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1.実体法との関係
・訴訟法上の各種の能力は、基本的には実体法上の各種の能力に準ずる形で規律される。
・実体法上の法律関係においては、権利義務の主体となり得る資格として権利能力が要求され、さらに、法律行為を自ら有効に行うための要件として、意思能力および行為能力が要求される。
訴訟上も基本的には同様の能力が必要。
2.当事者能力
・当事者能力とは、
民事訴訟の当事者として本案判決の名宛人となることのできる一般的な資格をいう。
・基本的には実体法上の権利能力に対応する概念
・当事者能力の判断は、基本的には実体法上の権利能力の有無の判断に準じて行われる。
+(原則)
第二十八条 当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法 (明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。
胎児・外国人・法人格の認められる団体など。
・民訴法は、実体法上は権利能力を認められない者についても、一定の要件を満たすものについては、独自の観点から当事者能力を認めている。
+(法人でない社団等の当事者能力)
第二十九条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。
3.訴訟能力
(1)訴訟能力の意義
訴訟能力とは、
単独で有効に訴訟行為をし、または受けるために必要な能力をいう。
実体法上の行為能力に対応する。
(2)訴訟能力が認められる者
・民法上完全な行為能力が認められる者については、訴訟能力もまた認められる。
+(原則)
第二十八条 当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法 (明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。
(3)訴訟能力が要求される行為の範囲
・証人として証言する場合、あるいは、当事者尋問において当事者本人として陳述する場合には訴訟能力は必要ではない。
←陳述の内容が裁判所の事実認定の資料となるにすぎず、陳述という行為に何らかの訴訟上の効果が直ちに結びつくわけではないため。
・訴訟代理人として他人のために訴訟行為をする場合にも、訴訟能力は要求されない。
←訴訟行為の効果が係属するのはあくまで本人である訴訟当事者であり、訴訟代理人ではないため、その効果を否定することによって行為者を保護する必要に乏しい。
そのような者を代理人として選任すること自体は原則として当事者の自由。
(4)訴訟能力欠缺の効果
訴訟能力を欠いた者のした訴訟行為は、はじめから無効とされる。
←訴訟は実体法上の取引と異なり、多くの訴訟行為が積み重なって進んでいくという性格を持つことから、実体法上の取引以上に法的安定性が要求されるため。
・訴訟能力の欠缺が発見された場合においても、その瑕疵を当事者に治癒させる余地を認めている。
+(訴訟能力等を欠く場合の措置等)
第三十四条 訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠くときは、裁判所は、期間を定めて、その補正を命じなければならない。この場合において、遅滞のため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、一時訴訟行為をさせることができる。
2 訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠く者がした訴訟行為は、これらを有するに至った当事者又は法定代理人の追認により、行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。
3 前二項の規定は、選定当事者が訴訟行為をする場合について準用する。
・訴訟能力者に有利なもののみ追認し、不利なものの追認を拒むことは許されない。
←それまでの手続が不可分一体のものであるから。
追認者の恣意的な判断で相手方当事者の地位を害すべき理由はないから。
・当事者が訴訟能力を喪失した場合
+(訴訟手続の中断及び受継)
第百二十四条 次の各号に掲げる事由があるときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、それぞれ当該各号に定める者は、訴訟手続を受け継がなければならない。
一 当事者の死亡
相続人、相続財産管理人その他法令により訴訟を続行すべき者
二 当事者である法人の合併による消滅
合併によって設立された法人又は合併後存続する法人
三 当事者の訴訟能力の喪失又は法定代理人の死亡若しくは代理権の消滅
法定代理人又は訴訟能力を有するに至った当事者
四 次のイからハまでに掲げる者の信託に関する任務の終了 当該イからハまでに定める者
イ 当事者である受託者 新たな受託者又は信託財産管理者若しくは信託財産法人管理人
ロ 当事者である信託財産管理者又は信託財産法人管理人 新たな受託者又は新たな信託財産管理者若しくは新たな信託財産法人管理人
ハ 当事者である信託管理人 受益者又は新たな信託管理人
五 一定の資格を有する者で自己の名で他人のために訴訟の当事者となるものの死亡その他の事由による資格の喪失
同一の資格を有する者
六 選定当事者の全員の死亡その他の事由による資格の喪失
選定者の全員又は新たな選定当事者
2 前項の規定は、訴訟代理人がある間は、適用しない。
3 第一項第一号に掲げる事由がある場合においても、相続人は、相続の放棄をすることができる間は、訴訟手続を受け継ぐことができない。
4 第一項第二号の規定は、合併をもって相手方に対抗することができない場合には、適用しない。
5 第一項第三号の法定代理人が保佐人又は補助人である場合にあっては、同号の規定は、次に掲げるときには、適用しない。
一 被保佐人又は被補助人が訴訟行為をすることについて保佐人又は補助人の同意を得ることを要しないとき。
二 被保佐人又は被補助人が前号に規定する同意を得ることを要する場合において、その同意を得ているとき。
(5)訴訟要件としての当事者能力
・訴訟係属自体を基礎付ける訴訟行為について訴訟能力を欠く場合には、当該訴訟行為が無効になる結果、その訴え自体が不適法となることがある。
=訴訟要件としても機能
・却下判決については、訴訟無能力者または制限的訴訟能力者が自らの訴訟能力を主張して上訴することができる。
→上訴の不適法却下ではなく、上訴棄却の判決をする。
・訴えが訴訟能力の欠缺により不適法であることを看過して訴訟無能力者または制限行為能力者敗訴の本案判決がなされた場合においても、上訴または再審により判決の取り消しを求めることができる。
4.未成年者
+(未成年者及び成年被後見人の訴訟能力)
第三十一条 未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合は、この限りでない。
←訴訟行為の効力を法定代理人による同意の有無に係らしめると手続の円滑な進行を阻害するおそれがあること、また、訴訟手続きは実体法上の法律行為よりも専門性や技術性が高く、未成年者を保護する必要性も大きいことから。
・婚姻や認知など、人の身分の変動をもたらす行為については、通常の財産関係と比較して、本人の意思を尊重する必要性が大きいことから、民法上、行為能力の規定は適用されない。
5.成年被後見人
人事訴訟においては民事訴訟法31条の規定は除外(人事訴訟法13条1項)
だとしても、成年被後見人が自ら有効に訴訟行為をするためには意思能力を備えていることが必要になるが・・・
6.被保佐人および被補助人
(1)保佐人等の同意による訴訟行為
・民法
+(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
2 家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
+(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
・民事訴訟法
+(原則)
第二十八条 当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法 (明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。
・訴訟行為の場合には、同意の欠缺の効果は、訴訟無能力の場合と同様に、当該行為の無効(取消しではない)!!!
・保佐人等による同意は、個々の訴訟行為に対するものではなく、少なくとも当該審級における手続の全体にわたる包括的なものでなければならない。
(2)同意が不要な場合
+(被保佐人、被補助人及び法定代理人の訴訟行為の特則)
第三十二条 被保佐人、被補助人(訴訟行為をすることにつきその補助人の同意を得ることを要するものに限る。次項及び第四十条第四項において同じ。)又は後見人その他の法定代理人が相手方の提起した訴え又は上訴について訴訟行為をするには、保佐人若しくは保佐監督人、補助人若しくは補助監督人又は後見監督人の同意その他の授権を要しない。
2 被保佐人、被補助人又は後見人その他の法定代理人が次に掲げる訴訟行為をするには、特別の授権がなければならない。
一 訴えの取下げ、和解、請求の放棄若しくは認諾又は第四十八条(第五十条第三項及び第五十一条において準用する場合を含む。)の規定による脱退
二 控訴、上告又は第三百十八条第一項の申立ての取下げ
三 第三百六十条(第三百六十七条第二項及び第三百七十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定による異議の取下げ又はその取下げについての同意
←相手方当事者の裁判を受ける権利を不当に害する可能性が生じるから。
7.意思無能力者
意思能力とは、
自己の行為の法的な効果を認識判断することができる能力。
意思能力を欠いたままでされた法律行為は、もはや行為者の自由な意思決定によるものと評価することができず、私的自治の原則を適用するための前提を欠くことから民法上無効とされる!!
同様の考慮は訴訟行為についても妥当。
→行為の時点において意思能力を欠いていた場合には無効。
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