民法択一 物権 物権変動 不動産物権変動における対抗要件主義


・不動産の取得については、当該不動産が未登記であっても177条の適用があり、取得者はその旨の登記を経なければ、取得後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗できない!→AB売買、BがB名義の所有権保存登記をしたうえで、Cにこれを売却し登記をした場合・・・。

・建物が減失した後、その跡地に同様の建物が新築された場合は、旧建物の既存の登記を新建物の保存登記に流用することは許されない!!!!このように流用された登記は新建物の登記としては無効!!

・取消し(詐欺など)の意思表示により土地所有権は元の所有者に復帰し、取消後の買受人とは177条により対抗関係となる。

・仮装の売買契約に基づくもので登記当時には実体的権利関係が欠けているから無効であったが、その後有効に買い受けてその所有権を取得した場合、その時以後当該登記は現在の実体的権利関係と合致するに至ったのであるから有効となり、以後所有権を第三者に対抗できる!!!

・94条2項を根拠に取消後の第三者を保護する見解は、詐欺にかかる法律行為を取消した場合、取消の効力が遡及することを根拠とする!=復帰的物権変動を根拠としない!

・時効取得者は、登記を経由していなくても時効取得を時効完成前の第三者に対抗することができる。

・不動産の取得時効完成後に第三者に譲渡された場合、時効取得者は、登記を経由しなければ時効取得を時効完成後の第三者に対抗することができない。
+なお引き続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、登記なくして対抗できる。

・共有権に対する妨害排除として登記を実体的権利関係に合致させるために請求できるのは、持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続きである!!!→被相続人Aから甲不動産をBと共に共同相続したXは、Bが単独相続した旨の登記をしたうえでYに売却し、Yが所有権移転登記を備えた場合、Yに対し、この所有権移転登記の全部抹消を求めることはできない。

・相続放棄の効力は絶対的で、何人に対しても登記なくしてその効力を生ずる。

・遺産の分割は第三者に対する関係においては、相続人が相続によりいったん取得した権利につき分割時に新たな変更を生ずるのと実質上異ならないものであるから、不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、177条の適用があり、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、登記を経なければ、分割後の第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができない。

・特定の財産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、特段の事情がない限り、遺産分割方法の指定(908条)であり、当該遺産を相続開始時に直ちに当該相続人に帰属させるものであることを前提に、これによる権利の移転は法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質的に異ならないため、登記なくして第三者に対抗できる!!!!!!!→「甲不動産はXに相続させる」旨の遺言により、Aの死亡時にXが所有権を取得した甲につき、共同相続人Bの債権者YがBに代位してB及びXの法定相続分により共同相続登記をしたうえでBの持分を差し押さえた場合、Xは、甲の所有権取得をYに対抗することができる。

・特定遺贈には177条の適用がある。→被相続人が生前に不動産を推定相続人に贈与したが、その登記未了の間に他の推定相続人に当該不動産を遺贈し、その後相続が開始された場合、贈与と遺贈の物権変動の優劣は、登記の前後で決定される。
+包括遺贈=遺産の全部・全体に対する配分割合を示す
+特定遺贈=遺産のうち特定の財産を示す

・競売の申立てをした相続人の債権者は、相続人の不動産持分に対する差押債権者として177条条にいう第三者に該当し、受遺者は登記がなければ自己の所有権取得をもって相続人の債権者に対抗できない!!→被相続人から不動産の特定遺贈を受けた者が、被相続人が死亡した後、所有権移転登記を備えない間に相続人の債権者が当該不動産について相続人を代位して相続による持分取得の登記をし、強制競売の申立てをした場合、受遺者は、登記なくして相続人の債権者に対抗することはできない!!

・177条の規定は、登記を第三者に対する権利得喪変更の対抗要件としたものであり、権利取得原因が通常の売買である場合と競落手続による場合とを問わず適用される。

・177条にいう「第三者」とは、当事者もしくはその包括承継人以外の者で、不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者をいう。→Aの包括承継人たるCは「第三者」にあたらない。BはCに対し所有権移転登記なくして所有権を主張することができる。

・前主・後主の関係にあった場合も「第三者」に当たらない。→YAXと順次譲渡された場合、XがYに対して土地の引き渡しを請求した場合、Xが所有権移転登記を備えていなくとも、Yは引渡しを拒絶することはできない。

・被相続人が不動産を譲渡した場合、その相続人から当該不動産の譲渡を受けた者は、177条の規定する「第三者」にあたる。

・建物賃貸借契約が合意解除されたにもかかわらず何らの権原もなく家屋を占有する不法占有者は、177条にいう「第三者」には当たらない。→建物所有権を譲り受けるとともに建物賃貸借契約を承継した建物譲受人は、当該賃貸借契約が合意解除されたにもかかわらず、その後も変わらず家屋を占拠し続けている賃借人に対して、登記がなくとも明渡しを求め、損害賠償を請求することができる!。

・いったん登記簿に登記された以上、登記簿が減失し回復登記申請期間を徒過したとしても、これによって過去にさかのぼって未登記の状態になったものと同視しなければならないわけではなく、譲受人は登記の時点で完全に所有権を取得するから、無権利者たる譲渡人から譲り受けた第三者は177条の「第三者」には当たらない!!!!!!→登記なくして対抗できる。

・Aがその不動産にBのために抵当権を設定し、その後AがCに同一不動産を譲渡した場合、Bはその抵当権設定の登記がなければその抵当権取得をCに対抗することができない。←Cは、Bの抵当権取得について当事者もしくはその包括承継人以外の者であって、Bの抵当権が設定された不動産の所有権を正当に取得しているので、Bの抵当権の取得について登記欠缺を主張する正当な利益を有するものとして「第三者」(177条)にあたる。

・背信的悪意者故に「第三者」(177条)に当たらない場合であっても、譲渡人と背信的悪意者の間の売買自体の無効をきたすものではないので、背信的悪意者は無権利者ではない!!→背信的悪意者は無権利であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有しないわけではない。

・実体的物権変動があった事実を知る者において物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、このような背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって、「第三者」(177条)に当たらない。=XはYA間の売買を知る者であり、Yの代理人であったことから背信的悪意者にあたる。

・背信的悪意者に当たるかどうかは当事者ごとに相対的に評価する!!→背信的悪意者からの転得者は、転得者自身が第一譲受人との関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、所有権取得を第一譲受人に対抗できる!!

・通行地役権の承役地が譲渡された場合においても、譲渡の時に承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、承役地の譲受人がそのことを知らなかったとしても特段の事情がない限り、通行地役権者は、登記なくして通行地役権を承役地の譲受人に対抗することができる。
←承役地の譲受人は、地役権登記の欠缺を主張するにおいて正当な利益を有する「第三者」に当たらない!!!
通行地役権の特殊性から、悪意者でない者でも登記の欠缺を主張することが信義に反する場合があると判断したものと解されている。

・取得時効の場合には、(背信的悪意の)悪意の要件が緩和され、時効完成に必要なすべての事実を認識している必要はなく、多年にわたる占有の認識の事実で足りる!!!!!
→時効取得した不動産について、取得時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を具備した者が背信的悪意者に当たるというためには、譲渡を受けた時点において、譲受人が多年にわたり当該不動産が占有されている事実を認識しており、登記の欠缺を主張することが信義に反するものといえる事情が存在することが必要である。