(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});
1.名誉棄損と人格権・プライバシー侵害
2.名誉と名誉棄損の意義
・名誉とは、
人がその品性、徳行、名声、信用その他の人格的価値について社会から受ける客観的評価を言う
人には法人も含まれる。
・名誉棄損に当たっては、被害者の社会的評価が保護法益
主観的な名誉感情の侵害だけでは、いまだ名誉棄損とはならない。
(人格権侵害を理由とする救済の可能性はある)
・709条にいう権利侵害の要件を充たすためには、
被害者の社会的評価が低下したことがあれば足りる。
真実を告げたことによる社会的評価の低下も名誉棄損に該当する。
・新聞記事・テレビ報道による名誉棄損と社会的評価の低下
当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断する。
3.名誉棄損の免責法理~真実性の抗弁と相当性の抗弁
・真実性の抗弁
公表事項の公共性と、
公益目的での公表
・相当性の抗弁
指摘した事実が真実であると信じたことに過失がなかった
(1)真実性の抗弁
①指摘された事実が真実であること、
②指摘された事実が公共の利害に関する事実にかかるものであること
③事実適示がもっぱら公益を図る目的に出たこと
違法性がなくなる。
・適示された事実が真実かどうかの判断に当たっては、裁判所は、
事実審の口頭弁論終結時において客観的な判断をすべき。
→名誉棄損行為の時点では存在しなかった証拠を考慮して、真実性についての客観的判断をすることも当然に許される。
指摘された事実が真実であることに関しては、
適示された事実は主要な部分において真実であることを主張立証すれば足りる
(2)真実と信じたことについての無過失の抗弁(相当性の抗弁)
・適示された事実が真実であることを立証できなくても、行為者において、その事実を真実と信じるについて相当の理由があったことを根拠付ける具体的事実を主張立証することで、名誉棄損を理由とする責任を免れる。
適示された事実が周知のものとなっていたという事実を主張立証するだけでは足りない
=周知性は、その事実が真実であるということへの信頼を基礎付けない。
・配信サービスの抗弁
掲載記事中で配信元が明確にされている場合には、
取材のための人的物的体制が整備され、一般的にその報道内容に一定の信頼性を有しているとされる通信社からの配信に基づく記事については、裏付け取材をしなくても、真実を伝えるものであると信じるについて相当の理由がある
私人の犯罪行為やスキャンダルないしこれに関連する事実を内容とするものである場合には、このような配信サービスの抗弁を認めない。
・判断基準時
名誉棄損当時に存在していた資料に基づいて相当の理由の有無を判断
4.意見・論評による名誉棄損
・意見の表明によって社会的評価が下落したとしても、それが人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない限り、その意見・論評が合理的か不合理かを問わず、およそ不法行為責任の成立が否定される!
なお、
意見や論評をする際の基礎ないし前提となった事実の適示により社会的評価が低下した点を捉えて、名誉棄損の不法行為責任を追及していく可能性はある。
・死者の名誉棄損
死者自身に対する権利侵害は否定し、虚偽の事実適示であることを要件として、死者の名誉・人格権を侵害するような行為を、遺族・近親者らの名誉棄損・人格権侵害という観点から捉え、不法行為責任の成否を論じるのが適切。
5.人格権・プライバシーの権利の意味~総論
人格権とは、
人間の尊厳に由来し、
人格の自由な展開の保障や、個人の私的生活領域の平穏の保護を目的とする権利
6.平穏生活権としてのプライバシーの権利
・私生活をみだりに更改されないという法的保障ないし権利
+判例(宴の後事件)
・平穏生活権としてのプライバシーへの侵害を判断するに当たっては
①一般人の感受性を基準に判断したとき、当該私人の立場に立ったならば公開を欲しないであろう事柄であって、
②一般の人にいまだ知られていないものであったかどうか
そのうえで、
③その事柄の公開によって、当該具体的個人が実際に不快・不安の念を覚えたことが必要
さらに、私事をみだりに公開されないことが権利として法的に保護されるためには、
④問題の事項につき社会が関心を持つことが正当とは言えないものであることが必要。
7.自己情報コントロール権としてのプライバシー権
・個人情報を排他的に支配管理できる権利が憲法上保護された基本権として情報主体である個人に与えられていると考え、私人関係レベルにおいても、自己情報コントロール権としてのプライバシー権が不法行為法の保護の対象となる。
・氏名は人格権の1内容を構成する
+判例(S63.2.16)在日韓国人の氏名の日本語読み判決
・みだりに指紋の押なつを強制されない自由がある
採取された指紋の利用方法次第では個人の私生活あるいはプライバシーが侵害される危険がある
同時に、
公共の福祉のために相当の制限
指紋は指先の紋様でありそれ自体では思想良心等個人の内心に関する情報となるものではない
・肖像権
8.自己決定権としての人格権
9.名誉棄損、人格権・プライバシー侵害の効果(その1)~損害賠償
10.名誉棄損、人格権・プライバシー侵害の効果(その2)~差止請求
・人格権としての名誉権に基づき、現に行われている侵害行為を排除し、または将来生ずべき損害を予防するために、侵害行為の差止めを求めることができる
←名誉は生命身体とともにきわめて重大な保護法益であり、人格権としての名誉権は物権の場合と同様に排他性を有する権利と考えられるから。
+判例(S61.6.11)北方ジャーナル事件
出版物が公務員または公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものであるときには、差止めは原則として許されず、
例外的に、
①その表現内容が真実でないか、またはもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、
②被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る恐れがあるときに限り許される
11.名誉棄損、人格権・プライバシー侵害の効果(その3)~原状回復
+(名誉毀損における原状回復)
第七百二十三条 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
・謝罪広告の掲載
単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度の謝罪広告を新聞に掲載すべきことを命じるのは、
公表事実が虚偽かつ不当であったことを広報機関を通じて発表することを求めるに帰するから、
屈辱的もしくは苦役的労苦を科し、または上告人の有する倫理的な意思、良心の自由を侵害することを要求するものとは解せられない
・反論権、反論文の掲載については認められない。
12.パブリシティの権利
・氏名・肖像権
自己の氏名・肖像等をみだりに利用されない権利
・パブリシティ権
自己の氏名肖像等の持つ顧客吸引力を排他的に利用する権利
人格の持つ財産的価値を保護の対象とした
・肖像の無断使用がパブリシティ権を侵害するものとして不法行為法上違法となるのは、
①氏名肖像等それ自体を独立して鑑賞の対償となる商品等として使用し、
②商品等の差別化を図る目的で氏名・肖像等を商品等に付し、
③氏名肖像等を商品等の広告として使用するなど、もっぱら氏名肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合
+判例(H24.2.2)ピンクレディー事件
(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});