憲法択一 統治 憲法改正 憲法改正の限界


・無限界説によれば、憲法所定の改正手続に基づくものである限り、憲法制定権力の主体や元の憲法の基本原理を変更することも法的に認められ、憲法の廃止と新憲法の制定という法を超えた政治的な事件となるわけではない。!!

・無限界説←将来において憲法制定時の規範・価値が変化した場合には憲法こそ変化すべきであり、将来の世代が憲法の規範・価値に拘束されるべきでない。

・無限界説←憲法規範中に上下の価値の序列や階層性を認めることはできない。

・限界説←近代憲法は自然権思想を成文化した法であり、人権と国民主権とが、共に個人の尊厳の原理に支えられ不可分に結びついて共存する関係にあることが、近代憲法の本質かつ理念であるとしたうえで、このような根本規範といえる人権宣言の基本原則を改変することは許されない

・限界説→憲法典を持続させるために設けられた憲法改正規定の実質を変更することは許されない。

・憲法の効力根拠に関する学説には、自然法との合致に求めるものと、憲法制定権力の決断に求めるものとがある。

・憲法改正権と憲法制定権を区別する見解からは、改正権が自己の存立の基盤ともいうべき制憲権の所在(国民主権)を変更することは、理論的に許されない。

・憲法改正権を制度化された制憲権と理解すると、制憲権は憲法特典のなかに取り込まれていることになる。そして、改正権の生みの親は制憲権であるから、改正権が自己の存立の基盤ともいうべき制憲権の所在(国民主権)を変更することは、いわば自殺行為であって理論的に許されない。

・憲法改正には限界があるという立場からは、主権の存在を変更するような改正は不可能となる。ポツダム宣言の受諾によって主権の所在が天皇から国民に移ったという、いわゆる八月革命説は、憲法改正には限界があるという立場を採りつつ日本国憲法の制定を正当化しようというものである。=大日本帝国憲法は新しい建前に抵触する限り重要な変革を被りながら存続したと説明。


憲法択一 統治 憲法改正 憲法改正の手続

・憲法の改正は、各議院の総議員数の3分の2以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認をへなければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする(96条1項)。

・96条1項にいう国会による「発議」とは、憲法改正案が国会において議決されることをいい、憲法改正の原案を提出する発案、審議、議決という過程を総合したものを意味する。

・憲法改正についての、議院での審議の方法については、憲法及び法律に特別の規定がないことから、法律案に準じて行うことができる。→憲法改正の審議の定足数を3分の1とすることも許される。


憲法択一 統治 違憲審査権


・最高裁判所の違憲審査権は、81条によって定められていると説かれるが、一層根本的な考え方からすれば、たとえこの規定がなくても、98条の最高法規の規定又は76条もしくは99条の裁判官の憲法遵守義務の規定から、違憲審査権は十分に抽出される。

・付随的違憲審査制とは、具体的な訴訟事件を裁判する際に、当該事件の解決に必要な限度で適用法条の違憲審査を行うことをいい、個人の権利保護を主たる目的とする。

・抽象的違憲審査制は、特別に設けられた憲法裁判所が、具体的な訴訟事件とは関係なく、抽象的に違憲審査を行う方式であり、意見の法秩序を排除し、憲法を頂点とする法体系の整合性を確保することを主たる目的とする。

・付随的違憲審査制においても、第三者の憲法上の権利・利益侵害を理由に違憲主張をすることが許される場合がある。!!←第三者の憲法上の権利・利益が現実に侵害されている際に、当該侵害の主張を当事者にさせることが適切と認められる場合。

・81条が憲法6章「司法」のなかに規定されていることから考えると、違憲審査制が行使される場合は司法権が行使される場合に限定されることになる。→付随的審査制を定めている。

・抽象的違憲審査の権限を認めるならば、何らかの手続規定を憲法上設けておくべきであるにもかかわらず、現行法上何ら手続き的規定がないことにかんがみると、抽象的違憲審査制を採用したわけではないといえる。

・抽象的違憲審査制を認めると、違憲判決の効力は、一般的効力を有すると解さざるを得なくなるので、裁判所による法律の改廃が可能となる。そうすると、消極的立法を認めることになって41条に抵触するおそれがあるので、付随的審査制と解すべきとの結論が導かれる。

・最高裁判所は傍論で憲法判断を行ったことがある。

・81条は「最高裁判所」と規定しており、下級裁判所が違憲審査権を有するかどうかは明らかではない。しかし、違憲審査権を司法権の権能の一環と捉えるならば、下級裁判所においても違憲審査権を行使することができると解せる。

・内閣の補助機関として現行法の合憲性について内閣の諮問に応じて意見を述べたり、内閣提出の法律案に対して閣議に付される前にその合憲性を審査することを目的とする機関を設立したとしても、最高裁判所を拘束するものでない限り、最高裁判所を憲法適合性を判断する「終審」裁判所であると規定した81条に反しない。

・法律等の憲法適合性が問題となる場合でも以前に大法廷で合憲と判断したのと同じ意見であれば、小法廷でも判断できる。

・高等裁判所が上告審としてした裁判についても憲法違反を理由とする場合は、最高裁判所への上訴が許されなければならない=特別上告(民事訴訟法327条1項)

・憲法優位説は、条約が憲法に優位すると解すると、内容的に憲法に反する条約が締結された場合には、条約によって憲法が改正されることになり、硬性憲法性を損なうと主張する。

・憲法優位説←憲法98条2項は条約及び確立した国際法規を誠実に遵守すべき義務を規定するが、これは、有効に成立した条約の国内法的効力を認めその遵守を強調するものであって、意見の条約をも遵守すべきことまでを定めたものではない。

・憲法優位説←条約の締結、承認は憲法の授権により認められた国家機関の権能であるから、そのような機関の根拠となる憲法を、条約により変更できると解することは背理である。

・条約優位説←98条1項は、法律等の国内法規との関係で憲法の最高法規制を規定しているが、条約は除かれており、しかも、98条2項では、条約が国内法として効力があることを規定している。

・憲法優位説←憲法は国際協調主義に則り、国家主権を超えた国際秩序を目指すものであるが、現段階では国家主権を超えた国際秩序は確立されていないから、現状を踏まえた憲法解釈をすべきである。

・憲法優位説+条約に対する違憲審査権を否定する見解←98条2項が「条約」の誠実遵守を強調しており、条約が外国との合意によって成立することを根拠とする。

・憲法優位説+条約に対する違憲審査権を否定する見解←条約は81条の列挙事由に挙げられいないこと、条約は国家間の合意という特質を有し、しかも政治的な内容を含むことから、条約は違憲審査の対象とはならない。

・憲法優位説+条約に対する違憲審査権を肯定する見解←条約は81条の「法律」もしくは「規則または処分」に含まれるとし、条約が違憲審査の対象となる。

・条約優位説→条約に対する違憲審査は一切認められないことになる。!!!

・「一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外」(砂川事件)→条約の違憲審査可能性を前提としている。

・条約が違憲審査の対象となる見解において、裁判所が条約を違憲としても、その条約の国内法的効力の限度での判断にすぎず、国際法的効力に及ぶものではない。←条約は国家間の合意である以上、国際法上の効力を一国の意思のみで否定することはできない。

・国会議員の立法行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかが問題であって、当該立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきであり、かりに当該立法の内容が憲法の規定に違反するおそれがあっても、その故に国会議員の立法行為が直ちに違法の評価を受ける者ではない。国会議員の立法行為は、率峰の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定しにくいような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けない。(在宅投票制度廃止事件上告審)

・国会及び国会議員の立法不作為につき、国家賠償法1条1項の適用上違法性を肯定することができない以上、国会に対して法律案の提出権を有するにとどまる内閣の法案不提出についても、国家賠償法1条1項の適用上違法性を観念する余地はない。

・立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害することが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受ける。(在外選挙権制限違憲判決)

・精神的原因による投票困難者については、その精神的原因が多種多様であり、しかもその状態は必ずしも固定的ではないし、精神的原因による投票困難者は、身体に障害がある者のように、既存の公的な制度によって投票所に行くことの困難性に結びつくような判定を受けている者ではない。少なくとも各選挙以前に、精神的原因による投票困難者に係る投票制度の拡充が国会で立法課題として取り上げられる契機があったとは認められないとして、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。

・裁判の本質は一種の処分であるということができるので、立法行為や行政行為と同じく司法行為も最高裁判所の違憲審査権に服する。!!


憲法択一 統治 地方自治 地方公共団体


・都の特別区は、普通地方公共団体とはされていない。

・一時期、都の特別区について、その区長は特別区の議会が都知事の同意を得てこれを選任するものと定めていたところ、最高裁判所は、特別区は憲法上の地方公共団体には当たらないものとして、これを合憲としていた。

・町村は、条例で、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる(地方自治法94条)←町村総会は議事機関としての議会に当たるため、憲法93条1項に違反しないと解されている。

・憲法93条2項は地方公共団体の長、議会の議員を住民が直接選挙することを定めているにとどまり、地方自治法に定める議会の直接請求や議員、長の解職請求の制度それ自体は憲法上の要請ということはできない。

・法律で地方公共団体の長の間接選挙制や推薦制をとることは違憲である。←93条2項は、地方公共団体の長について、住民が直接選挙すると定めているから

・何が「その地方の住民が直接選挙すべき職員」に該当するかは憲法上明らかではなく、具体的内容の決定は、国会の裁量にゆだねられている。→ほかの吏員については一切選挙を行わないとすることもできる。(住民によって直接に選挙によって選ばれる吏員を法律で設けることが許されるという趣旨に過ぎない)

・その地方公共団体の住民であることは、都道府県知事の場合も市町村長の場合も要件とはされていない。

・94条は、地方公共団体の権能として、財産の管理、事務の処理、行政の執行及び条例の制定を列挙している。(×公共事業の実施)

・地方公共団体は、法律の範囲内で条例を設定することができる(94条)。→広義の自治事務に該当する事務であれば、住民の基本的人権の制限をその内容とすることも可能である。

・憲法94条は地方公共団体に法律の範囲内で条例制定権を認めているので、条例の効力は法律に劣る。

・地方自治法14条1項は法令に違反しない限りにおいて条例制定権を認めているので、条例の効力は、命令にも劣る。!!!

・94条の「条例」には、議会が制定する条例だけでなく、地方公共団体の長が制定する規則や、各種委員会の定める規則その他の規定も含まれる。

・憲法94条を根拠に、地方公共団体は法律の授権がなくとも条例を制定することができる。(大阪市売春取締時条例事件)。

・条令への罰則の授権について→条例は公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自主立法であって、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りるとしている。=あくまでも法律の授権は必要!

・31条は必ずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものではなく、法律の授権によってそれ以下の法令によって定めることもできると解すべきで、このことは73条6号但し書きによっても明らかである。

科刑手続については事柄の性質上条例で定めることはできず、科刑手続との関係では、31条の「法律」に条例を含むことはできない。

・ため池の堤とうを使用する行為を条例で規制することは、憲法および法律に抵触も逸脱もしない。このような財産上の権利の規制は財産権を有する者が当然受忍しなければならない責務というべきであって、29条3項の損失補償はこれを必要としない。

・租税法律主義の原則を定める憲法84条との関連で、条例による地方税の賦課徴収が許されるか否かが問題となるも、地方公共団体は自治権のひとつとして課税権を有し、同条の「法律」には条令も含まれると解されるから、条例による賦課徴収も許される。

・条令が法律に違反するかどうかは、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の内容に矛盾抵触するところがあるかどうかによって決するべきである。→貯法公共団体が、法律と同一目的で同一の汚染物質について、条例で、より厳しい排出基準を定めたとしても、その条例が直ちに法律に違反するとはいえない

・両者が同一目的に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解される場合は、国の法令と条例の間には何らの矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じない。(徳島市公安条例事件)

・青少年に対する淫行を処罰する条例と児童福祉法との関係について、児童福祉法の規定は、必ずしも児童の自由意思に基づかない淫行に限って適用されるものではなく、この規定は、18歳未満の青少年との合意に基づく淫行をも条例で規制することを容認しない趣旨ではない。→94条に違反しない。(福岡市青少年保護育成条例事件)

・道路における集団行動等に対する道路交通秩序維持のための具体的規制が、道路交通法及びこれに基づく公安委員会規制と条例の双方において重複して施されている場合においても、両者の内容に矛盾抵触するところがなく、条例における重複規制がそれ自体として特別の意義と効果を有し、かつ、その合理性が肯定される場合には、道路交通法による規制は、このような条例による規制を否定排除する趣旨ではなく、条例の規制の及ばない範囲においてのみ適用される趣旨のものと解することが相当である。(徳島市公安条例事件)

・条令の遵守事項として交通秩序を維持することという条件を付することも、通常の判断能力を有する一般人が、具体的場合において、自己がしようとする行為がその条項による禁止に触れるものであるかどうかを判断するにあたって通常その判断にさほどの困難を感じることはないはずであるから憲法31条に違反するとはいえない。

・行列行進又は公衆の集団示威運動は、公共の福祉に反するような不当な目的又は方法によらない限り、本来国民の自由とするところであるが、あらかじめ許可を必要とし、一定の場合にはこれを禁止することができる旨の規定を条例で設けたとしても、これをもって直ちに憲法の保障する国民の自由を不当に制限するものと解することはできない。

・条例による許可制が、その実質において届出制と異なるところがない場合には、規定の文面上では許可制を採用し、公安委員会の裁量による許可又は不許可の処分について救済の手段が定められていない場合でも、これを理由として直ちに違憲無効と認めることはできない。(東京都公安条例事件)

・美観の維持や危害防止のために、政党の演説会開催の告知宣伝を内容とするポスターを街路樹に括り付ける行為を条例で禁止することは公共の福祉のために許される。処罰することも許される。

・憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されるところであるとしている。

・地方税においては84条の「法律」には「条例」が含まれると解される。

・住民投票と国会の議決の先後関係について憲法95条は特に定めてはおらず、いずれが先行してもよい。

・95条の「一の地方公共団体」は、ひとつの地方公共団体という意味ではなく、特定の地方公共団体という意味であり、かつ、既に国法上の地方公共団体と認められているものをいう。

・地方公共団体の組織・運営・権能についてほかの地方公共団体とは異なる取り扱いを規定するのが地方自治特別法である。

・特定の地方公共団体の区域に適用される法律であっても、その規定する内容が、国の施策や国の機関に関する法律である場合は、地方自治特別法に該当しない。

・地方自治特別法を廃止する法律を制定する場合は、国会の議決だけで足り、当該地方公共団体の住民投票を行わなくとも違憲ではない。


憲法択一 統治 裁判所 裁判所の構成と権能


・法律によって裁判官となるための資格要件を定めることができることは当然であり、三権分立のバランスを乱すとはいえない。

・最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官するとされる(79条5項)。

・下級裁判所の裁判官についても、法律の定める年齢に達した時には退官するとの規定がある(80条1項但し書き)。

・79条2項の「任命は」を重視するのは、国民審査が内閣又は天皇のした裁判官の任命行為を完結・確定するものと考える見解(任命確定説)である。

・最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質においていわゆる解職の制度とみることができるとし、積極的に罷免を可とする投票以外は罷免を可としないものと扱うことは、憲法の規定する国民審査制度の趣旨に合する。(最高裁判所裁判官国民審査法事件)

・最高裁判所が有する規則制定権は、私法に関する事項について国会や内閣の干渉を排除し、裁判所の自主性を確保するという見地から裁判所自身に与えられたものであり、最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限については、下級裁判所に委任できる

・77条1項の弁護士に関する事項のうち、既に弁護士となった者が裁判所及び訴訟事件にかかわる場合にそれに関係する事項については規則で定め得るが、弁護士の資格・職務・身分の制限については、22条1項の職業選択の自由の保障との関係から、法律によって定めるべきと解されている。

・内閣による下級裁判所裁判官の任命は最高裁判所の提出する名簿に基づいて行われなければならない(憲法80条1項、裁判所法40条1項)

・内閣による下級裁判所裁判官の任命は、司法に対する国民による監視、抑制と関係がある。


憲法択一 統治 内閣 内閣の組織と権能


・憲法66条1項・74条が、国務大臣・行政長官一人制を採用していることを示していることを前提とすると、行政組織のうち基本的な機関の設置については法律事項と解釈することができる。

・日本国憲法73条4号は、明治憲法10条本文の任官大権に関する事務の一部について、法律の定める基準によるとしている。これとの均衡上、明治憲法10条本文が定めていた行政組織の編成についても基本的には法律の定めが要請されるとの解釈が可能である。もっとも、行政の硬直化を避ける趣旨から、内部部局のあり方までは法律の専権事項とみられないと解釈することも可能である。

・ある国務大臣が国会議員の資格を失ったことによって、国務大臣の過半数は国会議員でなければならないとの条件が満たされなくなった場合は、国会議員の資格を有しないほかの国務大臣を罷免し新たに国会議員の資格を有する国務大臣を任命することによっても内閣の組織要件を満たすことができる。

・内閣が閣議によって職権を行うことは法律上明文で定められている(内閣法4条1項)が、閣議の定足数や表決数等の議事に関する特別の規定はなく、すべて慣習によるものとされている。

・閣議とは、会議のみを意味する場合と内閣の決議のみを意味する場合がある。内閣法4条1項は、後者を意味するため、持ち回り閣議を排除するものではない

・内閣の連帯責任は本質的には政治責任である。←66条3項は責任の内容・原因とも何ら限定していない以上、内閣の連帯責任は本質的に法的責任ではなく政治的責任である。

・閣議の議決方法については、全会一致でなされることが慣習上確立しているが、憲法の明文で規定があるわけではない。

・内閣の連帯責任は、必ずしも国務大臣の個人的責任を排除しない。

・内閣は行政権の行使について国会(×国民)に対し連帯して責任を負う(66条3項)

・66条3項は各議院が個別に内閣に対し責任を追及することを否定する趣旨ではない。

・内閣は天皇の国事行為の助言・承認に対して政治的な裁量を行使し、この点についての責任を国会に対して負う。

・内閣総理大臣の指名は他のすべての案件に先立って行われるが(67条1項後段)、その議決に先立ち、議院が有効に活動するための前提となる議長の選任や会期の決定等の案件を審議・議決することは許される。

・参議院議員のなかから内閣総理大臣を指名することも可能である。

・内閣総理大臣たる参議院議員を参議院は除名することもできる←自律権から。

・内閣総理大臣が国会議員であることは、指名の際の要件であり、在職の要件ではないという立場に立ったとしても、当選無効により国会議員の資格を失ったときは、そもそも指名の際に国会議員でなかったのであるから、当然に内閣総理大臣の資格を失う。

・天皇による認証(7条5号)は、国務大臣の任命が正当な手続きでなされたことを公に証明する行為に過ぎない。→内閣総理大臣が国務大臣を任命した時点で、合議体としての内閣は成立する。

・国務大臣の任免権(68条1項本文、2項)及び国務大臣の訴追に対する同意権(75条本文)については、内閣総理大臣の専権事項である。

・予算の作成提出については、閣議にかけて決定する必要がある。←内閣の権能とされているから(73条5号)+内閣がその職務を行うのは閣議による(内閣法4条1項)

・内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免(=本人の意思に反して一方的に)することができる(68条2項)。

・憲法72条は内閣総理大臣が内閣を代表して行政各部の指揮監督を行うと規定しているが、行政各部の指揮監督は、本来内閣の権限であるから、原則として閣議を経て行使されるべきものとする。→内閣は国会に対して政治的責任を負う(66条3項)

内閣総理大臣は、内閣を代表して、一般国務及び外交関係について国会に報告する(72条)。国会はこれらの報告を受け、また報告を要求する権能を有する。

・外交関係の処理(73条2号)、条約の締結(73条3号)は内閣の事務(×内閣総理大臣)である。

・国務を総理するのは内閣であって(73条1号)内閣総理大臣ではない!!!!!!。

・内閣総理大臣は、すくなくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有する(ロッキード丸紅ルート事件)=各国務大臣が所管事項についてする行政指導に対し支持を与えることも内閣総理大臣の権限の範囲内といえる。

・73条以外に、65条が内閣が行政事務を行う一般的権限を有する規定としてある。

・「実施するため」(73条6号)とは法律の存在を前提とするということであり、議会を通さない緊急命令や独立命令は認められない。既存の法律に代替する内容を定める代行命令も認められない。⇔法律の執行に必要な細則を定める執行命令と、法律の委任に基づく委任命令に限定される。

・制定された法律を内閣が違憲と判断した場合でも、天皇によるその法律の公布に助言と承認を与えることを拒否することはできない。←内閣は法律を誠実に執行する義務を負うことから(73条1号前段)

・内閣の法案提出権には、既に存在する法律を廃止する案を提出する権限も含まれている。

・成立した法律には、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することが必要とされるが(74条)、かりにそれらが欠けても、法律の効力や内閣の法律執行義務には影響はない

・内閣は衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない(69条)。

・内閣総理大臣が欠けたときは、内閣は総辞職をしなければならない(70条)。←憲法は、内閣総理大臣に「首長」たる地位を与えており、これが欠けた場合には内閣の一体性が失われることになるから。

・「欠けたとき」(70条)とは、死亡、失踪、亡命、国会議員となる資格を喪失した場合などを指す。

・内閣総理大臣の病気や一時的な生死不明は「欠けたとき」ではなく、「事故のあるとき」(内閣法9条)に当たり、臨時代理が置かれるに過ぎない。

・内閣総理大臣に事故があるときや欠けたときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が内閣総理大臣の職務を行う(内閣法9条)。


憲法択一 統治 内閣 行政権と内閣

・独立行政委員会は憲法65条の例外として認められるとする見解は、76条と異なり、65条が「すべて行政権は」と規定していないことを根拠としている。

・内閣が委員の任命権を持ち、委員会が予算の編成権を有することを重視すると、65条が一切の例外を認めていないと考えたとしても独立行政委員会は合憲となる。


憲法択一 統治 国会 国会の地位


・平成12年の公職選挙法・国会法改正により、衆議院参議院の比例代表選出議員は、当選後に所属政党を変更した場合は、議員の地位を失うことになった(国会109条の2、公職選挙法99条の2)。この規定は、自発的な党籍変更に限定してはいない。!!!

・議員が議案を発議するには、衆議院においては20人以上、参議院においては10人以上の賛成を要する。

・予算をともなう法律案を発議するには、衆議院においては議員50人以上、参議院においては議員20人以上の賛成を要する。

・法律が成立するのは、両議院で可決した時であって(59条1項)、公布により成立するわけではない。

・74条は、法律にはすべての主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要としている。この署名及び連署は、執行責任を表示するものに過ぎず、署名・連署を欠いた場合でも法律の効力は否定されない!!!!!。

・41条は実質的意味の立法が国会によってのみ制定されることを意味するが、実質的意味の立法が一般的・抽象的法規範を意味するとすれば、栄典制度についても法律で定めなければならないことになる。フム

・41条にいう「立法」を国民に義務を課しあるいは権利を制限する法規範の定率と解するならば、栄典はそれを授与された者に利益を与えるにすぎないから、栄典制度を政令で定めても違憲とはいえない。

・立法の委任は73条6号但し書きの存在及び事情の変化に機敏に対応した立法の要求等から、憲法上も認められる。

・委任事項の限られた一部を再委任しても、当該法律の委任の趣旨に反しない。!

・通説は、条例制定は国会の法律制定と同じ性質の行為であることなどを理由に、条例制定を憲法上の例外とみる必要はないと解している。

・条例制定が民主的立法としての性質の行為である以上、実質的には法律に準ずるものであり、法律による個別具体的委任なくして住民の権利を制限することができる。

・最高裁判所規則制定権(77条1項)は立法作用に国会以外の期間の参加を認めないという国会中心立法の原則に対する例外であるとされている。・・・。裁判所法も裁判所内部の規律や司法事務処理に関する事項について定めてはいるが。

・国会が「唯一」の立法機関であることは、国会以外の期間の関与を必要としないで、国会が単独で立法することができること(国会単独立法の原則)を意味する。

・上記の例外として、一の地方公共団体のみに適用される特別法についての住民投票がある(95条)。95条は住民の権利義務に直接影響がある場合に限ってはいない。

・議院内閣制の下では、国会と内閣の協同が要請されており、また、国会は自由に法案を修正・否決できるから!、内閣に法案提出権を認めても違憲ではない。

・内閣は「国務を総理する」(73条1号)地位にあり、いかなる立法措置が必要であるかということをもっとも適切に判断し得る立場にあるという点を強調すれば、国会が法律により、内閣に法案提出権を与えることは、憲法の禁ずるところではない。

・内閣法5条は、内閣総理大臣は!、内閣を代表して内閣提出の法律案を国会に提出するとしている。→法律案を提出するのは内閣総理大臣である。

・内閣法では内閣に法律案の提出権を認めており、法律案の提出も「立法」であるとすると、形式的には国会単独立法の原則に対する例外を定めているといえるが、憲法72条の「議案」に法律案も含まれると解されること、法律案の発議権は国会議員にもあり、しかも、閣僚の大半は実際に国会議員であることなどから、実質的には、国会単独立法の原則に対する例外に当たるものではないと解されている。

・憲法は、国の行政組織について法律で定めるべきことを明示していない。一般には、国の行政組織の基本は法律で定めるべきであるが、各省庁の組織の細部については政令で定めることができると解されている。