民法択一 物権 質権 質権の意義


譲渡することのできない物は質権の目的とすることはできない!!!!!←質権が優先弁済的効力を有するから。+債権者が質権の目的物を換価してその代金をもって弁済を受けることが質権の目的であるため、譲渡できないものは換価性がないと評価されるわけである。また特別法で譲渡を禁じているものも同様である。
+(質権の目的)
第343条
質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。

・質権設定の効力発生要件たる占有の移転は、簡易の引渡しでもよい。=引渡しには現実の引渡しだけでなく、簡易の引渡しや、指図による占有移転も含まれる。しかし、占有改定は含まれない!!
+(質権の設定)
第344条
質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。

・質権と抵当権は担保物の所有者と債権者との間の設定契約により設定される約定担保物権である。

・質権者は、設定者に担保物を代理占有させることはできない。!!
+(質権設定者による代理占有の禁止)
第345条
質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。

・質権者が任意に質権設定者に質物を返還した場合でも、質権は消滅しない!!!
=動産質においては質権を第三者に対抗できなくなるに過ぎない(352条)
不動産質においては質権の効力に何らの影響も及ぼさない!
+第352条
動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。

・質権設定者は設定行為又は債務の弁済前の契約において、質権者に弁済として質権の所有権を取得させることはできない!!=流質契約の禁止
+第349条
質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。
++
いわゆる流質契約を禁止する規定である。
債務者の弱みに付け込んで、経済的に強者である債権者が、債権額と比べて不当に高額の質物について流質契約をさせるような不合理を防止することをその趣旨としている。
質物の処分は法律に定める方法(民法第354条、民法第366条、民事執行法第180条以降等)によらねばならず、それ以外の方法を当事者間で取り決めても無効である。本条は強行規定である。
+++(動産質権の実行)
第354条
動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる。この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。
+++(質権者による債権の取立て等)
第366条
1項 質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
2項 債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
3項 前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
4項 債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。

・動産質権者が質物を使用するためには、債務者の承諾が必要であり、承諾なく称した場合には、債務者は、質権消滅請求をすることができる。
+(留置権及び先取特権の規定の準用)
第350条
第296条から第300条まで及び第304条の規定は、質権について準用する。
+(留置権者による留置物の保管等)
第298条
1項 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
2項 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。
3項 留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。

・質権者は善良な管理者の注意義務をもって、質権を占有しなければならない!←350条、298条1項

・敷金返還請求権が質権の目的とされた場合、質権設定者である賃借人が正当な理由なく賃貸人に対し未払債務を生じさせて敷金返還請求権の発生を阻害することは、質権設定者の負う担保価値維持義務に違反する!!!
+判例(H18.12.21)
1 債権が質権の目的とされた場合において、質権設定者は、質権者に対し、当該債権の担保価値を維持すべき義務を負い、債権の放棄、免除、相殺、更改等当該債権を消滅、変更させる一切の行為その他当該債権の担保価値を害するような行為を行うことは、同義務に違反するものとして許されないと解すべきである。そして、建物賃貸借における敷金返還請求権は、賃貸借終了後、建物の明渡しがされた時において、敷金からそれまでに生じた賃料債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得する一切の債権を控除し、なお残額があることを条件として、その残額につき発生する条件付債権であるが(最高裁昭和46年(オ)第357号同48年2月2日第二小法廷判決・民集27巻1号80頁参照)、このような条件付債権としての敷金返還請求権が質権の目的とされた場合において、質権設定者である賃借人が、正当な理由に基づくことなく賃貸人に対し未払債務を生じさせて敷金返還請求権の発生を阻害することは、質権者に対する上記義務に違反するものというべきである。
また、質権設定者が破産した場合において、質権は、別除権として取り扱われ(旧破産法92条)、破産手続によってその効力に影響を受けないものとされており(同法95条)、他に質権設定者と質権者との間の法律関係が破産管財人に承継されないと解すべき法律上の根拠もないから、破産管財人は、質権設定者が質権者に対して負う上記義務を承継すると解される。

2 以上の見地から本件についてみると、上告人は、被上告人に対し、本件各賃貸借に関し、正当な理由に基づくことなく未払債務を生じさせて敷金返還請求権の発生を阻害してはならない義務を負っていたと解すべきところ、前記事実関係によれば、上告人は、本件各賃貸借がすべて合意解除された平成11年10月までの間、破産財団に本件賃料等を支払うのに十分な銀行預金が存在しており、現実にこれを支払うことに支障がなかったにもかかわらず、これを現実に支払わないでBとの間で本件敷金をもって充当する旨の合意をし、本件敷金返還請求権の発生を阻害したのであって、このような行為(以下「本件行為」という。)は、特段の事情がない限り、正当な理由に基づくものとはいえないというべきである。本件行為が破産財団の減少を防ぎ、破産債権者に対する配当額を増大させるために行われたものであるとしても、破産宣告の日以後の賃料等の債権は旧破産法47条7号又は8号により財団債権となり、破産債権に優先して弁済すべきものであるから(旧破産法49条、50条)、これを現実に支払わずに敷金をもって充当することについて破産債権者が保護に値する期待を有するとはいえず、本件行為に正当な理由があるとはいえない。そして、本件において他に上記特段の事情の存在をうかがうことはできない。

3 以上によれば、上告人の本件行為により本件敷金返還請求権の発生が阻害されたことによって、破産財団が法律上の原因なく本件賃料等4185万9428円の支出を免れ、その結果、同額の本件敷金返還請求権が消滅し、質権者が優先弁済を受けることができなくなったのであるから、破産財団は、質権者の損失において上記金額を利得したということができる。したがって、上告人は、4185万9428円の262分の30に相当する479万3064円につき、これを不当利得として被上告人に返還すべき義務を負うというべきである。

++判例続き
第4 職権による検討
1 原審は、被上告人の不当利得返還請求を認容するに際し、上告人が悪意の受益者であることを前提に、上告人に対し本件充当合意の日から年5分の割合による利息の支払を命じた。
2 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
民法704条の「悪意の受益者」とは、法律上の原因がないことを知りながら利得した者をいうと解するのが相当である(最高裁昭和34年(オ)第478号同37年6月19日第三小法廷判決・裁判集民事61号251頁参照)。これを本件についてみると、上告人の利得が法律上の原因を欠くことになるのは、本件行為によって破産財団の減少を防ぐことに正当な理由があるとは認められず、本件行為が質権者に対する義務に違反するからであるが、上記正当な理由があるか否かは、破産債権者のために破産財団の減少を防ぐという破産管財人の職務上の義務と質権設定者が質権者に対して負う義務との関係をどのように解するかによって結論の異なり得る問題であって、この点について論ずる学説や判例も乏しかったことや、記録によれば上告人は本件行為(本件第3賃貸借に係るものを除く。)につき破産裁判所の許可を得ていることがうかがわれることを考慮すると、上告人が正当な理由のないこと、すなわち法律上の原因のないことを知りながら本件行為を行ったということはできず、上告人を悪意の受益者であるということはできないというべきである。ヘーー そうすると、原判決中、上告人が悪意の受益者であることを前提に本件充当合意の日以降の利息の支払請求を認容した部分は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、破棄を免れない。そして、上記説示によれば、被上告人の上記利息の支払請求は、訴状送達の日の翌日以降の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり(なお、被上告人の上記利息の支払請求には、訴状送達の日の翌日以降の遅延損害金の支払を求める請求が含まれると解される。)、その余は棄却すべきである。また、上記説示によれば、上告人が本件行為につき善管注意義務違反の責任を負うともいえないから、不当利得返還請求と選択的にされている旧破産法164条2項、47条4号に基づく損害賠償請求に基づき本件充当合意の日以降の遅延損害金の支払請求を認容することもできない。したがって、以上と異なる原判決を主文のとおり変更するのが相当である。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

・質物の占有を継続していても、被担保債権の消滅時効は進行する!!!←350条・300条
+(留置権の行使と債権の消滅時効)
第300条
留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。

・質権の目的物の返還と被担保債務の弁済とでは、債務の弁済が先履行であり、債務者が債務を弁済しないで目的物の返還を請求しても、弁済との引換給付判決ではなく単に請求が棄却される。!!

・留置権は物の占有者がその物に関して生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置することを得るに過ぎないものであって、物に関して生じた債権を他の債権に優先して弁済を受けしめることを趣旨とするものではない→引換給付判決!

・留置権は、目的物の譲受人や競落人など、すべての人に対して行使することができるが、質権は留置権と異なり、その質権に対して優先権を有する債権者に対抗することができない!!
+(質物の留置)
第347条
質権者は、前条に規定する債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができる。ただし、この権利は、自己に対して優先権を有する債権者に対抗することができない
+++
質権は指図による占有移転によっては成立するので、二重に設定されるということは論理的にあり得るの。その場合、自分より優先する者には対抗することができないということになり、それを規定しているのが、但し書きということになる。留置的効力によって、債務者に心理的圧迫を加えて、間接的に債務の履行を実現させようとするのが趣旨で、この点は留置権の留置的効力と同じなのですが、但し書きの存在がある点で留置権とは異なるのです。ヘー