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1.訴えの概念
(1)訴えと請求
・訴えとは、
ある者が裁判所に対して、他の者に対する特定の権利または法律関係の主張を提示し、これに基づいて一定の内容及び形式の判決を求める申立てのことを指す。
・請求とは、
原告が被告に対してする特定の権利主張
(2)単一の訴えと併合の訴え
・単一の訴え
=1つの請求についての審判を求める訴え
・併合の訴え
=複数の請求についての審判を求める訴え
(3)独立の訴えと訴訟内の訴え
新たな訴訟手続きを開始させるために提起されるものであるか、既に係属中の訴訟内において、新たな請求についての併合審理を求めるために提起されるものであるか。
2.訴えの類型
(1)給付の訴え
給付の訴えとは、
被告に対する給付請求権の主張に基づいて、被告に対して一定の作為・不作為を命じる判決を求める申し立てのこと
・原告の主張する請求権が事実審の口頭弁論終結時に履行すべき状態にあるか否かで現在給付の訴えと将来給付の訴えに分類される。
・給付の訴えに係る請求を認容する判決は給付判決と呼ばれる。
執行力、既判力を有する。
・給付の訴えに係る請求を棄却する判決は確認判決になる。
権利の存否を既判力によって確定するのみで、執行力や形成力を持たない。
(2)確認の訴え
確認の訴えとは、
特定の権利の存在または不存在の主張に基づいて、当該権利の存否を確認する判決を求める申し立てのこと
・確認の訴えには、紛争の基本となっている権利の存否を既判力によって確定することで、派生紛争を含めた紛争を抜本的に解決する機能がある。
・確認の訴えには、現実の侵害が生じていない段階で権利についての不安を除去するために当該権利の存在を確定することで紛争を予防する機能も認められる。
(3)形成の訴え
・形成の訴えとは、
一定の形成原因の主張に基づいて、裁判所に対して一定の法律関係の変動をもたらす判決を求める申立て
・法律関係は形成判決の確定によって初めて変動するのであるから、この判決の確定前に、形成後の法律関係を別の訴訟において主張したとしても、これが斟酌されることはない。
(4)形式的形成の訴え
・形式的形成訴訟の意義
判決の確定によって法律関係が変動するという点では形成の訴えと共通するが、形成原因が具体的に定められておらず、訴訟物たる形成原因を観念することができないためにどのような判決を下すべきかが裁判官の健全な裁量に委ねられる!!
・合目的的な見地から裁量を行使することになることから、形式的形成訴訟は、実質的には非訟事件である。
公法上の境界確定訴訟
+判例(S43.2.22)
理由
上告代理人青柳孝夫の上告理由第一点について。
境界確定の訴は、隣接する土地の境界が事実上不明なため争いがある場合に、裁判によつて新たにその境界を確定することを求める訴であつて、土地所有権の範囲の確認を目的とするものではない。したがつて、上告人主張の取得時効の抗弁の当否は、境界確定には無関係であるといわなければならない。けだし、かりに上告人が本件三番地の四二の土地の一部を時効によつて取得したとしても、これにより三番地の四一と三番地の四二の各土地の境界が移動するわけのものではないからである。上告人が、時効取得に基づき、右の境界を越えて三番地の四二の土地の一部につき所有権を主張しようとするならば、別に当該の土地につき所有権の確認を求めるべきである。それゆえ、取得時効の成否の問題は所有権の帰属に関する問題で、相隣接する土地の境界の確定とはかかわりのない問題であるとした原審の判断は、正当である。所論引用の判例は、当裁判所の採らないところである。原判決に所論の違法はなく、右と異なる見解に立つ論旨は採用することができない。
同第二点について。
本件三番地の四一の土地と三番地の四二の土地の境界がAB線である旨の原審の認定判断は正当であつて、その過程に所論の違法は認められない。論旨は、原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであつて、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大隅健一郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠)
・原告の主張よりも原告に有利な境界を定めたとしても、246条に反したことにはならない。
・不利益変更の原則も妥当しない。
+判例(S38.10.15)
理由
上告代理人別府祐六の上告理由一乃至四について。
上告人が被上告人主張の有刺鉄線を張つて占有している本件四四八坪の土地は被上告人所有の本件九九七番の二山林(後に九九六番の一宅地となる。以下同じ)の一部であり、右土地の明渡を受けるまで被上告人は賃料相当の一箇月金二五〇〇円の損害を蒙るものとした原審認定は、挙示の証拠に照らして首肯し得られる。右認定に関する範囲では、所論は畢竟原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものに帰し、原判決に所論の違法は認められない。従つて所論のうち被上告人の施設物収去土地明渡の反訴請求に関する部分は採用し得ず、その上告は棄却すべきである。
次に所論一乃至三のうち上告人の土地境界確認の本訴請求に関する部分につき検討する。原判決は、甲第三号証、乙第二号証により、公図上では本件九九八番の八畑及び本件外九九八番の二の土地と本件九九七番の二山林との境界線は直線をなしているとの前提に立ち、これとほぼ合致することを根拠に、原判決添付第二図面の(リ)(チ)の直線を水路まで延長した線を本件九九八番の八畑と本件九九七番の二山林の境界線と認定しているが、右公図たる乙第二号証(或いは甲第三号証)によると、原判決添付各図面記載の道路の南東側では、まず本件九九七番の二山林と本件外九九八番の二畑(或いは九九八番の七畑)が接し、続いて上記両地の境界線(直線)を延長した線を境に本件九九七番の二山林と本件九九八番の八畑が接しているものと認められ、このことは本件記録上殆んど疑がないのである。右によれば、第二図面の(リ)(チ)の線を水路まで延長した線全部が本件九九七番の二山林と本件九九八番の八畑の境界であるのではなく、両地の境界は右線の一部であるということになる。しかるに原判決では、右線のうちどの部分が本件両地の境界であるか不明である(一端すなわち南東端が前記延長線の水路に交わる点であるとしていることは判るが、他の一端すなわち北西端は判明しない)。されば、原判決が第二図画(リ)(チ)の直線を水路まで延長した線を本件両地の境界線と認定しているのについては、理由不備の違法があるものというべく、この点に関し、所論は結局理由があり、原判決中土地境界確認請求に関する部分は破棄すべきである。
なお、原判決中の右部分につき職権をもつて調査するに、原判決は本件両地の境界につき第一審判決と判断を異にし、自ら証拠により第二図面(リ)(チ)の直線を水路まで延長した線を境界と認定しながら、その認定は第一審判決よりも被上告人に有利な認定であるから、被上告人が不服を申立てていない以上、第一審判決を変更しないとし、よつて上告人の控訴を棄却しているが、右判断には次のような違法があるものと認める。
境界確定訴訟にあつては、裁判所は当事者の主張に覇束されることなく、自らその正当と認めるところに従つて境界線を定むべきものであつて、すなわち、客観的な境界を知り得た場合にはこれにより、客観的な境界を知り得ない場合には常識に訴え最も妥当な線を見出してこれを境界と定むべく、かくして定められた境界が当事者の主張以上に実際上有利であるか不利であるかは問うべきではないのであり、当事者の主張しない境界線を確定しても民訴一八六条の規定に違反するものではないのである(大審院大正一二年六月二日民事連合部判決、民集二巻三四五頁、同院昭和一一年三月一〇日判決、民集一五巻六九五頁参照)。されば、第一審判決が一定の線を境界と定めたのに対し、これに不服のある当事者が控訴の申立をした場合においても、控訴裁判所が第一審判決の定めた境界線を正当でないと認めたときは、第一審判決を変更して、自己の正当とする線を境界と定むべきものであり、その結果が控訴人にとり実際上不利であり、附帯控訴をしない被控訴人に有利であつても間うところではなく、この場合には、いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はないものと解するのが相当である。以上によれば、前記のように、原審が第一審判決と判断を異にし自ら本件両地の境界を認定しながらも、被上告人が不服を申立てていないから、第一審判決を被上告人に有利に変更しないとしているのは正当でなく、原判決中の前記部分は、この点においても破棄を免れない。
よつて、民訴四〇七条、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官五鬼上堅磐は海外出張中につき署名押印することができない。裁判長裁判官 横田正俊)
・弁論主義は妥当しない!
←公法上の境界は当事者が自由に処分できる事項ではないということのほかに、形成原因の具体的な定めがないため、弁論主義の対象となるべき主要事実を観念しがたい。
・証明責任も適用されない!
←主要事実が観念しがたいことから、主要事実について審議不明である場合に適用される証明責任の適用も想定しがたい。
・裁判所は、請求棄却判決をすることはできず、すべての事情を総合考慮して、何らかの境界の確定を求めるものである!
(5)類型論の意義
3.訴え定期の方式
(1)訴状の提出と印紙の貼付
・訴えの提起
+(訴え提起の方式)
第百三十三条 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び原因
(2)訴状の記載事項
上記の記載の欠缺は訴状却下の原因になるため、必要的記載事項である。
+(裁判長の訴状審査権)
第百三十七条 訴状が第百三十三条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律 (昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
2 前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。
3 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
・当事者の記載は、原告及び被告が他の者から識別できる程度に特定したものでなければならない。
・法定代理人も訴状において明らかにしなければならない。
←実際の訴訟追行者を明らかにするため!
・訴訟無能力者に対する文書の送達
+(訴訟無能力者等に対する送達)
第百二条 訴訟無能力者に対する送達は、その法定代理人にする。
2 数人が共同して代理権を行うべき場合には、送達は、その一人にすれば足りる。
3 刑事施設に収容されている者に対する送達は、刑事施設の長にする。
・訴訟代理人の記載については、その欠缺が訴状却下の原因になるという意味での必要的記載事項ではない。
・請求の趣旨
=原告の要求する判決の内容および形式の表示
・請求の原因
=原告による権利主張を特定する事実
(3)請求の特定
・処分権主義の点から、請求の特定は審理をするために不可欠。
請求の特定は、被告にとって防御の対象を明確にし、十分な訴訟追行をする機会を与えるためにも重要。
・金銭の支払を求める給付の訴えにおいては、原告が求める数額を訴状に記載することが必要である。
・金銭債務不存在確認訴訟においては、債務額の明示のない訴状も不適法とまではいえない。
4.訴え定期後の手続
(1)事件の分配と訴状審査
+(裁判長の訴状審査権)
第百三十七条 訴状が第百三十三条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律 (昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
2 前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。
3 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
(2)訴状の送達
+(訴状の送達)
第百三十八条 訴状は、被告に送達しなければならない。
2 前条の規定は、訴状の送達をすることができない場合(訴状の送達に必要な費用を予納しない場合を含む。)について準用する。
・訴状が適式であっても、訴えが不適法であることが明らかであり、当事者のその後の訴訟活動によって訴えを適法とすることが全く期待できないような場合、裁判所は被告に送達せずに判決をもって訴えを却下することができる!!!
+判例(H8.5.28)
理由
上告人の上告理由第五ないし第七点について
所論は、要するに、第一審裁判所は、本件訴状を被告に送達しないまま、口頭弁論を経ずに訴えを却下し、その判決正本をも被告に送達せず、また、原審裁判所も、同様口頭弁論を経ずに控訴を棄却し、控訴状及び判決正本を被告に送達しなかったが、このような一、二審の判断及び措置は、民訴法一二五条、一九三条一項、二二九条等の規定及び憲法七六条三項、八二条に違背するというのである。
確かに、訴えが不適法な場合であっても、当事者の釈明によっては訴えを適法として審理を開始し得ることもあるから、そのような可能性のある場合に、当事者にその機会を与えず直ちに民訴法二〇二条を適用して訴えを却下することは相当とはいえない。しかしながら、裁判制度の趣旨からして、もはやそのような訴えの許されないことが明らかであって、当事者のその後の訴訟活動によって訴えを適法とすることが全く期待できない場合には、被告に訴状の送達をするまでもなく口頭弁論を経ずに訴え却下の判決をし、右判決正本を原告にのみ送達すれば足り、さらに、控訴審も、これを相当として口頭弁論を経ずに控訴を棄却する場合には、右被告とされている者に対し控訴状及び判決正本の送達をすることを要しないものと解するのが相当である。けだし、そのような事件において、訴状や判決を相手方に送達することは、訴訟の進行及び訴えに対する判断にとって、何ら資するところがないからである。
ところで、記録によれば、本件訴えは、上告人が、通算老齢年金の支給裁定の変更を求めて提起した訴えについて、第一審裁判所が請求を棄却し、控訴裁判所が控訴を棄却し、最高裁判所が上告を棄却する旨の判決をしたのに対し、国を被告として、更に右判決の無効確認を求めるとともに、右裁定の変更を求めたものであることが明らかである。このように、最高裁判所まで争って判決が確定した後、更に右判決の無効確認を求める訴えは、民事訴訟法上予定されていない不適法な訴えであって、補正の余地は全くないから、このような訴えにつき、訴状において被告とされている者に対し、訴状を送達することなく口頭弁論を経ないで訴えを却下し、その判決を右被告に送達しなかった第一審裁判所の判断及び措置並びに同様に控訴状の送達をせずに口頭弁論を経ないで控訴を棄却し、その判決を被控訴人とされている者に送達しなかった原審の判断及び措置は、いずれもこれを正当として是認することができる。したがって、右措置に、民訴法一二五条、二二九条及び一九三条一項違背の違法はなく、右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。また、右判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。原判決及び一、二審の訴訟手続にその余の所論の違法もなく、論旨は採用することができない。
同第一ないし第四点について
原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立って原審の法令の解釈適用の誤りをいうか、又は原審の判断と関係のない事項をあげて原判決の不当をいうものにすぎず、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官千種秀夫 裁判官園部逸夫 裁判官可部恒雄 裁判官大野正男 裁判官尾崎行信)
(3)口頭弁論期日の指定
+(口頭弁論期日の指定)
第百三十九条 訴えの提起があったときは、裁判長は、口頭弁論の期日を指定し、当事者を呼び出さなければならない。
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