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1.争点整理手続の意義
・争点とは、
実体法規の適用において意味のある事実であって、当事者間に争いのある事実を指す(事実上の争点)
・争点整理の目的
争点の範囲を縮小するとともに争点の中味を深化させること。
・争点の範囲の縮小
争点を相手方の争い方や提出が可能な証拠との関係などを通して、真の争点に絞り込んでいく作業
・争点の中身の深化
争点の対象を主要事実から間接事実や補助事実などへと展開していくこと
2.争点整理手続
(1)各種の手続とその選択
(2)準備的口頭弁論
公開法廷で双方当事者の対席のもとに実施される
+(準備的口頭弁論の開始)
第百六十四条 裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、この款に定めるところにより、準備的口頭弁論を行うことができる。
準備的口頭弁論はあくまでも口頭弁論の一種であるから、その実施について当事者の意見を聴くことは要求されない。
証人尋問や当事者尋問も含めて、およそ口頭弁論において実施が認められているあらゆる行為を行うことができる。
+(当事者の不出頭等による終了)
第百六十六条 当事者が期日に出頭せず、又は第百六十二条の規定により定められた期間内に準備書面の提出若しくは証拠の申出をしないときは、裁判所は、準備的口頭弁論を終了することができる。
(2)弁論準備手続
ⅰ)弁論準備手続の意義
弁論準備手続
=口頭弁論期日以外の期日において、受訴裁判所または受命裁判官が主宰して行う争点整理手続
+(受命裁判官による弁論準備手続)
第百七十一条 裁判所は、受命裁判官に弁論準備手続を行わせることができる。
2 弁論準備手続を受命裁判官が行う場合には、前二条の規定による裁判所及び裁判長の職務(前条第二項に規定する裁判を除く。)は、その裁判官が行う。ただし、同条第五項において準用する第百五十条の規定による異議についての裁判及び同項において準用する第百五十七条の二の規定による却下についての裁判は、受訴裁判所がする。
3 弁論準備手続を行う受命裁判官は、第百八十六条の規定による調査の嘱託、鑑定の嘱託、文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)を提出してする書証の申出及び文書(第二百二十九条第二項及び第二百三十一条に規定する物件を含む。)の送付の嘱託についての裁判をすることができる。
+(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条 裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
2 裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる。
3 裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。
4 前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
5 第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。
ⅱ)弁論準備手続の実施
+(弁論準備手続の開始)
第百六十八条 裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができる。
←当事者の協力が得られなければ、弁論準備手続における円滑な争点整理は期待できないから
+(弁論準備手続に付する裁判の取消し)
第百七十二条 裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、弁論準備手続に付する裁判を取り消すことができる。ただし、当事者双方の申立てがあるときは、これを取り消さなければならない。
・実施の時期
訴え提起後にまず第1回口頭弁論期日を開き、審理の進め方を決定したうえで事件を弁論準備手続に付すことが一般的。
ⅲ)弁論準備手続でなしうる行為
証拠調べは原則として実施できないが、例外的に文書の証拠調べは行うことができる(170条2項後段)。
←争点整理には書証の認否を経ることが不可欠であること、人証の必要性の判断には文書の取調べが必要であること、文書の取調べには裁判官が閲読して行うので公開法廷で行う意味が少ないこと
ⅳ)公開主義との関係
関係者公開
+(弁論準備手続の期日)
第百六十九条 弁論準備手続は、当事者双方が立ち会うことができる期日において行う。
2 裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。ただし、当事者が申し出た者については、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き、その傍聴を許さなければならない。
ⅴ)双方審尋主義との関係
当事者双方が立ち会うことができる期日において行う(169条1項)
・交互面接方式
交互面接方式は原則として双方審尋主義に反して許されないが、弁論準備手続では当事者が同席面接を受ける権利を行使しないことはできるので、当事者が裁判所の要請に応じて任意に退席した場合は適法とする見解がある。
(4)書面による準備手続
+(書面による準備手続の開始)
第百七十五条 裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続(当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続をいう。以下同じ。)に付することができる。
(書面による準備手続の方法等)
第百七十六条 書面による準備手続は、裁判長が行う。ただし、高等裁判所においては、受命裁判官にこれを行わせることができる。
2 裁判長又は高等裁判所における受命裁判官(次項において「裁判長等」という。)は、第百六十二条に規定する期間を定めなければならない。
3 裁判長等は、必要があると認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、争点及び証拠の整理に関する事項その他口頭弁論の準備のため必要な事項について、当事者双方と協議をすることができる。この場合においては、協議の結果を裁判所書記官に記録させることができる。
4 第百四十九条(第二項を除く。)、第百五十条及び第百六十五条第二項の規定は、書面による準備手続について準用する。
3.争点整理手続の終結
・準備的口頭弁論、弁論準備手続の場合。
+(証明すべき事実の確認等)
第百六十五条 裁判所は、準備的口頭弁論を終了するに当たり、その後の証拠調べにより証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする。
2 裁判長は、相当と認めるときは、準備的口頭弁論を終了するに当たり、当事者に準備的口頭弁論における争点及び証拠の整理の結果を要約した書面を提出させることができる。
+(弁論準備手続における訴訟行為等)
第百七十条 裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
2 裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる。
3 裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。
4 前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
5 第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。
・書面による弁論準備手続の場合
+(証明すべき事実の確認)
第百七十七条 裁判所は、書面による準備手続の終結後の口頭弁論の期日において、その後の証拠調べによって証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする。
←書面による弁論準備手続の終了の場合は、争点及び証拠の整理は完成していないので、その手続内において、その後の証拠調べによって証明すべき事実の確認をすることができないから。
4.口頭弁論への移行
・弁論準備手続の場合
+(弁論準備手続の結果の陳述)
第百七十三条 当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。
5.攻撃防御方法の提出制限
(1)争点整理手続後の攻撃防御方法の提出
+(準備的口頭弁論終了後の攻撃防御方法の提出)
第百六十七条 準備的口頭弁論の終了後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない。
+(弁論準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
第百七十四条 第百六十七条の規定は、弁論準備手続の終結後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。
+(書面による準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
第百七十八条 書面による準備手続を終結した事件について、口頭弁論の期日において、第百七十六条第四項において準用する第百六十五条第二項の書面に記載した事項の陳述がされ、又は前条の規定による確認がされた後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、その陳述又は確認前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない。
(2)時機に後れた攻撃防御方法
+(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)
第百五十七条 当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
2 攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。
・適時提出主義(156条)の理念を実現するため
・要件
①時機に後れた提出であること
②当事者の故意または重過失に基づくこと
③それを審理することで訴訟の完結が遅延すること
・時機に後れた
=より早期の適切な時機に提出できたことを意味する。
争点整理手続が行われたときは、その終了後の提出は特段の事情のない限り、時機に後れたものと判断される。
控訴審での提出は、続審制がとられているので、控訴審の手続のみで判断するのではなく、第1審からの手続の経過を通じて判断すべき!
+判例(S30.4.5)
理由
上告代理人青柳孝、同青柳洋の上告理由第一点について。
所論引用の大審院判例(昭和八年二月七日判決)が、控訴審における民訴一三九条の適用について、第一審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであり、そして時機に後れた攻撃防禦の方法であつても、当事者に故意又は重大な過失が存すること及びこれがため訴訟の完結を延滞せしめる結果を招来するものでなければ、右の攻撃防禦の方法を同条により却下し得ない趣旨を判示していることは所論のとおりであつて、この解釈は現在もなお維持せらるべきものと認められる。
記録によつて調べてみると、所論の買取請求権行使は、原審第二回の口頭弁論において(第一回は控訴代理人の申請により延期)はじめて陳述されたものであるところ、上告人が第一審第一回口頭弁論において陳述した答弁書によれば、本件賃借権の譲渡について被上告人の承諾を得ないことを認め、右不承諾を以て権利らん用であると抗弁していることがうかがわれるから、すでに第一審において少くとも前記買取請求権行使に関する主張を提出することができたものと認めるのを相当とし、所論のように、上告人が第一審において当初の主張にのみ防禦を集中したというだけの理由をもつて、上告人が第二審において始めてなした買取請求権行使に関する主張が、故意又は重大なる過失により時機に後れてなされた防禦方法でないと断定することはできない。しかし時機に遅れた防禦方法なるが故に上告人の右主張を却下するためには、その主張を審理するために具体的に訴訟の完結を遅延せしめる結果を招来する場合でなければならないこと前示のとおりであるところ、借地法第一〇条の規定による買取請求権の行使あるときは、これと同時に目的家屋の所有権は法律上当然に土地賃貸人に移転するものと解すベきであるから、原審の第二回口頭弁論期日(実質上の口頭弁論が行われた最初の期日)において、上告人が右買取請求権を行使すると同時に本件家屋所有権は被上告人に移転したものであり、この法律上当然に発生する効果は、前記買取請求権行使に関する主張が上告人の重大なる過失により時期に後れた防禦方法として提出されたものであるからといつて、なんらその発生を妨げるものではなく、またこのため特段の証拠調をも要するものではないから、上告人の前記主張に基き本件家屋所有権移転の効果を認めるについて、訴訟の完結を遅延せしめる結果を招来するものとはいえない。従って訴訟の完結を遅延せしめることを理由として、前記所有権移転の効果を無視し、なんらの判断をも与えずに判決することは許されないものといわなければならない。
以上のとおりであるから、右第二回口頭弁論期日において結審することなく第六回の口頭弁論期日において弁論を終結したこと記録上明らかな本件において前記上告人の主張を時機に後れた抗弁として排斥し、本件家屋所有権移転の効果を無視したものと認められる原判決は、民訴一三九条の解釈適用を誤つた違法があるを免れない。所論はこの点において理由があるから他の論点について判断するまでもなく、原判決を破棄し右の点につき更に審理をなさしめるため本件を原審に差戻すのを相当とする。
よつて民訴四〇七条により全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)
・故意または重過失
故意または重過失の判断は、攻撃防御方法の種類を考慮して判断
・訴訟の完結の遅延
攻撃防御方法を却下した場合に想定される訴訟完結時と、その攻撃防御方法の審理を続行したい場合に想定される訴訟完結時とを比較して判断する。
その場ですぐに取り調べが可能な証拠の申出などは、訴訟の完結を遅延させるとはいえない。
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