民法762条 夫婦間における財産の帰属 家族法 親族 婚姻

民法762条 夫婦間における財産の帰属

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(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条  夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2  夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

・別産制の原則を定めた規定である。

・所得税法が、生計を一にする夫婦の所得を合算折半して計算することにしていないことは、憲法24条に違反しない。

+判例(S36.9.6)
理由
 上告人の上告理由について。
 所論は、民法七六二条一項は、憲法二四条に違反するものであると主張し、これを理由として、原審において右民法の条項が憲法二四条に違反するものとは認められず、ひいて右民法の規定を前提として、所得ある者に所得税を課することとした所得税法もまた違憲ではないとした原判決の判示を非難するのである。
 そこで、先ず憲法二四条の法意を考えてみるに、同条は、「婚姻は……夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」、「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」と規定しているが、それは、民主主義の基本原理である個人の尊厳と両性の本質的平等の原則を婚姻および家族の関係について定めたものであり、男女両性は本質的に平等であるから、夫と妻との間に、夫たり妻たるの故をもつて権利の享有に不平等な扱いをすることを禁じたものであつて、結局、継続的な夫婦関係を全体として観察した上で、婚姻関係における夫と妻とが実質上同等の権利を享有することを期待した趣旨の規定と解すべく、個々具体の法律関係において、常に必らず同一の権利を有すべきものであるというまでの要請を包含するものではないと解するを相当とする
 次に、民法七六二条一項の規定をみると、夫婦の一方が婚姻中の自己の名で得た財産はその特有財産とすると定められ、この規定は夫と妻の双方に平等に適用されるものであるばかりでなく、所論のいうように夫婦は一心同体であり一の協力体であつて、配偶者の一方の財産取得に対しては他方が常に協力寄与するものであるとしても、民法には、別に財産分与請求権、相続権ないし扶養請求権等の権利が規定されており、右夫婦相互の協力、寄与に対しては、これらの権利を行使することにより、結局において夫婦間に実質上の不平等が生じないよう立法上の配慮がなされているということができる。しからば、民法七六二条一項の規定は、前記のような憲法二四条の法意に照らし、憲法の右条項に違反するものということができない
 それ故、本件に適用された所得税法が、生計を一にする夫婦の所得の計算について、民法七六二条一項によるいわゆる別産主義に依拠しているものであるとしても、同条項が憲法二四条に違反するものといえないことは、前記のとおりであるから、所得税法もまた違憲ということはできない。
 されば右説示と同趣旨に出た原判決は正当であつて、所論は採るを得ない。よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一 裁判官 高橋潔 裁判官 高木常七 裁判官 石坂修一 裁判官 山田作之助)

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民法761条 日常家事に関する債務の連帯責任 家族法 親族 婚姻

民法761条 日常家事に関する債務の連帯責任

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(日常の家事に関する債務の連帯責任)
第七百六十一条  夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

・内縁についても準用される。

・日常家事に関する法律行為とは
単に夫婦の内部的な事情やその行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、さらに客観的にその法律行為の種類・性質等をも十分考慮して判断すべきである!!
→借財については金額が一番重要な判断要素になる。

・110条の趣旨の日常家事への類推適用
相手方において、その行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときには110条の趣旨を類推適用することにより第三者を保護する

+判例(S44.12.18)
理由
 上告代理人小宮正己の上告理由第一点について。
 本件売買契約締結の当時、被上告人が訴外Aに対しその売買契約を締結する代理権またはその他の何らかの代理権を授与していた事実は認められない、とした原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠関係および本件記録に照らし、首肯することができないわけではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした証拠の取捨判断および事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
 同第二点について。
 民法七六一条は、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによつて生じた債務について、連帯してその責に任ずる。」として、その明文上は、単に夫婦の日常の家事に関する法律行為の効果、とくにその責任のみについて規定しているにすぎないけれども、同条は、その実質においては、さらに、右のような効果の生じる前提として、夫婦は相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解するのが相当である。
 そして、民法七六一条にいう日常の家事に関する法律行為とは、個々の夫婦がそれぞれの共同生活を営むうえにおいて通常必要な法律行為を指すものであるから、その具体的な範囲は、個々の夫婦の社会的地位、職業、資産、収入等によつて異なり、また、その夫婦の共同生活の存する地域社会の慣習によつても異なるというべきであるが、他方、問題になる具体的な法律行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属するか否かを決するにあたつては、同条が夫婦の一方と取引関係に立つ第三者の保護を目的とする規定であることに鑑み、単にその法律行為をした夫婦の共同生活の内部的な事情やその行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、さらに客観的に、その法律行為の種類、性質等をも充分に考慮して判断すべきである
 しかしながら、その反面、夫婦の一方が右のような日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権の存在を基礎として広く一般的に民法一一〇条所定の表見代理の成立を肯定することは、夫婦の財産的独立をそこなうおそれがあつて、相当でないから、夫婦の一方が他の一方に対しその他の何らかの代理権を授与していない以上、当該越権行為の相手方である第三者においてその行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、民法一一〇条の趣旨を類推適用して、その第三者の保護をはかれば足りるものと解するのが相当である。
 したがつて、民法七六一条および一一〇条の規定の解釈に関して以上と同旨の見解に立つものと解される原審の判断は、正当である。
 ところで、原審の確定した事実関係、とくに、本件売買契約の目的物は被上告人の特有財産に属する土地、建物であり、しかも、その売買契約は上告人の主宰する訴外株式会社千代田べヤリング商会が訴外Aの主宰する訴外株式会社西垣商店に対して有していた債権の回収をはかるために締結されたものであること、さらに、右売買契約締結の当時被上告人は右Aに対し何らの代理権をも授与していなかつたこと等の事実関係は、原判決挙示の証拠関係および本件記録に照らして、首肯することができないわけではなく、そして、右事実関係のもとにおいては、右売買契約は当時夫婦であつた右Aと被上告人との日常の家事に関する法律行為であつたといえないことはもちろん、その契約の相手方である上告人においてその契約が被上告人ら夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由があつたといえないことも明らかである。
 してみれば、上告人の所論の表見代理の主張を排斥した原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした事実の認定を争い、または、独自の見解を主張するものにすぎず、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎)

・連帯責任の内容
連帯債務を負担するという意味
夫婦は同一内容の債務を併存的に負担し、一方について生じた事由(相殺・免除・時効)は両者に無制限に効力を及ぼす。

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民法760条 婚姻費用の分担 家族法 親族 婚姻

民法760条 婚姻費用の分担


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(婚姻費用の分担)
第七百六十条  夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

・婚姻が事実上破綻し別居生活に入ったとしても、離婚しない限り婚姻費用分担義務は消滅しないが、別居・婚姻破綻につき帰責性のある者が自己の生活碑文の婚姻費用分担請求をすることは権利濫用(1条3項)にあたる

+判例(東京高決S58.12.16)
   理  由
 一 本件抗告の趣旨は、「原審判を取消す。相手方の婚姻費用分担の申立てを却下する。相手方は抗告人に対し当事者間の二女石黒雅子を引渡せ。」との裁判を求めるというのであり、その理由の要旨は「原審判中、婚姻費用分担を命じた部分は、抗告人が相手方の不当な言動によつて昭和五七年八月三一日に○○○○公社(以下公社という。)を退職せざるをえなくなり、以後、失業中で無収入であること、また、相手方が昭和四五年の別居に際して結婚以来の抗告人の蓄財をすべて持ち去り、これがその後の子供の監護費用に余りあるほどであることを無視した点で不当である。さらに、相手方は原審判認定の収入のほかに、実姉の経営する病院から一か月一〇万円の収入をえ、また児童扶養手当として一か月四万六六〇〇円を受給しており、長女啓子は昭和五七年四月から○○○○工業株式会社に就職して相当の収入をえており、これらを考慮しなかつた点でも、原審判は不当である。また、原審判中二女雅子の監護養育についての申立てを却下した部分は、一度の調停、審判期日も開かないまま判断したものであつて不当である。」というのである。
 二 そこで、検討するに、抗告人と相手方との婚姻関係に関して、記録によれば、次の各事実が認められる。
  1 抗告人と相手方とは、共に勤務していた名古屋市内の公社の職場で知合い、昭和三七年八月ころ東京都内で同棲生活をはじめて、同年一二月婚姻届出をし、両者間に、昭和三八年三月一七日長女啓子が、
昭和四二年六月三〇日二女雅子が出生した。
  2 抗告人は昭和四一年ころ課長に昇進したが、そのころから深酒して深夜に帰宅することが多くなり、昭和四二年八月これを非難した相手方と口論となり、家財を投げつけたりしたことをきつかけに、相手方は出生間もない二女雅子を連れ、長女啓子は残したまま名古屋市内の実家に帰つた。抗告人は同年一〇月相手方と面談すべく名古屋市に赴き、一週間滞在したが、相手方及びその親族に面談を拒ばまれて帰京した。そして、抗告人は、同年一一月この間の無断欠勤を理由に公社から降格処分をうけた。
  3 その後、相手方も、婚姻関係改善の努力をする気になつて、同年一二月から翌四三年一月にかけて二女雅子を連れずに帰宅し、さらに同年五月には二女雅子を連れ戻して、抗告人との共同生活を再開し、その後は、抗告人が酒をのんであばれることが時にはあつたものの、概して平穏な状態が続いた。
  4 ところが、昭和四五年五月二五日、かねてそううつ病と診断されていた抗告人は医師から入院治療をすすめられたがこれを拒絶した。そして、公社から入院についての同意を要請された相手方は、抗告人の親族にも相談したが、判断がつけられず同意しないまま、同月三〇日に二人の子を連れて名古屋市内の実家に帰つてしまつた。その後、抗告人は、同年六月実母ヒサノを保護義務者として入院したが、相手方は主治医の病歴照会にも応ぜず、また同年一〇月末に抗告人が退院するまで全く面会にも行かず、この間の同年八月二六日には、二人の子と共に、各古屋市への転出手続をした。
  5 抗告人は、昭和四六年二月職場に復帰し、その後、電話等で相手方に同居するよう話合いを求めたが、相手方は終始これを避け、昭和四七年以降昭和五四年までは互いに全く音信のない状態が続いた。
昭和五四年一月、抗告人は久野比呂子(昭和一四年生)と見合をし、交際をはじめ、同年二月から三月にかけて、離婚問題を話合うべく三回にわたり相手方の実家に行つたが、相手方と直接話合うことはできなかつたので、相手方との離婚を前提として、同年四月久野と同棲生活をはじめた。他方、相手方は昭和五一年四月短期大学に入学し昭和五三年三月これを卒業し、その後も、実母や姉などの助力をえながら○○○○株式会社に勤務して、二人の子供の養育を続けた。
  6 抗告人は、昭和五四年四月東京家庭裁判所に離婚調停を申立て、同年一二月これを取下げたが、昭和五六年五月同庁に再び離婚調停を申立て、これが同年一二月不成立になつたので、昭和五七年七月東京地方裁判所に離婚訴訟を提起した。

 三 民法七六〇条、七五二条に照らせば、婚姻が事実上破綻して別居生活に入つたとしても、離婚しないかぎりは夫婦は互に婚姻費用分担の義務があるというべきであるが、夫婦の一方が他方の意思に反して別居を強行し、その後同居の要請にも全く耳を藉さず、かつみずから同居生活回復のための真摯な努力を全く行わず、そのために別居生活が継続し、しかも右別居をやむを得ないとするような事情が認められない場合には、前記各法条の趣旨に照らしても、少なくとも自分自身の生活費にあたる分についての婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されずただ、同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるというべきである。そして、右認定事実によれば、相手方は抗告人の意思に反して別居を強行し、その後の抗告人の再三の話合いの要請にも全く応ぜず、かつみずからは全く同居生活回復の努力を行わず、しかも右別居についてやむを得ない事情があるとは到底いいがたい状態で一〇年以上経過してから本件婚姻費用分担の申立てをしたものと評価すべきであるから、自己の生活費を婚姻費用の分担として抗告人に請求するのは、まさに権利の濫用であつて許されず、ただ相手方と同居する長女啓子、二女雅子の実質的監護費用だけを婚姻費用の分担として抗告人に請求しうるにとどまるというべきである。なお、抗告人主張のような多額な金品を別居に際して相手方が持去つたことを認めるに十分な証拠はないし、もつとも若干の金品を相手方が持去つたことは窺えないでもないが、これとても、本件婚姻費用分担申立てに至るまでの二人の子の監護費用に充ててなお余りあるものとは認められないから、この点は、婚姻費用分担請求の当否には影響するものではない。

 四 そして、右のような婚姻費用分担額(実質的監護費用額)の算定の前提となる事情として、記録によれば、次の各事実が認められる。
  1 抗告人は、本件婚姻費用分担申立て当時、公社に勤務し、昭和五六年における租税、社会保険料控除後の平均月収は約三一万九〇〇〇円であり、相手方は、当時前記○○○○に勤務し、昭和五六年における同様の平均月収は約四万七〇〇〇円であつた。
  2 相手方は、児童扶養手当法に基づく同手当として、本件婚姻費用分担申立て当時は月額三万四三〇〇円、昭和五六年四月以降は月額二万九三〇〇円を受給している(その受給額がこれを上まわることについては適確な証拠がない。)。
  3 抗告人は、昭和五七年八月三一日に公社を退職し、そのころ、退職手当約一四六三万円(ただし、租税、共済弁済金等を控除後の手取額は約七〇二万円)の支払をうけ、その後は、うつ状態で通院加療中で就職せず、公社から減額退職年金一四一万八〇〇〇円(月額一一万八〇〇〇円)を受給して、久野比呂子と同棲生活を続けている。
  4 長女啓子は、本件婚姻費用分担申立て当時、私立高校に通学していたが、昭和五七年三月これを卒業し、以後○○○○工業株式会社で工員として働いている。また、二女雅子は同当時、中学生であつたが、昭和五八年四月から私立高校に通学している。
 五 そこで、右認定したところに従つて、労働科学研究所の総合消費単位(以下消費単位という。)をも参酌して、相手方が抗告人に分担を求めうる婚姻費用額について検討する。
  1 昭和五五年一〇月三一日(抗告人に婚姻費用分担申立てによる呼出通知が到達した日)から昭和五七年三月三一日(長女啓子の就職)まで
 相手方の収入からは二人の子の監護費用にまわす余裕がないことは生活保護基準に照らしても明らかであり(相手方にこれ以上の収入があることを認めるに足りる証拠はなく、相手方が二人の子の監護のために、その親族から借金するなどの援助をうけていたとしても、婚姻費用分担額算定にあたり、これを考慮する余地はない。)、抗告人は、その収入をもつて、二人の子が自分と同一水準の生活を営みうるだけの費用を婚姻費用として分担すべきである。ただし、前記認定のような事情の下で抗告人が久野比呂子と同棲生活をして、その必要生計費の増加がある以上、これも考慮すべきであり、また、この期間、相手方は月額三万円内外の児童扶養手当を受給し、これが二人の子の監護費用に現実に充てられた以上、親の未成年の子に対する生活保持義務は公的扶助に優先して履行されるべきであるといつても、これを婚姻費用分担額算定にあたつて考慮しないわけにはいかない。
 以上のような諸事情に、この期間の各人の消費単位(抗告人一〇五、久野八〇、啓子九〇、雅子八〇)を参酌すると、相手方が、この期間に抗告人に対して求めうる婚姻費用分担額は月額一二万円をもつて相当とするというべきである。すると、この期間の分担額総額は二〇四万四〇〇〇円(一七か月プラス一日分)となる。
  2 昭和五七年四月一日(啓子の就職)から同年八月三一日(抗告人の退職)まで
 昭和五七年四月一日以降は、啓子は工員として稼働して相当の収入を得ているから、婚姻費用分担額算定にあたり同女の監護費用は考慮する必要がなくなつたものというべきであり、このような事情の変化を勘案すると、相手方が抗告人に求めうるこの期間の婚姻費用分担額は月額七万五〇〇〇円をもつて相当とするというべきである。すると、この期間の分担額総額は三七万五〇〇〇円(五か月分)となる。
  3 昭和五七年九月一日(抗告人の退職)以降
 昭和五七年九月一日以降は、抗告人の継続的収入は減額退職年金(年一四一万八〇〇〇円)だけとなつたのであるが、退職手当金手取額が約七〇二万円あつたことも考慮すべきである(なお、右手取額のうち七〇〇万円が久野比呂子からの借入金の弁済に充てられたとの抗告人の主張については、これに副う久野作成の受領証は直ちに措信しがたく、他にこれを証するに足りる証拠はない。)。
 そこで、これら事情の変化及びこれに伴う消費単位の変動(抗告人は退職により一〇五から一〇〇へ、雅子は高校進学により昭和五八年四月以降、八〇から九〇へ)を勘案すると、相手方が抗告人に求めうる昭和五七年九月一日以降の婚姻費用分担額は月額四万円をもつて相当とするというべきである。すると、昭和五七年九月一日から昭和五八年一一月末日までの分担額総額は六〇万円(一五か月分)となる。
 六 すでに認定したとおり、雅子は三歳ころから抗告人と別居して相手方に監護され、現に名古屋市内の高校に通学しており、別居以来抗告人とはほとんど面会したこともないのであるから、その別居の事情を考慮しても、抗告人の同女引渡しの申立ては理由がないことが明らかである(なお、この申立ては昭和五六年一二月三日の調停期日で合意成立の見込みがないとして審判に移行されたものであることが記録上明らかである。)。
 七 したがつて、本件抗告のうち、婚姻費用分担審判の取消しを求める部分は、その一部について理由があるので、みずから審判に代わる裁判をするのを相当と認め、原審判主文第一項を、本決定主文第一項のとおり変更することとし、本件抗告のうち、子の監護に関する処分審判の取消しを求める部分は、理由がないから棄却することとし、主文のとおり、決定する。
 (裁判長裁判官 森綱郎 裁判官 片岡安夫 小林克巳)


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民法759条 財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件 家族法 親族 婚姻

民法759条 財産の管理者の変更及び共有財産分割の対抗要件

(財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件)
第七百五十九条  前条の規定又は第七百五十五条の契約の結果により、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

・758条1項による夫婦財産不変原則の例外。

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民法758条 夫婦の財産関係の変更の制限等

民法758条 夫婦の財産関係の変更の制限等

(夫婦の財産関係の変更の制限等)
第七百五十八条  夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない
2  夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であったことによってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる。
3  共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる。

・婚姻後夫婦が締結された夫婦財産契約を解約したり、その内容を変更したりすることは、たとえ第三者の利害に影響がなかった場合でも許されない。

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民法756条 夫婦財産契約の対抗要件 家族法 親族 婚姻

民法756条 夫婦財産契約の対抗要件

(夫婦財産契約の対抗要件)
第七百五十六条  夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

・登記されていない夫婦財産契約は夫婦間では有効であるが、夫婦の承継人や第三者に対し対抗力はない。

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民法755条 夫婦の財産関係 家族法 親族 婚姻

民法755条 夫婦の財産関係

(夫婦の財産関係)
第七百五十五条  夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。

・婚姻後の夫婦の財産関係について、民法は契約財産制度と法廷財産制度を用意している。本条は契約による財産制度を優先させている。

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民法754条 夫婦間の契約の取消権 家族法 親族 婚姻

民法754条 夫婦間の契約の取消権

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(夫婦間の契約の取消権)
第七百五十四条  夫婦間でした契約は、婚姻中いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

・取消権の行使は婚姻中に限られる!

・婚姻中ならばいつでも取消権を行使できる
=一般的な取消権の行使期間を制限する126条は適用されない
=20年以上前に婚姻中締結された契約の取消しもできる

・取消しの効果は遡及し、履行完了後でも回復を求められる。

・婚姻が実質的に破たんしている場合は、夫婦間の契約を取り消すことはできない!!!

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民法753条 婚姻による成年擬制 家族法 親族 婚姻

民法753条 婚姻による成年擬制

(婚姻による成年擬制)
第七百五十三条  未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

・成年擬制の効果は民法の中で認められる。
=公職選挙法や未成年者飲酒禁止法などでは以前として未成年者

・婚姻の解消によっても成年擬制の効果は失われない。

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民法752条 同居、協力及び扶助の義務 家族法 親族 婚姻

民法752条 同居、協力及び扶助の義務

(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条  夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

・同居義務の内包する政教動は婚姻共同生活の本質をなすものであるが、法的強制には親しまない。
→直接強制も間接強制も許されない

・家事事件手続法に基づく夫婦同居に関する審判は本質的に非訟事件の裁判であって、公開の法廷における対審及び判決によらなくても、憲法32条・82条に反しない

+判例(S40.6.30)
理由
 本件抗告の理由は別紙記載のとおりであり、これに対して当裁判所は次のように判断する。
 憲法八二条は「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」旨規定する。そして如何なる事項を公開の法廷における対審及び判決によつて裁判すべきかについて、憲法は何ら規定を設けていない。しかし、法律上の実体的権利義務自体につき争があり、これを確定するには、公開の法廷における対審及び判決によるべきものと解する。けだし、法律上の実体的権利義務自体を確定することが固有の司法権の主たる作用であり、かかる争訟を非訟事件手続または審判事件手続により、決定の形式を以て裁判することは、前記憲法の規定を回避することになり、立法を以てしても許されざるところであると解すべきであるからである。
 家事審判法九条一項乙類は、夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助に関する事件を婚姻費用の分担、財産分与、扶養、遺産分割等の事件と共に、審判事項として審判手続により審判の形式を以て裁判すべき旨規定している。その趣旨とするところは、夫婦同居の義務その他前記の親族法、相続法上の権利義務は、多分に倫理的、道義的な要素を含む身分関係のものであるから、一般訴訟事件の如く当事者の対立抗争の形式による弁論主義によることを避け、先ず当事者の協議により解決せしめるため調停を試み、調停不成立の場合に審判手続に移し、非公開にて審理を進め、職権を以て事実の探知及び必要な証拠調を行わしめるなど、訴訟事件に比し簡易迅速に処理せしめることとし、更に決定の一種である審判の形式により裁判せしめることが、かかる身分関係の事件の処理としてふさわしいと考えたものであると解する。しかし、前記同居義務等は多分に倫理的、道義的な要素を含むとはいえ、法律上の実体的権利義務であることは否定できないところであるから、かかる権利義務自体を終局的に確定するには公開の法廷における対審及び判決によつて為すべきものと解せられる(旧人事訴訟手続法〔家事審判法施行法による改正前のもの〕一条一項参照)。従つて前記の審判は夫婦同居の義務等の実体的権利義務自体を確定する趣旨のものではなく、これら実体的権利義務の存することを前提として、例えば夫婦の同居についていえば、その同居の時期、場所、態様等について具体的内容を定める処分であり、また必要に応じてこれに基づき給付を命ずる処分であると解するのが相当である。けだし、民法は同居の時期、場所、態様について一定の基準を規定していないのであるから、家庭裁判所が後見的立場から、合目的の見地に立つて、裁量権を行使してその具体的内容を形成することが必要であり、かかる裁判こそは、本質的に非訟事件の裁判であつて、公開の法廷における対審及び判決によつて為すことを要しないものであるからである。すなわち、家事審判法による審判は形成的効力を有し、また、これに基づき給付を命じた場合には、執行力ある債務名義と同一の効力を有するものであることは同法一五条の明定するところであるが、同法二五条三項の調停に代わる審判が確定した場合には、これに確定判決と同一の効力を認めているところより考察するときは、その他の審判については確定判決と同一の効力を認めない立法の趣旨と解せられる。然りとすれば、審判確定後は、審判の形成的効力については争いえないところであるが、その前提たる同居義務等自体については公開の法廷における対審及び判決を求める途が閉ざされているわけではない。従つて、同法の審判に関する規定は何ら憲法八二条、三二条に牴触するものとはいい難く、また、これに従つて為した原決定にも違憲の廉はない。それ故、違憲を主張する論旨は理由がなく、その余の論旨は原決定の違憲を主張するものではないから、特別抗告の理由にあたらない。
 よつて民訴法八九条を適用し、主文のとおり決定する。
 この裁判は、裁判官横田喜三郎、同入江俊郎、同奥野健一の補足意見、裁判官山田作之助、同横田正俊、同草鹿浅之介、同柏原語六、同田中二郎、同松田二郎、同岩田誠の意見があるほか、裁判官全員の一致した意見によるものである。

・貞操の義務
不貞配偶者の相手方に対する他方配偶者の損害賠償請求は認められる!

・婚姻関係がすでに破たんしている夫婦の一方と肉体関係をもった第三者は、他方配偶者に対する不法行為責任は負わない!

+判例(H8.3.26)
理由
 上告代理人森健市の上告理由について
 一 原審の確定した事実関係は次のとおりであり、この事実認定は原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができる。
 1 上告人とaとは昭和四二年五月一日に婚姻の届出をした夫婦であり、同四三年五月八日に長女が、同四六年四月四日に長男が出生した。
 2 上告人とaとの夫婦関係は、性格の相違や金銭に対する考え方の相違等が原因になって次第に悪くなっていったが、aが昭和五五年に身内の経営する婦人服製造会社に転職したところ、残業による深夜の帰宅が増え、上告人は不満を募らせるようになった。
 3 aは、上告人の右の不満をも考慮して、独立して事業を始めることを考えたが、上告人が独立することに反対したため、昭和五七年一一月に株式会社A(以下「A」という)に転職して取締役に就任した。
 4 aは、昭和五八年以降、自宅の土地建物をAの債務の担保に提供してその資金繰りに協力するなどし、同五九年四月には、Aの経営を引き継ぐこととなり、その代表取締役に就任した。しかし、上告人は、aが代表取締役になると個人として債務を負う危険があることを理由にこれに強く反対し、自宅の土地建物の登記済証を隠すなどしたため、aと喧嘩になった。上告人は、aが右登記済証を探し出して抵当権を設定したことを知ると、これを非難して、まず財産分与をせよと要求するようになった。こうしたことから、aは上告人を避けるようになったが、上告人がaの帰宅時に包丁をちらつかせることもあり、夫婦関係は非常に悪化した。
 5 aは、昭和六一年七月ころ、上告人と別居する目的で家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てたが、上告人は、aには交際中の女性がいるものと考え、また離婚の意思もなかったため、調停期日に出頭せず、aは、右申立てを取り下げた。その後も、上告人がAに関係する女性に電話をしてaとの間柄を問いただしたりしたため、aは、上告人を疎ましく感じていた。
 6 aは、昭和六二年二月一一日に大腸癌の治療のため入院し、転院して同年三月四日に手術を受け、同月二八日に退院したが、この間の同月一二日にA名義で本件マンションを購入した。そして、入院中に上告人と別居する意思を固めていたaは、同年五月六日、自宅を出て本件マンションに転居し、上告人と別居するに至った。
 7 被上告人は、昭和六一年一二月ころからスナックでアルバイトをしていたが、同六二年四月ころに客として来店したaと知り合った。被上告人は、aから、妻とは離婚することになっていると聞き、また、aが上告人と別居して本件マンションで一人で生活するようになったため、aの言を信じて、次第に親しい交際をするようになり、同年夏ころまでに肉体関係を持つようになり、同年一〇月ころ本件マンションで同棲するに至った。そして、被上告人は平成元年二月三日にaとの間の子を出産し、aは同月八日にその子を認知した。
 二 甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。けだし、丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となる(後記判例参照)のは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、甲にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからである。
 三 そうすると、前記一の事実関係の下において、被上告人がaと肉体関係を持った当時、aと上告人との婚姻関係が既に破綻しており、被上告人が上告人の権利を違法に侵害したとはいえないとした原審の認定判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例(最高裁昭和五一年(オ)第三二八号同五四年三月三〇日第二小法廷判決・民集三三巻二号三〇三頁)は、婚姻関係破綻前のものであって事案を異にし、本件に適切でない。論旨は採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 可部恒雄 裁判官 園部逸夫 裁判官 大野正男 裁判官 千種秀夫 裁判官 尾崎行信)

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