憲法択一 統治 憲法保障 総説


・憲法の主たる名宛人は国家権力である。

・憲法保障制度の事後的手段として、違憲審査制度(81条)がある。

・憲法保障制度の事前的な手段として、憲法の最高法規性の宣言(98条1項)、公務員の憲法尊重擁護義務(99条)、権力分立制(41条、65条、76条1項)、硬性憲法(96条)などがある。

・近代立憲主義の進展とともに、憲法保障制度は整備され、抵抗権は成文から姿を消した。←抵抗権の本質が非合法的なところにあり、組織化・制度化になじまない性格を持っているためであり、抵抗権の思想が不要になったわけではない。

・革命権は、既存の法秩序を倒し新たな法秩序を創設する行為である。(⇔抵抗権とはちがう)

・抵抗権:侵害された既存の法秩序を回復する行為

・中世ヨーロッパにおいて、法の支配を最終的に担保するものとして主張され、フランス人権宣言などで自然権として保障されたのは抵抗権である(×革命権)

・国家緊急権に関する規定は、明治憲法にはおかれていたが、当該権利が濫用されたことや、戦争の放棄の規定(9条)が置かれたことを考慮して、日本国憲法では除外されている。

・緊急の事態を法律で定めることが一切許されないわけではなく、憲法解釈として許される範囲内で、いくつかの法律が緊急事態への対応を定めている。

・国家緊急権は、国家存亡の際に憲法の保持を図るもので、憲法保障のひとつの形態であるといえる。

・他方、立憲的な憲法秩序を一時的にせよ停止し、執行権への権力の集中とその強化を図って危機を乗り切ろうとするものであるから、立憲主義を破壊する危険性をはらんでいる。→自然権思想を推進力として発展してきた人権や、その根底にあってこれを支えてきた抵抗権とは性質が異なる。

・条約:外国との間における国際法上の権利・義務関係の創設・変更にかかわる文書による法的合意をいう。

・日本国が外国との間で純然たる私人としての立場で結んだ合意は「条約」にあたらない。

・憲法99条にいう「義務」については、道徳的要請を規定したものと解されているが、憲法の侵犯・破壊を行わないという消極的不作為義務違反は法律による制裁の対象となることがあり得る。→憲法の非合法的変革を企てたり主張したりすることは消極的不作為義務違反に当たり、憲法村長擁護義務に違反すると解される。

・99条は、憲法尊重擁護義務の主体として国民を挙げていない。

・73条1号の「誠実に執行」に関連して、内閣は法律が憲法に違反していると判断した場合、法律の執行を拒否できるか?→法律が違憲かどうかの判断は国会が優先し、内閣はその判断に拘束されるため、拒否できない。

・国務大臣にも憲法尊重擁護義務がある。


民法択一 契約の有効性 無効と取消し


・取消権は、追認をすることができるときから5年または行為の時から20年を経過した時に時効によって消滅する。

・ 父が非嫡出子を妻の生んだ嫡出子として届け出ていた場合、嫡出子でない以上、届け出通りの効果は生じないが、届け出の中に認知の意思があるから、その届出には認知としての効力が認められる。(無効行為の転換)!!

・詐欺による意思表示をした者が、相手方から、1か月以上の期間を定めて、その期間内に当該意思表示を追認するかどうかを確答すべき旨の催告を受けた場合、その期間内に確答を発しないときは、その効果を追認したとみなされるわけではない。(詐欺による意思表示をした者に対する関係では、相手方の催告件に関する規定はない)!!

・詐欺または強迫による行為の取消権者は、瑕疵ある意思表示をしたもののほか、代理人もしくは承継人である(120条2項)。

・取り消すことができる行為について担保の供与があった場合は、追認したものとみなされる(125条4号、法定追認)。担保の供与は、取消権者が債務者として担保を供与した場合のみならず、債権者として担保の供与を受けた場合も含む

・追認は、取消しの原因となっていた事情が消滅した後にしなければ、その効力を生じない(124条1項)。また、法定代理人が追認をする場合には、124条1項は適用されず、本人が追認するような制限はない(124条3項)。

・取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消しは、相手方に対する意思表示によってする(123条)。ここでいう相手方は元の相手方(譲渡人)を指し、譲受人ではない。 

・取消しの不当利得返還 制限行為能力者は現存利益についてのみ返還義務を負う(121条但し書き)

・法定追認の場合、追認をなしうる状態になければならないが、現実に取消権のあることまで知っていることは必要とされない。

・「代理人」には、法定代理人と取消権の行使をゆだねられた任意代理人を含む。

・保証人は取消権者ではない! 


憲法択一 統治 地方自治 地方公共団体


・都の特別区は、普通地方公共団体とはされていない。

・一時期、都の特別区について、その区長は特別区の議会が都知事の同意を得てこれを選任するものと定めていたところ、最高裁判所は、特別区は憲法上の地方公共団体には当たらないものとして、これを合憲としていた。

・町村は、条例で、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる(地方自治法94条)←町村総会は議事機関としての議会に当たるため、憲法93条1項に違反しないと解されている。

・憲法93条2項は地方公共団体の長、議会の議員を住民が直接選挙することを定めているにとどまり、地方自治法に定める議会の直接請求や議員、長の解職請求の制度それ自体は憲法上の要請ということはできない。

・法律で地方公共団体の長の間接選挙制や推薦制をとることは違憲である。←93条2項は、地方公共団体の長について、住民が直接選挙すると定めているから

・何が「その地方の住民が直接選挙すべき職員」に該当するかは憲法上明らかではなく、具体的内容の決定は、国会の裁量にゆだねられている。→ほかの吏員については一切選挙を行わないとすることもできる。(住民によって直接に選挙によって選ばれる吏員を法律で設けることが許されるという趣旨に過ぎない)

・その地方公共団体の住民であることは、都道府県知事の場合も市町村長の場合も要件とはされていない。

・94条は、地方公共団体の権能として、財産の管理、事務の処理、行政の執行及び条例の制定を列挙している。(×公共事業の実施)

・地方公共団体は、法律の範囲内で条例を設定することができる(94条)。→広義の自治事務に該当する事務であれば、住民の基本的人権の制限をその内容とすることも可能である。

・憲法94条は地方公共団体に法律の範囲内で条例制定権を認めているので、条例の効力は法律に劣る。

・地方自治法14条1項は法令に違反しない限りにおいて条例制定権を認めているので、条例の効力は、命令にも劣る。!!!

・94条の「条例」には、議会が制定する条例だけでなく、地方公共団体の長が制定する規則や、各種委員会の定める規則その他の規定も含まれる。

・憲法94条を根拠に、地方公共団体は法律の授権がなくとも条例を制定することができる。(大阪市売春取締時条例事件)。

・条令への罰則の授権について→条例は公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自主立法であって、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りるとしている。=あくまでも法律の授権は必要!

・31条は必ずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものではなく、法律の授権によってそれ以下の法令によって定めることもできると解すべきで、このことは73条6号但し書きによっても明らかである。

科刑手続については事柄の性質上条例で定めることはできず、科刑手続との関係では、31条の「法律」に条例を含むことはできない。

・ため池の堤とうを使用する行為を条例で規制することは、憲法および法律に抵触も逸脱もしない。このような財産上の権利の規制は財産権を有する者が当然受忍しなければならない責務というべきであって、29条3項の損失補償はこれを必要としない。

・租税法律主義の原則を定める憲法84条との関連で、条例による地方税の賦課徴収が許されるか否かが問題となるも、地方公共団体は自治権のひとつとして課税権を有し、同条の「法律」には条令も含まれると解されるから、条例による賦課徴収も許される。

・条令が法律に違反するかどうかは、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の内容に矛盾抵触するところがあるかどうかによって決するべきである。→貯法公共団体が、法律と同一目的で同一の汚染物質について、条例で、より厳しい排出基準を定めたとしても、その条例が直ちに法律に違反するとはいえない

・両者が同一目的に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解される場合は、国の法令と条例の間には何らの矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じない。(徳島市公安条例事件)

・青少年に対する淫行を処罰する条例と児童福祉法との関係について、児童福祉法の規定は、必ずしも児童の自由意思に基づかない淫行に限って適用されるものではなく、この規定は、18歳未満の青少年との合意に基づく淫行をも条例で規制することを容認しない趣旨ではない。→94条に違反しない。(福岡市青少年保護育成条例事件)

・道路における集団行動等に対する道路交通秩序維持のための具体的規制が、道路交通法及びこれに基づく公安委員会規制と条例の双方において重複して施されている場合においても、両者の内容に矛盾抵触するところがなく、条例における重複規制がそれ自体として特別の意義と効果を有し、かつ、その合理性が肯定される場合には、道路交通法による規制は、このような条例による規制を否定排除する趣旨ではなく、条例の規制の及ばない範囲においてのみ適用される趣旨のものと解することが相当である。(徳島市公安条例事件)

・条令の遵守事項として交通秩序を維持することという条件を付することも、通常の判断能力を有する一般人が、具体的場合において、自己がしようとする行為がその条項による禁止に触れるものであるかどうかを判断するにあたって通常その判断にさほどの困難を感じることはないはずであるから憲法31条に違反するとはいえない。

・行列行進又は公衆の集団示威運動は、公共の福祉に反するような不当な目的又は方法によらない限り、本来国民の自由とするところであるが、あらかじめ許可を必要とし、一定の場合にはこれを禁止することができる旨の規定を条例で設けたとしても、これをもって直ちに憲法の保障する国民の自由を不当に制限するものと解することはできない。

・条例による許可制が、その実質において届出制と異なるところがない場合には、規定の文面上では許可制を採用し、公安委員会の裁量による許可又は不許可の処分について救済の手段が定められていない場合でも、これを理由として直ちに違憲無効と認めることはできない。(東京都公安条例事件)

・美観の維持や危害防止のために、政党の演説会開催の告知宣伝を内容とするポスターを街路樹に括り付ける行為を条例で禁止することは公共の福祉のために許される。処罰することも許される。

・憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されるところであるとしている。

・地方税においては84条の「法律」には「条例」が含まれると解される。

・住民投票と国会の議決の先後関係について憲法95条は特に定めてはおらず、いずれが先行してもよい。

・95条の「一の地方公共団体」は、ひとつの地方公共団体という意味ではなく、特定の地方公共団体という意味であり、かつ、既に国法上の地方公共団体と認められているものをいう。

・地方公共団体の組織・運営・権能についてほかの地方公共団体とは異なる取り扱いを規定するのが地方自治特別法である。

・特定の地方公共団体の区域に適用される法律であっても、その規定する内容が、国の施策や国の機関に関する法律である場合は、地方自治特別法に該当しない。

・地方自治特別法を廃止する法律を制定する場合は、国会の議決だけで足り、当該地方公共団体の住民投票を行わなくとも違憲ではない。


民法論文 錯誤 要件事実など


・錯誤:内心的効果意思と表示の不一致を表意者が知らないことをいう。

・当事者以外の第三者が錯誤無効を主張できないか。
民法95条本文の趣旨が表意者の保護にあることからすれば、第三者は原則として錯誤無効を主張することはできないが、債権保全の必要性があり、かつ表意者が錯誤を認めている場合には、第三者も錯誤無効の主張をできる。
→不当利得返還請求権を満足させるに足りる財産を有していない
表意者は錯誤を認めていることを主張

・立証はどちらがすべきか
第三者は無効を主張できないのが原則である以上、錯誤無効を主張する第三者がその事実を立証すべき。

・重過失については、95条が但し書きで例外的に無効を主張できないと定めていることから、錯誤無効の主張を争う側が主張立証すべきである。

要件事実表
1.訴訟物
ZのYに対する不当利得の基づく利得金返還請求

2.請求原因
(1)被保全債権の発生原因事実(不当利得返還請求権)
ア.損失と被告の利得、およびそれらの因果関係
イ.アが法律上の意原因に基づかないこと
(ア)法律行為の要素に動機の錯誤があること
(イ)動機が意思表示の内容として表示されたこと
(2)無資力
(3)代位される権利の発生原因事実
ア.損失と利得、及びそれらの因果関係
イ.アが法律上の意原因に基づかないこと
(ア)法律行為の要素に動機の錯誤があること
(イ)動機が意思表示の内容として表示されたこと
ウ.被代位債権者が錯誤を認めていること

3.抗弁
(被保全債権に対して)錯誤について重過失があることの評価根拠事実

4.再抗弁
共通錯誤


民法択一 契約の有効性 契約内容の一般的有効要件


・正妻との婚姻が将来解消したら婚姻をする旨の予約及び、その婚姻予約に基づいて婚姻入籍まで扶養料を支払う旨の契約は、善良の風俗に反するもので無効である(90条)。

・不倫関係を断つために慰謝の目的で金銭を贈与する、いわゆる手切れ金の契約は有効である(笑)公序良俗に反しないらしい。

・クラブのホステスが顧客の飲食代金債務を保証する契約も、自己独自の客としての関係を維持することによって、クラブから支給される報酬以外の特別の利益を得る目的で任意にこれを締結するものであれば、公序良俗に反せず無効とはならない。笑

・687条のやむをえない事情がある場合に組合から任意に脱退することができると定める部分は強行規定である。(組合員の自由の著しい制限となるから)。

・食品衛生法に違反する有害食品と知ったうえで販売する取引行為は90条に反し無効。(取締規定だけど90条に抵触し無効)

・当事者が慣習の存在を知りながら特に反対の意思を表示しなかったときは、慣習による意思があるものと推定する。


憲法択一 統治 地方自治 地方自治の意義


・団体自治とは、地方公共団体が、国から独立した団体として、自らの意思と責任の下で自治を行うことをいう。←自由主義的要素

・住民自治とは、地方自治が住民の意思に基づいて行われることをいう。←民主主義的要素

・法律で地方議会を諮問機関とすることは、国が地方自治のあり方に介入する点で、団体自治に反し、「地方自治の本旨」に反する→違憲

・地方公共団体の長に対する住民による条例の制定又は改廃についての直接請求制度は、直接民主主義制度であり、住民自治を実現する制度である。

・地方自治の本旨について、地方自治制度は国家の統治権に由来するものであるから、国は地方自治の廃止を含めて地方自治保障の範囲を法律によって定めることができるという説がある。

・上記説の批判として、憲法が特に一つの章を地方自治を定めた趣旨が没却されるという批判がある。

・制度的保障説:地方自治の保障は、地方公共団体の自然権的・固有権的基本権を保障したものではなく、地方自治という歴史的・伝統的・理念的な公法上の制度を保障したものであるとする説。

・地方自治保障の性質を制度的保障と解しても、都道府県を廃止して道州制を導入することが92条に反することになるとは限らない。

・課税権を自治権の一環として捉えるのであれば、少なくとも、地方税に関しては「地方自治の本旨」(92条)の要請において、84条の法律には条令も含まれ、条例によっても、税源や税目を具体的に定めることができる。

・住民投票自体を認めるということが必然的に投票結果の拘束力についての首長の法的義務を導き出すわけではない。


憲法択一 統治 財政 財政監督の方式


・内閣は(×内閣総理大臣は)、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議をうけ議決をへなければならない(86条)。

・会計年度の期間については憲法上明文の規定はないが、国会の常会が毎年召集することとされており、また、決算について毎年会計検査院が検査することとされていることから、憲法は会計年度を一年とすることを予定しているといえる。

・継続費は、工期その他の事業でその完成に数年を要するものについて、特に必要がある場合に、数年にわたる支出を認めるものであるが、これは会計年度独立の原則の例外である。

・継続費について明治憲法は明文でこれを定めていた。

・予算のうち歳出に関する部分は、関係国家機関の支出の準則として法的拘束力を有する。

・歳入に関する部分は、各種租税法令等によって徴収・収納されるものであるから、性質上予測的意味を持つに過ぎない=法的拘束力を有しない→国の歳入が歳入予算に定められた金額を超えると見込まれる場合であっても、補正予算の作成・提出や国会の承認は必要とされない!!

・予算とは一会計年度における国の財政行為の準則である。

・予算法律説は83条の財政民主主義の原則を中心に置き、予算という名称の法律の議決には、原則として59条1項が適用され、「憲法に特別の定めのある場合」として60条の衆議院の先議権と衆議院の優越が適用される。

・予算法形式説は、予算が法律と異なると解する根拠の一つとして、予算は一般国民を拘束するものではなく国家機関(政府)のみを拘束するものであることをあげている。

・予算法形式説によれば、一般に、法律の執行に必要な費用が予算に計上されていないとき、内閣には補正予算提出義務があり、予算と法律の不一致を解消するように求められる。

・予算行政説によれば、予算の拘束力の根拠は予算それ自体には求められず、租税等財産関係の諸法律に求められる。

・憲法83条の趣旨からして、国会は提出された予算案につき、減額修正、増額修正のいずれもなしうると解されている←国会法や財政法には、増額修正を想定した規定が置かれている。

・減額修正に関しては内閣の発案権を積極的に侵害することにはならないため、予算議決権の当然の内容として認められ、国会の修正権に制限はない。

・明治憲法は、議会の減額修正に制限を加えていた。(この関係で増額修正は当然許されないと考えられていた)

・予算と法律との間の不一致に対処する憲法上の規定は設けられていないが、年度途中に予算に計上されていない経費を要する法律が成立した場合には、内閣は法律を誠実に執行しなければならないから(憲法73条1号)、補正予算、経費流用、予備費などの予算措置をとる義務がある。

・予備費の支出については事後の国会の承諾が必要とされる(憲法87条2項、財政法36条3項)、経費流用と補正予算については事後の国会の承諾は条件とされていない。!!

・予算超過支出の場合に加え、予算外支出の場合にも87条1項の趣旨は及ぶ。→「予備費」には、両者を含む。

・予備費を設けるための国会の議決には、衆議院の優越が認められる。←「国会の議決」(87条1項)は予算の決議としてなされるから。

・予備費の支出につき、内閣は事後に国会の承認を得なければならないが、承諾が得られない場合でも、支出が法的に無効になるわけではない。=不承諾は内閣の予備費支出を不当とし、その責任を問う意思表示であって、すでになされた支出行為の効力に何ら影響を及ぼすものではない。

・決算は、内閣が次の年度に国会に提出しなければならない(90条1項)。

・決算は、予算が適正に執行されたかを検討し、予算を執行する内閣の責任を明らかにすることによって、将来の財政計画や予算編成に役立てるために設けられている制度である。

・決算に法規範性はない。

・会計検査院は内閣に対して独立の地位を有する。

・決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない(90条1項)。

・決算制度は歳入歳出の予定準則が、現実に適正に行われたかを検討し、それによって内閣の責任を明らかにするとともに、将来の財政計画や予算編成に資することを目的としたものである。→国会が修正を加えることはできず、また、不承認の議決がなされても、既になされた収入支出には影響はない。

・従来の慣行では、決算に対する国会の審議・議決は各議院それぞれが行えばよいとされており、両議院交渉の案件ではなく、報告案件とされている。

・内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年1回、国の財政状況について報告しなければならない。

・「財政状況」は予算及び決算を含めた財政一般を意味する→国会に対しても、予算と決算を除く「財政状況」について報告する必要がある。


憲法択一 統治 財政 財政の基本原則


・83条にいう「国会の議決」とは、国庫債務負担行為についての議決のような個別的・具体的な議決だけでなく、税法の制定といった一般的・抽象的な議決も含まれる。

・84条が定める租税法律主義は、税の賦課・徴収はあくまでも納税者代表の同意による制定法に基づかなければならず、行政慣習法等の不文法によって課税されてはならないというものである。

・租税法律主義によれば、租税を創設し、改廃するのはもとより、租税要件と賦課及び徴収の手続についても、法律によって定められる必要があるが、租税に関する事項の細目については、命令への委任が認められると解されている。

・関税法3条但し書きは関税についての具体的な条件を条約にゆだねており、「法律の定める条件による」といえず、憲法84条に違反するのではないかが問題となる。→条約の締結には国会の決議による承認が必要であり(73条3号但し書き)、租税法律主義(84条)の趣旨に反しないと考えられるし、関税法3条但し書きが「法律の定める条件による」場合に該当すると解することが可能である。

・納税者の予測可能性を確保し、恣意的な課税を避けるため、課税内容は納税者に明確に理解されるものでなければならない。しかし、実際の税法の「不当に減少させる」や「必要があるとき」などの不確定概念は裁判所が合理的に判断できる程度のものであれば違憲でないと解されている。

・過去の事実や取引を課税要件とする新たな租税を創設する遡及立法を行うことは租税法律主義に反する。

・国または地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、84条に規定する租税に当たる。(旭川市国民健康保険条例事件)

・憲法84条にいう「租税」が、固有の意味の租税だけでなく、手数料や負担金を含むとの見解によると、財政法84条から生ずる結論を確認したものということができる。

・保険料は租税ではないことを理由として、84条は直接適用されない。

・租税以外の公課であっても賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有する者については84条の趣旨が及ぶ。(旭川市国民健康保険条例事件)→適正な規律がされるべき。

・賦課要件が法律または条令にどの程度明確に定められるべきかなどその規律のあり方については、当然公課の性質、賦課徴収の目的、その強制度合等を総合考慮して判断すべきものである。

・賦課総額の算定基準及び賦課総額に基づく保険料の算定方法は、条例によって賦課期日までに明らかにされているのであって、この算定基準に則って収支均衡を図る観点から決定される賦課総額に基づいて算定される保険料率については恣意的な判断が加わる余地はなく、これが賦課期日後に決定されたとしても法的安定が害されるものではないとして、賦課期日後の告示であっても84条の趣旨に反するものではない。

・租税に関する事項を細部に至るまで法律で定めることは実際的ではないことから、命令への委任も認められる。

・課税要件明確主義から、命令への委任は個別的・具体的でなければならない。

国費の支出に対する国会の議決は、法律の形式ではなく予算の形式でなされる。

・国が債務を負担するための国会の議決は、法律の形式と予算の形式とがある。

・「国が債務を負担する」(85条)とは、国の諸経費を調達するために、金銭給付を内容とする債務を負担することである。

・89条にいう「宗教上の組織もしくは団体」とは、国家が当該組織又は団体に対し特権を付与したり、公金その他の公の財産を支出し又はその利用に供したりすることが、特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になり、憲法上政教分離原則に反すると解されるものをいうのであり、換言すると、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織又は団体を指すものと解する。(箕面忠魂碑・慰霊祭訴訟)

・→戦没者遺族の相互扶助・福祉向上と英霊の顕彰を主たる目的として設立され活動している団体である遺族会はこれに該当しない。

・89条後段の趣旨について、自主性確保説は、憲法は事業の自主性を認める以上は財政援助はしないと割り切っていると解している。

・→「公の支配」とは、自主性を失われるとみられるほどの強い監督、すなわち、その事業の予算を定め、その執行を監督し、更に、人事に関与するなど、その事業の根本的な方向に重大な影響を及ぼすことのできる権力を有することをいうと解することになる。=自主性確保説による方が、「公の支配」の意味については厳格に解することになる。

・自主性確保説のように考えると、財政援助の要請か事業の自主性確保の要請のいずれか一方しか実現できないことから、私立学校が教育の重要な部分を担っており、国民の教育を受ける権利の実現に不可欠の存在になっていることから、財政援助の要請があることを軽視しているとの批判を受ける。

・89条前段は、20条1項後段、同条3項の政教分離原則を財政面から裏付けたものであり、宗教上の組織又は団体に対する国の干渉を排除する趣旨である。

・89条後段の趣旨を、財政民主主義の立場から公費の濫用をきたさないように当該事業を監督するべきことを要求するところにある(公費濫用防止説)と考えると、89条前段と後段は全く性質の異なるものになる。!

・89条後段にいう「公の支配」に属する事業とは、国家の支配のもとに特に法的にその他の規律を受けている事業をいうという見解がある。この見解は、私学助成の現実的な必要性から、「公の支配」の要件を緩和するものであり、89条後段を空文化してしまうとの批判がある。


憲法択一 統治 裁判所 裁判所の構成と権能


・法律によって裁判官となるための資格要件を定めることができることは当然であり、三権分立のバランスを乱すとはいえない。

・最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官するとされる(79条5項)。

・下級裁判所の裁判官についても、法律の定める年齢に達した時には退官するとの規定がある(80条1項但し書き)。

・79条2項の「任命は」を重視するのは、国民審査が内閣又は天皇のした裁判官の任命行為を完結・確定するものと考える見解(任命確定説)である。

・最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質においていわゆる解職の制度とみることができるとし、積極的に罷免を可とする投票以外は罷免を可としないものと扱うことは、憲法の規定する国民審査制度の趣旨に合する。(最高裁判所裁判官国民審査法事件)

・最高裁判所が有する規則制定権は、私法に関する事項について国会や内閣の干渉を排除し、裁判所の自主性を確保するという見地から裁判所自身に与えられたものであり、最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限については、下級裁判所に委任できる

・77条1項の弁護士に関する事項のうち、既に弁護士となった者が裁判所及び訴訟事件にかかわる場合にそれに関係する事項については規則で定め得るが、弁護士の資格・職務・身分の制限については、22条1項の職業選択の自由の保障との関係から、法律によって定めるべきと解されている。

・内閣による下級裁判所裁判官の任命は最高裁判所の提出する名簿に基づいて行われなければならない(憲法80条1項、裁判所法40条1項)

・内閣による下級裁判所裁判官の任命は、司法に対する国民による監視、抑制と関係がある。


憲法択一 統治 裁判所 司法権の独立


・裁判官が拘束される「法律」(76条3項)とは、形式的意味の法律のみならずおよそ一切の客観的法規範をいう。法律・条令・政令その他の制定された法規範だけでなく、慣習法や条理も含まれる。

・裁判官の定年は憲法79条5項、80条1項により、法律で定められることになっているが、法律で定められた年齢を引き下げ、その年齢に達しているすべての裁判官を退官させることは、78条の趣旨に照らして許されないと考えることができる・・・ヘー

・憲法上裁判官の報酬は、在任中、これを減額させることはできない。しかし、財政上の理由により、一般的に全裁判官の報酬を減額することは、憲法上許されると考える余地がある。

・個々の裁判官の報酬は相当額でなければならない。相当額であっても定期に支給されない場合は憲法違反になる。

・裁判官は、裁判により(裁判官会議とかではない)、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない(78条前段)。(ただし、最高裁判所の裁判官は国民審査による罷免がある点に注意)

・裁判官の罷免は、78条前段が、裁判官の罷免事由を限定していることから、懲戒による罷免はできない。