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1.補助参加の意義
+(補助参加)
第四十二条 訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。
補助参加
当事者の一方の勝訴について法律上の利害関係を有する第三者が、その当事者を補助して訴訟追行するために訴訟に参加することを補助参加という。
補助参加人
第三者のこと
被参加人
補助される当事者
・補助参加人は、自ら請求を定立するものではなく、判決の名宛人にもならない。
しかし、一定の要件のもと、当事者の意思に反してでもすることができ、また、補助参加人は自らの名と費用において訴訟追行をすることができる。
←補助参加の趣旨が、当事者の一方を勝訴させることを通じて自らの法的利益を保護する機会を補助参加人に与えることだから。
2.補助参加の要件
(1)訴訟係属
補助参加は、他人間で訴訟が係属している間に限りすることができる。
←判決確定後であっても、補助参加を申し出つつ、再審の訴えを提起することは許される(45条1項)、と定められていることとの整合性に配慮したため
再審の場合を除いては訴訟係属は必要。
+(補助参加人の訴訟行為)
第四十五条 補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができる。ただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない。
2 補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない。
3 補助参加人は、補助参加について異議があった場合においても、補助参加を許さない裁判が確定するまでの間は、訴訟行為をすることができる。
4 補助参加人の訴訟行為は、補助参加を許さない裁判が確定した場合においても、当事者が援用したときは、その効力を有する。
(2)補助参加の利益
ⅰ)補助参加の利益の意義
+(補助参加についての異議等)
第四十四条 当事者が補助参加について異議を述べたときは、裁判所は、補助参加の許否について、決定で、裁判をする。この場合においては、補助参加人は、参加の理由を疎明しなければならない。
2 前項の異議は、当事者がこれを述べないで弁論をし、又は弁論準備手続において申述をした後は、述べることができない。
3 第一項の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
補助参加は訴訟関係の複雑化、訴訟遅延という不利益を当事者に与える可能性があるため、当事者が異議を述べた場合には、参加申出人が参加をすることに十分な利益を有する場合に限り補助参加を認める趣旨。
当事者が異議を述べない場合は補助参加の利益が職権で審査されることはない。
←補助参加人は参加時の訴訟状態を承認しなければならないなど権限が限定されており、補助参加の利益を職権で調査するほどには訴訟関係の複雑化や訴訟遅延による司法資源の浪費は生じないと考えられたから。
ⅱ)補助参加の利益の判断
他人間の訴訟の結果が、参加申出人の法的利益に対して、事実上の影響を及ぼす場合に認められる。
a)訴訟の結果
①判決主文中の判断、つまり訴訟物たる権利関係の存否についての判断(訴訟物限定説)
訴訟物たる権利関係に関する判断が、実体法上、参加申出人と一方当事者との間の権利関係の論理的前提にあるといえる場合にのみ訴訟の結果についての利害関係を認める立場
②42条の訴訟の結果は、理由中の判断も含むとする見解(訴訟物非限定説)
そもそも既判力に復するわけではない第三者にとっては、判決主文中の判断も理由中の判断も事実上の影響を及ぼすにすぎず、区別する根拠はない。
①を支持する理由
一定の争点についてのみ被参加者を支援するための補助参加というものは想定されていない以上、訴訟物限定説の方が素直
訴訟物に利害関係のない者まで上訴や再審の訴えをなしうるとするのは疑問
補助参加人は、参加不許の裁判が確定するまでは訴訟行為をなし得るとされている以上、参加の利益の有無についての判断は迅速にされなければならないが、訴訟物非限定説だと争点整理終了までは参加の利益の有無について判断しえないという事態が発生する恐れがある。
+判例(H13.2.22)
理由
抗告代理人大下慶郎、同納谷廣美、同西修一郎、同石橋達成の抗告理由について
1 記録によれば、本件の経緯は次のとおりである。
(1) 本件の本案訴訟(宇都宮地方裁判所平成10年(行ウ)第14号労災不支給処分取消請求事件)は、抗告人の小山工場に勤務していたAの妻である相手方が、Aの死亡は長時間労働の過労によるもので、業務起因性があるとして、栃木労働基準監督署長に対し労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づいて遺族補償給付等の請求をしたところ、これを支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたので、その取消しを求める行政訴訟である。
(2) 抗告人は、本案訴訟においてAの死亡につき業務起因性を肯定する判断がされると、相手方から労働基準法(以下「労基法」という。)に基づく災害補償又は安全配慮義務違反による損害賠償を求める訴訟を提起された場合に自己に不利益な判断がされる可能性があり、また、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下「徴収法」という。)12条3項により次年度以降の保険料が増額される可能性があると主張し、栃木労働基準監督署長に対する補助参加を申し出たが、相手方はこれに対して異議を述べた。
2 原審は、概要次のとおり判示して、抗告人の補助参加の申出を却下すべきものとした。
(1) 本案訴訟において業務起因性を肯定する判断がされたとしても、これによって相手方の抗告人に対する安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償請求訴訟において当然に相当因果関係を肯定する判断がされるものではない上、後訴における抗告人の責任の有無、賠償額の範囲は、使用者の故意又は過失、過失相殺等の判断を経て初めて確定されるものであるから、本案訴訟における業務起因性についての判断が後訴における判断に事実上不利益な影響を及ぼす可能性があることをもって抗告人が本件訴訟の結果について法律上の利害関係を有するということはできない。
(2) 徴収法12条3項は、本案訴訟の結果により当然に保険料が増額されることを定めたものではないから、保険料増額の可能性があることをもって抗告人が本件訴訟の結果について法律上の利害関係を有するということはできない。
3 しかしながら、原審の判断のうち上記(1)は是認することができるが、(2)は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1) 労基法84条によると、労災保険法に基づいて労基法の災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合においては、使用者は補償の責を免れるものとされているから、本案訴訟において本件処分が取り消され、相手方に対して労災保険法に基づく遺族補償給付等を支給する旨の処分がされた場合には、使用者である抗告人は、労基法に基づく遺族補償給付等の支払義務を免れることになる。そうすると、本案訴訟において被参加人となる栃木労働基準監督署長が敗訴したとしても、抗告人が相手方から労基法に基づく災害補償請求訴訟を提起されて敗訴する可能性はないから、この点に関して抗告人の補助参加の利益を肯定することはできない。また、本案訴訟における業務起因性についての判断は、判決理由中の判断であって、労災保険法に基づく保険給付(以下「労災保険給付」という。)の不支給決定取消訴訟と安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟とでは、審判の対象及び内容を異にするのであるから、抗告人が本案訴訟の結果について法律上の利害関係を有するということはできない。原決定中、抗告人の上記主張を排斥した部分は、これと同旨をいうものとして、是認することができる。この点に関する論旨は採用することができない。
(2) 徴収法12条3項によると、同項各号所定の一定規模以上の事業については、当該事業の基準日以前3年間における「業務災害に係る保険料の額に第1種調整率を乗じて得た額」に対する「業務災害に関する保険給付の額に業務災害に関する特別支給金の額を加えた額から労災保険法16条の6第1項2号に規定する遺族補償一時金及び特定疾病にかかった者に係る給付金等を減じた額」の割合が100分の85を超え又は100分の75以下となる場合には、労災保険率を一定範囲内で引き上げ又は引き下げるものとされている。そうすると、徴収法12条3項各号所定の一定規模以上の事業においては、労災保険給付の不支給決定の取消判決が確定すると、行政事件訴訟法33条の定める取消判決の拘束力により労災保険給付の支給決定がされて保険給付が行われ、次々年度以降の保険料が増額される可能性があるから、当該事業の事業主は、労働基準監督署長の敗訴を防ぐことに法律上の利害関係を有し、これを補助するために労災保険給付の不支給決定の取消訴訟に参加をすることが許されると解するのが相当である。したがって、抗告人の小山工場(小山工場につき徴収法9条による継続事業の一括の認可がされている場合には、当該認可に係る指定事業)が徴収法12条3項各号所定の一定規模以上の事業に該当する場合には、本件処分が取り消されると、次々年度以降の保険料が増額される可能性があるから、抗告人は、栃木労働基準監督署長を補助するために本案訴訟に参加することが許されるというべきである。原決定中、これと異なる見解に立って抗告人の補助参加の利益を否定した部分には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるというべきである。論旨はこの趣旨をいう限度で理由がある。
4 以上の次第で、原決定は破棄を免れず、本件については、抗告人の小山工場(小山工場につき徴収法9条による継続事業の一括の認可がされている場合には、当該認可に係る指定事業)が徴収法12条3項各号所定の一定規模以上の事業に該当するかどうかにつき更に審理を尽くす必要があるから、これを原審に差し戻すこととする。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 深澤武久 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 大出峻郎 裁判官 町田顯)
b)参加人の法的利益
他人間の訴訟の結果が事実上の影響を与える対象は、参加申出人の法的利益でなければならない。
法的利益は、財産法上のものに限らず、身分法条のものでも公法上刑事法条のものでもよい。
c)事実上の影響を及ぼす場合
他人間の訴訟の結果が参加人の法的地位に対して及ぼす影響は、法律上のものである必要はなく、事実上のもので足りる。
=既判力が直接補助参加人に及ぶことまでは必要なく、当事者間の判決の主文における判断または理由中の判断が(訴訟物限定説では主文における判断に限る)、補助参加人の法的地位の論理的前提となっている結果、被参加人が敗訴すれば、参加人に対する義務履行の請求がなされるであろうことが予想される、あるいは、被参加人と相手方との間になされた判決が、補助参加人を当事者とする後訴において参考にすることが予想される、という程度で足りる。
3.補助参加の手続
(1)補助参加の申出
+(補助参加の申出)
第四十三条 補助参加の申出は、参加の趣旨及び理由を明らかにして、補助参加により訴訟行為をすべき裁判所にしなければならない。
2 補助参加の申出は、補助参加人としてすることができる訴訟行為とともにすることができる。
・参加申出はいつでも取り下げることができるといわれている。
①参加の申出は遡及的になかったものになるという理解
→参加的効力は当然には発生しないことになるため、取下げには、参加的効力の発生を期待していた被参加人の同意が必要であると解する
or
訴訟告知がなされたのと同視し得るため、参加的効力はなお発生することより、被参加人の同意は不要。
②遡及的に参加申出がなかったことになるわけではなく、ただ、以後参加人として訴訟行為をし、訴訟書類の送達を受ける権利を放棄したに過ぎないとする理解
→参加的効力は当然には消滅しないのであるから、申出の取下げに被参加人の同意は必要ない。
(2)補助参加の許否
+(補助参加についての異議等)
第四十四条 当事者が補助参加について異議を述べたときは、裁判所は、補助参加の許否について、決定で、裁判をする。この場合においては、補助参加人は、参加の理由を疎明しなければならない。
2 前項の異議は、当事者がこれを述べないで弁論をし、又は弁論準備手続において申述をした後は、述べることができない。
3 第一項の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
4.補助参加人の地位
(1)請求の非定立
補助参加人は自らの固有の請求を持たない。
補助参加人は、証人となることも鑑定人となることもできる。
(2)独立的地位
+(補助参加人の訴訟行為)
第四十五条 補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができる。ただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない。
2 補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない。
3 補助参加人は、補助参加について異議があった場合においても、補助参加を許さない裁判が確定するまでの間は、訴訟行為をすることができる。
4 補助参加人の訴訟行為は、補助参加を許さない裁判が確定した場合においても、当事者が援用したときは、その効力を有する。
補助参加人は、被参加人とは独立した手続的地位を有する
・判決正本は補助参加人にも送達されるが、補助参加人の上訴期間は独自に算定すべきか?
被参加人の上訴期間経過後に補助参加人が上訴する余地を認めない。
(3)従属的地位
+(補助参加人の訴訟行為)
第四十五条 補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができる。ただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない。
2 補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない。
3 補助参加人は、補助参加について異議があった場合においても、補助参加を許さない裁判が確定するまでの間は、訴訟行為をすることができる。
4 補助参加人の訴訟行為は、補助参加を許さない裁判が確定した場合においても、当事者が援用したときは、その効力を有する。
・補助参加人の手続的地位は従属的である。
①補助参加人は、参加時に訴訟状態を承認しなければならない(45条1項ただし書き)
←参加による訴訟の遅延や混乱を最低限に抑制する趣旨
②補助参加人は、訴訟自体を処分することはできない。
←他人の請求について処分権を持たないことを反映した規律。
被参加人に不利であるからなしえないという面も。
③補助参加人は、被参加人の行為と抵触する行為をすることはできない。
←参加人の訴訟行為と被参加人の訴訟行為が抵触する場合には、被参加人の訴訟行為を優先させる趣旨。
なお、被参加人が相手方の主張を争わない場合、参加人はこの主張を争うことができる!!!
←争わないというのみでは被参加人の行為と抵触するとはいえないから!!!!
④補助参加人は被参加人に帰属する形成権を行使できない。
←被参加人に帰属する権利を行使するか否かは、被参加人に委ねられるべきだから。
⑤補助参加人につき訴訟手続の中止または中断事由が生じても訴訟手続は停止しない。
・補助参加人による自白の取扱い
補助参加人の自白は、被参加人に不利な訴訟行為として、そもそも効力を生じないとする見解もある。
←被参加人に不利に働く行為をするのは補助参加の趣旨に反する
いったん自白として効力が生じた後に、被参加人の抵触行為によって、その効力が失われるとすれば相手方の信頼が害される。
⇔
補助参加人は一切の訴訟行為をすることができるとする45条1項からは、裁判上の自白についてのみ他の訴訟行為と異なる取扱いをすることは説明しにくい
補助参加人が抗弁を提出する場合、原告の主張する事実を一定の限度で認めないと、主張の説得力を十分に維持しえない恐れが生じることもある
被参加人による撤回があり得るということが明らかであるかぎりは、補助参加人による自白を認めたとしても相手方の信頼が過度に害されるとはいえない。
5.参加的効力
(1)参加的効力の意義
+(補助参加人に対する裁判の効力)
第四十六条 補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一 前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二 前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。
・参加的効力
被参加人が敗訴した後、被参加人と補助参加人との間で訴訟となった場合、敗訴の原因となった認定について補助参加人はもはや争えない。
衡平上の要件であるため、当事者による援用がなければ、参加的効力は顧慮されない(⇔既判力は職権調査事項)。
+判例(S45.10.22)
理由
上告代理人土田吉清の上告理由一ないし四、八および九について。
まず、民訴法七〇条の定める判決の補助参加人に対する効力の性質およびその効力の及ぶ客観的範囲について考えるに、この効力は、いわゆる既判力ではなく、それとは異なる特殊な効力、すなわち、判決の確定後補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力であつて、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものと解するのが相当である。けだし、補助参加の制度は、他人間に係属する訴訟の結果について利害関係を有する第三者、すなわち、補助参加人が、その訴訟の当事者の一方、すなわち、被参加人を勝訴させることにより自己の利益を守るため、被参加人に協力して訴訟を追行することを認めた制度であるから、補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し、または、これに協力しえたにもかかわらず、被参加人が敗訴の確定判決を受けるに至つたときには、その敗訴の責任はあらゆる点で補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうというべきであるし、また、民訴法七〇条が判決の補助参加人に対する効力につき種々の制約を付しており、同法七八条が単に訴訟告知を受けたにすぎない者についても右と同一の効力の発生を認めていることからすれば、民訴法七〇条は補助参加人につき既判力とは異なる特殊な効力の生じることを定めたものと解するのが合理的であるからである。
そこで、本件についてみるに、原審が適法に確定したところによれば、訴外兵庫建設株式会社(旧商号兵庫県住宅建設株式会社)が、本件建物は同会社の所有であると主張して、被上告人株式会社テレビ西日本(以下被上告会社という。)に対し、その建物の一部である本件貸室の明渡などを請求した別件訴訟(大阪地裁昭和三四年(ワ)第五八三号、大阪高裁昭和三八年(ネ)第五三二号、同第六七七号、最高裁昭和三九年(オ)第一二〇九号)において、上告人は、その訴訟が第一審に係属中に、被上告会社側に補助参加し、以来終始、本件建物の所有権は、上告人が被上告会社に本件貸室を賃貸した昭和三三年五月三一日当時から、訴外兵庫建設株式会社にではなく、上告人に属していたと主張して、右請求を争う被上告会社の訴訟の追行に協力したが、それにもかかわらず、被上告会社は、その訴訟の結果、本件建物の所有権は、右賃貸当時から、訴外兵庫建設株式会社に属し、上告人には属していなかつたとの理由のもとに、全部敗訴の確定判決を受けるに至つたというのである。
してみれば、右別件訴訟の確定判決の効力は、その訴訟の被参加人たる被上告会社と補助参加人たる上告人との間においては、その判決の理由中でなされた判断である本件建物の所有権が右賃貸当時上告人には属していなかつたとの判断にも及ぶものというべきであり、したがつて、上告人は、右判決の効力により、本訴においても、被上告会社に対し、本件建物の所有権が右賃貸当時上告人に属していたと主張することは許されないものと解すべきである。
以上と同旨に出た原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。なお、民訴法七〇条所定の判決の補助参加人に対する効力に関する所論引用の大審院判例(昭和一四年(オ)第一二〇五号・同一五年七月二六日判決・民集一九巻一三九五頁)は、前記判示の限度において、変更すべきものである。したがつて、論旨は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。
同五ないし七について。
原判決に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、上告人が原審において主張しなかつた事項について原判決を非難し、または、独自の見解に立つて原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三)
(2)参加的効力の要件
参加的効力を生じさせるためには補助参加人が十分に争う機会を保障されたということが必要である。
←敗訴の結果に補助参加人も加担したというのが、参加的効力の根拠だから。
具体的に
+(補助参加人に対する裁判の効力)
第四十六条 補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一 前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二 前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。
(3)参加的効力の客観的範囲・主体的範囲
・参加的効力は、訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけでなく、判決理由中の判断にも生じる。
しかし、訴訟告知に基づく参加的効力についての判断ではあるが、
あらゆる理由中の判断について生じるのではなく、判決の主文を導き出すために必要な主要事実にかかる法律判断についてのみ生じるとする。
+判例(H14.1.22)
理由
上告代理人洪性模、同許功、同安由美の上告理由について
1 本件訴訟は、被上告人が上告人に対し、家具等の商品(以下「本件商品」という。)の売買代金の支払を求めるものである。原審の確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。
(1) 上告人は、カラオケボックス(以下「本件店舗」という。)建築のため、平成六年一〇月、白柳美佐男との間で店舗新築工事請負契約を締結した。
(2) 被上告人は、白柳に対し、本件商品を含む家具等の商品を販売したとして、平成七年九月一八日、和歌山地方裁判所にその残代金の支払を求める訴えを提起した(同裁判所平成七年(ワ)第四六六号。以下、同訴訟を「前訴」という。)。
前訴において、白柳は、被上告人が本件店舗に納入した本件商品を含む商品について、施主である上告人が被上告人から買い受けたものであると主張したことから、被上告人は、上告人に対し、平成八年一月二七日送達の訴訟告知書により訴訟告知をした。しかし、上告人は、前訴に補助参加しなかった。
(3) 前訴につき、本件商品に係る代金請求部分について、被上告人の請求を棄却する旨の判決が言い渡され確定したが、その理由中に、本件商品は上告人が買い受けたことが認められる旨の記載がある。
2 以上の事実関係の下において、原審は、旧民訴法七八条、七〇条所定の訴訟告知による判決の効力が被告知人である上告人に及ぶことになり、上告人は、本訴において、被上告人に対し、前訴の判決の理由中の判断と異なり、本件商品を買い受けていないと主張することは許されないとして、被上告人の請求を認容した。
3 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1) 旧民訴法七八条、七〇条の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは、訴訟告知を受けた者が同法六四条にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られるところ、ここにいう法律上の利害関係を有するとは、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される(最高裁平成一二年(許)第一七号同一三年一月三〇日第一小法廷決定・民集五五巻一号三〇頁参照)。
また、旧民訴法七〇条所定の効力は、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものであるが(最高裁昭和四五年(オ)第一六六号同年一〇月二二日第一小法廷判決・民集二四巻一一号一五八三頁参照)、この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは、判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって、これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。けだし、ここでいう判決の理由とは、判決の主文に掲げる結論を導き出した判断過程を明らかにする部分をいい、これは主要事実に係る認定と法律判断などをもって必要にして十分なものと解されるからである。そして、その他、旧民訴法七〇条所定の効力が、判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない。
(2) これを本件についてみるに、前訴における被上告人の白柳に対する本件商品売買代金請求訴訟の結果によって、上告人の被上告人に対する本件商品の売買代金支払義務の有無が決せられる関係にあるものではなく、前訴の判決は上告人の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすものではないから、上告人は、前訴の訴訟の結果につき法律上の利害関係を有していたとはいえない。したがって、上告人が前訴の訴訟告知を受けたからといって上告人に前訴の判決の効力が及ぶものではない。しかも、前訴の判決理由中、白柳が本件商品を買い受けたものとは認められない旨の記載は主要事実に係る認定に当たるが、上告人が本件商品を買い受けたことが認められる旨の記載は、前訴判決の主文を導き出すために必要な判断ではない傍論において示された事実の認定にすぎないものであるから、同記載をもって、本訴において、上告人は、被上告人に対し、本件商品の買主が上告人ではないと主張することが許されないと解すべき理由もない。
4 以上によれば、前訴の判決の理由中に本件商品は上告人が被上告人から買い受けたことが認められる旨の記載があるからといって、前訴の判決の効力が上告人に及び、上告人が本件商品の買主であるとして売買代金の支払を認めるべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、上告人の本件商品の売買代金支払債務の有無について更に審理を遂げさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道)
・参加的効力は、補助参加人と被参加人との間にのみ生じる。
6.共同訴訟的補助参加
(1)共同訴訟的補助参加の意義
40条を一定程度類推適用することで補助参加人の権限を強化する共同訴訟的補助参加
解釈によって認められている。
←参加的効力の発生を待たずとも判決効が拡張するような場合にまで参加人に従属を強いるならば、参加人は、十分に手続権を行使しえないまま、自らの利益ないし権利を奪われる恐れがある。
+判例(S45.1.22)
理由
上告代理人中村信逸の上告理由第一点について。
およそ、民訴法七一条に基づく独立当事者参加の申出は、常に原被告双方を相手方としなければならず、当事者の一方のみを相手方とする参加の申出は、不適法であることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和三九年(オ)第七九七号同四二年九月二七日大法廷判決民集二一巻七号一九二五頁参照)。また、独立当事者参加の申出は、参加人が当該訴訟において裁判を受けるべき請求を提出しなければならず、単に当事者一方の請求に対して訴却下または請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されないものと解するを相当とする。けだし、この種の参加の申出は、訴の提起たるの実質を有し、またもし参加人が訴却下または請求棄却の判決を求めるのみであるとすれば、当事者と参加人との間に審理裁判の対象となるべき請求が存しないこととなるからである。本件についてこれをみるに、被上告人Aは、第一審において、上告人と被上告人株式会社関口本店(以下被上告会社という)との間の訴訟につき民訴法七一条に基づく独立当事者参加の申出をしたが、上告人の被上告会社に対する訴につき、請求棄却および訴却下の判決を求めただけであつて、被上告人Aは被参加訴訟の当事者である上告人および被上告会社に対し何らの請求をもしなかつたことが、記録上明らかである。したがつて、被上告人Aの本件独立当事者参加の申出は不適法であるといわなければならない。これと見解を異にし、同被上告人の右参加の申出を適法とした原審および第一審の判断は違法であり、原判決中同被上告人に関する部分は、他の上告理由について判断するまでもなく破棄を免れず、第一審判決中同部分を取り消し、同被上告人の本件独立当事者参加の申出を却下することとする。
もつとも、被上告人Aは、予備的に民訴法六四条により被上告会社のために補助参加の申出をしていることは、記録上明らかであるところ、上告人の被上告会社に対する主位的請求および予備的請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有するから、右補助参加はいわゆる共同訴訟的補助参加であり、この種の補助参加については、同法六九条二項の適用はなく、同法六二条の準用をみるべきものである(最高裁昭和三七年(オ)一一二八号同四〇年六月二四日第一小法廷判決民集一九巻四号一〇〇一頁参照)。したがつて、原審が被上告人Aの訴訟行為につき、同法六九条二項を適用することなく、同法六二条の規定により被上告会社の利益に効力を生ずるものとして審理裁判したことは、上告人と被上告会社との間の訴訟手続に関する限り結局相当であり、論旨は、被上告会社に対する関係においては理由がないものといわなければならない。
上告代理人鈴木八郎の上告理由第一点ないし第五点ならびに同中村信逸の上告理由第二点および第三点について。
上告人の被上告会社に対する本件主位的請求および予備的請求のうち、清算人Cを解任し、Aを清算人に選任する旨の決議に関する部分については、原審において第一審判決を取り消し、これを大阪地方裁判所に差し戻す旨の判決をしている。控訴審において、第一審判決を取り消し、事件を第一審に差し戻す旨の判決があつた場合に、差戻を受けた第一審は、裁判所法四条の定めるところにより、右判決の取消の理由となつた法律上および事実上の判断に拘束されるのであるから(最高裁昭和二八年(オ)第八一七号同三〇年九月二日第二小法廷判決民集九巻一〇号一一九七頁参照)、同条所定の拘束力が生ずる取消の理由となつた控訴審判決の判断に不服のある控訴人は、右判決に対して上告をする利益を有し右判断の違法をいうことができるのであるが、控訴人において右判決の理由に不服があつても、これが取消の理由に対するものでない場合には、右控訴人は右判決に対し上告の利益を有しないものと解するのを相当とする。論旨は、原判決の違法をいうが、いずれも、原審が第一審判決を取り消す理由とした同条所定の拘束力のある判断の違法をいうものではないから、上告人の被上告会社に対する請求中清算人Cを解任し、Aを清算人に選任する旨の決議に関する部分については、上告適法の理由とすることができない。
次に、論旨を、上告人の被上告会社に対する請求のうち、Bを監査役に選任する旨の決議に関する部分について審按する。およそ、社員として有する権利の行使の停止またはかかる権利行使許容の仮処分決定においては、裁判所が右仮処分によりみだりに会社の経営権争奪に介入することがないよう厳に戒しむべきものであることはいうまでもなく、右仮処分の申請はその必要最少限度においてのみ認容せらるべきものといわなければならない。そして、この種の仮処分決定は、右の趣旨に照らし、その決定中に明示された部分に限りその効力を生ずるものというべきである。したがつて、原審の認定した本件仮処分決定中いわゆる社員権行使許容を命じた部分は、右仮処分申請人である被上告人Aに対し、D名義の同決定判示の株式一五〇〇株についてのみ、株主としての権利行使を許しただけであつて、定款により株主総会における議決権行使の代理資格を株主に制限している被上告会社において、被上告人Aに株主Eの本件株主総会における議決権を代理行使する資格をも与えたものと解することはできないものといわなければならない。してみれば、右仮処分決定が右の効力をも有するものとし、被上告人AのしたEの議決権の代理行使を有効とした原審の判断は違法である。また、株式を相続により準共有するに至つた共同相続人は、商法二〇三条二項の定めるところに従い、当該株式につき株主の権利を行使すべき者一人を定めて会社に通知すべきところ、原審は、亡F名義の株式二〇〇〇株につき、その共同相続人から会社に対し、右の通知をしたかどうか、また何人が株主の権利を行使すべき者として定められたかについて、何ら判示するところがない。そして、被上告人AのしたEの議決権の代理行使を無効とする以上は、右通知の存否、内容のいかんによつては、本件株主総会においてBを監査役に選任する旨の議決は、成立しなかつたことになる。昭和三八年五月六日同人につき監査役選任の登記がされたことは原審の認定するところであり、したがつて、上告人の被上告会社に対する右決議の効力がないことの確定を求める本件主位的請求をたやすく排斥した原判決には、審理不尽、理由不備の違法があるものといわなければならない。論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れず、原判決と同旨の第一審判決も取り消すべく、第一審において更に審理を尽くさせるのを相当とし、右主位的請求を破棄差戻すべきものとする以上予備的請求の当否につき判断をする必要をみない場合もありうべきであるから、右決議に関する部分につき主位的請求に併せて予備的請求も大阪地方裁判所に差し戻すべきものとする。
よつて、民訴法四〇八条、四〇七条一項、三八六条、三八九条、三九六条、三八四条、九四条、九五条、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岩田誠 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 大隅健一郎)
(2)共同訴訟的補助参加の要件
・判決効が参加申出人に拡張する場合であること。
共同訴訟的補助参加の場合でも補助参加の利益は必要
・補助参加人は、補助参加の申出をする際に共同訴訟的補助参加であることを明示する必要はない。
裁判所は共同訴訟的補助参加の要件を満たす限り、そのように取り扱わなければならない。
・共同訴訟参加が可能である場合に補助参加が申し出られた場合には単純な補助参加として扱われる。
←共同訴訟的補助参加は明文規定のある参加形態では不十分な場合にのみ補充的に認められるという解釈
(3)共同訴訟的補助参加人の地位
・共同訴訟的補助参加人は、被参加人の訴訟行為と積極的に抵触する訴訟行為をなしうる(45条2項は適用されない)。
・参加人が、被参加人に上訴期間が経過した後も、自らの上訴期間内であれば上訴し得るかについては争いがある。
・参加人に中断または中止事由が生じた場合の取り扱いについても争いがある。
・参加人自身が、訴えの取り下げ、請求の放棄認諾、訴訟上の和解などの訴訟処分行為をなしえないことに争いはないが、
被参加人によるこれらの行為は、参加人と共に行わない限り効力を生じないといいうるかについても争いがある。
・参加人が、参加時に訴訟状態に拘束されるかという点も明らかではない。
従前の被参加人の訴訟追行が詐害的であるような場合は、詐害防止参加に委ねれば足りると考える立場も。
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