憲法択一 統治 違憲審査権


・最高裁判所の違憲審査権は、81条によって定められていると説かれるが、一層根本的な考え方からすれば、たとえこの規定がなくても、98条の最高法規の規定又は76条もしくは99条の裁判官の憲法遵守義務の規定から、違憲審査権は十分に抽出される。

・付随的違憲審査制とは、具体的な訴訟事件を裁判する際に、当該事件の解決に必要な限度で適用法条の違憲審査を行うことをいい、個人の権利保護を主たる目的とする。

・抽象的違憲審査制は、特別に設けられた憲法裁判所が、具体的な訴訟事件とは関係なく、抽象的に違憲審査を行う方式であり、意見の法秩序を排除し、憲法を頂点とする法体系の整合性を確保することを主たる目的とする。

・付随的違憲審査制においても、第三者の憲法上の権利・利益侵害を理由に違憲主張をすることが許される場合がある。!!←第三者の憲法上の権利・利益が現実に侵害されている際に、当該侵害の主張を当事者にさせることが適切と認められる場合。

・81条が憲法6章「司法」のなかに規定されていることから考えると、違憲審査制が行使される場合は司法権が行使される場合に限定されることになる。→付随的審査制を定めている。

・抽象的違憲審査の権限を認めるならば、何らかの手続規定を憲法上設けておくべきであるにもかかわらず、現行法上何ら手続き的規定がないことにかんがみると、抽象的違憲審査制を採用したわけではないといえる。

・抽象的違憲審査制を認めると、違憲判決の効力は、一般的効力を有すると解さざるを得なくなるので、裁判所による法律の改廃が可能となる。そうすると、消極的立法を認めることになって41条に抵触するおそれがあるので、付随的審査制と解すべきとの結論が導かれる。

・最高裁判所は傍論で憲法判断を行ったことがある。

・81条は「最高裁判所」と規定しており、下級裁判所が違憲審査権を有するかどうかは明らかではない。しかし、違憲審査権を司法権の権能の一環と捉えるならば、下級裁判所においても違憲審査権を行使することができると解せる。

・内閣の補助機関として現行法の合憲性について内閣の諮問に応じて意見を述べたり、内閣提出の法律案に対して閣議に付される前にその合憲性を審査することを目的とする機関を設立したとしても、最高裁判所を拘束するものでない限り、最高裁判所を憲法適合性を判断する「終審」裁判所であると規定した81条に反しない。

・法律等の憲法適合性が問題となる場合でも以前に大法廷で合憲と判断したのと同じ意見であれば、小法廷でも判断できる。

・高等裁判所が上告審としてした裁判についても憲法違反を理由とする場合は、最高裁判所への上訴が許されなければならない=特別上告(民事訴訟法327条1項)

・憲法優位説は、条約が憲法に優位すると解すると、内容的に憲法に反する条約が締結された場合には、条約によって憲法が改正されることになり、硬性憲法性を損なうと主張する。

・憲法優位説←憲法98条2項は条約及び確立した国際法規を誠実に遵守すべき義務を規定するが、これは、有効に成立した条約の国内法的効力を認めその遵守を強調するものであって、意見の条約をも遵守すべきことまでを定めたものではない。

・憲法優位説←条約の締結、承認は憲法の授権により認められた国家機関の権能であるから、そのような機関の根拠となる憲法を、条約により変更できると解することは背理である。

・条約優位説←98条1項は、法律等の国内法規との関係で憲法の最高法規制を規定しているが、条約は除かれており、しかも、98条2項では、条約が国内法として効力があることを規定している。

・憲法優位説←憲法は国際協調主義に則り、国家主権を超えた国際秩序を目指すものであるが、現段階では国家主権を超えた国際秩序は確立されていないから、現状を踏まえた憲法解釈をすべきである。

・憲法優位説+条約に対する違憲審査権を否定する見解←98条2項が「条約」の誠実遵守を強調しており、条約が外国との合意によって成立することを根拠とする。

・憲法優位説+条約に対する違憲審査権を否定する見解←条約は81条の列挙事由に挙げられいないこと、条約は国家間の合意という特質を有し、しかも政治的な内容を含むことから、条約は違憲審査の対象とはならない。

・憲法優位説+条約に対する違憲審査権を肯定する見解←条約は81条の「法律」もしくは「規則または処分」に含まれるとし、条約が違憲審査の対象となる。

・条約優位説→条約に対する違憲審査は一切認められないことになる。!!!

・「一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外」(砂川事件)→条約の違憲審査可能性を前提としている。

・条約が違憲審査の対象となる見解において、裁判所が条約を違憲としても、その条約の国内法的効力の限度での判断にすぎず、国際法的効力に及ぶものではない。←条約は国家間の合意である以上、国際法上の効力を一国の意思のみで否定することはできない。

・国会議員の立法行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかが問題であって、当該立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきであり、かりに当該立法の内容が憲法の規定に違反するおそれがあっても、その故に国会議員の立法行為が直ちに違法の評価を受ける者ではない。国会議員の立法行為は、率峰の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定しにくいような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けない。(在宅投票制度廃止事件上告審)

・国会及び国会議員の立法不作為につき、国家賠償法1条1項の適用上違法性を肯定することができない以上、国会に対して法律案の提出権を有するにとどまる内閣の法案不提出についても、国家賠償法1条1項の適用上違法性を観念する余地はない。

・立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害することが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受ける。(在外選挙権制限違憲判決)

・精神的原因による投票困難者については、その精神的原因が多種多様であり、しかもその状態は必ずしも固定的ではないし、精神的原因による投票困難者は、身体に障害がある者のように、既存の公的な制度によって投票所に行くことの困難性に結びつくような判定を受けている者ではない。少なくとも各選挙以前に、精神的原因による投票困難者に係る投票制度の拡充が国会で立法課題として取り上げられる契機があったとは認められないとして、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。

・裁判の本質は一種の処分であるということができるので、立法行為や行政行為と同じく司法行為も最高裁判所の違憲審査権に服する。!!