民法818条 親権者

民法818条 親権者


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(親権者)
第八百十八条  成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2  子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3  親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う

・親権とは、父母の養育者としての地位・職分から出てくる権利義務の総称。

・親権の内容として、
子の監護教育(身上監護権)
子の財産管理(財産管理権)
経済的扶養

・父母の一方が死亡し、又は失踪宣告を受けその他親権を行使できなくなったときは、他方が単独で親権者となる。

・非嫡出子の親権は母だけが行う。

・未成年者が養子になると、実父母の親権を脱して養親の親権に服する(818条2項)
養親にも共同親権の原則(818条3項)が妥当する。

・養父母双方が死亡したときは、実親の親権は回復せず、後見が開始する!!!!!

・養父母双方と離縁すれば、死亡と異なり、実父母の親権が回復する!!!!

・行為能力者でなければ親権者になれない!
←親権は子の身分上及び財産上の広い権限を含むため
→被保佐人の親権能力を否定。

・親が未成年者のときは、未成年者の親権者又は未成年後見人が親権をおこなう(833条、867条)。

・親が成年後見人のときは、後見人が選任される(838条2号)

・親権は父母の婚姻中は父母が共同して行う
=夫婦の協議や家庭裁判所の許可によっても一方の者を親権者とすることはできない。

・夫婦の一方が単独名義で法律行為を行う場合でも、他方の同意があれば共同親権の原則に反しない。

・母の婚姻中その子が母の夫から認知を受け、認知準正(789条)が生じた場合にも、親権共同行使の原則が適用される!

・父が認知した子は、その父母が婚姻することにより嫡出子の身分を取得する(婚姻準正789条1項)が、それによって父が当然に親権を得るわけではない!!!!!!

・共同親権を有する父母の婚姻が破綻して別居状態にあるときは、家庭裁判所は離婚後の子の監護に関する場合と同様、子と同居していない親権者とことの面接交渉について相当な処分を命じることができる!
+判例(H12.5.1)
理由
 抗告代理人樋口明男、同大脇久和、同太田吉彦の抗告理由について
 父母の婚姻中は、父母が共同して親権を行い、親権者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負うものであり(民法八一八条三項、八二〇条)、婚姻関係が破綻して父母が別居状態にある場合であっても、子と同居していない親が子と面接交渉することは、子の監護の一内容であるということができる。そして、【要旨】別居状態にある父母の間で右面接交渉につき協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、民法七六六条を類推適用し、家事審判法九条一項乙類四号により、右面接交渉について相当な処分を命ずることができると解するのが相当である。そうすると、原審の判断は、右と同旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋一友 裁判官 大出峻郎 裁判官 町田顯)

・幼児引渡請求を認める判決は憲法13条の個人の尊厳を侵害するとはいえない。
判例(S38.9.17)
理由
 上告代理人原田勇、同窪田・、同細田貞夫、同桂川達郎、同鈴木巖の上告理由第一点(一)について。
 原判決の引用する一審判決が、Aと被告(上告人)ら夫婦の間には、右Aの法定代理人である原告(被上告人)の代諾のもとに養子縁組の話がまとまつた上、原被告間に被告がAを引取り養育する旨の合意成立し、之に基づき被告はAを引取り養育しているのであつて、Aは被告の事実上の養子である旨の被告の主張は認められない旨認定したことは、挙示の証拠関係からこれを肯認し得るところである。原判決に所論の違法は存せず、所論は、ひつきよう、原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採るを得ない。
 同点(二)について。
 原判決並びにこれに引用する一審判決の所論判示は、その挙示する証拠関係、事実関係からこれを肯認し得るところである。所論は、ひつきよう、原審の認定にそわない事実を前提として、原判決を非難するに帰し、原判決に所論の違法は存せず、論旨は採るを得ない。
 同第二点(一)乃至(三)について。
 しかし、本件請求は、被上告人が右Aに対する親権を行使するにつき、これを妨害することの排除を、上告人に対し求めるものであつて、本件請求を認容する判決によつて、被上告人の親権行使に対する妨害が排除せられるとしても、右Aに対し被上告人の支配下に入ることを強制し得るものではなく、これは右Aが自ら居所を定める意思能力を有すると否とに関係のない事項であつて、憲法一三条の個人の尊重とも何ら関係のないものである。また原判決は右判決の強制執行の方法として民訴七三〇条の動産引渡請求権の執行方法によるべき旨を判示しているわけではなく、そのような強制執行があつたわけでもない。所論は、いずれもその前提を欠き採るを得ない。
 同第三点について。
 原審は所論証人Bの尋問は実施しているのであつてこの点の主張は前提を欠くものであり(同証人に対する一審の訴訟手続違背の主張は、上告適法の理由とならない。)、証人Aについては当事者よりその証拠調申請がないのであるから、原審がこれが取調べをなさなかつたことは当然である。また上告人夫婦(上告人C、証人D)については、当事者の申出た証拠方法については、それが唯一の証拠方法である場合を除き、審理の経過から見て必要がないと認めるときは、その取調べを要しないものであるところ(最高裁判所昭和二四年(オ)第九三号、同二七年一二月二五日第一小法廷判決、民集六巻一二号一二四〇頁参照)、本件記録によれば、右両名については一審において既に同一立証事項について証拠調が実施され、右口頭弁論の結果は原審において陳述されており、原審における右両名の承拠調申請は唯一の証拠方法ではないことが明らかであるから、原審が右両名の証拠調をしなかつたとしても、原審の措置に何らの違法は存しない。原判決に所論の違法は存せず、論旨はすべて採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 河村又介 裁判官 石坂修一)

・人身保護法による幼児引渡請求が認められるためには、拘束者の監護のもとにおかれるよりも、請求者の監護のもとにおかれることの方が幼児の幸福に適することが明白であることを要する。
+判例(H6.4.26)
理由
  上告代理人高田良爾の上告理由について
 一 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
 1 上告人(拘束者)と被上告人(請求者)とは、昭和五六年一二月二五日に婚姻し、同人らの間には、同五九年一二月二六日被拘束者Aが、同六二年二月二六日被拘束者Bがそれぞれ出生した。被上告人は、昭和六二年三月七日にくも膜下出血で倒れ、病院を退院後、翌六三年三月中ごろ自宅に戻ったが、右疾病により身体障害者障害程度等級表上二級に相当する右上下肢不全麻ひ及び失語症の障害が残った。被上告人は、上告人が家事等について協力してくれないことに不満を持ち、次第に上告人との仲が円満を欠くようになり、平成五年三月三一日、被拘束者らを連れて、枚方市の両親宅(被上告人肩書地)に帰った。
 ところが、上告人は、平成五年一一月二七日、被拘束者らが通学する小学校付近で、登校してきた同人らを車に同乗させ、大阪市西成区の上告人宅(上告人肩書地)に連れて行き、以後、同人らと生活している。
 2 上告人は、歯科技工士を職業とし、自宅内で仕事をすることが可能であるところ、上告人宅の近くに理髪店を営む義父と実母夫婦が居住しているが、被拘束者らの日常生活の面倒を実母にみてもらっている。被拘束者らは、上告人宅に移った後、近くの小学校に通うようになったが、普通の生活を送っている。
 3 被上告人は、いずれも小学校の教諭を定年退職した両親宅に居住し、身体障害者として年金を受給しており、また、両親の援助協力を受けることが将来とも可能であるほか、付近に居住する被上告人の実弟夫婦の協力も得られる。右両親宅は、その居住空間も広く、被上告人の入院期間中に被拘束者らが引き取られていたところでもあり、同人らにとってなじみのあるところである。同人らは気管支ぜん息にかかっているが、右被上告人の両親宅に移ってからはその発作が軽減し、病状が改善された。
 4 上告人、被上告人とも、被拘束者らに対する愛情に欠けるところはない。
 二 原審は、右事実関係の下において、(一)被拘束者らは被上告人の両親宅に移ってから地元の小学校に通学し、教育上十分に配慮の行き届いた安定した生活を送っていたところ、上告人宅に移るとこれらがすべて失われること、(二)被拘束者らの気管支ぜん息が被上告人の両親宅への転地により改善されたが、上告人宅のある地域は、環境的には被拘束者らの気管支ぜん息を悪化させるおそれがあること、(三)被拘束者らは幼女であって母親である被上告人の監護を欠くことは適当でないことを考慮すると、被拘束者らが上告人の監護の下に置かれるよりも被上告人の監護の下に置かれる方がその幸福に適すること、すなわち、被拘束者が上告人の監護の下に置かれる方が被上告人の監護の下に置かれるよりもその幸福に反することが明白であるとし、上告人による被拘束者らの監護・拘束は、人身保護規則四条にいう権限なしにされた違法なものに当たるとの判断に立って、被上告人の本件人身保護請求を認容した。

 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 夫婦の一方(請求者)が他方(拘束者)に対し、人身保護法に基づき、共同親権に服する幼児の引渡しを請求した場合において、拘束者による幼児に対する監護・拘束が権限なしにされていることが顕著である(人身保護規則四条)ということができるためには、右幼児が拘束者の監護の下に置かれるよりも、請求者の監護の下に置かれることが子の幸福に適することが明白であること、いいかえれば、拘束者が幼児を監護することが、請求者による監護に比して子の幸福に反することが明白であることを要すると解される(最高裁平成五年(オ)第六〇九号同年一〇月一九日第三小法廷判決・民集四七巻八号五〇九九頁)。そして、請求者であると拘束者であるとを問わず、夫婦のいずれか一方による幼児に対する監護は、親権に基づくものとして、特段の事情のない限り適法であることを考えると、右の要件を満たす場合としては、拘束者に対し、家事審判規則五二条の二又は五三条に基づく幼児引渡しを命ずる仮処分又は審判が出され、その親権行使が実質上制限されているのに拘束者が右仮処分等に従わない場合がこれに当たると考えられるが、更には、また、幼児にとって、請求者の監護の下では安定した生活を送ることができるのに、拘束者の監護の下においては著しくその健康が損なわれたり、満足な義務教育を受けることができないなど、拘束者の幼児に対する処遇が親権行使という観点からみてもこれを容認することができないような例外的な場合がこれに当たるというべきである。
 これを本件についてみるのに、前記の事実関係によると、原判決が判示する前記二(二)の事情は、被拘束者らが上告人の下で監護されると、環境的にみてその気管支ぜん息を悪化させるおそれがあるというにとどまり、具体的にその健康が害されるというものではなく、また、その余の事情も被拘束者らの幸福にとって相対的な影響を持つものにすぎないところ、上告人、被上告人とも、被拘束者らに対する愛情に欠けるところはなく、被拘束者らは上告人の監護の下にあっても、学童として支障のない生活を送っているというのであるから、被拘束者らの上告人による監護が、被上告人によるそれに比してその幸福に反することが明白であるということはできない。結局、原審は、被拘束者らにとっては上告人の下で監護されるより被上告人の下で監護される方が幸福であることが明白であるとはしているものの、その内容は単に相対的な優劣を論定しているにとどまるのであって、その結果、原審の判断には、人身保護法二条、人身保護規則四条の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。
 四 以上によれば、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れず、前記確定事実を前提とする限り、被上告人の本件請求はこれを失当とすべきところ、本件については、幼児である被拘束者らの法廷への出頭を確保する必要があり、この点をも考慮すると、前記説示するところに従い、原審において改めて審理判断させるのを相当と認め、これを原審に差し戻すこととする。
 よって、人身保護規則四六条、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 大野正男 裁判官 園部逸夫 裁判官 可部恒雄 裁判官 千種秀夫 裁判官 尾崎行信)

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刑法94条 中立命令違反

刑法94条 中立命令違反

(中立命令違反)
第九十四条  外国が交戦している際に、局外中立に関する命令に違反した者は、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

・国際紛争の原因を作り、我が国の国際関係的地位を危うくすることを禁止する規定。

・本条は、現行刑法典唯一の白地刑罰法規である。
どのような行為が中立命令違反となるかは、その行為時に発令されている局外中立命令の内容次第である。

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刑法93条 私戦予備及び陰謀

刑法93条 私戦予備及び陰謀

(私戦予備及び陰謀)
第九十三条  外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、三月以上五年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。

・本条は目的犯である。

・私的に外国に武力を行使することにより、我が国の外交関係を悪化させたり、我が国の国際関係上の地位や国家の存立を危うくすることを禁止する規定。

・現行刑法は、私戦予備・陰謀だけを処罰対象としており、それが実行に移された場合(=私戦の未遂既遂)につき、規定はない。

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刑法92条 外国国章損壊等

刑法92条 外国国章損壊等

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(外国国章損壊等)
第九十二条  外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2  前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない。

・国家の外交作用を保護法益としている。

・本条は目的犯である。

・「損壊」とは
国章自体を破壊または毀損する方法によって、外国の威信尊厳表徴の効用を減失または減少せしめること

・「除去」とは
国章自体を損壊することなく場所的に移転する場合のほか
一時的のものでない遮蔽等の方法により、国章が現に所在する場所において果たしている威信尊厳表徴の効用を減失または減少せしめることをいう。

・「汚損」とは
人に嫌悪の感を抱かせる物を付着または付置して国章自体に対して嫌悪の感を抱かせる方法により、上記効用を減失または減少させることをいう。

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刑法88条 予備及び陰謀

刑法88条 予備及び陰謀

(予備及び陰謀)
第八十八条  第八十一条又は第八十二条の罪の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

・外患誘致罪の予備・陰謀は、武力を誘致するために、通謀に先立つ準備行為をし、または、謀議画策をすることにより成立する。

・外患援助罪の予備陰謀は、軍事的援助をするための準備行為をし、又は、通謀画策することにより成立する。

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刑法87条 未遂罪

刑法87条 未遂罪

(未遂罪)
第八十七条  第八十一条及び第八十二条の罪の未遂は、罰する。

・外患誘致罪(81条)、外患援助罪(82条)の未遂を処罰する。

・外患誘致罪の未遂は、通謀行為に着手したが、武力行使には至らなかった場合に成立する。

・外患援助罪の未遂は、軍事上の利益を供与しようとしたが、供与するに至らなかった場合に成立する。

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2-4 訴訟手続きの開始 訴訟開始の効果

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1.訴え提起の効果
(1)訴訟係属の発生
訴訟係属とは
特定の訴訟物が、特定の裁判所で審理判決される状態のこと。
被告が訴えの提起について了知する機会を与えられないまま、訴訟係属が発生するというのは不適切であるから、訴訟係属は被告への訴状の送達によって生じる。

(2)時効中断の効果
・訴えの提起による時効の中断の効果は訴状が提出された時点で、訴訟係属の発生を待たずに生じる(民法147条)

・訴えの提起によって時効の中断が発生する理由
①訴状の提出によって権利行使の態度が明確になるから(権利行使説)
②時効中断効は本来的には判決の確定効によって生じるところ、たまたま訴訟の進行が遅れたことにより訴訟中に時効が完成するのは相当でないことから、訴え提起時に時効中断効を発生させたものであるとする説明(権利確定説)

・時効中断の効果は訴訟物である権利について生じる

・判例は、債務不存在確認訴訟において、被告が債権の存在を主張し、請求棄却判決を求めた場合は、被告が債権の存在を主張したときに訴訟物たる債権の消滅時効は中断する。

~~訴訟物たる権利の判断の前提となる権利について時効中断の効力を認める余地があるかについて~~
・所有権に基づく土地明渡請求訴訟の提起は、所有権の取得時効を中断する効果を持つ。
+判例(S16.3.7)

・根抵当権設定登記抹消請求訴訟における被告による被担保債権の主張は、討議債権の消滅時効を中断する効力を持つ
+判例(S44.11.27)
理由
 上告代理人真田幸雄の上告理由第一点について。
 訴外合名会社田辺商店が上告人および訴外Aを共同の取引相手として文房具類の卸販売をして、昭和三二年四月二六日当時五四万六〇九二円の売掛代金債権を有し、右訴外会社と上告人との間において、右債権および以後の取引から生ずることあるべき売掛代金債権を担保するため、本件不動産につき根抵当権を設定することを合意してその登記を経た旨の原判決の事実認定は、その挙示する証拠に照らして正当として是認することができないものではない。所論のような原審における被上告人の主張の変更が自白の取消にあたるものと解することはできないし、また、論旨引用の各証拠および被上告人の弁論の趣旨に照らしても、右事実認定の過程に所論の違法を認めるに足りない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および右事実認定を非難するものであつて、採用することができない。
 同第二点について。
 所論の債権譲渡による代物弁済の事実が認められないとした原判決の認定は、証拠関係に照らして正当として是認することができ、この点の認定判示に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断および事実認定を非難するものであつて、採用することができない。
 同第三点について。
 上告人およびAが、原判決判示のころ本件売掛代金債権につき債務の承認をした旨の原判決の事実認定、判断は、その挙示する証拠に照らし、是認することができないものではない。しかして、その後二年以内に、上告人は、債務負担の事実がないことを主張して、本件根抵当権設定登記および同移転登記の各抹消登記手続を求める本訴を提起し、これに対し被上告人は第一審第一回口頭弁論期日における答弁書の陳述をもつて、請求棄却の判決を求めるとともに、確定債権五〇万円の取得およびこれに基づく右各登記の有効なことを主張したのであつて、これによつて被上告人の本件売掛代金債権についての権利行使がされたものと認められないことはない。このような場合においては、被上告人の前示答弁書に基づく主張は、裁判上の請求に準じるものとして、本件売掛代金債権につき消滅時効中断の効力を生じるものと解するのが相当である。したがつて、右債権について消滅時効が中断されているものとした原審の判断は正当であつて、これに所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎)

・訴訟物たる請求権と請求競合の関係にある請求権について、前者の請求権に係る訴訟の継続中、民法153条の催告の効果が継続する。
+判例(H10.12.17)
理由
 上告代理人長谷川靖晃、同森山博の上告理由第一、第二について
 一 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
  1 被上告人らと上告人鳥谷部喜代治は、いずれも昭和五〇年八月二日に死亡した鳥谷部運太郎の相続人である。
 上告人喜代治は、昭和四八年一〇月一日から昭和五〇年七月一六日までの間に、運太郎が株式会社弘前相互銀行青森支店の同人名義の貸金庫内に保管していた同人所有の銀行預金証書、株券等の全部をひそかに持ち出した上、順次預金の払戻しを受け、あるいは株券を売却して、払戻金や株券売却代金を着服した。
  2 運太郎及び被上告人鳥谷部清春は、昭和五〇年七月一六日、上告人喜代治が右貸金庫内の運太郎所有の預金証書、株券等の全部を持ち出していることを知り、同上告人に対し、持ち出した預金証書等を返還するよう求めたが、これを拒まれた。
 同上告人は、運太郎死亡後にされた遺産分割協議の席上でも、持ち出した財産の内容や処分の全容等を秘匿して明かさなかった。
  3 被上告人らは、昭和五八年六月六日、上告人喜代治を被告として本件訴訟を提起し、同上告人が着服した預金払戻金及び株券(弘前相互銀行の株券を除く。)の売却代金相当額につき、被上告人らの相続分に応じた損害賠償を請求するとともに、弘前相互銀行の株券につき、同上告人がいまだ売却せずに所持しているものと考えて、共有物の保管者である被上告人清春への引渡し等を請求した。
  4 被上告人らは、昭和六三年四月一四日の第一審口頭弁論期日において、前記弘前相互銀行の株券は既に上告人喜代治により売却されていることが判明したとして、引渡し等の請求を右株券の売却時における価額相当額についての被上告人らの相続分に応じた損害賠償請求に変更した。
  5 また、被上告人らは、同年一一月三〇日の第一審口頭弁論期日において、上告人喜代治による預金払戻金及び前記各株券売却代金の着服を理由とする不当利得返還請求を追加した上、平成元年二月一五日の第一審口頭弁論期日において、従前の損害賠償請求の訴えを取り下げた。
  6 その後の第一審口頭弁論期日において、上告人喜代治は、抗弁として、被上告人らが追加した不当利得返還請求については、被上告人らが貸金庫内からの預金証書等の持出事実を知った日である前記昭和五〇年七月一六日から一〇年の時効期間の経過により、右請求を追加する以前に消滅時効が完成している旨主張し、時効を援用した。

 二1 右事実関係の下においては、被上告人らが追加した不当利得返還請求は、上告人喜代治が預金払戻金及び株券売却代金を不当に着服したと主張する点において、昭和五八年六月六日に提起した本件訴訟の訴訟物である不法行為に基づく損害賠償請求とその基本的な請求原因事実を同じくする請求であり、また、同上告人が不法に着服した預金払戻金及び株券売却代金につき被上告人らの相続分に相当する金額の返還を請求する点において、前記損害賠償請求と経済的に同一の給付を目的とする関係にあるということができるから、前記損害賠償を求める訴えの提起により、本件訴訟の係属中は、右同額の着服金員相当額についての不当利得返還を求める権利行使の意思が継続的に表示されているものというべきであり、右不当利得返還請求権につき催告が継続していたものと解するのが相当である。そして、被上告人らが第一審口頭弁論期日において、右不当利得返還請求を追加したことにより、右請求権の消滅時効につき中断の効力が確定的に生じたものというべきである。
 また、前判示のとおり、上告人喜代治が持ち出した前記弘前相互銀行の株券を既に売却していたことを秘匿していたため、被上告人らは、当初、同上告人が右株券を所持しているものとして右株券の引渡し等を求める訴えを提起したものであって、その時点で右株券が売却されていることを知っていれば、訴え提起時に他の株券と同様、相続分に応じた売却代金相当額の損害賠償請求権を行使する意思を有していたことは明らかというべきである。したがって、被上告人らのした右株券の引渡し等の請求には、被上告人らの当該株券売却代金相当額の損害賠償又は不当利得の返還を求める権利行為の意思が表れていたとみることができるから、本件訴訟の係属中、右不当利得返還請求についても催告が継続していたものと解するのが相当であり、その後の口頭弁論期日において被上告人らが不当利得返還請求を追加したことにより、右請求権の消滅時効につき中断の効力が確定的に生じたものと解すべきである。
  2 原審は、被上告人清春が本訴を提起したのが昭和五八年六月六日であり、不当利得返還請求権の消滅時効は本訴の提起により、中断したというべきであるとして、上告人喜代治の消滅時効の抗弁を排斥したものであるが、右に判示したところによれば、原審の右判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 その余の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原判決を正解しないで若しくは原審の認定しない事実に基づき原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官井嶋一友 裁判官小野幹雄 裁判官遠藤光男 裁判官藤井正雄 裁判官大出峻郎)

・時効中断の効果は、訴えの却下又は訴えの取り下げがあった場合には失われる(民法149条)
理由
権利確定説からは判決により権利が確定する余地がなくなったため。
権利行使説からは、訴えの取り下げの場合には、権利行使が行われなかったとみなされる。訴え却下の場合には、不適法な訴え提起では権利行使として認められないから。
・債権者の破産手続き申し立て
+判例(S45.9.10)
理由 
 上告人らの上告理由について。 
 原審の適法に確定したところによると、本訴請求にかかる貸金債権については、その消滅時効期間の経過前に、被上告人の先代Aが、外六名と共同で上告人両名を被申立人として破産の申立をし、その審理手続上、破産原因の存在を明らかにするため、右債権の元利金の明細を記載した計算書およびその立証方法たる約束手形等を提出して、上告人らに対し権利行使の意思を表示したが、右吉助の相続人たる被上告人およびその余の選定者において、本訴を提起したのち、右破産の申立を取り下げたというのであり、右認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし首肯することができる。 
 右のような事実関係のもとにおいては、被上告人の先代が破産手続上においてした右権利行使の意思の表示は、破産の申立が申立の適法要件として申述された債権につき消滅時効の中断事由となるのと同様に、一種の裁判上の請求として、当該権利の消滅時効の進行を中断する効力を有するものというべきであり、かつ、破産の申立がのちに取り下げられた場合でも、破産手続上権利行使の意思が表示されていたことにより継続してなされていたものと見るべき催告としての効力は消滅せず、取下後六ケ月内に他の強力な中断事由に訴えることにより、消滅時効を確定的に中断することができるものと解するのを相当とする。それゆえ、破産申立の取下前にされた本訴の提起をもつて、時効完成前にされたものと認めた原審の判断は結局正当であり、論旨は、これと異なる独自の見解に立つて原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。 
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 
 (裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎) 
(3)出訴期間遵守の効果
期間遵守の効力は、訴状定期時に発生し、訴えの取下げまたは訴えの却下によって遡って失われる。
(4)その他実体法上の効果
+民法
(善意の占有者による果実の取得等)
第百八十九条  善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2  善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす
(悪意の占有者による果実の返還等)
第百九十条  悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う
2  前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
法文上は、訴え定期時に悪意が擬制されると表現されているが、占有者が本権の訴えが提起されたことについて知る機会を与えられていない段階で悪意が擬制されるのは相当ではなく、悪意が擬制されるのは本件の訴えの訴状が送達された時点と解すべきである。
2.訴訟係属の効果
二重起訴の禁止の効果を生ずる。


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2-3 訴訟手続きの開始 処分権主義

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1.処分権主義の意義
(1)訴訟物に関する処分権主義
処分権主義とは、
訴訟の開始、審判の対象・範囲、判決によらない訴訟の終了に関する決定を当事者に委ねる考え方をいう。
←訴訟物たる権利ないし法律関係は私法の適用を受けるものである結果、私法の領域で妥当する私的自治の原則は民事訴訟においても妥当するから。

(2)訴訟要件に関する処分権主義
原告の訴えには、訴えの適法性についての審判を求めるという意思も含まれており、訴え却下判決をすることは当事者の求めていない判決をすることには当たらない。

2.処分権主義の権能

+(判決事項)
第二百四十六条  裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない

・一部認容判決は処分権主義に反しない。
←全部棄却判決よりは一部認容判決を得るのを望むのが原告の意思だと考えられるから。

・処分権主義の意義と機能
原告の意思を尊重するという意義
全部敗訴した場合の危険を被告に予告し、それによって訴状送達を受けた段階で、被告がかかる危険を考慮したうえで訴訟追行の仕方を決めることを可能にするという機能。


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民法817条の11 離縁による実方との親族関係の回復

民法817条の11 離縁による実方との親族関係の回復

(離縁による実方との親族関係の回復)
第八百十七条の十一  養子と実父母及びその血族との間においては、離縁の日から特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる

・特別養子と養親及びその血族との間の親族関係は終了する(729条)。

・子は縁組前の氏に復氏し(816条)、縁組前の戸籍に復籍する。

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民法817条の10 特別養子縁組の離縁

民法817条の10 特別養子縁組の離縁

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(特別養子縁組の離縁)
第八百十七条の十  次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
一  養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
二  実父母が相当の監護をすることができること。
2  離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。
・請求権者に養親が入っていない点に注意。
・離縁は家庭裁判所の審判によって行う(×協議)
・「いずれにも該当する場合」が要求されているので、1号かつ2号である。

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