債権総論 3-1 債権の効力 序説

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一.債権の効力概観
・債権の対内的効力
債権実現のために債務者に対して認められる債権の効力
①請求力と給付保持力
債務者に任意の履行を請求する場合にかかわる効力

②訴求力と執行力
債務者が任意に履行しない場合に履行の強制と損害賠償の請求

・債権の対外的効力
第三者との関係で、第三者による違法な債権実現の妨害から債権を保護するための効力

・債権の保全的効力
債務者の一般財産(責任財産)の異時・充実を図るための効力

二.債権の実現
1.債務者による任意の履行
・請求力
=債権者が債務者に対して給付を請求できる効力

・給付保持力
債権者が債務者のなした給付を受領して適法に保持できる効力

2.国家機関による債権の実現
実現のためには
①判決手続き
②強制執行手続
が必要。

・訴求力
債権者が裁判所に訴えて判決を得、それによって債務者に履行を請求できる効力

・執行力
債権者が強制執行の手続をとることによって債権の内容を実現することができる効力
①貫徹力
物の引渡しなど債権の内容をそのまま実現させる効力
②摑取力
金銭債権において、債権者が債務者の一般財産に対して強制執行をかけることができる効力

三.特殊な効力の債権
請求力・給付保持力・訴求力・執行力をすべて備えたものが完全な債権。
債権のなかには一部が欠けている自然債権と呼ばれるものがある。

1.自然債務
(1)意義
自然債務とは、
債務者が任意に履行するときは有効な弁済になるが、債務者が履行しないときには、債権者から裁判所に訴えて履行を請求することができない債務をいう。
請求力と給付保持力はあるが、訴求力・執行力を欠く。

(2)自然債務の例
(ア)合意による自然債務
+判例(S10.4.25)カフェー丸玉事件

(イ)不訴求特約のある債務

(ウ)法律上遡及できない債務
消滅時効が援用された債務
公序良俗に反する契約による債務

債権者は遡及できないが、債務者が任意に履行すればもはや返還は請求できない。
ex

2.責任なき債務
(1)債務と責任
・債務とは、
債権に基づいて債務者が行うべき給付義務

・責任とは、
債務者の一般財産が債権の引き当てになっていることをいう

(2)責任なき債務
債務不履行の場合に債務者の一般財産への強制執行ができない債務(摑取力を欠く)
ex強制執行をしない不執行特約
裁判所に訴えを提起して履行を命じる判決を得ることはできる。

・不執行特約に違反して強制執行がなされたときは、請求意義の訴えによってその排除が求められる。

(3)債務なき責任
責任を負う者が債務を負担しない場合
ex物上保証人や抵当不動産の第三取得者


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労働法 事例演習労働法 U10 C10-2


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※法改正で労働契約法19条ができている!!
+(有期労働契約の更新等)
第十九条  有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす
一  当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二  当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

1.有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が法的に許されない→
契約が更新されたのと同じ状態にあることの確認の請求(労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求)
雇止め後の未払賃金の支払請求

2.
・契約更新手続きはその都度新しい契約書に署名押印を求めるというものであり、形骸化しているとまでは言い難い。
よって、労働者の雇用継続の期待をどう評価するか?

・契約の更新は今回限りとするという合意が成立していたといえれば、Xがさらなる更新について期待したとしても、その期待は合理的でなく法的保護に値しない!

・Xは、内心会社の話に納得せず、とりあえずその会の更新をするために契約書に署名
Xが本意でなかったことをY社が知りまたは知りうべき状況にあったとまではいえないので、Xの意思表示は無効ではないと解される(民法93条)

・しかし、この不更新の合意は、承諾しなければその場で雇用を失うという二者択一のもとでなされたものである。
著しく労働者に不利である不幸神の合意につき、Y社は雇止めの可能性を示しながら承諾を求めたものであるから、その結果として成立した本件不更新の合意は、公序に反して無効(民法90条)!!!!!

・期待の合理性について
臨時的な業務ではない(業務の客観的な医用)
更新拒絶はほとんどなく、希望すれば継続雇用されると認識していた(当事者の主観的態様)
15回も更新を重ねてきた(更新の手続)

(2)合理性・相当性の有無
①人員削減の必要性
②雇止めの必要性
特別慰労金の支給は経済的打撃を軽減するものではあるが、雇止め回避措置をいくつか試みたうえでやむなく実施されたというわけではなく、また金額もさほど大きくないため、使用者側の真摯な取り組みとして評価することまではできない

③人選の合理性
今回の人事評価のみを基準とすることは・・・

④手続きの妥当性
雇止めの対象となった者には詳細な説明がなされているが、人員整理に着手する前の段階ではパート社員に対する情報提供や話し合いが行われていないので、手続を十分に尽くしたとはいえない

key
・雇用継続の期待に合理性があるかどうかについては、
業務の客観的内容、当事者の主観的態様、更新の手続などを総合的に考慮

・実質的に無期契約
+判例(S49.7.22)東芝柳町工場事件
理由
上告代理人鎌田英次、同渡辺修、同竹内桃太郎の上告理由について。
論旨は、要するに、原判決の確定した事実関係のもとにおける本件各労働契約の法的性質は、反覆更新後も依然として二か月の確定期間の定めのある契約であり、ただ、被傭者において期間満了後の継続雇傭を期待することに合理性が認められる場合に該当するものとして、使用者のなす更新拒絶が信義則ないし権利濫用の法理によつて制約を受けるにとどまるものと解すべきであるのに、原判決が、これをあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存続していたものと判断し、更新拒絶を解雇と同視すべきものとして臨時従業員就業規則所定の解雇条項をそのまま適用した結果、被上告人らに対する本件各傭止めの効力を否定すべきものとしたのは、法令の解釈適用を誤り、事実認定に関する経験則違反、採証法則違反、審理不尽、判断遺脱、理由不備等の違法をおかすものである、というのである。
ところで、本件各労働契約締結及びその当時の上告会社における臨時工雇傭の実状について、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)が認定する事実関係は、次のとおりである。
上告会社は、電気機器等の製造販売を目的とする株式会社であるが、その従業員には正規従業員(本工)(昭和三七年三月現在四九、七五〇名)と臨時従業員(臨時工)の種別があり、後者は、基幹作業に従事する基幹臨時工(同じく一九、四六〇名)と附随作業を行うその他の臨時工(同じく一、四七〇名)とに分かれている。基幹臨時工は、景気の変動による需給にあわせて雇傭量の調整をはかる必要から雇傭されたものであつて、その採用基準、給与体系、労働時間、適用される就業規則等において本工と異なる取扱をされ、本工労働組合に加入しえず、労働協約の適用もないけれども、その従事する仕事の種類、内容の点においては本工と差異はない。上告会社における基幹臨時工の数は、昭和二五年朝鮮動乱を機として漸次増加し、以後昭和三七年三月までは必ずしも景気の変動とは関係なく増加の一途をたどり、ことに昭和三三年から同三八年までは毎年相当多数が採用され、総工員数の平均三〇パーセントを占めていた。そして、基幹臨時工が二か月の期間満了によつて傭止めされた事例は見当らず、自ら希望して退職するものの外、そのほとんどが長期間にわたつて継続雇傭されている。また、上告会社の臨時従業員就業規則(以下、臨就規という。)の年次有給休暇の規定は一年以上の雇傭を予定しており、一年以上継続して雇傭された臨時工は、試験を経て本工に登用することとなつているが、右試験で数回不合格となつた者でも、相当数の者が引続き雇傭されている。被上告人らは、いずれも、上告会社と契約期間を二か月と記載してある臨時従業員としての労働契約書を取りかわして入社した基幹臨時工であるが、その採用に際しては、上告会社側に、被上告人らに長期継続雇傭、本工への登用を期待させるような言動があり、被上告人らも、右期間の定めにかかわらず継続雇傭されるものと信じて前記契約書を取りかわしたのであり、また、本工に登用されることを強く希望していたものであつて、その後、上告会社と被上告人らとの間の契約は、五回ないし二三回にわたつて更新を重ねたが、上告会社は、必ずしも契約期間満了の都度、直ちに新契約締結の手続をとつていたわけでもない
以上の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、すべて正当として首肯しうるところである。
原判決は、以上の事実関係からすれば、本件各労働契約においては、上告会社としても景気変動等の原因による労働力の過剰状態を生じないかぎり契約が継続することを予定していたものであつて、実質において、当事者双方とも、期間は一応二か月と定められてはいるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であつたものと解するのが相当であり、したがつて、本件各労働契約は、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各傭止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示にあたる、とするのであり、また、そうである以上、本件各傭止めの効力の判断にあたつては、その実質にかんがみ、解雇に関する法理を類推すべきであるとするものであることが明らかであつて、上記の事実関係のもとにおけるその認定判断は、正当として首肯することができ、その過程に所論の違法はない。
そこで考えるに、就業規則に解雇事由が明示されている場合には、解雇は就業規則の適用として行われるものであり、したがつてその効力も右解雇事由の存否のいかんによつて決せらるべきであるが、右事由に形式的に該当する場合でも、それを理由とする解雇が著しく苛酷にわたる等相当でないときは解雇権を行使することができないものと解すべきである。ところで、本件臨就規八条は上告会社における基幹臨時工の解雇事由を列記しており、そのうち同条三号は契約期間の満了を解雇事由として掲げているが、上記のように本件各労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあつたこと、及び上記のような上告会社における基幹臨時工の採用、傭止めの実態、その作業内容、被上告人らの採用時及びその後における被上告人らに対する上告会社側の言動等にかんがみるときは、本件労働契約においては、単に期間が満了したという理由だけでは上告会社において傭止めを行わず、被上告人らもまたこれを期待、信頼し、このような相互関係のもとに労働契約関係が存続、維持されてきたものというべきである。そして、このような場合には、経済事情の変動により剰員を生じる等上告会社において従来の取扱いを変更して右条項を発動してもやむをえないと認められる特段の事情の存しないかぎり、期間満了を理由として傭止めをすることは、信義則上からも許されないものといわなければならない。しかるに、この点につき上告会社はなんら主張立証するところがないのである。もつとも、前記のように臨就規八条は、期間中における解雇事由を列記しているから、これらの事由に該当する場合には傭止めをすることも許されるというべきであるが、この点につき原判決は上告会社の主張する本件各傭止めの理由がこれらの事由に該当するものでないとしており、右判断はその適法に確定した事実関係に照らしていずれも相当というべきであつて、その過程にも所論の違法はない。そうすると、上告会社のした被上告人らに対する本件傭止めは臨就規八条に基づく解雇としての効力を有するものではなく、これと同趣旨に出た原判決に所論の違法はない。論旨はすべて採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤林益三 裁判官 大隅健一郎 裁判官 下田武三 裁判官 岸盛一 裁判官 岸上康夫)

+判例(S61.12.4)日立メディコ事件
理  由
上告代理人石井正二、同河本和子、同柴田睦夫、同鈴木守、同関静夫、同山田安太郎、同白井幸男、同高橋勲、同田村徹、同田中三男、同塙悟、同坂本修の上告理由第三の一について
上告人と被上告人との間の当初締結の労働契約は昭和四五年一二月二〇日までの期間の定めのある契約であるという上告人の自白が真実に合致しないものとは認められず、右自白の取消は許されないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の裁量に属する審理上の措置の不当をいうものにすぎず、採用することができない。
同第三の二及び三について
本件労働契約について、原判決が認定する事実関係は、次のとおりである。
(1) 上告人は、昭和四五年一二月一日から同月二〇日までの期間を定めて被上告人の柏工場に雇用され、同月二一日以降、期間二か月の本件労働契約が五回更新されて昭和四六年一〇月二〇日に至つた臨時員である。(2) 柏工場の臨時員制度は、景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり、臨時員の採用に当たつては、学科試験とか技能試験とかは行わず、面接において健康状態、経歴、趣味、家族構成などを尋ねるのみで採用を決定するという簡易な方法をとつている。(3) 被上告人が昭和四五年八月から一二月までの間に採用した柏工場の臨時員九〇名のうち、翌四六年一〇月二〇日まで雇用関係が継続した者は、本工採用者を除けば、上告人を含む一四名である。(4) 柏工場においては、臨時員に対し、例外はあるものの、一般的には前作業的要素の作業、単純な作業、精度がさほど重要視されていない作業に従事させる方針をとつており、上告人も比較的簡易な作業に従事していた。(5) 被上告人は、臨時員の契約更新に当たつては、更新期間の約一週間前に本人の意思を確認し、当初作成の労働契約書の「4雇用期間」欄に順次雇用期間を記入し、臨時員の印を押捺せしめていた(もつとも、上告人が属する機械組においては、本人の意思が確認されたときは、給料の受領のために預かつてある印章を庶務係が本人に代わつて押捺していた。)ものであり、上告人と被上告人との間の五回にわたる本件労働契約の更新は、いずれも期間満了の都度新たな契約を締結する旨を合意することによつてされてきたものである。
以上の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として肯認することができ、その過程に所論の違法はない。
原審の確定した右事実関係の下においては、本件労働契約の期間の定めを民法九〇条に違反するものということはできず、また、五回にわたる契約の更新によつて、本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいは上告人と被上告人との間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできないというべきである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定にそわない事実を前提として原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
同第四ないし第八について
原判決は、本件雇止めの効力を判断するに当たつて、次のとおり判示している。
(1) 柏工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人との間においても五回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によつて雇止めにするに当たつては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかつたとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。(2) しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。(3) したがつて、後記のとおり独立採算制がとられている被上告人の柏工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかつたとしても、それをもつて不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。
原判決の右判断は、本件労働契約に関する前示の事実関係の下において正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例が本件に適切なものでないことは、前述のとおりである。
そして、原審は、次のように認定判断している。すなわち、被上告人においては柏工場を一つの事業部門として独立採算制をとつていたことが認められるから、同工場を経営上の単位として人員削減の要否を判断することが不合理とはいえず、本件雇止めが行われた昭和四六年一〇月の時点において、柏工場における臨時員の雇止めを事業上やむを得ないとした被上告人の判断に合理性に欠ける点は見当たらず、右判断に基づき上告人に対してされた本件雇止めについては、当時の被上告人の上告人に対する対応等を考慮に入れても、これを権利の濫用、信義則違反と断ずることができないし、また、当時の柏工場の状況は同工場の臨時員就業規則七四条二項にいう「業務上の都合がある場合」に該当する
右原審の認定判断も、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らしていずれも肯認することができ、その過程に所論の違法はない。
以上と異なる事実関係及び法律解釈に立つ所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づき若しくは原審の認定にそわない事実を前提として原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
同第九について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
その余の上告理由(第一、第二及び第一〇)について
論旨は、原判決の不当をいう限りにおいて、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高島益郎 裁判官 谷口正孝 裁判官 角田禮次郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 佐藤哲郎)

+判例(大阪地判H17.1.13)コカ・コーラボトリング事件


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民法 事例で学ぶ民法演習 39 対第三者関係


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1.小問1

・振り込み取引の法律上の基礎
AB間の補償関係に基づく給付
BC間の対価関係に基づく給付

+判例(H10.5.26)
理由
上告代理人中谷茂、同山口勉、同前田基博の上告理由第一点一の1及び第二点について
一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
1 上告人は、平成三年三月一五日、Aから強迫を受けて、被上告人との間に、上告人が被上告人から三五〇〇万円を弁済期日同年六月一五日、利息年三割六分の割合等の約定により借り受ける旨の本件消費貸借契約を締結した。この際、上告人は、Aの指示に従って、被上告人に対し、貸付金は北斗道路株式会社の当座預金口座に振り込むよう指示し、被上告人は、これに応じて、利息等を控除した残金三〇三三万七〇〇〇円を、右口座に振り込んだ
2 上告人は、平成六年二月二四日、被上告人に対し、Aの強迫を理由に本件消費貸借契約を取り消す旨の意思表示をした。

二 本件において、被上告人は、上告人は本件消費貸借契約に基づき給付された金員につき悪意の受益者に当たるとして、民法七〇四条に基づき、被上告人が北斗道路の当座預金口座に振り込んだ金員のうち二九四一万七九一七円及びこれに対する上告人が悪意となった日の後である平成三年六月一六日から支払済みまで年一割五分の割合による利息の支払を求めている。
原審は、被上告人が前記のとおり振込みを行ったのは上告人の指示に基づくものであったから、上告人は右振込みに係る金員の交付を受けてこれを利得したというべきであるなどとして、被上告人の不当利得返還請求について、利息の割合を民法所定の年五分として、これを認容した。

三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
消費貸借契約の借主甲が貸主乙に対して貸付金を第三者丙に給付するよう求め、乙がこれに従つて丙に対して給付を行った後甲が右契約を取り消した場合、乙からの不当利得返還請求に関しては、甲は、特段の事情のない限り、乙の丙に対する右給付により、その価額に相当する利益を受けたものとみるのが相当である。けだし、そのような場合に、乙の給付による利益は直接には右給付を受けた丙に発生し、甲は外見上は利益を受けないようにも見えるけれども、右給付により自分の丙に対する債務が弁済されるなど丙との関係に応じて利益を受け得るのであり、甲と丙との間には事前に何らかの法律上又は事実上の関係が存在するのが通常だからである。また、その場合、甲を信頼しその求めに応じた乙は必ずしも常に甲丙間の事情の詳細に通じているわけではないので、このような乙に甲丙間の関係の内容及び乙の給付により甲の受けた利益につき主張立証を求めることは乙に困難を強いるのみならず、甲が乙から給付を受けた上で更にこれを丙に給付したことが明らかな場合と比較したとき、両者の取扱いを異にすることは衡平に反するものと思われるからである。
しかしながら、本件の場合、前記事実関係によれば、上告人と北斗道路との間には事前に何らの法律上又は事実の関係はなく、上告人は、Aの強迫を受けて、ただ指示されるままに本件消費貸借契約を締結させられた上、貸付金を北斗道路の右口座へ振り込むよう被上告人に指示したというのであるから、先にいう特段の事情があった場合に該当することは明らかであって、上告人は 右振込みによって何らの利益を受けなかったというべきである。
そうすると、右とは異なり、上告人の指示に基づき被上告人が北斗道路に対して貸付金の振込みをしたことにより上告人がこれを利得したとして、被上告人の不当利得返還請求の一部を認容すべきものとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由があり、その余の論旨について検討するまでもなく、原判決中右請求の一部を認容した部分は、破棄を免れない。そして、右部分について、被上告人の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないから、これを棄却すべきである。よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 園部逸夫 裁判官 尾崎行信 裁判官 元原利文 裁判官 金谷利廣)

++解説
《解  説》
本判決は、講学上「三者関係の給付不当利得」又は「三角関係の給付不当利得」の問題と呼ばれているものについて、最高裁として初めて立ち入った判断を示したものである。
一 本件の事案の概要は、次のとおりである。本件の被告甲は、平成三年三月一五日、本件の原告であり貸金業者である乙から、三五〇〇万円を、弁済期日同年六月一五日、利息年三割六分の割合等の約定により借り受けたが、この際、乙に対し、貸付金を丙の当座預金口座に振り込むように指示し、乙は右に応じて利息等を控除した後の残金三〇三三万七〇〇〇円を丙の右口座に振り込んだ。甲は、他に、B振出しに係る約束手形に裏書きをし、父親所有の不動産に根抵当権を設定するなどもしている。甲が右のように消費貸借契約を締結し貸付金を丙の口座に振り込むよう指示するなどしたのは、かねてよりAの強迫を受けていたためであり、丙はAの関係者の経営する株式会社であって、甲との間には何らの関係もなかった。甲は、その後間もなく弁護士に相談し、甲の父親は、乙を被告として、前記根抵当権の抹消登記手続等を求めて訴訟を提起したところ、乙は、平成四年、本件訴訟を提起した。本件訴訟は、当初は、前記貸付けに際して甲が裏書きした約束手形に基づき金員の支払を求める内容のものであったが、一審係属中に訴訟物は貸金返還請求に改められた、甲は、平成六年二月二四日、本件消費貸借契約はAの強迫により締結させられたものであるとして、これを取り消す旨の意思表示をした。一審判決は、Aの強迫の事実は認め難いとして、乙の請求を認容した。
甲が控訴したところ、乙は、予備的請求として、不当利得返還請求を追加した(甲は悪意により丙への交付金相当額を不当に利得したとする。)。原判決は、Aの強迫の事実を認め、乙の主位的請求(貸金返還請求)は棄却したが、その予備的請求(不当利得返還請求)を認容した(ただし、利息の割合は、請求が約定弁済期日の翌日以降年一割五分の割合であったのに対し、右の日以降年五分の割合とされた。)。その理由は、次のようなものであった。本件において、利息等を控除した後の残金は「丙の当座預金口座に振り込まれたが、これは甲の指示によるもので、甲・乙間に金員の交付があったと認めざるを得ない以上、右交付の時点で甲は同金額を利得したというべきであり(最三小判平3・11・19民集四五巻八号一二〇九頁参照)、右金員が丙の利用するところとなり、甲の手許に止まらなかったことは甲の利得の認定を妨げるものではない。甲は、強迫を理由に取消しの意思表示をするものであるから、悪意の不当利得者として、その利得金及びこれに対する利息を付して返還すべき義務があり、その利率は民事法定利率によるべきである。」。
甲が上告。上告理由は、本件において甲は乙の丙に対する給付によって「利益」を受けていないなどとするものであった。本判決は、判決要旨記載のように判示し、右論旨は理由のあるものとして、原判決中不当利得返還請求を認容した部分を破棄し、同請求を棄却するとの自判をした。

二1 本件においては、まず、前提として、甲が乙に対して貸付金を丙に交付するように指示し乙がこれに応じた点をどのように見るかが問題となる。このような形態によっても消費貸借契約が有効に成立することは、大判大13・7・13法律新聞二二九七号一五頁、大判昭11・6・16民集一五巻一一二五頁が明らかにしていたところであるが、右各判例は、その法律的な構造ないし性格付けについては明らかにしていなかった。この点に関し、大判昭15・12・16民集一九巻二三三七頁は、売買代金が売主の指示に従い買主から売主の債権者に直接交付された後に右契約が解除されたとの事案において、右契約は第三者のためにする契約(民法五三七条)に当たるとの原審の判断を前提として説示を展開してる。消費貸借契約は、目的物の借主への交付を成立要件の一つとしていること(いわゆる要物性。民法五八七条)において売買契約と異なっているが、今日、消費貸借契約の要物性を論ずる意義は、無利息の消費貸借契約にあっては借主が合意に基づき貸主に対して目的物の交付を当然に求めることを防ぎ、利息付きの消費貸借契約にあっては貸主が目的物を交付しないまま借主に対して利息の支払や目的物の返還を求めることを防ぐとの、いずれも主として公平上の見地から制限を設けるところにあると見る見解が有力である(新版注釈民法(15)・一四頁(広中俊夫)ほか)、右に従えば、消費貸借契約の要物性ゆえに、前記の三角関係の給付合意の性格を、売買契約におけるそれと、あえて異なって解すべき必要はないこととなる。強いていうならば、本件において、丙の乙に対する受益の意思表示があったか否かを問題とする余地がないでもないが、判例は、第三者が契約当事者間の合意により事実上利益を受けるに止まり更に進んで自分への給付請求権を取得するのではないという契約形態も許容しており(最一小判昭43・12・5民集二二巻一三号二八七六頁=電信送金契約に関する事案)、本件もこのような契約形態に当たると解するならば、右の点はあえて論ずる必要はないこととなる。

2 右のように、本件の契約形態が、第三者のためにする契約又はこれに準ずるものに当たるとして、右契約が取り消された後の不当利得返還請求権による清算関係については、どのような角度から考えていくべきであろうか。我が国の不当利得法においては、原物返還をもって大原則とすることが、通説とされている。本判決も、「消費貸借契約の借主甲が貸主乙に対して貸付金を第三者丙に給付するよう求め、乙がこれに従って丙に対して給付を行った後甲が右契約を取り消した場合、乙からの不当利得返還請求に関しては、甲は、特段の事情のない限り、乙の丙に対する右給付により、その価額に相当する利益を受けたものとみるのが相当である。」との、本件の結論を導く前提となる一般的な説示を行うに当たり、このように考えるべき理由の冒頭において、「けだし、そのような場合に、乙の給付による利益は直接には右給付を受けた丙に発生し、甲は外形上は利益を受けないように見えるけれども、右給付により自分の丙に対する債務が弁済されるなど丙との関係に応じて利益を受け得るのであ」ると述べて、給付による原物の帰属関係及びこれに伴う関係者の利害の変動状況のいかんが分析の基本的な視点になることを明らかにしている。
右の点は、昭和四〇年代以降我が国でも活発に論じられるようになったいわゆる「三者関係の給付不当利得」又は「三角関係の給付不当利得」に関する議論においても、概ねにおいて承認されていたところである(本件と類似のいわゆる給付原因の二重欠如の場合に関し、我妻栄・債権各論(下一)九九九頁、松坂佐一・事務管理・不当利得(新版)九二頁、四宮和夫・事務管理・不当利得・不法行為(上)二三三頁、鈴木禄弥・債権法講義(三訂版)七三四頁、加藤雅信・財産法の体系と不当利得法の構造四九一頁、注解判例民法債権法Ⅱ九六九頁(山口純夫)、好美清光「不当利得法の新しい動向について(下)」本誌三八七号二六頁ほか参照。ただし、各説により不当利得法上の各概念の内容に相違があるなどの事情があるため、結論は区々となっている。)。

3 ところで、右の議論の多くは、給付関係者間の実体関係が既に明らかになっていることを前提として、利益の発生の有無や、利益についての法律上の原因の有無を分析し、関係者間の清算の在り方を考察するものとなっていた。しかしながら、実際には、現に給付を行った者(本件でいうと乙がこれに当たる)において、給付の依頼者(甲)と現実の給付先(丙)の関係の詳細に当然に通じているものではない。不当利得返還請求においては、相手方に利益が生じたことは、請求者において主張・立証すべきこととされているが(最三小判平3・11・19民集四五巻八号一二〇九頁は、右を前提に、民法七〇三条の適用に関し、金銭の交付によって生じた不当利得につきその利益が存しないことについては、不当利得返還請求権の消滅を主張する者において主張・立証すべきものと判示している。なお、同判例は、本件のような事案を扱うものではなく、原判決がその判断において右判例に言及している理由は不明である。)、右原則を本件のような場合にそのまま適用すると、現に給付を行った者は、清算の実現について、多くの場合に困難に直面することとなることが予想される(いささか異なる角度からではあるが、右と類似の問題を指摘するものとして、澤井裕・事務管理・不当利得・不当行為(第二版)四八頁参照)。
本判決は、先に紹介したところに続けて、「甲と丙との間には事前に何らかの法律上又は事実上の関係が存在するのが通常」であるとした上、「また、その場合、甲を信頼しその求めに応じた乙は必ずしも常に甲丙間の事情の詳細に通じているわけではないので、このような乙に甲丙間の関係の内容及び乙の給付により甲の受けた利益につき主張立証を求めることは乙に困難を強いるのみならず、甲が乙から給付を受けた上で更にこれを丙に給付したことが明らかな場合と比較したとき、両者の取扱いを異にすることは衡平に反するものと思われる」として、本件のような場合には、一般の経験則及び給付の実現に関与したとの一種の信義則上の配慮に照らし、給付を依頼した者(本件でいうと甲がこれに当たる)において、給付を受けた者(丙)との間の事情を明らかにすべく、主張・立証責任の分配がこの限りで原則から一部変更されるべきものとしている。同様の示唆は、最三小判昭28・6・16民集七巻六号六二九頁にみられたところである(事案は、旧民法下において未成年者の親権者である母が親族会の同意を得ないでした建物売却契約を取り消したというものであり、相手方の建物の返還義務と取消者側の代金返還義務との同時履行関係が問題とされ、同判決は、これを肯定するに当たり、代金の一部は実際には第三者が負担したとの点について、「第三者弁済の場合特別の事情なき限り債務者は弁済者に対して弁済者の支払った額だけの債務を負担する等何等か相当の補償関係に立つものである(第三者が何等補償関係なくして弁済するが如きは稀有の場合である)」としていた。)。右判示を基礎に、本件のような給付関係の処理の在り方について検討を行う学説も見られた(山田幸二・現代不当利得法の研究・三八七頁。ただし、同論考においては、本件のように甲と丙との間に何らの関係も存在しない場合の清算処理に関しては、明示的な言及がない。)。
本判決は、以上を踏まえ、本件の事実関係の下においては、甲が乙の丙に対する給付によって利益を受けたものとみることのできない特段の事情があるとしたものである。

三 本判決の説示から明らかなとおり、本件で示された考え方は、強迫以外の原因による取消しの場合にも妥当するものであり、また、契約が無効である場合にも同様に考えて差し支えないものと見られる。しかしながら、当初の契約上の権利義務が変容したものと見るのが自然な契約解除の場合にも、当然に同様に考えることができるものかどうかについては、検討を要しよう。
なお、本判決では立ち入って論じられなかったが、強迫の被害者が意思表示を取り消した場合について、取消者が当該意思表示を取り消し得べきものであると認識していたからといって当然に同人が「悪意」の不当利得者に当たるとすること(原判決の採用した見解)については、これに疑問を呈するものもある(澤井・前掲三九頁、内田貴・民法Ⅱ五五一頁)。
四 以上のとおり、本判決は、不当利得法の基本問題の一つとされていながら、これまで判例の見られなかった分野についての初判断であり、その意義は小さくないであろう。

2.小問2 金銭騙取の不当利得
・金銭には所有物返還請求権は成立しない。
←通常の金銭には特定性がない

+判例(S39.1.24)
理   由
上告人らの上告理由(上告状記載のものを含む)について。
金銭は、特別の場合を除いては、物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権者は、特段の事情のないかぎり、その占有者と一致すると解すべきであり、また金銭を現実に支配して占有する者は、それをいかなる理由によつて取得したか、またその占有を正当づける権利を有するか否かに拘わりなく、価値の帰属者即ち金銭の所有者とみるべきものである(昭和二九年一一月五日最高裁判所第二小法廷判決、刑集八巻一一号一六七五頁参照)。
本件において原判決の認定した事実によると、訴外藤野太一は上告人丹部忠男をだまして一一万円余の交付をうけ、自己が上告人らから依頼されて経営に従事していた判示店舗の売上金六万余円を加えた金一七二、三〇〇円を、自己の銀行預金を払戻した自己の金であるといつて執行吏に提出したというのであるから、一一万円余い上告人丹部忠男から交付をうけたとき、六万余円は着服横領したとき、それぞれ訴外藤野太一の所有に帰し上告人らはその所有権を喪失したものというべきである。これと同趣旨の原判決の判断は正当であつて、これを誤なりとする論旨は理由なく、違憲の主張も前提を欠き採用しえない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

+判例(S49.9.26)
理由
上告代理人小林健治の上告理由第一点及び第二点について。
原審は、(一)被上告人の農林省農林経済局農業保険課団体班事務費係の農林事務官Aは、かねて職務上知合いであつた上告人連合会経理課長B、同職員Cらと結託し、金券詐取の方法により、昭和二九年六月二日ころから同三一年三月九日ころまでの間に前後十数回にわたり、国庫より各農業共済団体に対して交付すべきいわゆる国庫負担金に充てるべき国庫金のうちから合計七八九五万一八二二円を詐取したため、国庫金に不足をきたし、同三一年四月に入るも、同三〇年度の予算をもつて埼玉県農共組連に割当てられた国庫負担金二〇七八万九四一六円及び兵庫県農共組連に割当てられた国庫負担金一二八〇万六四三四円がいずれも未交付のまま放置され、そのためAの直属上司たる農業保険課長のもとに右両県農共組連から国庫負担金交付の催促がされるに至つたこと、(二)そこで、右犯行の発覚をおそれたAは、当面を糊塗して犯行を隠蔽するため、昭和三一年四月下旬ころ、上告人連合会経理課長Bに対し、「農林省の予算操作上の手違いにより、埼玉、兵庫両県農共組連に交付すべき昭和三〇年度の国庫負担金に不足を来たしたので、新年度予算をもつて一か月以内に返済するから、とりあえず上告人において取引銀行から三五〇〇万円程度の金員を借入れたうえこれを一時農林省に融通してもらいたい。」と申込んだが、その際、Bとしては、右国庫負担金不足の原因が前記の不正な国庫金支出に由来するものであり、かつ、Aの右金員融通申込の意図が、前記国庫金詐取によりあけられていた国庫の会計上の穴を秘かに埋めて、犯行の発覚を未然に防止するにあることを察知することができたこと、しかし、Aから右金員の調達ができなければ前記犯行が発覚するのみならず、不正支出に基づく国庫金によりなされた上告人の簿外会計の赤字補填等の事実も露見し、容易ならぬ事態に立至る旨を説得されるに及んで、結局、Bは自己の一存で上告人名義をもつて銀行から右融通申込金を借受け、これをAに交付することを承諾し、上告人連合会の経理課長の地位にあることを奇貨として、上司の決裁を受けることなく、ほしいままに上告人連合会会長の職印を使用して上告人振出名義の金額一九四六万円及び金額一五〇〇万円の約束手形二通を作成したこと、(三)そして、Bは、まず右約束手形の一通を用いて同年四月二七日三菱銀行水戸支店から、独断で、上告人名義をもつて一九四六万円を借受けたうえ、同日右借入金を資金として同銀行同支店から同銀行本店を支払人とする金額一九三五万七八三三円の小切手一通の振出を受け、即日これを持参して農林省に赴き、Aの指示により同人立会のうえ、上告人の受給国庫負担金のうち手続上の過誤に基づき過払勘定になつていた金員を返納するとの名目のもとに、右小切手をAの上司で情を知らない事務費係長Dに手交したところ、Dが翌二八日右小切手を三菱銀行本店に振込み、同銀行をして右小切手金額に相当する金員を日本銀行国庫の当該口座に振替入金させ、かくして、右金員は同年五月一日他の金員と合わせて二〇七八万九四一六円とされたうえ、埼玉県農共組連に対し昭和三〇年度分の割当国庫負担金として交付されたこと、(四)次いで、Bは、前記約束手形の残りの一通を用いて、同年四月三〇日日本勧業銀行水戸支店から、前同様独断で、上告人名義をもつて一五〇〇万円を借受けたうえ、同日同銀行同支店から右借入金を資金として同銀行本店を支払人とする金額一二八〇万六四三四円の小切手一通の振出を受け、即日これをAに手交したこと、(五)ところで、Bが上司の決裁を受けることなく、ほしいままに上告人会長の職印を使用して上告人振出名義の約束手形二通を作成し、これを用いて、独断で、上告人名義をもつて昭和三一年四月二七日三菱銀行水戸支店から一九四六万円を、同年同月三〇日日本勧業銀行水戸支店から一五〇〇万円をそれぞれ借受けたことは、Bが上告人の経理課長として従前より上告人会長の職印を使用して上告人名義の約束手形を振出す権限を与えられていた等諸般の事情に鑑みるとき、右各銀行支店員において、従来の取引例に照らし、Bに右各金員の借入につき上告人を代理する正当の権限があると信じるのはもつともであつて、上告人は、民法一一〇条の表見代理の法理により、Bのした右各金員借入れにつき責任を負い、各銀行に対し借受金を返還すべき債務を負担するに至つたところ、Bが前記の経緯により三菱銀行水戸支店からの借受金より一九三五万七八三三円をDに、日本勧業銀行水戸支店からの借受金より一二八〇万六四三四円をAに、それぞれ交付したのであるから、上告人に右各交付金額相当の損失が発生したこと、(六)また、叙上の事実によれば、BがAの指示により同人の上司たる農林省農林経済局農業保険課団体事務費係長Dに対し小切手化された一九三五万七八三三円(以下本件(1)の金員と略称する。)を手交し、Dがこれを日本銀行の当該口座に振替入金したことにより、被上告人には右入金額相当の利得が生じたこと、(七)しかし、Bが、本件(1)の金員をD係長に交付したのは、同人がCとともに共同加功したAの国庫金詐取によつて埼玉、兵庫両農共組連に対し交付すべき国庫負担金が不足をきたしたため、右共同犯行の発覚を未然に防止するため、Aの依頼により同人に代わつて、同人の被上告人に対する国庫金詐取に基づく損害賠償債務の一部弁済としてなされたものであつて、上告人の主張するような過払金返納の趣旨でなされたものではなく、かつ、本件(1)の金員調達の経緯につきD係長は善意であつたから、これによつて生じた被上告人の利得には法律上の原因を伴うものであること、を認定判示しており、右認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠関係とその説示に照らして、首肯しえないものではなく、その過程に所論の違法は認められない。なお、所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。それゆえ、本件(1)の金員に関する論旨は、採用することができない。

同第一点及び第三点について。
原審は、(1)Aは、昭和三一年四月三〇日、Bから小切手化された一二八〇万六四三四円(以下本件(2)の金員と略称する。)を受領したが、これを一時自己の事業資金として流用することを企図し、(1)同年五月一五日まず右金員を東京都民銀行池袋支店に開設していた自己の当座預金口座に振込預金し(右振込前の預金残金は五万五三四七円)、(2)同月八日、当日の預金残から一〇〇〇万円を払戻して、直ちに同銀行同支店に同額の定期預金をし、(3)同月一〇日右定期預金を担保に同銀行から一〇〇〇万円を借受け、これから前払利息を差引いた手取金九九九万一五〇〇円を再び前記当座預金口座に預入れ、(4)同月一一日同口座から九八〇万円を払戻して、そのうち八三〇万円を同月一四日東京相互銀行銀座支店の当座預金口座に預入れ(右預入れ直前の同口座預金残高は七八七四円)、(5)同月一八日、東京都民銀行池袋支店から、自己所有の湯島天神町所在の家屋一棟を担保に三〇〇万円を借受け、内金二九〇万円に、別途工面した現金二四〇万円を加えた合計五三〇万円を、同日東京相互銀行銀座支店の当座預金口座に預入れ、この結果同口座の預金残額が一二九八万七〇〇〇円となつたので、即日これを資金として同銀行振出の金額一二八〇万六四三四円の小切手を得て、これを農林省官房会計課長の名義を冒用し兵庫県農共組連に宛て昭和三〇年度分の割当国庫負担金として直接送金したが、このような預金操作の間においてAは右各銀行の預金口座から頻繁に払戻しをして自己の事業資金に流用し、その額が五〇〇万円を超えたこと、(二)一方、Aから送金を受けた同農共組連は、右送金が国庫金交付の正規の手続を履践していないものとしてその正式受領を留保し、農林省に右金員の処理方について指示を仰いだ結果、昭和三一年七月一〇日ころに至り、農林省、A及び右農共組連の三者間において覚書を作成したうえ、同農共組連は右金員をいつたんAに返還し、Aは右返還を受けた金員を同人が前記国庫金詐取により被上告人国に被らせた損害の一部弁償として国に支払い、農林省より改めて右金員を同農共組連に対し昭和三〇年度分の割当国庫負担金として交付する旨の合意がなされ、次いで右国庫負担金の過年度支出を法律上可能にするため特別の政令(いわゆるA政令)が発せられ、同年一〇月四日右合意がその内容のとおり処理履行されたこと、を認定したうえ、以上認定した事実によれば、Aが兵庫県農共組連に送付した金員と本件(2)の金員との間にはもはや同一性を肯認することができないから、その後、前記の経緯により同年一〇月四日被上告人がAの損害賠償金として受領した一二八〇万六四三四円をもつて社会通念上本件(2)の金員に由来するものとみることはできず、結局、Bが本件(2)の金員をAに交付したことにより、上告人に右交付金額に相当する損失が生じたものということはできるが、右損失と被上告人の同年一〇月四日のAからの金員受領による利得との間には因果関係を認めることができないから、被上告人は上告人の財産によつて利得し、これによつて上告人に損失を被らせたものではないと判示し、被上告人が本件(2)の金員を受領したことによる不当利得の返還を求める上告人の請求部分を棄却した一審判決を是認している。

しかしながら、右の原審の判断はにわかに首肯することができない。
およそ不当利得の制度は、ある人の財産的利得が法律上の原因ないし正当な理由を欠く場合に、法律が、公平の観念に基づいて、利得者にその利得の返還義務を負担させるものであるが、いま甲が、乙から金銭を騙取又は横領して、その金銭で自己の債権者丙に対する債務を弁済した場合に、乙の丙に対する不当利得返還請求が認められるかどうかについて考えるに、騙取又は横領された金銭の所有権が丙に移転するまでの間そのまま乙の手中にとどまる場合にだけ、乙の損失と丙の利得との間に因果関係があるとなすべきではなく、甲が騙取又は横領した金銭をそのまま丙の利益に使用しようと、あるいはこれを自己の金銭と混同させ又は両替し、あるいは銀行に預入れ、あるいはその一部を他の目的のため費消した後その費消した分を別途工面した金銭によつて補填する等してから、丙のために使用しようと、社会通念上乙の金銭で丙の利益をはかつたと認められるだけの連結がある場合には、なお不当利得の成立に必要な因果関係があるものと解すべきであり、また、丙が甲から右の金銭を受領するにつき悪意又は重大な過失がある場合には、丙の右金銭の取得は、被騙取者又は被横領者たる乙に対する関係においては、法律上の原因がなく、不当利得となるものと解するのが相当である。
これを本件についてみるに、原審の確定した前記の事実関係のもとにおいては、本件(2)の金員について、Aの預金口座への預入れ、払戻し、A個人の事業資金への流用、兵庫県農共組連に送金するため別途工面した金銭による補填等の事実があつたからといつて、そのことから直ちにAが右農共組連に送付した金員と本件(2)の金員との間に社会観念上同一性を欠くものと解することはできないのであつて、その後、原審認定の経緯により昭和三一年一〇月四日被上告人がAの損害賠償金として受領した一二八〇万六三四三円は、社会観念上はなお本件(2)の金員に由来するものというべきである。そして、原審の確定した事実関係によれば、本件(2)の金員は、Aが上告人の経理課長Bを教唆し又は同人と共謀し同人をして上告人から横領せしめたものであるか、あるいはBが横領した金銭を同人から騙取したものと解する余地がある。そうすると、被上告人においてAから右損害賠償金を受領するにつき悪意又は重大な過失があつたと認められる場合には、被上告人の利得には法律上の原因がなく、不当利得の成立する余地が存するのである。
しかるに、原審はこれらの諸点を顧慮することなく、AがBから受領した本件(2)の金員とAが兵庫県農共組連に送付した金員との間には同一性がなく、したがつてまた、Bが本件(2)の金員をAに交付することにより上告人が被つた右金額に相当する損失と、被上告人の同年一〇月四日のAからの金員受領による利得との間には因果関係を認めることができないとして、上告人の被上告人に対する本件(2)の金員の不当利得返還請求を排斥した原判決には、不当利得に関する法理の解釈適用を誤つたか又は審理不尽、理由不備の違法があるというべく、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであつて、論旨は結局理由がある。
よつて、原判決中、上告人の被上告人に対する本件(2)の金員の不当利得返還請求に関する控訴を棄却した部分を破棄し、さらに審理を尽くさせるため、右部分につき本件を原審に差し戻し、上告人のその余の上告は理由がないのでこれを棄却することとし、民訴法四〇七条、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
裁判官岩田誠は退官につき評議に関与しない。
(裁判長裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸盛一)

3.小問3 転用物訴権

・先取特権
+(動産売買の先取特権)
第三百二十一条  動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。

+(物上代位)
第三百四条  先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2  債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

・労務は最初から有体物ではなく、材料も建物に付合しており、その現物返還は不能である。

+(不動産工事の先取特権)
第三百二十七条  不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。
2  前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。

+判例(S45.7.16)
理由
上告代理人竹中一太郎の上告理由について。
記録によれば、上告人が本訴において請求原因として主張したところは、次のような事実関係であると認められる。上告人は、昭和三八年一二月三日、訴外有限会社立花重機よりブルドーザーの修理の依頼を受け、その主クラツチ、オーバーホールほか合計五一万四〇〇〇円相当の修理をして、同月一〇日これを訴外会社に引き渡したが、右ブルドーザーは被上告人の所有であり、上告人の修理により右代金相当の価値の増大をきたしたものであるから、被上告人は上告人の財産および労務により右相当の利得を受け、上告人は右相当の損失を受けたものである。もつとも、上告人は訴外会社に対し修理代金債権を有したが、同会社は修理後二カ月余にして倒産し、現在無資産であるから、回収の見込みは皆無である。右ブルドーザーは、同年一一月二〇日頃訴外会社において被上告人より賃借したものであるが、昭和三九年二月中旬より下旬にかけて被上告人がこれを訴外会社より引き揚げたうえ、同年五月、代金一七〇万円(金利を含み一九〇万円余)で他に売却したもので、上告人の修理により被上告人の受けた利得は、売却代金の一部としてなお現存している。よつて、上告人は被上告人に対し、五一万四〇〇〇円およびこれに対する遅延損害金の支払を求める、というのである。
右請求原因の大要は、一審における訴状陳述以来、上告人の主張するところであつて、前記修理代金債権の回収不能により上告人に損失を生じたとする主張は、本件記録中に発見しえないところである。
しかるに、原判決の引用する一審判決事実摘示が、あたかも右回収不能により上告人に損失を生じたとするごとくいうのは、上告人の訴旨の誤解に出たものというべきである(もつとも、その記載は必ずしも明確でなく、原審口頭弁論における上告人の陳述が一審判決事実摘示のとおりなされたとしても、これにより上告人の従前の主張が改められたものとするのは相当でない)。

そこで、右のごとき上告人の本訴請求の当否につき按ずるに、原判決引用の一審判決の認定するところによれば、上告人のした修理は本件ブルドーザーの自然損耗に対するもので、被上告人はその所有者として右修理により利得を受けており、また、右修理は訴外会社の依頼によるもので、上告人は同会社に対し五一万四〇〇〇円の修理代金債権を取得したが、同会社は修理後間もなく倒産して、右債権の回収はきわめて困難な状態となつたというのである。
これによると、本件ブルドーザーの修理は、一面において、上告人にこれに要した財産および労務の提供に相当する損失を生ぜしめ、他面において、被上告人に右に相当する利得を生ぜしめたもので、上告人の損失と被上告人の利得との間に直接の因果関係ありとすることができるのであつて、本件において、上告人のした給付(修理)を受領した者が被上告人でなく訴外会社であることは、右の損失および利得の間に直接の因果関係を認めることの妨げとなるものではない。ただ、右の修理は訴外会社の依頼によるものであり、したがつて、上告人は訴外会社に対して修理代金債権を取得するから、右修理により被上告人の受ける利得はいちおう訴外会社の財産に由来することとなり、上告人は被上告人に対し右利得の返還請求権を有しないのを原則とする(自然損耗に対する修理の場合を含めて、その代金を訴外会社において負担する旨の特約があるときは、同会社も被上告人に対して不当利得返還請求権を有しない)が訴外会社の無資力のため、右修理代金債権の全部または一部が無価値であるときは、その限度において、被上告人の受けた利得は上告人の財産および労務に由来したものということができ、上告人は、右修理(損失)により被上告人の受けた利得を、訴外会社に対する代金債権が無価値である限度において、不当利得として、被上告人に返還を請求することができるものと解するのが相当である(修理費用を訴外会社において負担する旨の特約が同会社と被上告人との間に存したとしても、上告人から被上告人に対する不当利得返還請求の妨げとなるものではない)。
しかるに原判決は、上告人の右の訴旨を誤解し、また右の法理の適用を誤つたもので、審理不尽、理由不備の違法を免れず、論旨は理由あるに帰し、原判決を破棄すべきであるが、本件において上告人の訴外会社に対する債権が実質的にいかなる限度で価値を有するか、原審の確定しないところであるので、この点につきさらに審理させるため、本件を原審に差し戻すべきものとする。
よつて、民訴法四〇七条一項により、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岩田誠 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 大隅健一郎)

+(動産保存の先取特権)
第三百二十条  動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用又は動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。

・請負人は先履行義務を負い、仕事を完成させても請負代金の支払いを受けることができるかは不確実。
しかも、使用した材料は目的物に付合するから、契約を解除しても労務材料の返還請求は不可能!
→先取特権でカバー

・BC間の利得移動が全体として有償と考えられる場合は、法律上の原因がある。
+判例(H7.9.19)
理由
上告代理人桑嶋一、同前田進の上告理由について
一 原審の適法に確定した事実関係及び記録によって明らかな本件訴訟の経緯等は、次のとおりである。
1 上告人は、本件建物の賃借人であったAとの間で、昭和五七年一一月四日、本件建物の改修、改装工事を代金合計五一八〇万円で施工する旨の請負契約を締結し、大部分の工事を下請業者を使用して施工し、同年一二月初旬、右工事を完成してAに引き渡した。
2 被上告人は、本件建物の所有者であるが、Aに対し、昭和五七年二月一日、賃料月額五〇万円、期間三年の約で本件建物を賃貸した。Aは、改修、改装工事を施して本件建物をレストラン、ブティック等の営業施設を有するビルにすることを計画しており、被上告人とAは、本件賃貸借契約において、Aが権利金を支払わないことの代償として、本件建物に対してする修繕、造作の新設・変更等の工事はすべてAの負担とし、Aは本件建物返還時に金銭的請求を一切しないとの特約を結んだ。
3 Aが被上告人の承諾を受けずに本件建物中の店舗を転貸したため、被上告人は、Aに対し、昭和五七年一二月二四日、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした上、本件建物の明渡し及び同月二五日から本件建物の明渡し済みまで月額五〇万円の賃料相当損害金の支払を求める訴訟を提起し、昭和五九年五月二八日、勝訴判決を得、右判決はそのころ確定した。
4 Aは、上告人に対し、本件工事代金中二四三〇万円を支払ったが、残代金二七五〇万円を支払っていないところ、昭和五八年三月ころ以来所在不明であり、同人の財産も判明せず、右残代金は回収不能の状態にある。また、上告人は、昭和五七年一二月末ころ、事実上倒産した。
5 そこで、本件工事は上告人にこれに要した財産及び労務の提供に相当する損失を生ぜしめ、他方、被上告人に右に相当する利益を生ぜしめたとして、上告人は、被上告人に対し、昭和五九年三月、不当利得返還請求権に基づき、右残代金相当額と遅延損害金の支払を求めて本件訴訟を提起した。

二 甲が建物賃借人乙との間の請負契約に基づき右建物の修繕工事をしたところ、その後乙が無資力になったため、甲の乙に対する請負代金債権の全部又は一部が無価値である場合において、右建物の所有者丙が法律上の原因なくして右修繕工事に要した財産及び労務の提供に相当する利益を受けたということができるのは、丙と乙との間の賃貸借契約を全体としてみて、丙が対価関係なしに右利益を受けたときに限られるものと解するのが相当である。けだし、丙が乙との間の賃貸借契約において何らかの形で右利益に相応する出捐ないし負担をしたときは、丙の受けた右利益は法律上の原因に基づくものというべきであり、甲が丙に対して右利益につき不当利得としてその返還を請求することができるとするのは、丙に二重の負担を強いる結果となるからである。
前記一の2によれば、本件建物の所有者である被上告人が上告人のした本件工事により受けた利益は、本件建物を営業用建物として賃貸するに際し通常であれば賃借人であるAから得ることができた権利金の支払を免除したという負担に相応するものというべきであって、法律上の原因なくして受けたものということはできず、これは、前記一の3のように本件賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除されたことによっても異なるものではない
そうすると、上告人に損失が発生したことを認めるに足りないとした原審の判断は相当ではないが、上告人の不当利得返還請求を棄却すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大野正男 裁判官 園部逸夫 裁判官 可部恒雄 裁判官 千種秀夫 裁判官 尾崎行信)

++解説
《解  説》
一 契約上の給付が契約の相手方以外の第三者の利益になった場合に、右給付をした契約当事者が第三者に対してその利益の返還を請求することがあるが、そのような請求権は一般に「転用物訴権」と呼ばれる。本判決は、極めて限定された場合においてのみ転用物訴権の成立を認めることを明らかにしたものであって、最一小判昭45・7・16民集二四巻七号九〇九頁(ブルドーザー事件判決)以後活発に議論されてきた問題について一応の決着をつけたものであり、影響するところの大きい判例である。本判決の評釈として、加藤雅信「転用物訴権の成立範囲」法教一八四号九八頁がある。
二 本件事実は、次のようなものである。Yは、本件建物(営業用建物)の所有者であり、Aに対してこれを賃貸したが、その際、Aが権利金を支払わないことの代償として、本件建物の修繕、造作の新設・変更等の工事はすべてAの負担とし、Aは本件建物返還時に金銭的請求を一切しないとの特約を結んだ。Xは、Aとの間で本件建物の改修、改装工事を代金五一八〇万円で施工する旨の請負契約を締結し、大部分の工事を下請業者を使用して施工し、工事を完成してAに引き渡した。Aが本件建物中の店舗を無断転貸したため、Yは、Aに対し、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をして、本件建物の明渡しと質料相当損害金の支払を求める訴訟を提起し、その後Y勝訴の判決が確定した。AがXに対して本件工事代金中の二七五〇万円を支払わないまま所在不明になったため、右残代金は回収不能の状態にある。そこで、Xは、Yに対し、不当利得返還請求権に基づき、右残代金相当額と遅延損害金の支払を求めて本件訴えを提起した。
一審は、Xの請求を一部認容する判決をしたが、控訴審は、Xに財産と労務の出捐による損失が発生したというためには、本件工事中下請業者を使用した部分については、Xが現実に下請工事代金を支払ったことを要するところ、Xが下請工事代金を完済したとは認めるに足りず、一部支払ったとしてもその金額を確定することはできず、また、自ら施工した工事部分を確定することもできないから、Xの不当利得返還請求は理由がないとして、一審判決を取り消し、Xの請求を棄却した。
三 Xの上告に対し、最高裁は、冒頭掲記の判決要旨のとおり判示して、Yの受けた利益に法律上の原因がないものということができるのは、YとAとの賃貸借契約を全体としてみて、Yが対価関係なしに右利益を受けたときに限られることを明らかにした上、YがAのした本件工事により受けた利益は、本件建物を営業用建物として賃貸するに際し通常であればAから得ることができた権利金の支払を免除したことに相応するものであって、法律上の原因なくして受けたものということはできないとして(すなわち、Xに損失の発生が認められないという原判決の理由から、Yの受けた利益に法律上の原因がないとはいえないとの理由に、理由を差し換えて)、本件上告を棄却した。

四 我が国において転用物訴権を認めた判例と一般に解されているのが前掲最一小判昭45・7・16(ブルドーザー事件判決)である。Xは、Y所有のブルドーザーの賃借人Aの依頼により修理をしてこれを引き渡したが、Aが倒産し修理代金の回収が事実上不能となったため、Y(Aからブルドーザーを引き揚げ他に売却)に対して右代金相当額の不当利得の返還を求めたという事件において、最高裁は、「本件ブルドーザーの修理は、一面において、Xにこれに要した財産およぴ労務の提供に相当する損失を生ぜしめ、他面において、Yに右に相当する利得を生ぜしめたもので、Xの損失とYの利得との間に直接の因果関係ありとすることができる」と判示して、因果関係なしとした控訴審判決の判断を誤りであるとした。さらに、「ただ、右の修理はAの依頼によるものであり、したがって、XはAに対して修理代金債権を取得するから、右修理により受ける利得はいちおうAの財産に由来することとなり、XはYに対し右利得の返還請求権を有しないのを原則とするが、Aの無資力のため、右修理代金の全部又は一部が無価値であるときは、その限度において、Yの受けた利得はXの財産および労務に由来したものということができ、Xは、右修理(損失)によりYの受けた利得を、Aに対する代金債権が無価値である限度において、不当利得として、Yに返還を請求することができるものと解するのが相当である(修理費用をAにおいて負担する旨の特約がAとYとの間に存したとしても、XからYに対する不当利得返還請求の妨げとなるものではない)。」と説示した。
ブルドーザー事件判決以後、どのような要件の下に転用物訴権の成立を認めるべきであるかなどについて議論がされたが、学説においては、全面的否定説(四宮和夫・事務管理・不当利得・不法行為上巻二四二頁、北川善太郎・債権各論二一四頁など)、又は限定的承認説(加藤雅信・財産法の体系と不当利得法の構造七一三頁、鈴木祿弥・債権法講義〔二訂版〕六八一頁など)が多数説となっている。
加藤雅信教授は、関係当事者の利益状況を、まず、AがYの利得保有に対応する反対債権を有する場合(Ⅰ)と有しない場合とに分類し、さらに、有しない場合を、Yの利得保有がAY間の関係全体から有償とみることができる場合(Ⅱ)と無償とみるべき場合(Ⅲ)とに分類した。そして、(1) Ⅰの場合に転用物訴権の成立を認めると、Aが無資力の場合にXにAの他の一般債権者に優先する立場を認めることになるが、その合理的根拠に乏しい、(2) Ⅱの場合に転用物訴権の成立を認めると、Yは修理費に関して二重の経済的負担を被ることになり合理的でない、(3) Ⅲの場合には、XとYの利益考量が基本的問題であるが、無償行為については保護の程度が弱くなるのはやむを得ないから、無償で利得を保有するYよりもXを保護すべきであるとされ、結局、Ⅲの場合についてのみ転用物訴権の成立を認めるべきであるとされた。
五 本判決は、「損失と利得との間の因果関係」についてはブルドーザー事件判決の判断を前提とした上で、「法律上の原因なくして」の要件について限定的承認説(加藤説)を採用したものとみることができる。本判決によれば、法律上の原因の有無はYA間における「対価関係」の有無にかかることになるが、その対価関係は、経済的にみて厳密に等価であることを要するものではないであろう。本判決中の「YがAとの間の賃貸借契約において何らかの形で右利益に相応する出捐ないし負担をしたときは、Yの受けた右利益は法律上の原因に基づくものというべきであ(る)」との判示は、この点をいうものと考えることができる。
また、本件一審判決は、Aの無断転貸を理由に本件賃貸借契約が解除され、Aの支出した修繕費用に見合う収益を回収するだけの期間賃貸借契約が継続しないで終了したことをもって、Yは無償で本件建物の価値の増加という利益を得たものと判断したが、本判決は、本件賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除されたことによって本件賃貸借契約の成立時に形成された対価関係が覆滅されることはない旨を判示している。


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民法 事例で学ぶ民法演習 10 時効総則・消滅時効


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1.時効とは

+(時効の援用)
第百四十五条  時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

+(所有権の取得時効)
第百六十二条  二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2  十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

(所有権以外の財産権の取得時効)
第百六十三条  所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。

+(債権等の消滅時効)
第百六十七条  債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

+(時効の中断事由)
第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一  請求
二  差押え、仮差押え又は仮処分
三  承認

+(時効の利益の放棄)
第百四十六条  時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

2.小問1
(1)小問1(1)

+(消滅時効の進行等)
第百六十六条  消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
2  前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

+(催告)
第百五十三条  催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事事件手続法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない

・援用
+判例(S61.3.17)
理由
上告代理人小倉勲の上告理由一ないし四について
原判決は、(一)(1)原判決別紙物件目録記載の一三筆の土地(以下「本件土地」という。)は、もとAの所有であり、農地であつたが、同人は、昭和三一年一二月一五日本件土地を含む第一審判決物件目録記載の土地をBに売り渡し(以下「本件売買」という。)、売買代金全額の支払を受け、右土地につき同人に対し神戸地方法務局赤穂出張所昭和三二年五月六日受付第九二二号をもつて所有権移転請求権保全仮登記(以下「本件仮登記」という。)をしたが、Aは昭和三七年三月四日死亡し、被上告人らがその地位を相続した、(2)Cは、昭和四三年一一月四日Bから本件売買契約上の買主たる地位の譲渡を受け(以下「本件地位譲渡契約」という。)、第一審判決物件目録記載の土地につき同月一一日同出張所受付第六二五九号をもつて本件仮登記につき右所有権移転請求権移転の附記登記(以下「本件附記登記」という。)を受けたが、昭和五六年一一月一二日死亡し、上告人らが、Cの地位を相続し、本件土地を占有しているとの事実を確定したうえ、(二)(1)被上告人らの次の主張、すなわち、本件土地は本件売買当時から農地であつたので、本件売買は農地法所定の県知事の許可が法定条件となつていたところ、上告人らが本件売買に基づき被上告人らに対して有していた県知事に対する許可申請協力請求権(以下「本件許可申請協力請求権」という。)は、本件売買の成立した昭和三一年一二月一五日から一〇年を経た同四一年一二月一五日の経過とともに時効により消滅し、これにより右法定条件は不成就に確定し、本件土地の所有権はBに移転しないことが確定したから、本件土地は被上告人らに帰属することに確定した旨の主張を認め、本件土地の所有権に基づき、上告人らに対しその明渡と本件附記登記の抹消登記手続を求める被上告人らの本訴請求を認容すべきであるとし、(2)したがつてまた、本件売買及び本件地位譲渡契約により本件土地が上告人らの所有に帰属するに至つたとの上告人らの主張は排斥を免れないとし、被上告人らに対し本件土地につき本件附記登記に基づく本登記手続を求める上告人らの本件反訴請求を棄却すべきであるとしている。

しかしながら、原審の右判断は、首肯し難い。その理由は次のとおりである。
民法一六七条一項は「債権ハ十年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス」と規定しているが、他方、同法一四五条及び一四六条は、時効による権利消滅の効果は当事者の意思をも顧慮して生じさせることとしていることが明らかであるから、時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものと解するのが相当であり、農地の買主が売主に対して有する県知事に対する許可申請協力請求権の時効による消滅の効果も、一〇年の時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、売主が右請求権についての時効を援用したときにはじめて確定的に生ずるものというべきであるから、右時効の援用がされるまでの間に当該農地が非農地化したときには、その時点において、右農地の売買契約は当然に効力を生じ、買主にその所有権が移転するものと解すべきであり、その後に売主が右県知事に対する許可申請協力請求権の消滅時効を援用してもその効力を生ずるに由ないものというべきである。そして、本件記録によると、被上告人らが本件許可申請協力請求権の消滅時効を援用したのは昭和五一年二月九日に提起した本件本訴の訴状においてであること、これに対し、上告人らは、原審において、本件土地はすくなくとも昭和四六年八月五日以降は雑木等が繁茂し原野となつたから、本件売買は効力を生じた旨主張し、右主張に副う証拠として乙第三号証を提出していたことが認められるところ、上告人らの右主張事実を認めうるときには、本件売買は、本件土地が右非農地化した時点において、当然にその効力を生じ、被上告人らは本件土地の所有権を喪失するに至つたものというべきであり、したがつて、本件許可申請協力請求権の時効消滅は問題とする余地がなく、また、Bが本件売買契約上の買主の義務をすべて履行しているという原審確定の事実関係のもとにおいては、本件地位譲渡契約は被上告人らとの間においてもその効力を生じうる余地があるものというべきである。したがつて、上告人らの右主張について審理判断しなかつた原判決には、民法一四五条、一六七条一項の解釈適用の誤り、ひいては審理不尽、理由不備の違法があるものというべきであり、この違法をいう論旨は、理由があるから、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れないところ、上告人らの右主張について審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。
よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大橋進 裁判官 牧圭次 裁判官 島谷六郎 裁判官 藤島昭)

・消滅時効完成後の承認の場合は、時効利益(援用権)の放棄又は喪失に当たるのか。
+判例(S41.4.20)
理由
上告代理人古沢斐、同古沢彦造の上告理由第一点について。
論旨は、要するに、上告人が本件債務の承認をしなかつたことを認めうる事情ないし証拠があるのに、原判決が、なんら首肯するに足りる事情の存在について判示することなく、上告人は、該債務が時効によつて消滅したのち、これを承認したと認定したのは、違法であるというにある。
しふしながら、原審の右認定は、原判決挙示の証拠により肯認しえないことはなく、所論引用の判例は本件に適切でない。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした証拠の判断および事実の認定を非難するに帰するから、採用できない。
同第二点について。
論旨は、要するに、原判決が、上告人は商人であり本件債務の承認をした事実を前提として、上告人は同債務について時効の利益を放棄したものと推定するのが相当であるとしたのは、経験則に違背して事実を推定したものであり、この点で原判決は破棄を免れないというにある。
案ずるに、債務者は、消滅時効が完成したのちに債務の承認をする場合には、その時効完成の事実を知つているのはむしろ異例で、知らないのが通常であるといえるから、債務者が商人の場合でも、消滅時効完成後に当該債務の承認をした事実から右承認は時効が完成したことを知つてされたものであると推定することは許されないものと解するのが相当である。したがつて、右と見解を異にする当裁判所の判例(昭和三五年六月二三日言渡第一小法廷判決、民集一四巻八号一四九八頁参照)は、これを変更すべきものと認める。しからば、原判決が、上告人は商人であり、本件債務について時効が完成したのちその承認をした事実を確定したうえ、これを前提として、上告人は本件債務について時効の完成したことを知りながら右承認をし、右債務について時効の利益を放棄したものと推定したのは、経験則に反する推定をしたものというべきである。しかしながら、債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかつたときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと解するのが相当である。けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろらから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当であるからである。また、かく解しても、永続した社会秩序の維持を目的とする時効制度の存在理由に反するものでもない。そして、この見地に立ては、前記のように、上告人は本件債務について時効が完成したのちこれを承認したというのであるから、もはや右債務について右時効の援用をすることは許されないというわざるをえない。しからば、原判決が上告人の消滅時効の抗弁を排斥したのは、結局、正当であることに帰するから、論旨は、採用できない。
同第三点について。
論旨は、要するに、所論一引用の上告人の主張は、本件当事者間に和解契約が成立し、本件公正証書に表示された債務は消滅し、右公正証書に基づく強制執行は許されないという趣旨であるのに、原審が右主張についてなんら釈明することなく、また、これについて判断しなかつたのは、審理不尽、判断遺脱の違法を犯したものであるというにある。
しかし、上告人が原審で前記所論一引用のような主張をしていることは記録上明らかであるが、原審における本件口頭弁論の全趣旨をしんしやくしても、右主張が右論旨主張のような趣旨であるとは到底解しえないから、原審の手続に所論の違法はないというべきである。論旨は、ひつきよう、原審で主張しない事実を前提として原判決を攻撃するに帰するから、採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 長部謹吾 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠)

・援用権の喪失後
+判例(S45.5.21)
理由 
 上告代理人山田直記の上告理由第二点について。 
 原審は、上告人は、昭和二八年一〇月一七日、被上告人から自己の経営する製材業の営業資金として、一〇万円を弁済期同年一一月五日利息月三分の約で借り受けた旨、および上告人は、昭和三七年五月二九日頃、被上告人に対し右債務の支払猶予を求めた旨の事実を確定したうえ、右債務は商事債務として五年の短期消滅時効の適用を受けるものであるところ、右支払猶予を求めたことは消滅時効完成後の債務承認というべきであり、かかる債務承認は、時効による債務消滅の主張とはあい容れないものであつて、債権者としてはこれにより債務者は以後もはや時効を援用しないものと考えるのが通常であるから、債務者がその後相当期間を経過した後においてその債務につき時効を援用することは信義則上許されないものと解するのが相当であると判示して、上告人の消滅時効の抗弁を排斥している。 
 しかしながら、債務者が消滅時効の完成後に債権者に対し当該債務を承認した場合には、時効完成の事実を知らなかつたときでも、その後その時効の援用をすることが許されないことは、当裁判所の判例の示すところであるけれども(最高裁判所昭和三七年(オ)第一三一六号同四一年四月二〇日大法廷判決、民集二〇巻四号七〇二頁参照)、右は、すでに経過した時効期間について消滅時効を援用しえないというに止まり、その承認以後再び時効期間の進行することをも否定するものではないけだし、民法一五七条が時効中断後にもあらたに時効の進行することを規定し、さらに同法一七四条ノ二が判決確定後もあらたに時効が進行することを規定していることと対比して考えれば、時効完成後であるからといつて債務の承認後は再び時効が進行しないと解することは、彼此権衡を失するものというべきであり、また、時効完成後の債務の承認がその実質においてあらたな債務の負担行為にも比すべきものであることに鑑みれば、これにより、従前に比して債務者がより不利益となり、債権者がより利益となるような解釈をすべきものとはいえないからである。 
 ところで、本件記録によれば、本訴の提起されたのは、昭和四二年一〇月九日であることが明らかであり、原審の確定するところによれば、前記債務の承認は昭和三七年五月二九日頃であるというのであるから、その間再び五年四月余の期間が経過していることが明らかである。そうであれば、本訴提起前さらに時効が中断された等特段の事情のないかぎり、前記債務は再び五年の消滅時効によつて消滅しているものといわなければならない。したがつて、この点についてなんら判示することなく、漫然と、時効完成後に債務を承認したことにより、以後時効を援用することは信義則上許されないとした原判決は、法令の解釈適用を誤つたものというべく、この誤りは原判決の結論に影響すること明らかであるから、論旨はこの点において理由があり、原判決中右請求に関する部分は、その余の点について判断するまでもなく、破棄を免れない。そして、右部分については、さらに審理を尽す必要があるから、本件を原審に差し戻すのが相当である。しかしながら、その余の請求に関する部分については、原判決に特段の違法は認められないから、その余の本件上告は棄却を免れない。 
 よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 
 裁判官長部謹吾は海外出張中につき、本件評議に関与しない。 
 (裁判長裁判官 大隅健一郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠) 
(2)小問2(2)について
時効の援用をしない趣旨であると考えないような事案であれば、時効の援用を認めてもよいのでは・・・。
3.小問2
(1)小問2(1)について
+(時効の援用)
第百四十五条  時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
当事者=時効によって直接利益を受ける者
物上保証人は被担保債権の消滅時効を援用できる!
+判例(S42.10.27)
理由 
 昭和三九年(オ)第五二三号事件上告代理人東里秀の上告理由について。 
 論旨は、訴外トキワ工業株式会社の債務のため自己所有の不動産を譲渡担保に供したにすぎないAは物上保証人とはいえず、また右債務の時効消滅によつて直接利益を受ける者とはいえないとして、Aの承継人たる昭和三九年(オ)第五二三号事件上告人B外四名(以下上告人Bらと略称する)のした右債務の消滅時効の援用を認めなかつた原判決には、民法一四五条の解釈適用を誤つた違法があるという。 
 時効は当事者でなければこれを援用しえないことは、民法一四五条の規定により明らかであるが、右規定の趣旨は、消滅時効についていえば、時効を援用しうる者を権利の時効消滅により直接利益を受ける者に限定したものと解されるところ、他人の債務のために自己の所有物件につき質権または抵当権を設定したいわゆる物上保証人も被担保債権の消滅によつて直接利益を受ける者というを妨げないから、同条にいう当事者にあたるものと解するのが相当であり、これと見解を異にする大審院判例(明治四三年一月二五日大審院判決・民録一六輯二二頁)は変更すべきものである。そして、原審(引用の第一審判決を含む。以下同じ。)の確定したところによれば、上告人Bからの先代Aは、訴外トキワ工業株式会社のCに対して負担する合計三二〇万円弁済期日昭和三〇年一二月末日の貸金債務のためCに対してその所有の本性土地建物をいわゆる弱い譲渡担保に供していたところ、右訴外会社は弁済期日を経過しても右債務を弁済しなかつたが、本件土地建物については、右譲渡担保契約締結後CおよびつづいてAが死亡したためいまだにCへの所有権移転登記手続がなされていないというのである。右事実関係のもとでは、Aは、他人の債務のためその所有不動産を担保に供した者であつて、被担保債権の消滅によつて利益を受けるものである点において、物上保証人となんら異るものではないから、同様に当事者として被担保債権の消滅時効を援用しうるものと解するのが相当である。しからば、上告人Bらもまた、Aの承継人として右被担保債権の消滅時効を援用しうるものというべきである。したがつて、上告人Bらに消滅時効の援用権なしとして前記債務の消滅時効完成の抗弁を排斥した原判決には、民法一四五条の解釈適用を誤つた違法があるものといわざるを得ない。そして、原審の確定した事実関係のもとにおいては、前記訴外会社のCに対する債務は商事債務であり、前記弁済期日から五年を経過した昭和三五年一二月末日までの間時効中断のあつたことの主張立証のない本件においては、同日の終了とともに消滅時効が完成したことが明らかである。もつとも被上告人らは、原審において、右訴外会社の承継人たるモダン建築工芸株式会社が昭和三六年六月一五日發上告人らに対して本件貸金債務を承認し、もつて事項の利益を放棄したと抗争しているが、時効の利益の放棄の効果は相対的であり、被担保債権の消滅時効完成の利益を債務者が放棄しても、その効果は物上保証人ないし本件のように右債権につき自己の所有物件を譲渡担保に供した者に影響を及ぼすものではないから、被上告人らの右抗弁も、上告人Bらの消滅時効完成の主張を妨げる理由にはならない。したがつて、被上告人らは前記消滅時効の完成とともに本件土地建物に対する譲渡担保権を失い、本件土地建物の所有権は突然に上告人Bらに復帰したものというべきであるから、いまだ譲渡担保契約が存続しているとして、右契約に基づき本件土地建物の省有権が被上告人らに復帰することを前提とする被上告人らの本件土地建物所有権移転登記手続および本件建物明渡の各請求はいずれも理由がないものといわなければならない。しからば、本件被担保債権の消滅時効が閑静した弗の上告人Bらの抗弁を排斥して被上告人らの右請求を認容した第一審料決およびこれを是認した原判決には、民法一四五条の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があるものというべく、原判決および第一審判決は、この点において破棄、取消を免駐ない。しかして、右請求については、叙上の事実関係に照らしてその理由のないことが明らかであるから、請求を棄却すべきものである。 
 昭和三九年(オ)第五二四号事件上告人兼上告代理人滝内礼作の上告理由について。 
 被上告人らの昭和三九年(オ)第五二四号事件上告人滝内および同神保(以下上告人滝内らと略称する)に対する本訴請求は、要するに、本件土地建物の所有権に基づいて上告人滝内らに対して本件土地建物になされた抵当権設定登記等の抹消登記手続を求めるものであるところ、原判決(引用の第一審判決)の確定したところによれば、上告人Bらの先代Aは訴外トキワ工業株式会社のCに対して負担する原判示債務につきその所有の本件土地建物をいわゆる弱い譲渡担保に供していたというのであり、しかして、右債務につき消滅時効が完成し右譲渡担保契約が消滅して本件土地建物の所有権が上告人Bらに復帰したものと認めるべきことは、上告人Bらの上告代理人東里秀の上告理由に対する判断に説示したとおりである。右のように被上告人らにおいてすでに本件土地建物の所有権を有しないことが明らかである以上、いまだ譲渡担保契約が存続するものとして、被上告人らにおいて本件土地建物の所有権を有することを前提とする被上告人らの請求を認容した第一審判決およびこれを是認した原判決は、いずれも違法であり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決および第一審判決は、この点において破棄、取消を免れない。しかして、叙上の事実関係のもとでは前記のとおり右請求はその理由のないことが明らかであるから、これを棄却すべきものである。 
 (裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎) 
+第百五十五条  差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。
・抵当権者が物上保証人に対する抵当権の実行を申し立てたときは、競売開始決定の正本が被担保債務者に送達されたときに155条の通知があったものとする
+判例(S50.11.21)
理由 
 上告代理人菅井俊明、同塩谷脩の上告理由第一点について 
 抵当権実行のためにする競売法による競売は、被担保債権に基づく強力な権利実行手段であるから、時効中断の事由として差押と同等の効力を有すると解すべきことは、判例(大審院大正九年(オ)第一〇九号同年六月二九日判決・民録二六輯九四九頁、同昭和一三年(ク)第二一九号同年六月二七日決定・民集一七巻一四号一三二四頁)の趣旨とするところである。そして、差押による時効中断の効果は、原則として中断行為の当事者及びその承継人に対してのみ及ぶものであることは、民法一四八条の定めるところであるが、他人の債務のために自己所有の不動産につき抵当権を設定した物上保証人に対する競売の申立は、被担保債権の満足のための強力な権利実行行為であり、時効中断の効果を生ずべき事由としては、債務者本人に対する差押と対比して、彼此差等を設けるべき実質上の理由はない民法一五五条は、右のような場合について、同法一四八条の前記の原則を修正し、時効中断の効果が当該中断行為の当事者及びその承継人以外で時効の利益を受ける者にも及ぶべきことを定めるとともに、これにより右のような時効の利益を受ける者が中断行為により不測の不利益を蒙ることのないよう、その者に対する通知を要することとし、もつて債権者と債務者との間の利益の調和を図つた趣旨の規定であると解することができる。 
 したがつて、債権者より物上保証人に対し、その被担保債権の実行として任意競売の申立がされ、競売裁判所がその競売開始決定をしたうえ、競売手続の利害関係人である債務者に対する告知方法として同決定正本を当該債務者に送達した場合には、債務者は、民法一五五条により、当該被担保債権の消滅時効の中断の効果を受けると解するのが相当である。同条所定の差押等を受ける者の範囲を所論の如く限定しなければならない理由はなく(所論引用の当裁判所昭和三九年(オ)第五二三号、第五二四号同四二年一〇月二七日第二小法廷判決・民集二一巻八号二一一〇頁及び昭和四一年(オ)第七七号同四三年九月二六日第一小法廷判決・民集二二巻九号二〇〇二頁各判例は、同条にいわゆる「時効ノ利益ヲ受クル者」の範囲について判示したものではない。)、また、競売裁判所による前記の競売開始決定の送達は債務者に対する同条所定の通知として十分であり、右通知が所論の如く債権者から発せられねばならないと解すべき理由も見出し難い。これと同趣旨の原審の判断は正当であり、所論はこれと異なる独自の見解に基づいて原判決を非難するものであつて、論旨は採用することができない。 
 同第二点について 
 所論の点に関する原審の判断は正当であり、その過程に所論の違法はなく、原判決に所論の法令違背のあることを前提とする所論違憲の主張もまた理由がない。論旨は、採用することができない。 
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 
 (裁判長裁判官 大塚喜一郎 裁判官 岡原昌男 裁判官 吉田豊 裁判官 本林讓) 
+判例(H8.7.12)
理由 
 上告代理人戸田隆俊の上告理由について 
一 本件請求は、上告人らが被上告人に対し、上告人らの所有する不動産に設定された被上告人のAに対する求償債権等を被担保債権とする根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)の設定登記の抹消を求めるものである。原審の確定したところによれば、被上告人からAに対して本件根抵当権の被担保債務の履行を求める訴訟が提起され、昭和五七年四月一八日に被上告人勝訴の判決が確定しているところ、被上告人は、平成四年四月三日に本件根抵当権の実行としての不動産競売を申し立て、これに基づいて、同月七日に競売開始決定がされ、同年六月一三日に債務者であるAに右競売開始決定正本が送達されたものである。 
 上告人らは右判決確定の時から一〇年を経過した平成四年四月一八日に本件根抵当権の被担保債権は時効によって消滅した旨を主張し、被上告人は不動産競売の申立てをした同月三日に右債権についての時効中断の効力が生じた旨を主張している。したがって、本件においては、物上保証人に対する不動産競売の申立てによって時効中断の効力が生ずる時期が、債権者が競売を申し立てた時であると解するか、競売開始決定正本が債務者に送達された時であると解するかによって、消滅時効の成否の判断が左右されることになる。 
二 原審は、物上保証人に対する不動産競売の申立てによる被担保債権の消滅時効の中断の効力は、債権者が執行裁判所に競売の申立てをした時に生ずると解するのが相当であるところ、本件においては、時効期間の満了前に本件根抵当権の実行としての不動産競売の申立てがされているから、これにより本件根抵当権の被担保債権の消滅時効は中断されたとして、上告人らの本件請求を棄却すべきものとした。 
三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 
 債権者から物上保証人に対する不動産競売の申立てがされ、執行裁判所のした競売開始決定による差押えの効力が生じた後、同決定正本が債務者に送達された場合には、民法一五五条により、債務者に対し、当該担保権の実行に係る被担保債権についての消滅時効の中断の効力が生ずるが(最高裁昭和四七年(オ)第七二三号同五〇年一一月二一日第二小法廷判決・民集二九巻一〇号一五三七頁、最高裁平成七年(オ)第三七四号同年九月五日第三小法廷判決・民集四九巻八号二七八四頁参照)、右の時効中断の効力は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生ずると解するのが相当であるけだし、民法一五五条は、時効中断の効果が当該時効中断行為の当事者及びその承継人以外で時効の利益を受ける者に及ぶべき場合に、その者に対する通知を要することとし、もって債権者と債務者との間の利益の調和を図った趣旨の規定であると解されるところ(前掲昭和五〇年一一月二一日第二小法廷判決参照)、競売開始決定正本が時効期間満了後に債務者に送達された場合に、債権者が競売の申立てをした時にさかのぼって時効中断の効力が生ずるとすれば、当該競売手続の開始を了知しない債務者が不測の不利益を被るおそれがあり、民法一五五条が時効の利益を受ける者に対する通知を要求した趣旨に反することになるからである。 
 したがって、右の場合に、債権者が競売の申立てをした時をもって消滅時効の中断の効力が生ずるとの見解に立って、上告人らの本件請求を棄却した原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件においては、被上告人は、債務者であるAが昭和五七年一二月二二日に本件根抵当権の被担保債務を承認したとの主張をしているので、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すことにする。 
 よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 
 (裁判長裁判官 根岸重治 裁判官 大西勝也 裁判官 河合伸一 裁判官 福田博) 
(2)小問2(2)
・物上保証人が、債務者の承諾により被担保債権について生じた消滅時効中断の効力を否定することは、担保権の付従性に抵触し、396条の趣旨にも反し、許されないものと解するのが相当
+判例(H7.3.10)
理由 
 上告代理人吉成重善の上告理由について 
 他人の債務のために自己の所有物件につき根抵当権等を設定したいわゆる物上保証人が、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効中断の効力を否定することは、担保権の付従性に抵触し、民法三九六条の趣旨にも反し、許されないものと解するのが相当である。右判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。 
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 
 (裁判長裁判官中島敏次郎 裁判官大西勝也 裁判官根岸重治 裁判官河合伸一) 
++解説
《解  説》
 一 Xは、Sに対する貸金債権の回収が滞ったため、連帯保証人であるAの所有物件につき強制競売の申立てをしたY信用組合も、Sに対して貸金債権を有し、右Aの被相続人(父)から右物件につきSのために信用組合取引による債権等を被担保債権とする根抵当権の設定を受けていたため、債権届出をした。本件は、Xが、右根抵当権による被担保債権は民法三九八条ノ二〇第一項四号により元本確定したところ、その債権は既に時効消滅しているとして、Aに代位し、Yに対し、右根抵当権設定登記の抹消登記手続を請求した事案である。
 二 原審は、時効完成前にSが本件債務を逐次承認した事実が認められ、順次時効が中断したといえるから、本件債務は有効に存在し、そうである以上、本件根抵当権は別個に時効消滅することはないから、本件請求は認容できないとして、請求を棄却した。これに対し、Xは上告して、債務者の時効利益の放棄は物上保証人(当該事案では、自己所有物を弱い譲渡担保に供した者)に影響を及ぼさないとした最二小判昭42・10・27民集二一巻八号二一一〇頁を援用し、債務承認の効果が相対的であることは、時効利益の放棄と時効中断とで異なる理由はないとして、Sの債務承認によりA(に代位したX)の時効援用も認められないとした原審の判断は、右判例に反すると主張した。
 三 上告理由の引用する右最二小判昭42・10・27は、他人の債務のために自己の所有物件につき抵当権等を設定した物上保証人は、民法一四五条にいう当事者に当たり、独自の時効援用権を有することを認めている。したがって、物上保証人であるAはSと別に本件債務の消滅時効について固有の時効援用権を有することになる。そこで、Aは、被担保債権の消滅時効につき債務者Sの承認により時効中断が生じた場合でも、自己の時効援用権の行使に当たっては、それを否定し得るのかどうかが問題となる。民法一四八条は、「時効中断は当事者及びその承継人の間においてのみその効力を有す」と規定しており、主たる債務者に対する時効の中断は保証人に対してもその効力を生ずるとする民法四五七条一項のような例外規定は、物上保証人との関係については存在しない。したがって、債務者の承認による時効中断効は物上保証人には及ばず、物上保証人は独自に中断されていない時効を援用し得るとする見解もないわけではない(鈴木祿弥・民法総則講義二三二頁)。しかし、民法一四八条は、事物の性質上、中断の効力を他者に及ぼすべき場合があることを否定するものではない。抵当権設定者との間だけで中断されないことを認めることは、抵当権の付従性に反し、抵当権は債務者及び抵当権設定者に対しては被担保債権と同時でなければ時効によって消滅しないとする民法三九六条の趣旨にも反することとなろう。保証人の場合は、保証人自身も保証債務を負うものであり、主債務に生じた事由が保証債務にどのような影響を与えるかが問題となるため、民法四五七条一項のような規定を設ける必要があるところ、物上保証人については、中断が問題となる権利義務関係は被担保債権に係る債権債務関係以外にはなく、その債権債務当事者間に生じた事由を物上保証人において否定することができると解すべき理由はないため、特に規定を設ける必要がなかったものと考えられる。したがって、債務者の承認による中断の効力は、物上保証人が債務の時効を援用する場合にもこれを否定することはできないものと解される(四宮和夫「時効」新民法演習1二四八~二五〇頁、松久三四彦・民法注解財産法1民法総則七一二頁、塩崎勤・金法一二四七号一四頁参照。なお、保証債務に関する民法四五七条一項の類推適用を理由に同様の結論を採るものとして、柳川俊一・金法七二三号一六~一七頁、丸山昌一「被担保債権の消滅時効の中断」裁判実務大系14三七頁)。前記最二小判昭42・10・27は、時効利益の放棄の効果は相対的であって、被担保債権の消滅時効の利益を債務者が放棄しても、それは物上保証人に影響を及ぼすものではないとしている。しかし、時効利益の放棄は、既に時効が完成していることを前提として、各人がそれぞれの援用権の行使に当たりこれを援用するかどうかという形で個別に判断し得る問題である。これに対し、その債務について時効が完成しているかどうかを判断する際の中断事由の有無の問題は相対的認定に親しまない事実の問題である。両者を同視することはできないであろう。
 他方、物上保証人は時効中断としての承認をすることはできず、物上保証人が被担保債権の存在を承認していても、当該物上保証人に対する関係においても時効中断の効力を生ずる余地はないと解されている。(最一小判昭62・9・3裁集民一五一号六三三頁、判時一三一六号九一頁)。したがって、債権者としては、担保権を実行してそれが債務者に通知されない限り、債務者との間で中断の措置をとるほかはなく、仮に債務者との間での中断事由を生じさせても物上保証人に及ばないと解すると、債権者としては不測の不利益を受けることになる。金融実務は、右のような見解に従った時効管理をしているものとされ、同様の判断を判示する下級審裁判例(大阪高判平5・10・27金判九四八号三〇頁)も見られるところであった。本判決は、こうした多数説的見解を明示的に是認したものとして意義がある。なお、参考文献として、本文中に記したもののほか、菅野佳夫「時効の中断効について」本誌八六四号五六頁などがある。
・詐害行為取消権と消滅時効
+判例(H10.6.22)
理由 
上告代理人松村博文の上告理由第一点の三について 
一 本件は、被上告人が、上告人に対し、詐害行為取消権に基づき債務者と上告人との間の贈与契約の取消し及び贈与された不動産につき経由された所有権移転登記の抹消登記手続を求める事件であり、原審の確定した事実関係は次のとおりである。 
 1 被上告人は、AことB次が代表取締役をする株式会社三協に対して、金銭消費貸借契約及び準消費貸借契約に基づき昭和五六年八月二二日から昭和五九年二月四日の間に生じた合計二一五〇万円の債権を有し、三協の連帯保証人であるBに対して、右同額の連帯保証債務履行請求権を有していた。 
 2 また、被上告人は、Bに対して、昭和五二年七月六日から昭和五六年一二月二一日の間にBの依頼で立て替えた費用合計一一八九万八九〇二円につき、右同額の求償債権を有していた。 
 3 Bは多額の債務を負担していたところ、Bと上告人は、他の債権者を害することを知りながら、昭和六一年二月一日、Bの所有する第一審判決別紙物件目録(一)ないし(四)記載の不動産につき贈与契約を締結し、同年四月一八日、上告人への所有権移転登記を経由した。 
 4 上告人は、本訴において、被上告人の三協に対する債権は期限の定めのない商事債権であり、五年の経過により時効によって消滅したから、Bに対する連帯保証債務履行請求権も消滅し、また、Bに対する求償債権は立替後一〇年の経過により時効によって消滅したとして、消滅時効を援用した。 
二 原審は、右事実関係の下において、上告人は、債務者Bがした贈与契約の受益者にすぎず、被上告人の有する債権について消滅時効を援用し得る立場にないとして、上告人の消滅時効の抗弁を排斥し、被上告人の請求を認容した。 
三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 
 民法一四五条所定の当事者として消滅時効を援用し得る者は、権利の消滅により直接利益を受ける者に限定されるところ(最高裁平成二年(オ)第七四二号同四年三月一九日第一小法廷判決・民集四六巻三号二二二頁参照)、詐害行為の受益者は、詐害行為取消権行使の直接の相手方とされている上、これが行使されると債権者との間で詐害行為が取り消され、同行為によって得ていた利益を失う関係にあり、その反面、詐害行為取消権を行使する債権者の債権が消滅すれば右の利益喪失を免れることができる地位にあるから、右債権者の債権の消滅によって直接利益を受ける者に当たり、右債権について消滅時効を援用することができるものと解するのが相当である。これと見解を異にする大審院の判例(大審院昭和三年(オ)第九〇一号同年一一月八日判決・民集七巻九八〇頁)は、変更すべきものである。
 これを本件についてみると、前示の事実関係によれば、上告人は、Bから本件不動産の贈与を受けた詐害行為の受益者であるから、詐害行為取消権を行使する債権者である被上告人のBに対する求償債権の消滅時効を援用し得るというべきであり、被上告人の三協に対する債権についても、右債権が消滅すればBに対する連帯保証債務履行請求権は当然に消滅するので、その消滅時効を援用し得るというべきである。 
 したがって、以上と異なり、上告人は右各債権の消滅時効を援用し得る立場にないと判断した原判決には、民法一四五条の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、その余の上告理由について判断するまでもなく原判決は破棄を免れない。そして、記録によれば、被上告人が債務者の承認による時効の中断等の再抗弁を主張していることがうかがわれるから、消滅時効の成否について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 
 (裁判長裁判官 河合伸一 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 福田博) 
++解説
《解  説》
 一 原告X(被上告人)は、Aに対して、保証債務履行請求権と立替払により生じた求償債権とを有していた。保証債務の主債務は、株式会社B(代表取締役A)がXに対して負っていた貸金債務等であった。Aは多額の債務を負っていたが、自分の内妻である被告Y(上告人)に対して、他の債権者を害することを知りながら、所有不動産を贈与した。そこで、Xが、贈与が詐害行為に該当するとして、その取消を求めるとともに、移転登記の抹消を求めたのが本件訴訟である。
 Yは、抗弁として、詐害行為取消権の被保全債権について消滅時効を主張した。すなわち、求償債権については、一〇年の消滅時効を援用し、保証債務履行請求権については、Xの主債務者(B社)に対する債権(商事債権)について五年の消滅時効を援用した。
 これに対し、原審(一審判決を引用)は、「Yは、債務者Aのなした贈与契約の受益者にすぎず、右各債務につき消滅時効を援用し得る立場にない」として、右抗弁を退けた。
 Yは、時効援用権に関する右判断等を争って上告した。
 二 本判決は、(1)民法一四五条所定の当事者は、権利の消滅により直接利益を受ける者に限定されるが、詐害行為の受益者は、詐害行為取消権行使の直接の相手方とされている上、これが行使されると債権者との間で詐害行為が取り消され、同行為によって得ていた利益を失う関係にあり、その反面、詐害行為取消権を行使する債権者の債権が消滅すれば右の利益喪失を免れることができる地位にある、との理由から、詐害行為の受益者は、取消債権者の債権の消滅によって直接利益を受ける者に当たり、右債権について消滅時効を援用することができるものと解するのが相当であると判示し、(2)詐害行為の受益者であるYによるXの求償債権の消滅時効の援用を認め、さらに、XのB社に対する債権についても、右債権が消滅すればAに対する連帯保証債務履行請求権は当然に消滅するので、その消滅時効を援用し得ると判示して、原判決を破棄し、事件を原審に差し戻した。
 三 民法一四五条所定の時効を援用し得る「当事者」の範囲につき、大審院判例は、時効により直接利益を受ける者及びその承継人すなわち取得時効により権利を取得し、又は消滅時効により権利の制限若しくは義務を免れる者に限られ、間接的に利益を受ける者は当事者ではないとし(大判明43・1・25民録一六輯二二頁、大判昭9・5・2民集一三巻六七〇頁など)、抵当不動産の第三取得者、物上保証人、売買予約に基づく仮登記の経由された不動産について所有権を取得した者などについて、時効援用権を否定していた。
 これに対して、学説は、よって立つ時効援用権の性質論に相違はあるものの、結論的に援用権者の範囲を拡張すべきであるという点においては、等しく大審院の判例を批判し、このような学説の批判を受けて、最高裁が、次のとおり援用権者の範囲を広げる判決を示し、大審院の判例を変更してきたことは周知のとおりである。①最二小判昭42・10・27民集二一巻八号二一一〇頁(他人の債務のために自己の所有物をいわゆる弱い譲渡担保に供した者)、②最一小判昭43・9・26民集二二巻九号二〇〇二頁(物上保証人)、③最二小判昭48・12・14民集二七巻一一号一五八六頁(抵当不動産の第三取得者)、④最三小判昭60・11・26民集三九巻七号一七〇一頁(所有権移転予約形式の仮登記担保権が設定された不動産の第三者取得者)、⑤最三小判平2・6・5民集四四巻四号五九九頁(所有権移転請求権保全仮登記の経由された不動産の抵当権者)、⑥最一小判平4・3・19民集四六巻三号二二二頁(所有権移転請求権保全仮登記の経由された不動産の第三取得者)。
 これらの最高裁判決は、時効援用権者とは、時効により直接利益を受ける者であるとの大審院以来の基準を堅持しつつ、その範囲を拡張してきたものである。
 四 詐害行為の受益者による被保全債権の消滅時効の援用についても、判文中に示された大判昭3・11・8民集七巻九八〇頁はこれを否定していた。
 この判例に対しても学説の多数は批判的であり、詐害行為の取消は、債権者と受益者との関係で詐害行為の効力を失わせるものであるから、受益者はむしろ直接の当事者というべきであると主張されていた(我妻栄・新訂民法総則四四八頁。その他肯定説として、新井英夫・判例民事法昭和三年度九三事件、柚木馨・判例民法総論下巻三五二頁、川島武宣・民法総則四五四頁、幾代通・民法総則第二版五四〇頁、川井健・注釈民法(5)四七頁、松久三四彦「時効援用権者の範囲」金法一二六六号一二頁ほか)。
 これに対して、受益者の援用権を否定する学説もあり、特に、末弘厳太郎「時効を援用しうる『当事者』」民法雑記帳(上巻)一九九頁は、詐害行為による受益者は、詐害行為の加担者として信義誠実の原則上非難に値するので、時効制度の精神にかんがみ時効の恩恵を受けえざるものとすべきだと主張していた。しかし、末弘説に対しては、詐害行為をした張本人である債務者には援用権があるのであるから、受益者による時効の援用が信義に反するとはいえないとの批判が加えられていたところであった(新井前掲、松久前掲)。
 なお、最二小判45・1・23裁判集民事九八号三三頁が否定説に立った判決として紹介される場合があるが、右判決は、手形所持人の裏書人に対する原因関係上の債権につき時効が完成したが、裏書人が右時効を援用しない場合に、振出人に対する手形債権の行使が許されるかとの問題を含む事例で、詐害行為の受益者の援用権を一般的に否定する見解に基づくものとは考えられないので、この問題に関する先例とはならないと解される。
 五 本件判決は、以上のような最高裁判決の流れ、学説の動向を受けて、前記の理由から、受益者に時効援用権を肯定し、大審院の判例を変更したものである。
 また、本件は、被保全債権の一つである保証債務履行請求権に関して、その主たる債務者であるB社に対する債権についても時効の援用権を肯定したが、被保全債権について時効を援用できることから、当然に派生する結論と考えられたものと思われる。
 六 なお、本件が、原判決を破棄し、事件を原審に差し戻す理由として、Xが、債務者(すなわち、AとB社)の承認による時効の中断を主張していたことを挙げている点は、債務者について生じた時効中断の効力を受益者は否定できないことを前提にしたものと思われる。
 債権者にとって受益者の出現を予期することはできないから、債権者が債務者との関係で時効中断措置を取っているのに、受益者がその中断の効力を否定できるとすれば、債権者に不測の不利益を与えることになり不当であることはいうまでもない。したがって、受益者に時効援用権を肯定する以上、債権者と債務者の間に生じた時効中断効を、受益者も否定できないとの結論には異論のないところと思われるが、民法一四八条が、「時効中断ハ当事者及ヒ其承継人ノ間ニ於イテノミ其効力ヲ有ス」としていることとの関係で、これを理論的にどのように説明するかは、残された問題であり、明文の規定(民法二九二条、四三四条、四五七条参照)はないが、事物の性質上中断の効力が及ぶ例外的な場合と考えることになろう(四宮和夫「時効」新民法演習1二四八頁、最二小判平7・3・10裁判集民一七四号八一一頁参照)。これに対して、民法一四八条の独自の解釈から同一の結論に至る見解(松久三四彦「民法一四八条の意味」金沢法学三一巻二号四一頁)がある。
 七 本件は、大審院の判例を変更し、学説の多数説を採用して詐害行為の受益者に取消債権者の債権の消滅時効の援用権を肯定した判例であり、実務に与える影響も大きいと思われる。
4.小問3
(1)小問3(1)について
(a)
連帯保証人Dが債務者Bの主たる債務を援用すると、AD間ではBの債務が消滅した者として扱われ(援用の相対効)、保証債務の付従性によりDの連帯保証債務は消滅する。
(b)
時効利益放棄の相対効
(2)小問3(2)について
(a)
・連帯保証債務が承認により中断しても、Bの主たる債務の消滅時効は中断しない。
・連帯保証人に対する履行の請求であれば、おもたる債務の消滅時効も中断する。
+(連帯保証人について生じた事由の効力)
第四百五十八条  第四百三十四条から第四百四十条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。
+(連帯債務者の一人に対する履行の請求)
第四百三十四条  連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる
←148条の例外。
・主債務の消滅時効が中断するときは、一定の中断事由に限ることなく、保証債務の消滅時効も中断する
+(主たる債務者について生じた事由の効力)
第四百五十七条  主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる
2  保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。
・保証人の時効完成前の債務弁済があっても、特段の事情のない限り、その時効援用権は再現されない!
+判例(H7.9.8)
要旨
1.連帯保証人が主債務の時効完成の前後にわたって債務の弁済をなしていた場合において、連帯保証人による右行為は、主債務について時効中断の効力を生じさせることはなく、主債務が時効により消滅するときには保証債務は主債務に付従して消滅することになり、また、主債務者の破産後に連帯保証人が主債務者に対して求償できないことを知りつつ債務を弁済しても、それだけでは、連帯保証人が主債務の時効消滅にかかわらず債務を弁済する意思を表明したものとはいえず、連帯保証人は主債務の時効を援用する権利を失わない
(b)
+(委託を受けた保証人の求償権)
第四百五十九条  保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する
2  第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する
+(連帯債務者間の求償権)
第四百四十二条  連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
2  前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する
+(通知を怠った保証人の求償の制限)
第四百六十三条  第四百四十三条の規定は、保証人について準用する
2  保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、善意で弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、第四百四十三条の規定は、主たる債務者についても準用する。
+(通知を怠った連帯債務者の求償の制限)
第四百四十三条  連帯債務者の一人が債権者から履行の請求を受けたことを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、過失のある連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
2  連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済をし、その他有償の行為をもって免責を得たときは、その免責を得た連帯債務者は、自己の弁済その他免責のためにした行為を有効であったものとみなすことができる。


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