民法択一 親族 婚姻の解消

・協議離婚の形式的要件(764条・739条・765条1項)に、財産分与に関する協議は挙げられていない。→財産分与に関する協議が調わなくても、協議離婚をすることができる。

・未成年の子(18歳)が離婚をするのには父母の同意は必要ない。

・判例は離婚意思を法律上の離婚関係を解消する意思と形式的にとらえている。→事実上の婚姻関係を維持しつつ、生活保護受給を継続するための方便として、協議離婚の届出をした場合でも、協議離婚は有効!!!

・成年被後見人が離婚をする場合には、成年後見人の同意を要しない(746条・738条)。

・協議上の離婚によって、婚姻の効果は将来に向かって解消する。←コレ

・詐欺又は強迫によって離婚をした者は、その離婚の取消しを裁判所に請求することができる(764条・747条1項)。そして、取消請求が認められると、離婚届の届出の時点にさかのぼって離婚がなかったことになる(764条は747条を準用しているが、748条を準用していない)

・協議上の離婚は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって効力を生じる(764条・739条1項)。

・離婚訴訟は形成訴訟であるから、離婚の請求を認容する判決が確定した時に、判決による離婚の効力が生じる。


・裁判所は、具体的離婚原因がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる(770条2項)。

有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間に対し相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない。

・夫婦が離婚した場合、姻族関係は当然終了するが(728条1項)、夫婦の一方が死亡した場合、婚姻関係は当然には終了せず、生存配偶者(×死亡配偶者の血族)の意思表示により終了する(728条2項)。

・夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる(751条1項)。(家庭裁判所の許可は不要)

・婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する(767条1項)。

・婚姻前の氏に復した夫または妻は、離婚の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる(767条2項)。

・婚姻により氏を改めた者は、裁判上の離婚によって当然に婚姻前の氏に復し、届け出によって離婚の際に称していた氏を称することができるのであって、裁判所が氏を定めるわけではない。

・婚姻関係が破たんして父母が別居状態にある場合であっても、子と同居していない親が子と面接交渉をすることは、子の監護の一内容であるということができ、別居状態にある父母の間で面接交渉につき協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、民法766条を類推適用し、面接交渉について相当な処分を下すことができる

・協議離婚をする場合に未成年者の子がいるときは、その協議で、父母の一方(共同で親権を行使することはできない)を親権者と定めなければならない(819条1項)

・裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める(819条2項)。

・財産分与と慰謝料請求はその性質を異にすることを前提として、財産分与に慰謝の要素を含めることも可能であるが、財産分与に慰謝の要素を含めた趣旨と解されないか、あるいはそれが慰謝するに足りないときには慰謝料請求は妨げられない

・財産分与と異なり、夫婦の共有財産は、離婚のときから2年以内に分割しなければならないわけではない。

・離婚訴訟において、裁判所は、夫婦の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の額及び方法を定めることができる。

・財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産分与であると認るに足りる特段の事情のない限り、詐害行為となりえない。


民法択一 親族 婚姻


・婚姻の届け出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭でしなければならない(739条2項)。

・724条1号の「当事者間に婚姻する意思がないとき」とは、当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係を設定する効果意思がない場合をいう。→単に他の目的を達するための便法として仮託され、真に夫婦関係を設定する効果意思がなかった場合には、婚姻は効力を生じない。

・将来婚姻する目的で性交渉を続けてきた者が、婚姻意思を有し、かつ、その意思に基づいて婚姻の届出を作成したときは、かりに届出が受理された当時意識を失っていたとしても、その受理前に翻意したなど特段の事情がない限り、届け出の受理により婚姻は有効に成立する。

・養子と養方の傍系血族の間は婚姻できる。→要旨は養親の弟と結婚できる。

・養親子間においても婚姻は禁止されている。離縁によって親族関係が終了した後であっても同様とされている(736条)。

・直系姻族の間では婚姻関係が終了した後でも婚姻することができない(735条)。⇔妻の姉妹は傍系姻族だから結婚できる。

・未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない(737条1項)。そして、離婚により親権を失った父または母も同意権者である。!!!

・誤って二重に婚姻届が受理されてしまった場合、前婚について離婚原因(770条1項1号、5号)となり、後婚については取消原因(744条1項本文、732条)となるにとどまる。

・女は、前婚の解消又は取消しの日から6か月を経過した後でなければ、再婚をすることはできない(733条1項)。

・女性が前婚の解消又は取消しの前から懐胎していた場合は、その出産の日から733条1項の適用はない。

・再婚禁止期間に違反してした婚姻については、前配偶者も、その取消を請求できる。(744条2項)!!!

・未成年者(18歳←婚姻適齢ではある)が父母の同意を得ずに婚姻届を作成して届出をし、誤ってこれが受理された場合、父母は、その婚姻が不適法なものであるとして、家庭裁判所に取消しを請求することはできない。←744条1項には、737条が挙げられていないため。

婚姻適齢(731条)の規定に違反した婚姻については、各当事者から、その取消しうを家庭裁判所に請求することができ(744条1項本文)、婚姻適齢に達しない者は、父または母の同意がなくとも、婚姻の取り消し請求をすることができる。

・婚姻適齢の規定に違反した婚姻の取消しは、各当事者、その親族または検察官の請求に基づき、家庭裁判所が行う。←婚姻適齢は公益的規定であるため、親族及び検察官も取消請求できる。

・重婚(732条)は、婚姻取消事由であるが(744条1項)、取り消し得るのは、後婚であって、前婚は離婚自由になるにとどまる(770条1項1号、5号)!!→2人目の妻は1人目の妻と夫の婚姻の取り消しを裁判所に請求することはできない!!!

・後婚が離婚によって解消された場合、後婚の取消しを請求することは原則として許されない。←婚姻取消しの効果が離婚の効果に準じるため(748条、749条)、法律上の利益がないことを理由とする。!

・人違いその他の事由によって当事者に婚姻する意思がない場合、婚姻は無効となる(742条1号)(×取消事由)

・詐欺によって婚姻した者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができ(747条1項)、ここにいう詐欺には96条2項の適用はなく、相手方の善意悪意は問わない

・検察官は731条から736条までの規定に違反した婚姻につき、裁判所に取消しを請求することができるが(744条1項本文)、当事者の一方が死亡した後はこれを請求することはできない(同上但し書き)。

・不適齢者が適齢に達すると、本人以外の取消請求は許されなくなるが、本人による取消請求は、適齢に達した後追認しない限り、適齢に達した後も3か月間はすることができる(745条1項2項)。

・婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる(748条1項)→取消し前に発生した第三者に対する日常家事債務の連帯責任などは、既に発生しているものであり、取消に影響されない。

・婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生ずるので(748条1項)、取消し前に準正を受けた子(789条)は、父母の婚姻が取り消されても、嫡出子としての身分を失わない。

・婚姻の時においてその取消原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。

・さらに、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う(748条3項)。

・同居その他夫婦間の協力及び扶助に関する権利義務について、多分に倫理的、道義的な要素を含むとはいえ、法律上の実体的権利義務であることは否定できない。→公開の法廷で対審及び判決によるべきである。

・民法752条は夫婦の同居義務を規定しているが、判例によれば、この同居義務の履行については、間接強制をすることはできない。

・第三者が夫婦の一方と肉体関係を持った場合、夫婦の婚姻関係がすでに破たんしていたときは、特段の事情がない限り、第三者は不法行為責任を負わない。←被侵害法益が婚姻生活の平和の維持だから!!

・父親が未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の女性と同棲するかどうかにかかわりなく、父親自らの意思によって行えるから、他の女性との同せいの結果、未成年の子が父親の愛情、監護、教育を受けることができなかったとしても、その女性の行為との間には相当因果関係がない

・夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係については、婚姻費用の分担方法等の法廷財産制を規定する760条から762条までの規定が適用される(755条)。

・754条にいう「婚姻中」とは、単に形式的に婚姻が継続していることではなく、形式的にも実質的にも継続していることをいうから、婚姻が実質的に破たんしている場合は、形式的に継続しているとしても、夫婦間の契約を取り消すことは許されない。

・夫婦間の財産関係は、婚姻の届出後は変更することはできない(758条1項)!!

・夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定される(762条2項)。

・夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とされる(762条1項)。

・夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する(760条)。

・「婚姻から生ずる費用」(婚姻費用)には、生計費・教育費等が含まれる。

・日常の家事に関する法律行為の具体的な範囲は、個々の夫婦によって異なるが、単にその法律行為をした夫婦の共同生活の内部的な事情やその行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、さらに客観的に、その法律行為の種類、性質等も十分に考慮して判断すべきである。!!!

・結納は婚姻の成立を予想して授受する贈与であるから、婚約が後日合意解除された場合には、受贈者は不当利得としてこれを返還すべき義務を負う!!⇔しかし、挙式後8か月余りも夫婦生活を続け、婚姻の届出も完了し、法律上の婚姻が成立した場合においては、既に結納授受の目的を達したから、たとえその後協議離婚をしたとしても結納を返還すべき義務はない。


民法択一 親族 親族法総則


・自然血族=親子、兄弟のように本来的に血縁関係にある血族

・法定血族=養親子関係など、法律によって血縁関係が擬制された血族

・従兄弟は、傍系だが尊属でも卑属でもない。

・配偶者は親族だが、血族でも姻族でもない特殊な地位にある。!

・親族=6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族をいう(725条)

・姻族=自己の配偶者の血族、及び自己の血族の配偶者をいう。

・夫の母親と妻の父親は親族ではない!!!

・従兄弟の妻は、4親等の姻族となり親族ではない!!

・直系血族又は3親等内の傍系血族の間の婚姻は禁じられている(734条1項本文)。ただし、養子と養方の傍系血族との間の婚姻は禁止されていない(同上但し書き)←実子と養子との婚姻により「家」を承継させるという慣習が行われていたことから、例外を認めた。

・尊属又は年長者は、これを養子とすることはできない(793条)。→年下の叔父とかを養子にはできない。!

・精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、補佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官請求により、後見開始の審判をすることができるとされている(7条)。

・直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があり(877条1項)、家庭裁判所は、特別の事情があるときは、3親等内の親族間においても、扶養の義務を負わせることができる(同条2項)。⇐特別事情とはについてしらべてみる・・・。


民法択一 代理 代理権


・代理権授与行為と代理行為とは一体の法律行為ではなく、独立の法律行為であるから、代理権授与行為が取り消されても、すでになされた代理行為は影響を受けない。!

・権限の定めのない代理人は、保存行為と、権利の性質の変更をともなわない利用または改良行為のみをなしうる。(無利息の金銭貸付行為は権利の性質の変更をともなう利用行為であるから、権限外の行為として無権代理行為となる)

・法定代理人は、やむを得ない事由がないとき(通常)は、復代理人に過失あれば法定代理人に過失なくとも責任を負う

・法定代理人はやむを得ない事由があって復代理人を選任した時には、選任監督上の過失について責任を負う(106条後段、105条1項)。

・任意代理人は、通常は復代理人の選任監督懈怠責任を負う。

・任意代理人は、本人の指名があるときは、不適任・不誠実を知って、本人に通知せず、解任しなかった場合に責任を負う。

・復代理人の代理権は原代理人の代理権の範囲を超えることができず、それを超えた代理行為は無権代理行為となる。

・委任による代理人は本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときに、復代理人を選任できる(104条)。

法定代理人は自己の責任で復代理人を選任することができる(106条前段)

・自己契約、双方代理は禁止されている。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為はこの限りではない。

・自己契約、双方代理⇒無権代理行為となる。⇒本人が追認すれば有効(113条1項)

・代理権は代理人の死亡により消滅する(111条2号)。

・代理権は 本人の死亡により消滅する(111条1項1号)。なお、これと異なる合意も有効

・代理権は代理人が後見開始の審判を受けたことにより消滅する(111条1項2号)。

・後見開始の審判の時期が代理権を与えられた後であり、かつ、代理行為がなされる前であれば、代理権の消滅を主張するものがその事実を主張立証すれば、代理権消滅の抗弁となる。

・委任による代理権は、本人が破産開始の決定を受けると消滅する。なぜなら、本人の破産手続き開始決定は委任の終了自由だから(653条2号)。

・代理人は虚偽表示をする権限はないのであるから、この場合の代理人は代理人とはいえず単に相手方の意思表示を本人に伝達する者となり、そうすると当該意思表示は、本人に対し自己の真意と異なることを知りながらしたものとして心裡留保に当たるとして、93条但し書きにより本人が相手方の真意を知り、又は知りえた場合でない限り有効となる。!!


憲法択一 統治 憲法改正 憲法改正の限界


・無限界説によれば、憲法所定の改正手続に基づくものである限り、憲法制定権力の主体や元の憲法の基本原理を変更することも法的に認められ、憲法の廃止と新憲法の制定という法を超えた政治的な事件となるわけではない。!!

・無限界説←将来において憲法制定時の規範・価値が変化した場合には憲法こそ変化すべきであり、将来の世代が憲法の規範・価値に拘束されるべきでない。

・無限界説←憲法規範中に上下の価値の序列や階層性を認めることはできない。

・限界説←近代憲法は自然権思想を成文化した法であり、人権と国民主権とが、共に個人の尊厳の原理に支えられ不可分に結びついて共存する関係にあることが、近代憲法の本質かつ理念であるとしたうえで、このような根本規範といえる人権宣言の基本原則を改変することは許されない

・限界説→憲法典を持続させるために設けられた憲法改正規定の実質を変更することは許されない。

・憲法の効力根拠に関する学説には、自然法との合致に求めるものと、憲法制定権力の決断に求めるものとがある。

・憲法改正権と憲法制定権を区別する見解からは、改正権が自己の存立の基盤ともいうべき制憲権の所在(国民主権)を変更することは、理論的に許されない。

・憲法改正権を制度化された制憲権と理解すると、制憲権は憲法特典のなかに取り込まれていることになる。そして、改正権の生みの親は制憲権であるから、改正権が自己の存立の基盤ともいうべき制憲権の所在(国民主権)を変更することは、いわば自殺行為であって理論的に許されない。

・憲法改正には限界があるという立場からは、主権の存在を変更するような改正は不可能となる。ポツダム宣言の受諾によって主権の所在が天皇から国民に移ったという、いわゆる八月革命説は、憲法改正には限界があるという立場を採りつつ日本国憲法の制定を正当化しようというものである。=大日本帝国憲法は新しい建前に抵触する限り重要な変革を被りながら存続したと説明。


憲法択一 統治 憲法改正 憲法改正の手続

・憲法の改正は、各議院の総議員数の3分の2以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認をへなければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする(96条1項)。

・96条1項にいう国会による「発議」とは、憲法改正案が国会において議決されることをいい、憲法改正の原案を提出する発案、審議、議決という過程を総合したものを意味する。

・憲法改正についての、議院での審議の方法については、憲法及び法律に特別の規定がないことから、法律案に準じて行うことができる。→憲法改正の審議の定足数を3分の1とすることも許される。


憲法択一 統治 憲法訴訟


・憲法判断回避論:訴訟において違憲の争点が適法に提起されている場合でも、裁判所はその争点に触れないで事件を解決することができるのならば、あえて憲法判断をする必要はないし、すべきでもない。

・憲法判断回避の方法として、憲法判断そのものを回避する方法と、法律の違憲判断を回避(合憲限定解釈)する方法の2つが挙げられる。

・被告人の行為は自衛隊法121条の構成要件に該当しないとして無罪とするとともに、その結論に達した以上、もはや、弁護人ら指摘の憲法問題に関し、何らの判断を行う必要がないのみならず、これを行うべきではないとする。(恵庭事件)

・輸入書籍・図画等の税関検査の合憲性が問題となった事案において、表現の自由を規制する立法について合憲限定解釈が許されるのは、その解釈により、規制の対象になるものとそうでないものとが明確に区別され、かつ、合憲的に規制し得るもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合であって、しかも一般市民の理解において、具体的場合に当該表現物が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめるような基準をその基準から読み取ることができるときに限られるとした。→「風俗を害すべき書籍、図画」等とは、わいせつな書籍、図画等を指すものと解すべきであり、この規定は広汎又は不明確ゆえに違憲無効ということはできず、当該規定によるわいせつ表現物の輸入規制が憲法21条1項の規定に違反するものではない。

・法令違憲:争われた法令の規定そのものを違憲と判断する方法。

・運用違憲:法令の一連の適用の在り方に照らして違憲と判断される運用の一環としてなされた処分を違憲と判断する方法。=この手法は、法令の具体的適用の次元ではなく、その前の運用一般の次元で違憲と判断するという点で、適用違憲の手法よりも、法令違憲の手法に近い。

・適用違憲:法令が当該事件に適用される限りで違憲として、その適用を排除する方法をいう。

・17条に違反するかどうかは、当該行為の態様、これによって侵害される法的利益の種類及び侵害の程度、免責又は責任限定の範囲及び程度等に応じ、当該規定の目的の正当性並びに手段として 免責又は責任限定を認めることの合理性及び必要性を総合的に考慮して判断すべきである。(郵便法免責規定違憲判決)

・当事者においてある法令が憲法に適合しない旨を主張した場合に、裁判所が有罪判決の理由中にその法令の適用を挙示したときは、その法令は憲法に適合するものであるとの判断を示したものに他ならない。

・違憲とされた法令は一般に無効になるとする見解←当該事件に限って無効の扱いを受けるとすると法的安定性を害する。憲法98条1項の文言。

・違憲とされた法令は当該事件に限って適用が排除されると解する見解←違憲判決に一般的効力を認めると、裁判所に一種の消極的立法作用を認めることになり、国会以外による実質的意味の立法は憲法の特別の定めがある場合を除いて許されないという国会中心立法(×国会単独立法)の原則に反する。

・付随的違憲審査制説をとった場合でも、法令違憲の判決の効力について、一般的効力説を採ることは可能である。

・個別的効力説を前提とした場合でも、行政機関は最高裁判所が違憲無効と判断した法律を執行することはできないと解することは可能←他の国家機関は、最高裁判所の違憲判決を十分尊重することが要求されるから。

・将来効判決:ほうれいを違憲無効とはするが、その効力の発生は将来の一定時期以降にするという判決方法。(実際に採用した例はない)

・事情判決:判決の中で処分又は裁決が違法だと宣言するが、無効にはしないという判決方法。⇔裁判拒絶と同じだという批判あり。


憲法択一 統治 違憲審査権


・最高裁判所の違憲審査権は、81条によって定められていると説かれるが、一層根本的な考え方からすれば、たとえこの規定がなくても、98条の最高法規の規定又は76条もしくは99条の裁判官の憲法遵守義務の規定から、違憲審査権は十分に抽出される。

・付随的違憲審査制とは、具体的な訴訟事件を裁判する際に、当該事件の解決に必要な限度で適用法条の違憲審査を行うことをいい、個人の権利保護を主たる目的とする。

・抽象的違憲審査制は、特別に設けられた憲法裁判所が、具体的な訴訟事件とは関係なく、抽象的に違憲審査を行う方式であり、意見の法秩序を排除し、憲法を頂点とする法体系の整合性を確保することを主たる目的とする。

・付随的違憲審査制においても、第三者の憲法上の権利・利益侵害を理由に違憲主張をすることが許される場合がある。!!←第三者の憲法上の権利・利益が現実に侵害されている際に、当該侵害の主張を当事者にさせることが適切と認められる場合。

・81条が憲法6章「司法」のなかに規定されていることから考えると、違憲審査制が行使される場合は司法権が行使される場合に限定されることになる。→付随的審査制を定めている。

・抽象的違憲審査の権限を認めるならば、何らかの手続規定を憲法上設けておくべきであるにもかかわらず、現行法上何ら手続き的規定がないことにかんがみると、抽象的違憲審査制を採用したわけではないといえる。

・抽象的違憲審査制を認めると、違憲判決の効力は、一般的効力を有すると解さざるを得なくなるので、裁判所による法律の改廃が可能となる。そうすると、消極的立法を認めることになって41条に抵触するおそれがあるので、付随的審査制と解すべきとの結論が導かれる。

・最高裁判所は傍論で憲法判断を行ったことがある。

・81条は「最高裁判所」と規定しており、下級裁判所が違憲審査権を有するかどうかは明らかではない。しかし、違憲審査権を司法権の権能の一環と捉えるならば、下級裁判所においても違憲審査権を行使することができると解せる。

・内閣の補助機関として現行法の合憲性について内閣の諮問に応じて意見を述べたり、内閣提出の法律案に対して閣議に付される前にその合憲性を審査することを目的とする機関を設立したとしても、最高裁判所を拘束するものでない限り、最高裁判所を憲法適合性を判断する「終審」裁判所であると規定した81条に反しない。

・法律等の憲法適合性が問題となる場合でも以前に大法廷で合憲と判断したのと同じ意見であれば、小法廷でも判断できる。

・高等裁判所が上告審としてした裁判についても憲法違反を理由とする場合は、最高裁判所への上訴が許されなければならない=特別上告(民事訴訟法327条1項)

・憲法優位説は、条約が憲法に優位すると解すると、内容的に憲法に反する条約が締結された場合には、条約によって憲法が改正されることになり、硬性憲法性を損なうと主張する。

・憲法優位説←憲法98条2項は条約及び確立した国際法規を誠実に遵守すべき義務を規定するが、これは、有効に成立した条約の国内法的効力を認めその遵守を強調するものであって、意見の条約をも遵守すべきことまでを定めたものではない。

・憲法優位説←条約の締結、承認は憲法の授権により認められた国家機関の権能であるから、そのような機関の根拠となる憲法を、条約により変更できると解することは背理である。

・条約優位説←98条1項は、法律等の国内法規との関係で憲法の最高法規制を規定しているが、条約は除かれており、しかも、98条2項では、条約が国内法として効力があることを規定している。

・憲法優位説←憲法は国際協調主義に則り、国家主権を超えた国際秩序を目指すものであるが、現段階では国家主権を超えた国際秩序は確立されていないから、現状を踏まえた憲法解釈をすべきである。

・憲法優位説+条約に対する違憲審査権を否定する見解←98条2項が「条約」の誠実遵守を強調しており、条約が外国との合意によって成立することを根拠とする。

・憲法優位説+条約に対する違憲審査権を否定する見解←条約は81条の列挙事由に挙げられいないこと、条約は国家間の合意という特質を有し、しかも政治的な内容を含むことから、条約は違憲審査の対象とはならない。

・憲法優位説+条約に対する違憲審査権を肯定する見解←条約は81条の「法律」もしくは「規則または処分」に含まれるとし、条約が違憲審査の対象となる。

・条約優位説→条約に対する違憲審査は一切認められないことになる。!!!

・「一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外」(砂川事件)→条約の違憲審査可能性を前提としている。

・条約が違憲審査の対象となる見解において、裁判所が条約を違憲としても、その条約の国内法的効力の限度での判断にすぎず、国際法的効力に及ぶものではない。←条約は国家間の合意である以上、国際法上の効力を一国の意思のみで否定することはできない。

・国会議員の立法行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかが問題であって、当該立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきであり、かりに当該立法の内容が憲法の規定に違反するおそれがあっても、その故に国会議員の立法行為が直ちに違法の評価を受ける者ではない。国会議員の立法行為は、率峰の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定しにくいような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けない。(在宅投票制度廃止事件上告審)

・国会及び国会議員の立法不作為につき、国家賠償法1条1項の適用上違法性を肯定することができない以上、国会に対して法律案の提出権を有するにとどまる内閣の法案不提出についても、国家賠償法1条1項の適用上違法性を観念する余地はない。

・立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害することが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受ける。(在外選挙権制限違憲判決)

・精神的原因による投票困難者については、その精神的原因が多種多様であり、しかもその状態は必ずしも固定的ではないし、精神的原因による投票困難者は、身体に障害がある者のように、既存の公的な制度によって投票所に行くことの困難性に結びつくような判定を受けている者ではない。少なくとも各選挙以前に、精神的原因による投票困難者に係る投票制度の拡充が国会で立法課題として取り上げられる契機があったとは認められないとして、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。

・裁判の本質は一種の処分であるということができるので、立法行為や行政行為と同じく司法行為も最高裁判所の違憲審査権に服する。!!


会社法判例 大阪高判H27.5.21 監査役の任務懈怠と重過失


1.事実
監査役Xは、A株式会社との間で会社法427条所定の責任限定契約を締結している。
A社の破産手続き開始決定がなされる。破産管財人YがXらを相手方として、役員責任査定を申し立てた。大阪地方裁判所は、XがYに対して負担すべき損害賠償債務の額を648万円とする損害賠償査定決定をした。
Xは、損害賠償査定決定の取消しを求めて訴えを提起。一方、YもXの善管注意義務違反に基づく損害賠償請求権の額を8000万円とするよう求めて訴えを提起。

2.判旨
(1)監査役の義務違反について・・・
監査役の職務として、本件監査役監査規定に基づき、内部統制システムを構築するよう助言勧告すべき義務があった。上記助言勧告をしなかった義務違反。
取締役会に対して、Bを代表取締役から解職すべきである旨を助言勧告すべきであった。!!

(2)因果関係
義務を履行していれば・・・本件金員交付を防止することも可能だった。
解職勧告の義務を履行していれば、Bは解職されてたorBは金員交付を思いとどまっただろう。

(3)重過失
監査役としての任務懈怠に当たるべきことを知るべきであったのに、著しく注意を欠いていたためにそれを知らなかった場合に重過失あり。

Bの任務懈怠について疑義の表明、事実関係の報告を求めることはしていた。
内部統制システムの整備が全くされていなかったわけでもない。
重過失なし。


民法論文  詐欺


1(1)詐欺を理由とする売買契約にかかる意思表示を取消している(96条1項)。したがって、遡及的無効(121条本文)により、買主は無権利者となり、転得者もは買主から土地を承継取得しえないのが原則。
(2)しかし、詐欺の事実について善意無過失で土地の売却を受けた転得者を保護する必要。そこで「善意の第三者」(96条3項)として保護されないか問題となる。
ア.詐欺取消し前に利害関係に入っているから「善意の第三者」に該当しそう。
イ.としても、登記を具備していない。96条3項の第三者は登記を具備している必要があるか 問題となる。
(ア)96条3項の「第三者」は承継取得者に近く、本人と非両立の関係に立つものではないから、対抗関係に立たない。とすれば、対抗要件としての登記は必要ない。
また、被詐欺者は詐欺されたことにつき帰責性がある。とすれば、利益衡量上、96条の「第三者」には権利保護資格要件としての登記も不要であると解される。したがって、96条3項の「第三者」は、登記を具備している必要はない。
(イ)登記を具備していなくとも「第三者」として保護される。
(3)転得者は土地の所有権を有する。

2(1)妻から買い受けた者が土地の所有権を取得するには、妻が代理権を有し、効果が夫に帰属する必要がある。ところが、夫から代理権を授与されていない。しかも、761条本文は「日常の家事」に関して夫婦相互間に法定代理権を付与したものと解されるものの、土地の売却は。客観的に見て、個々の夫婦それぞれの共同生活を営むうえにおいて通常必要とされる事務とはいえないから、「日常の家事」には当たらない。したがって、妻の土地売却行為は、夫の追認(116条本文)がない限り、無権代理行為として夫に効果帰属しないのが原則である。
(2)しかし、妻から買い受けた者が一切保護されないのは取引の安全を害する。そこで、第三者は、761条本文の法定代理権を基本代理権とし、110条の表見代理の成立によって保護されないか問題となる。
ア.たしかに、広く一般的に110条の表見代理の成立を認めると、夫婦の財産的独立(夫婦別産制、762条1項)を著しく損なう。他方、第三者の信頼を一切保護しないと取引の安全を損なう。そこで、両者の調和の観点から、第三者において当該行為が当該夫婦の日常家事に関する法律行為の範囲内に属すると信じるにつき正当な理由があるときに限り、(←信頼の対象を注意!!!)110条の趣旨を類推適用して、第三者は保護される。
イ.本件では、土地の売却は極めて高額な取引。日常家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当な理由なし。
(3)所有権を取得しない。