1-3 民事訴訟とは何か 訴訟に要する費用とその負担

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1.訴訟に要する費用
(1)訴訟費用の意義

・敗訴者負担の原則
原則として亜、敗訴の当事者が相手方の訴訟費用を含めて負担することになる。

訴訟費用とは、訴訟に要するあらゆる費用のうち、「民事訴訟費用等に関する法律」に定められたもののみをいう。
=原則として、弁護士費用は訴訟費用として定められていない。
←弁護士費用に敗訴者負担を導入すると、勝敗見込みの立たない事件について、訴訟提起が躊躇される危険があるから。

・不法行為訴訟における例外
+判例(S44.2.27)
理由
 上告代理人和田栄重の上告理由第一点について。
 訴外亡A、同B両名が被上告人の印章を使用した事実はあつても、いまだ両名が本件各根抵当権設定契約を締結する代理権を有していたとは認められない旨の原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)認定の事実は、その挙示する証拠関係に照らして首肯することができる。原判決には何等所論の違法はない。それ故、論旨は、いずれも採用しえない。
 同第二点について。
 原判決の確定したところによれば、訴外亡A、同Bが被上告人の代理人と称して第一審判決別紙目録(一)記載の宅地(以下第一物件という。)につき昭和三四年三月二五日被上告人主張の内容の根抵当権を設定した際、これとあわせて貸金債務八〇万円を担保するため停止条件付代物弁済契約を締結して右根抵当権設定登記と同時に所有権移転の仮登記を経たこと、また同じく第一審判決別紙目録(二)記載の建物(以下第二物件という。)につき昭和三四年一〇月一〇日被上告人主張の内容の根抵当権を設定した際、これとあわせて貸金債務六〇万円を担保するため停止条件付代物弁済契約を締結して右根抵当権設定登記と同時に所有権移転の仮登記を経たこと、そして第一、第二物件とも昭和三五年五月二五日被上告人において債務を弁済しなかつたので上告人に所有権が移転したとしてその旨の所有権移転登記がなされたこと、その後被上告人は、上告人に対し右代物弁済契約は訴外A、同Bが被上告人に無断で上告人と締結したものであるから無効であるとして第一、第二物件に対する上告人の所有権取得登記の各抹消登記手続を求める訴を提起し、反面上告人もまた被上告人に対し右代物弁済が有効であることを前提として、第一、第二物件を上告人に明け渡すことを求める訴を提起し、右二つの訴訟は津地方裁判所熊野支部において併合審理された結果、昭和三七年二月五日被上告人の主張どおり第一、第二物件に対する代物弁済契約は、訴外A、同Bが被上告人に無断で締結したものであつて、被上告人にその責任はなく、したがつてこれに基づく代物弁済も無効であるとして、上告人に所有権取得登記の抹消登記手続を命じ、上告人の主張を全面的に排斥した被上告人勝訴の判決がなされ、この判決は同年二月二五日確定したことが認められるというのである。さらに原判決によれば、右第一物件に対する代物弁済契約と極度額八〇万円の根抵当権設定契約とが同一機会になされたものとなつており、また第二物件に対する代物弁済契約と根抵当権設定契約とが同一機会になされたものとなつており、右の如く、そのうちの代物弁済契約が判決をもつて前記理由で無効であると判断されている以上、通常の注意を払えば代物弁済契約と同じく根抵当権設定契約も同様の理由により無効であろうと考えるのは当然であり、また右契約の中間時期に行われたとされている第一物件に対する昭和三四年七月二九日付の根抵当権設定契約も同様の理由で無効ではないかとの疑いを抱くべきが当然であるのにかかわらず、上告人は、前記別件判決が確定した後である昭和三七年一二月一七日たまたま前記各根抵当権設定登記が抹消されていないとの一事に基づき、右根抵当権の存否につき慎重な調査方法を講ずることもなく、あえて津地方裁判所熊野支部に対し第一、第二物件につき不動産競売の申立をしたというのである。そうだとすると、このような事実関係の下においては、上告人は、右競売申立にあたり、前記各根抵当権の不存在について、かりに故意がなかつたとしても、少なくとも社会通念上過失があつたとした原審の判断は正当であるというべきである。しかして、右競売裁判所は、右競売申立に基づき同日競売開始決定をし、さらに競売期日の指定、公告等の手続を進めていたこと原判決の確定するところであるから、被上告人がこの競売手続を阻止する手段を講じなければ、被上告人の第一、第二物件の所有権の行使に一層重大な障害を惹起すること明らかであり、被上告人が右競売手続上の異議の申立等によりその手続の進行を阻止するにとどまらず、かかる根抵当権の実行を窮極的に阻止するため、根抵当権設定登記の抹消登記手続を求める本訴提起に及んだことも、けだしやむをえない権利擁護手段というべきである。
 思うに、わが国の現行法は弁護士強制主義を採ることなく、訴訟追行を本人が行なうか、弁護士を選任して行なうかの選択の余地が当事者に残されているのみならず、弁護士費用は訴訟費用に含まれていないのであるが、現在の訴訟はますます専門化され技術化された訴訟追行を当事者に対して要求する以上、一般人が単独にて十分な訴訟活動を展開することはほとんど不可能に近いのである従つて、相手方の故意又は過失によつて自己の権利を侵害された者が損害賠償義務者たる相手方から容易にその履行を受け得ないため、自己の権利擁護上、訴を提起することを余儀なくされた場合においては、一般人は弁護士に委任するにあらざれば、十分な訴訟活動をなし得ないのである。そして現在においては、このようなことが通常と認められるからには、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。
 ところで、本件の場合、被上告人が弁護士Cに本件訴訟の追行を委任し、その着手金(手数料)として支払つた一三万円が本件訴訟に必要な相当額の出捐であつたとの原審の判断は、その拳示する証拠関係および本件記録上明らかな訴訟経過に照らし是認できるから、結局、右出捐は上告人の違法な競売申立の結果被上告人に与えた通常生ずべき損害であるといわなければならない。したがつて、これと同趣旨の原審の判断は正当である。さらに、上告人の過失相殺の主張を排斥した原審の事実認定も正当として首肯することができる。結局、原判決には何等所論の違法がなく、論旨はすべて採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎)

・労働契約上の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求事件においても、弁護士費用を安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害と認めた。

(2)訴訟費用の種類
・裁判費用
=裁判所が司法サービスの提供に要する費用

・当事者費用
=当事者が自ら支出する費用のうち、訴訟費用として法定されているもの。

2.訴訟費用負担の確定
(1)訴訟費用の負担者
・訴訟費用は原則として敗訴者負担
+(訴訟費用の負担の原則)
第六十一条  訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。

・一部敗訴の場合は、各当事者の負担の範囲は裁判所の裁量で決める
+(一部敗訴の場合の負担)
第六十四条  一部敗訴の場合における各当事者の訴訟費用の負担は、裁判所が、その裁量で定める。ただし、事情により、当事者の一方に訴訟費用の全部を負担させることができる。

・勝訴の当事者が、不必要な行為をした場合や、訴訟を遅延させた場合には、裁判所は、訴訟行為の一部または全部を負担させることができる。
+(不必要な行為があった場合等の負担)
第六十二条  裁判所は、事情により、勝訴の当事者に、その権利の伸張若しくは防御に必要でない行為によって生じた訴訟費用又は行為の時における訴訟の程度において相手方の権利の伸張若しくは防御に必要であった行為によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる。
(訴訟を遅滞させた場合の負担)
第六十三条  当事者が適切な時期に攻撃若しくは防御の方法を提出しないことにより、又は期日若しくは期間の不遵守その他当事者の責めに帰すべき事由により訴訟を遅滞させたときは、裁判所は、その当事者に、その勝訴の場合においても、遅滞によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる。

・共同訴訟人間の訴訟費用の分担
+(共同訴訟の場合の負担)
第六十五条  共同訴訟人は、等しい割合で訴訟費用を負担する。ただし、裁判所は、事情により、共同訴訟人に連帯して訴訟費用を負担させ、又は他の方法により負担させることができる。
2  裁判所は、前項の規定にかかわらず、権利の伸張又は防御に必要でない行為をした当事者に、その行為によって生じた訴訟費用を負担させることができる。

・法定代理人、訴訟代理人等の故意・重過失による費用
+(法定代理人等の費用償還)
第六十九条  法定代理人、訴訟代理人、裁判所書記官又は執行官が故意又は重大な過失によって無益な訴訟費用を生じさせたときは、受訴裁判所は、申立てにより又は職権で、これらの者に対し、その費用額の償還を命ずることができる。
2  前項の規定は、法定代理人又は訴訟代理人として訴訟行為をした者が、その代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権があることを証明することができず、かつ、追認を得ることができなかった場合において、その訴訟行為によって生じた訴訟費用について準用する。
3  第一項(前項において準用する場合を含む。)の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(2)訴訟費用確定の手続
・訴訟費用負担の裁判
裁判所は終局判決の主文において、同時に、その審級における訴訟費用の全部について、その負担を裁判する。
+(訴訟費用の負担の裁判)
第六十七条  裁判所は、事件を完結する裁判において、職権で、その審級における訴訟費用の全部について、その負担の裁判をしなければならない。ただし、事情により、事件の一部又は中間の争いに関する裁判において、その費用についての負担の裁判をすることができる。
2  上級の裁判所が本案の裁判を変更する場合には、訴訟の総費用について、その負担の裁判をしなければならない。事件の差戻し又は移送を受けた裁判所がその事件を完結する裁判をする場合も、同様とする。

・訴訟費用の負担の裁判に対しては、独立の上訴は認められない(282条、313条)
+(訴訟費用の負担の裁判に対する控訴の制限)
第二百八十二条  訴訟費用の負担の裁判に対しては、独立して控訴をすることができない。
+(控訴の規定の準用)
第三百十三条  前章の規定は、特別の定めがある場合を除き、上告及び上告審の訴訟手続について準用する。

・裁判所書記官による費用額の決定
+(訴訟費用額の確定手続)
第七十一条  訴訟費用の負担の額は、その負担の裁判が執行力を生じた後に、申立てにより、第一審裁判所の裁判所書記官が定める。
2  前項の場合において、当事者双方が訴訟費用を負担するときは、最高裁判所規則で定める場合を除き、各当事者の負担すべき費用は、その対当額について相殺があったものとみなす。
3  第一項の申立てに関する処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
4  前項の処分に対する異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
5  前項の異議の申立ては、執行停止の効力を有する。
6  裁判所は、第一項の規定による額を定める処分に対する異議の申立てを理由があると認める場合において、訴訟費用の負担の額を定めるべきときは、自らその額を定めなければならない。
7  第四項の異議の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。

3.資力が不十分な当事者の救済制度
(1)訴訟救助
一定の要件を満たす当事者に対し、訴訟費用の支払いを猶予する制度
+(救助の付与)
第八十二条  訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対しては、裁判所は、申立てにより、訴訟上の救助の決定をすることができるただし、勝訴の見込みがないとはいえないときに限る
2  訴訟上の救助の決定は、審級ごとにする。

+(救助の効力等)
第八十三条  訴訟上の救助の決定は、その定めるところに従い、訴訟及び強制執行について、次に掲げる効力を有する。
一  裁判費用並びに執行官の手数料及びその職務の執行に要する費用の支払の猶予
二  裁判所において付添いを命じた弁護士の報酬及び費用の支払の猶予
三  訴訟費用の担保の免除
2  訴訟上の救助の決定は、これを受けた者のためにのみその効力を有する。
3  裁判所は、訴訟の承継人に対し、決定で、猶予した費用の支払を命ずる。

(2)法律扶助
一定の範囲で弁護士費用などの立替えを行う。


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