3-3 裁判所 裁判官の除斥・忌避・回避

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1.除斥
(1)除斥の意義
除斥とは、
法定の原因がある場合に、裁判官が法律上当然に職務を執行できなくなること。
+(裁判官の除斥)
第二十三条  裁判官は、次に掲げる場合には、その職務の執行から除斥される。ただし、第六号に掲げる場合にあっては、他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことを妨げない。
一  裁判官又はその配偶者若しくは配偶者であった者が、事件の当事者であるとき、又は事件について当事者と共同権利者、共同義務者若しくは償還義務者の関係にあるとき。
二  裁判官が当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき。
三  裁判官が当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
四  裁判官が事件について証人又は鑑定人となったとき。
五  裁判官が事件について当事者の代理人又は補佐人であるとき、又はあったとき。
六  裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき。
2  前項に規定する除斥の原因があるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、除斥の裁判をする。

(2)除斥原因

2.忌避
(1)忌避の意義
忌避とは、法定の除斥原因以外の事由により、裁判の公正を妨げるべき事情がある場合に、当事者の申立てに基づき、裁判によって裁判官を職務執行から排除すること。
+(裁判官の忌避)
第二十四条  裁判官について裁判の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避することができる
2  当事者は、裁判官の面前において弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判官を忌避することができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。

(2)忌避の原因
当該裁判官と、当該事件または当事者との関係からみて、一方当事者が不公平な裁判がされるおそれがあると考えるのももっともだといえる客観的事情。

具体的な事件や当事者と直接関係のない、裁判官の行状、思想、法律上の意見などは忌避の原因に当たらない。

(3)除斥・忌避の裁判
+(除斥又は忌避の裁判)
第二十五条  合議体の構成員である裁判官及び地方裁判所の一人の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判官の所属する裁判所が、簡易裁判所の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判所の所在地を管轄する地方裁判所が、決定で、裁判をする。
2  地方裁判所における前項の裁判は、合議体でする。
3  裁判官は、その除斥又は忌避についての裁判に関与することができない。
4  除斥又は忌避を理由があるとする決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5  除斥又は忌避を理由がないとする決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(4)訴訟手続きの停止
+(訴訟手続の停止)
第二十六条  除斥又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについての決定が確定するまで訴訟手続を停止しなければならない。ただし、急速を要する行為については、この限りでない。

3.回避
裁判官が除斥原因や忌避原因があると自ら判断する場合に、自発的に職務執行を避けること


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刑事訴訟法 事例演習刑事訴訟法 19 類似事実証拠排除法則


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1.前科証拠・類似事実証拠による犯人性の立証

・前科証拠によって犯罪事実を認定
+判例(平成24.9.7)
理 由
 弁護人高野隆の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 しかしながら,所論に鑑み,職権をもって調査すると,原判決は,刑訴法411条1号により破棄を免れない。その理由は,以下のとおりである。
 1 原判決の認定及び記録によれば,本件訴訟の経過等は,次のとおりである。
 (1) 本件各公訴事実は,「被告人は,平成21年9月8日午前6時30分頃から同日午前11時50分頃までの間,金品窃取の目的で,東京都葛飾区(以下省略)B荘C号室D方縁側掃き出し窓のガラスを割り,クレセント錠を解錠して侵入した上,同所において,1 同人所有の現金1000円及びカップ麺1個(時価約100円相当)を窃取し,2 同人ほか1名が現に住居に使用する前記B荘(木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建,延べ床面積115.67㎡)に放火しようと考え,B荘C号室内にあった石油ストーブ内の灯油を同室内のカーペット上に撒布した上,何らかの方法で点火して火を放ち,同室内の床面等に燃え移らせ,よって,現に人が住居に使用しているB荘C号室の一部を焼損(焼損面積約1.1㎡)した。」という住居侵入,窃盗,現住建造物等放火の事実(以下,それぞれ「本件住居侵入」,「本件窃盗」,「本件放火」という。)及び北海道釧路市内における住居侵入及び窃盗の事実(以下「釧路事件」という。)からなるものである。
 (2) 被告人は,第1審の公判前整理手続において,本件住居侵入及び本件窃盗並びに釧路事件については争わない旨述べたが,本件放火については,何者かが上記B荘C号室に侵入して放火したことは争わないものの,被告人が行ったものではないと主張した。
 (3) 被告人は,平成3年4月7日から平成4年5月10日までの間に15件の窃盗を,同年3月29日から同年6月13日までの間に11件の現住建造物等放火(未遂を含む。以下「前刑放火」という。)を行ったなどの罪により,平成6年4月13日,懲役8月及び懲役15年(前刑放火を全て含む。)に処せられた前科を有する。
 検察官は,公判前整理手続において,被告人は窃盗に及んだが欲するような金品が得られなかったことに立腹して放火に及ぶという前刑放火と同様の動機に基づいて本件放火に及んだものであり,かつ,前刑放火と本件放火はいずれも特殊な手段方法でなされたものであると主張し,この事実を証明するため,上記前科に係る判決書謄本(以下「前刑判決書謄本」という。),上記前科の捜査段階で作成された前刑放火に関する被告人の供述調書謄本15通,本件の捜査段階で作成された前刑放火の動機等に関する被告人の供述調書1通(以下これらを併せて「本件前科証拠」という。),本件放火の現場の状況及びその犯行の特殊性等に関する警察官証人1名の取調べを請求した。
 第1審裁判所は,前刑判決書謄本を情状の立証に限定して採用したものの,本件放火の事実を立証するための証拠として本件前科証拠は全て「関連性なし」として却下し,また,上記警察官証人を「必要性なし」として却下した。
 第1審判決は,被告人が本件放火の犯人であると認定するにはなお合理的な疑問が残るとして,本件住居侵入及び本件窃盗並びに釧路事件についてのみ有罪とした。
 (4) これに対し検察官が控訴した。控訴趣意は,本件前科証拠及び上記警察官証人は,いずれも本件放火の犯罪を立証する証拠として関連性を有し,取調べの必要性があったにもかかわらず,これらを却下した第1審裁判所の措置は訴訟手続の法令違反に該当し,その結果被告人を本件放火の犯人と認定しなかったのは事実誤認に当たるというものである。
 原判決は,本件前科証拠のうち,前刑判決書謄本の取調べ請求を却下した第1審裁判所の措置,並びに上記前科の捜査段階で作成された被告人の供述調書謄本15通及び本件捜査段階で作成された前刑放火の動機等に関する被告人の供述調書1通について,本件放火との関連性がある部分を特定しないまま,その全てを却下した第1審裁判所の措置には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるとして,第1審判決を破棄し,事件を東京地方裁判所に差し戻した。

 2 原判決の理由の概略は,次のとおりである。
 前刑放火11件の動機は,いずれも窃盗を試みて欲するような金品が得られなかったことに対する腹立ちを解消することにあり,上記11件のうち10件は,いずれも侵入した居室内において,また残り1件は,侵入しようとした住居に向けて放火したものであり,うち7件は,犯行現場付近にあったストーブ内の灯油を撒布したものである。被告人には,このような放火に至る契機,手段,方法において上記のような特徴的な行動傾向が固着化していたものと認められる。被告人は,本件放火と接着した時間帯に放火場所である居室に侵入して窃盗を行ったことを認めているところ,その窃取した金品が被告人を満足させるものではなかったと思料され,前刑放火と同様の犯行に至る契機があると認められる上,犯行の手段方法も共通しており,いずれも特徴的な類似性があると認められ,被告人が本件放火の犯人であることを証明する証拠として関連性がある。したがって,本件前科証拠のうち,これらの点に関するもの,すなわち前刑判決書謄本並びに上記前科の捜査段階で作成された被告人の供述調書謄本15通及び本件の捜査段階で作成された前刑放火の動機等に関する被告人の供述調書1通のうち本件放火と特徴的な類似性のある犯行に至る契機,犯行の手段方法に関する部分はいずれも関連性が認められ,証拠として採用すべきであったものというべきであり,上記各供述調書について関連性が認められる部分を特定できるような審理を行わずに本件前科証拠を全て却下した第1審裁判所の措置は違法である。そして,被告人が,本件放火と接着した時間帯に放火場所である居室に侵入して窃盗を行ったことが認められる本件では,上記の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反に当たる。

 3 しかしながら,原判決の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 前科も一つの事実であり,前科証拠は,一般的には犯罪事実について,様々な面で証拠としての価値(自然的関連性)を有している反面,前科,特に同種前科については,被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく,そのために事実認定を誤らせるおそれがあり,また,これを回避し,同種前科の証明力を合理的な推論の範囲に限定するため,当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生じるなど,その取調べに付随して争点が拡散するおそれもあるしたがって,前科証拠は,単に証拠としての価値があるかどうか,言い換えれば自然的関連性があるかどうかのみによって証拠能力の有無が決せられるものではなく前科証拠によって証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許されると解するべきである本件のように,前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合についていうならば,前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって,初めて証拠として採用できるものというべきである。
 前刑放火は,原判決の指摘するとおり,11件全てが窃盗を試みて欲するような金品が得られなかったことに対する鬱憤を解消するためになされたものであること,うち10件は侵入した室内において,残り1件は侵入しようとした居室に向けてなされたものであるが,いずれも灯油を撒布して行われたものであることなどが認められる。本件放火の態様は,室内で石油ストーブの灯油をカーペットに撒布して火を放ったという犯行である。原判決は,これらの事実に加え,被告人が本件放火の最大でも5時間20分という時間内に上記の放火現場に侵入し,500円硬貨2枚とカップ麺1個を窃取したことを認めていることからすれば,上記の各前科と同様の状況に置かれた被告人が,同様の動機のもとに放火の意思を生じ,上記のとおりの手段,方法で犯行に及んだものと推認することができるので,関連性を認めるに十分であるという。しかしながら,窃盗の目的で住居に侵入し,期待したほどの財物が窃取できなかったために放火に及ぶということが,放火の動機として特に際だった特徴を有するものとはいえないし,また,侵入した居室内に石油ストーブの灯油を撒いて火を放つという態様もさほど特殊なものとはいえず,これらの類似点が持つ,本件放火の犯行が被告人によるものであると推認させる力は,さほど強いものとは考えられない
 原判決は,上記のとおり,窃盗から放火の犯行に至る契機の点及び放火の態様の点について,前刑放火における行動傾向が固着化していると判示している。固着化しているという認定がいかなる事態を指しているのか必ずしも明らかではないが,単に前刑放火と本件放火との間に強い類似性があるというにとどまらず,他に選択の余地がないほどに強固に習慣化していること,あるいは被告人の性格の中に根付いていることを指したものではないかと解され,その結果前刑放火と本件放火がともに被告人によるものと推認できると述べるもののようである。しかし,単に反復累行しているという事実をもってそのように認定することができないことは明らかであり,以下に述べる事実に照らしても,被告人がこのような強固な犯罪傾向を有していると認めることはできず,実証的根拠の乏しい人格評価による認定というほかない。
 すなわち,前刑放火は,間に服役期間を挟み,いずれも本件放火の17年前の犯行であって,被告人がその間前刑当時と同様の犯罪傾向を有していたと推認することには疑問があるといわなければならない。加えて,被告人は,本件放火の前後の約1か月間に合計31件の窃盗(未遂を含む。以下同じ。)に及んだ旨上申している。上申の内容はいずれも具体的であるが,これらの窃盗については,公訴も提起されていない上,その中には被告人が十分な金品を得ていないとみられるものが多数あるにもかかわらず,これらの窃盗と接着した時間,場所で放火があったという事実はうかがわれず,本件についてのみ被告人の放火の犯罪傾向が発現したと解することは困難である。
 (2) 上記のとおり,被告人は,本件放火に近接した時点に,その現場で窃盗に及び,十分な金品を得るに至らなかったという点において,前刑放火の際と類似した状況にあり,また,放火の態様にも類似性はあるが,本件前科証拠を本件放火の犯人が被告人であることの立証に用いることは,帰するところ,前刑放火の事実から被告人に対して放火を行う犯罪性向があるという人格的評価を加え,これをもとに被告人が本件放火に及んだという合理性に乏しい推論をすることに等しく,このような立証は許されないものというほかはない。
 したがって,本件放火の犯罪事実を立証するための本件前科証拠の取調べ請求を全て却下した第1審裁判所の措置は正当であり,これについて判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反に当たるとした原判断には刑訴法379条の解釈適用を誤った違法がある。この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであり,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
 よって,刑訴法411条1号により原判決を破棄し,同法413条本文に従い,本件を原裁判所である東京高等裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官岩橋義明,同稲川龍也 公判出席
(裁判長裁判官 竹崎博允 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官千葉勝美)

・犯人性の間接事実として用いる場合についても
+判例(H25.2.20)
理 由
 弁護人山田基幸の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み,職権で判断する。
 1 原判決は,事実誤認の控訴趣意を排斥するに当たり,被告人の前科(昭和47年9月から同48年9月までの間の窃盗13件,同未遂1件,現住建造物等放火1件,同未遂2件等の罪により懲役6年に処せられた前科及び平成2年3月から同年12月までの間の住居侵入,窃盗10件,住居侵入,窃盗,現住建造物等放火2件,住居侵入未遂1件の罪により懲役9年に処せられた前科)に係る犯罪事実並びに被告人が自認している第1審判決判示第1ないし第9及び第19の住居侵入,窃盗の各事実等から,被告人には,ア 住居侵入,窃盗の動機について,いわゆる色情盗という特殊な性癖が,イ 住居侵入,窃盗の手口及び態様について,①侵入先を決めるに当たって下見をするなど何らかの方法により女性の居住者がいるという情報を得る,②主な目的は女性用の物を入手することにあり,それ以外の金品を盗むことは付随的な目的である,③家人の留守中に窓ガラスを割るなどして侵入するという特徴が,ウ 現住建造物等放火について,女性用の物を窃取した際に,被告人本人にも十分に説明できないような,女性に対する独特の複雑な感情を抱いて,室内に火を放ったり石油を撒いたりするという極めて特異な犯罪傾向がそれぞれ認められるとした。そして,上記アないしウの特徴等が,第1審判決判示第10ないし第15,第18及び第20の住居侵入,窃盗又は同未遂,現住建造物等放火の各事実に一致するとし,このことが上記各事実の犯人が被告人であることの間接事実の一つとなるとした。

 2 しかし,上記原判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いようとする場合は,前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,その特徴が証明の対象である犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって,初めて証拠として採用できるところ(最高裁平成23年(あ)第670号同24年9月7日第二小法廷判決・裁判所時報第1563号6頁参照),このことは,前科以外の被告人の他の犯罪事実の証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いようとする場合にも同様に当てはまると解すべきである。そうすると,前科に係る犯罪事実や被告人の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の間接事実とすることは,これらの犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,その特徴が証明対象の犯罪事実と相当程度類似していない限りは,被告人に対してこれらの犯罪事実と同種の犯罪を行う犯罪性向があるという実証的根拠に乏しい人格評価を加え,これをもとに犯人が被告人であるという合理性に乏しい推論をすることに等しく,許されないというべきである。
 (2) これを本件についてみるに,原判決指摘アの色情盗という性癖はさほど特殊なものとはいえないし,同イの,あらかじめ下見をするなどして侵入先の情報を得る,女性用の物の入手を主な目的とする,留守宅に窓ガラスを割るなどして侵入するという手口及び態様も,同様にさほど特殊なものではなく,これらは,単独ではもちろん,総合しても顕著な特徴とはいえないから,犯人が被告人であることの間接事実とすることは許されないというべきである。また,原判決指摘ウの「特異な犯罪傾向」については,原判決のいう「女性用の物を窃取した際に,被告人本人にも十分に説明できないような,女性に対する複雑な感情を抱いて,室内に火を放ったり石油を撒いたりする」という行動傾向は,前科に係る犯罪事実等に照らしても曖昧なものであり,「特異な犯罪傾向」ということは困難である上,そもそも,このような犯罪性向を犯人が被告人であることの間接事実とすることは,被告人に対して実証的根拠の乏しい人格的評価を加え,これをもとに犯人が被告人であるという合理性に乏しい推論をすることにほかならず(前掲最高裁平成24年9月7日判決参照),許されないというべきである。
 (3) したがって,原判決が,上記前科に係る犯罪事実並びに第1審判決判示第1ないし第9及び第19の各事実にみられる上記アないしウの特徴が第1審判決判示第10ないし第15,第18及び第20の各事実に一致することを上記各事実の犯人が被告人であることの間接事実の一つとしたことは違法であり,原判決には法令違反がある。
 3 しかしながら,上記間接事実を除外しても,その余の証拠によれば,第1審判決の各犯罪事実の認定について事実誤認はないとした原判断は是認することができるから,原判決の上記法令違反は,判決に影響を及ぼすものではない。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官金築誠志の補足意見がある。

・悪性格を証明するための証拠(性格証拠)や、同種前科証拠などの類似事実を証明するための証拠「類似事実証拠」については、情状証拠としては許容されるとしても、
犯罪事実の立証のために用いるときは、原則として法的関連性がない(場合によっては自然的関連性も)

・悪性格の持つ推認力に比して、事実認定を誤らせる危険の方がはるかに大きいため、このような証拠を排除する政策を採っておいた方が賢明。

・類似事実証拠
類似事実から、被告人はそのような犯罪を行う悪性格があることを推認
悪性格を有していることから、被告人が起訴に係る犯罪事実を行ったことを推認するという二重の推認過程
どちらも不確実な推認・・・。

・実証的証拠
=科学的・医学的に裏付けられたもの

2.例外的に許容される3つの場合
・実証的根拠の乏しい人格的評価によって誤った事実認定に至るおそれがない場合
=不確かな弱い推認の過程を経ない場合

・前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合について
前科にかかる犯罪事実が顕著な特徴を有し
かつ
それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなもののとき
←犯罪性向という人格的評価を介在させる必要がない

・強固な犯罪傾向を持つ場合

・第1の推認(犯罪性向)
第2の推認(その犯罪性向が被告人の行動をどの程度支配しているか)
両方に科学的、医学的な裏付けが必要

・他事情付加の例外
他事情が付加されて推認力が高まっている。
類似事実が顕著な特徴を有するとまではいえないとしても、被告人がある程度特徴のある類似犯罪を証明対象の犯罪事実と密接した時間・場所で行っているとすれば、二つの犯行が別人によって行われた可能性は経験則上小さくなるから、この類似事実から犯人性を推認することがおよそ不合理とまではいえない。

3.主観的要素の推認

+判例(S41.11.22)
理由
被告人本人の上告趣意第二点および第六点のうち憲法一一条、三八条二項、三項違反をいう点は、記録による所論各供述調書が所論の如き拷問、強制等によつて得られたと疑うべき証跡は存しないから、論旨は、その前提を欠き、同第四点のうち、憲法三八条三項違反をいう点は、その実質は単なる訴訟法違反の主張であり、同第二点および同第四点のうち判例違反をいう点は、すべて事案を異にし本件に適切でなく、その余の所論は、事実誤認、単なる法令違反(記録に徴しても、所論各供述調書の任意性を疑うべき証跡は認められない)の主張であつて、いずれも適法な上告理由に当らない。
弁護人荻原静夫の上告趣意第一は、判例違反をいうが、所論引用の判例は、すべて事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単なる訴訟法違反の主張であり(犯罪の客観的要素が他の証拠によつて認められる本件事案の下において、被告人の詐欺の故意の如き犯罪の主観的要素を、被告人の同種前科の内容によつて認定した原判決に所論の違法は認められない)、同第二は、事実誤認の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。
また、記録を調べても、同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて、同四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 柏原語六 裁判官 下村三郎)


・犯罪の客観的要素が立証されているという前提で犯罪の主観的要素を対象とする場合であれば、無条件に同種前科等による立証が許されるわけではない!!!!!!

・この事案は確実な推認による場合だった・・・

・偶然行為の理論から故意の存在を推認する方法

4.設問の解決
・顕著な特徴は、犯罪事実の手口だけではなく、犯行の日時や場所、さらには犯行動機、犯罪に至る経緯や犯行後の状況などを含めて考慮してよい・・・

・同様の態様の行為を行う者が他にも存在する可能性が著しく低いかどうか


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