憲法択一 統治 国会 国会の組織と活動


・内閣が連帯して責任を負う「国会」については、国政調査権が各議院に与えられいること(62条)から考えると、各議院がそれぞれ内閣の責任を追及し得ると考えられるので、両議院の意味に解することができる。⇒各議院は個別的に内閣の責任を追及することができる。

・両議院の召集・開会が同時に行われるべきという憲法上の明文はない。もっとも、54条2項本文が、衆議院が解散されたときは、参議院は同時に閉会になると定めていることや、憲法が二院制を採用していることからすれば(42条)、両議院の同時活動の原則が憲法上の要請であるといえる。

・各議院が独立して議事を行い、議決することを独立活動の原則といい、二院制から当然に導かれる。

・両院協議会を開くこと(59~61条)、両議院の常任委員会が合同して開く合同審査会制度(国会法44条)等が上記の例外としてある。

・両院協議会の協議案は出席議員の3分の2以上の多数で議決されたときに成案となる(国会法92条1項)。

・両院協議会は非公開とされ、傍聴は一切許されない(国会法97条)。

・内閣総理大臣の指名について、両議院で異なった指名を議決した場合、まず、両院協議会を開き、協議が調わないときに初めて衆議院の議決を国会の議決とする(67条2項)。

・憲法改正の発議(96条)については、両議院の議決価値に優劣はない。⇒衆議院の議決が優先されるわけではない。

・両議院の議員の資格は、法律でこれを定める。ただし、教育によって差別してはならない。

・単記投票法とは、一選挙区から選出する議員定数の多少にかかわらず、投票用紙に一人の候補者の指名を記名せしめて投票させる方法である。

・選挙人が政党の作成した候補者名簿に対して投票を行い、原則として名簿上の候補者間で投票の委譲を行う方式を名簿式という。

・現行の衆議院議員選挙の比例代表制は拘束名簿式、参議院は非拘束式である。

・直接選挙とは、選挙人が直接に代表者を選出することであり、投票結果と代表者の選出の間に選挙人以外の者の意思が介入することを禁ずる

・名簿式比例代表制について、投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはないとしたうえで、当選人の決定に選挙人以外の意思が介入するものではないから、本件非拘束名簿式比例代表制による比例代表選挙が直接選挙に当たらないということはできず、43条1項に違反するものではない。

・国会議員は法律の定めるところにより歳費を受け取ることが憲法上規定されているにすぎず(49条)、任期中減額されないことまで保障されているわけではない。

・両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されない(50条1項)。

・「法律の定める場合」として、国会法が「院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕できない」(国会ほう33条)としている。⇒現行犯うんぬんは憲法が直接規定しているわけではない。

・国会議員が逮捕されないのは任期中ではなく会期中である(50条)。

・国会議員について、憲法上訴追禁止の明文はない

・両議院の議員が逮捕されない「会期中」(50条)とは、国会の開会中を意味し、国会の閉会中の参議院の緊急集会中に、不逮捕特権は認められない。もっとも、国会法100条によって、参議院の緊急集会中の参議院議員に不逮捕特権は認められている

・両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない(51条)。この規定の趣旨は、議員の職務の執行の自由を保障することにあるから、特権の保証は演説、討論又は表決の形式にとどまらず、議院の活動として職務上行ったものに及ぶ

・免責の対象は院外の責任とされており、刑事上・民事上の責任を免れれば職務執行の自由は失われないから、政治的・道義的責任を追及することは許される。⇒除名処分は許される。

・議院における発言が個人の名誉を棄損する場合には、それが違法であることに変わりはないから、国家賠償法に基づき国に賠償を請求することができる場合があり、議員個人は国が賠償しても国から求償を受けないという保護をすれば足りると考えることができる。フム

・名誉を棄損された私人からの国家賠償請求を認めると、国会議員自身を証人として取り調べなければ違法性の有無を判断できない場合がないとはいえず、国会議員が証人として原告から追及されることもありえ、このような事態は国会議員の発言を最大限保障するという憲法の趣旨に反するおそれがある。フムフム

・国会議員たる地位を失った場合に在職中の言論の法的責任を追及可能とすると、現職の国会議員は自らが国会議員の地位を失った場合の法的責任の追及を考えて在職中自由な発言ができず、51条の趣旨を没却する。

・国会議員の免責特権(51条)にいう「責任」は弁護士法上の懲戒責任も含む。

・51条についての国会議員の立法過程における行動は政治的責任の対象とするにとどめるのが国民の代表者による政治の実現を期するという目的にかなうとしたうえで、国会議員の立法行為は、本質的に政治的なものであって、その性質上法的規制の対象になじまず国会議員は、立法に関しては、原則として、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないとした。(在宅投票制度廃止事件上告審)

・議員が院内での質疑等によって個人の名誉を棄損する発言をしたとしても、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情がある場合に限り、国家賠償法1条1項におけつ違法な行為があったといえる。

・国会議員の免責特権は、国会議員が国務大臣を兼職している場合は、国務大臣として行った発言は免責の対象とはならない

・憲法は、常会(52条)のほかに臨時会(53条)の規定を置いていることから、国会の会期については憲法上、会期制が予定されていると考えられるため、常設制を採用することはできない。⇒常会の会期を1年と定めることはできない。

・憲法には会期延長に関する規定はないが、国会法はこれについて定め、常会、臨時会及び特別会の会期延長の議決について衆議院の優越を認めている!。

・会期不継続の原則は、国会法68条本文で規定しているが、憲法上、同原則を定めた規定はない

・一次不再議の原則は、一度議院が議決した案件については同一会期中には再びこれを審議しないという原則である。

・一次不再議の原則について、明治憲法39条は規定していたが、日本国憲法にも、国会法や議員規則にも、それに当たるものは置かれていない。

・国会の召集は、憲法上、国事行為のひとつとして天皇の権能である(7条2号)。しかし、これは、内閣の「助言と承認」(3条、7条柱書)に基づいてなされる形式的・儀礼的行為であり、召集の実質的決定権は、内閣にある。

・臨時会については、いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣はその召集の決定をしなければならない(53条後段)。

・衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に衆議院議員総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければならない。

・参議院の緊急集会は、衆議院の解散中、国に緊急の必要があるとき、内閣の求めによって行われ(54条2項但し書き)、衆議院の任期満了による総選挙の間については想定していない。!

・緊急集会をもとめることができるのは内閣(54条2項但し書き)であり、内閣総理大臣ではない!!5。また、参議院議員にもその権能はない。

・緊急集会では憲法改正の発議を除き、国会の機能に属する事項のすべてを審議することができる。というのも、憲法改正の発議は両議院の議決を要する(96条1項)ので、緊急集会になじまないから。

・緊急集会は、内閣が緊急に必要とした議案を審議するために開かれるものである以上、審議できるのは、内閣総理大臣が内閣を代表して示した案件に限られる(国会法99条1項)。例外として、当該案件に関連する議員発議にかかる議案を審議することもできる。

・緊急集会で採られた措置は「臨時のもの」であって、次の国会の開会後10日以内に衆議院の(×国会)同意がない場合は、将来に向かって効力を失う(54条3項)!!!!


憲法択一 人権 基本的人権の原理 歴史など


・1948年の世界人権宣言は、国際人権規約とは異なり、加盟国を直接に拘束する効力を有しない。

・日本は1979年に国際人権規約A規約(社会権規約)及びB規約(自由権規約)を批准した。

・A規約については、公の休日の報酬確保・一部の公務員のストライキ権保障・中高等教育の無償の三点についについて留保している。

・B規約については、その選定議定書を批准していない。

・B規約は、国の安全や公の秩序の目的のために必要な場合の制限を認めている

・女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約は、母性を保護することを目的とする特別措置を認めており、日本も批准している。


憲法択一 統治 国会 国会の地位


・平成12年の公職選挙法・国会法改正により、衆議院参議院の比例代表選出議員は、当選後に所属政党を変更した場合は、議員の地位を失うことになった(国会109条の2、公職選挙法99条の2)。この規定は、自発的な党籍変更に限定してはいない。!!!

・議員が議案を発議するには、衆議院においては20人以上、参議院においては10人以上の賛成を要する。

・予算をともなう法律案を発議するには、衆議院においては議員50人以上、参議院においては議員20人以上の賛成を要する。

・法律が成立するのは、両議院で可決した時であって(59条1項)、公布により成立するわけではない。

・74条は、法律にはすべての主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要としている。この署名及び連署は、執行責任を表示するものに過ぎず、署名・連署を欠いた場合でも法律の効力は否定されない!!!!!。

・41条は実質的意味の立法が国会によってのみ制定されることを意味するが、実質的意味の立法が一般的・抽象的法規範を意味するとすれば、栄典制度についても法律で定めなければならないことになる。フム

・41条にいう「立法」を国民に義務を課しあるいは権利を制限する法規範の定率と解するならば、栄典はそれを授与された者に利益を与えるにすぎないから、栄典制度を政令で定めても違憲とはいえない。

・立法の委任は73条6号但し書きの存在及び事情の変化に機敏に対応した立法の要求等から、憲法上も認められる。

・委任事項の限られた一部を再委任しても、当該法律の委任の趣旨に反しない。!

・通説は、条例制定は国会の法律制定と同じ性質の行為であることなどを理由に、条例制定を憲法上の例外とみる必要はないと解している。

・条例制定が民主的立法としての性質の行為である以上、実質的には法律に準ずるものであり、法律による個別具体的委任なくして住民の権利を制限することができる。

・最高裁判所規則制定権(77条1項)は立法作用に国会以外の期間の参加を認めないという国会中心立法の原則に対する例外であるとされている。・・・。裁判所法も裁判所内部の規律や司法事務処理に関する事項について定めてはいるが。

・国会が「唯一」の立法機関であることは、国会以外の期間の関与を必要としないで、国会が単独で立法することができること(国会単独立法の原則)を意味する。

・上記の例外として、一の地方公共団体のみに適用される特別法についての住民投票がある(95条)。95条は住民の権利義務に直接影響がある場合に限ってはいない。

・議院内閣制の下では、国会と内閣の協同が要請されており、また、国会は自由に法案を修正・否決できるから!、内閣に法案提出権を認めても違憲ではない。

・内閣は「国務を総理する」(73条1号)地位にあり、いかなる立法措置が必要であるかということをもっとも適切に判断し得る立場にあるという点を強調すれば、国会が法律により、内閣に法案提出権を与えることは、憲法の禁ずるところではない。

・内閣法5条は、内閣総理大臣は!、内閣を代表して内閣提出の法律案を国会に提出するとしている。→法律案を提出するのは内閣総理大臣である。

・内閣法では内閣に法律案の提出権を認めており、法律案の提出も「立法」であるとすると、形式的には国会単独立法の原則に対する例外を定めているといえるが、憲法72条の「議案」に法律案も含まれると解されること、法律案の発議権は国会議員にもあり、しかも、閣僚の大半は実際に国会議員であることなどから、実質的には、国会単独立法の原則に対する例外に当たるものではないと解されている。

・憲法は、国の行政組織について法律で定めるべきことを明示していない。一般には、国の行政組織の基本は法律で定めるべきであるが、各省庁の組織の細部については政令で定めることができると解されている。


憲法択一 統治 権力分立の原理


・裁判所による違憲審査制が導入され司法権が議会・政府の活動をコントロールする、いわゆる司法国家現象の進展は、権力分立制の現代的変容のひとつである。

・政党国家現象は、伝統的な議会と政府の関係を、政府・与党と野党の対抗関係へと機能的に変容させるものであり、権力分立制の現代的変容のひとつである。

・権力分立の垂直的分立とは、中央(国政)と地方との間の権限分配を意味する。

・権力分立の水平的分立とは、垂直的分立により分配された権限を、中央・地方においてそれぞれ分配することを意味する。

・積極・社会国家において事実上中心的役割を果たすのは行政府となる。そして、行政府への国家権力の集中を阻止する観点から、議論の焦点が、相互抑制から、立法府が行政府をどこまで民主的にコントロールできるかに移ってきている。

・憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えていないのであるが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運営を期待することはできないのであるから、憲法は政党の存在を当然に予定しているものというべきである。(八幡製鉄政治献金事件)

・政党を憲法で直接規定することには問題もある。政党の公的機関性が強まり、「戦う民主主義」の名のもとに、法律によって党内民主主義を規制したり、反民主主義政党を排除したりする恐れがあるからである。

・政党の結社・政治活動をする自由も通常の結社の自由と異なるわけではなく、21条1項で保障されているといえる。

・政党は、政治上の信条、意見等を共通にする者が任意に結成する政治結社であって、内部的には、通常、自律的規範を有し、その構成員である党員に対して政治的忠誠を要求したり、一定の統制を施すなどの自治機能を有する。そのうえで、各人に対して、政党を結成し、または政党に加入し、もしくはそれから脱退する自由を保障するとともに、政党に対しては、高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない。(共産党袴田事件)

・外国人の政治献金の禁止は、政治献金が我が国の政治的意思決定に影響を及ぼし、国民主権原理に抵触することが根拠である。参政権が否定されていることが根拠ではない。!!!!!!!!

・政治献金を規制することは政治活動の自由を規制するものであるが、政治活動の公明と公正を確保するための必要かつ合理的な規制と解される。ただ、規制対象が恣意的に拡大されて政治活動の自由が不当に侵害されることを防止するため規制対象となる団体等を限定する必要がある。そこで、一定数の国会議員が所属するものに限定することも合理的であって、違憲とまでは言えない。

・国会議員の免責特権は、沿革的には、政府からの議員に対する干渉を排除することにあり、政党政治のもとで初めて重要な意義をもつものではない。フム

・憲法上政党に関する特別の規定は何ら設けられていない以上、その公的性格を重視して他の種類の結社と区別し、法的強制力をもって政党の内部秩序を民主的原則に適合すべきことを要求することは憲法上許されない。!!

・法律により、政党の役員・党員等の名簿、活動計画書を提出させたうえで政党の設立を許可する制度を設けることは、政党の自主性・自律性を害する度合いが強く、違憲である。


民法択一 私権の主体 自然人


・権利能力に関する規定は強行規定であり、契約をもって権利能力を制限したり放棄したりすることは許されない。

・外国人であっても、日本国籍を有するものと平等に権利能力を有するのが原則である。

・出生届の有無は権利能力の取得には関係ない。 

・胎児を代理して相続放棄はできない。

・責任能力⇒自己の行為が法的に非難を受け、何らかの法的責任を負うことを認識する能力。

・意思能力⇒自己の行為の結果についての判断力

・不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により(検察官×)失踪の宣告をすることができる。 

・失踪宣告の取消しは、本人または利害関係人の請求を要件としている。

・失踪宣告が取り消された場合、原則として、失踪宣告は、初めに遡ってなかったものとして扱われる。

・失踪宣告後取消し前に善意でした行為の効力には影響ない。(契約の場合双方の善意)

・再婚当事者が双方善意であれば前婚は復活しない。

・善意でなくても⇒後婚は無効にならない(取消原因)。前婚も復活。重婚関係生じる。

・財産を得たものは、現存利益の返還で足りる。

・生活費として浪費した場合は現存利益がある。

・行為能力を欠く者のなす法律行為は取り消すことができるにとどまる。

・制限行為能力者単独での取消しは完全に有効。

・取り消すことができる行為の相手方が確定しているときには、その取消しは、相手方に対する意思表示によって行う(123)。

・成年被後見人が建物の贈与を受けた場合、成年被後見人は、当該贈与契約を取り消すことができる。(なぜなら、日常生活に関する行為ではないから)

・成年被後見人の行為は、原則として成年後見人の同意の有無にかかわらず常に取り消しうる。

・被保佐人が訴訟行為をするには、保佐人の同意を要する(13条1項4号)

・被保佐人の応訴については同意は不要(民訴32条1項)

・元本の領収には保佐人の同意が必要

・準禁治産者(被保佐人)がした時効完成後の債務の承認は、借財と同視し得るから、13条1項2号の類推で保佐人の同意が必要。

時効完成前の債務の承認(147条3号)については、相手方の権利につき行為能力または権限があることを要しない(156条)から、保佐人の同意は不要

・被保佐人の行為に関する規定(13条)は、遺言については適用されない(962条)⇒保佐人の同意を得なくても遺言OK。

・保佐人の同意を要する行為については、13条1項各号に列挙された以外の行為も、保佐人などの請求に基づき家庭裁判所が追加することができる。

・補助開始の審判がされる場合においても、補助人は当然に代理権を付与されるわけではない。

・本人の同意がなければ本人以外の請求によりすることができないのは、補助開始の審判だけである(15条2項)。

・補助人の同意を得なければならないとすることができる行為は、名文上、13項1項に規定する行為の一部に限定される。(17条1項但し書き)

・家庭裁判所が補助開始の審判を取り消さなければならないのは、同意権及び代理権授与の審判をすべて取り消す場合である(18条3項)

・成年後見人に対して1か月以上の期間を定めて追認するかどうかの催告⇒成年後見人がその期間内に格闘を発しないときはその行為を追認したものとみなされる。

・未成年者及び成年被後見人に対する催告は、いかなる効力も生じない。なぜなら、意思表示の受領能力がなく(98条の2本文)、意思表示に準ずるものとして催告の受領能力もないと考えられるからである。

・親権者が共同して親権を行使している場合は、両方に対して催告をしなければならない。

・単に制限行為能力者であることを黙秘していただけでは詐術に当たらない。


民法択一 民法の全体像


・事情変更が客観的に観察して信義誠実の原則上当事者を契約によって拘束することが著しく不合理と認められる場合には、事情変更の原則による契約の解除が認められる。

・権利濫用に当たるとの判断をするのに、加害の意思は不可欠の要件ではない。

・ディーラーがサブディーラーに対して自ら負担すべき代金回収不能の危険をユーザーに転嫁しようとするものであり、自己の利益のために代金を完済したユーザーに不測の損害を被らせるものであって、権利の濫用として許されない。

・実親子関係の不存在を確定することが著しく不当な結果をもたらすものといえるときには、当該請求は権利の濫用にあたり許されない。(当然に許されないわけではない)

・良好な景観の恩恵を享受する利益は、法律上は保護に値するとした。違法な侵害に当たるといえるためには、すくなくとも、侵害行為が刑罰法規や行政法規の規制に違反する場合、公序良俗違反や権利濫用に該当する場合など 、侵害行為の態様や程度の面において社会的に認容された行為としての相当性を欠くことが求められる
 


通謀虚偽表示


1.相手方と通謀して仮装譲渡した場合、これは「相手方と通じてした虚偽の意思表示」であるから無効(民法94条1項)。とすると、仮装譲受人という無権利者から土地の売却を受けた者は、本件土地を承継取得しえないのが原則である。
2.しかしながら、虚偽表示を知らないで土地を譲り受けた者を保護する必要がある。そこで、かかる者を「善意の第三者」(94条2項)として保護されないか。
(1)第三者とは、虚偽表示の目的につき法律上の利害関係を有するに至ったものをいう。!!
→土地を譲り受けたものは「第三者」にあたる。
(2)94条2項の第三者は条文の文言どおり「善意」で足りるのか、無過失も要求するのか問題となる。
虚偽表示においては、自らの虚偽の外形を作出した本人の帰責性は大きい。とすれば、利益衡量上、第三者が保護される範囲をより広く解釈すべきである。したがって、94条2項の第三者は、条文の文言通り「善意」で足りる。
→通謀虚偽表示を知らない者は「第三者」にあたる。
(3)仮装譲受人から土地を譲り受けた者がいまだ登記を具備していない。94条2項の「第三者」は登記を具備している必要はあるのか。
94条2項の「第三者」は承継取得者に近く、本人とは前主・後主の関係に立つから、対抗要件としての登記(177条)は不要である。また、虚偽表示においては、本人の帰責性は大きいから、利益衡量上、権利保護資格要件としての登記も不要と解される。したがって、94条2項の「第三者」は登記を具備している必要はないと解する。
→登記を具備していなくとも「第三者」として保護される。

1.仮装譲渡人から譲り受けた者と「第三者」のどちらが優先するのか。
たしかに、「第三者」が仮装譲渡し人に対して登記なくして土地所有権を主張できる地位にあるのに対して、仮装譲渡人からの譲受人は登記を備えない者から譲り受けたに過ぎない。そうすると、「第三者」このような譲受人に対し登記なくして土地所有権を対抗し得るとも考えられる。しかし、仮装譲受人からの譲受人が一切保護されないとすると取引の安全が損なわれる。思うに、仮装譲受人も、94条2項の「第三者」が登記を具備するまでは実体法上の無権利者となるわけではないから、あたかも仮装譲渡し人を起点とした二重譲渡があったのと同様に考えられる。そこで、94条2項で保護される「第三者」と仮装譲渡人からの譲受人はいずれか先に登記を具備した方が優先する。
→登記はいまだ仮装譲受人にある。先に登記を具備した者が他方に対して所有権を対抗できる。

1.仮装譲渡人からの譲受人が第三者に所有権を対抗できなかった場合の仮装譲渡人と仮装譲渡人からの譲受人との関係。
本件土地の所有権を帰属しえなかったことについて、仮装譲渡人に対して履行不能に基づく損害賠償請求(415条後段)、解除(543条)の主張をすることが考えられる。
第三者に対抗できない現状では、履行義務は社会通念上履行不能といえる。
仮装譲渡人は登記を譲受人に移転することを怠ったといえるから帰責事由があるといえる。
上記主張は認められる。


ホテルやキャンプ場などのキャンセル料を考える


ホテルやキャンプ場のキャンセル料の法的な性質はなんなのだろうか。

○月○日に宿泊をする契約を締結している。ホテル側としてはその日にお客さんを一泊させる義務を負うことになる。一方でお客さんの側からするとその日にホテルに出向いて宿泊する義務?を負うことになる。こう考えると、○月○日にホテルに出向くことができなくなければ債務不履行(民法415条)としての損害賠償責任を負うことになる。ただ、ホテル側が損害の立証をしなければならなくなる点について考えると、数日前にキャンセルの電話を入れておけば宿泊料全額の損害を立証するのは難しそうな気がする。
そんな時、宿泊の注意事項にキャンセル料の定めがあった場合は損害賠償の予定(民法420条1項)の合意があったとして、ホテル側の損害の立証なしに、合意の額が損害として立証されそうだ。
ここでもう一つ注意したいのがホテルは事業者で、お客さんは消費者であることから、消費者契約法の適用があるという点である。損害賠償の予定を定めたキャンセル料の額が高すぎる場合には、消費者契約法9条1号により無効となりうる。特に何週間も前に解約した場合などはホテルも他のお客さんを探すことができることから、100%のキャンセル料を常に要求しているような場合には一部無効になりそうだ。

他にもホテル料をあらかじめ振り込んでいた場合は解約手付のように考えることはできないか・・・。

キャンセルをするということは契約の解除をすることだ。すでにホテル代金を支払っている場合は原状回復義務が生じることからホテル側は、客からの不当利得返還請求によりホテル代を返還しなければならなくなる。ここで上記損害賠償請額と相殺することになるのか・・・。

参照
消費者契約法9条
 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
1号 該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分


質権者と譲受人の関係 即時取得


1.売主は買主に対して、絵画を売却しその旨を質権者に連絡している。それゆえ買主は指図による占有移転によって絵画の所有権を取得する。ところが、買主は質権に劣後するため、質権の負担のある所有権を取得するのが原則である(178条)。
しかし、売主は売却する際に、(質権者)には単に預けているだけだと言っており、買主は質権の負担を知らないといえるから保護されないのは不都合である。そこで、買主は絵画を即時取得できないか、指図による占有移転が「占有を始めた」(192条)といえるか、条文上明らかではなく問題となる。

2.即時取得の基礎として占有を要件とした趣旨は、原権利者の静的安全を保護するためである。とすれば、保護資格のためには原権利者の権利が奪われる程度のものであることが必要である。そして、指図による占有移転の場合、占有改定と異なり、外部から認識し得る明確な行為があるから、原権利者の権利を奪っても酷とはいえない。そこで、指図による占有移転は「占有を始めた」といえると解する。

3→質権の負担のない所有権を取得できる。


制限行為能力者 取消しによる遡及効と第三者


1.被保佐人と買主との売買契約の締結により所有権はいったん買主に移転している。しかし、保佐人が当該契約の取消しを主張しているから(120条1項)、本件絵画の所有権は遡及的に被保佐人に帰属することになる(121条本文)。とすると、買主は無権利者であったことになり、買主から質権の設定を受けたものは質権を取得しえないのが原則である。
しかし、買主のもとにある物に質権の設定を受けているのだから保護されないのは不都合である。そこで、取消後の第三者が保護されるための法律構成が問題となる。

2.取り消すまでは意思表示は有効であるから、取消しにより復帰的物権変動が生じたといえる。そこで、178条の趣旨に鑑み、取消後の第三者は、引渡しを受けた場合には保護されると解する。

3.→質権の設定を受けたものが現実の引渡し(182条1項)を受けていた場合は質権を取得する。