民法791条 子の氏の変更 家族法 親族 親子

民法791条 子の氏の変更

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(子の氏の変更)
第七百九十一条  子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる
2  父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる
3  子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
4  前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる

・子の福祉・利益を尊重する観点から、非嫡出子の父の氏への変更を許可した判例
+判例(大阪高決9.4.25)
   理  由
第1 本件即時抗告の趣旨及び理由は別紙「即時抗告申立書」(写し)記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
 1 原審判1枚目裏11行目から3枚目裏10行目までを、次のとおり、付加、訂正の上引用する。
  (1) 文中「申立人」とあるを「抗告人」と訂正する。
  (2) 2枚目表末行「現在通園中の」とあるを「通園していた」と、同裏4行目「混乱し、」とあるを「混乱したこともあって、」と、同6行目「入学する予定の」とあるを「入学した」と各訂正する。
  (3) 3枚目表1行目と2行目の間に次のとおり付加する。「父は、既に平成2年6月27日、浩子の要求に応じて、浩子の自宅(もともと父が浩子ら家族と共同生活を営んでいた居宅)の土地・建物の各2分の1の持分を浩子に贈与して、その旨の持分移転登記も了しており、抗告人は、同訴訟における和解に際し、残りの2分の1の持分を移転するほか、将来支給されることの予定されている退職金3000万円弱の約3分の1である1000万円を支払う旨申し出ており、本件申立てが認容されてもこの申出を維持し、和解には積極的に対応する意向を表明している。」
  (4) 3枚目裏2行目「帰宅を求めたが、」とあるを「明のためにも帰宅することを求めたが、」と訂正し、同8行目「話したこと」の次に「(ただし、母との内縁関係、抗告人の存在は話していない。)」を付加する。
 2 上記認定事実に基づいて検討する。
 抗告人は、出生以来約6年間余父と同居して父の氏を通称として使用し続けており、小学校においては、教育的配慮から父の氏を通称として使用することを受け入れる見込みであり、その結果さしあたっては不都合を来していないように窺われるものの、戸籍上と異なる氏を使用していくことが今後の生活上さまざまな支障をきたす可能性があり、また、日常使用している氏が戸籍上の氏と異なることを知り、しかもその変更が認められないまま推移することが抗告人に重大な精神的負担を与え、その健全な人格の形成に悪影響を及ぼす可能性もあることは否定できないのであって、抗告人が父の戸籍に入籍する利益は大きいものというべきである。また、父の戸籍の身分事項欄には、抗告人を認知した旨の記載が既にされており、現在でも戸籍を確認すれば抗告人の存在は容易に認識することができるのであるから、抗告人が父の戸籍に入籍されること自体で、明の将来の就職や婚姻に支障をきたす可能性は少ないし、既に無事結婚式を済ませた久美の婚姻生活に支障をきたす可能性も少ないのであって、明や久美に重大な心理的影響を与える可能性も少ないというべきである。
 もっとも、父の別居の主たる原因は、父の不貞行為であり、明が父の別居後精神的に不安定な状態に陥ったことに対する父としての積極的な関わりはほとんどなく、明との対応を浩子に任せる結果となり(特に、明が精神的に不安定な状態に陥った直後に父が関わりを持たなかったことは大いに非難されるべきである。)、その間、父は、浩子との婚姻関係を修復する努力を惜しんだこと等の事情に鑑み、浩子の反対を単なる主観的感情に基づくものということはできない。
 しかし、父と浩子の関係が修復される可能性は現時点ではとうてい期待できず、父と母及び抗告人の共同生活関係はさらに定着していくものと推認される。また、父と浩子の間では、離婚訴訟が係属しているが、和解の目処が立っておらず、早晩決着する見込みが乏しいし、本件申立てを認容しても、父は、浩子と離婚することはできず、したがって、母と婚姻することもできないのであるから、本件申立てを認容することが上記離婚訴訟や和解に影響を与える可能性も大きくはないというべきである。
 以上によれば、現段階に至っては、子の福祉、利益を尊重する観点から、抗告人の氏を父の氏に変更することを許可するのが相当というべきである。
 3 よって、抗告人の本件申立ては理由があるからこれを認容すべきであり、これと異なる原審判を取り消し、抗告人の氏を父の氏に変更することを許可することとして、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 中田耕三 裁判官 高橋文仲 中村也寸志)

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