民法765条 離婚届出の受理 家族法 親族 離婚

民法765条 離婚届出の受理

(離婚の届出の受理)
第七百六十五条  離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2  離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない

・受理要件及びそれに違反して受理されたときの離婚の効力について定める。

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民法764条 婚姻の規定の準用 家族法 親族 離婚

民法764条 婚姻の規定の準用


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(婚姻の規定の準用)
第七百六十四条  第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離婚について準用する。

・成年後見人が離婚するには、その後見人の同意を要しない(764条、738条)
意思能力は、届出書作成または委託の時にあれば足り、届出の時に喪失していてもその受理前に翻意していない限り、その届出は有効

・協議離婚は届出によって効力が生じる(764条、739条)
+裁判による離婚は認容判決が確定した時点で効力が生じる

・協議離婚の無効
総則の無効に関する規定を適用すべきではなく、婚姻の無効に関する規定(742条)を類推適用すべきである!!!
→離婚の無効原因は、離婚意思の不存在と離婚届の未提出である。

・無効な離婚の追認は許される!!
←第三者は届出の外観に従って行動するのが通常であるから、第三者の利益を不当に害することにはならない!!

・詐欺・強迫による離婚は、取り消すことができる。この取消権は、当事者が詐欺を発見し、もしくは強迫を免れた後3か月が経過し、又は追認したときは消滅する(767条、747条)
→取消しの効果は、婚姻取消しの場合とは異なり、届出の時に遡及する(764条は748条を準用していない)!!!!!!!


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民法763条 協議上の離婚 家族法 親族 離婚

民法763条 協議上の離婚

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(協議上の離婚)
第七百六十三条  夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

・協議とは離婚意思の合致をいう。

・離婚意思
=届出に向けられた意思(形式的意思説)
→方便のための離婚の届出であっても、当事者が法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてした者である以上、離婚意思がないとはいえず、離婚は無効とはいえない。
(法律上の婚姻関係を解消する意思は届出意思とは異なる・・・)

ex
債権者の強制執行を免れるための協議離婚は有効
生活扶助を受けるための協議離婚は有効

+判例(S57.3.26)
理由
 原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件離婚の届出が、法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてされたものであつて、本件離婚を無効とすることはできないとした原審の判断は、その説示に徴し、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
   (宮﨑梧一 栗本一夫 木下忠良 鹽野宜慶 大橋進)

・協議離婚届作成後の翻意
協議離婚の届出は協議離婚意思の表示とみるべきであるから、当該届出の当時婚姻の意思を有せざることが明確になった以上、当該届出による協議離婚は無効である!!!

+判例(S34.8.7)
理由
 上告代理人丸茂忍の上告理由第一点について。
 原審の引用する第一審判決によれば、本件協議離婚届書は判示の如き経緯によつて作成されたこと、右届出書の作成後被上告人は右届出を上告人に委託し、上告人においてこれを保管していたところ、その後右届出書が光市長に提出された昭和二七年三月一一日の前日たる同月一〇日被上告人は光市役所の係員Aに対して上告人から離婚届が出されるかもしれないが、被上告人としては承諾したものではないから受理しないでほしい旨申し出でたことおよび右事実によると被上告人は右届出のあつた前日協議離婚の意思をひるがえしていたことが認められるというのであつて、右認定は当裁判所でも肯認できるところである。そうであるとすれば上告人から届出がなされた当時には被上告人に離婚の意思がなかつたものであるところ、協議離婚の届出は協議離婚意思の表示とみるべきであるから、本件の如くその届出の当時離婚の意思を有せざることが明確になつた以上、右届出による協議離婚は無効であるといわなければならない。そして、かならずしも所論の如く右翻意が相手方に表示されること、または、届出委託を解除する等の事実がなかつたからといつて、右協議離婚届出が無効でないとはいいえない。従つて、論旨は採用できない。
 同第二点について。
 原判決挙示の関係証拠中、証人Aの「離婚届出の前、昭和二七年三月一〇日と思う(届書を受付ける前であることは確実である)が被上告人から戸籍吏員たる同証人に対し上告人との離婚届が出されるかも知れないが被上告人としては承諾したものではないのだから受理しないでほしいとの申入れがあつた」旨の証言(記録四四丁裏)によれば、被上告人が協議離婚を翻意した事実を充分に推認することができるから原審に所論の違法はない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官藤田八郎の補足意見があるほか、全裁判官一致の意見によるものである。

・協議離婚は離婚意思の合致と届出により成立する!
→この監護について必要な事項に関する協議の不調、財産分与の協議の不調によって妨げられるものではない!!!!

・協議上の離婚によって、婚姻の効力は将来に向かって解消する!!!

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民法762条 夫婦間における財産の帰属 家族法 親族 婚姻

民法762条 夫婦間における財産の帰属

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(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条  夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2  夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

・別産制の原則を定めた規定である。

・所得税法が、生計を一にする夫婦の所得を合算折半して計算することにしていないことは、憲法24条に違反しない。

+判例(S36.9.6)
理由
 上告人の上告理由について。
 所論は、民法七六二条一項は、憲法二四条に違反するものであると主張し、これを理由として、原審において右民法の条項が憲法二四条に違反するものとは認められず、ひいて右民法の規定を前提として、所得ある者に所得税を課することとした所得税法もまた違憲ではないとした原判決の判示を非難するのである。
 そこで、先ず憲法二四条の法意を考えてみるに、同条は、「婚姻は……夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」、「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」と規定しているが、それは、民主主義の基本原理である個人の尊厳と両性の本質的平等の原則を婚姻および家族の関係について定めたものであり、男女両性は本質的に平等であるから、夫と妻との間に、夫たり妻たるの故をもつて権利の享有に不平等な扱いをすることを禁じたものであつて、結局、継続的な夫婦関係を全体として観察した上で、婚姻関係における夫と妻とが実質上同等の権利を享有することを期待した趣旨の規定と解すべく、個々具体の法律関係において、常に必らず同一の権利を有すべきものであるというまでの要請を包含するものではないと解するを相当とする
 次に、民法七六二条一項の規定をみると、夫婦の一方が婚姻中の自己の名で得た財産はその特有財産とすると定められ、この規定は夫と妻の双方に平等に適用されるものであるばかりでなく、所論のいうように夫婦は一心同体であり一の協力体であつて、配偶者の一方の財産取得に対しては他方が常に協力寄与するものであるとしても、民法には、別に財産分与請求権、相続権ないし扶養請求権等の権利が規定されており、右夫婦相互の協力、寄与に対しては、これらの権利を行使することにより、結局において夫婦間に実質上の不平等が生じないよう立法上の配慮がなされているということができる。しからば、民法七六二条一項の規定は、前記のような憲法二四条の法意に照らし、憲法の右条項に違反するものということができない
 それ故、本件に適用された所得税法が、生計を一にする夫婦の所得の計算について、民法七六二条一項によるいわゆる別産主義に依拠しているものであるとしても、同条項が憲法二四条に違反するものといえないことは、前記のとおりであるから、所得税法もまた違憲ということはできない。
 されば右説示と同趣旨に出た原判決は正当であつて、所論は採るを得ない。よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一 裁判官 高橋潔 裁判官 高木常七 裁判官 石坂修一 裁判官 山田作之助)

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民法761条 日常家事に関する債務の連帯責任 家族法 親族 婚姻

民法761条 日常家事に関する債務の連帯責任

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(日常の家事に関する債務の連帯責任)
第七百六十一条  夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

・内縁についても準用される。

・日常家事に関する法律行為とは
単に夫婦の内部的な事情やその行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、さらに客観的にその法律行為の種類・性質等をも十分考慮して判断すべきである!!
→借財については金額が一番重要な判断要素になる。

・110条の趣旨の日常家事への類推適用
相手方において、その行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときには110条の趣旨を類推適用することにより第三者を保護する

+判例(S44.12.18)
理由
 上告代理人小宮正己の上告理由第一点について。
 本件売買契約締結の当時、被上告人が訴外Aに対しその売買契約を締結する代理権またはその他の何らかの代理権を授与していた事実は認められない、とした原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠関係および本件記録に照らし、首肯することができないわけではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした証拠の取捨判断および事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
 同第二点について。
 民法七六一条は、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによつて生じた債務について、連帯してその責に任ずる。」として、その明文上は、単に夫婦の日常の家事に関する法律行為の効果、とくにその責任のみについて規定しているにすぎないけれども、同条は、その実質においては、さらに、右のような効果の生じる前提として、夫婦は相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解するのが相当である。
 そして、民法七六一条にいう日常の家事に関する法律行為とは、個々の夫婦がそれぞれの共同生活を営むうえにおいて通常必要な法律行為を指すものであるから、その具体的な範囲は、個々の夫婦の社会的地位、職業、資産、収入等によつて異なり、また、その夫婦の共同生活の存する地域社会の慣習によつても異なるというべきであるが、他方、問題になる具体的な法律行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属するか否かを決するにあたつては、同条が夫婦の一方と取引関係に立つ第三者の保護を目的とする規定であることに鑑み、単にその法律行為をした夫婦の共同生活の内部的な事情やその行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、さらに客観的に、その法律行為の種類、性質等をも充分に考慮して判断すべきである
 しかしながら、その反面、夫婦の一方が右のような日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権の存在を基礎として広く一般的に民法一一〇条所定の表見代理の成立を肯定することは、夫婦の財産的独立をそこなうおそれがあつて、相当でないから、夫婦の一方が他の一方に対しその他の何らかの代理権を授与していない以上、当該越権行為の相手方である第三者においてその行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、民法一一〇条の趣旨を類推適用して、その第三者の保護をはかれば足りるものと解するのが相当である。
 したがつて、民法七六一条および一一〇条の規定の解釈に関して以上と同旨の見解に立つものと解される原審の判断は、正当である。
 ところで、原審の確定した事実関係、とくに、本件売買契約の目的物は被上告人の特有財産に属する土地、建物であり、しかも、その売買契約は上告人の主宰する訴外株式会社千代田べヤリング商会が訴外Aの主宰する訴外株式会社西垣商店に対して有していた債権の回収をはかるために締結されたものであること、さらに、右売買契約締結の当時被上告人は右Aに対し何らの代理権をも授与していなかつたこと等の事実関係は、原判決挙示の証拠関係および本件記録に照らして、首肯することができないわけではなく、そして、右事実関係のもとにおいては、右売買契約は当時夫婦であつた右Aと被上告人との日常の家事に関する法律行為であつたといえないことはもちろん、その契約の相手方である上告人においてその契約が被上告人ら夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由があつたといえないことも明らかである。
 してみれば、上告人の所論の表見代理の主張を排斥した原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした事実の認定を争い、または、独自の見解を主張するものにすぎず、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎)

・連帯責任の内容
連帯債務を負担するという意味
夫婦は同一内容の債務を併存的に負担し、一方について生じた事由(相殺・免除・時効)は両者に無制限に効力を及ぼす。

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民法760条 婚姻費用の分担 家族法 親族 婚姻

民法760条 婚姻費用の分担


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(婚姻費用の分担)
第七百六十条  夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

・婚姻が事実上破綻し別居生活に入ったとしても、離婚しない限り婚姻費用分担義務は消滅しないが、別居・婚姻破綻につき帰責性のある者が自己の生活碑文の婚姻費用分担請求をすることは権利濫用(1条3項)にあたる

+判例(東京高決S58.12.16)
   理  由
 一 本件抗告の趣旨は、「原審判を取消す。相手方の婚姻費用分担の申立てを却下する。相手方は抗告人に対し当事者間の二女石黒雅子を引渡せ。」との裁判を求めるというのであり、その理由の要旨は「原審判中、婚姻費用分担を命じた部分は、抗告人が相手方の不当な言動によつて昭和五七年八月三一日に○○○○公社(以下公社という。)を退職せざるをえなくなり、以後、失業中で無収入であること、また、相手方が昭和四五年の別居に際して結婚以来の抗告人の蓄財をすべて持ち去り、これがその後の子供の監護費用に余りあるほどであることを無視した点で不当である。さらに、相手方は原審判認定の収入のほかに、実姉の経営する病院から一か月一〇万円の収入をえ、また児童扶養手当として一か月四万六六〇〇円を受給しており、長女啓子は昭和五七年四月から○○○○工業株式会社に就職して相当の収入をえており、これらを考慮しなかつた点でも、原審判は不当である。また、原審判中二女雅子の監護養育についての申立てを却下した部分は、一度の調停、審判期日も開かないまま判断したものであつて不当である。」というのである。
 二 そこで、検討するに、抗告人と相手方との婚姻関係に関して、記録によれば、次の各事実が認められる。
  1 抗告人と相手方とは、共に勤務していた名古屋市内の公社の職場で知合い、昭和三七年八月ころ東京都内で同棲生活をはじめて、同年一二月婚姻届出をし、両者間に、昭和三八年三月一七日長女啓子が、
昭和四二年六月三〇日二女雅子が出生した。
  2 抗告人は昭和四一年ころ課長に昇進したが、そのころから深酒して深夜に帰宅することが多くなり、昭和四二年八月これを非難した相手方と口論となり、家財を投げつけたりしたことをきつかけに、相手方は出生間もない二女雅子を連れ、長女啓子は残したまま名古屋市内の実家に帰つた。抗告人は同年一〇月相手方と面談すべく名古屋市に赴き、一週間滞在したが、相手方及びその親族に面談を拒ばまれて帰京した。そして、抗告人は、同年一一月この間の無断欠勤を理由に公社から降格処分をうけた。
  3 その後、相手方も、婚姻関係改善の努力をする気になつて、同年一二月から翌四三年一月にかけて二女雅子を連れずに帰宅し、さらに同年五月には二女雅子を連れ戻して、抗告人との共同生活を再開し、その後は、抗告人が酒をのんであばれることが時にはあつたものの、概して平穏な状態が続いた。
  4 ところが、昭和四五年五月二五日、かねてそううつ病と診断されていた抗告人は医師から入院治療をすすめられたがこれを拒絶した。そして、公社から入院についての同意を要請された相手方は、抗告人の親族にも相談したが、判断がつけられず同意しないまま、同月三〇日に二人の子を連れて名古屋市内の実家に帰つてしまつた。その後、抗告人は、同年六月実母ヒサノを保護義務者として入院したが、相手方は主治医の病歴照会にも応ぜず、また同年一〇月末に抗告人が退院するまで全く面会にも行かず、この間の同年八月二六日には、二人の子と共に、各古屋市への転出手続をした。
  5 抗告人は、昭和四六年二月職場に復帰し、その後、電話等で相手方に同居するよう話合いを求めたが、相手方は終始これを避け、昭和四七年以降昭和五四年までは互いに全く音信のない状態が続いた。
昭和五四年一月、抗告人は久野比呂子(昭和一四年生)と見合をし、交際をはじめ、同年二月から三月にかけて、離婚問題を話合うべく三回にわたり相手方の実家に行つたが、相手方と直接話合うことはできなかつたので、相手方との離婚を前提として、同年四月久野と同棲生活をはじめた。他方、相手方は昭和五一年四月短期大学に入学し昭和五三年三月これを卒業し、その後も、実母や姉などの助力をえながら○○○○株式会社に勤務して、二人の子供の養育を続けた。
  6 抗告人は、昭和五四年四月東京家庭裁判所に離婚調停を申立て、同年一二月これを取下げたが、昭和五六年五月同庁に再び離婚調停を申立て、これが同年一二月不成立になつたので、昭和五七年七月東京地方裁判所に離婚訴訟を提起した。

 三 民法七六〇条、七五二条に照らせば、婚姻が事実上破綻して別居生活に入つたとしても、離婚しないかぎりは夫婦は互に婚姻費用分担の義務があるというべきであるが、夫婦の一方が他方の意思に反して別居を強行し、その後同居の要請にも全く耳を藉さず、かつみずから同居生活回復のための真摯な努力を全く行わず、そのために別居生活が継続し、しかも右別居をやむを得ないとするような事情が認められない場合には、前記各法条の趣旨に照らしても、少なくとも自分自身の生活費にあたる分についての婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されずただ、同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるというべきである。そして、右認定事実によれば、相手方は抗告人の意思に反して別居を強行し、その後の抗告人の再三の話合いの要請にも全く応ぜず、かつみずからは全く同居生活回復の努力を行わず、しかも右別居についてやむを得ない事情があるとは到底いいがたい状態で一〇年以上経過してから本件婚姻費用分担の申立てをしたものと評価すべきであるから、自己の生活費を婚姻費用の分担として抗告人に請求するのは、まさに権利の濫用であつて許されず、ただ相手方と同居する長女啓子、二女雅子の実質的監護費用だけを婚姻費用の分担として抗告人に請求しうるにとどまるというべきである。なお、抗告人主張のような多額な金品を別居に際して相手方が持去つたことを認めるに十分な証拠はないし、もつとも若干の金品を相手方が持去つたことは窺えないでもないが、これとても、本件婚姻費用分担申立てに至るまでの二人の子の監護費用に充ててなお余りあるものとは認められないから、この点は、婚姻費用分担請求の当否には影響するものではない。

 四 そして、右のような婚姻費用分担額(実質的監護費用額)の算定の前提となる事情として、記録によれば、次の各事実が認められる。
  1 抗告人は、本件婚姻費用分担申立て当時、公社に勤務し、昭和五六年における租税、社会保険料控除後の平均月収は約三一万九〇〇〇円であり、相手方は、当時前記○○○○に勤務し、昭和五六年における同様の平均月収は約四万七〇〇〇円であつた。
  2 相手方は、児童扶養手当法に基づく同手当として、本件婚姻費用分担申立て当時は月額三万四三〇〇円、昭和五六年四月以降は月額二万九三〇〇円を受給している(その受給額がこれを上まわることについては適確な証拠がない。)。
  3 抗告人は、昭和五七年八月三一日に公社を退職し、そのころ、退職手当約一四六三万円(ただし、租税、共済弁済金等を控除後の手取額は約七〇二万円)の支払をうけ、その後は、うつ状態で通院加療中で就職せず、公社から減額退職年金一四一万八〇〇〇円(月額一一万八〇〇〇円)を受給して、久野比呂子と同棲生活を続けている。
  4 長女啓子は、本件婚姻費用分担申立て当時、私立高校に通学していたが、昭和五七年三月これを卒業し、以後○○○○工業株式会社で工員として働いている。また、二女雅子は同当時、中学生であつたが、昭和五八年四月から私立高校に通学している。
 五 そこで、右認定したところに従つて、労働科学研究所の総合消費単位(以下消費単位という。)をも参酌して、相手方が抗告人に分担を求めうる婚姻費用額について検討する。
  1 昭和五五年一〇月三一日(抗告人に婚姻費用分担申立てによる呼出通知が到達した日)から昭和五七年三月三一日(長女啓子の就職)まで
 相手方の収入からは二人の子の監護費用にまわす余裕がないことは生活保護基準に照らしても明らかであり(相手方にこれ以上の収入があることを認めるに足りる証拠はなく、相手方が二人の子の監護のために、その親族から借金するなどの援助をうけていたとしても、婚姻費用分担額算定にあたり、これを考慮する余地はない。)、抗告人は、その収入をもつて、二人の子が自分と同一水準の生活を営みうるだけの費用を婚姻費用として分担すべきである。ただし、前記認定のような事情の下で抗告人が久野比呂子と同棲生活をして、その必要生計費の増加がある以上、これも考慮すべきであり、また、この期間、相手方は月額三万円内外の児童扶養手当を受給し、これが二人の子の監護費用に現実に充てられた以上、親の未成年の子に対する生活保持義務は公的扶助に優先して履行されるべきであるといつても、これを婚姻費用分担額算定にあたつて考慮しないわけにはいかない。
 以上のような諸事情に、この期間の各人の消費単位(抗告人一〇五、久野八〇、啓子九〇、雅子八〇)を参酌すると、相手方が、この期間に抗告人に対して求めうる婚姻費用分担額は月額一二万円をもつて相当とするというべきである。すると、この期間の分担額総額は二〇四万四〇〇〇円(一七か月プラス一日分)となる。
  2 昭和五七年四月一日(啓子の就職)から同年八月三一日(抗告人の退職)まで
 昭和五七年四月一日以降は、啓子は工員として稼働して相当の収入を得ているから、婚姻費用分担額算定にあたり同女の監護費用は考慮する必要がなくなつたものというべきであり、このような事情の変化を勘案すると、相手方が抗告人に求めうるこの期間の婚姻費用分担額は月額七万五〇〇〇円をもつて相当とするというべきである。すると、この期間の分担額総額は三七万五〇〇〇円(五か月分)となる。
  3 昭和五七年九月一日(抗告人の退職)以降
 昭和五七年九月一日以降は、抗告人の継続的収入は減額退職年金(年一四一万八〇〇〇円)だけとなつたのであるが、退職手当金手取額が約七〇二万円あつたことも考慮すべきである(なお、右手取額のうち七〇〇万円が久野比呂子からの借入金の弁済に充てられたとの抗告人の主張については、これに副う久野作成の受領証は直ちに措信しがたく、他にこれを証するに足りる証拠はない。)。
 そこで、これら事情の変化及びこれに伴う消費単位の変動(抗告人は退職により一〇五から一〇〇へ、雅子は高校進学により昭和五八年四月以降、八〇から九〇へ)を勘案すると、相手方が抗告人に求めうる昭和五七年九月一日以降の婚姻費用分担額は月額四万円をもつて相当とするというべきである。すると、昭和五七年九月一日から昭和五八年一一月末日までの分担額総額は六〇万円(一五か月分)となる。
 六 すでに認定したとおり、雅子は三歳ころから抗告人と別居して相手方に監護され、現に名古屋市内の高校に通学しており、別居以来抗告人とはほとんど面会したこともないのであるから、その別居の事情を考慮しても、抗告人の同女引渡しの申立ては理由がないことが明らかである(なお、この申立ては昭和五六年一二月三日の調停期日で合意成立の見込みがないとして審判に移行されたものであることが記録上明らかである。)。
 七 したがつて、本件抗告のうち、婚姻費用分担審判の取消しを求める部分は、その一部について理由があるので、みずから審判に代わる裁判をするのを相当と認め、原審判主文第一項を、本決定主文第一項のとおり変更することとし、本件抗告のうち、子の監護に関する処分審判の取消しを求める部分は、理由がないから棄却することとし、主文のとおり、決定する。
 (裁判長裁判官 森綱郎 裁判官 片岡安夫 小林克巳)


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民法759条 財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件 家族法 親族 婚姻

民法759条 財産の管理者の変更及び共有財産分割の対抗要件

(財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件)
第七百五十九条  前条の規定又は第七百五十五条の契約の結果により、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

・758条1項による夫婦財産不変原則の例外。

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民法758条 夫婦の財産関係の変更の制限等

民法758条 夫婦の財産関係の変更の制限等

(夫婦の財産関係の変更の制限等)
第七百五十八条  夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない
2  夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であったことによってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる。
3  共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる。

・婚姻後夫婦が締結された夫婦財産契約を解約したり、その内容を変更したりすることは、たとえ第三者の利害に影響がなかった場合でも許されない。

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民法756条 夫婦財産契約の対抗要件 家族法 親族 婚姻

民法756条 夫婦財産契約の対抗要件

(夫婦財産契約の対抗要件)
第七百五十六条  夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

・登記されていない夫婦財産契約は夫婦間では有効であるが、夫婦の承継人や第三者に対し対抗力はない。

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民法755条 夫婦の財産関係 家族法 親族 婚姻

民法755条 夫婦の財産関係

(夫婦の財産関係)
第七百五十五条  夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。

・婚姻後の夫婦の財産関係について、民法は契約財産制度と法廷財産制度を用意している。本条は契約による財産制度を優先させている。

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