民法択一 物権 抵当権 根抵当権


・第1順位の根抵当権者は競売開始時期の選択につき優先せず、差押えを知った時から2週間で元本は確定し、競売手続を止めることはできない(398条の20第1項3号)!!
+第398条の20
1項 次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
一 根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第372条において準用する第304条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
二 根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
三 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
四 債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2項 前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

・債権者・債務者間における一切の債権を担保するという包括的な根抵当権の設定はできない(398条の2)!!←包括抵当を認めると、将来債権について特定の債権者に独占を許すことになり、後順位抵当権者や一般債権者の利益を害する!
+第398条の2
1項 抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
2項 前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない
3項 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上若しくは小切手上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

・根抵当権で担保される元本確定後に生じる利息についても、極度額内であれば担保される(398条の3第1項)!!!⇔抵当権については、利息・損害金は最後の2年分についてのみ被担保債権となる(375条)。
+第398条の3
1項 根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。
2項 債務者との取引によらないで取得する手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。
1号 債務者の支払の停止
2号 債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立て
3号 抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え

++(抵当権の被担保債権の範囲)
第375条
1項 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない
2項 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

・被担保債権の範囲の限定は、後順位担保権者や一般債権者の保護も目的にするものである。
←包括抵当を認めていないこととか。

・398条の6第1項の元本確定日の定めは任意的である。!!!=定めを欠いても根抵当権の設定は無効になるわけではない。
+(根抵当権の元本確定期日の定め
第398条の6
1項 根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。
2項 第398条の4第2項の規定は、前項の場合について準用する。
3項 第1項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない。
4項 第1項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。

・被担保債権の範囲の変更、債務者の変更は、いずれも元本確定前であればできるが、これらの変更について元本確定前に登記をしなければ、その変更をしなかったものとみなされる!!
+(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更
第398条の4
1項 元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。
2項 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。!!
3項 第1項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす
・根抵当権の極度額は、利害関係を有する者の承諾を得て変更することができる!!!!
+(根抵当権の極度額の変更)
第398条の5
根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。

・根抵当権で担保される元本の確定期日を変更するには、後順位抵当権者その他第三者の承諾を要しない!!!←398条の6第2項・398条の4第2項

・元本確定前において、根抵当権者は根抵当権の全部を譲渡することができるが、その場合、根抵当権設定者の承諾が必要である!!!
+(根抵当権の譲渡)
第398条の12
1項 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
2項 根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。
3項 前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。

・元本確定前において、根抵当権者が、根抵当権を2つに分割してその一方を譲渡する場合、根抵当権設定者の承諾が必要である!!←398条の12第2項

・元本確定前において、根抵当権者は、その根抵当権の一部譲渡をする場合、根抵当権設定者の承諾が必要である!
+(根抵当権の一部譲渡)
第398条の13
元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。

・元本確定前に、免責的債務引受けがあった場合、引受人の債務について、根抵当権者は根抵当権を行使することはできない!!!!←398条の7第2項
ナントオオオオオオオオ
+(根抵当権の被担保債権の譲渡等)
第398条の7
1項 元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。
2項 元本の確定前債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。!!!!
3項 元本の確定前に債権者又は債務者の交替による更改があったときは、その当事者は、第518条の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。

+参考になるかな・・・。
免責的債務引受では債務は同一性を保ちながら引受人に移転し、旧債務者は債務を免れることとなります。
この債務について保証人(人的担保)や抵当権など物的担保が付されていた場合、その帰趨が問題となります。保証人や抵当権設定者等担保権設定者にとっては誰が債務者であるかについて重大な利害関係を有することとなります。このことは信用力のある旧債務者から信用力の劣る引受人に免責的債務引受がなされたことを考えれば明らかです。そこで、判例・学説は、保証人や抵当権等担保権設定者の承諾を得ない限り、保証や担保権は移転せずに消滅すると解しています(債務引受契約が債権者と引受人間の契約によつて成立したときは、第三者の設定した質権は特段の事情のないかぎり消滅して引受人に移転することがないとした最判昭和46年3月18日 等参照)。

・元本確定期日の定めのない場合、根抵当権者はいつでも元本の確定請求ができるが、根抵当権設定者は、根抵当権の設定時から3年が経過した後でなければ元本の確定請求はできない!!←398条の19
+(根抵当権の元本の確定請求)
第398条の19
1項 根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。
2項 根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。
3項 前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。

・元本確定前に、弁済期が到来した被担保債権を全額弁済した第三者は、求償権確保のため、根抵当権者に代位して、根抵当権を行使することはできない!!!!!!!←398条の7第1項後段

・元本確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することはできない!!←398条の7第1項前段

・元本確定後に、現に存する債務の額が極度額を超えるとき、物上保証人はその極度額に相当する金額を支払うことで、根抵当権の消滅を請求することができる!!!ヘー
+(根抵当権の消滅請求)
第398条の22
1項 元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する。
2項 第398条の16の登記がされている根抵当権は、一個の不動産について前項の消滅請求があったときは、消滅する。
3項 第380条及び第381条の規定は、第1項の消滅請求について準用する。


民法択一 物権 抵当権 抵当権の消滅


・借地人が借地上に所有する建物に抵当権を設定した後、当該借地に係る賃貸借契約を合意解除しても、抵当権の実行による建物の買受人にその合意解除を対抗できない!!←自己の権利の放棄により第三者に不測の損害を与えてはならないという398条の趣旨等を根拠。
+第398条
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。

・抵当権は物上保証人に対しては、被担保債権とは別に、時効により消滅する場合はない!
+第396条
抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

・債務者及び抵当権設定者については、取得時効に必要な占有を継続しても、抵当権は消滅しない(397条反対解釈)。=抵当不動産につき、取得時効に必要な要件を具備する占有を継続しても抵当権が消滅しない場合がある。
+第397条
債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。

・第1順位の抵当権が被担保債権の弁済により消滅した場合、第2順位の抵当権者は、第1順位の抵当権者に対し抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することができる!!!


民法択一 物権 抵当権 抵当権実行段階の問題


・債権者Gは債務者Sに5000万円の債権を有し、これを担保するためにS所有の甲不動産(時価6000万)及び乙不動産(時価4000万)に第1順位の抵当権の設定を受けた。甲不動産にはXの第2順位の抵当権(被担保債権額4000万円)が設定され、甲不動産及び乙不動産の抵当権が同時に実行される場合、Xは乙不動産から配当を受け取ることはできない!!!
←同時配当(392条1項)の場合、甲不動産と乙不動産の価格の割合が3:2であることから、Gは5000万円の5分の3である3000万円について甲不動産から配当を受けることができる。Xは、甲不動産の価格6000万円からGが配当を受ける3000万円を引いた残りである3000万円の限度で甲不動産から配当を受けることができ、乙不動産から配当を受けることはできない!!!!

+第392条
1項 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。
2項 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

・上記事例で、甲不動産の抵当権が実行された後に乙不動産の抵当権が実行される場合、Xが乙不動産から受ける配当額は2000万円である。
←異時配当(392条2項前段)の場合、Gは甲不動産から5000万円の配当を受け、Xは甲不動産から1000万円の配当を受けることになる。そして、392条2項後段によってXは、同時配当であればGが乙不動産から受けるであろう配当額である2000万円の限度!!!!でGに代位することができる。

・債権者Gは債務者Sに5000万円の債権を有し、これを担保するために物上保証人L所有の甲不動産(時価6000万円)及び乙不動産(時価4000万円)に第1順位の抵当権の設定を受けた。甲不動産にはXの第2順位の抵当権(被担保債権額4000万円)が設定され、甲不動産の抵当権が実行された後に乙不動産の抵当権が実行される場合、Xが乙不動産から受ける配当額は2000万円である!
+判例(H4.11.6)
共同抵当権の目的たる甲・乙不動産が同一の物上保証人の所有に属し、甲不動産に後順位の抵当権が設定されている場合において、甲不動産の代価のみを配当するときは、後順位抵当権者は、民法三九二条二項後段の規定に基づき、先順位の共同抵当権者が同条一項の規定に従い乙不動産から弁済を受けることができた金額に満つるまで、先順位の共同抵当権者に代位して乙不動産に対する抵当権を行使することができると解するのが相当である。
けだし、後順位抵当権者は、先順位の共同抵当権の負担を甲・乙不動産の価額に準じて配分すれば甲不動産の担保価値に余剰が生ずることを期待して、抵当権の設定を受けているのが通常であって、先順位の共同抵当権者が甲不動産の代価につき債権の全部の弁済を受けることができるため、後順位抵当権者の右の期待が害されるときは、債務者がその所有する不動産に共同抵当権を設定した場合と同様、民法三九二条二項後段に規定する代位により、右の期待を保護すべきものであるからである。甲不動産の所有権を失った物上保証人は、債務者に対する求償権を取得し、その範囲内で、民法五〇〇条、五〇一条の規定に基づき、先順位の共同抵当権者が有した一切の権利を代位行使し得る立場にあるが、自己の所有する乙不動産についてみれば、右の規定による法定代位を生じる余地はなく、前記配分に従った利用を前提に後順位の抵当権を設定しているのであるから、後順位抵当権者の代位を認めても、不測の損害を受けるわけではない。ムムムム!! 所論引用の判例は、いずれも共同抵当権の目的不動産が同一の物上保証人の所有に属する事案に関するものではなく、本件に適切でない。
そして、右の場合において、先順位の共同抵当権者が後順位抵当権者の代位の対象となっている乙不動産に対する抵当権を放棄したときは、先順位の共同抵当権者は、後順位抵当権者が乙不動産上の右抵当権に代位し得る限度で、甲不動産につき、後順位抵当権者に優先することができないのであるから(最高裁昭和四一年(オ)第一二八四号同四四年七月三日第一小法廷判決・民集二三巻八号一二九七頁参照)、甲不動産から後順位抵当権者の右の優先額についてまで配当を受けたときは、これを不当利得として、後順位抵当権者に返還すべきものといわなければならない(最高裁平成二年(オ)第一八二〇号同三年三月二二日第二小法廷判決・民集四五巻三号三二二頁参照)。 ヘーー

++なんかムズイので解説・・。
本件は、Aが、その所有する甲・乙不動産につき、Bの物上保証人として、Yのために共同根抵当権を設定し、次いで、甲不動産につき、Bの物上保証人として、Xのために根抵当権を設定していたところ、Yが乙不動産の根抵当権を放棄した後、甲不動産の根抵当権を実行し、その売却代金から配当を受けたという事実関係の下において、Yの配当金の受領がXに対する関係で不当利得となるのか否かが問題となった事案である。

抵当権者が共同抵当の目的不動産の一部に対する抵当権を放棄し、残余の抵当不動産の後順位抵当権者の民法三九二条二項後段の規定による代位の機会を喪失させた場合には、先順位抵当権者は、後順位抵当権者が右の放棄に係る不動産上の抵当権に代位し得た限度で、残余の抵当不動産につき、後順位抵当権者に優先することができない!!!!ナルホド!!というのが判例で(大判昭11・7・14民集一五巻一七号一四〇九頁ほか、なお、本判決の引用する最一小判昭44・7・3民集二三巻八号一二九七頁も、その判断を踏襲している)、また、不動産の配当手続において、優先権を有しない債権者が配当を受けたために、抵当権者の優先弁済を受ける権利が害されたときは、抵当権者は、右の配当金を不当利得として、債権者に返還を求め得るというのが判例(最二小判平3・3・22民集四五巻三号三二二頁、本誌七五五号二〇頁)であるから、本件において、Yの乙不動産に対する根抵当権の放棄がなく、甲不動産が先に売却されたとした場合に、Xが、民法三九二条二項後段の規定により、Yの乙不動産に対する根抵当権を代位行使し得たのであれば、右の判例に照らして、Xは、Yの乙不動産に対する根抵当権の放棄による代位の機会の喪失を理由に、甲不動産の配当手続でYに優先することができたはずで、YがXの優先額まで配当を受けたときは、これを不当利得として、Xに返還すべきことになる。この点は、本判決が後半部分で判示するところで、本件における論点は、結局、共同抵当の目的不動産が同一の物上保証人の所有に属する場合に民法三九二条二項後段の規定が適用されるのか否かに帰するが、本判決は、判決要旨のとおりの判断を示して、その適用を肯定したものである。従来の判例でこの点を判示したものはなく、最高裁の新判断である本判決が今後の裁判実務、特に執行実務に与える影響は少なくないと思われる。

共同抵当に関しては、これまでに重要な判例がいくつかあるが、これを分類すれば、その第一は、共同抵当の目的不動産が債務者の所有に属する場合に関する判例である。民法三九二条二項後段の規定の適用を認めるが(前掲大判昭11・7・14、最一小判昭44・7・3など)、学説も、この点に異論はみられない。その第二は、共同抵当の目的不動産が債務者及び物上保証人の所有に属する場合又は異なる物上保証人の所有に属する場合に関する判例で、この場合には、民法三九二条二項後段の規定は適用されず、物上保証人の設定した抵当不動産の後順位抵当権者は、抵当権を実行された物上保証人が法定代位によって取得する先順位の共同抵当権にいわば物上代位することによって保護されるとする!!!(前掲最一小判昭44・7・3のほか、最三小判昭53・7・4民集三二巻五号七八五頁、最一小判昭60・5・23民集三九巻四号九四〇頁、本誌五六〇号一一七頁、最二小判平1・11・24集民一五八号二二五頁など)。学説も、異論がないわけではないが、判例を支持する見解が一般である。

以上の判例に照らして、民法三九二条二項後段の規定が適用されるのは、共同抵当の目的不動産が債務者の所有に属する場合に限られ!!!!!、それ以外の場合には、同一の物上保証人の所有に属する場合を含め、民法三九二条二項後段の規定は適用されないとするのが判例であるという誤解もあるようであるが、同一の物上保証人の所有に属する場合に関する判例はこれまでになく、この場合における民法三九二条二項後段の規定の適否は、判例上、未解決の問題であったというのが正確である。学説は、この点を踏まえ、民法三九二条二項後段の規定が適用されると説く見解(佐久間弘道・共同抵当における代価の配当についての研究六九頁、吉原省三・銀行取引法の諸問題(第三集)二〇七頁)と法定代位の物上代位という従来の判例理論の延長として後順位抵当権者の保護が図られると説く見解(古館清吾「共同抵当権の代価の配当」判例・先例金融取引法四二八頁、富越和厚・共同抵当をめぐる判例上の問題点六七六頁)とが対立しているが、いずれにしても後順位抵当権者の保護が図られることに変わりはなく、その適条が異なるにすぎない。フムフム

物上保証人の設定した抵当不動産の後順位抵当権者につき、民法三九二条二項後段の規定する代位が認められるとすると、物上保証人の民法五〇〇条、五〇一条の規定による法定代位との優劣が問題となるが、従来の判例が法定代位の物上代位という理論構成によってその調整を図ったものであるから、共同抵当の目的不動産が同一の物上保証人の所有に属する場合にも、従来の判例に従い、法定代位の物上代位によって後順位抵当権者の保護を図る余地がないわけではない。しかし、債務者と物上保証人との間あるいは異なる物上保証人の間における場合とは異なり、例えば、後順位抵当権者がいない場合には、物上保証人がその所有に係る残余の抵当不動産に対する先順位抵当権者の抵当権を代位行使するという事態は考え難く、右の見解はいささか技巧的にすぎるのではないかと解される。民法三九二条は、共同抵当の目的不動産の所有関係を規定していないので、債務者の所有に属する場合に限って同条二項後段の規定が適用されるとする根拠も乏しく、同一の物上保証人の所有に属する場合にも、端的に民法三九二条二項後段の規定が適用されると解するのが簡明であるように思われる。本判決が三九二条二項後段の規定の適用を肯定しているのも、以上の比較検討を踏まえ、問題のより簡明な解決を期したものと窺われる。

・債権者Gは債務者Sに5000万円の債権を有し、これを担保するために甲不動産(時価6000万円)及び乙不動産(時価4000万円)に第1順位の抵当権の設定を受けた。甲不動産がSの所有、乙不動産が物上保証人Lの所有であり、甲不動産にはXの第2順位の抵当権(被担保債権額4000万円)が設定され、乙不動産の抵当権が実行された後に甲不動産の抵当権が実行される場合、Xが甲不動産から受ける配当額は1000万円である!←物上保証人としては、他の共同抵当物件である甲不動産から自己の求償権の満足を得ることを期待していたものというべく、その後に甲不動産に第二順位の抵当権が設定されたことにより右期待を失わしめるべきではないからである

+判例(S44.7.3)
まず、第二順位の抵当権者と第一順位の共同抵当権者との関係についてみるに、たとえば、債権者が債務者所有の甲、乙二個の不動産に第一順位の共同抵当権を有し、その後右甲不動産に第二順位の抵当権が設定された場合、共同抵当権者が甲不動産についてのみ抵当権を実行したときは、右共同抵当権者は、甲不動産の代価から債権全額の弁済を受けることができるが(民法三九二条二項前段)、これに対応して、第二順位の抵当権者は、共同抵当権者に代位して乙不動産につき抵当権を行なうことができるものとされている(同条同項後段)。したがつて、共同抵当権者が、右抵当権の実行より前に乙不動産上の抵当権を放棄し、これを消滅させた場合には、放棄がなかつたならば第二順位の抵当権者が乙不動産上の右抵当権に代位できた限度で、右第二順位の抵当権者に優先することができないと解すべきである(大審院昭和一一年(オ)第一四八号、同年七月一四日判決、民集一五巻一七号一四〇九頁参照)。

つぎに、第二順位の抵当権者と物上保証人との関係についてみるに、右の例で乙不動産が第三者の所有であつた場合に、たとえば、共同抵当権者が乙不動産のみについて抵当権を実行し、債権の満足を得たときは、右物上保証人は、民法五〇〇条により、右共同抵当権者が甲不動産に有した抵当権の全額について代位するものと解するのが相当である。けだし、この場合、物上保証人としては、他の共同抵当物件である甲不動産から自己の求償権の満足を得ることを期待していたものというべく、その後に甲不動産に第二順位の抵当権が設定されたことにより右期待を失わしめるべきではないからである(大審院昭和二年(オ)第九三三号、同四年一月三〇日判決参照)。これを要するに、第二順位の抵当権者のする代位と物上保証人のする代位とが衝突する場合には、後者が保護されるのであつて、甲不動産について競売がされたときは、もともと第二順位の抵当権者は、乙不動産について代位することができないものであり、共同抵当権者が乙不動産の抵当権を放棄しても、なんら不利益を被る地位にはないのである。したがつて、かような場合には、共同抵当権者は、乙不動産の抵当権を放棄した後に甲不動産の抵当権を実行したときであつても、その代価から自己の債権の全額について満足を受けることができるというべきであり、このことは、保証人などのように弁済により当然甲不動産の抵当権に代位できる者が右抵当権を実行した場合でも、同様である。

+第500条
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。

・共同抵当権者がその目的不動産の1つに対する抵当権を放棄した後、後順位抵当権が成立している他の不動産を競売した場合、放棄した不動産につき、後順位抵当権者が代位をなし得たはずの負担額の限度において、優先弁済を受けられない!!←504条を類推適用し、優先弁済が制限される!!!
+第504条
第500条の規定により代位をすることができる者がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位をすることができる者は、その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなった限度において、その責任を免れる。

・抵当不動産の代価に先立って債務者の他の財産の代価を配当する場合、その代価が抵当権者以外の債権者の債権額の全額に不足するときでも、抵当権者は当該財産から配当を受けることができる!←抵当権者は抵当不動産以外の一般財産から強制執行によって弁済を受けることができるが、これにより弁済を受けられなくなるおそれのある他の一般債権者を保護するために、弁済を受ける部分が制限されるのが原則である(394条1項)!。もっとも、本件場合では抵当権者は債権全額で配当加入ができる(同条2項前段)。なおほかの一般債権者からは教卓の請求が・・・。
+第394条
1項 抵当権者は、抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ、他の財産から弁済を受けることができる。
2項 前項の規定は、抵当不動産の代価に先立って他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。この場合において、他の各債権者は、抵当権者に同項の規定による弁済を受けさせるため、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる


民法択一 物権 抵当権 抵当権の効力


・自ら所有する山林に抵当権を設定した債務者が、不法に樹木を伐採しこれを搬出しようとする場合、抵当権者は物権的請求権を行使して当該行為を阻止することができる!!!

・Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した場合において、Aの不在期間中に、Dが甲建物を不法に占有したことにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態にあるときは、CはAのDに対する妨害排除請求権を代位行使して、Dに対して直接自己に甲建物を明け渡すよう求めることができる!
+判例(H11.11.24)
原審は、次のように判示し、被上告人の請求を認容すべきものとした。
1 本件不動産についての不動産競売手続が進行しないのは、上告人らが本件建物を占有していることにより買受けを希望する者が買受け申出をちゅうちょしたためであり、この結果、被上告人は、本件貸金債権の満足を受けることができなくなっている。したがって、被上告人には、本件貸金債権を保全するため、Bの本件建物の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使する必要があると認められる。
2 被上告人が請求することができるのは、本件建物の所有者であるBへの明渡しに限定されるものではなく、被上告人は、保全のために必要な行為として、上告人らに対し、本件建物を被上告人に明け渡すことを求めることができる

三 抵当権は、競売手続において実現される抵当不動産の交換価値から他の債権者に優先して被担保債権の弁済を受けることを内容とする物権であり、不動産の占有を抵当権者に移すことなく設定され、抵当権者は、原則として、抵当不動産の所有者が行う抵当不動産の使用又は収益について干渉することはできない
しかしながら、第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、これを抵当権に対する侵害と評価することを妨げるものではない!!!。そして、抵当不動産の所有者は、抵当権に対する侵害が生じないよう抵当不動産を適切に維持管理することが予定されているものということができる。したがって、右状態があるときは、抵当権の効力として、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し、その有する権利を適切に行使するなどして右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を有するというべきである。そうすると、【要旨第一】抵当権者は、右請求権を保全する必要があるときは、民法四二三条の法意に従い所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができると解するのが相当である。
なお、第三者が抵当不動産を不法占有することにより抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求として、抵当権者が右状態の排除を求めることも許されるものというべきである。
最高裁平成元年(オ)第一二〇九号同三年三月二二日第二小法廷判決・民集四五巻三号二六八頁は、以上と抵触する限度において、これを変更すべきである。

四 本件においては、本件根抵当権の被担保債権である本件貸金債権の弁済期が到来し、被上告人が本件不動産につき抵当権の実行を申し立てているところ、上告人らが占有すべき権原を有することなく本件建物を占有していることにより、本件不動産の競売手続の進行が害され、その交換価値の実現が妨げられているというのであるから、被上告人の優先弁済請求権の行使が困難となっていることも容易に推認することができる。
【要旨第二】右事実関係の下においては、被上告人は、所有者であるBに対して本件不動産の交換価値の実現を妨げ被上告人の優先弁済請求権の行使を困難とさせている状態を是正するよう求める請求権を有するから、右請求権を保全するため、Bの上告人らに対する妨害排除請求権を代位行使し、Bのために本件建物を管理することを目的として、上告人らに対し、直接被上告人に本件建物を明け渡すよう求めることができるものというべきである。

五 本件請求は、本件根抵当権の被担保債権をもって代位の原因とするが、本件根抵当権に基づいて、その交換価値の実現を阻害する上告人らの占有の排除を求めるため、所有者に代位して、上告人らに対して本件建物の明渡しを請求する趣旨を含むものと解することができるから、被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。

+解説あり! ・・・ナガイヨ・・・
三 本判決について
本判決の特徴は、抵当不動産が権原なく占有されていたため競売手続において売却ができない状態となっているという本件の事案に即し、基本的に、事案の解決に必要な範囲で、法理を展開していることにある。多くの問題が今後の研究にゆだねられている。本稿では立ち入って論ずる余裕がないが、本判決には、奥田昌道裁判官の詳細な補足意見が付されており、法廷意見を理解する上で参考となると思われる(なお、本判決については、金法一五六六号一八頁以下に特集が組まれている。以下「特集」という。)。

1 抵当不動産の使用収益に関する抵当権者の地位についての原則
本判決は、「抵当権は、競売手続において実現される抵当不動産の交換価値から他の債権者に優先して被担保債権の弁済を受けることを内容とする物権であり、不動産の占有を抵当権者に移すことなく設定され、抵当権者は、原則として、抵当不動産の所有者が行う抵当不動産の使用又は収益について干渉することはできない。」と述べる。右は、平成三年判決が議論の出発点とした法原則を、再確認したものと見られる(民法三六九条一項、民事執行法一八八条により準用される同法四六条二項等参照)。
右の原則に対する例外としては、民法三九五条ただし書の短期賃貸借の解除制度があるが、本判決は、他にも例外があることを明らかにしたものである。

2 抵当不動産の占有が抵当権の侵害となる場合
右の例外を論ずるに当たり、本判決は、まず、「第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、これを抵当権に対する侵害と評価することを妨げるものではない。」とする。
(一) 本判決が議論の対象とするのは、「不法占有」である。本件の事案の内容に照らすと、これは、抵当不動産の無権原占有を指すものであることが明らかである。この語を用いることについては、先に紹介した平成三年判決の説示との関連が考慮されたもののように見受けられる。本件においては、占有の具体的な動機、態様等のいかんは問題とされておらず、本判決の射程が、無権原占有のうち占有の動機、態様等が悪質なものに限られるとは解し難い。一方、現在は権原に基づくが競売手続における売却までにその消滅が予想される占有、権原の存在は一応認められるがその動機、態様等が悪質な占有等については、本判決は、直接には扱っていないと見るのが、素直な理解であると考えられる。フム・・・
(二) 本判決は、抵当不動産の不法占有が抵当権に対する侵害であると評価される場合があることを認め、それは、右占有により「抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるとき」であるとする。(1) 右説示は、侵害の成否が問題とされる抵当権の権利者につき不動産競売手続等において配当等が行われる蓋然性が存在することを当然の前提とするものと見られる。したがって、配当等を受ける見込みのない後順位抵当権者や、被担保債権の存在しない根抵当権の権利者等に関しては、侵害の成否を論ずる前提が欠けると解することになると思われる  ヘー (奥田裁判官の補足意見は、これらの者による救済手段の濫用のおそれを考慮すべきことを指摘する。)。(2) 本判決は、前記の状態の存在が認められる例として、「競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがある」ときを挙げる。ここでいう「適正な価額」は当該不法占有が存在しなかったとした場合に競売手続において実現したであろう売却価額を、「売却価額」は競売手続における実際の売却価額を、それぞれ意味するものと解される。不動産競売の実務においては、抵当不動産が不法占有されている場合、当該占有が引渡命令等で排除可能なものであっても、評価上減額が加えられるのが一般であり、本判決においても、これらのことが、経験的基礎として考慮されたものと見られる。そして、本判決は、競売手続における不法占有による売却価額の下落について、その「おそれがある」との概括的な事情の立証で足りるとしている。これは、生ずべき売却価額の下落を具体的な金額まで含めて立証することは、一般的には困難であると見られることを考慮したものと考えられる。フムフム (3) ところで、売却価額のいかんにより当該抵当権者の受けるべき配当等の額が変動する場合には、当該不法占有により当該抵当権者に不利益が生ずると見ることに、さほど問題はないであろう。これに対し、売却価額の変動にかかわらず不動産競売手続において配当等により確実に請求債権全額の満足を受けると見られる抵当権者に関しては、いずれにせよ弁済を受けられることには違いがないとして、不利益の存否を問題とする余地がないわけではない。しかしながら、本判決は、「競売手続の進行が害され」る場合も含めて前記の状態の存否の評価を行うべきものとしており、現実の満足に遅れが生ずることも問題として採り上げる趣旨と解される。現に、本件の事案は、不法占有により競売手続が進行しなくなった場合に関するものである。
(三) 本判決は、不法占有により抵当権者に右のような事実上の不利益が生ずべき場合について、「これを抵当権に対する侵害と評価することを妨げるものではない」とする。先に見たとおり抵当権者は原則として抵当不動産の所有者が行う抵当不動産の使用又は収益について干渉することはできないが、本判決は、所有者の意思に基づかない不法占有によって生ずる不利益については、抵当権者がこれを甘受すべき根拠を見いだし難いとする趣旨と解される。もとより、本判決の説示について、抵当不動産の占有一般(抵当権に対抗し得ない使用権に基づくものも含む。)について抵当権者に対する侵害の成立を認めるものとは解し難い(前記「特集」五九頁(岡本雅弘)ほか。秦光昭「金融取引法の新しいステージ」銀法五七一号一頁は、「不法占有者ではないが抵当権者に対抗できない権利に基づく占有者」につき抵当権に対する侵害の成立を認めるもののようであるが、問題がある。民事執行法一八八条により準用される同法五九条二項参照)。また、本件の事案は、たまたま、土地建物を目的とする抵当権につき一括して競売手続が進められたところ、これらのうち建物が不法占有されていたため、結果として、手続全体の進行が停止してしまったというものであったのであり、本判決は、建物の不法占有が、当然に、土地を目的とする抵当権に対する侵害と評価されるとする趣旨とは解し難い。この点は、今後の議論にゆだねられていると見るべきであろう。ヘーー
(四) 以上の説示は、主に抵当不動産につき抵当権の実行としての競売手続が行われた場合を想定して展開されている。これは、本件の事案の内容を反映した結果であるのはもちろんであるが、抵当権の権利としての中心的な意義が、競売手続において配当等を受けることにあることからすると、自然の帰結でもあると解される。競売手続を離れた場面に関し本判決の射程がどのように及ぶかは、今後の問題として残されていると見られる(前記「特集」にも、この点に関して問題を指摘する論考が幾つか収められている。)。

3 抵当権者による抵当不動産の所有者の権利の代位行使について
(一) 本判決は、結論として右代位行使を認めるのであるが、その議論を始めるに当たり、第三者が抵当不動産を不法占有することにより抵当権に対する侵害と評価すべき状態が生じているときは、「抵当権の効力として、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し、その有する権利を適切に行使するなどして右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を有するというべきである」とする。(1) まず、右請求権の内容についてであるが、本件の事案においては、抵当権に対する侵害と評価すべき状態が現に存在しているとされる関係で、右の状態を是正するよう求めることが、その一つとして挙げられている。所有者が右の状態を是正する方法としては、不法占有者に対して所有権に基づく妨害排除請求権を行使することが考えられるが、状況に応じて他の方途もあり得ないではない。前記の説示が含みのあるものとなっているのは、このことを反映するものと見られる。フム・・ 所有者が右の状態を是正した後は、類似の状態が再度生じないように「抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める」ことが、請求権の主な内容となると見られる。右請求権は、抽象的には、「抵当権設定時よりその実行(換価)に至るまでの間、恒常的に存続する権利」(奥田裁判官の補足意見第三項)であるが、右に見たように、所有者に対して請求することのできる具体的内容は、それぞれの状況に応じて決定されるものと解される。いずれにせよ、1に見た原則に照らすと、右請求権は、専ら、抵当不動産の所有者が保存行為の実施を怠っているような場合に関するものであり、所有者がこれを行っている限りは、抵当権者が抵当不動産の所有者の行う抵当不動産の使用又は収益について干渉することを認めるものではないと解される。(2) 従来の下級審裁判例の中にも、(1)に述べたところとほぼ同内容のものと見られる請求権を肯定したものがあったが(東京地判昭52・10・20判時八八六号六八頁)、学説上は、右は抵当権設定契約当事者間の信義則上のものにとどまるとする理解が多かった(近江幸治・担保物権法(新版補正版)一六一頁ほか)。これに対し、本判決は、「抵当不動産の所有者は、抵当権に対する侵害が生じないよう抵当不動産を適切に維持管理することが予定されているものということができる。」と理由を述べた上、前記請求権は、「抵当権の効力として」認められるものであるとする。民法等に明文をもって規定されていないが物権の性質上当然のものとして認められている作為等の請求権の例としては、用益物権の設定契約に基づく設定登記手続請求権が挙げられる(大判明39・2・7民録一二輯一八〇頁、最二小判平10・12・18民集五二巻九号一九七五頁、本誌九九二号八五頁ほか)。前記請求権は、抵当権の効力として認められるものであるから、抵当権が対抗力を有するものである限り、抵当権設定契約の当事者である所有者のみならず、抵当不動産の第三取得者に対しても、右請求権は認められると見られる。(3) 抵当権者が請求権を有する反面として、抵当不動産の所有者は一定の義務を負うことになる。もっとも、これらの権利義務関係については、従来、余り立ち入った議論は行われておらず、詳細は今後の検討にゆだねられていると見られる(例えば、抵当不動産の第三取得者が右のような義務を負うことの説明として、同人がこれを物上債務として抵当権設定者から承継するというのかどうかなどの点も、問題となるであろう。前記座談会「抵当権者による明渡請求」銀法五七一号二三頁(椿寿夫・生熊長幸発言)ほか)。ヘーー
(二) 本判決は、右のような請求権の存在を前提として、「抵当権者は、右請求権を保全する必要があるときは、民法四二三条の法意に従い、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができると解するのが相当である」とする。右は、判例上、債権者代位制度の新たな転用類型を認めるものと解される。(1) 本判決は、抵当権者は前記の「請求権を保全する必要があるときは」所有者の権利を代位行使することができるとする。本件の事案は、競売手続の開始された抵当不動産が不法占有されて抵当権に対する侵害と評価すべき状態が生じていたというものであり、右の状態が是正されることが抵当権者にとって急務の課題となっていた。このような場合が、抵当権者について前記の請求権を「保全する必要があるとき」に当たることは、特に論ずるまでもないと思われる。本件のような場合以外において、いかなる事情が存在するときに抵当権者による所有者の権利の代位行使が認められるかは、今後の事例の集積によって明らかにされるべきものと思われる。(2) なお、本件の原判決は、抵当権者が被担保債権の保全のために所有者の権利を代位行使することができるとしていた。しかしながら、右原判決は、被担保債権の債務者である抵当不動産の所有者の全体的な資力状況を認定判断しておらず、代位の要件として債務者が無資力であることを挙げる従前の議論に依る限り、右の判断には問題があったと考えられる。ヘーー また、抵当権によって優先的に弁済を受ける地位にある債権者が、当該抵当権によって担保される債権の保全のために、当該抵当権の実行の妨げとなる事態の解消を求めるというのは、総債権者のために債務者の財産権につき一定の管理権を発生させるという債権者代位制度の本来の目的とは、そもそもいささか異なるものであったとも見られる(これらの点は、本件の上告理由で指摘されていた。)。加えて、原判決の用いた構成によって対処することができるのは、抵当不動産の所有者が被担保債権の債務者でもある場合に限られる。本判決は、原判決の用いた構成とは異なる構成を採用しているが、その背景には、以上のような事情が存在したものと考えられる。ちなみに、本判決の採用した構成に関しては、原判決摘示に係る当事者の主張中に基本的な要件事実は現れていると見られ、構成の変更につき弁論主義との関係で格別の問題はないと考えられる。
(三) 本判決は、本件においては、抵当権者による所有者の権利の代位行使の結果、抵当権者は、所有者のために抵当不動産を「管理することを目的として」、不法占有者に対して直接抵当権者に抵当不動産を明け渡すよう求めることができるとしている。この点は、平成三年判決では議論の対象となっていなかったところである。(1) 通常の金銭債権の代位行使に関し、代位債権者が代位行使に係る債権の弁済を受けることができるのは、早くから認められていたところである(大判昭10・3・12民集一四巻四八二頁ほか)。これは、債権者代位制度により代位債権者に認められる管理権に基づくものであり、債務者が弁済の受領を拒んだり弁済金を費消してしまったりすることを防ぐ意義があるとされる(注釈民法10・七六三頁(下森定)ほか)。また、債権者代位制度が転用される場合に関しても、借家人が家主に代位して建物の不法占拠者を排除するときには、直接借家人に明渡しを求めることができるとされている(最二小判昭29・9・24民集八巻九号一六五八頁、本誌四四号二一頁ほか)。本判決は、新たな転用類型を認めるに当たり、本件では抵当不動産の所有者の管理能力に問題があるというべきことを踏まえて、右の考え方を応用したものと見られる。もっとも、右転用の趣旨とするところは、飽くまでも、不動産競売手続等の円滑な進行を確保するということにあり、抵当権者において抵当不動産の占有を取得すること自体が目的とされているわけではないことを考慮すると、抵当不動産の所有者に十分な管理能力がある場合を含めて常に抵当権者への明渡しが認められるか否かは、今後の一箇の論点である(本件の上告理由にもこれを指摘する部分がある。なお、前記「特集」二八頁(堀龍兒)参照)。(2) 抵当不動産の明渡しを受けた抵当権者が行う占有は、所有者のために「管理することを目的として」のものであるとされる。債権者代位制度において、代位債権者と債務者との関係は、委任に準ずるものであるとされ(於保不二雄・債権総論(新版)一七三頁ほか)、代位債権者である抵当権者は、本来の権原者に抵当不動産を引き渡すまでの間、善良な管理者の注意をもってこれを管理する義務を負うと考えられる(民法六四四条参照)。ヘーー したがって、抵当不動産につき管理のための占有を開始した抵当権者は、後に当該不動産を不法に占有しようとする者があるときなどは、これを排除する義務を負うと解される。管理に伴う費用は、抵当権者が負担し、後に所有者に償還を請求することになろう(民法六五〇条参照)。(3) 抵当権に対する侵害と評価すべき状態を是正するよう求める請求権を保全することとの関係でいう限り、抵当権者が抵当不動産の明渡しを受けて不法占有者を排除することができた段階で、抵当権者が所有者の権利を代位行使することはその目的を一応達したということができる。少なくとも、抵当権者は、抵当不動産の所有者からその引渡しを求められた場合は、これに応ずる必要があると解される(民法六五一条参照)。もっとも、所有者に「抵当不動産を適切に維持又は保存する」能力が備わっていない場合に、抵当権者が所有者の意思にかかわらずなお管理のための占有を継続することができるか否か、これを肯定するのであればその根拠は何かは、今後検討すべき問題である。いずれにせよ、以上の「いわゆる管理占有」が、抵当不動産を占有するに至った抵当権者に抵当不動産の使用又は収益を行う権原を当然に認める内容のものであると解することは、困難ではないかと考えられる(抵当権者が行う「いわゆる管理占有」については、抵当権者がその名においてする抵当不動産の直接占有であるが、所有の意思をもってするものではなく、専ら所有者のために抵当不動産を維持又は保存する目的のものであって、可能な行為の範囲もこの目的に沿うものに限られると解されよう。)。(4) 抵当権者が管理のために占有する抵当不動産につき民事執行の手続が開始された場合に、執行裁判所等との間にいかなる連携関係を確保することができるかは、今後の重要な課題であると考えられる(石井眞司「競売妨害と抵当権保全判例の動き」金判一〇八一号三頁)。少なくとも、民事執行法上の保全処分や引渡命令に関し、右の抵当権者は、抵当不動産の所有者に準ずる立場にある者として、所有者と同様の規律に服するものと解される。

4 抵当権に基づく妨害排除請求権(物上請求権)について
以上のほか、本判決は、いわゆるなお書きとして、「第三者が抵当不動産を不法占有することにより抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求として、抵当権者が右状態の排除を求めることも許されるものというべきである。」と述べている。右は、本件の訴訟物外の事項であるが、論点が相互に密接に関連するものであることにかんがみ、あえて説示されたものと見られる。いかなる場合に抵当権そのものに基づく妨害排除請求権が認められるかについては、代位請求に関して述べたのと同様の議論が成り立ち得るものと思われる。一方、抵当権に基づく妨害排除請求権の効果の問題は、同請求権固有の論点である。代位請求にあっては、債権者代位制度の内容である管理権に基づいて、代位債権者である抵当権者に対する抵当不動産の明渡しを求めることができるとの結論を、比較的容易に導き出すことができる。これに対して、抵当権に基づく妨害排除請求権にあっては、抵当権者が抵当不動産を占有することが権利の内容として含まれていないことから、右と同様の結論を当然に導き出すことができるか否かについて、問題とすべき余地が残るように思われる。

5 平成三年判決の変更について
本判決は、以上の各点(ただし、本判決における新たな判断事項である3(三)記載の点を除く。)と反する限度において、平成三年判決を変更した。先に述べたとおり、本件のように抵当不動産が不法占有されていること自体による不利益が明らかになっている場合等についての平成三年判決の射程に関しては、議論のあったところである。本件の一、二審判決は、本件のような場合は平成三年判決の射程の外にあると解したものと見られるが、本判決は、右のような処理を採用しなかった。仮に平成三年判決を維持しつつ本件は事案を異にするとして処理がされた場合を想定すると、今回採られた処理は、将来に向かって議論の透明度を高める上で意義があると評価することも考えられよう。

四 他の制度との関係等
本件は、本案の訴訟事件に関するものであったが、今後は、本判決によって認められた実体法上の請求権を被保全権利として、抵当権者が不法占有者等に対して占有移転禁止等の仮処分を申し立てることも、可能となる。もっとも、その場合の保全の必要性をどのように判断するかは、被保全権利の成否の要件いかんとも関連して、問題となり得るところである。
次に、民事執行法上の保全処分との関係についてであるが、本判決の抵当権侵害の成否に関する説示の内容は、右保全処分を不法占有者等に対しても認めるべきであるとしていた見解の考え方に近いものである。先にも述べたように、右見解については、平成三年判決の示した法理との実質上の抵触の有無が問題とされることがあったが、少なくとも、この点は解消されたと解される(今井和男「執行実務の現状と今後の課題」金判一〇七九号二頁、前記「特集」一九頁(今井和男・山崎哲央)ほか)。
今後最も配慮を要するのは、本判決によって認められた方途と、当該抵当不動産に対する民事執行手続との連携の問題であると見られる。本件の事案における不動産競売手続は、平成八年に改正される前の民事執行法の適用に係るものであったが、その後、執行裁判所のコントロールの下に執行妨害を排除することを強化する方向で法律上の手当てが進み、解釈論にも進展が見られる。本判決の示した法理は、個別の債権者が民事執行手続のいわば外側で不法占有を排除することを認めるものであるが、手続の目的である不動産が個別の債権者の管理下にあることによって、かえって手続の障害となる事態が生ずることも、考えられないではない。今後の議論及び運用の動向が注目される。

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・Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定し、AがDに対して、抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的で甲建物を賃貸した。この場合、判例によれば、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態のとき、Cは、抵当権に基づく妨害排除請求権を行使してDに対し直接自己に甲建物の明け渡しを求めることができる!!

+判例(H17.3.10)
1 所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有することにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができる(最高裁平成8年(オ)第1697号同11年11月24日大法廷判決・民集53巻8号1899頁)。そして、抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても、その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができるものというべきである。なぜなら、抵当不動産の所有者は、抵当不動産を使用又は収益するに当たり、抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないからである。
また、抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。
2 これを本件についてみると、前記事実関係によれば、次のことが明らかである。
本件建物の所有者であるA社は、本件抵当権設定登記後、本件合意に基づく被担保債権の分割弁済を一切行わなかった上、本件合意に違反して、B社との間で期間を5年とする本件賃貸借契約を締結し、その約4か月後、B社は上告人との間で同じく期間を5年とする本件転貸借契約を締結した。B社と上告人は同一人が代表取締役を務めており、本件賃貸借契約の内容が変更された後においては、本件賃貸借契約と本件転貸借契約は、賃料額が同額(月額100万円)であり、敷金額(本件賃貸借契約)と保証金額(本件転貸借契約)も同額(1億円)である。そして、その賃料額は適正な賃料額を大きく下回り、その敷金額又は保証金額は、賃料額に比して著しく高額である。また、A社の代表取締役は、平成6年から平成8年にかけて上告人の取締役の地位にあった者であるが、本件建物及びその敷地の競売手続による売却が進まない状況の下で、被上告人に対し、本件建物の敷地に設定されている本件抵当権を100万円の支払と引換えに放棄するように要求した。
以上の諸点に照らすと、本件抵当権設定登記後に締結された本件賃貸借契約、本件転貸借契約のいずれについても、本件抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められるものというべきであり、しかも、上告人の占有により本件建物及びその敷地の交換価値の実現が妨げられ、被上告人の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるということができる。
また、上記のとおり、本件建物の所有者であるA社は、本件合意に違反して、本件建物に長期の賃借権を設定したものであるし、A社の代表取締役は、上告人の関係者であるから、A社が本件抵当権に対する侵害が生じないように本件建物を適切に維持管理することを期待することはできない
3 そうすると、被上告人は、上告人に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、直接自己への本件建物の明渡しを求めることができるものというべきである。被上告人の本件建物の明渡請求を認容した原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。

第4 職権による検討
1 原審は、上告人の占有により本件抵当権が侵害され、被上告人に賃料額相当の損害が生じたとして、前記のとおり、抵当権侵害による不法行為に基づく被上告人の賃料相当損害金の支払請求を認容した。
2 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
抵当権者は、抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではないというべきである。なぜなら、抵当権者は、抵当不動産を自ら使用することはできず、民事執行法上の手続等によらずにその使用による利益を取得することもできないし、また、抵当権者が抵当権に基づく妨害排除請求により取得する占有は、抵当不動産の所有者に代わり抵当不動産を維持管理することを目的とするものであって、抵当不動産の使用及びその使用による利益の取得を目的とするものではないからである。そうすると、原判決中、上記請求を認容した部分は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、破棄を免れない。そして、上記説示によれば、上記請求は理由がないから、これを棄却することとする。
3 また、上記請求と選択的にされている賃借権侵害による不法行為に基づく賃料相当損害金の支払請求については、前記事実関係によれば、本件停止条件付賃借権は、本件建物の使用収益を目的とするものではなく、本件建物及びその敷地の交換価値の確保を目的とするものであったのであるから、上告人による本件建物の占有により被上告人が賃料額相当の損害を被るということはできない。そうすると、第1審判決中、賃借権侵害による不法行為に基づく賃料相当損害金の支払請求を棄却した部分は正当であるから、これに対する被上告人の控訴を棄却することとする。 he–

++解説
3 抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求(いわゆる物上請求)の可否について,最大判平11.11.24民集53巻8号1899頁,判タ1019号78頁(平成11年最判)は,それまでの判例を変更し,「第三者が抵当不動産を不法占有することにより抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権に基づく妨害排除請求として,抵当権者が右状態の排除を求めることも許されるものというべきである。」とし,一般論として,物上請求が可能であることを判示した。もっとも,平成11年最判は,代位請求(抵当権者が所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を所有者に代位して行使する請求)の事案であったために,物上請求の要件・効果等を具体的に判示するものではなく,この点は,後日の判例にゆだねられることとなった。

そして,本件は物上請求の事案として最高裁に係属したものである。本件で問題となる点は,第1に,平成11年最判は,抵当不動産の占有者が全くの無権原者であった事案であり,第三者が抵当不動産を「不法占有」する場合を前提に抵当権に基づく妨害排除請求が可能であることを説示するが,本件のY社は,所有者の使用収益権に由来する転借権を有するとみられる者であり,そのような「有権原占有者」に対する妨害排除請求が可能か否かという点である。無権原占有者であれば,その占有は抵当不動産の所有者の使用収益権行使に基づくとはいえないが,有権原占有者の場合,その占有権原は所有者に由来するものであるから,抵当権が所有者の使用収益を排除することができない権利であることからみて,当然には妨害排除の対象とはならないものということができる。もっとも,平成11年最判以降の学説では,広狭の差はあるが,妨害排除を肯定する見解が多数であった。この点について,本判決は,抵当不動産の所有者は,使用収益に当たり,競売手続を妨害する目的の占有権原を設定をすることは許されないから,有権原占有者であっても,抵当権設定登記後に占有権原が設定され,その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられるなどの状態があるときは,これに対し抵当権に基づく妨害排除請求ができるとし,有権原占有者に対し妨害排除請求ができる場合があることを明らかにし,本件の事案でこれを肯定した。もともと,平成11年最判は,「抵当不動産の所有者は,抵当権に対する侵害が生じないよう抵当不動産を適切に維持管理することが予定されている」と説示していたが,本判決の考え方は,この説示の延長線上にあるものと考えられる。なお,平成11年最判以降の学説においては,有権原であっても抵当権者に対抗できない占有者に対しては,抵当権実行着手後,広く妨害排除請求ができるとする見解が少なからず示されていたが,本判決は,その説示からみて,同見解を採用するものではないと解される(同見解に対しては,民事執行法188条により準用される同法59条2項,46条2項の規定を併せ考えると,抵当不動産の所有者には,抵当不動産が売却されるまでの間「通常の用法に従って」抵当不動産を使用収益することが許されているものと解されることから,同法55条,187条のような特段の規定がなければ,抵当権者は,そのような所有者の通常の用法に従った使用収益の過程で生じた劣後的利用権に基づく抵当不動産の占有に対しては,当然には介入できないのではないかという疑問が残る。八木一洋・平成11年度最判解説(民)(下)847頁参照)。

第2に,平成11年最判は,代位請求において,抵当権者が,不法占有者に対し,抵当不動産を直接抵当権者に明け渡すよう求めることができるとしたが,本件のように物上請求の事案で,そのような直接の明渡しを求めることができるか否かという点が問題となる。平成11年最判の法廷意見は,この点に触れておらず,奥田裁判官補足意見は,この点を「更に検討を要する問題である」としていた。平成11年最判以降の学説は,直接明渡請求を認める見解が多数であるが,抵当権が抵当不動産を占有する権利を包含しない権利であること等から,これを否定する見解もあった。下級審では,東京地判平12.11.14判タ1069号170頁が,長期賃借人に対し,賃貸借契約を解除する判決の確定を条件とする抵当権者への明渡請求を認容していた(1審で確定)。この点について,本判決は,抵当不動産の所有者において抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,直接抵当権者に明け渡すよう求めることができるとし,物上請求においても,代位請求と同様に抵当権者が直接明渡しを請求することができる場合があることを明らかにし,本件の事案でこれを肯定した。これにより,抵当権者が取得する抵当不動産の占有は,抵当不動産の維持管理を目的とする占有(平成11年最判奥田裁判官補足意見が指摘する「管理占有」)となるものと考えられる。

第3に,原審は,抵当権者の賃料相当損害金請求を認容したが,抵当権について,賃料額相当の損害が発生するか否かという点が問題となる。これまで学説及び下級審において,この点を正面から肯定する見解は見当たらないものであった。この点について,本判決は,抵当権者には,抵当不動産の使用収益権がなく,妨害排除請求権行使の結果抵当権者が取得する抵当不動産に対する占有は抵当不動産の使用収益等を目的としない占有であるから,抵当権者は,抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではないとし,原判決中同請求を認容した部分を破棄し,X社の請求を棄却した。この判示は,上記の「管理占有」が抵当不動産の使用収益等を目的としない占有であることを改めて示した点に意味があると考えられるが,これによれば,抵当権者に,抵当不動産の使用収益の妨害を理由とする賃料額相当の損害の発生を肯定することはできないこととなる。もっとも,抵当権に基づく競売手続を妨害する目的を持った抵当不動産の占有は,抵当物そのものを毀損する行為ではないが,抵当権に基づく換価権能の行使を妨害することにより抵当権者に損害を生じさせ得る行為であるということができ,本判決がこの点を否定する趣旨を含むものではないと考えられる。しかし,そのように第三者の占有によって換価権能の行使を妨害されたことにより,抵当権者に,いつ,どのような損害が確定的に生じ,その賠償請求が可能となるのかについては,今後,民事執行手続との関係をも含めて,議論が深められる必要があろう。

・抵当権者の非占有担保としての性質にかんがみると、第三者が抵当不動産を不法占有している場合でも、抵当権者は不動産に対する第三者の占有によって賃料相当額の損害を被るものではない!!

・抵当権者が代価弁済を請求した場合、抵当不動産の第三取得者の意思に反してはその効力は生じない!!=抵当権者と第三取得者との間で合意が必要!!!!
+378条
抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

・代価弁済の効果は、第三取得者との関係で抵当権を消滅させるものにすぎず(378条)、債務者は、第三者が代価弁済した範囲で債務を免れるに過ぎない!!!=被担保債権全額が消滅するわけではない!!

・抵当不動産について地上権、永小作権を取得した者は、抵当権消滅請求をすることができない!!!←379条は「抵当権の第三取得者」としているから!!!
+第379条
抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
+第383条
抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。
1号 取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面
2号 抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)
3号 債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面

・抵当不動産の第三取得者が、抵当権の被担保債権の主たる債務者、保証人及びこれらの承継人である場合には、抵当権消滅請求をすることができない!!!←自ら債務を負担する者が、その債務を弁済しないで抵当権消滅請求ができるとするのは不当!!
+第380条
主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

・抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない(381条)
+第381条
抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。

・譲渡担保権者は、担保権を実行して確定的に抵当不動産の所有権を取得しない限り、379条の抵当権消滅請求権者たる第三取得者には該当しない!!!←譲渡担保による所有権の効力は債権担保の目的を達するのに必要な範囲内においてのみ生じるに過ぎない!!

・抵当権者の順位は、原則として各抵当権者の合意によって変更することができるが、抵当順位の変更は、その登記をしなければその効力を!!!生じない!!!
+第374条
1項 抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2項 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない

・債務者X所有の土地につき第1順位の抵当権者A(債権額2000万)、第2順位の抵当権者B(債権額1000万)、第3順位の抵当権者C(債権額3000万)がおり、抵当権実行の結果、当該土地は4500万で売却された。AからCに抵当権の順位の譲渡がされていた場合、Cが受け取ることのできる配当額は3000万(←3500万円からの)である。
←抵当権の順位の譲渡(376条1項)の場合、AはCの後順位となり、Cは自己の本来の配当額(1500万円)とAの本来の配当額(2000万円)の合計額3500万円から優先弁済を受けることができる!!!
+第376条
1項 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
2項 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。

・同場合に、AからCに対して抵当権の順位の放棄がされていた場合、Cの受けることのできる配当額は、2100万円となる!!!!!
←抵当権の順位の放棄(376条1項)とは、先順位抵当権者から後順位抵当権者に対してなされる先順位たる地位の放棄であり、両者は同順位(←コレ!!)となる!!!!!!AとCは同順位となり、その本来の配当額の合計額(A:2000万 B:1500万の合計額3500万)を両者の債権額に比例して(2000:3000)分配することになる。Cの配当額は2100万円!

・債務者X所有の土地につき第1順位の抵当権者A(債権額2000万)、第2順位の抵当権者B(債権額1000万)、一般債権者C(債権額3000万)がおり、抵当権実行の結果、当該土地は4500万で売却された。AからCに抵当権の放棄がされていた場合、Cが受け取ることのできる配当額は800万である。!!!!!
無担保債権者への抵当権の放棄(376条1項)の場合、抵当権者Aは、無担保債権者Cとの関係でのみ優先権を失う。Aが本来受けることのできた配当分2000万円を(3500万円じゃないよ!!)AC両者の債権額に比例して(2000:3000)分配することになり、Aの受けることのできる配当額は800万円となる!!!!!


民法択一 物権 抵当権 抵当権と用益権の関係


抵当権設定当時において、土地及び建物の所有者が格別である以上、その土地又は建物に対する抵当権の実行による競落の際、たまたま、土地及び建物の所有者が同一の者に帰していたとしても、388条の規定が適用または準用されるいわれはない!!!

+第388条
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

・土地及び地上建物に共同抵当権が設定された後、建物が取り壊されて再築された場合、新建物の所有者が土地の所有者と同一であっても、土地の抵当権が実行されたことにより土地と新建物の所有者を異にするに至ったときに、新建物のために法定地上権が成立しない!!!←①新建物の所有者と土地の所有者が同一であり、かつ、②新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない!
+判例
土地と地上建物を別個の不動産とし、かつ、原則として土地の所有者が自己のために借地権を設定することを認めない我が国の法制上、同一所有者に属する土地又は地上建物に設定された抵当権が実行されて土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合、建物所有者が当該土地の占有権原を有しないことになるとすれば、これは、土地が競売によって売却されても、土地の買受人に対して土地の使用権を有しているものとする建物の所有者や土地の使用権があるものとして建物について担保価値を把握しているものとする抵当権者の合理的意思に反する結果となる。そこで、民法三八八条は、右合理的意思の推定に立って、このような場合には、抵当権設定者は競売の場合につき地上権(以下「法定地上権」という。)を設定したものとみなしているのである。その結果、建物を保護するという公益的要請にも合致することになる
それゆえ、土地及び地上建物の所有者が土地のみに抵当権を設定した場合建物のために地上権を留保するのが抵当権設定当事者の意思であると推定することができるから、建物が建て替えられたときにも、旧建物の範囲内で法定地上権の成立が認められている(大審院昭和一〇年(オ)第三七三号同年八月一〇日判決・民集一四巻一七号一五四九頁参照)。
また、所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した場合、抵当権者はこれにより土地及び建物全体の担保価値を把握することになるが、右建物が存在する限りにおいては、右建物のために法定地上権の成立を認めることは、抵当権設定当事者の意思に反するものではない(最高裁昭和三五年(オ)第九四一号同三七年九月四日第三小法廷判決・民集一六巻九号一八五四頁参照。なお、この判決は、所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した場合、民法三八八条の適用があるとするが、これは、抵当権設定当時の建物が存続している事案についてのものである。)。

これに対し、所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。!!!
けだし、土地及び地上建物に共同抵当権が設定された場合、抵当権者は土地及び建物全体の担保価値を把握しているから、抵当権の設定された建物が存続する限りは当該建物のために法定地上権が成立することを許容するが、建物が取り壊されたときは土地について法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが、抵当権設定当事者の合理的意思であり!!、抵当権が設定されない新建物のために法定地上権の成立を認めるとすれば、抵当権者は、当初は土地全体の価値を把握していたのに、その担保価値が法定地上権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限定されることになって、不測の損害を被る結果になり、抵当権設定当事者の合理的な意思に反するからである。なお、このように解すると、建物を保護するという公益的要請に反する結果となることもあり得るが、抵当権設定当事者の合理的意思に反してまでも右公益的要請を重視すべきであるとはいえない。

ムムムムム!!?!?!?

++解説・・・。
法定地上権の制度趣旨は、公益上建物を保護するとともに、建物に抵当権が設定されるときは、建物競落人のために土地の利用権を与える意思を、土地に抵当権が設定されるときには、設定者のために地上権を留保する意思をそれぞれ推定して、この意思を実現させようとしたものとされる。本件では、形式的には、抵当権設定時に土地上に建物が存在したが、抵当権の実行時における建物が旧建物の滅失後に再築された新建物であるため、法定地上権の成立を認めると抵当権者の当初の予測を害し、損害を及ぼすことにならないかである。

歴史・・・
土地のみに抵当権が設定されたが、その後、旧建物が取り壊されて新建物が建築された事案について、大判昭10・8・10民集一四巻一五四九頁は、原則として旧建物を基準とする法定地上権が成立するとした。さらに、土地建物に共同抵当権が設定された後、旧建物が焼失したため、妻名義で右土地上に新建物が建築された事案について、大判昭13・5・25民集一七巻一一〇〇頁は、新建物のために法定地上権が成立するとした。通説(我妻栄・新訂担保物権法三五三頁、高木多喜男・担保物権法〔新版〕二〇〇頁等)は、右判例を支持し、法定地上権の成立を肯定した。そして、その後、後掲東京地判平4・6・8執行処分までの間、東京地判昭46・7・20金法六二七号三七頁、名古屋高決昭60・1・24本誌五五〇号一六五頁、判時一一五五号二七一頁が新建物のための法定地上権の成立を否定するとしたほかは、法定地上権の成立を肯定するのが下級審の大勢(東京地判昭53・3・31本誌三六九号二三一頁、京都地判昭60・12・26金法一一三一号四五頁、東京高決昭63・2・19判時一二六六号二五頁、大阪高判昭63・2・24本誌六七四号二二二頁、判時一二八五号五五頁等)であった。ところが、東京地裁執行部は、平成4年6月8日、不動産執行について、原則として、新建物のために法定地上権は成立しない取扱いにすることを明言した(東京地裁執行処分平4・6・8本誌七八五号一九八頁、金法一三二四号三六頁)!!ナント。これがいわゆる「全体価値考慮説」といわれるものである(これに対し、従来の判例学説の立場を「個別価値考慮説」といわれる。)。そして、右執行処分以後、東京地裁においては、同様の決定例が出された(東京地決平4・3・10金法一三二〇号七二頁、東京地決平5・1・18金法一三五二号七七頁、東京地決平5・3・26判時一四五五号一一七頁、東京地判平5・10・27金法一三七八号一三七頁等)。また、右執行処分を契機として、法定地上権の成否について活発な議論が生じることになったが、大阪地裁においては、統一見解ではないとしながらも、個別価値考慮説を維持し、法定地上権の成立を肯定する旨が明らかにされた(富川照雄「民事執行における保全処分の運用」本誌八〇九号九頁)。

三 全体価値考慮説は、同一所有者に属する土地建物について共同抵当権の設定を受けた債権者としては、土地の交換価値のうち、法定地上権に相当する部分については、建物抵当権を実行して法定地上権付建物の売却代金から回収し、また、法定地上権の負担付土地価額は土地抵当権実行により回収し、いずれにしても債権者としては、土地の交換価値の全体を把握していることを重視し、建物が滅失し再築された場合にもこの点を強調し、法定地上権の成立を肯定すると、建物が滅失したため建物抵当権を実行することができず、土地の交換価値のうち法定地上権に相当する担保価値の回収を実現することができなくなる結果を招来し不合理であるとして、このような場合には法定地上権の成立は否定されるべきであるとする(前掲東京地裁執行処分平4・6・8、浅生重機=今井隆一「建物の建替えと法定地上権」金法一三二六号六頁等)。
これに対し、個別価値考慮説は、法定地上権の成否は土地建物に抵当権が設定された当時を基準とし、土地抵当権は建物の法定地上権を控除した価値をもって担保の目的としたものである以上、土地又は建物の一方のみが競売に付されたときは、土地抵当権については法定地上権の価値を控除した交換価値を実現すれば足り、新建物のために法定地上権の成立を認めても、地上権の内容を旧建物を基準として定める限り、土地抵当権を侵害することはないとする(富川・前掲論文、高木多喜男「共同抵当における最近の諸問題」金法一三四九号六頁等)。

四 以上のような学説の対立の中、本判決は、法定地上権の成否は抵当権設定当事者の合理的意思解釈によるべきであり土地のみに抵当権を設定した場合と土地建物に共同抵当権を設定した場合とでは、抵当権設定当事者の意思は異なり、後者の場合において建物が建て替えられたときは、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないとする全体価値考慮説を採用し、その限りで従来の判例である前記大判昭13・5・25を変更することにして、上告を棄却した。
ムーー

・法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するものであって、抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として388条の適用がないとしたうえで、抵当権者が建物の築造をあらかじめ承認した事実があっても、土地を更地として評価したことが明らかであるとの事情の下では、法定地上権は成立しない!!

・他の共有者の同意を得て共有地の上に建物を所有している共有者が、その持分権につき抵当権を設定した事案において、たまたま土地共有者の1人だけについて388条により地上権を設定したものとみなすべき事情が生じたとしても、他の共有者の意思にかかわらずその者の持分を無視して、当該共有地に地上権を設定したとみなすべきではない!!!!!!!ヘー
+まずは原判決から
原判決が、所論のごとく「元来土地の共有者は、自己の持分権の上に全部の占有支配を伴う地上権を設定することはできないものと解すべきであるが、他の共有者の同意があれば共有地の上にかような物権を設定し得るものであることは民法二五一条の規定上是認しなければならないところであるから、かような場合には土地利用の経済的目的からいえば、土地の単独所有の場合と異なるところがないものといわなければならない」と判示しながら、『したがつて、他の共有者の同意を得て共有地の上に建物を所有している共有者がその持分権につき、抵当権を設定した場合に、その共有者に属する持分権が抵当権の実行により競売に付され、これによつて、その権利を取得した者があるときは、抵当権設定者である共有者は、土地の単独所有者の場合におけると同様民法三八八条の規定の趣旨により建物のため共有地につき地上権を設定したものと看做されるものと解するを相当とする。尤も右の場合において他の共有者は単に抵当権を設定した共有者のため建物を所有することに同意したに過ぎないものではあるが、建物の存在を完うさせようとする国民経済上の必要上認められた同条の立法趣旨より考えれば、右の場合は土地の単独所有者がその土地上に建物を所有している場合と区別するの理由がないものといわなければならない。」と判示したことは、所論のとおりである。

しかし、元来共有者は、各自、共有物について所有権と性質を同じくする独立の持分を有しているのであり、しかも共有地全体に対する地上権は共有者全員の負担となるのであるから、共有地全体に対する地上権の設定には共有者全員の同意を必要とすること原判決の判示前段のとおりである。換言すれば、共有者中一部の者だけがその共有地につき地上権設定行為をしたとしても、これに同意しなかつた他の共有者の持分は、これによりその処分に服すべきいわれはないのであり、結局右の如く他の共有者の同意を欠く場合には、当該共有地についてはなんら地上権を発生するに由なきものといわざるを得ないのである。そして、この理は民法三八八条のいわゆる法定地上権についても同様であり偶々本件の如く、右法条により地上権を設定したものと看做すべき事由が単に土地共有者の一人だけについて発生したとしても、これがため他の共有者の意思如何に拘わらずそのものの持分までが無視さるべきいわれはないのであつて、当該共有土地については地上権を設定したと看做すべきでないものといわなければならない。しかるに、原審は右と異なる見解を採り、根拠として民法三八八条の立法趣旨を援用しているのであるが首肯し難い。けだし同条が建物の存在を全うさせようとする国民経済上の必要を多分に顧慮した規定であることは疑を容れないけれども、しかし同条により地上権を設定したと看做される者は、もともと当該土地について所有者として完全な処分権を有する者に外ならないのであつて、他人の共有持分につきなんら処分権を有しない共有者に他人の共有持分につき本人の同意なくして地上権設定等の処分をなし得ることまでも認めた趣旨でないことは同条の解釈上明白だからである。それ故原審の見解はその前段の判示とも矛盾するものというべく是認できない。

+第251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
+変更行為
共有物の性質もしくは形状又はその両者を変更すること。
=物理的変化を伴う行為トカ法律的に処分する行為トカ

・ABが土地を共有し、土地上の建物をACが共有していた場合、ABがAの債務を担保するためその土地の各持分に共同して抵当権を設定し、子の抵当権が実行されDが土地を買い受けた場合、建物のために法定地上権は成立しない!!!!!!!!←土地共有者の1人だけについて388条本文により地上権を設定したものとみなすべき事由が生じたとしても、他の共有者らが法定地上権の発生をあらかじめ認容していたとみることができるような特段の事情がある場合でない限り、共有土地について法定地上権は成立しないとした。そのうえで、地上建物の共有者の1人に過ぎない土地共有者の債務を担保するために、土地共有者の全員が共同して各持分に抵当権を設定したとの事情により、法定地上権の発生をあらかじめ認容していたとみることはできない。!!!!!ソウナンダ。
+判例
共有者は、各自、共有物について所有権と性質を同じくする独立の持分を有しているのであり、かつ、共有地全体に対する地上権は共有者全員の負担となるのであるから、土地共有者の一人だけについて民法三八八条本文により地上権を設定したものとみなすべき事由が生じたとしても、他の共有者らがその持分に基づく土地に対する使用収益権を事実上放棄し、右土地共有者の処分にゆだねていたことなどにより法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることができるような特段の事情がある場合でない限り、共有土地について法定地上権は成立しないといわなければならない
+あてはめ
これを本件についてみるのに、原審の認定に係る前示事実関係によれば、本件土地の共有者らは、共同して、本件土地の各持分について被上告人Aを債務者とする抵当権を設定しているのであり、A以外の本件土地の共有者らはAの妻子であるというのであるから、同人らは、法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとも考えられる。
しかしながら、土地共有者間の人的関係のような事情は、登記簿の記載等によって客観的かつ明確に外部に公示されるものではなく、第三者にはうかがい知ることのできないもの!!であるから、法定地上権発生の有無が、他の土地共有者らのみならず、右土地の競落人ら第三者の利害に影響するところが大きいことにかんがみれば、右のような事情の存否によって法定地上権の成否を決することは相当ではない。!!!そうすると、本件の客観的事情としては、土地共有者らが共同して本件土地の各持分について本件建物の九名の共有者のうちの一名である被上告人Aを債務者とする抵当権を設定しているという事実に尽きるが、このような事実のみから被上告人A以外の本件土地の共有者らが法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることはできない。
けだし、本件のように、九名の建物共有者のうちの一名にすぎない土地共有者の債務を担保するために他の土地共有者らがこれと共同して土地の各持分に抵当権を設定したという場合、なるほど他の土地共有者らは建物所有者らが当該土地を利用することを何らかの形で容認していたといえるとしても、その事実のみから右土地共有者らが法定地上権の発生を容認していたとみるならば、右建物のために許容していた土地利用関係がにわかに地上権という強力な権利に転化することになり、ひいては、右土地の売却価格を著しく低下させることとなる!!!のであって、そのような結果は、自己の持分の価値を十分に維持、活用しようとする土地共有者らの通常の意思に沿わないとみるべきだからである。!!!また、右の結果は、第三者、すなわち土地共有者らの持分の有する価値について利害関係を有する一般債権者や後順位抵当権者、あるいは土地の競落人等の期待や予測に反し、ひいては執行手続の法的安定を損なうものであって、許されないといわなければならない。

・抵当権設定当時、建物についての所有権移転登記が経由されておらず、前主名義のままであっても、土地の買受人は、法定地上権の成立を否定することはできない!!
+判例
土地とその地上建物が同一所有者に属する場合において、土地のみにつき抵当権が設定されてその抵当権が実行されたときは、たとえ建物所有権の取得原因が譲渡であり、建物につき前主その他の者の所有名義の登記がされているままで、土地抵当権設定当時建物についての所有権移転登記が経由されていなくとも、土地競落人は、これを理由として法定地上権の成立を否定することはできないものと解するのが相当である。その理由は、つぎのとおりである。
民法三八八条本文は、「土地及ヒ其上ニ在スル建物カ同一ノ所有者ニスル場合ニ於テ其土地又ハ建物ノミヲ抵当ト為シタルトキハ抵当権設定者ハ競売ノ場合ニ付キ地上権ヲ設定シタルモノト看做ス」と規定するが、その根拠は、土地と建物が同一所有者に属している場合には、その一方につき抵当権を設定し将来土地と建物の所有者を異にすることが予想される場合でも、これにそなえて抵当権設定時において建物につき土地利用権を設定しておくことが現行法制のもとにおいては許されないところから、競売により土地と建物が別人の所有に帰した場合は建物の収去を余儀なくされるが、それは社会経済上不利益であるから、これを防止する必要があるとともに、このような場合には、抵当権設定者としては、建物のために土地利用を存続する意思を有し、抵当権者もこれを予期すべきものであることに求めることができる。してみると、建物につき登記がされているか、所有者が取得登記を経由しているか否かにかかわらず、建物が存立している以上これを保護することが社会経済上の要請にそうゆえんであつて、もとよりこれは抵当権設定者の意思に反するものではなく、他方、土地につき抵当権を取得しようとする者は、現実に土地をみて地上建物の存在を了知しこれを前提として評価するのが通例であり、競落人は抵当権者と同視すべきものであるから、建物につき登記がされているか、所有者が取得登記を経由しているか否かにかかわらず、法定地上権の成立を認めるのが法の趣旨に合致するのである。このように、法定地上権制度は、要するに存立している建物を保護するところにその意義を有するのであるから、建物所有者は、法定地上権を取得するに当たり、対抗力ある所有権を有している必要はないというべきである。

・土地と建物を所有する者が土地に抵当権を設定した後に建物を第三者に売り渡した場合にも388条が適用され、法定地上権は成立しする。

・XYが乙建物を共有し、その敷地である甲土地をXが単独で所有する場合において、Xが甲土地に抵当権を設定し、その実行によりZが甲土地を買い受けたときは、乙土地のために法定地上権が成立する!!
+判例
建物の共有者の一人がその建物の敷地たる土地を単独で所有する場合においては、同人は、自己のみならず他の建物共有者のためにも右土地の利用を認めているものというべきであるから、同人が右土地に抵当権を設定し、この抵当権の実行により、第三者が右土地を競落したときは、民法三八八条の趣旨により、抵当権設定当時に同人が土地および建物を単独で所有していた場合と同様、右土地に法定地上権が成立するものと解するのが相当である。

・甲土地を目的とする先順位抵当権が設定された当時、甲土地・甲土地上の乙建物の所有者はそれぞれX・Yであった。その後、乙建物についてもXが所有権を取得し、さらに甲土地に後順位抵当権が設定された。その後、先順位抵当権が抵当権設定契約の解除により消滅した場合、後順位抵当権の実行により甲土地・乙建物の所有権者がZ・Xとなったときは、乙建物のために法定地上権が成立する!!
+判例
土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立するというべきである。その理由は、次のとおりである。
上記のような場合、乙抵当権者の抵当権設定時における認識としては、仮に、甲抵当権が存続したままの状態で目的土地が競売されたとすれば、法定地上権は成立しない結果となる(前掲平成2年1月22日第二小法廷判決参照)ものと予測していたということはできる。しかし、抵当権は、被担保債権の担保という目的の存する限度でのみ存続が予定されているものであって、甲抵当権が被担保債権の弁済、設定契約の解除等により消滅することもあることは抵当権の性質上当然のことであるから、乙抵当権者としては、そのことを予測した上、その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益とを考慮して担保余力を把握すべきものであったというべきである。したがって、甲抵当権が消滅した後に行われる競売によって、法定地上権が成立することを認めても、乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえない。そして、甲抵当権は競売前に既に消滅しているのであるから、競売による法定地上権の成否を判断するに当たり、甲抵当権者の利益を考慮する必要がないことは明らかである。そうすると、民法388条が規定する「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する」旨の要件(以下「同一所有者要件」という。)の充足性を、甲抵当権の設定時にさかのぼって判断すべき理由はない。 !!!
民法388条は、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その抵当権の実行により所有者を異にするに至ったときに法定地上権が設定されたものとみなす旨定めており、競売前に消滅していた甲抵当権ではなく、競売により消滅する最先順位の抵当権である乙抵当権の設定時において同一所有者要件が充足していることを法定地上権の成立要件としているものと理解することができる。原判決が引用する前掲平成2年1月22日第二小法廷判決(↓で扱うよ^^)は、競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に、その中の最先順位の抵当権の設定時を基準として同一所有者要件の充足性を判断すべきことをいうものであり、競売前に消滅した抵当権をこれと同列に考えることはできない。

+理由をまとめると・・・
理由として,①乙抵当権者としては,甲抵当権が消滅することもあることを予測した上,その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益を考慮して担保余力を把握すべきものであり,法定地上権の成立を認めても乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえないこと,②本件では甲抵当権は既に消滅しているのであるから,その利益を考慮する必要はなく,同一所有者要件の充足性を甲抵当権の設定時に遡って判断すべき理由はないこと,③民法388条の文言からは,競売により消滅する抵当権の設定時を基準に同一所有者要件を要求していると理解されること,④平成2年最判は,競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に,その中の最先順位の抵当権の設定時を基準として同一所有者要件の充足性を判断すべきことをいうものであり,競売前に消滅した抵当権をこれと同列に考えることはできないことを挙げている。

・甲土地、甲土地上の乙建物の所有者がX・Yである時点で、甲土地に先順位抵当権が設定された。その後、甲土地及び乙建物がXに属するに至り、さらに甲土地に後順位抵当権が設定された場合、抵当権実行により一番抵当権が消滅するときは法定地上権は成立しない。
+判例(H2.1.22)
土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。
けだし、民法三八八条は、同一人の所有に属する土地及びその地上建物のいずれか又は双方に設定された抵当権が実行され、土地と建物の所有者を異にするに至った場合、土地について建物のための用益権がないことにより建物の維持存続が不可能となることによる社会経済上の損失を防止するため、地上建物のために地上権が設定されたものとみなすことにより地上建物の存続を図ろうとするものであるが、土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていない場合には、一番抵当権者は、法定地上権の負担のないものとして、土地の担保価値を把握するのであるから、後に土地と地上建物が同一人に帰属し、後順位抵当権が設定されたことによって法定地上権が成立するものとすると、一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることになるからである。なお、原判決引用の判例(大審院昭和一三年(オ)第二一八七号同一四年七月二六日判決・民集一八巻七七二頁、最高裁昭和五三年(オ)第五三三号同年九月二九日第二小法廷判決・民集三二巻六号一二一〇頁)は、いずれも建物について設定された抵当権が実行された場合に、建物競落人が法定地上権を取得することを認めたものであり、建物についてはこのように解したとしても一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることにはならないから、土地の場合をこれと同視することはできない。

・建物のために法定地上権が成立した後、当該建物を譲り受けた者は、前主の未払い地代を当然には負担しない!!!!
+判例(H3.10.1)の解説
地上権は地代を要素としないが、合意で有償とすることができる。そして、有償とされた場合に、地代支払を基礎づける合意(債権契約)が対抗要件を具備するときは(必ずしも地代の登記を要しないとするのは、注釈民法(7)四二一頁〔鈴木禄弥〕)、地上権の移転と共に右契約関係も地上権に付随して承継されることになる。したがって、新地上権者は有償地上権を取得し、その後の地代支払債務を負担することになる(我妻=有泉・新訂物権法三七五頁、船橋・物権法四〇五頁、広中・物権法四五六頁、注釈民法(7)四二二頁〔鈴木禄弥〕等)。また、有償地上権は二年の地代不払で消滅請求の対象となるが(民法二六六条、二七六条)、これは物権としての地上権の内容であるから前主が地代滞納後に建物を譲渡しても、地主(設定者)の請求権に消長をもたらすものではなく、新旧両地上権者の滞納期間が通じて二年を超えるときは、右消滅請求が可能となる(大判大3・5・9民録二〇輯三七三頁、大判大12・1・23法律評論二六巻上二九七頁)。このように消滅請求の要件との関係では前主の滞納の結果を引き継ぐことになる!!!!が、前主について生じた未払地代債務は独立に処分の対象となる金銭債務であるから、債務引受でもしない限り、新地上権者が当然に右債務を承継するということにはならない。!!なお、既に二年分の地代滞納がある場合に消滅請求の行使を妨げるために、新地上権者は、前主の債務を弁済することに利害関係を有するといえよう(民法四七四条二項)。フムフム!

法定地上権は、競売によって土地と建物の所有権が異なることによって当然に成立する地上権であり、無償とする合意がない限り、原則として有償である(民法三八八条但書)!!!。そして、法定地上権の成立後に合意又は裁判によって地代が確定されたときは、法定地上権の発生の時から地代支払義務が生じていたものとされる(大判大5・9・20民録二二輯一八一三頁、大判昭14・11・25民集一八巻一四七一頁、我妻・新訂担保物権法三六九頁)。ヘーー
そして、地上権の発生時の当事者間での協定又は裁判(民法三八八条但し書)によって原始地代が確定した後の地代の増減は、借地法一二条の規定によってされることになる。すなわち、本件では、債務者とXとの間で原始地代を確定すべく(民法三八八条但し書)、Yとの間ではその増減を求めるべきであって、Yが支払義務を負担しない債務者の地代額を確定する必要はない(Yとの間で確定しても前主を拘束する根拠はない。)。なお、原始地代はその客観的金額の範囲において法定地上権の成立の時に発生していたのであるから、Yに対する地代額を算定するために原始地代の鑑定評価をすることが妨げられるものではなく、前主に対する原始地代の確定がされていないことが、Yに対する請求の妨げとなるものでもない。

・法定地上権の存続期間について当事者の間で協議が調わなかった場合は、その存続期間は30年となる。←法定地上権には借地借家法3条本文が適用されるとしている!
+借地借家法第3条  
借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

・法定地上権の取得も原則として、登記なくして第三者に対抗することはできない(177条)。ただし、借地借家法の適用があるので、土地の上に法定地上権者、借地権者が登記されている建物を所有するときは、第三者に対抗することができる(借地借家法10条1項)!!!
+借地借家法第10条
1項 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2項 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
3項 民法(明治29年法律第89号)第566条第1項 及び第3項 の規定は、前2項の規定により第三者に対抗することができる借地権の目的である土地が売買の目的物である場合に準用する。
4項 民法第533条 の規定は、前項の場合に準用する。

・土地に抵当権が設定された当時、その土地に建物が築造されていた場合、その建物の所有者が、その土地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有しないとしても、抵当権者は、土地と共に建物を競売することはできない!!!←一括競売(389条1項)は「抵当権設定後」に建物が築造された場合ににみ認められる!!
+第389条
1項 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる
2項 前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない

・抵当権設定者自身が築造した建物に限らず、第三者が築造した建物であっても、一括競売の対象とされている(389条1項本文)。

・優先権は土地の代価についてのみ行使することができる(389条1項ただし書き)!!!!

・抵当権が設定された建物を、抵当権者に対抗することができない賃貸借に基づいて使用する者は、競売手続開始前から使用していれば、競売によりその建物を買受人が買い受けたときから6か月を経過するまでは、その建物の買受人への引き渡しを猶予される(395条1項1号)!!!←保護すべき賃借人に合理的な範囲で確実な保護を与えるため!
+第395条
1項 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
競売手続の開始前から使用又は収益をする者
二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
2項 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

・抵当権設定登記後に抵当不動産を賃借した者が、その賃借権を抵当権者に対抗するためでは、抵当権者以外の者の承諾が必要な場合がある!
+第387条
1項 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
2項 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。←コレ!

・BがA所有の甲建物についてAから第1順位の抵当権の設定を受けてその登記を備え、続けてDが甲建物についてAから第2順位の抵当権の設定を受けて登記を備えた後に、CがAから甲建物を賃借し登記を備えた場合、BDが同意しただけでは、CはBDに対して甲建物の賃借権を対抗できない!!←同意の登記も必要!!!


民法択一 物権 抵当権 抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲


・果実に対する抵当権の効力は、被担保債権について不履行があった後に生じたものについて及ぶ(371条)。=差押えうんぬんは関係ない!!!!!。

・抵当権の効力は、抵当権設定時に存在した従物に及ぶ!!=87条2項に照らし、抵当権の効力は、反対の意思表示がない限り、抵当権設定当時建物の常用のために附属させていた債務者所有の動産に及ぶ!

・ガソリンスタンドの店舗用建物に設定された抵当権の効力は、抵当権設定当時に備え付けられていた地下タンクにも及ぶ!←地下タンクは借地上の建物の従物に当たるから。

・建物を所有するために必要な敷地の借地権は、建物所有権に付随し、これと一体となって一つの財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の借地権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含される!!!
+判例
土地賃借人の所有する地上建物に設定された抵当権の実行により、競落人が該建物の所有権を取得した場合には、民法六一二条の適用上賃貸人たる土地所有者に対する対抗の問題はしばらくおき、従前の建物所有者との間においては、右建物が取毀しを前提とする価格で競落された等特段の事情がないかぎり、右建物の所有に必要な敷地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。
けだし、建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となつて一の財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきであるからである。
したがつて、賃貸人たる土地所有者が右賃借権の移転を承諾しないとしても、すでに賃借権を競落人に移転した従前の建物所有者は、土地所有者に代位して競落人に対する敷地の明渡しを請求することができないものといわなければならない。
++・・・。まあ、抵当権実行としての競売がされたときに当該敷地賃借権が当然に移転するわけではなく、賃借権の譲渡には地主の承諾又は承諾にかわる裁判所の許可(借地借家20条)が必要!

・宅地に抵当権が設定されている場合、設定前から宅地上に存する植木や取り外し困難な庭石には、抵当権の効力が及ぶ!!←宅地の構成部分だから!
+判例
本件石灯籠および取り外しのできる庭石等は本件根抵当権の目的たる宅地の従物であり、本件植木および取り外しの困難な庭石等は右宅地の構成部分であるが、右従物は本件根抵当権設定当時右宅地の常用のためこれに付属せしめられていたものであることは、原判決の適法に認定、判断したところである。そして、本件宅地の根抵当権の効力は、右構成部分に及ぶことはもちろん、右従物にも及び(大判大正八年三月一五日、民緑二五輯四七三頁参照)、この場合右根抵当権は本件宅地に対する根抵当権設定登記をもつて、その構成部分たる右物件についてはもちろん、抵当権の効力から除外する等特段の事情のないかぎり、民法三七〇条により従物たる右物件についても対抗力を有するものと解するのが相当である。

++従物
①継続的に主物の効用を助けること
②主物に付属すると認められる程度の場所的関係にあること。
③主物と同一の所有者に属すること
独立性を有すること
←ここが付加一体物と一番違う

・雨具や建物の入り口の扉等建物の内外を遮断する建具類は、建物に備え付けられると、建物の一部を構成し、取り外しが容易であるかにかかわらず独立の動産たる性質を失い、付加一体物となる。

・抵当権の付加物が分離された場合、分離物が抵当不動産の上に存在し、登記の衣に包まれている限り、第三者に対抗できるという見解によれば、分離物が搬出され、第三者がその占有を取得したときは、当該分離物に対しては抵当権の効力は及ばない!

・抵当権の付加物が分離された場合、分離物が第三者に即時取得されるまでは、第三者に対抗できるという見解によれば、分離物が搬出され、第三者が物の占有を取得した場合でも、即時取得(192条)の要件を満たさないときは、抵当権の効力は依然として及んでいる!

・互いに主従関係にない2棟の建物が、工事により1棟の建物となった場合でも、これにより従来の建物に設定されていた抵当権が消滅することはなく、当該抵当権は、完成した建物のうち、従来の建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する!!!!!←従来の建物の価値は完成建物の価値の一部として存続しているため、不動産の価値を把握することを内容とする抵当権は、従来の建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する!!
+判例について
本判決は、(1) 甲乙不動産を各別の者が所有している場合には、主従関係のない動産の附合に関する民法二四四条の類推適用により、甲乙建物の各所有者は、甲乙建物の各価格の割合に応じて丙建物を共有し、甲乙建物に抵当権が存在したときは、民法二四七条二項の類推適用により、その抵当権は対応する共有持分上に移行して存続する、
(2) 甲乙建物が同一所有者に属し、抵当権の目的となっている場合には混同に関する民法一七九条一項ただし書きの規定を準用ないしは類推して、丙建物の所有権は、甲建物の価格に応じた共有持分と乙建物の価格に応じた共有持分とが融合することなく存続し、旧建物抵当権はこれに対応する持分上に移行して存続する!!、との考え方に依拠するものであろうかと思われる。

+第244条
付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。
+第247条
1項 第242条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。
2項 前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する
+第179条
1項 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない
2項 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
3項 前二項の規定は、占有権については、適用しない。

・抵当権の実行に着手する前に、抵当目的物である家屋が崩壊して動産になった場合、抵当権は消滅する(笑)!!

・抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、賃借人が取得すべき転貸借料債権について物上代位権を行使することはできない!!
+判例
民法三七二条によって抵当権に準用される同法三〇四条一項に規定する「債務者」には、原則として、抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれないものと解すべきである。
けだし、所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し、抵当不動産の賃借人は、このような責任を負担するものではなく、自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはないからである。同項の文言に照らしても、これを「債務者」に含めることはできない。また、転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると、正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。もっとも、所有者の取得すべき賃料を減少させ、又は抵当権の行使を妨げるために、法人格を濫用し、又は賃貸借を仮装した上で、転貸借関係を作出したものであるなど、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には、その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべきものである。

++この判決に至るまでの考え方
民法三〇四条は、先取特権の「目的物ノ売却、賃貸、滅失又ハ毀損」により「債務者カ受クヘキ金銭其他ノ物」に対しても先取特権を行使することができるとしている。先取特権の目的物から生じた債務者(目的物所有者)が受けるべき給付である限り、これに先取特権を行使されても、債務者は、反面において、自己の物的責任の一部を免れる関係にあり、一定の合理性がある。
同条は、抵当権にも準用される(同法三七二条)が、物上代位を認める理由として価値権説(価値代替物に対する代位)による説明が主流であった(我妻榮・新訂担保物権法)。しかし、賃料は、抵当不動産の元本価値とは異なる法定果実であって、目的物の滅失、毀損によって受ける金銭等のような価値代替物とはやや性質を異にすることから、物上代位の本質と関連して、抵当権に基づく賃料債権に対する物上代位の可否をめぐって論争が展開された(小田原満知子・平1最判解説(民)三五四頁)。
そして、価値権説の立場からは、賃料は抵当権の把握した交換価値の一部の具体化であること(担保価値のなし崩し的実現)が根拠とされ、他方、特権説の立場からは、先取特権におけるような担保権の政策的拡大という説明が弱いこともあって、物権法定主義の原則から、抵当権の効力についてできるだけ民法の条文に忠実に解釈すべきであるとの立場から文理解釈を重視する見解(物権説)による補強がされることとなった。そのような中、最二小判平1・10・27民集四三巻九号一〇七〇頁、本誌七一七号一〇六頁は、抵当不動産が賃貸された場合においては、抵当権者は、民法三七二条、三〇四条の規定の趣旨に従い、賃借人が供託した賃料の還付請求権についても物上代位することができるとして、賃借権設定と抵当権設定との先後に関係なく物上代位を認める肯定説を採ることを明らかにし、この問題に決着をつけた。
右判決後、抵当権に基づき賃料債権に対して物上代位権を行使する例が増加したといわれる。それには、不動産不況下において、不動産の競売によるよりも、賃料債権に対して物上代位権を行使することによって債権の回収を図る方が簡便であるという事情もあった。これに対しては、物上代位を回避するため、転貸借を仮装する者も出現し、賃料債権に対する物上代位の実効性が得られなくなる事態も生じた。そこで問題になったのは、転貸賃料債権に対して物上代位ができるかである(これが本件の争点でもある。)。

+++本決定の詳しい解説
民法三〇四条の「債務者」について、担保権の実行によってその所有物の交換価値を担保権者の優先弁済に供する責任(物的責任)を負う者、すなわち、目的物の交換価値が帰属する者であるとの理解!!!に立って(賃料は厳密には目的物の交換価値の代替物とはいえないが、政策的見地に基づき、民法三〇四条が「債務者」の取得すべき収益(賃料)にまで物上代位の対象を拡張した。)、抵当不動産の所有者や第三取得者は、物的責任を負い、賃料に対して物上代位がされた場合にそれだけ物的責任が軽減されるが、賃借人は、物的責任を負う者ではないという相違があることから、賃借人は「債務者」に当たらないとした。また、物上代位を回避する手段として転貸借が行われる場合(本決定のいう「所有者の取得すべき賃料を減少させ、又は抵当権の行使を妨げるために、法人格を濫用し、又は賃貸借を仮装した上、転貸借関係を作出したものであるなど、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合」)がある反面、正常な取引に基づき転貸借が成立する場合もあり、後者の場合の賃借人を保護する必要があった。他方、前者の場合の賃借人は、民法三〇四条の「債務者」に準ずる者として、転貸賃料債権に対する物上代位を認めても差し支えないとしたのである。これは、「所有者と同視することを相当とする場合」は、貸賃料債権に対する物上代位を認める根拠として信義則や権利の濫用に置くのとは異なると思民法三〇四条の「債務者」に準ずる場合であるから、同条を根拠に物上代位を認めるのであって、執行妨害等要件説が執行妨害等の場合に転われる。そして、「所有者と同視することを相当とする場合」とは、「所有者と同視することができる場合」よりは広く物上代位を認めようとしたものと思われるが、所有者と同視することができなければ、「債務者」にはならないであろうから、それほどの相違はないであろう。

+372条
第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。

+304条
1項 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2項 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

・賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡された場合においては、目的物の返還時に残存する賃料債権等は敷金が存在する限度において敷金の充当により当然に消滅するのであり、このことは、明渡前に賃料債権に対する物上代位権行使としての差押えがあった場合も同様!!

+判例
賃貸借契約における敷金契約は、授受された敷金をもって、賃料債権、賃貸借終了後の目的物の明渡しまでに生ずる賃料相当の損害金債権、その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することとなるべき一切の債権を担保することを目的とする賃貸借契約に付随する契約であり、敷金を交付した者の有する敷金返還請求権は、目的物の返還時において、上記の被担保債権を控除し、なお残額があることを条件として、残額につき発生することになる(最高裁昭和46年(オ)第357号同48年2月2日第二小法廷判決・民集27巻1号80頁参照)。これを賃料債権等の面からみれば、目的物の返還時に残存する賃料債権等は敷金が存在する限度において敷金の充当により当然に消滅することになる。このような敷金の充当による未払賃料等の消滅は、敷金契約から発生する効果であって、相殺のように当事者の意思表示を必要とするものではないから、民法511条によって上記当然消滅の効果が妨げられないことは明らかである。
また、抵当権者は、物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前は、原則として抵当不動産の用益関係に介入できないのであるから、抵当不動産の所有者等は、賃貸借契約に付随する契約として敷金契約を締結するか否かを自由に決定することができる。したがって、敷金契約が締結された場合は、賃料債権は敷金の充当を予定した債権になり、このことを抵当権者に主張することができるというべきである。

+第511条
支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない

+++
ところで、抵当権の物上代位に基づく抵当不動産に係る賃料債権の差押えと、賃借人が賃貸人に対して有する一般債権を自働債権とする賃料債権との相殺(賃借人が一般債権者の立場で自己の債権の回収手段としてする相殺)との優劣については、最高裁判所第三小法廷が平成一三年三月一三日に「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって抵当権者に対抗することができない。」との判決をした(民集五五巻二号三六三頁、本誌一〇五八号八九頁)。
物上代位は、抵当権の効力として位置付けられ、物上代位の目的となる債権につき「差押えをすることにより物上代位をすることができる権利」が抵当権設定登記によって公示されているとみることができる。この判決は、このような観点から、物上代位による差押え前は、差押えにより優先弁済請求権が現実化していないので、相殺はその自働債権が抵当権設定登記の後に取得されたものであってもなんら制限されるものではない。しかし、物上代位による差押え後は、差押えにより優先弁済請求権が現実化しているので、債権質権と相殺との調整(民法三六四条一項、四六八条。大判大5・9・5民録二二輯一六七〇頁)と同様に考えることができ(抵当権設定登記が質権設定通知と同視できる。)、抵当権設定登記前に取得した自働債権によるとき(少なくとも、その弁済期が各賃料債権の弁済期に先立つとき)は相殺は妨げられないが、そうでない場合は物上代位に劣後することになるとしたものである。

・抵当権設定者が抵当目的物を賃貸したところ、一般債権者により賃料債権の差押えがなされた。その後に抵当権者の物上代位権に基づく上記賃料債権の差押えがなされた場合でも、一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達より先に抵当権設定登記がなされていたときには、抵当権者が優先する
+解説
物上代位権の行使につき差押えが必要とされた趣旨は、差押えを競合債権者に対する対抗要件とすることにあるのではなく、主に第三債務者の保護にあることは、最二小判平10・1・30及び最三小判平10・2・10が判示するところである。すなわち、抵当権の効力が代位の目的となる債権にも法律上当然に及ぶとすれば第三債務者は抵当権者に無断で抵当不動産の所有者に弁済してもよいのかどうか、不安定な地位に置かれるので、抵当権者からの差押えある前は、抵当権者に対して弁済してはならず、抵当不動産の所有者(又は他の差押債権者、債権譲受人)に弁済すれば債権及び物上代位権が消滅する(第三債務者は免責される)という仕組みを採用して第三債務者を保護するというのが、抵当権者による差押えを要求した趣旨であるとされている。
また、物上代位による差押えを競合債権者に対する対抗要件とすることは、「目的債権について一般債権者が差押え又は仮差押えの執行をしたにすぎないときは、その後に先取特権者が目的債権に対し物上代位権を行使することを妨げられるものではない」と判示した最二小判昭60・7・19民集三九巻五号一三二六頁の趣旨に反するようにも思われる。抵当権による物上代位の対抗要件は、抵当権の対抗要件である設定登記に求めざるを得ないというのが本判決の考え方であると思われる。

・抵当権者は、物上代位の対象の目的債権が譲渡され対抗要件が 備えられた後でも、物上代位権を行使することができる!!!←第三債務者の保護という304条1項の趣旨目的に照らすと、372条・304条1項ただし書きの「払渡し又は引渡し」には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後でも、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる!
+判例
民法三七二条において準用する三〇四条一項ただし書が抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は、主として、抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから、右債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は、右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下「抵当権設定者」という。)に弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるため、差押えを物上代位権行使の要件とし、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り、右弁済による目的債権消滅の効果を抵当権者にも対抗することができることにして、二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護するという点にあると解される。
右のような民法三〇四条一項の趣旨目的に照らすと、同項の「払渡又ハ引渡」には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。
けだし、(一)民法三〇四条一項の「払渡又ハ引渡」という言葉は当然には債権譲渡を含むものとは解されないし、物上代位の目的債権が譲渡されたことから必然的に抵当権の効力が右目的債権に及ばなくなるものと解すべき理由もないところ、(二)物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が物上代位権に基づき目的債権の差押えをした場合において、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前に債権譲受人に弁済した債権についてはその消滅を抵当権者に対抗することができ、弁済をしていない債権についてはこれを供託すれば免責されるのであるから、抵当権者に目的債権の譲渡後における物上代位権の行使を認めても第三債務者の利益が害されることとはならず、(三)抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができ、(四)対抗要件を備えた債権譲渡が物上代位に優先するものと解するならば、抵当権設定者は、抵当権者からの差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れることができるが、このことは抵当権者の利益を不当に害するものというべきだからである。
そして、以上の理は、物上代位による差押えの時点において債権譲渡に係る目的債権の弁済期が到来しているかどうかにかかわりなく、当てはまるものというべきである。

・被転付債権が抵当権の物上代位の目的となりうる場合においても、転付命令が第三債務者に送達されるときまでに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできない!!
+判例
転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。
けだし、転付命令は、金銭債権の実現のために差し押さえられた債権を換価するための一方法として、被転付債権を差押債権者に移転させるという法形式を採用したものであって、転付命令が第三債務者に送達された時に他の債権者が民事執行法159条3項に規定する差押等をしていないことを条件として、差押債権者に独占的満足を与えるものであり(民事執行法159条3項、160条)、他方、抵当権者が物上代位により被転付債権に対し抵当権の効力を及ぼすためには、自ら被転付債権を差し押さえることを要し(最高裁平成13年(受)第91号同年10月25日第一小法廷判決・民集55巻6号975頁)、この差押えは債権執行における差押えと同様の規律に服すべきものであり(同法193条1項後段、2項、194条)、同法159条3項に規定する差押えに物上代位による差押えが含まれることは文理上明らかであることに照らせば、抵当権の物上代位としての差押えについて強制執行における差押えと異なる取扱いをすべき理由はなく、これを反対に解するときは、転付命令を規定した趣旨に反することになるからである。

・抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、当該不動産の賃借人は、抵当権設定登記に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない!!
+判例
抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。
けだし、物上代位権の行使としての差押えのされる前においては、賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが、上記の差押えがされた後においては、抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ、物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというべきであるからである。
そして、上記に説示したところによれば、抵当不動産の賃借人が賃貸人に対して有する債権と賃料債権とを対当額で相殺する旨を上記両名があらかじめ合意していた場合においても、賃借人が上記の賃貸人に対する債権を抵当権設定登記の後に取得したものであるときは、物上代位権の行使としての差押えがされた後に発生する賃料債権については、物上代位をした抵当権者に対して相殺合意の効力を対抗することができないと解するのが相当である。

・物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来したとしても、あらかじめ求償権を行使することはできない。!!!!!←被担保債権の消滅の有無とその範囲は、抵当不動産の売却代金の配当等によって確定するものであるから、求償権の範囲はもちろん、その存在すらあらかじめ確定することはできないから。
+判例
債務者の委託を受けてその者の債務を担保するため抵当権を設定した者(物上保証人)は、被担保債権の弁済期が到来したとしても、債務者に対してあらかじめ求償権を行使することはできないと解するのが相当である。
けだし、抵当権については、民法三七二条の規定によって同法三五一条の規定が準用されるので、物上保証人が右債務を弁済し、又は抵当権の実行により右債務が消滅した場合には、物上保証人は債務者に対して求償権を取得し、その求償の範囲については保証債務に関する規定が準用されることになるが、右規定が債務者に対してあらかじめ求償権を行使することを許容する根拠となるものではなく、他にこれを許容する根拠となる規定もないからである。
なお、民法三七二条の規定によって抵当権について準用される同法三五一条の規定は、物上保証人の出捐により被担保債権が消滅した場合の物上保証人と債務者との法律関係が保証人の弁済により主債務が消滅した場合の保証人と主債務者との法律関係に類似することを示すものであるということができる。ところで、保証の委託とは、主債務者が債務の履行をしない場合に、受託者において右債務の履行をする責に任ずることを内容とする契約を受託者と債権者との間において締結することについて主債務者が受託者に委任することであるから、受託者が右委任に従った保証をしたときには、受託者は自ら保証債務を負担することになり、保証債務の弁済は右委任に係る事務処理により生ずる負担であるということができる。これに対して、物上保証の委託は、物権設定行為の委任にすぎず、債務負担行為の委任ではないから、受託者が右委任に従って抵当権を設定したとしても、受託者は抵当不動産の価額の限度で責任を負担するものにすぎず、抵当不動産の売却代金による被担保債権の消滅の有無及びその範囲は、抵当不動産の売却代金の配当等によって確定するものであるから、求償権の範囲はもちろんその存在すらあらかじめ確定することはできず、また、抵当不動産の売却代金の配当等による被担保債権の消滅又は受託者のする被担保債権の弁済をもって委任事務の処理と解することもできないのである。したがって、物上保証人の出捐によって債務が消滅した後の求償関係に類似性があるからといって、右に説示した相違点を無視して、委託を受けた保証人の事前求償権に関する民法四六〇条の規定を委託を受けた物上保証人に類推適用することはできないといわざるをえない。!!!!

第351条
他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
第460条
保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる
1号 主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
2号 債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
3号 債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。

++解説
保証とは、主債務者が債務の履行をしない場合に、その履行をする責に任じるものであり(民法四四六条)、保証の委託(委任)とは、主債務の履行債務(保証債務)を負担すること(将来、主債務者の履行がないときは、保証人が履行をすること)の委任にほかならない。したがって、保証債務の履行は、委任に基づくものであり、それによる出損は、委任事務の処理により生じた費用(生ずべき費用)と理解されることになる。そして、右費用の額は、既に発生している債務については、求償時の債務額と一致することになる。
他方、物上保証とは他人のための担保物権の設定行為であり、担保権設定者に被担保債権の弁済を委任する趣旨は含まれない!!!!!←コレ。担保物権の設定により、当該物件の担保価値は抽象的に担保権者に把握される。担保権の実行は、右担保価値の実現にすぎず、設定者の行為を予定するものではない。その意味で、物上保証の委任は担保物権の設定により終了し、その後に、委任の趣旨に従った行為はなく、費用の発生の余地もない。しかも、当該物件の価値がなく、被担保債権への弁済が全くされなかったとしても、委任の趣旨に反することもない。したがって、物上保証については事前求償を肯定したとしても、求償金額の確定ができないことになる(受託保証人の事前求償についても、求償金額の確定が要件であるとするのは、注釈民法(11)二七七頁〔中川〕)。
物上保証人が担保物の代価により、又は自らの出損によって債務者を免責させたときは、その法律状態は保証債務を履行した保証人に類似するが、免責行為前の法律関係まで同じことにはならないのである。


民法択一 物権 抵当権 被担保債権

・根抵当権でない抵当権は、担保する債権の元本のほか、利息その他の定期金のうち満期となった最後の2年分に限り、それらを担保する(375条1項本文)。←被担保債権額が過大となることを防ぎ、もって抵当目的不動産の利害関係人を保護するため。

+第375条
1項 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
2項 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

・抵当権設定者の地位を承継した抵当不動産の第三取得者は、設定者と同様に元本債権と共に満期となった定期金の全額(×最後の2年分)の代位弁済をするのでなければ、抵当権者に対し、抵当権消滅を原因として登記の抹消を請求することはできない!!!


民法択一 物権 抵当権 抵当権とは


・抵当権の付従性から、抵当権の成立には被担保債権の存在が必要であるところ、元本が交付されず被担保債権が発生していないから、抵当権は不成立。=被担保債権の不存在を理由として、抵当権者に対して、抵当権設定登記の抹消を求めることができる!

・消費貸借契約に基づく抵当権設定登記の翌日に金銭が交付された事案において、抵当権設定手続は被担保債権の発生と同時であることを要せず、抵当権はのちに発生した債務を有効に担保する!!!ヘー

・当事者間の合意によって、特定の数個の債権を一定金額の限度で担保する1個の抵当権を設定することも有効である!
+判例
当事者間の合意によつて、特定の数個の債権を一定金額の限度で担保する一個の抵当権を設定することも、また将来発生の可能性のある条件付債権を担保するため抵当権を設定することも、有効と解すべきであつて、所論は独自の見解に過ぎないものであつて採るを得ない。
++
本件被担保債権の大部分は将来成立すべき条件付債権であるのに、恰も上告人が被上告人より金一〇〇万円を借り受けた如きものとして抵当権設定登記手続をなしたことは、この点について事実と登記の間に不一致が存するわけであるが、かゝる場合でも当事者が真実その設定した抵当権を登記する意思で登記手続を終えた以上、この登記を以て当然に無効のものと解すべきものではなく、抵当権設定者は抵当権者に対し該登記が事実に吻合しないことを理由として、その抹消を請求することはできないものと云わねばならない。

・AのXに対する員外貸付けが無効であっても、Xは貸し付けられた金員を不当利得として返還する義務を負い、Xが設定した抵当権はこの不当利得返還債務を担保する意義を有するので、Xが当該不動産を抵当権の実行により買い受けたYに対して、員外貸付けは無効であるから抵当権も無効であると主張することは信義則上許されない!!
+判例
上告人は自ら虚無の従業員組合の結成手続をなし、その組合名義をもつて訴外労働金庫から本件貸付を受け、この金員を自己の事業の資金として利用していたというのであるから、仮りに右貸付行為が無効であつたとしても、同人は右相当の金員を不当利得として訴外労働金庫に返済すべき義務を負つているものというべく、結局債務のあることにおいては変りはないのである。そして、本件抵当権も、その設定の趣旨からして、経済的には、債権者たる労働金庫の有する右債権の担保たる意義を有するものとみられるから、上告人としては、右債務を弁済せずして、右貸付の無効を理由に、本件抵当権ないしその実行手続の無効を主張することは、信義則上許されないものというべきである。ことに、本件のように、右抵当権の実行手続が終了し、右担保物件が競落人の所有に帰した場合において、右競落人またはこれから右物件に関して権利を取得した者に対して、競落による所有権またはこれを基礎とした権原の取得を否定しうるとすることは、善意の第三者の権利を自己の非を理由に否定する結果を容認するに等しく、信義則に反するものといわなければならない。

・抵当権設定契約は、抵当権者と抵当目的物の所有権を有する抵当権設定者の合意があれば、書面によらず、かつ、設定登記がされなくても成立する!←意思主義(176条)通りに当事者の合意のみによって成立(諾成契約)。また、設定登記は対抗要件に過ぎない。

・後順位抵当権者が流用前から存在する場合の抵当権設定登記の流用について!
消滅した抵当権の登記を他の抵当権の登記として利用する契約は無効である!←後順位抵当権者の順位上昇の原則による期待を保護すべき要請!
→抵当権設定登記の抹消を求めることができる!
なお、流用後の第三者との関係では当該流用登記も有効!!!ヘー

・Xが所有する不動産について、Yに対して抵当権を設定して金銭を借り入れるとともに、Aが、XのYに対する当該借入金債務を担保するため、Yとの間で連帯保証契約を結んだ場合、Aが当該借入金債務を全額弁済したとしても、XはYに対して、抵当権設定登記の抹消登記手続を求めることはできない!!!←弁済による代位制度は、代位弁済者の債務者に対する求償権を確保することを目的として、原債権が担保と共に弁済者に移転するものと考えている!!!=Aが弁済により抵当権及び原債権を取得する

+判例
まず、保証人である被上告人は、債務者である訴外会社との間で代位弁済による求償権の内容につき民法四五九条二項によつて準用される同法四四二条二項の定める法定利息と異なる特約をしても、第三者である上告人に対しては右特約の効力をもつて対抗することができないと主張する部分について。
弁済による代位の制度は、代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために、法の規定により弁済によつて消滅すべきはずの債権者の債務者に対する債権(以下「原債権」という。)及びその担保権を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり、したがつて、代位弁済者が弁済による代位によつて取得した担保権を実行する場合において、その被担保債権として扱うべきものは、原債権であつて、保証人の債務者に対する求償権でないことはいうまでもない
債務者から委託を受けた保証人が債務者に対して取得する求償権の内容については、民法四五九条二項によつて準用される同法四四二条二項は、これを代位弁済額のほかこれに対する弁済の日以後の法定利息等とする旨を定めているが、右の規定は、任意規定であつて、保証人と債務者との間で右の法定利息に代えて法定利率と異なる約定利率による代位弁済の日の翌日以後の遅延損害金を支払う旨の特約をすることを禁ずるものではない。また、弁済による代位の制度は保証人と債務者との右のような特約の効力を制限する性質を当然に有すると解する根拠もない
けだし、単に右のような特約の効力を制限する明文がないというのみならず、当該担保権が根抵当権の場合においては、根抵当権はその極度額の範囲内で原債権を担保することに変わりはなく、保証人と債務者が約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約によつて求償権の総額を増大させても、保証人が代位によつて行使できる根抵当権の範囲は右の極度額及び原債権の残存額によつて限定されるのであり、また、原債権の遅延損害金の利率が変更されるわけでもなく、いずれにしても、右の特約は、担保不動産の物的負担を増大させることにはならず、物上保証人に対しても、後順位の抵当権者その他の利害関係人に対しても、なんら不当な影響を及ぼすものではないからである。そして、保証人と右の利害関係人とが保証人と債務者との間で求償権の内容についてされた特約の効力に関して物権変動の対抗問題を生ずるような関係に立つものでないことは、右に説示したところから明らかであり、保証人は右の特約を登記しなければこれをもつて右の利害関係人に対抗することができない関係にあるわけでもない(法がそのような特約を登記する方法を現に講じていないのも、そのゆえであると解される。)。
以上のとおりであるから、保証人が代位によつて行使できる原債権の額の上限は、これらの利害関係人に対する関係において、約定利率による遅延損害金を含んだ求償権の総額によつて画されるものというべきである。

第459条
1項 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。
2項 第442条第2項の規定は、前項の場合について準用する。

第442条
1項 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
2項 前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。

+判例
つぎに、保証人である被上告人と物上保証人であるAとの間でされた民法五〇一条但書五号の定める代位の割合を変更する特約の第三者に対する効力の存否に関する違法をいう部分について。
民法五〇一条は、その本文において弁済による代位の効果を定め、その但書各号において代位者相互間の優劣ないし代位の割合などを定めている。弁済による代位の制度は、すでに説示したとおり、その効果として、債権者の有していた原債権及びその担保権をそのまま代位弁済者に移転させるのであり、決してそれ以上の権利を移転させるなどして右の原債権及びその担保権の内容に変動をもたらすものではないのであつて、代位弁済者はその求償権の範囲内で右の移転を受けた原債権及びその担保権自体を行使するにすぎないのであるから、弁済による代位が生ずることによつて、物上保証人所有の担保不動産について右の原債権を担保する根抵当権等の担保権の存在を前提として抵当権等の担保権その他の権利関係を設定した利害関係人に対し、その権利を侵害するなどの不当な影響を及ぼすことはありえず、それゆえ、代位弁済者は、代位によつて原債権を担保する根抵当権等の担保権を取得することについて、右の利害関係人との間で物権的な対抗問題を生ずる関係に立つことはないというべきである。
そして、同条但書五号は、右のような代位の効果を前提として、物上保証人及び保証人相互間において、先に代位弁済した者が不当な利益を得たり、代位弁済が際限なく循環して行われたりする事態の生ずることを避けるため、右の代位者相互間における代位の割合を定めるなど一定の制限を設けているのであるが、その窮極の趣旨・目的とするところは代位者相互間の利害を公平かつ合理的に調節することにあるものというべきであるから、物上保証人及び保証人が代位の割合について同号の定める割合と異なる特約をし、これによつてみずからその間の利害を具体的に調節している場合にまで、同号の定める割合によらなければならないものと解すべき理由はなく!!、同号が保証人と物上保証人の代位についてその頭数ないし担保不動産の価格の割合によつて代位するものと規定しているのは、特約その他の特別な事情がない一般的な場合について規定しているにすぎず、同号はいわゆる補充規定であると解するのが相当である。
したがつて、物上保証人との間で同号の定める割合と異なる特約をした保証人は、後順位抵当権者等の利害関係人に対しても右特約の効力を主張することができ、その求償権の範囲内で右特約の割合に応じ抵当権等の担保権を行使することができるものというべきである。このように解すると、物上保証人(根抵当権設定者)及び保証人間に本件のように保証人が全部代位できる旨の特約がある場合には、保証人が代位弁済したときに、保証人が同号所定の割合と異なり債権者の有していた根抵当権の全部を行使することになり、後順位抵当権者その他の利害関係人は右のような特約がない場合に比較して不利益な立場におかれることになるが、同号は、共同抵当に関する同法三九二条のように、担保不動産についての後順位抵当権者その他の第三者のためにその権利を積極的に認めたうえで、代位の割合を規定していると解することはできず、また代位弁済をした保証人が行使する根抵当権は、その存在及び極度額が登記されているのであり、特約がある場合であつても、保証人が行使しうる根抵当権は右の極度額の範囲を超えることはありえないのであつて、もともと、後順位の抵当権者その他の利害関係人は、債権者が右の根抵当権の被担保債権の全部につき極度額の範囲内で優先弁済を主張した場合には、それを承認せざるをえない立場にあり、右の特約によつて受ける不利益はみずから処分権限を有しない他人間の法律関係によつて事実上反射的にもたらされるものにすぎず、右の特約そのものについて公示の方法がとられていなくても、その効果を甘受せざるをえない立場にあるものというべきである。

ナカナカムズイネ

第501条
前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
一 保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
二 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
三 第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
四 物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
五 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
六 前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。

弁済による代位の解説とか
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n64721

・抵当権の効力が及ぶ借地権につき、抵当権設定者と土地所有者との間で土地賃貸借契約が合意解除されたとしても、398条の背後にある原則を理由として抵当権者に当該解除を対抗できない!!!
+398条
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。

・B所有の土地上に建物を有するAが長期にわたり賃料の支払いを怠っているような場合、建物の抵当権者Cは「第三者」(545条1項ただし書き)に当たらず、債務不履行解除を対抗することができる!!!!!

・抵当権が未登記である場合でもこれを実行することができる!


民法択一 物権 物的担保 物的担保概観


・民法に定める担保物件である典型担保物権は、約定担保物権と法定担保物権とに分類できる。
典型担保物権
約定(やくじょう)担保物権(=信用授受の媒介として目的物所有者と債権者との間の設定契約により成立)=質権・抵当権
法定担保物権(=一定の要件がそろえば法律上当然に成立する)=留置権・先取特権
譲渡担保権は約定担保物権であるが、民法に定める典型担保物権ではなく、慣習上の担保物権である非典型担保物権に含まれる。

・随伴性=被担保債権が譲渡されれば、担保物権も債権譲受人に移転すること

・随伴性は典型担保物件一般に認められる性質である。しかし、留置権は、占有の喪失により効力を失うため(302条本文)、被担保債権と共に目的物の占有も移転するのでなければ、留置権は消滅する!!→被担保債権が譲渡されても、留置権は当然には移転しない!

・留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる(296条)=留置権の不可分性

・296条は質権について準用されている(350条)!=質権の不可分性

・債務者は相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる(301条)!!!

・質権(350条・304条)及び抵当権(372条・304条)には物上代位性が認められている!!⇔留置権には物上代位性は認められていない!!

・優先的弁済的効力は、先取特権、質権、抵当権には認められているが、留置権については認められておらず、留置権者は事実上優先弁済を受けうるにとどまる!!

+留置権の事実上の優先弁済とは何か?
民297条1項、「留置権者は、その物を従前通り使用し、そこから得られた利益を被担保債権に充当することが出来る」とあります。(ただし、以前からの使用状態を継続できるだけであり、新たに勝手な利用を始めたり、他人に賃借したり出来ません。(民298条1項)。)この点で優先弁済権があるといえます。

目的物が動産であるときは、目的物所有者に対する他の債権者は、事実上、留置権の目的物を差し押さえることが出来ません。
民事執行法124条、他者が占有している動産については、占有者が目的物を執行官に提出することを拒む限り差し押さえすることが出来ないとされ、民事執行法190条で、結局、他の債権者は、被担保債権を弁済してからでないと、事実上、差し押さえが出来ないとされています。ヘー

目的物が不動産の場合には、留置権者が目的物を占有していても、他の債権者はそれを差し押さえ、競売手続きを進行させることが出来ますが、その手続きにおいてその目的不動産を買い受けたものは、留置権の被担保債権のを弁済しなければなりません。(民事執行法59条4項、188条)、その結果、事実上は、最先順位の優先弁済を受けることが出来ます。ヘー

債務者が破産した場合は、民法に基ずく留置権の効力は消滅してしまいます。(破産法66条3項) 破産宣告をされると、破産債務者の財産の決済手続きに変わり、原則的に債務者の財産すべてが処分され、留置権者には事実上の優先弁済権は無くなります。
ただし、民事留置権に対し商法に基づく留置権は、破産手続き内において優先弁済権へと転化するとされます。(破産法66条1項、2項)ヘー


民法択一 物権 用益物権 入会権


・入会権の内容である使用収益権は、入会団体の構成員たる資格に基づくものであり、本来、各自が単独で行使できるものであるから、構成員各自が単独で妨害排除請求権を行使できる。

・入会権が「共有の性質を有する入会権」(263条)に当たるか否か
入会権者の権利がその共有に属する地盤を目的とするか、他人の所有に属する地盤を目的とするかによって区別すべき!
+第263条
共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する

入会権は登記なくして第三者に対抗することができる!!!このことは入会権が共有の性質を有するかどうかを問わない!!

・入会権は権利者である一定の村落住民の総有に属する!!ものであるが、村落住民が入会団体を形成し、それが権利能力なき社団に当たる場合には、当該入会団体は、構成員全員の総有に属する不動産につき、これを争う者を被告とする総有権確認請求訴訟を追行する原告適格を有する!!!
+判例
入会権は権利者である一定の村落住民の総有に属するものであるが(最高裁昭和三四年(オ)第六五〇号同四一年一一月二五日第二小法廷判決・民集二〇巻九号一九二一頁)、村落住民が入会団体を形成し、それが権利能力のない社団に当たる場合には、当該入会団体は、構成員全員の総有に属する不動産につき、これを争う者を被告とする総有権確認請求訴訟を追行する原告適格を有するものと解するのが相当である。
けだし、訴訟における当事者適格は、特定の訴訟物について、誰が当事者として訴訟を追行し、また、誰に対して本案判決をするのが紛争の解決のために必要で有意義であるかという観点から決せられるべき事柄であるところ、入会権は、村落住民各自が共有におけるような持分権を有するものではなく、村落において形成されてきた慣習等の規律に服する団体的色彩の濃い共同所有の権利形態であることに鑑み、入会権の帰属する村落住民が権利能力のない社団である入会団体を形成している場合には、当該入会団体が当事者として入会権の帰属に関する訴訟を追行し、本案判決を受けることを認めるのが、このような紛争を複雑化、長期化させることなく解決するために適切であるからである。

+権利能力のない社団である入会団体の代表者が構成員全員の総有に属する不動産について総有権確認請求訴訟を原告の代表者として追行するには、当該入会団体の規約等において当該不動産を処分するのに必要とされる総会の議決等の手続による授権を要するものと解するのが相当である。
けだし、右の総有権確認請求訴訟についてされた確定判決の効力は構成員全員に対して及ぶものであり、入会団体が敗訴した場合には構成員全員の総有権を失わせる処分をしたのと事実上同じ結果をもたらすことになる上、入会団体の代表者の有する代表権の範囲は、団体ごとに異なり、当然に一切の裁判上又は裁判外の行為に及ぶものとは考えられないからである。

+権利能力のない社団である入会団体において、規約等に定められた手続により、構成員全員の総有に属する不動産につきある構成員個人を登記名義人とすることとされた場合には、当該構成員は、入会団体の代表者でなくても、自己の名で右不動産についての登記手続請求訴訟を追行する原告適格を有するものと解するのが相当である。
けだし、権利能力のない社団である入会団体において右のような措置を採ることが必要になるのは入会団体の名義をもって登記をすることができないためであるが、任期の定めのある代表者を登記名義人として表示し、その交代に伴って所有名義を変更するという手続を採ることなく、別途、当該入会団体において適切であるとされた構成員を所有者として登記簿上表示する場合であっても、そのような登記が公示の機能を果たさないとはいえないのであって、右構成員は構成員全員のために登記名義人になることができるのであり、右のような措置が採られた場合には、右構成員は、入会団体から、登記名義人になることを委ねられるとともに登記手続請求訴訟を追行する権限を授与されたものとみるのが当事者の意思にそうものと解されるから!!!!である。このように解したとしても、民訴法が訴訟代理人を原則として弁護士に限り、信託法一一条が訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託を禁止している趣旨を潜脱するものということはできない。!!!!!!
民訴の論点も入ってるね・・・

+権利能力なき社団
民事訴訟法第29条において、権利能力なき社団で「代表者の定め」のあるものは訴訟の当事者となることができる旨が規定されていることから、権利能力なき社団は、「代表者の定め」が有るものと無いものに分類することができる。前者が狭義の「権利能力なき社団」、後者を含めたものが広義の「権利能力なき社団」であって、成立要件が異なる。
代表者の定めが無い場合(広義の「権利能力なき社団」)について、判例は「権利能力なき社団の財産は、実質的には社団を構成する総社員の所謂総有に属するものであるから、総社員の同意をもつて、総有の廃止その他右財産の処分に関する定めのなされない限り、現社員及び元社員は、当然には、右財産に関し、共有の持分権又は分割請求権を有するものではないと解するのが相当である。」(最判 昭和32年11月14日民集 第11巻12号1943頁)としているから、所有財産が総有となる形態を取ることが、最低限の成立要件である。
訴訟の当事者となり得る狭義の「権利能力なき社団」となるためには、「団体としての組織をそなえそこには多数決の原則が行なわれ構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、しかしてその組織によつて代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない」

+共同所有の諸形態
共有
「(狭義の)共有」はその共有者に特別な人的つながりはあまりなく、たまたま偶然的に共同で所有している状態に過ぎず、個人主義的な共有形態であり、民法で規定される共有はほとんどこの共有のことを指します。
=ある目的物を共有する限りで偶然的に関係するにすぎず、団体を形成しない(249条)。
●各自の持分・・・有り
●各自の持分の処分・・・自由(他の共有者から独立して処分できる)
●各自の持分の分割請求・・・自由(いつでも分割を請求可)

合有
「合有」はその共有者が共同目的を有し、その目的達成のために一つの団体を作り目的物を所有する形態であり、その共同目的による団体的規制を受けます。ですから、その合有物は様々な制限を受けることになります。
=共同目的達成のため、団体的結合を作っている(667条共同事業)
●各自の持分・・・有り
●各自の持分の処分・・・所有目的により制限される
●各自の持分の分割請求・・・団体存続中は認められない。
●合有の例・・・○○組合の財産など

総有
「総有」は共有者に地縁や血縁等による人的つながりが有る場合で、団体的性格の強い状態であり、その団体的拘束を受けます。その総有物は団体的規制により使用や利用が強く制限され、各自の持分という概念もありません。
=各人は団体に包摂されるが、各人も全面的に独立性を失うわけではない。
●各自の持分・・・無し
●各自の持分の処分・・・認められない
●各自の持分の分割請求・・・認められない
●総有の例・・・入会権や権利能力なき社団の財産など