦場を転々とした後、昭和二一年五月二八日に名古屋港に帰還し、翌二九日に復員の手続がとられた。
3 この間、B女は、C男と性的関係を持った。
4 B女は、昭和二一年一一月一七日に上告人を分娩した。
5 上告人は、A男により、A男・B女夫婦の嫡出子として届け出られたが、昭和二二年八月四日にC男の養子とされた。以来、上告人は、C男の下で暮らし、C男・D女夫婦(昭和二七年一一月二四日婚姻)の子として育てられ、A男・B女夫婦とは没交渉の状態にあった。
6 一方、A男・B女夫婦は、昭和二六年三月一六日に被上告人(昭和二四年一月二二日生まれ)を養子とし、同居生活を送ってきた。
7 A男は、平成四年四月二九日に死亡した。
8 ところで、妊娠週数が二四週以上二八週未満の分娩は、現在では早産と扱われているが、上告人出生当時は流産と扱われていた。ちなみに、昭和五三年及び同五四年の各人口動態統計によれば、妊娠週数二四週以上二八週未満の分娩による出生数の総出生数に対する構成割合は、いずれの年においても0.1パーセント程度にすぎない。
9 仮に、B女が、A男が帰還した昭和二一年五月二八日に同人と性的関係を持ち、上告人を懐胎したとすると、B女は妊娠週数にして最長でも二六週目に上告人を分娩したことになる。
二 右一の事実によれば、A男は、応召した昭和一八年一〇月一三日から名古屋港に帰還した昭和二一年五月二八日の前日までの間、B女と性的関係を持つ機会がなかったことが明らかである。そして、右一の事実のほか、昭和二一年当時における我が国の医療水準を考慮すると、当時、妊娠週数二六週目に出生した子が生存する可能性は極めて低かったものと判断される。そうすると、B女が上告人を懐胎したのは昭和二一年五月二八日より前であると推認すべきところ、当時、A男は出征していまだ帰還していなかったのであるから、B女がA男の子を懐胎することが不可能であったことは、明らかというべきである。したがって、上告人は実質的には民法七七二条の推定を受けない嫡出子であり、A男の養子である被上告人が亡A男と上告人との間の父子関係の存否を争うことが権利の濫用に当たると認められるような特段の事情の存しない本件においては、被上告人は、親子関係不存在確認の訴えをもって、亡A男と上告人との間の父子関係の存否を争うことができるものと解するのが相当である。
三 以上によれば、被上告人の本件親子関係不存在確認の訴えが適法なものであるとした原審の判断は、結論において是認することができる。右判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。論旨は採用することができない。
よって、裁判官福田博の意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
3.推定されない嫡出子(772条に該当しない嫡出子)
内縁関係が先行し、婚姻成立後200日以内に出生した子など
親子関係不存在確認の訴えで争う!
4.二重の推定が及ぶ嫡出子
前婚の推定と後婚の推定とが重複する場合の嫡出子
父を定めることを目的とする訴えを使う!
ex
再婚禁止期間に違反して再婚した場合や重婚関係が生じた場合
5.非嫡出子
非嫡出父子関係については、認知によらずに親子関係不存在確認の訴えによることはできない
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民法771条 協議上の離婚の規定の準用
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(協議上の離婚の規定の準用)
第七百七十一条 第七百六十六条から第七百六十九条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。
・裁判所が当事者の証すべき氏を定めなければならないわけではない(771条、767条1項2項)
・妻が婚姻中に他男との間にもうけた子の監護費用を夫に請求することは、もはや夫に親子関係を否定する法的手段が残されておらず、夫がこれまで妻に高額の生活費を交付してきており、妻は夫との離婚に伴い相当多額の財産分与を受けることになる事例では権利の濫用に当たる
+判例(H23.3.18)
理 由
上告代理人伊豆隆義,同阿部泰彦の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1 本件は,上告人が,本訴として,被上告人に対し,離婚等を請求するなどし,被上告人が,反訴として,上告人に対し,離婚等を請求するとともに,長男,二男及び三男の養育費として,判決確定の日の翌日から,長男,二男及び三男がそれぞれ成年に達する日の属する月まで,1人当たり月額20万円の支払を求める旨の監護費用の分担の申立てなどをする事案である。上告人は,二男との間には自然的血縁関係がないから,上告人には監護費用を分担する義務はないなどと主張している。
2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 上告人(昭和37年▲月▲日生)と被上告人(昭和36年▲月▲日生)とは,平成3年▲月▲日に婚姻の届出をした夫婦である。被上告人は,平成8年▲月▲日に上告人の子である長男Bを,平成11年▲月▲日に上告人の子である三男Cをそれぞれ出産したが,その間の平成9年▲月▲日ころ上告人以外の男性と性的関係を持ち,平成10年▲月▲日に二男Aを出産した。二男と上告人との間には,自然的血縁関係がなく,被上告人は,遅くとも同年▲月ころまでにそのことを知ったが,それを上告人に告げなかった。
(2) 上告人は,平成9年ころから,被上告人に通帳やキャッシュカードを預け,その口座から生活費を支出することを許容しており,平成11年ころ,一定額の生活費を被上告人に交付するようになった後も,被上告人の要求に応じて,平成12年1月ころから平成15年末まで,ほぼ毎月150万円程度の生活費を被上告人に交付してきた。
(3) 上告人と被上告人との婚姻関係は,上告人が被上告人以外の女性と性的関係を持ったことなどから,平成16年1月末ころ破綻した。その後,上告人に対して,被上告人に婚姻費用として月額55万円を支払うよう命ずる審判がされ,同審判は確定した。
(4) 上告人は,平成17年4月に初めて,二男との間には自然的血縁関係がないことを知った。上告人は,同年7月,二男との間の親子関係不存在確認の訴え等を提起したが,同訴えを却下する判決が言い渡され,同判決は確定した。
(5) 上告人が被上告人に分与すべき積極財産は,合計約1270万円相当である。
3 原審は,上告人と被上告人とを離婚し,長男,二男及び三男の親権者をいずれも被上告人と定めるべきものとするなどした上,二男の監護費用につき,次のとおり判断した。
上告人と二男との間に法律上の親子関係がある以上,上告人はその監護費用を分担する義務を負い,その分担額については,長男及び三男と同額である月額14万円と定めるのが相当である。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 前記事実関係によれば,被上告人は,上告人と婚姻関係にあったにもかかわらず,上告人以外の男性と性的関係を持ち,その結果,二男を出産したというのである。しかも,被上告人は,それから約2か月以内に二男と上告人との間に自然的血縁関係がないことを知ったにもかかわらず,そのことを上告人に告げず,上告人がこれを知ったのは二男の出産から約7年後のことであった。そのため,上告人は,二男につき,民法777条所定の出訴期間内に嫡出否認の訴えを提起することができず,そのことを知った後に提起した親子関係不存在確認の訴えは却下され,もはや上告人が二男との親子関係を否定する法的手段は残されていない。
他方,上告人は,被上告人に通帳等を預けてその口座から生活費を支出することを許容し,その後も,婚姻関係が破綻する前の約4年間,被上告人に対し月額150万円程度の相当に高額な生活費を交付することにより,二男を含む家族の生活費を負担しており,婚姻関係破綻後においても,上告人に対して,月額55万円を被上告人に支払うよう命ずる審判が確定している。このように,上告人はこれまでに二男の養育・監護のための費用を十分に分担してきており,上告人が二男との親子関係を否定することができなくなった上記の経緯に照らせば,上告人に離婚後も二男の監護費用を分担させることは,過大な負担を課するものというべきである。
さらに,被上告人は上告人との離婚に伴い,相当多額の財産分与を受けることになるのであって,離婚後の二男の監護費用を専ら被上告人において分担することができないような事情はうかがわれない。そうすると,上記の監護費用を専ら被上告人に分担させたとしても,子の福祉に反するとはいえない。
(2) 以上の事情を総合考慮すると,被上告人が上告人に対し離婚後の二男の監護費用の分担を求めることは,監護費用の分担につき判断するに当たっては子の福祉に十分配慮すべきであることを考慮してもなお,権利の濫用に当たるというべきである。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。
5 以上によれば,原判決中,二男の監護費用の分担に関する部分は破棄を免れず,第1審判決中,同部分を取り消して,同部分に関する被上告人の申立てを却下すべきである。
なお,長男及び三男の監護費用の分担に関する上告については,上告人は上告受理申立て理由を記載した書面を提出しないので,これを却下することとし,その余の上告については,上告受理申立て理由が上告受理決定において排除されたので,これを棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
( 裁判長裁判官 竹内行夫 裁判官 古田佑紀 裁判官 須藤正彦 裁判官千葉勝美)
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