・自ら所有する山林に抵当権を設定した債務者が、不法に樹木を伐採しこれを搬出しようとする場合、抵当権者は物権的請求権を行使して当該行為を阻止することができる!!!
・Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した場合において、Aの不在期間中に、Dが甲建物を不法に占有したことにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態にあるときは、CはAのDに対する妨害排除請求権を代位行使して、Dに対して直接自己に甲建物を明け渡すよう求めることができる!
+判例(H11.11.24)
原審は、次のように判示し、被上告人の請求を認容すべきものとした。
1 本件不動産についての不動産競売手続が進行しないのは、上告人らが本件建物を占有していることにより買受けを希望する者が買受け申出をちゅうちょしたためであり、この結果、被上告人は、本件貸金債権の満足を受けることができなくなっている。したがって、被上告人には、本件貸金債権を保全するため、Bの本件建物の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使する必要があると認められる。
2 被上告人が請求することができるのは、本件建物の所有者であるBへの明渡しに限定されるものではなく、被上告人は、保全のために必要な行為として、上告人らに対し、本件建物を被上告人に明け渡すことを求めることができる。
三 抵当権は、競売手続において実現される抵当不動産の交換価値から他の債権者に優先して被担保債権の弁済を受けることを内容とする物権であり、不動産の占有を抵当権者に移すことなく設定され、抵当権者は、原則として、抵当不動産の所有者が行う抵当不動産の使用又は収益について干渉することはできない。
しかしながら、第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、これを抵当権に対する侵害と評価することを妨げるものではない!!!。そして、抵当不動産の所有者は、抵当権に対する侵害が生じないよう抵当不動産を適切に維持管理することが予定されているものということができる。したがって、右状態があるときは、抵当権の効力として、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し、その有する権利を適切に行使するなどして右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を有するというべきである。そうすると、【要旨第一】抵当権者は、右請求権を保全する必要があるときは、民法四二三条の法意に従い、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができると解するのが相当である。
なお、第三者が抵当不動産を不法占有することにより抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求として、抵当権者が右状態の排除を求めることも許されるものというべきである。
最高裁平成元年(オ)第一二〇九号同三年三月二二日第二小法廷判決・民集四五巻三号二六八頁は、以上と抵触する限度において、これを変更すべきである。
四 本件においては、本件根抵当権の被担保債権である本件貸金債権の弁済期が到来し、被上告人が本件不動産につき抵当権の実行を申し立てているところ、上告人らが占有すべき権原を有することなく本件建物を占有していることにより、本件不動産の競売手続の進行が害され、その交換価値の実現が妨げられているというのであるから、被上告人の優先弁済請求権の行使が困難となっていることも容易に推認することができる。
【要旨第二】右事実関係の下においては、被上告人は、所有者であるBに対して本件不動産の交換価値の実現を妨げ被上告人の優先弁済請求権の行使を困難とさせている状態を是正するよう求める請求権を有するから、右請求権を保全するため、Bの上告人らに対する妨害排除請求権を代位行使し、Bのために本件建物を管理することを目的として、上告人らに対し、直接被上告人に本件建物を明け渡すよう求めることができるものというべきである。
五 本件請求は、本件根抵当権の被担保債権をもって代位の原因とするが、本件根抵当権に基づいて、その交換価値の実現を阻害する上告人らの占有の排除を求めるため、所有者に代位して、上告人らに対して本件建物の明渡しを請求する趣旨を含むものと解することができるから、被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
+解説あり! ・・・ナガイヨ・・・
三 本判決について
本判決の特徴は、抵当不動産が権原なく占有されていたため競売手続において売却ができない状態となっているという本件の事案に即し、基本的に、事案の解決に必要な範囲で、法理を展開していることにある。多くの問題が今後の研究にゆだねられている。本稿では立ち入って論ずる余裕がないが、本判決には、奥田昌道裁判官の詳細な補足意見が付されており、法廷意見を理解する上で参考となると思われる(なお、本判決については、金法一五六六号一八頁以下に特集が組まれている。以下「特集」という。)。
1 抵当不動産の使用収益に関する抵当権者の地位についての原則
本判決は、「抵当権は、競売手続において実現される抵当不動産の交換価値から他の債権者に優先して被担保債権の弁済を受けることを内容とする物権であり、不動産の占有を抵当権者に移すことなく設定され、抵当権者は、原則として、抵当不動産の所有者が行う抵当不動産の使用又は収益について干渉することはできない。」と述べる。右は、平成三年判決が議論の出発点とした法原則を、再確認したものと見られる(民法三六九条一項、民事執行法一八八条により準用される同法四六条二項等参照)。
右の原則に対する例外としては、民法三九五条ただし書の短期賃貸借の解除制度があるが、本判決は、他にも例外があることを明らかにしたものである。
2 抵当不動産の占有が抵当権の侵害となる場合
右の例外を論ずるに当たり、本判決は、まず、「第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、これを抵当権に対する侵害と評価することを妨げるものではない。」とする。
(一) 本判決が議論の対象とするのは、「不法占有」である。本件の事案の内容に照らすと、これは、抵当不動産の無権原占有を指すものであることが明らかである。この語を用いることについては、先に紹介した平成三年判決の説示との関連が考慮されたもののように見受けられる。本件においては、占有の具体的な動機、態様等のいかんは問題とされておらず、本判決の射程が、無権原占有のうち占有の動機、態様等が悪質なものに限られるとは解し難い。一方、現在は権原に基づくが競売手続における売却までにその消滅が予想される占有、権原の存在は一応認められるがその動機、態様等が悪質な占有等については、本判決は、直接には扱っていないと見るのが、素直な理解であると考えられる。フム・・・
(二) 本判決は、抵当不動産の不法占有が抵当権に対する侵害であると評価される場合があることを認め、それは、右占有により「抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるとき」であるとする。(1) 右説示は、侵害の成否が問題とされる抵当権の権利者につき不動産競売手続等において配当等が行われる蓋然性が存在することを当然の前提とするものと見られる。したがって、配当等を受ける見込みのない後順位抵当権者や、被担保債権の存在しない根抵当権の権利者等に関しては、侵害の成否を論ずる前提が欠けると解することになると思われる ヘー (奥田裁判官の補足意見は、これらの者による救済手段の濫用のおそれを考慮すべきことを指摘する。)。(2) 本判決は、前記の状態の存在が認められる例として、「競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがある」ときを挙げる。ここでいう「適正な価額」は当該不法占有が存在しなかったとした場合に競売手続において実現したであろう売却価額を、「売却価額」は競売手続における実際の売却価額を、それぞれ意味するものと解される。不動産競売の実務においては、抵当不動産が不法占有されている場合、当該占有が引渡命令等で排除可能なものであっても、評価上減額が加えられるのが一般であり、本判決においても、これらのことが、経験的基礎として考慮されたものと見られる。そして、本判決は、競売手続における不法占有による売却価額の下落について、その「おそれがある」との概括的な事情の立証で足りるとしている。これは、生ずべき売却価額の下落を具体的な金額まで含めて立証することは、一般的には困難であると見られることを考慮したものと考えられる。フムフム (3) ところで、売却価額のいかんにより当該抵当権者の受けるべき配当等の額が変動する場合には、当該不法占有により当該抵当権者に不利益が生ずると見ることに、さほど問題はないであろう。これに対し、売却価額の変動にかかわらず不動産競売手続において配当等により確実に請求債権全額の満足を受けると見られる抵当権者に関しては、いずれにせよ弁済を受けられることには違いがないとして、不利益の存否を問題とする余地がないわけではない。しかしながら、本判決は、「競売手続の進行が害され」る場合も含めて前記の状態の存否の評価を行うべきものとしており、現実の満足に遅れが生ずることも問題として採り上げる趣旨と解される。現に、本件の事案は、不法占有により競売手続が進行しなくなった場合に関するものである。
(三) 本判決は、不法占有により抵当権者に右のような事実上の不利益が生ずべき場合について、「これを抵当権に対する侵害と評価することを妨げるものではない」とする。先に見たとおり抵当権者は原則として抵当不動産の所有者が行う抵当不動産の使用又は収益について干渉することはできないが、本判決は、所有者の意思に基づかない不法占有によって生ずる不利益については、抵当権者がこれを甘受すべき根拠を見いだし難いとする趣旨と解される。もとより、本判決の説示について、抵当不動産の占有一般(抵当権に対抗し得ない使用権に基づくものも含む。)について抵当権者に対する侵害の成立を認めるものとは解し難い(前記「特集」五九頁(岡本雅弘)ほか。秦光昭「金融取引法の新しいステージ」銀法五七一号一頁は、「不法占有者ではないが抵当権者に対抗できない権利に基づく占有者」につき抵当権に対する侵害の成立を認めるもののようであるが、問題がある。民事執行法一八八条により準用される同法五九条二項参照)。また、本件の事案は、たまたま、土地建物を目的とする抵当権につき一括して競売手続が進められたところ、これらのうち建物が不法占有されていたため、結果として、手続全体の進行が停止してしまったというものであったのであり、本判決は、建物の不法占有が、当然に、土地を目的とする抵当権に対する侵害と評価されるとする趣旨とは解し難い。この点は、今後の議論にゆだねられていると見るべきであろう。ヘーー
(四) 以上の説示は、主に抵当不動産につき抵当権の実行としての競売手続が行われた場合を想定して展開されている。これは、本件の事案の内容を反映した結果であるのはもちろんであるが、抵当権の権利としての中心的な意義が、競売手続において配当等を受けることにあることからすると、自然の帰結でもあると解される。競売手続を離れた場面に関し本判決の射程がどのように及ぶかは、今後の問題として残されていると見られる(前記「特集」にも、この点に関して問題を指摘する論考が幾つか収められている。)。
3 抵当権者による抵当不動産の所有者の権利の代位行使について
(一) 本判決は、結論として右代位行使を認めるのであるが、その議論を始めるに当たり、第三者が抵当不動産を不法占有することにより抵当権に対する侵害と評価すべき状態が生じているときは、「抵当権の効力として、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し、その有する権利を適切に行使するなどして右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を有するというべきである」とする。(1) まず、右請求権の内容についてであるが、本件の事案においては、抵当権に対する侵害と評価すべき状態が現に存在しているとされる関係で、右の状態を是正するよう求めることが、その一つとして挙げられている。所有者が右の状態を是正する方法としては、不法占有者に対して所有権に基づく妨害排除請求権を行使することが考えられるが、状況に応じて他の方途もあり得ないではない。前記の説示が含みのあるものとなっているのは、このことを反映するものと見られる。フム・・ 所有者が右の状態を是正した後は、類似の状態が再度生じないように「抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める」ことが、請求権の主な内容となると見られる。右請求権は、抽象的には、「抵当権設定時よりその実行(換価)に至るまでの間、恒常的に存続する権利」(奥田裁判官の補足意見第三項)であるが、右に見たように、所有者に対して請求することのできる具体的内容は、それぞれの状況に応じて決定されるものと解される。いずれにせよ、1に見た原則に照らすと、右請求権は、専ら、抵当不動産の所有者が保存行為の実施を怠っているような場合に関するものであり、所有者がこれを行っている限りは、抵当権者が抵当不動産の所有者の行う抵当不動産の使用又は収益について干渉することを認めるものではないと解される。(2) 従来の下級審裁判例の中にも、(1)に述べたところとほぼ同内容のものと見られる請求権を肯定したものがあったが(東京地判昭52・10・20判時八八六号六八頁)、学説上は、右は抵当権設定契約当事者間の信義則上のものにとどまるとする理解が多かった(近江幸治・担保物権法(新版補正版)一六一頁ほか)。これに対し、本判決は、「抵当不動産の所有者は、抵当権に対する侵害が生じないよう抵当不動産を適切に維持管理することが予定されているものということができる。」と理由を述べた上、前記請求権は、「抵当権の効力として」認められるものであるとする。民法等に明文をもって規定されていないが物権の性質上当然のものとして認められている作為等の請求権の例としては、用益物権の設定契約に基づく設定登記手続請求権が挙げられる(大判明39・2・7民録一二輯一八〇頁、最二小判平10・12・18民集五二巻九号一九七五頁、本誌九九二号八五頁ほか)。前記請求権は、抵当権の効力として認められるものであるから、抵当権が対抗力を有するものである限り、抵当権設定契約の当事者である所有者のみならず、抵当不動産の第三取得者に対しても、右請求権は認められると見られる。(3) 抵当権者が請求権を有する反面として、抵当不動産の所有者は一定の義務を負うことになる。もっとも、これらの権利義務関係については、従来、余り立ち入った議論は行われておらず、詳細は今後の検討にゆだねられていると見られる(例えば、抵当不動産の第三取得者が右のような義務を負うことの説明として、同人がこれを物上債務として抵当権設定者から承継するというのかどうかなどの点も、問題となるであろう。前記座談会「抵当権者による明渡請求」銀法五七一号二三頁(椿寿夫・生熊長幸発言)ほか)。ヘーー
(二) 本判決は、右のような請求権の存在を前提として、「抵当権者は、右請求権を保全する必要があるときは、民法四二三条の法意に従い、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができると解するのが相当である」とする。右は、判例上、債権者代位制度の新たな転用類型を認めるものと解される。(1) 本判決は、抵当権者は前記の「請求権を保全する必要があるときは」所有者の権利を代位行使することができるとする。本件の事案は、競売手続の開始された抵当不動産が不法占有されて抵当権に対する侵害と評価すべき状態が生じていたというものであり、右の状態が是正されることが抵当権者にとって急務の課題となっていた。このような場合が、抵当権者について前記の請求権を「保全する必要があるとき」に当たることは、特に論ずるまでもないと思われる。本件のような場合以外において、いかなる事情が存在するときに抵当権者による所有者の権利の代位行使が認められるかは、今後の事例の集積によって明らかにされるべきものと思われる。(2) なお、本件の原判決は、抵当権者が被担保債権の保全のために所有者の権利を代位行使することができるとしていた。しかしながら、右原判決は、被担保債権の債務者である抵当不動産の所有者の全体的な資力状況を認定判断しておらず、代位の要件として債務者が無資力であることを挙げる従前の議論に依る限り、右の判断には問題があったと考えられる。ヘーー また、抵当権によって優先的に弁済を受ける地位にある債権者が、当該抵当権によって担保される債権の保全のために、当該抵当権の実行の妨げとなる事態の解消を求めるというのは、総債権者のために債務者の財産権につき一定の管理権を発生させるという債権者代位制度の本来の目的とは、そもそもいささか異なるものであったとも見られる(これらの点は、本件の上告理由で指摘されていた。)。加えて、原判決の用いた構成によって対処することができるのは、抵当不動産の所有者が被担保債権の債務者でもある場合に限られる。本判決は、原判決の用いた構成とは異なる構成を採用しているが、その背景には、以上のような事情が存在したものと考えられる。ちなみに、本判決の採用した構成に関しては、原判決摘示に係る当事者の主張中に基本的な要件事実は現れていると見られ、構成の変更につき弁論主義との関係で格別の問題はないと考えられる。
(三) 本判決は、本件においては、抵当権者による所有者の権利の代位行使の結果、抵当権者は、所有者のために抵当不動産を「管理することを目的として」、不法占有者に対して直接抵当権者に抵当不動産を明け渡すよう求めることができるとしている。この点は、平成三年判決では議論の対象となっていなかったところである。(1) 通常の金銭債権の代位行使に関し、代位債権者が代位行使に係る債権の弁済を受けることができるのは、早くから認められていたところである(大判昭10・3・12民集一四巻四八二頁ほか)。これは、債権者代位制度により代位債権者に認められる管理権に基づくものであり、債務者が弁済の受領を拒んだり弁済金を費消してしまったりすることを防ぐ意義があるとされる(注釈民法10・七六三頁(下森定)ほか)。また、債権者代位制度が転用される場合に関しても、借家人が家主に代位して建物の不法占拠者を排除するときには、直接借家人に明渡しを求めることができるとされている(最二小判昭29・9・24民集八巻九号一六五八頁、本誌四四号二一頁ほか)。本判決は、新たな転用類型を認めるに当たり、本件では抵当不動産の所有者の管理能力に問題があるというべきことを踏まえて、右の考え方を応用したものと見られる。もっとも、右転用の趣旨とするところは、飽くまでも、不動産競売手続等の円滑な進行を確保するということにあり、抵当権者において抵当不動産の占有を取得すること自体が目的とされているわけではないことを考慮すると、抵当不動産の所有者に十分な管理能力がある場合を含めて常に抵当権者への明渡しが認められるか否かは、今後の一箇の論点である(本件の上告理由にもこれを指摘する部分がある。なお、前記「特集」二八頁(堀龍兒)参照)。(2) 抵当不動産の明渡しを受けた抵当権者が行う占有は、所有者のために「管理することを目的として」のものであるとされる。債権者代位制度において、代位債権者と債務者との関係は、委任に準ずるものであるとされ(於保不二雄・債権総論(新版)一七三頁ほか)、代位債権者である抵当権者は、本来の権原者に抵当不動産を引き渡すまでの間、善良な管理者の注意をもってこれを管理する義務を負うと考えられる(民法六四四条参照)。ヘーー したがって、抵当不動産につき管理のための占有を開始した抵当権者は、後に当該不動産を不法に占有しようとする者があるときなどは、これを排除する義務を負うと解される。管理に伴う費用は、抵当権者が負担し、後に所有者に償還を請求することになろう(民法六五〇条参照)。(3) 抵当権に対する侵害と評価すべき状態を是正するよう求める請求権を保全することとの関係でいう限り、抵当権者が抵当不動産の明渡しを受けて不法占有者を排除することができた段階で、抵当権者が所有者の権利を代位行使することはその目的を一応達したということができる。少なくとも、抵当権者は、抵当不動産の所有者からその引渡しを求められた場合は、これに応ずる必要があると解される(民法六五一条参照)。もっとも、所有者に「抵当不動産を適切に維持又は保存する」能力が備わっていない場合に、抵当権者が所有者の意思にかかわらずなお管理のための占有を継続することができるか否か、これを肯定するのであればその根拠は何かは、今後検討すべき問題である。いずれにせよ、以上の「いわゆる管理占有」が、抵当不動産を占有するに至った抵当権者に抵当不動産の使用又は収益を行う権原を当然に認める内容のものであると解することは、困難ではないかと考えられる(抵当権者が行う「いわゆる管理占有」については、抵当権者がその名においてする抵当不動産の直接占有であるが、所有の意思をもってするものではなく、専ら所有者のために抵当不動産を維持又は保存する目的のものであって、可能な行為の範囲もこの目的に沿うものに限られると解されよう。)。(4) 抵当権者が管理のために占有する抵当不動産につき民事執行の手続が開始された場合に、執行裁判所等との間にいかなる連携関係を確保することができるかは、今後の重要な課題であると考えられる(石井眞司「競売妨害と抵当権保全判例の動き」金判一〇八一号三頁)。少なくとも、民事執行法上の保全処分や引渡命令に関し、右の抵当権者は、抵当不動産の所有者に準ずる立場にある者として、所有者と同様の規律に服するものと解される。
4 抵当権に基づく妨害排除請求権(物上請求権)について
以上のほか、本判決は、いわゆるなお書きとして、「第三者が抵当不動産を不法占有することにより抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求として、抵当権者が右状態の排除を求めることも許されるものというべきである。」と述べている。右は、本件の訴訟物外の事項であるが、論点が相互に密接に関連するものであることにかんがみ、あえて説示されたものと見られる。いかなる場合に抵当権そのものに基づく妨害排除請求権が認められるかについては、代位請求に関して述べたのと同様の議論が成り立ち得るものと思われる。一方、抵当権に基づく妨害排除請求権の効果の問題は、同請求権固有の論点である。代位請求にあっては、債権者代位制度の内容である管理権に基づいて、代位債権者である抵当権者に対する抵当不動産の明渡しを求めることができるとの結論を、比較的容易に導き出すことができる。これに対して、抵当権に基づく妨害排除請求権にあっては、抵当権者が抵当不動産を占有することが権利の内容として含まれていないことから、右と同様の結論を当然に導き出すことができるか否かについて、問題とすべき余地が残るように思われる。
5 平成三年判決の変更について
本判決は、以上の各点(ただし、本判決における新たな判断事項である3(三)記載の点を除く。)と反する限度において、平成三年判決を変更した。先に述べたとおり、本件のように抵当不動産が不法占有されていること自体による不利益が明らかになっている場合等についての平成三年判決の射程に関しては、議論のあったところである。本件の一、二審判決は、本件のような場合は平成三年判決の射程の外にあると解したものと見られるが、本判決は、右のような処理を採用しなかった。仮に平成三年判決を維持しつつ本件は事案を異にするとして処理がされた場合を想定すると、今回採られた処理は、将来に向かって議論の透明度を高める上で意義があると評価することも考えられよう。
四 他の制度との関係等
本件は、本案の訴訟事件に関するものであったが、今後は、本判決によって認められた実体法上の請求権を被保全権利として、抵当権者が不法占有者等に対して占有移転禁止等の仮処分を申し立てることも、可能となる。もっとも、その場合の保全の必要性をどのように判断するかは、被保全権利の成否の要件いかんとも関連して、問題となり得るところである。
次に、民事執行法上の保全処分との関係についてであるが、本判決の抵当権侵害の成否に関する説示の内容は、右保全処分を不法占有者等に対しても認めるべきであるとしていた見解の考え方に近いものである。先にも述べたように、右見解については、平成三年判決の示した法理との実質上の抵触の有無が問題とされることがあったが、少なくとも、この点は解消されたと解される(今井和男「執行実務の現状と今後の課題」金判一〇七九号二頁、前記「特集」一九頁(今井和男・山崎哲央)ほか)。
今後最も配慮を要するのは、本判決によって認められた方途と、当該抵当不動産に対する民事執行手続との連携の問題であると見られる。本件の事案における不動産競売手続は、平成八年に改正される前の民事執行法の適用に係るものであったが、その後、執行裁判所のコントロールの下に執行妨害を排除することを強化する方向で法律上の手当てが進み、解釈論にも進展が見られる。本判決の示した法理は、個別の債権者が民事執行手続のいわば外側で不法占有を排除することを認めるものであるが、手続の目的である不動産が個別の債権者の管理下にあることによって、かえって手続の障害となる事態が生ずることも、考えられないではない。今後の議論及び運用の動向が注目される。
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・Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定し、AがDに対して、抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的で甲建物を賃貸した。この場合、判例によれば、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態のとき、Cは、抵当権に基づく妨害排除請求権を行使してDに対し直接自己に甲建物の明け渡しを求めることができる!!
+判例(H17.3.10)
1 所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有することにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができる(最高裁平成8年(オ)第1697号同11年11月24日大法廷判決・民集53巻8号1899頁)。そして、抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても、その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができるものというべきである。なぜなら、抵当不動産の所有者は、抵当不動産を使用又は収益するに当たり、抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないからである。
また、抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。
2 これを本件についてみると、前記事実関係によれば、次のことが明らかである。
本件建物の所有者であるA社は、本件抵当権設定登記後、本件合意に基づく被担保債権の分割弁済を一切行わなかった上、本件合意に違反して、B社との間で期間を5年とする本件賃貸借契約を締結し、その約4か月後、B社は上告人との間で同じく期間を5年とする本件転貸借契約を締結した。B社と上告人は同一人が代表取締役を務めており、本件賃貸借契約の内容が変更された後においては、本件賃貸借契約と本件転貸借契約は、賃料額が同額(月額100万円)であり、敷金額(本件賃貸借契約)と保証金額(本件転貸借契約)も同額(1億円)である。そして、その賃料額は適正な賃料額を大きく下回り、その敷金額又は保証金額は、賃料額に比して著しく高額である。また、A社の代表取締役は、平成6年から平成8年にかけて上告人の取締役の地位にあった者であるが、本件建物及びその敷地の競売手続による売却が進まない状況の下で、被上告人に対し、本件建物の敷地に設定されている本件抵当権を100万円の支払と引換えに放棄するように要求した。
以上の諸点に照らすと、本件抵当権設定登記後に締結された本件賃貸借契約、本件転貸借契約のいずれについても、本件抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められるものというべきであり、しかも、上告人の占有により本件建物及びその敷地の交換価値の実現が妨げられ、被上告人の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるということができる。
また、上記のとおり、本件建物の所有者であるA社は、本件合意に違反して、本件建物に長期の賃借権を設定したものであるし、A社の代表取締役は、上告人の関係者であるから、A社が本件抵当権に対する侵害が生じないように本件建物を適切に維持管理することを期待することはできない。
3 そうすると、被上告人は、上告人に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、直接自己への本件建物の明渡しを求めることができるものというべきである。被上告人の本件建物の明渡請求を認容した原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
第4 職権による検討
1 原審は、上告人の占有により本件抵当権が侵害され、被上告人に賃料額相当の損害が生じたとして、前記のとおり、抵当権侵害による不法行為に基づく被上告人の賃料相当損害金の支払請求を認容した。
2 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
抵当権者は、抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではないというべきである。なぜなら、抵当権者は、抵当不動産を自ら使用することはできず、民事執行法上の手続等によらずにその使用による利益を取得することもできないし、また、抵当権者が抵当権に基づく妨害排除請求により取得する占有は、抵当不動産の所有者に代わり抵当不動産を維持管理することを目的とするものであって、抵当不動産の使用及びその使用による利益の取得を目的とするものではないからである。そうすると、原判決中、上記請求を認容した部分は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、破棄を免れない。そして、上記説示によれば、上記請求は理由がないから、これを棄却することとする。
3 また、上記請求と選択的にされている賃借権侵害による不法行為に基づく賃料相当損害金の支払請求については、前記事実関係によれば、本件停止条件付賃借権は、本件建物の使用収益を目的とするものではなく、本件建物及びその敷地の交換価値の確保を目的とするものであったのであるから、上告人による本件建物の占有により被上告人が賃料額相当の損害を被るということはできない。そうすると、第1審判決中、賃借権侵害による不法行為に基づく賃料相当損害金の支払請求を棄却した部分は正当であるから、これに対する被上告人の控訴を棄却することとする。 he–
++解説
3 抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求(いわゆる物上請求)の可否について,最大判平11.11.24民集53巻8号1899頁,判タ1019号78頁(平成11年最判)は,それまでの判例を変更し,「第三者が抵当不動産を不法占有することにより抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権に基づく妨害排除請求として,抵当権者が右状態の排除を求めることも許されるものというべきである。」とし,一般論として,物上請求が可能であることを判示した。もっとも,平成11年最判は,代位請求(抵当権者が所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を所有者に代位して行使する請求)の事案であったために,物上請求の要件・効果等を具体的に判示するものではなく,この点は,後日の判例にゆだねられることとなった。
そして,本件は物上請求の事案として最高裁に係属したものである。本件で問題となる点は,第1に,平成11年最判は,抵当不動産の占有者が全くの無権原者であった事案であり,第三者が抵当不動産を「不法占有」する場合を前提に抵当権に基づく妨害排除請求が可能であることを説示するが,本件のY社は,所有者の使用収益権に由来する転借権を有するとみられる者であり,そのような「有権原占有者」に対する妨害排除請求が可能か否かという点である。無権原占有者であれば,その占有は抵当不動産の所有者の使用収益権行使に基づくとはいえないが,有権原占有者の場合,その占有権原は所有者に由来するものであるから,抵当権が所有者の使用収益を排除することができない権利であることからみて,当然には妨害排除の対象とはならないものということができる。もっとも,平成11年最判以降の学説では,広狭の差はあるが,妨害排除を肯定する見解が多数であった。この点について,本判決は,抵当不動産の所有者は,使用収益に当たり,競売手続を妨害する目的の占有権原を設定をすることは許されないから,有権原占有者であっても,抵当権設定登記後に占有権原が設定され,その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられるなどの状態があるときは,これに対し抵当権に基づく妨害排除請求ができるとし,有権原占有者に対し妨害排除請求ができる場合があることを明らかにし,本件の事案でこれを肯定した。もともと,平成11年最判は,「抵当不動産の所有者は,抵当権に対する侵害が生じないよう抵当不動産を適切に維持管理することが予定されている」と説示していたが,本判決の考え方は,この説示の延長線上にあるものと考えられる。なお,平成11年最判以降の学説においては,有権原であっても抵当権者に対抗できない占有者に対しては,抵当権実行着手後,広く妨害排除請求ができるとする見解が少なからず示されていたが,本判決は,その説示からみて,同見解を採用するものではないと解される(同見解に対しては,民事執行法188条により準用される同法59条2項,46条2項の規定を併せ考えると,抵当不動産の所有者には,抵当不動産が売却されるまでの間「通常の用法に従って」抵当不動産を使用収益することが許されているものと解されることから,同法55条,187条のような特段の規定がなければ,抵当権者は,そのような所有者の通常の用法に従った使用収益の過程で生じた劣後的利用権に基づく抵当不動産の占有に対しては,当然には介入できないのではないかという疑問が残る。八木一洋・平成11年度最判解説(民)(下)847頁参照)。
第2に,平成11年最判は,代位請求において,抵当権者が,不法占有者に対し,抵当不動産を直接抵当権者に明け渡すよう求めることができるとしたが,本件のように物上請求の事案で,そのような直接の明渡しを求めることができるか否かという点が問題となる。平成11年最判の法廷意見は,この点に触れておらず,奥田裁判官補足意見は,この点を「更に検討を要する問題である」としていた。平成11年最判以降の学説は,直接明渡請求を認める見解が多数であるが,抵当権が抵当不動産を占有する権利を包含しない権利であること等から,これを否定する見解もあった。下級審では,東京地判平12.11.14判タ1069号170頁が,長期賃借人に対し,賃貸借契約を解除する判決の確定を条件とする抵当権者への明渡請求を認容していた(1審で確定)。この点について,本判決は,抵当不動産の所有者において抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,直接抵当権者に明け渡すよう求めることができるとし,物上請求においても,代位請求と同様に抵当権者が直接明渡しを請求することができる場合があることを明らかにし,本件の事案でこれを肯定した。これにより,抵当権者が取得する抵当不動産の占有は,抵当不動産の維持管理を目的とする占有(平成11年最判奥田裁判官補足意見が指摘する「管理占有」)となるものと考えられる。
第3に,原審は,抵当権者の賃料相当損害金請求を認容したが,抵当権について,賃料額相当の損害が発生するか否かという点が問題となる。これまで学説及び下級審において,この点を正面から肯定する見解は見当たらないものであった。この点について,本判決は,抵当権者には,抵当不動産の使用収益権がなく,妨害排除請求権行使の結果抵当権者が取得する抵当不動産に対する占有は抵当不動産の使用収益等を目的としない占有であるから,抵当権者は,抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではないとし,原判決中同請求を認容した部分を破棄し,X社の請求を棄却した。この判示は,上記の「管理占有」が抵当不動産の使用収益等を目的としない占有であることを改めて示した点に意味があると考えられるが,これによれば,抵当権者に,抵当不動産の使用収益の妨害を理由とする賃料額相当の損害の発生を肯定することはできないこととなる。もっとも,抵当権に基づく競売手続を妨害する目的を持った抵当不動産の占有は,抵当物そのものを毀損する行為ではないが,抵当権に基づく換価権能の行使を妨害することにより抵当権者に損害を生じさせ得る行為であるということができ,本判決がこの点を否定する趣旨を含むものではないと考えられる。しかし,そのように第三者の占有によって換価権能の行使を妨害されたことにより,抵当権者に,いつ,どのような損害が確定的に生じ,その賠償請求が可能となるのかについては,今後,民事執行手続との関係をも含めて,議論が深められる必要があろう。
・抵当権者の非占有担保としての性質にかんがみると、第三者が抵当不動産を不法占有している場合でも、抵当権者は不動産に対する第三者の占有によって賃料相当額の損害を被るものではない!!
・抵当権者が代価弁済を請求した場合、抵当不動産の第三取得者の意思に反してはその効力は生じない!!=抵当権者と第三取得者との間で合意が必要!!!!
+378条
抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
・代価弁済の効果は、第三取得者との関係で抵当権を消滅させるものにすぎず(378条)、債務者は、第三者が代価弁済した範囲で債務を免れるに過ぎない!!!=被担保債権全額が消滅するわけではない!!
・抵当不動産について地上権、永小作権を取得した者は、抵当権消滅請求をすることができない!!!←379条は「抵当権の第三取得者」としているから!!!
+第379条
抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
+第383条
抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。
1号 取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面
2号 抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)
3号 債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面
・抵当不動産の第三取得者が、抵当権の被担保債権の主たる債務者、保証人及びこれらの承継人である場合には、抵当権消滅請求をすることができない!!!←自ら債務を負担する者が、その債務を弁済しないで抵当権消滅請求ができるとするのは不当!!
+第380条
主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。
・抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない(381条)
+第381条
抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。
・譲渡担保権者は、担保権を実行して確定的に抵当不動産の所有権を取得しない限り、379条の抵当権消滅請求権者たる第三取得者には該当しない!!!←譲渡担保による所有権の効力は債権担保の目的を達するのに必要な範囲内においてのみ生じるに過ぎない!!
・抵当権者の順位は、原則として各抵当権者の合意によって変更することができるが、抵当順位の変更は、その登記をしなければその効力を!!!生じない!!!
+第374条
1項 抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2項 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
・債務者X所有の土地につき第1順位の抵当権者A(債権額2000万)、第2順位の抵当権者B(債権額1000万)、第3順位の抵当権者C(債権額3000万)がおり、抵当権実行の結果、当該土地は4500万で売却された。AからCに抵当権の順位の譲渡がされていた場合、Cが受け取ることのできる配当額は3000万(←3500万円からの)である。
←抵当権の順位の譲渡(376条1項)の場合、AはCの後順位となり、Cは自己の本来の配当額(1500万円)とAの本来の配当額(2000万円)の合計額3500万円から優先弁済を受けることができる!!!
+第376条
1項 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
2項 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。
・同場合に、AからCに対して抵当権の順位の放棄がされていた場合、Cの受けることのできる配当額は、2100万円となる!!!!!
←抵当権の順位の放棄(376条1項)とは、先順位抵当権者から後順位抵当権者に対してなされる先順位たる地位の放棄であり、両者は同順位(←コレ!!)となる!!!!!!AとCは同順位となり、その本来の配当額の合計額(A:2000万 B:1500万の合計額3500万)を両者の債権額に比例して(2000:3000)分配することになる。Cの配当額は2100万円!
・債務者X所有の土地につき第1順位の抵当権者A(債権額2000万)、第2順位の抵当権者B(債権額1000万)、一般債権者C(債権額3000万)がおり、抵当権実行の結果、当該土地は4500万で売却された。AからCに抵当権の放棄がされていた場合、Cが受け取ることのできる配当額は800万である。!!!!!
←無担保債権者への抵当権の放棄(376条1項)の場合、抵当権者Aは、無担保債権者Cとの関係でのみ優先権を失う。Aが本来受けることのできた配当分2000万円を(3500万円じゃないよ!!)AC両者の債権額に比例して(2000:3000)分配することになり、Aの受けることのできる配当額は800万円となる!!!!!