不法行為法 13 名誉棄損および人格権・プライバシー侵害

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1.名誉棄損と人格権・プライバシー侵害

2.名誉と名誉棄損の意義
・名誉とは、
人がその品性、徳行、名声、信用その他の人格的価値について社会から受ける客観的評価を言う
人には法人も含まれる。

・名誉棄損に当たっては、被害者の社会的評価が保護法益
主観的な名誉感情の侵害だけでは、いまだ名誉棄損とはならない。
(人格権侵害を理由とする救済の可能性はある)

・709条にいう権利侵害の要件を充たすためには、
被害者の社会的評価が低下したことがあれば足りる。
真実を告げたことによる社会的評価の低下も名誉棄損に該当する。

・新聞記事・テレビ報道による名誉棄損と社会的評価の低下
当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断する。

3.名誉棄損の免責法理~真実性の抗弁と相当性の抗弁
・真実性の抗弁
公表事項の公共性と、
公益目的での公表

・相当性の抗弁
指摘した事実が真実であると信じたことに過失がなかった

(1)真実性の抗弁
①指摘された事実が真実であること、
②指摘された事実が公共の利害に関する事実にかかるものであること
③事実適示がもっぱら公益を図る目的に出たこと
違法性がなくなる。

・適示された事実が真実かどうかの判断に当たっては、裁判所は、
事実審の口頭弁論終結時において客観的な判断をすべき。
→名誉棄損行為の時点では存在しなかった証拠を考慮して、真実性についての客観的判断をすることも当然に許される。

指摘された事実が真実であることに関しては、
適示された事実は主要な部分において真実であることを主張立証すれば足りる

(2)真実と信じたことについての無過失の抗弁(相当性の抗弁)
・適示された事実が真実であることを立証できなくても、行為者において、その事実を真実と信じるについて相当の理由があったことを根拠付ける具体的事実を主張立証することで、名誉棄損を理由とする責任を免れる。

適示された事実が周知のものとなっていたという事実を主張立証するだけでは足りない
=周知性は、その事実が真実であるということへの信頼を基礎付けない。

・配信サービスの抗弁
掲載記事中で配信元が明確にされている場合には、
取材のための人的物的体制が整備され、一般的にその報道内容に一定の信頼性を有しているとされる通信社からの配信に基づく記事については、裏付け取材をしなくても、真実を伝えるものであると信じるについて相当の理由がある

私人の犯罪行為やスキャンダルないしこれに関連する事実を内容とするものである場合には、このような配信サービスの抗弁を認めない。

・判断基準時
名誉棄損当時に存在していた資料に基づいて相当の理由の有無を判断

4.意見・論評による名誉棄損
・意見の表明によって社会的評価が下落したとしても、それが人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない限り、その意見・論評が合理的か不合理かを問わず、およそ不法行為責任の成立が否定される!
なお、
意見や論評をする際の基礎ないし前提となった事実の適示により社会的評価が低下した点を捉えて、名誉棄損の不法行為責任を追及していく可能性はある。

・死者の名誉棄損
死者自身に対する権利侵害は否定し、虚偽の事実適示であることを要件として、死者の名誉・人格権を侵害するような行為を、遺族・近親者らの名誉棄損・人格権侵害という観点から捉え、不法行為責任の成否を論じるのが適切。

5.人格権・プライバシーの権利の意味~総論
人格権とは、
人間の尊厳に由来し、
人格の自由な展開の保障や、個人の私的生活領域の平穏の保護を目的とする権利

6.平穏生活権としてのプライバシーの権利

・私生活をみだりに更改されないという法的保障ないし権利
+判例(宴の後事件)

・平穏生活権としてのプライバシーへの侵害を判断するに当たっては
①一般人の感受性を基準に判断したとき、当該私人の立場に立ったならば公開を欲しないであろう事柄であって、
②一般の人にいまだ知られていないものであったかどうか
そのうえで、
③その事柄の公開によって、当該具体的個人が実際に不快・不安の念を覚えたことが必要
さらに、私事をみだりに公開されないことが権利として法的に保護されるためには、
④問題の事項につき社会が関心を持つことが正当とは言えないものであることが必要。

7.自己情報コントロール権としてのプライバシー権
・個人情報を排他的に支配管理できる権利が憲法上保護された基本権として情報主体である個人に与えられていると考え、私人関係レベルにおいても、自己情報コントロール権としてのプライバシー権が不法行為法の保護の対象となる。

・氏名は人格権の1内容を構成する
+判例(S63.2.16)在日韓国人の氏名の日本語読み判決

・みだりに指紋の押なつを強制されない自由がある
採取された指紋の利用方法次第では個人の私生活あるいはプライバシーが侵害される危険がある
同時に、
公共の福祉のために相当の制限
指紋は指先の紋様でありそれ自体では思想良心等個人の内心に関する情報となるものではない

・肖像権

8.自己決定権としての人格権

9.名誉棄損、人格権・プライバシー侵害の効果(その1)~損害賠償

10.名誉棄損、人格権・プライバシー侵害の効果(その2)~差止請求
・人格権としての名誉権に基づき、現に行われている侵害行為を排除し、または将来生ずべき損害を予防するために、侵害行為の差止めを求めることができる
←名誉は生命身体とともにきわめて重大な保護法益であり、人格権としての名誉権は物権の場合と同様に排他性を有する権利と考えられるから。
+判例(S61.6.11)北方ジャーナル事件

出版物が公務員または公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものであるときには、差止めは原則として許されず、
例外的に、
①その表現内容が真実でないか、またはもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、
②被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る恐れがあるときに限り許される

11.名誉棄損、人格権・プライバシー侵害の効果(その3)~原状回復
+(名誉毀損における原状回復)
第七百二十三条  他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

・謝罪広告の掲載
単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度の謝罪広告を新聞に掲載すべきことを命じるのは、
公表事実が虚偽かつ不当であったことを広報機関を通じて発表することを求めるに帰するから、
屈辱的もしくは苦役的労苦を科し、または上告人の有する倫理的な意思、良心の自由を侵害することを要求するものとは解せられない

・反論権、反論文の掲載については認められない。

12.パブリシティの権利
・氏名・肖像権
自己の氏名・肖像等をみだりに利用されない権利

・パブリシティ権
自己の氏名肖像等の持つ顧客吸引力を排他的に利用する権利
人格の持つ財産的価値を保護の対象とした

・肖像の無断使用がパブリシティ権を侵害するものとして不法行為法上違法となるのは、
①氏名肖像等それ自体を独立して鑑賞の対償となる商品等として使用し、
②商品等の差別化を図る目的で氏名・肖像等を商品等に付し、
③氏名肖像等を商品等の広告として使用するなど、もっぱら氏名肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合
+判例(H24.2.2)ピンクレディー事件


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労働法 事例演習労働法 U7 人事 C7-2


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1.本件における争点
・復帰命令の有効性
・懲戒解雇の可否

2.本件命令の有効性について
(1)
・出向労働者の意思にかかわらず出向元の職場へ復帰させる権限を有しているのか?
出向期間を限定する明示又は黙示の合意が存在したかどうか
特段の合意がない場合は任意に復帰を命じる権限を有する!
←本来出向元の指揮監督下で就労することが両当事者の労働契約の内容だから。
ただし、権限の濫用は許されない

(2)
個別の合意といえるか・・・

(3)
・濫用について
①業務上の必要性
②他の不当な動機・目的によるものではないか
③復帰を命じることが業務上の必要性に比して当該労働者に対し過度の不利益を課するものでないか

時間的余裕とか金銭援助とか・・・

③については
+(労働契約の原則)
第三条  労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
2  労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3  労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする
4  労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
5  労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

・育休法
+(労働者の配置に関する配慮)
第二十六条  事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。

3.懲戒解雇について
客観的合理的な理由
社会通念上の相当性

key
+判例(S60.4.5)古河電気工業事件
理由
上告代理人浅野憲一、同石田省三郎の上告理由第二点について
労働者が使用者(出向元)との間の雇用契約に基づく従業員たる身分を保有しながら第三者(出向先)の指揮監督の下に労務を提供するという形態の出向(いわゆる在籍出向)が命じられた場合において、その後出向元が、出向先の同意を得た上、右出向関係を解消して労働者に対し復帰を命ずるについては、特段の事由のない限り、当該労働者の同意を得る必要はないものと解すべきである。けだし、右の場合における復帰命令は、指揮監督の主体を出向先から出向元へ変更するものではあるが、労働者が出向元の指揮監督の下に労務を提供するということは、もともと出向元との当初の雇用契約において合意されていた事柄であつて、在籍出向においては、出向元へ復帰させないことを予定して出向が命じられ、労働者がこれに同意した結果、将来労働者が再び出向元の指揮監督の下に労務を提供することはない旨の合意が成立したものとみられるなどの特段の事由がない限り、労働者が出向元の指揮監督の下に労務を提供するという当初の雇用契約における合意自体には何らの変容を及ぼさず、右合意の存在を前提とした上で、一時的に出向先の指揮監督の下に労務を提供する関係となつていたにすぎないものというべきであるからである。
これを本件についてみるのに、原審が確定した事実は、次のとおりである。

1 被上告人古河電気工業株式会社(以下「被上告人古河電工」という。)と住友電気工業株式会社(以下「住友電工」という。)は、両社の核燃料部門を新設の会社に引き継いで営業させる旨の合意に基づき、昭和四七年七月八日被上告人原子燃料工業株式会社(以下「被上告人原燃工業」という。)を設立した。被上告人原燃工業としては、当座の操業に支障を生じないようにするため、被上告人古河電工及び住友電工の両社から拠出された人的・物的施設をそのまま引き継ぐこととするが、これを有機的に統合して合理化し、かつ、両社からの出向者がほぼ同数になるように人員を調整することを予定していた。被上告人古河電工は、同年九月一日その原子力部門の物的施設を被上告人原燃工業に譲渡あるいは賃貸すると共に、上告人ら同部門の従業員一五一名に対し、自社との雇用契約関係は存続させたまま休職の形で被上告人原燃工業に派遣を命じ、以後右従業員は全員異議なく被上告人原燃工業の業務に従事して来た。ちなみに、住友電工から被上告人原燃工業への出向者は一〇五名であつた。
2 被上告人原燃工業としては、発足後間もない時期においては、前記の人員調整だけでなく、適材適所等の観点からの適切な人員配置をする必要があり、その結果一部の出向者をそれぞれの出向元に復帰させるという事態の生じ得ることも予想されたため、被上告人古河電工からの出向者が被上告人原燃工業の従業員として定着することとなるのか、出向元に復帰することとなるのかは、極めて流動的な状態にあつた。被上告人古河電工は、被上告人原燃工業が企業としての統一性、独立性を備え、独立の企業としての基盤を持つに至るまでの間は、出向者を被上告人原燃工業における人員調整、適切な人員配置等の人事上の都合により自社に復帰させることがあり得ることを予定して従業員に出向を命じ、出向を命じられた者もそのことを予定して出向に同意した。
3 上告人に対する本件復帰命令は昭和四七年一二月一八日にされたものであるが、当時、被上告人原燃工業は、設立後なお半年に満たず、独立の企業としての基盤を有するに至つていない状態にあつたものである。以上の原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。

右の事実関係によれば、上告人の被上告人原燃工業への出向は、被上告人古河電工又は被上告人原爆工業の業務上の都合により被上告人古河電工へ復帰を命ずることがあることを予定して行われたものであつて、上告人が被上告人古河電工の指揮監督の下において労務を提供するという当初の雇用契約における合意がその後変容を受けるに至つたとみるべき特段の事情の認められない本件においては、被上告人古河電工は上告人に対し復帰を命ずる際に改めて上告人の同意を得る必要はないものというべきである。したがつて、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。
論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定にそわない事実若しくは独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。同第一点、第三点及び第四点について
所論の点に関する原審の認定判断及び措置は、原判決挙示の証拠関係及び本件記録に現われた本件訴訟の経過に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 牧圭次 裁判官 木下忠良 裁判官 鹽野宜慶 裁判官 大橋進 裁判官 島谷六郎)


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民法 事例で学ぶ民法演習 34 他人の物の賃貸借


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1.小問1(1)について

+(有償契約への準用)
第五百五十九条  この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
(他人の権利の売買における売主の義務)
第五百六十条  他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う

+(賃貸借)
第六百一条  賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

・賃借人が賃貸人を目的物の所有者であると勘違いしても、それは95条の「錯誤」にはあたらない。

2.小問1(2)について

+(権利を失うおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶)
第五百七十六条  売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。

+(有償契約への準用)
第五百五十九条  この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

+(他人の権利の売買における売主の担保責任)
第五百六十一条  前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない

・債務不履行
+判例(S41.9.8)
理由
上告代理人白上孝千代の上告理由について。
原判決の確定したところによると、上告人と被上告人との本件売買契約は、第三者たる訴外山邑酒造株式会社の所有に属する本件土地を目的とするものであつたところ、原審認定の事情によつて売主たる被上告人が右所有権を取得してこれを買主たる上告人に移転することができなくなつたため履行不能に終つたというのである。
そして、本件売買契約の当時すでに買主たる上告人が右所有権の売主に属しないことを知つていたから、上告人が民法五六一条に基づいて本件売買契約を解除しても、同条但書の適用上、売主の担保責任としての損害賠償請求を被上告人にすることはできないとした原審の判断は正当である。
しかし、他人の権利を売買の目的とした場合において、売主がその権利を取得してこれを買主に移転する義務の履行不能を生じたときにあつて、その履行不能が売主の責に帰すべき自由によるものであれば、買主は、売主の担保責任に関する民法五六一条の規定にかかわらず、なお債務不履行一般の規定(民法五四三条、四一五条)に従つて、契約を解除し損害賠償の請求をすることができるものと解するのを相当とするところ、上告人の本訴請求は、前示履行不能が売主たる被上告人の責に帰すべき自由によるものであるとして、同人に対し債務不履行による損害賠償の請求をもしていることがその主張上明らかである。しかして、原審認定判示の事実関係によれば、前示履行不能は被上告人の故意または過失によつて生じたものと認める余地が十分にあつても、未だもつて取引の通念上不可抗力によるものとは解し難いから、右履行不能が被上告人の責に帰すべき自由によるものとはみられないとした原判決には、審理不尽、理由不備の違法があるといわねばならない。
従つて、この点を指摘する論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく原判決は破棄を免れず、本件を原審に差し戻すのを相当とする。
よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠)

・担保責任における損害賠償の犯意は信頼利益に限られる!!!

・使用収益させる義務が履行不能になった場合、賃貸借契約は解除を待つことなく消滅する!!!
+判例(S42.6.22)
理由
上告代理人身深正男の上告理由について。
賃貸借の目的物たる家屋が滅失した場合には、賃貸借の趣旨は達成されなくなるから、これによつて賃貸借契約は当然に終了すると解すべきであるが、家屋が火災によつて滅失したか否かは、賃貸借の目的となつている主要な部分が消失して賃貸借の趣旨が達成されない程度に達したか否かによつてきめるべきであり、それには消失した部分の修復が通常の費用では不可能と認められるかどうかをも斟酌すべきである。ところで、本件建物は、大正末期頃建築された建物を昭和二六年六月頃戦災復興区画整理のため現在地に移築されたものであつて、後記類焼を受けた昭和三八年一一月二六日当時すでに相当古い建物であり、上告人壽雄は被上告人からこれを昭和二七年一一月一七日賃借し、その二階部分を写真の写場、応接室とし、階下部分を住居として使用し、写真館を経営していたところ、昭和三八年一一月二六日本件建物の隣家からの出火により、本件建物は類焼をうけ、そのため、スレート葺二階屋根と火元隣家に接する北側二階土壁は殆んど全部が焼け落ち、二階の屋根に接する軒下の板壁はところどころ燻焼し、二階内側は写場、応接室ともに天井の梁、軒桁、柱、押入等は半焼ないし燻焼し、床板はその一部が燻焼し、二階部分の火災前の建築材は殆んど使用にたえない状態に焼損し、階下は、火元の隣家に接する北側土壁はその大半が破傷し、火災の直接被害をうけなかつたのは、火元の隣家に接する北側の階上階下の土壁を除いた三方の外板壁と階下の居住部分だけであり、本件建物は罹災のままの状態では風雨を凌ぐべくもない状況で、倒壊の危険さえも考えられるにたち至り、そのため火災保険会社は約九割の被害と認めて保険金三〇万円のうち金二七万円を支払つたこと、また本件建物を完全に修復するには多額の費用を要し、その将来の耐用年数を考慮すると、右破損部分を修復するよりも、却つてその階上階下の全部を新築する方がより経済的であること、もつとも、右のとおり、本件建物の階下居住部分は概ね火災を免れていて、全焼とみられる二階部分をとりこわし、屋根をつけるなどの修繕をして本件の建物を一階建に改造することは物理的に不可能ではないが、一階建に改造したのでは、階下部分の構造や広さに鑑み、写真館として使用することが困難であることは、原判決が、適法に認定判断したところである。
この認定事実を前記説示に照らして考えれば、本件建物は類焼により全体としてその効用を失ない滅失に帰したと解するのが相当である。してみれば、本件建物が滅失したことにより被上告人と上告人壽雄との間の賃貸借契約は終了したとして被上告人の上告人らに対する本訴請求を認容した原判決は正当であつて、何ら所論の違法はない。論旨は理由がない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岩田誠 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 大隅健一郎)

3.小問2について

+(善意の占有者による果実の取得等)
第百八十九条  善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する
2  善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。

・189条1項は不当利得に対する特則+709条との関係でも特則!

・契約が無効の場合は、善意でも189条1項は適用されない!!
返還の範囲は現存利益に限られない!

・Bは直接占有者であるから、189条1項の保護が及び、Bが善意なら、Bの利得には法律上の原因があるという主張!

4.小問3について

+(賃貸物の修繕等)
第六百六条  賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
2  賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

+(賃借人による費用の償還請求)
第六百八条  賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2  賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

・必要費は「物に関して生じた債権」留置権の主張もできる。
+(留置権の内容)
第二百九十五条  他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2  前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

+(占有者による費用の償還請求)
第百九十六条  占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2  占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

・自己使用は果実取得と同等に扱われる
+(留置権者による果実の収取)
第二百九十七条  留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる
2  前項の果実は、まず債権の利息に充当し、なお残余があるときは元本に充当しなければならない。

+(留置権者による留置物の保管等)
第二百九十八条  留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
2  留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。
3  留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。

2項は、従前からの継続使用を否定するものではない!!

+(善意の占有者による果実の取得等)
第百八十九条  善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2  善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。

+(占有者による費用の償還請求)
第百九十六条  占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する
2  占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。


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