訴訟物
1.旧訴訟物理論と新訴訟物理論
訴訟物=原告が主張する一定の権利または法律関係
旧訴訟物理論→実体法上の個別的具体的な請求権の主張
2.既判力の客観的範囲
旧訴訟物理論をとり、訴訟物が別であったとしても、前訴において審理され、それについて裁判所の判断が示されているのと同じ請求をした場合には、原則として信義則に反する。
3.処分権主義
(1)訴訟物の選択
・処分権主義
+(判決事項)
第二百四十六条 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。
原告が訴訟物として何を選択したのかは、原告の主張(訴状の記載)を合理的に解釈して判断する。被告の主張から推察してはならない!
例 自賠法3条か709条か
・売買契約に基づく土地明渡請求権
XY甲土地売買
・所有権に基づく土地明渡請求権
Y売買当時甲土地所有
XY甲土地売買
Y甲土地占有
・消滅時効が問題となる場合の配慮
売買契約に基づく明渡し請求権は10年で時効により消滅してしまう。
⇔所有権に基づく請求権は消滅しない。
+α 不法行為に基づく損害賠償請求権(3年)
(2)選択的併合と予備的併合
・選択的併合=請求のいずれかが認容されることを解除条件として他の請求について判断をもとめるもの。
・予備的併合=まず主位的請求について判断、主位的請求が認容されることを解除条件として予備的な請求をしている
・主張については、原則として、当事者はどれから判断してもらいたいという順位をつけることはできない。
ただし、相殺の抗弁については既判力が生じるので、他の抗弁について判断した後に判断する必要がある。
4.訴訟物の特定と個数
(1)訴訟物の特定
・債権的請求権の場合
訴訟物の特定←権利義務の主体、権利の内容、権利の発生原因
どこまで具体化するかは、他との誤認混同を生じる可能性があるか否かという相対的な問題
・物権的請求権の場合
訴訟物の特定←主体と内容
(2)訴訟物の個数
・債権的請求の場合=契約の個数
・物権的請求の場合=侵害されている所有権の個数と所有権侵害の個数
(侵害されている側と侵害する側の両方から訴訟物の個数を検討)
(3)留意点
強制執行ができる程度に特定
5.債務不存在確認請求と給付請求
給付訴訟が提起されると、債務不存在確認訴訟は、確認の利益がなくなる。
6.演習
・証拠上認められるのに、主要事実の主張がない場合、裁判所としては、その主張をするかについて釈明しておくのが相当。
・+(訴状等の陳述の擬制)
第百五十八条 原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。
・+(自白の擬制)
第百五十九条 当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2 相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3 第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。
・間接事実は証拠と同列であり、主張レベルの問題。自由心証主義により、自白の問題は生じない。