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1.競合的不法行為と共同不法行為
2.競合的不法行為(不法行為責任の競合)
個別の不法行為責任が競合
+(共同不法行為者の責任)
第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
加害者不明の不法行為に関しては、明文の規定で因果関係の主張・立証責任が転換されている。
=択一的競合
・請求原因
①Xの権利侵害
②損害の発生(およびその金額)
③権利侵害行為および行為者として考えられるのがABCであること
④ABCのほかに行為者はいないこと
⑤Aに故意があったこと、または過失の評価根拠事実
⑥Bに・・・同上
⑦Cに・・・同上
・抗弁
自分の行為とXの権利侵害(・損害)との間に因果関係がなかったこと
3.共同不法行為の基本的な仕組み(その1)~伝統的な考え方による場合
・各人の行為が関連共同していることが相当性判断に影響を与え、個々の行為者ごとに損害賠償責任を考えたときには相当性がないとして賠償が認められない損害についても、賠償対象となり得る。
・請求原因
①Xの権利侵害
②Aに故意があったこと、または過失があったとの評価を根拠付ける具体的事実
③Bに故意があったこと、または過失があったとの評価を根拠付ける具体的事実
④Cに・・・同上
⑤損害の発生(およびその金額)
⑥Aの行為と権利侵害(・損害)との間の因果関係
⑦Bの・・・同上
⑧Cの・・・同上
⑨Aの行為、Bの行為およびCの行為が関連共同すること
⑨の関連共同性の要件が加わることで、因果関係の相当性判断が被害者に有利に緩和される。
4.共同不法行為の基本的な仕組み(その2)~最近の考え方による場合
・各人の行為と関連共同性と、共同行為と発生した結果との間の因果関係を問えば足り、個別的因果関係を問題としない!
・請求原因
①Xの権利侵害
②Aに故意があったこと、または過失の評価根拠事実
③Bに・・・同上
④Cに・・・同上
⑤損害の発生(およびその金額)
⑥Aの行為、Bの行為およびCの行為が関連共同すること
⑦ABCの共同行為と権利侵害(・損害)との間の因果関係
5.関連共同性の意味
・主観的共同説
行為者相互の意思の連絡を必要とする
←共同関係にある他人の行為という、自己の行為の結果でない損害についても責任を負わなければならないのは、各自が他人の行為を利用し、他方、自己の行為が他人に利用されるのを認容する意思を持つ場合に限られるべき
・客観的共同説(通説)
意思の連絡は不要であり、客観的に見て関連しあっていれば足りる
←主観的共同説
+判例(S43.4.23)山王川事件
・最近の共同不法行為の要件の考え方の判例
+判例(大阪地判S51.2.19)
各人の行為と結果発生との間の因果関係については、共同行為と結果発生との間の因果関係の存在をもって足りる
←各人の行為と結果発生との間の個別的因果関係の存在を必要とするときは、その立証がされた場合は各人は当然に民法709条による責任を負うことになり、行為の関連共同性という要件を付加するところの共同不法行為の規定は無用のものとなるから。
6.共同不法行為の効果~全額連帯責任とその緩和
・寄与度減責の理論
複数原因が競合する場合において、各行為者の賠償額を決定するに当たり、個々の原因の寄与度を考慮する
←因果関係という事実認定レベルではなく、規範的価値判断レベルでの賠償限定基準として「寄与度」を捉えるもの(評価的寄与度)
・強い関連共同性
寄与度減責の抗弁を認めない
・弱い関連共同性
寄与度減責の抗弁を認める
・共同行為に客観的関連性が認められ、加えて、共同行為者間に主観的な要素が存在したり、結果に対し質的にかかわり、その関与の度合いが高い場合や、量的な関与であっても自己の行為のみによっても全部または主要な結果を惹起する場合など(強い共同関係)は、共同行為の結果生じた損害の全部に対し責任を負わせることは相当
主観的な要素が存在しないか希薄であり、共同行為への関与の程度が低く、自己の行為のみでは結果発生の危険が少ないなど、共同行為への参加の態様、そこにおける帰責性の強弱、結果への寄与の程度等を判断して、連帯して損害賠償義務を負担させることが具体的妥当性を欠く場合(弱い共同関係)には、各人の寄与の程度を合理的に分解することができる限り、責任の分割を認めるのが相当。
・強い関連共同性と弱い関連共同性の峻別と条文上の根拠
強い関連共同性がある場合には719条1項前段を適用
弱い関連共同性しかない場合には719条1項後段を類推適用
7.共同不法行為者間の求償権
共同不法行為者は各自が連帯して損害賠償をする義務を負う
不真正連帯債務
不真正連帯債務にあっては、負担部分を観念することができないから、連帯債務であることを理由とする求償は認められない!!
共同行為者の内部的負担部分は、各自の過失割合によって決まる!
→この過失割合で確定された自己の内部負担額を超えて被害者に弁済をした共同行為者の1人は、他の共同行為者に対して求償することができる。
8.共同行為者の1人について生じた事由の影響
他の債務者にも影響の及ぶ事由を定めた連帯債務の諸規定は、不真正連帯債務には適用されない!
被害者が共同行為者の1人に請求したからといって、他の共同行為者に請求したということにはならない(434条の適用を否定)
被害者が共同行為者の1人に対して損害賠償義務を免除しても、他の共同行為者を免除したことにはならない
ただ、免除の意思表示が共同行為者全員の損害賠償義務を免除する意思でおこなわれたものであるときには、その限りで他の共同行為者の債務も消滅する。
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