民法800条 縁組の届出の受理 家族法 親族 親子

民法800条 縁組の届出の受理

(縁組の届出の受理)
第八百条  縁組の届出は、その縁組が第七百九十二条から前条までの規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

・受理についての規定。


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民法799条 婚姻の規定の準用

民法799条 婚姻の規定の準用

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(婚姻の規定の準用)
第七百九十九条  第七百三十八条及び第七百三十九条の規定は、縁組について準用する。

・成年被後見人が縁組をするには、その成年後見人の同意を要しない。

・縁組届=縁組の成立要件(成立要件説)

・出生届の縁組届への転換を否定!
他人の子を自己の嫡出子として虚偽の出生届をした場合(藁の上の養子)について。これにより嫡出親子関係が生じないことは当然、養子親子関係も生じない!!

・虚偽の認知届につき、認知者が被認知者を自己の養子とすることを意図しており、さらにその後、被認知者の法定代理人と婚姻した事実があっても、右認知届をもって養子縁組とみなすことはできない!!
+判例(S54.11.2)
理由
 上告代理人柳原武男の上告理由第一点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
 同第二点について
 認知の届出が事実に反するため無効である場合には、認知者が被認知者を自己の養子とすることを意図し、その後、被認知者の法定代理人と婚姻した事実があるとしても、右認知届をもつて養子縁組届とみなし、有効に養子縁組が成立したものと解することはできない(最高裁昭和四三年(オ)第五二〇号同四九年一二月二三日第二小法廷判決・民集二八巻一〇号二〇九八頁、最高裁昭和四九年(オ)第八六一号同五〇年四月八日第三小法廷判決・民集二九巻四号四〇一頁参照)。けだし、養子縁組は、養親となる者と養子となる者又はその法定代理人との間の合意によつて成立するものであつて、認知が認知者の単独行為としてされるのはその要件、方式を異にし、また、認知者と被認知者の法定代理人との間の婚姻が認知者と被認知者の養子縁組に関する何らかの意思表示を含むものということはできないからである。したがつて、これと同旨の原判決は正当であり、論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
  (塚本重頼 大塚喜一郎 栗本一夫 鹽野宜慶)


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民法798条 未成年者を養子とする縁組 家族法 親族 親子

民法798条 未成年者を養子とする縁組

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(未成年者を養子とする縁組)
第七百九十八条  未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない

・許可を受けないといけないが、許可の審判があった日に養子縁組が成立するわけではない。養子縁組は縁組の日に成立する(=別途届出が必要ということ)。

・未成年養子縁組の許可をするには縁組が子の福祉に合致するかを十分検討すべき
+判例(新潟家審S57.8.10)
  理  由
 一 本件申立ての趣旨及び事情
 事件本人の父は病弱のために職がなく、事件本人の母が働いて一家の生計を支えているものの、事件本人には既に兄二人がおり、事件本人の両親は事件本人を養育する経済的余裕がない。そこで、申立人が事件本人を引取つて養育しているところ、申立人は出家していて子がなく、事件本人の親として事件本人を育ててゆくことを希望するものであり、これが事件本人にとつても幸福であると考えるので、申立人が事件本人を養子とすることの許可を求める。
 二 当裁判所の判断
  1 申立人並びに事件本人の親権者父小田徳男及び母小田カツコの各審問結果、当庁調査官補○○○○作成の調査報告書、筆頭者水谷晴苗及び同小田徳男の各戸籍謄本を総合すると、次の各事実を認めることができる。
   (一) 事件本人は昭和五七年四月二八日小田徳男、小田カツコ夫婦の三男として出生した。事件本人の父小田徳男は交通事故及び稼働中の事故により健康を害し昭和五五年ころより無職の状態が続いており、現在も後遺症のためか体の調子が悪く就労できる見込みがついていない。そのため、母小田カツコが工員として働いて一家の生計を支えてきたが、徳男、カツコ夫婦の間には既に長男徳太郎(昭和四四年八月三一日生)、次男烈(昭和四六年七月一日生)がおり、これ以上は子を養育する経済的余裕がないとして妊娠中から既に事件本人を養子に出すことを決め、養親捜しを担当の婦人科医に依頼していた。
   (二) 申立人は六歳のときに僧侶水谷晴苗(明治三九年二月二二日生)の養子となつたが、尼僧学校卒業後僧侶となり、肩書住所地にある○○寺(曹洞宗)で養母と共に生活してきたが、昭和五一年ころから寺の後継者のことや申立人の老後のことを考えて養子となる者を捜していたところ、事件本人の親を紹介され、事件本人の出生前に両親との間で話し合い事件本人を申立人の養子にすることを決め、昭和五七年五月三日事件本人の退院と同時に同人を引取り、以来申立人のもとで養育している。
   (三) ○○寺は、法人組織になつているが、約二〇〇坪の土地に本堂と棟続きの住居(一階四畳半、六畳、一〇畳、二階八畳)があり、ここに申立人、申立人の養母、事件本人の三人が暮らしている。申立人が外出する際には近隣に住む主婦を事件本人の子守に雇つているが、申立人が在宅しているときは、申立人自身が事件本人の世話をしている。また、○○寺の近くに寺の世話人をしている後藤武雄(仕出屋経営)の住居があり、申立人は幼少期後藤家で家族同様の扱いを受けていたこともあつて、事件本人がある程度成長したら申立人の多忙のときなどは後藤家に事件本人の世話をしてもらう予定でいる。申立人の収入は約三〇〇万円であり生活は安定している。また、申立人は事件本人に対し愛情を感じており、事件本人の意志を尊重し寺の後継ぎにすることを強制するつもりはない旨言明している。なお、○○寺は以前尼寺であつたが今は寺に昇格しており、男子が住職になることはさしつかえない。
   (四) 事件本人の両親は、事件本人の養子先が寺と聞き初めは戸惑いを感じたが、申立人の人柄をみて養子に出すことを決意し、既に申立人のもとで養育してもらつていることもあり、他の養親を捜す気持はない。
 2 未成年者養子縁組について家庭裁判所の許可を要するものとした理由は、未成年者の福祉に合致しない養子縁組を防止しようとするところにあり家庭裁判所としては縁組の動機、実親及び養親となるべき者の各家庭の状況等を十分検討したうえで、縁組が子の利益になるとの心証を得たうえで許可をなすべきであると思料するところ、本件のように未成年者が生後まもない幼児であつて当該養子縁組について何らの意思表明もできない状態にあるときは、家庭裁判所がその申立ての当否を決するにあたつては一層慎重な判断を要するといわなければならない。
 そこで、検討するに、一般に未成年者はその実親のもとで監護養育されることが子の福祉に最も合致するといえようが、本件の場合のように家庭の事情等でそれが困難な場合には次善の方法として子の監護を他人に託することもまたやむをえないものと思われる。しかし、その際には子の利益になるようにできるだけ条件の良いところを捜すべく最大限の努力を尽すことが実親の責務であるといえよう。そして、本件のように生後すぐに養子に出すというような場合には、特段の事情のない限り養親の条件としてまず第一に夫婦そろつているということが考えられるべきであろう。けだし、幼児の場合には特に父母の愛情がその健全な育成のために大切であると思われるからである。これを本件についてみるに、事件本人の両親はわが子を僧侶の養子にして寺に入れることを別段希望していたわけではなく、たまたま紹介された相手が僧侶であつたというのであり、実際初めはこれを知つて戸惑いを感じていたのである。ちなみに、前記調査報告書によると、新潟県○○児童相談所においては現在養子縁組を希望する里親の数の方が子のそれを上回つている状態であり、生後まもない男児であれば里親を見つけるのは比較的容易であろうというのである。してみると、本件の場合事件本人の実親が前記のような努力を十分に尽したかどうか疑問が残るといわざるをえない
 他方、申立人についてみると、その職業、収入、住居の状態、人柄等については別段問題は認められないところ、本件申立ての動機として事件本人を寺の後継者にしたいこと、事件本人に申立人の老後の面倒をみてもらいたいことをあげており、若干養親の利益に走り過ぎるきらいがないことはないが、実際申立人は事件本人に愛情を感じており、自分の子として養育することに生きがいを見出していることもうかがわれるので、前記動機をもつてこれをいちがいに不当とみることはできない。ただ、ここで危惧の念を抱かせるのは、本件養子縁組によつて事件本人が将来僧侶となるべく運命づけられ、その結果事件本人の職業選択の自由を侵害することになるのではないかという問題である。この点につき、申立人は事件本人を養子にしても寺を継がせることを強制するつもりはないと言明しているし、もとよりこれは事件本人の気持しだいであり、同人が寺の後継者になることを承諾しない以上申立人としてもいかんともすることはできないであろう。しかしながら、申立人が事件本人を寺の後継ぎにしたいという希望を持つていることは事実であり、本件養子縁組が認められた場合、事件本人がこれから先養育される環境、申立人と事件本人とが母と子という強いきずなで結ばれ、かつ申立人に事件本人が監護教育されることなどを考慮すると、前記の危惧の念を完全に払拭することはできない。
 さらに、申立人の住んでいる○○寺は寺に昇格したとはいえ申立人及び同人の養母の二人の尼僧が住んでおり、実質的には未だ尼寺であつて一般的な家庭とは相当に趣きを異にすると思われ、幼児(特に男児)の生育する環境として適当であるかどうかについても疑問の残るところである。もつとも、前認定のとおり、申立人自身幼少期後藤家(いわゆる一般家庭に該当すると思われる。)の世話になつたというのであり、また事件本人がもう少し成長したら申立人と同様に後藤家の世話になるつもりでいることが認められ、したがつて、事件本人が一般的な家庭の雰囲気に接する機会をもちうることになるとはいえるが、このような形で他人の援助が必要であるということは、幼児を育ててゆく場所として尼寺という生活環境自体に不十分な点があるのではないかとの疑問を抱かせる。
 3 以上検討した結果によると、本件養子縁組については未成年者の福祉に合致するか否かについて前記のとおりの懸念をさしはさむ余地があり、本件申立てを認容することに対しては消極的にならざるをえない。
 ところで、事件本人は既に三ヵ月余り申立人のもとで現に養育されてきているのであり、また事件本人の実親も改めて申立人以外の養親を捜す気持はないと述べているから、本件養子縁組を許可しないことによりかえつて事件本人の利益を害することになりはしないかという点については検討を要するところではある。しがしながら、既成事実を先行させることによつて、家庭裁判所が未成年者養子縁組について与えられている審査権を弱められる結果になるのは好ましいこととはいえないし、また前記のとおり事件本人の実親にしても児童相談所等の援助を求める余地は残されているはずである。そして、仮りにこのまま事件本人が申立人のもとで養育されることになつたとしても、申立人と事件本人との養子縁組の問題は、せめて事件本人が申立人の身分、職業及び自己の置かれている生活環境等についておおよその認識ができ、養子縁組についても一応の意思表明が可能な年齢に達するまで留保しておき、事件本人にその選択をさせる道を残しておくべきものと思料する(本件の場合、事件本人がこのまま申立人の寺で養育されることになれば、事件本人は比較的早い時期に友人や同級生らの家庭環境と自己のそれとの違いに気づいてこれに疑問をもつことが予想されるから、申立人としても早晩事件本人に対しこの間の事情を説明する必要が生じてこよう。)。
 三 結論
 よつて、前記説示したとおり、本件養子縁組を許可するのは相当でないから、参与員○○○○の意見を聴いたうえ、本件申立てを却下することとし、主文のとおり審判する。
 (家事審判官 井上哲男)

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民法797条 15歳未満の者を養子とする縁組 家族法 親族 親子

民法797条 15歳未満の者を養子とする縁組

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(十五歳未満の者を養子とする縁組)
第七百九十七条  養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2  法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。

・代諾縁組という(797条)。

・養子となる者が15歳未満の場合、家庭裁判所の許可に加えて、法定代理人による縁組の許可が必要!

・父母が監護権者である場合には、その父母の同意も必要(797条2項)

・適法な代諾を欠く場合
いったん他人の産んだ子として届け出ておき、後日戸籍上の親の代諾により養子にやる場合、養子が15歳に達した後に適法な追認をすれば、縁組は初めから有効となる。

・養子縁組の追認のような身分行為には116条ただし書きは類推適用されない。
+判例(S39.9.8)
理由
 上告代理人古賀久仁衛の上告理由第一点について。
 所論は、養子縁組の追認についても民法一一六条但書の規定が適用されることを前提とするものであるが、本件養子縁組の追認のごとき身分行為については、同条但書の規定は類推適用されないものと解するのが相当である。けだし事実関係を重視する身分関係の本質にかんがみ、取引の安全のための同条但書の規定をこれに類推適用することは、右本質に反すると考えられるからである。
 したがつて、原判決が本件養子縁組の追認について、同条但書の規定を類推適用しなかつたのは、相当というべく、原判決には、所論のような違法はない。
 所論は、独自の見解を述べるもので、採用しがたい。
 同第二点について。
 所論は、被上告人Aおよび訴外B間の婚姻および養子縁組には、当事者間に意思の合致がない旨を主張するけれども、原判決が、右両名間に婚姻が有効に成立しかつ右両名は被上告人Cと養子縁組をする意思を有していたものと判断していることは、その判文上明らかである(また、原判決挙示の証拠によると、右判断は、これを是認しえないではない)。
 原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審が適法にした事実の認定を非難するに帰し、採用しがたい。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎)

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民法796条 配偶者のある者の縁組 家族法 親族 親子

民法796条 配偶者のある者の縁組

(配偶者のある者の縁組)
第七百九十六条  配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。

・配偶者のある者が縁組をする場合には、原則として配偶者の同意が必要!

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民法795条 配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組 家族法 親族 親子

民法795条 配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組

(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組)
第七百九十五条  配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない

・未成年者を養子とする場合には夫婦共同縁組が原則!

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民法794条 後見人が被後見人を養子とする縁組

民法794条 後見人が被後見人を養子とする縁組

(後見人が被後見人を養子とする縁組)
第七百九十四条  後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様とする。

・後見人の任務が終了した後でも家庭裁判所の許可を要する!

・後見人が被後見人の財産管理に関する不正を隠ぺいする手段として縁組を用いることの内容に家庭裁判所の許可を要するものとした。


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民法793条 尊属又は年長者を養子とすることの禁止 家族法 親族 親子

民法793条 尊属又は年長者を養子とすることの禁止

(尊属又は年長者を養子とすることの禁止)
第七百九十三条  尊属又は年長者は、これを養子とすることができない。

・養親の双方とも養子よりも年長であることが必要!!


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民法792条 養親となる者の年齢 家族法 親族 親子

民法792条 養親となる者の年齢

(養親となる者の年齢)
第七百九十二条  成年に達した者は、養子をすることができる。

・養子縁組が重大な身分関係の設定をともないかつ、養子を養育し、その上に親権を行使するには十分な法律行為をなすことのできる判断能力が必要とされるため、成年者を養親適格者とした。

・縁組意思とは、社会通念上親子と認められる関係を成立させるという意思をいう(実質的意思説)

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民法791条 子の氏の変更 家族法 親族 親子

民法791条 子の氏の変更

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(子の氏の変更)
第七百九十一条  子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる
2  父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる
3  子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
4  前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる

・子の福祉・利益を尊重する観点から、非嫡出子の父の氏への変更を許可した判例
+判例(大阪高決9.4.25)
   理  由
第1 本件即時抗告の趣旨及び理由は別紙「即時抗告申立書」(写し)記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
 1 原審判1枚目裏11行目から3枚目裏10行目までを、次のとおり、付加、訂正の上引用する。
  (1) 文中「申立人」とあるを「抗告人」と訂正する。
  (2) 2枚目表末行「現在通園中の」とあるを「通園していた」と、同裏4行目「混乱し、」とあるを「混乱したこともあって、」と、同6行目「入学する予定の」とあるを「入学した」と各訂正する。
  (3) 3枚目表1行目と2行目の間に次のとおり付加する。「父は、既に平成2年6月27日、浩子の要求に応じて、浩子の自宅(もともと父が浩子ら家族と共同生活を営んでいた居宅)の土地・建物の各2分の1の持分を浩子に贈与して、その旨の持分移転登記も了しており、抗告人は、同訴訟における和解に際し、残りの2分の1の持分を移転するほか、将来支給されることの予定されている退職金3000万円弱の約3分の1である1000万円を支払う旨申し出ており、本件申立てが認容されてもこの申出を維持し、和解には積極的に対応する意向を表明している。」
  (4) 3枚目裏2行目「帰宅を求めたが、」とあるを「明のためにも帰宅することを求めたが、」と訂正し、同8行目「話したこと」の次に「(ただし、母との内縁関係、抗告人の存在は話していない。)」を付加する。
 2 上記認定事実に基づいて検討する。
 抗告人は、出生以来約6年間余父と同居して父の氏を通称として使用し続けており、小学校においては、教育的配慮から父の氏を通称として使用することを受け入れる見込みであり、その結果さしあたっては不都合を来していないように窺われるものの、戸籍上と異なる氏を使用していくことが今後の生活上さまざまな支障をきたす可能性があり、また、日常使用している氏が戸籍上の氏と異なることを知り、しかもその変更が認められないまま推移することが抗告人に重大な精神的負担を与え、その健全な人格の形成に悪影響を及ぼす可能性もあることは否定できないのであって、抗告人が父の戸籍に入籍する利益は大きいものというべきである。また、父の戸籍の身分事項欄には、抗告人を認知した旨の記載が既にされており、現在でも戸籍を確認すれば抗告人の存在は容易に認識することができるのであるから、抗告人が父の戸籍に入籍されること自体で、明の将来の就職や婚姻に支障をきたす可能性は少ないし、既に無事結婚式を済ませた久美の婚姻生活に支障をきたす可能性も少ないのであって、明や久美に重大な心理的影響を与える可能性も少ないというべきである。
 もっとも、父の別居の主たる原因は、父の不貞行為であり、明が父の別居後精神的に不安定な状態に陥ったことに対する父としての積極的な関わりはほとんどなく、明との対応を浩子に任せる結果となり(特に、明が精神的に不安定な状態に陥った直後に父が関わりを持たなかったことは大いに非難されるべきである。)、その間、父は、浩子との婚姻関係を修復する努力を惜しんだこと等の事情に鑑み、浩子の反対を単なる主観的感情に基づくものということはできない。
 しかし、父と浩子の関係が修復される可能性は現時点ではとうてい期待できず、父と母及び抗告人の共同生活関係はさらに定着していくものと推認される。また、父と浩子の間では、離婚訴訟が係属しているが、和解の目処が立っておらず、早晩決着する見込みが乏しいし、本件申立てを認容しても、父は、浩子と離婚することはできず、したがって、母と婚姻することもできないのであるから、本件申立てを認容することが上記離婚訴訟や和解に影響を与える可能性も大きくはないというべきである。
 以上によれば、現段階に至っては、子の福祉、利益を尊重する観点から、抗告人の氏を父の氏に変更することを許可するのが相当というべきである。
 3 よって、抗告人の本件申立ては理由があるからこれを認容すべきであり、これと異なる原審判を取り消し、抗告人の氏を父の氏に変更することを許可することとして、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 中田耕三 裁判官 高橋文仲 中村也寸志)

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