刑法81条 外患誘致

刑法81条 外患誘致

(外患誘致)
第八十一条  外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。

・法定刑として死刑のみが規定されている。
66条ないし67条による減軽の余地は当然ある。

・「外国」とは、外国の政府、軍隊等の国家機関を意味する。

・「通謀」とは、意思の連絡であり、合意の成立を意味する。

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

刑法80条 自首による刑の免除

刑法80条 自主による刑の免除

(自首による刑の免除)
第八十条  前二条の罪を犯した者であっても、暴動に至る前に自首したときは、その刑を免除する。

・内乱の実行行為である暴動に至る前に自首した者に対して、必要的な刑の免除を認める規定。

・総則における自首減軽の規定(42条1号)の特則。

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

刑法79条 内乱等幇助

刑法79条 内乱等幇助

(内乱等幇助)
第七十九条  兵器、資金若しくは食糧を供給し、又はその他の行為により、前二条の罪を幇助した者は、七年以下の禁錮に処する。

・内乱及び内乱予備・陰謀に対する集団外からの幇助行為を特別の構成要件として規定した。

・本来幇助行為とは、被幇助者の実行を容易にする一切の援助行為を指すと解されるが、品上は例示をしていることから、「その他の行為」もこれに準ずるものに限られる。

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

刑法78条 予備及び陰謀

刑法78条 予備及び陰謀

(予備及び陰謀)
第七十八条  内乱の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の禁錮に処する。

・内乱の予備とは、内乱罪の実行を目的とする準備行為であり、武器や資金の調達、参加者を集めるなどの行為がこれに当たる。

・内乱の陰謀とは、内乱罪の実行について、2人以上の者が計画し、合意に達することであり、予備に先行する心理的な通謀の段階を意味する。
単なる抽象的・一般的な合意では足りない。

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1-3 民事訴訟とは何か 訴訟に要する費用とその負担

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.訴訟に要する費用
(1)訴訟費用の意義

・敗訴者負担の原則
原則として亜、敗訴の当事者が相手方の訴訟費用を含めて負担することになる。

訴訟費用とは、訴訟に要するあらゆる費用のうち、「民事訴訟費用等に関する法律」に定められたもののみをいう。
=原則として、弁護士費用は訴訟費用として定められていない。
←弁護士費用に敗訴者負担を導入すると、勝敗見込みの立たない事件について、訴訟提起が躊躇される危険があるから。

・不法行為訴訟における例外
+判例(S44.2.27)
理由
 上告代理人和田栄重の上告理由第一点について。
 訴外亡A、同B両名が被上告人の印章を使用した事実はあつても、いまだ両名が本件各根抵当権設定契約を締結する代理権を有していたとは認められない旨の原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)認定の事実は、その挙示する証拠関係に照らして首肯することができる。原判決には何等所論の違法はない。それ故、論旨は、いずれも採用しえない。
 同第二点について。
 原判決の確定したところによれば、訴外亡A、同Bが被上告人の代理人と称して第一審判決別紙目録(一)記載の宅地(以下第一物件という。)につき昭和三四年三月二五日被上告人主張の内容の根抵当権を設定した際、これとあわせて貸金債務八〇万円を担保するため停止条件付代物弁済契約を締結して右根抵当権設定登記と同時に所有権移転の仮登記を経たこと、また同じく第一審判決別紙目録(二)記載の建物(以下第二物件という。)につき昭和三四年一〇月一〇日被上告人主張の内容の根抵当権を設定した際、これとあわせて貸金債務六〇万円を担保するため停止条件付代物弁済契約を締結して右根抵当権設定登記と同時に所有権移転の仮登記を経たこと、そして第一、第二物件とも昭和三五年五月二五日被上告人において債務を弁済しなかつたので上告人に所有権が移転したとしてその旨の所有権移転登記がなされたこと、その後被上告人は、上告人に対し右代物弁済契約は訴外A、同Bが被上告人に無断で上告人と締結したものであるから無効であるとして第一、第二物件に対する上告人の所有権取得登記の各抹消登記手続を求める訴を提起し、反面上告人もまた被上告人に対し右代物弁済が有効であることを前提として、第一、第二物件を上告人に明け渡すことを求める訴を提起し、右二つの訴訟は津地方裁判所熊野支部において併合審理された結果、昭和三七年二月五日被上告人の主張どおり第一、第二物件に対する代物弁済契約は、訴外A、同Bが被上告人に無断で締結したものであつて、被上告人にその責任はなく、したがつてこれに基づく代物弁済も無効であるとして、上告人に所有権取得登記の抹消登記手続を命じ、上告人の主張を全面的に排斥した被上告人勝訴の判決がなされ、この判決は同年二月二五日確定したことが認められるというのである。さらに原判決によれば、右第一物件に対する代物弁済契約と極度額八〇万円の根抵当権設定契約とが同一機会になされたものとなつており、また第二物件に対する代物弁済契約と根抵当権設定契約とが同一機会になされたものとなつており、右の如く、そのうちの代物弁済契約が判決をもつて前記理由で無効であると判断されている以上、通常の注意を払えば代物弁済契約と同じく根抵当権設定契約も同様の理由により無効であろうと考えるのは当然であり、また右契約の中間時期に行われたとされている第一物件に対する昭和三四年七月二九日付の根抵当権設定契約も同様の理由で無効ではないかとの疑いを抱くべきが当然であるのにかかわらず、上告人は、前記別件判決が確定した後である昭和三七年一二月一七日たまたま前記各根抵当権設定登記が抹消されていないとの一事に基づき、右根抵当権の存否につき慎重な調査方法を講ずることもなく、あえて津地方裁判所熊野支部に対し第一、第二物件につき不動産競売の申立をしたというのである。そうだとすると、このような事実関係の下においては、上告人は、右競売申立にあたり、前記各根抵当権の不存在について、かりに故意がなかつたとしても、少なくとも社会通念上過失があつたとした原審の判断は正当であるというべきである。しかして、右競売裁判所は、右競売申立に基づき同日競売開始決定をし、さらに競売期日の指定、公告等の手続を進めていたこと原判決の確定するところであるから、被上告人がこの競売手続を阻止する手段を講じなければ、被上告人の第一、第二物件の所有権の行使に一層重大な障害を惹起すること明らかであり、被上告人が右競売手続上の異議の申立等によりその手続の進行を阻止するにとどまらず、かかる根抵当権の実行を窮極的に阻止するため、根抵当権設定登記の抹消登記手続を求める本訴提起に及んだことも、けだしやむをえない権利擁護手段というべきである。
 思うに、わが国の現行法は弁護士強制主義を採ることなく、訴訟追行を本人が行なうか、弁護士を選任して行なうかの選択の余地が当事者に残されているのみならず、弁護士費用は訴訟費用に含まれていないのであるが、現在の訴訟はますます専門化され技術化された訴訟追行を当事者に対して要求する以上、一般人が単独にて十分な訴訟活動を展開することはほとんど不可能に近いのである従つて、相手方の故意又は過失によつて自己の権利を侵害された者が損害賠償義務者たる相手方から容易にその履行を受け得ないため、自己の権利擁護上、訴を提起することを余儀なくされた場合においては、一般人は弁護士に委任するにあらざれば、十分な訴訟活動をなし得ないのである。そして現在においては、このようなことが通常と認められるからには、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。
 ところで、本件の場合、被上告人が弁護士Cに本件訴訟の追行を委任し、その着手金(手数料)として支払つた一三万円が本件訴訟に必要な相当額の出捐であつたとの原審の判断は、その拳示する証拠関係および本件記録上明らかな訴訟経過に照らし是認できるから、結局、右出捐は上告人の違法な競売申立の結果被上告人に与えた通常生ずべき損害であるといわなければならない。したがつて、これと同趣旨の原審の判断は正当である。さらに、上告人の過失相殺の主張を排斥した原審の事実認定も正当として首肯することができる。結局、原判決には何等所論の違法がなく、論旨はすべて採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎)

・労働契約上の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求事件においても、弁護士費用を安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害と認めた。

(2)訴訟費用の種類
・裁判費用
=裁判所が司法サービスの提供に要する費用

・当事者費用
=当事者が自ら支出する費用のうち、訴訟費用として法定されているもの。

2.訴訟費用負担の確定
(1)訴訟費用の負担者
・訴訟費用は原則として敗訴者負担
+(訴訟費用の負担の原則)
第六十一条  訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。

・一部敗訴の場合は、各当事者の負担の範囲は裁判所の裁量で決める
+(一部敗訴の場合の負担)
第六十四条  一部敗訴の場合における各当事者の訴訟費用の負担は、裁判所が、その裁量で定める。ただし、事情により、当事者の一方に訴訟費用の全部を負担させることができる。

・勝訴の当事者が、不必要な行為をした場合や、訴訟を遅延させた場合には、裁判所は、訴訟行為の一部または全部を負担させることができる。
+(不必要な行為があった場合等の負担)
第六十二条  裁判所は、事情により、勝訴の当事者に、その権利の伸張若しくは防御に必要でない行為によって生じた訴訟費用又は行為の時における訴訟の程度において相手方の権利の伸張若しくは防御に必要であった行為によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる。
(訴訟を遅滞させた場合の負担)
第六十三条  当事者が適切な時期に攻撃若しくは防御の方法を提出しないことにより、又は期日若しくは期間の不遵守その他当事者の責めに帰すべき事由により訴訟を遅滞させたときは、裁判所は、その当事者に、その勝訴の場合においても、遅滞によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる。

・共同訴訟人間の訴訟費用の分担
+(共同訴訟の場合の負担)
第六十五条  共同訴訟人は、等しい割合で訴訟費用を負担する。ただし、裁判所は、事情により、共同訴訟人に連帯して訴訟費用を負担させ、又は他の方法により負担させることができる。
2  裁判所は、前項の規定にかかわらず、権利の伸張又は防御に必要でない行為をした当事者に、その行為によって生じた訴訟費用を負担させることができる。

・法定代理人、訴訟代理人等の故意・重過失による費用
+(法定代理人等の費用償還)
第六十九条  法定代理人、訴訟代理人、裁判所書記官又は執行官が故意又は重大な過失によって無益な訴訟費用を生じさせたときは、受訴裁判所は、申立てにより又は職権で、これらの者に対し、その費用額の償還を命ずることができる。
2  前項の規定は、法定代理人又は訴訟代理人として訴訟行為をした者が、その代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権があることを証明することができず、かつ、追認を得ることができなかった場合において、その訴訟行為によって生じた訴訟費用について準用する。
3  第一項(前項において準用する場合を含む。)の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(2)訴訟費用確定の手続
・訴訟費用負担の裁判
裁判所は終局判決の主文において、同時に、その審級における訴訟費用の全部について、その負担を裁判する。
+(訴訟費用の負担の裁判)
第六十七条  裁判所は、事件を完結する裁判において、職権で、その審級における訴訟費用の全部について、その負担の裁判をしなければならない。ただし、事情により、事件の一部又は中間の争いに関する裁判において、その費用についての負担の裁判をすることができる。
2  上級の裁判所が本案の裁判を変更する場合には、訴訟の総費用について、その負担の裁判をしなければならない。事件の差戻し又は移送を受けた裁判所がその事件を完結する裁判をする場合も、同様とする。

・訴訟費用の負担の裁判に対しては、独立の上訴は認められない(282条、313条)
+(訴訟費用の負担の裁判に対する控訴の制限)
第二百八十二条  訴訟費用の負担の裁判に対しては、独立して控訴をすることができない。
+(控訴の規定の準用)
第三百十三条  前章の規定は、特別の定めがある場合を除き、上告及び上告審の訴訟手続について準用する。

・裁判所書記官による費用額の決定
+(訴訟費用額の確定手続)
第七十一条  訴訟費用の負担の額は、その負担の裁判が執行力を生じた後に、申立てにより、第一審裁判所の裁判所書記官が定める。
2  前項の場合において、当事者双方が訴訟費用を負担するときは、最高裁判所規則で定める場合を除き、各当事者の負担すべき費用は、その対当額について相殺があったものとみなす。
3  第一項の申立てに関する処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
4  前項の処分に対する異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
5  前項の異議の申立ては、執行停止の効力を有する。
6  裁判所は、第一項の規定による額を定める処分に対する異議の申立てを理由があると認める場合において、訴訟費用の負担の額を定めるべきときは、自らその額を定めなければならない。
7  第四項の異議の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。

3.資力が不十分な当事者の救済制度
(1)訴訟救助
一定の要件を満たす当事者に対し、訴訟費用の支払いを猶予する制度
+(救助の付与)
第八十二条  訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対しては、裁判所は、申立てにより、訴訟上の救助の決定をすることができるただし、勝訴の見込みがないとはいえないときに限る
2  訴訟上の救助の決定は、審級ごとにする。

+(救助の効力等)
第八十三条  訴訟上の救助の決定は、その定めるところに従い、訴訟及び強制執行について、次に掲げる効力を有する。
一  裁判費用並びに執行官の手数料及びその職務の執行に要する費用の支払の猶予
二  裁判所において付添いを命じた弁護士の報酬及び費用の支払の猶予
三  訴訟費用の担保の免除
2  訴訟上の救助の決定は、これを受けた者のためにのみその効力を有する。
3  裁判所は、訴訟の承継人に対し、決定で、猶予した費用の支払を命ずる。

(2)法律扶助
一定の範囲で弁護士費用などの立替えを行う。


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

民法817条の8 監護の状況

民法817条の8 監護の状況

(監護の状況)
第八百十七条の八  特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
2  前項の期間は、第八百十七条の二に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない

・試験養育を考慮するということ。

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

民法817条の7 子の利益のための特別の必要性

民法817条の7 子の利益のための特別の必要性

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

(子の利益のための特別の必要性)
第八百十七条の七  特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。

・「父母による養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合」とは
=貧困その他客観的な事情によって子の適切な監護ができない場合をいう。

・「不適当である」とは
=父母による虐待や著しく偏った養育をしている場合をさす。

・「その他特別の事情がある場合」とは
=これらに準じる事情のある場合をいう。

+判例(東京高決14.12.16)
 第2 当裁判所の判断
 1 一件記録によれば、以下の事実を認めることができる。
  (1) 抗告人(昭和39年6月29日生)は、青木晋平(養子となる者の父、昭和32年10月27日生、晋平)と平成2年12月26日に婚姻し、平成12年1月1日事件本人青木悠を出産した。なお、抗告人と晋平との間には、長女麻友実(平成3年11月7日生)、二女葉澄(平成10年5月12日生)がいる。
 抗告人は、現在長女及び二女を監護養育している。
  (2) 晋平は、事件本人が抗告人と第三者との間の子であるとして、事件本人を特別養子に出すことに積極的であった。他方、抗告人は、当初から事件本人を特別養子に出すことには消極的であったが、実父母の説得もあって渋々これを承諾した。
  (3) こうして事件本人は、平成12年1月24日、里親会の仲介で、相手方夫婦のもとに預けられた。
 事件本人は、キリスト教の牧師・教会教師である相手方ら(夫婦)とその子及び相手方夫婦のそれぞれの母とともに生活しており、今日まで順調に監護養育されており、相手方夫婦に健康面及び生活面で特に問題は見られない。
  (4) 抗告人と晋平は、事件本人が出生した当時から、事実上の別居状態にあり、晋平は、会社員として福岡県に単身赴任をしていた。他方、抗告人は、熊本市内の晋平の持家に長女及び二女と同居し、音楽教師等として稼働していたが、晋平が帰宅した際には、一人で実家に帰るという生活をしていた。
  (5) 抗告人は、平成13年9月27日、家庭裁判所調査官に対し、本件特別養子縁組に同意しない旨伝えるとともに、同意撤回書を作成・送付し、同書面は同年12月3日受理された。
 原審判は、本件について基礎的な事実を認定し、事件本人の父、事件本人の父母による監護の可否、未成年者の母(抗告人)による監護の適否等について検討した上、本件特別養子縁組について抗告人の同意はないものの、抗告人が、安定した監護環境を用意せず、かつ明確な将来計画を示せないまま、将来の事件本人の引取りを求めることは、いたずらに事件本人の生活を不安定にし、事件本人の健全な成長に多大な悪影響を及ぼすものといえるから、本件については民法817条の6但書の事由があり、さらに、同法817条の7等の要件も満たしているとして、相手方らの本件申立てを認容したものである。
 2 しかしながら、当裁判所は、原審判は取消しを免れないものと判断する。その理由は、次のとおりである。
  (1) 特別養子縁組の成立には、原則として養子となる者の父母の同意を要することとした趣旨は、特別養子縁組が成立すれば、特別養子となった子とその父母との法的親子関係は終了し(民法817条の9)、養親がその子の唯一の父母となり、子及びその父母の法律上及び事実上の地位に重大な変更が生ずることから、子及びその父母の利益を保護することにあると解される。したがって、民法817条の6の但書にいう「その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合」とは、父母に虐待、悪意の遺棄に比肩するような事情がある場合、すなわち、父母の存在自体が子の利益を著しく害する場合をいうものと解すべきであり、原審が説示するところの、安定した監護環境を用意せず、かつ明確な将来計画を示せないまま、将来の事件本人の引取りを求めることをもって直ちに、上記但書の事由に当たるものと結論付けることはできないというべきである。そうすると、原審において、上記事情の有無につき更に審理を尽くす必要があるといわざるを得ない。
  (2) また、民法817条の7は、「特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。」と規定しているところ、ここにいう「父母による養子となる者の監護が著しく困難」である場合とは、貧困その他客観的な事情によって子の適切な監護ができない場合をいい、また「不適当である場合」とは、父母による虐待や著しく偏った養育をしている場合を指し、「その他特別の事情がある場合」とは、これらに準じる事情のある場合をいうものと解すべきである。したがって、原審が説示するところの、安定した監護環境を用意せず、かつ明確な将来計画を示せないまま、将来の事件本人の引取りを求めることが、上記必要性の要件を満たしているということはできない。かえって、一件記録によれば、抗告人は、現在長女及び二女を監護養育しており、今後実家に転居した上で、実父母等の援助を受けることができる可能性も否定し得ないこと、抗告人は、原審判後の平成14年10月11日、熊本家庭裁判所に晋平と事件本人の親子関係不存在確認の調停を申し立てており(平成14年(家イ)×××号事件)、時間の経過はあるにしても、現在法的手続を進めていること、今後の同調停事件等の推移いかんによっては、本件にも重大な影響が生ずるおそれがあること、抗告人は、原審において一貫して事件本人を監護養育する意思があることを表明していることが認められるのであって、これらの事実によれば、本件において上記必要性の要件が満たされていると判断するには躊躇せざるを得ない。したがって、この点につき更に審理を尽くす必要がある。
  (3) 以上のとおりであるから、原審の審理は、不十分であるというほかない。
 なお、付言するに、差戻し後の原審における審理の結果、仮に本件特別養子縁組が認められないと判断される場合において、事件本人が相手方らのもとで3年近く監護され、既に心理的な親子関係が成立している事実があることから、事件本人の監護環境を急激に変化させることが福祉上好ましくないことは明らかであり、事件本人の監護養育を抗告人に移行するに当たっては、関係者全員が一致協力し、事件本人の福祉が損なわれることのないよう適切な方策が講じられなければならない。
 3 よって、本件抗告は理由があるから、原審判を取り消した上、前記の諸点について更に審理を尽くさせるため、本件を長野家庭裁判所松本支部に差し戻すこととして、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 大藤敏 裁判官 高野芳久 三木素子)

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1-2 民事訴訟とは何か 法体系の中での民事訴訟制度

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

1.訴訟と非訟
(1)非訟事件の意義

・元来の分類
訴訟事件
=具体的な紛争における権利関係を確定する作用

非訟事件
=国家が公権的な役割を果たすべき作用

・非訟事件は、基本的には裁判所の合目的的な裁量によって処分を行う作用。

(2)非訟手続の特徴
非訟手続では
原則として口頭弁論という審理の方式を経ることなく、原則として審尋という審理の方式により行われる。
手続は公開されない(非訟30条)
対審原則もなく、事実の認定に際して裁判所の職権による調査を行うことができる(非訟49条)
裁判も判決ではなく決定という簡略な方法による(非訟54条)。
非訟事件では、不服申し立ては、原則として1度の抗告が許されるのみ(非訟66条以下)
いったんなされた裁判を、職権で取り消し又は変更することもできる(非訟59条)

(3)訴訟事件の非訟化
裁判所による裁量による後見的な関与や事件の弾力的な処理を可能にする。

(4)非訟手続における手続保障
最高裁は、憲法32条の補償は非訟事件には及ばないとする立場をとっている。

権利義務の存否に関する争いの裁判は「純然たる訴訟事件」であるが、権利義務の存否を前提にしてその具体的な法律関係の内容を形成する作用の裁判は、非訟事件である
+判例(S40.6.30)
理由
 本件抗告の理由は別紙記載のとおりであり、これに対して当裁判所は次のように判断する。
 憲法は三二条において、何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われないと規定し、八二条において、裁判の対審及び判決は、公開の法廷でこれを行う旨を定めている。すなわち、憲法は基本的人権として裁判請求権を認めると同時に法律上の実体的権利義務自体を確定する純然たる訴訟事件の裁判については公開の原則の下における対審及び判決によるべき旨を定めたものであつて、これにより近代民主社会における人権の保障が全うされるのである。従つて、性質上純然たる訴訟事件につき当事者の意思いかんに拘らず、終局的に事実を確定し、当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定するような裁判が、憲法所定の例外の場合を除き、公開の法廷における対審及び利決によつてなされないとするならば、それは憲法八二条に違反すると共に同三二条が基本的人権として裁判請求権を認めた趣旨をも没却するものといわねばならない(昭和二六年(ク)第一〇九号同三五年七月六日大法廷決定民集第一四巻第九号一六五七頁以下参照)。
 しかしながら、家事審判法九条一項乙類三号に規定する婚姻費用分担に関する処分は、民法七六〇条を承けて、婚姻から生ずる費用の分担額を具体的に形成決定し、その給付を命ずる裁判であつて、家庭裁判所は夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して、後見的立場から、合目的の見地に立つて、裁量権を行使して、その具体的分担額を決定するもので、その性質は非訟事件の裁判であり、純然たる訴訟事件の裁判ではない従つて、公開の法廷における対審及び判決によつてなされる必要はなく、右家事審判法の規定に従つてした本件審判は何ら右憲法の規定に反するものではない。しかして、過去の婚姻費用の分担を命じ得ないとする所論は、原決定の単なる法令違反を主張するにすぎないから、特別抗告の適法な理由とならないのみならず、家庭裁判所が婚姻費用の分担額を決定するに当り、過去に遡つて、その額を形成決定することが許されない理由はなく、所論の如く将来に対する婚姻費用の分担のみを命じ得るに過ぎないと解すべき何らの根拠はない。
 叙上の如く婚姻費用の分担に関する審判は、夫婦の一方が婚姻から生ずる費用を負担すべき義務あることを前提として、その分担額を形成決定するものであるが、右審判はその前提たる費用負担義務の存否を終局的に確定する趣旨のものではない。これを終局的に確定することは正に純然たる訴訟事件であつて、憲法八二条による公開法廷における対審及び判決によつて裁判さるべきものである。本件においても、かかる費用負担義務そのものに関する争であるかぎり、別に通常訴訟による途が閉されているわけではない。これを要するに、前記家事審判法の審判は、かかる純然たる訴訟事件に属すべき事項を終局的に確定するものではないから、憲法八二条、三二条に反するものではない。
 よつて民訴法八九条を適用して主文のとおり決定する。
 この裁判は、裁判官横田喜三郎、同入江俊郎、同奥野健一の補足意見、裁判官山田作之助、同横田正俊、同草鹿浅之介、同柏原語六、同田中二郎、同松田二郎、同岩田誠の意見があるほか、裁判官全員の一致した意見によるものである。

+判例(H20.5.8)
理由
 憲法32条所定の裁判を受ける権利が性質上固有の司法作用の対象となるべき純然たる訴訟事件につき裁判所の判断を求めることができる権利をいうものであることは、当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和26年(ク)第109号同35年7月6日大法廷決定・民集14巻9号1657頁、最高裁昭和37年(ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁参照)。したがって、上記判例の趣旨に照らせば、本質的に非訟事件である婚姻費用の分担に関する処分の審判に対する抗告審において手続にかかわる機会を失う不利益は、同条所定の「裁判を受ける権利」とは直接の関係がないというべきであるから、原審が、抗告人(原審における相手方)に対し抗告状及び抗告理由書の副本を送達せず、反論の機会を与えることなく不利益な判断をしたことが同条所定の「裁判を受ける権利」を侵害したものであるということはできず、本件抗告理由のうち憲法32条違反の主張には理由がない。また、本件抗告理由のその余の部分については、原審の手続が憲法31条に違反する旨をいう点を含めて、その実質は原決定の単なる法令違反を主張するものであって、民訴法336条1項に規定する事由に該当しない。
 なお、本件は、家事審判の手続において妻である相手方が夫である抗告人に対して婚姻費用の分担金の支払を求める事案であり、原々審が、抗告人の負担すべき分担金として、抗告人に対し、過去の未払分95万円と1か月12万円の割合による金員の支払を命ずる審判をしたのに対し、原審は、抗告人の負担すべき分担金として、過去の未払分167万円と1か月16万円の割合による金員の支払を命ずる決定をしたものである。原審は、抗告人が相手方に対して正式に離婚が決まるまでの間婚姻費用として支払う旨約した月額5万円の仮払金の既払分を原々審の審判と同じく25万円であるとしているが、本件抗告理由において、抗告人は、原決定までの間に更に仮払金を支払ったと主張している。仮に抗告人の主張するような仮払金支払の事実があったとすれば、抗告人は、原決定の執行力を排除するために、その事実を異議の事由として請求異議の訴えを提起することができるものと考えられるが、本来、仮払金支払の事実の有無については、原審において審理されるべきものである。ところが、本件記録によれば、原審においては、抗告人に対して相手方から即時抗告があったことを知らせる措置が何ら執られていないことがうかがわれ、抗告人は原審において上記主張をする機会を逸していたものと考えられる。そうであるとすると、原審においては十分な審理が尽くされていない疑いが強いし、そもそも本件において原々審の審判を即時抗告の相手方である抗告人に不利益なものに変更するのであれば、家事審判手続の特質を損なわない範囲でできる限り抗告人にも攻撃防御の機会を与えるべきであり、少なくとも実務上一般に行われているように即時抗告の抗告状及び抗告理由書の写しを抗告人に送付するという配慮が必要であったというべきである。以上のとおり、原審の手続には問題があるといわざるを得ないが、この点は特別抗告の理由には当たらないところである。

3.判決手続きに関連する手続き
(1)強制執行手続
国家機関である執行機関を通じて権利の実現を強制的に達成する。

(2)民事保全手続
判決又は執行までの暫定措置として、被告となるべき者に対して現状の変更を禁止するとか、原告となるべき者のために一定の法律関係を形成するなどの処分を行う。

(3)倒産処理手続き
債務者が倒産状態にあるときに、権利関係の確定や執行などを統一的かつ包括的に行うための手続

3.判決手続の基本構造
(1)判決手続の概略
判決手続
=当事者間の紛争の対象である私法上の権利関係を確定することにより、紛争解決のための基準を作成する手続。

(2)判決手続きの基本理念
・公正と効率
適正=真実に即した裁判
公平=平等に当事者を扱う
迅速=訴訟の手続が不当に停滞または遅延しない
経済=当事者に無用の出費を強いないようにする。有形無形の負担を軽減。

・信義則の原則
相手方の信頼を裏切らないように誠実に行動。

・手続保障
当事者に手続主体としての地位を保障
弁論権=裁判の基礎となる資料を提出する権利
=主張及び立証の機会を与えられる権利

(3)判決手続における特別手続
ⅰ)簡易裁判所の手続
・口頭による訴えの提起が認められる
+(口頭による訴えの提起)
第二百七十一条  訴えは、口頭で提起することができる。

・準備書面の提出が義務付けられていない
+(準備書面の省略等)
第二百七十六条  口頭弁論は、書面で準備することを要しない。
2  相手方が準備をしなければ陳述をすることができないと認めるべき事項は、前項の規定にかかわらず、書面で準備し、又は口頭弁論前直接に相手方に通知しなければならない。
3  前項に規定する事項は、相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載し、又は同項の規定による通知をしたものでなければ、主張することができない。

・一定の書面審理が認められている
+(続行期日における陳述の擬制)
第二百七十七条  第百五十八条の規定は、原告又は被告が口頭弁論の続行の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしない場合について準用する。

・人証による証拠調べに代えて書面による証拠調べができる
+(尋問等に代わる書面の提出)
第二百七十八条  裁判所は、相当と認めるときは、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の意見の陳述に代え、書面の提出をさせることができる。

・司法委員の立合いによる審理が認められる
+(司法委員)
第二百七十九条  裁判所は、必要があると認めるときは、和解を試みるについて司法委員に補助をさせ、又は司法委員を審理に立ち会わせて事件につきその意見を聴くことができる。
2  司法委員の員数は、各事件について一人以上とする。
3  司法委員は、毎年あらかじめ地方裁判所の選任した者の中から、事件ごとに裁判所が指定する。
4  前項の規定により選任される者の資格、員数その他同項の選任に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
5  司法委員には、最高裁判所規則で定める額の旅費、日当及び宿泊料を支給する。

・判決の記載を簡略化することができる
+(判決書の記載事項)
第二百八十条  判決書に事実及び理由を記載するには、請求の趣旨及び原因の要旨、その原因の有無並びに請求を排斥する理由である抗弁の要旨を表示すれば足りる。

ⅱ)人事訴訟の手続
職権探知主義(人訴20条)
当事者尋問等の公開停止(人訴22条)
判決効の第三者への拡張(人訴24条1項)

ⅲ)行政訴訟の手続

ⅳ)各種の略式手続
・手形訴訟、小切手訴訟

・少額訴訟
60万円以下

・督促手続

ⅴ)刑事手続きに付随する損害賠償命令の申立手続
刑事事件の訴因を原因とする不法行為に基づく損害賠償請求

(4)判決手続きを補助する付随的手続


(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

民法817条の6 父母の同意

民法817条の6 父母の同意

(父母の同意)
第八百十七条の六  特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。

・父母の同意には、実父母のほか、養父母も含む。

・養子となる者の利益を著しく害する自由がある場合とは、父母の存在自体が子の利益を著しく害する場合をいう。

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

民法817条の5 養子となる者の年齢

民法817条の5 養子となる者の年齢

(養子となる者の年齢)
第八百十七条の五  第八百十七条の二に規定する請求の時に六歳に達している者は、養子となることができない。ただし、その者が八歳未満であって六歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は、この限りでない。

・養子となる者が、養親となる者の家庭裁判所への請求時に6歳未満であることが原則として必要。

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});