憲法択一 統治 裁判所 司法権


・国家試験における合格、不合格の判定は、学問又は技術上の知識能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、その試験実施機関の最終判断にゆだねられるべきであって、その判断の当否を審査し具体的に法令を適用して、その争を解決調整できる者とはいえず、「法律上の争訟」に当たらないとして、裁判所の審査の対象にならない。(×濫用に当たらない限り)

・裁判所の支部を廃止する最高裁判所規則が違憲であるとして、その支部の管轄区域内の居住者が取り消しを求める訴えは法律上の争訟に当たらない。

・教義、信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものである場合は、この訴訟は、その実質において法令の適用による終局的解決に適さない。

・国または地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たらない。(宝塚パチンコ事件)

・議員資格争訟は、ある議員が44条の議員としての資格を有しているかの問題であり、懲罰としてその議員の資格を失わせるものではない。!!

・両院において議決を経たものとされ適法な手続によって公布されている以上、裁判所は両院の自律性を尊重すべく、警察法制定の議事手続に関する事実を審理してその有効無効を判断すべきではない。

・統治行為論を採用した判例はその論拠として、司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文により規定はないが、司法権の憲法上の本質に内在する制約と理解すべきものであるとして、内在的制約をあげている。(司法審査による混乱を回避するために自制すべきであることを論拠としているわけではない)

・衆議院の解散に対する有効無効の判断は、たとえ法律上可能であっても裁判所の審査権の外にあり、主権者たる国民に対して政治的責任を負う政府、国会等の政治部門に任され、最終的には国民の政治判断にゆだねられている。(苫米地事件)

・自衛隊機の離着陸の差止訴訟は不適法。(統治行為論をを理由とはしていない!)(厚木基地公害訴訟)

・日米安全保障条約は、高度の政治性を有するもので、司法裁判所の審査には原則としてなじまない性質のものであり、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものである。(司法審査する余地は認めている!!!)(砂川事件)

・単位授与行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断にゆだねられるべきものであって、裁判所の司法審査の対象とならない。(富山大学単位不認定事件)

・政党には高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならないから、政党が党員に対して行った処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、当該処分の当否は、政党が定めた規範又は条理に基づいて、適正な手続に則ってなされたかを判断すべきであり、裁判所の審理もその点に限られる。(共産党袴田事件)

・日米安全保障上条約及び日米地位協定が違憲無効であることが一見極めて明白でない以上、裁判所は、これらの条約に基づき義務を履行するために制定されたいわゆる駐留軍用地特別措置法の憲法適合性を審査すべきである。

・当選訴訟において「裁判所がその他の事由を原因として当選を無効とすることは、実定法上の根拠がないのに裁判所が独自の当選無効事由を設定することにほかならず、法の予定するところではない」。したがって、「名簿届出政党等による名簿登録者の除名が不存在又は無効であることは、除名届が適法にされている限り、当選訴訟における当選無効の原因とはならない」。

・実質的証拠法則:ある行政機関が認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには、裁判所を拘束するというようなルール

・認定事実を立証する実質的な証拠があり、実質的な証拠の有無は裁判所が判断するならば、実質的証拠法則は違憲ではない。

・明治憲法は、明文で、裁判の対審及び判決の公開原則を定めていた。

・裁判公開の趣旨は、裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては、裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある。

・82条1項にいう対審とは、民事訴訟では口頭弁論、刑事訴訟では公判であり、裁判官の前での訴訟当事者の口頭による弁論をさす。(準備手続きなどは対象に含まれない)

・「裁判所が裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合、対審は(×判決)公開しないでこれを行うことができる」(82条2項)。

・裁判官全員一致の賛成があったとしても、政治犯罪、出版に関する犯罪又は憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件については、対審を公開しないことは許されない。

・性質上純然たる訴訟事件につき、当事者の意思いかんに拘わらず終局的に事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定するような裁判が公開の法廷における対審及び判決によってなされていないとするならば憲法82条に違反するとともの、同32条が裁判請求権を認めた趣旨も没却するものといわねばならない。

・審判手続きにおける前提事実の判断には既判力は生じず、別に民事訴訟を提起することができるから、遺産分割に関する処分の審判を公開の法廷において行わなくとも82条1項に反しない。

・82条1項は、各人が裁判所に対して傍聴することを権利として要求できることまでを認めたものではないことはもとより、傍聴人に対して法廷においてメモを取ることを権利として保証しているものではない。(レペタ事件)

・刑事事件の公判廷における写真撮影は、審判の秩序を乱し、被告人その他訴訟関係者の正当な権利を害する結果を生ずる恐れがあるため、最高裁判所規則により、裁判長の許可を得なければすることができないと規定することは、憲法21条に違反しない。(北海タイムス事件)


民法択一 総則 契約の有効性 当事者の一般的有効要件


・心裡留保の場合、相手方に軽過失があれば無効である。

・虚偽表示は、通謀を要件とすることから、相手方のある行為に限られる。もっとも、単独行為であっても、相手方のある行為は存在するのであるから、そのような行為には虚偽表示が成立する。

・不動産の仮装譲受人の単なる債権者は、「第三者」(94条2項)に当たらない。 

・通謀のない場合であっても、虚偽の登記などの外形があり、これを権利者が明示・黙示に承認した場合は、94条2項の類推適用により 善意の第三者は保護される。

・土地の仮装譲受人が土地上に建物を建築してこれを他人に賃貸した場合、建物賃借人は、仮装譲渡された土地については法律上の利害関係を有するとはいえないから、「第三者」(94条2項)にはあたらない。!

・意思外形非対応型においては、94条2項、110条の法意にてらして、第三者は善意無過失であることが必要である。 

・他の共有者に対してなされた共有持分放棄の意思表示が、その共有者との通謀による虚偽のものであるときは、当該意思表示については、通謀虚偽表示の規定が類推適用される。(共有持分権の放棄は、本来、相手方を必要としない意思表示からなる単独行為だから)・・・ナルホド・・・

・建物について抵当権を設定した者がその敷地の賃借権を有しない場合には、抵当権の効力が敷地の賃借権に及ぶと解する理由はなく、建物の買受人は、94条2項、110条の法意により建物の所有権を取得することとなるときでも、敷地の賃借権自体についてもその法意により保護されるなどの事情がない限り、建物の所有権とともに敷地の賃借権を取得するものではない。 


・借地上の建物を目的物として仮装の売買契約が締結された場合、特別の事情がない限り、建物の所有権の譲渡とともに土地賃借権の譲渡も仮装したものといえる。

・所有権に基づく土地明渡請求訴訟において、被告は、原告の所有権取得行為が原告の錯誤によって無効であるとの主張はできない。なぜなら、表意者が無効を主張しない場合には、相手方が無効を主張することはできない。

・第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合に、表意者がその意思表示に関し錯誤のあることを認めているときには、表意者に主張の意思がなくても、第三者は錯誤無効の主張ができ、その結果生ずる表意者の債権を代位行使(423)できる。

・重過失のある表意者が自ら錯誤を理由とする無効を主張しえない以上、相手方又は第三者は、その無効を主張することはできない。

相手方が悪意の場合は、表意者に重過失があっても、95条但し書きの適用はない

・保証契約において、主債務者が誰であるかは要素の錯誤になる。 

・表示上の錯誤とは、意思表示と表示行為の間の錯誤がある場合をいう。(言い間違い、書き間違い)

・重大な過失の有無は、普通の知慮を有する者の注意を標準として抽象的に定めるべき。

・他に連帯保証人があるかどうかは、通常は保証契約をなす単なる縁由にすぎず、当然にはその保証契約の内容になるものではない。(当然には要素の錯誤とならない)!

・相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。(BがCに対して貸金債権を有する場合。AがBの詐欺によりCと保証契約を締結。CがBの詐欺を知らない場合は、AはCとの保証契約を取り消すことはできない。)

・連帯債務者の1人のした代物弁済が詐欺による意思表示として取り消された場合に、他の連帯債務者は詐欺による取り消しを対抗されない第三者には当たらない。・・・ヘー。

・取消し前の事例。第三者に停止条件付所有権移転の仮登記の付記登記があったにすぎず、対抗要件を具えていない場合であっても、96条3項の第三者に当たる。(登記は不要)

・強迫の結果完全に意思の自由を失った場合はむしろ、その意思表示は当然無効であり、96条適用の余地はない。


民法択一 総則 契約の成立


・単独行為 一個の意思表示で成立する法律行為。

・合同行為 共同の目的を持った同一方向の数個の意思表示によって成立する法律行為(会社の設立行為など)。

・弁済受領の拒絶および無権代理の相手方の催告は、自己の意思を他人に通知する私法上の行為である、意思の通知にあたる(観念の通知×)。

・連帯債務者の一人からほかの債務者に対して行う債権者から請求を受けた旨の通知(443条1項)や出損の通知(443条2項)または債権譲渡の通知(467条1項)は、ある事実を通知する私法上の行為である観念の通知にあたる。

・準法律行為は、その行為の中に意思的・精神的な要素が含まれているが、法が独自の観点から法律効果を認めるものである。当事者の意思に従って法律効果が与えられるものではない。

・表意者が相手方を知らず、又はその所在を知らない場合には、公示による意思表示をすることができる(98条1項)。しかし、表意者が相手方を知らないことまたはその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力は生じない(98条3項)。


民法択一 総則 私権の客体


・独立した不動産といえるためには、屋根および囲壁ができていれば足り、床や天井を具えている必要はない。

無記名債権は動産とみなされる。

・建物の増築部分は既存建物の従物ではない。なぜなら、独立した物といえないから。

・従物の要件⇒継続的に主物の効用を助けること。主物に付属すると認められる程度の場所的関係にあること。主物と同一の所有者に属すること。独立性を有すること。

・87条2項は「従物は主物の処分に従う」と規定しているが、これは任意規定である。

・主物である不動産に登記があることによって、従物についても公示がなされる。

・建物抵当権の効力は抵当建物の敷地の賃借権に及ぶ。

・果実とは、元物より生じる経済的収益をいう。

・天然果実は元物から分離するときに、これを収取する権利を有する者に帰属する(89条1項)。

・法定果実はこれを収取する権利の存続期間に応じて、日割り計算によりこれを取得する(89条2項)。


民法択一 総則 私権の主体 法人


・一般社団法人・一般財団法人を設立するに当たっては、主務官庁の許可を得ることは必要ない(準則主義がとられている)。

・ 一般社団法人の設立行為は、一人でなすことはできない(二人以上共同して定款作成)。

・権利能力なき社団の権利は構成員に総有的に帰属するので、構成員に持分はない。

・代表者の定めのある権利能力なき社団はその名において訴えまたは訴えられることができる。

・業務執行者について、組合では、組合員全員が業務執行者となるか、または組合員全員の合意によって、選任された者が担当者となる。

・一般社団法人の社員は、出資に応じた剰余金配当請求権を有しない。

・一判社団法人においては、社員の除名は、除名した社員にその旨を通知しなければ、これをもって当該社員に対抗することができない。


憲法択一 統治 内閣 議院内閣制


・議院内閣制の責任本質説は、内閣の存立が議会の信任に依存している点に議院内閣制の本質があると解する。→衆議院の内閣不信任決議に対抗する内閣の衆議院解散権を議院内閣制のひっつすの要素とまでは考えてはいない。

・69条以外に内閣が衆議院を解散できると明文で定めている規定はない。

・内閣は当初から、衆議院の解散を天皇の国事行為とする7条に基づき、衆議院を解散してきたわけではない。(最初の解散は69条の場合に限定されるという理解に立っていた)

・解散の詔書では「日本国憲法7条により、衆議院を解散する」との文言が用いられている。

・解散権の根拠を議院内閣制又は権力分立制とする見解は、議院内閣制の本質につき均衡本質説に立つことによって導くことができる。

・均衡本質説:議院内閣制は国会を最高機関とし、さらにそのうち衆議院に強力な権能を与えつつ内閣による抑制をはかるという均衡の体制であると解する。

・日本国憲法は議院内閣制を採っていると理解できるから、この制度の本質からして内閣には自由な解散権が認められるという見解に対しては、議院内閣制の概念は一義的ではないという批判がなされている。

・現在の実務では、内閣の自由な衆議院解散権を憲法7条で根拠付けているが、最高裁判所は、これが妥当な憲法解釈であるか否かについての判断をしていない。←衆議院の解散は、きわめて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であって、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にあるとした。(苫米地事件)


民法論文 錯誤



1(1)動機の錯誤は「錯誤」(95条本文)にあたるか。
(2)錯誤とは内心の効果意思と表示の不一致を意味する。そこで、単なる縁由にすぎない動機の錯誤は原則として錯誤に当たらない。もっとも、常に錯誤に当たらないとすると表意者保護にかける。そこで、相手方保護と表意者保護の調和をはかるために、動機が明示または黙示に表示され、意思表示の内容になった場合は「錯誤」に当たるといえる。
(3)→レプリカ通常の取引価格で売却しているところ、動機が少なくとも黙示に表示され、意思表示の内容になっているといえる。

2.要素の錯誤
因果関係及び重要性
→レプリカという点に錯誤がなかったら、表意者のみならず一般人も安値で売却しなかったと認められるから、要素の錯誤に当たる。

3.(1)軽率に売却しているから「重大な過失」(95条但し書き)がありそう。当事者双方が錯誤に陥っている場合(共通錯誤)、95条但し書きは適用されるか。
(2)95条但し書きの趣旨は、表意者に重過失という帰責性がある場合に相手方を保護する点にある。共通錯誤の場合には相手方を保護してまで表意者の保護を奪う必要はなく、かかる趣旨は妥当しない。そこで、共通錯誤の場合には、95条但し書きの適用はない。{考えてみる!}
(3)→錯誤無効の主張できる


1(1)錯誤無効の主張→各々の給付は「法律上の原因」(703条)を欠く→返還請求
ところが、盗難により返還債務が履行不能。無効とされた後、給付物が買主のもとで帰責事由なくして減失した場合の取り扱いが問題となる。
(2)無効前の契約が双務契約であっても、無効後は当該契約自体が消滅している。そうであれば、売主と買主の不当利得返還請求権は独立無縁の関係にあると解される。そこで、この場合には、買主は返還義務を免れ、売主は返還義務を免れないことになる。もっとも、不当利得制度の趣旨である公平の理念に鑑み、売主買主間の売買の無効取消原因について、売主の関与の程度を斟酌して、売主の返還義務は縮減される。
(3)売主が軽率にレプリカと思ったことによるから売主の関与は大きい。売主の返還義務は縮減されない。{もはや錯誤無効の主張とかしない方がいいんじゃないか(笑)}


1(1)買主が利得した物に、買主の行為が加わることによって得られた運用利益の返還義務の有無。
(2)不当利得制度の趣旨は、法律の形式的適用において生じる当事者間の利得の変動を公平の理念に基づいて調整しようとする点にある。とすると、受益者が特殊な才能や機会に恵まれて、一般に合理的予想される以上の利益を得たとすれば、むしろ返還させない方が公平の理念にかなう。そこで、原則として返還義務はないが、社会観念上受益者の行為の介入なしに損失者がその財産から取得したであろうと考えられる範囲の収益を返還すべきである。
(3)→技術や機械がなければ取得しえなかった本件では不当利得返還請求できない。


憲法択一 統治 内閣 内閣の組織と権能


・憲法66条1項・74条が、国務大臣・行政長官一人制を採用していることを示していることを前提とすると、行政組織のうち基本的な機関の設置については法律事項と解釈することができる。

・日本国憲法73条4号は、明治憲法10条本文の任官大権に関する事務の一部について、法律の定める基準によるとしている。これとの均衡上、明治憲法10条本文が定めていた行政組織の編成についても基本的には法律の定めが要請されるとの解釈が可能である。もっとも、行政の硬直化を避ける趣旨から、内部部局のあり方までは法律の専権事項とみられないと解釈することも可能である。

・ある国務大臣が国会議員の資格を失ったことによって、国務大臣の過半数は国会議員でなければならないとの条件が満たされなくなった場合は、国会議員の資格を有しないほかの国務大臣を罷免し新たに国会議員の資格を有する国務大臣を任命することによっても内閣の組織要件を満たすことができる。

・内閣が閣議によって職権を行うことは法律上明文で定められている(内閣法4条1項)が、閣議の定足数や表決数等の議事に関する特別の規定はなく、すべて慣習によるものとされている。

・閣議とは、会議のみを意味する場合と内閣の決議のみを意味する場合がある。内閣法4条1項は、後者を意味するため、持ち回り閣議を排除するものではない

・内閣の連帯責任は本質的には政治責任である。←66条3項は責任の内容・原因とも何ら限定していない以上、内閣の連帯責任は本質的に法的責任ではなく政治的責任である。

・閣議の議決方法については、全会一致でなされることが慣習上確立しているが、憲法の明文で規定があるわけではない。

・内閣の連帯責任は、必ずしも国務大臣の個人的責任を排除しない。

・内閣は行政権の行使について国会(×国民)に対し連帯して責任を負う(66条3項)

・66条3項は各議院が個別に内閣に対し責任を追及することを否定する趣旨ではない。

・内閣は天皇の国事行為の助言・承認に対して政治的な裁量を行使し、この点についての責任を国会に対して負う。

・内閣総理大臣の指名は他のすべての案件に先立って行われるが(67条1項後段)、その議決に先立ち、議院が有効に活動するための前提となる議長の選任や会期の決定等の案件を審議・議決することは許される。

・参議院議員のなかから内閣総理大臣を指名することも可能である。

・内閣総理大臣たる参議院議員を参議院は除名することもできる←自律権から。

・内閣総理大臣が国会議員であることは、指名の際の要件であり、在職の要件ではないという立場に立ったとしても、当選無効により国会議員の資格を失ったときは、そもそも指名の際に国会議員でなかったのであるから、当然に内閣総理大臣の資格を失う。

・天皇による認証(7条5号)は、国務大臣の任命が正当な手続きでなされたことを公に証明する行為に過ぎない。→内閣総理大臣が国務大臣を任命した時点で、合議体としての内閣は成立する。

・国務大臣の任免権(68条1項本文、2項)及び国務大臣の訴追に対する同意権(75条本文)については、内閣総理大臣の専権事項である。

・予算の作成提出については、閣議にかけて決定する必要がある。←内閣の権能とされているから(73条5号)+内閣がその職務を行うのは閣議による(内閣法4条1項)

・内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免(=本人の意思に反して一方的に)することができる(68条2項)。

・憲法72条は内閣総理大臣が内閣を代表して行政各部の指揮監督を行うと規定しているが、行政各部の指揮監督は、本来内閣の権限であるから、原則として閣議を経て行使されるべきものとする。→内閣は国会に対して政治的責任を負う(66条3項)

内閣総理大臣は、内閣を代表して、一般国務及び外交関係について国会に報告する(72条)。国会はこれらの報告を受け、また報告を要求する権能を有する。

・外交関係の処理(73条2号)、条約の締結(73条3号)は内閣の事務(×内閣総理大臣)である。

・国務を総理するのは内閣であって(73条1号)内閣総理大臣ではない!!!!!!。

・内閣総理大臣は、すくなくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有する(ロッキード丸紅ルート事件)=各国務大臣が所管事項についてする行政指導に対し支持を与えることも内閣総理大臣の権限の範囲内といえる。

・73条以外に、65条が内閣が行政事務を行う一般的権限を有する規定としてある。

・「実施するため」(73条6号)とは法律の存在を前提とするということであり、議会を通さない緊急命令や独立命令は認められない。既存の法律に代替する内容を定める代行命令も認められない。⇔法律の執行に必要な細則を定める執行命令と、法律の委任に基づく委任命令に限定される。

・制定された法律を内閣が違憲と判断した場合でも、天皇によるその法律の公布に助言と承認を与えることを拒否することはできない。←内閣は法律を誠実に執行する義務を負うことから(73条1号前段)

・内閣の法案提出権には、既に存在する法律を廃止する案を提出する権限も含まれている。

・成立した法律には、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することが必要とされるが(74条)、かりにそれらが欠けても、法律の効力や内閣の法律執行義務には影響はない

・内閣は衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない(69条)。

・内閣総理大臣が欠けたときは、内閣は総辞職をしなければならない(70条)。←憲法は、内閣総理大臣に「首長」たる地位を与えており、これが欠けた場合には内閣の一体性が失われることになるから。

・「欠けたとき」(70条)とは、死亡、失踪、亡命、国会議員となる資格を喪失した場合などを指す。

・内閣総理大臣の病気や一時的な生死不明は「欠けたとき」ではなく、「事故のあるとき」(内閣法9条)に当たり、臨時代理が置かれるに過ぎない。

・内閣総理大臣に事故があるときや欠けたときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が内閣総理大臣の職務を行う(内閣法9条)。


憲法択一 統治 内閣 行政権と内閣

・独立行政委員会は憲法65条の例外として認められるとする見解は、76条と異なり、65条が「すべて行政権は」と規定していないことを根拠としている。

・内閣が委員の任命権を持ち、委員会が予算の編成権を有することを重視すると、65条が一切の例外を認めていないと考えたとしても独立行政委員会は合憲となる。


憲法択一 統治 国会 国会と議院の権能


・議員の資格争訟裁判において、議員の議席を失わせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決が必要である(55条但し書き)。議員の資格を失わせる場合でなければ、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要としない。

・議員の資格に関する同一の争訟が議院と裁判所の双方に係属する場合には、いずれか一方が被選資格なしと判断すれば、当選議員はその地位を失う。!

・決議は議院の意思表明に過ぎないので、69条(衆議院の内閣不信任と解散又は総辞職)の場合以外は原則として法的効果は生じない。⇒衆議院において各国務大臣に対する不信任決議がなされた場合は政治的効力しか有しない。

・決議が議院の意思表明であるという点は、両議院一致の決議がなされた場合も同じである。

・両議院の議事の公開(57条1項)、議事録の公表・頒布(57条2項)に関しては憲法上の明文がある。

・委員会は「両議院の会議」(57条1項)に当たらず、決議により秘密会とすることができる(国会法52条2項)。衆議院の委員会では議院の傍聴は許されるが、参議院の委員会では議員の傍聴を許していない点!!!が異なる。

・両議院は出席議員(×総議員)!の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

・憲法57条1項前段は、会議の公開原則を定めているが、この原則は国会の本会議に対する要請である。審議の中心となっている委員会は原則非公開である。

・両議院の会議を秘密会にする場合には、公の秩序又は善良の風俗を害する恐れがあることは必要ではない。

・「院内」(58条2項本文)とは、議事堂という建物の内部に限られない。議場外の行為であっても、会議の運営に関連し、又は議員として行った行為で、議員の品位を傷つけ、議院の秩序を乱したことに相当因果関係のあるものは懲罰の対象となる。

・会議の運営と関係のない個人的な行為は懲罰の対象とはならない。

・衆議院の議決がないのに参議院の議決のみで予算や法律が成立することはある=参議院の緊急集会!。

・59条2項の「これと異なった議決」には、衆議院で可決して送付された法律案について、参議院が否決する場合と修正可決!した場合の両方が含まれる。

・59条3項の両院協議会は、任意的に開かれるものである。

予備費は、国会の議決に基づいて設けられている(87条1項)。予備費は予算に計上されるものであることから、「国会の議決」は予算の議決としてなされる!!。そのため、憲法60条1項による衆議院の優越が認められる。

・予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合には、衆議院は必ず!!両院協議会を開くよう求めなければならない(60条2項)。

・条約の承認については、予算に関して衆議院の先議権を認めた60条1項は準用されていない(61条)。⇒参議院の先議もOK!

・条約締結の国会承認については、衆議院の優越が認められており、両議院が異なる議決をした場合であって法律の定めるところにより両院協議会を開いても意見が一致しないときには衆議院の議決が国会の議決となる(61条、60条2項)=(再議決は不要!!!)

・締結について国会の承認を要する条約は、広く国家間の合意をいい、条約、協約、協定、議定書、憲章など名称のいかんを問わない。

・国家間の合意であっても、条約を執行するための細部の取決めや、条約の委任の基づく個別具体的な問題についてなされる取決め(行政協定・交換公文等)は、内閣の外交関係処理の権限(73条2号)の一環として処理されるので、国会の承認を得る必要はない。

・国会に条約の内容を修正をする権限があるかについて、肯定説は、61条が衆参両院で意見が分かれた場合に両院協議会を予定していること!は、妥協によって修正がなされる場合があることを前提としていることを理由とする。

・条約は、それだけではただちに国内法的効力が生じないものであっても、国家間の権利義務にかかわり直接国民の権利義務にかかわらないものであっても、天皇の交付の対象となる。

・各議院は、国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる(62条)。

・国政調査権の性質上、住居への立ち入り、捜索、押収、逮捕といった刑事手続上の強制力を行使することはできない。!

・補助的権能説=議院の憲法上の権能を実行的に行使するために認められた補助的権能

・国政調査権は、司法権の独立を害しない限り、司法に関する事項にも及ぶ。

・裁判官訴追委員会は、国会から独立した機関であり、訴追委員会のなす調査は、国政調査権行使の一例ではない。!

・特定の個人の犯罪行為を発見し、これを処罰するのに必要な証拠を収集するためだけに国政調査権を行使することは、たとえその個人が国会議員であったとしても許されない。←事件が係属中でなくとも、司法権の独立を犯すような調査は許されない。

・議院が裁判所と並行して調査を行うことは、その裁判内容に関する調査でない限り、司法権の独立を犯すことにはならない。

・立法・行政監督目的など議院が裁判所と異なる目的から、裁判と並行して調査することは、司法権の独立を害するものではない。

・国政調査権の行使に関して、適法な調査に付随して個人の犯罪容疑が明るみに出たとしても、直ちに国政調査権の範囲を逸脱したということにはならない。

・裁判所が審理を開始した事件の担当裁判官を証人として喚問することは、司法権の独立を侵害することになり、国政調査権の範囲を逸脱する。

・国政調査権の性質について、補助的権能説に立ったとしても、内閣が国会に対して連帯責任を負うことから(66条3項)!!、行政事務全般が調査の対象となる。

・準司法作用を有する検察権に対しては、起訴権に政治的圧力を加えることを目的とする調査、事件にかかわる事項や公訴内容を対象とする調査及び捜査に重大な支障をきたすような方法による調査は許されない。⇔ある罪に関する法改正の要否に関連して、犯罪捜査や公訴提起の状況等、その罪についての検察権の一般的な運用状況について、調査をすることは許される。

・省庁のみならず、その監督下にある独立の法人格を有する公益法人の活動についても調査することができる。

・憲法38条1項の黙秘権の保障は、国政調査においても妥当する。!!

・「正当な事由」(議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律7条1項)には個人の基本的人権が侵害される場合も含まれる。⇒個人的な信条を明らかにするよう尋問された場合証言を拒むことができる。

・内閣総理大臣その他国務大臣は、両議院のいずれかに議席を有すると有しないとにかかわらず、なん時でも議案について発言するため議院に出席することができる(63条前段)。

・答弁又は説明のために出席を求められた場合は出席しなければならない(63条後段)。→正当な事由がある場合でも拒めない。!!!

・弾劾裁判所は、両議院の議員で組織しなければならない(64条1項)。→一方の院だけで構成することはできない。!!

・弾劾裁判所は、訴追委員から罷免の訴追を受けた裁判官を裁判する。

・弾劾裁判所の裁判員は、同時に訴追委員となることはできない(国会法127条)。

・弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者は、裁判官、検察官、弁護士になる資格を失う。

・弾劾裁判所は憲法が認める特別裁判所であり、司法裁判所は一切関与できない。⇒罷免に対しては、通常の司法裁判所に救済を求めることはできない。!

・裁判官弾劾法38条は、弾劾裁判所による資格回復の可能性を認めている。