会社法 事例で考える会社法 Q16 その書類、見せてもらいます


Ⅰ はじめに

+(会計帳簿の閲覧等の請求)
第四百三十三条  総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない
一  会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二  会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2  前項の請求があったときは、株式会社は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない
一  当該請求を行う株主(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二  請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三  請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき
四  請求者が会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
五  請求者が、過去二年以内において、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
3  株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿又はこれに関する資料について第一項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
4  前項の親会社社員について第二項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。

+(株主名簿の備置き及び閲覧等)
第百二十五条  株式会社は、株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあっては、その営業所)に備え置かなければならない。
2  株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一  株主名簿が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二  株主名簿が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
3  株式会社は、前項の請求があったときは、次のいずれかに該当する場合を除き、これを拒むことができない。
一  当該請求を行う株主又は債権者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二  請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三  請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
四  請求者が、過去二年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
4  株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該株式会社の株主名簿について第二項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
5  前項の親会社社員について第三項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。

Ⅱ 会計帳簿閲覧謄写請求権
1.甲社の請求
(1)具体的な請求と主張・立証事項
(2)請求の理由の明示
・請求の理由を具体的に示す
+判例(H2.11.8)
理  由
上告代理人中村忠行、同海老原照男の上告理由について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、本件閲覧請求が閲覧請求書に閲覧等の請求の理由を具体的に記載してされたものとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 橋元四郎平 裁判官 角田禮次郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 四ッ谷巖 裁判官 大堀誠一)

++解説
《解  説》
一、被告会社(被上告人)は採石等を目的とする株式会社であり(発行済株式総数は昭和五五年七月二四日当時三万株)、原告(上告人)は右時点において少なくとも被告の株式一万株を有する株主であったところ(原告は二万株を有する旨主張するが、右時点において原告が一万株を有していたことは争いがない)、原告は、昭和五五年七月二四日、被告に対し、「此度貴社が予定されている新株の発行その他会社財産が適正妥当に運用されているかどうかにつき、商法二九三条の六の規定に基づき、貴社の会計帳簿及び書類の閲覧謄写をいたしたいのでこの旨、請求に及びます。」と記載した書面により、被告の会計の帳簿及び書類の閲覧等を請求した。これに対して被告は、右書面によっては閲覧等を求める対象について具体的な特定がされていないこと、閲覧の目的が具体的に明らかにされていないことを指摘して原告の回答を求めたが、原告はこれに対する回答をすることなく、同年一一月一日本件閲覧請求の訴えを提起した。

二、一審は、本件閲覧請求の対象及び理由は本訴において特定されたものと解し原告の請求を認容したが、原審は、本件閲覧請求は閲覧請求の目的を具体的に示したものといえず、また、閲覧の対象を何ら具体的に特定したものでないとして、一審判決を取り消して原告の請求を棄却した。
本判決も、本件閲覧請求は、閲覧請求書にその理由を具体的に記載してしたものとはいえない旨を判示し、この点に関する原審判断を是認して原告の上告を棄却したものである。

三、閲覧を請求する書面に記載すべき理由(商法二九三条ノ六第二項)が具体的なものでなければならないことは、学説の一致して説くところである。例えば、単に株主の権利の確保又は行使に関し調査するため(大隅=今井・会社法論中Ⅱ四九四頁、新版注釈会社法(9)二一二頁)、会計の不正を調査するため(本間輝雄「株主の帳簿閲覧請求権」演習商法(会社)下巻六四五頁)、株主としての利益を擁護するため(松田=鈴木・条解株式会社法下四五九頁)等の記載は不十分な記載である。「理由の記載がどの程度具体的でなければならないかという問題は、会社がその理由を見て、その理由と関連する帳簿・書類を特定できる程度に具体的でなければならない」というべきであろう(前田雅弘「株主の帳簿閲覧請求権の要件」商事法務一二〇七号二六頁(3)〔原判決の評釈〕)。
閲覧請求の理由によって閲覧の対象である帳簿・書類の範囲が限定されるかどうかについては、限定説と非限定説の対立があるが(新版注釈会社法(9)二一〇~二一一頁参照)、非限定説は、株主は一切の帳簿・書類の閲覧を請求しうるものと解し、株主が殊更に不必要な帳簿・書類の閲覧を求めたときは、会社はこれを立証して閲覧請求を拒み得るとするのであるから、その実質においては、閲覧の対象である帳簿・書類の範囲が閲覧請求の理由によって限定されることを認めるものと解することができるであろう。

四、本件の結論は妥当なものと思われるが、「少なくとも『新株の発行』という文言は、閲覧請求の目的が具体的になっており、その目的に関する帳簿書類の閲覧請求は認められることとなるのではなかろうか」とする批判がある(稲田俊信=秋坂朝則・日本法学五三巻一号一八三頁、同旨・砂田太士・税経通信四二巻九号二四九頁。いずれも原判決の評釈)。しかし、原判決が判示するように、「右の閲覧の目的のうち『新株の発行』は一つの例示であり、目的はそれに止まらないと解されるから、結局、被控訴人(原告)が目的として明らかにしたのは『会社財産が適正妥当に運用されているかどうか』という極めて抽象的な事項であって、これでは、被控訴人(原告)が本訴提起後に……主張したような……目的を窺い知ることは困難」というべきであり、「この部分だけを取り出して、理由の記載として十分だと見ることはできない」(前田・前掲評釈二六頁)というべきであろう。
なお、原判決は、「法は、閲覧等の請求書に、例えば何年度のどの帳簿というように閲覧の対象を明示して請求することを当然の前提としているものと解するのが相当である」旨を判示し、閲覧請求の対象の特定の問題にも触れているが、閲覧請求の理由と離れて、抽象的に対象の特定を論じてみても、それほどの意味はないと思われる。もっとも、訴訟の目的物の特定の観点から、請求の対象をどの程度特定する必要があるかは別論というべきであるが、通常は裁判所の釈明・当事者の訴訟活動によって解決が図られるであろう。
また、本件においては、原告の本訴における対象・理由の特定が問題とされているが、原告が閲覧請求に必要な持株要件を継続して具備していたのであれば、本件訴訟中において訴えを追加的に変更して新たな請求をすることも可能であったろう。しかし、本件においては、原告の請求は、あくまで原告が本件訴訟提起前にした閲覧請求(本件閲覧請求)であるとして判断されている。
原判決の評釈等として、前掲前田評釈、稲田=秋坂評釈、砂田評釈のほか、久保田光昭・ジュリスト九四四号一三三頁、坂倉充信・本誌六七七号(昭和六二年度主要民事判例解説)二三二頁がある。

・閲覧を求める理由と、閲覧させるべき書面の範囲の特定を。

・記載事項にかかる事実を立証すべき必要はない!
+判例(H16.7.1)
理由
上告代理人林信一ほかの上告受理申立て理由(ただし、排除されたものを除く。)について
1 本件は、上告人が、株式会社又は有限会社である被上告人らに対し、商法293条ノ6又は有限会社法44条ノ2の規定に基づき、第1審判決別紙会計帳簿等目録記載の会計帳簿等(以下「本件会計帳簿等」という。)の閲覧謄写を求めた事件である。
2 原審の確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。
(1) 被上告人Y1以外の被上告人らは、いずれも、定款をもって株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨を定めている株式会社である。
(2) A(以下「A」という。)は、被上告人Y2の株式を77万4800株(発行済株式総数の4.6%)、被上告人Y3の株式を15万8100株(同39.5%)、被上告人Y4の株式を45株(同22.5%)、被上告人Y5の株式を90.4株(同45%)、被上告人Y6の株式を42株(同21%)、被上告人Y1の持分(出資口数)を15万3720口(総出資口数の38.4%)有していたが、平成12年11月15日、死亡した。上記株式及び持分(以下「本件株式等」という。)は、現在、上告人を含むAの法定相続人4名による遺産の準共有の状態にあり、上告人の準共有持分は、4分の3である。
(3) 上告人は、被上告人らに対し、平成13年2月4日ころ、本件株式等について株主又は社員の権利を行使すべき者に上告人を選定した旨の通知をした。
(4) 上告人は、本件会計帳簿等の閲覧謄写を請求するに当たり、その理由として、次のとおり書面に記載した。
ア 理由〈1〉(本件貸付けに係る調査の必要)
Bグループに属するC社は、被上告人Y2から317億7200万円、被上告人Y1から99億5000万円、被上告人Y6から71億2000万円、被上告人Y4から7億円の各無担保融資(以下、これらを「本件貸付け」と総称する。)を受けていた。しかるに、C社は、平成13年9月17日、被上告人Y2の代表取締役であるD(以下「D」という。)に対し、無担保で72億4775万円を融資したため、その財務状況が悪化し、本件貸付けの回収が不可能となるおそれが生じた。上記被上告人4社のした本件貸付けは、違法、不当なものであり、上告人は、適正な監視監督を行うために、上記被上告人4社につき、本件会計帳簿等の閲覧謄写をする必要がある。
イ 理由〈2〉(本件株式等の時価算定の必要)
上告人は、遺産分割協議及び相続税支払のための売却に備え、相続により取得した本件株式等の時価を適正に算定するために、本件会計帳簿等の閲覧謄写をする必要がある。
ウ 理由〈3〉(本件美術品取得の調査の必要)
平成12年度の決算期時点において、被上告人Y2は簿価47億8117万7467円相当の、被上告人Y1は簿価154億9229万5942円相当の美術品(以下、これらを「本件美術品」と総称する。)を所有し、いずれも、Bグループに属するE財団法人に寄託している。上記被上告人2社がこのような多額の美術品を非営利目的で取得することは会社財産を著しく減少させ、会社ひいては株主、社員に回復できない損害を被らせるおそれが高いから、本件美術品の内容・数量、購入された時期・金額、購入の相手方等を調査するため、上記被上告人2社につき、本件会計帳簿等の閲覧謄写をする必要がある。
エ 理由〈4〉(本件株式譲渡に係る調査の必要)
被上告人Y1は、平成12年12月11日、Dに対し、同被上告人の有するC社の株式73万5000株(以下「本件C社株」という。)を代金合計73万5000円で売却した(以下、この株式の売却を「本件株式譲渡」という。)。本件株式譲渡は、不当な安値でされたものであり、本件株式譲渡に係る会計処理の内容及び本件C社株の取得価格等を調査するため、同被上告人につき、本件会計帳簿等の閲覧謄写をする必要がある。
3 原審は、上記事実関係の下で、次のとおり判断し、上告人の請求を棄却すべきものとした。
(1) 株式会社の株主又は有限会社の社員(以下「株主等」という。)が会計帳簿等の閲覧謄写を請求する場合には、株主等は、会社に対し、閲覧謄写の対象となる会計帳簿等が特定できる程度に当該会計帳簿等の閲覧謄写を求める理由を具体的に示すことが必要であり、かつ、その理由を基礎付ける事実が客観的に存在していることが必要である。
(2) 上告人は、理由〈1〉において、前記被上告人4社の本件貸付けの不当をいうが、本件貸付けに深く関与していたことがうかがわれるAの相続人である上告人がその不当を主張することは信義則上許されないし、また、上告人は、理由〈3〉において、前記被上告人2社の本件美術品の取得の違法をいい、理由〈4〉において、被上告人Y1の本件株式譲渡の違法をいうが、本件美術品の取得及び本件株式譲渡が違法であるとの事実を基礎付ける事実が客観的に存在しているものとは認めることができないから、上告人が理由〈1〉、〈3〉、〈4〉をもってする本件会計帳簿等の閲覧謄写請求は、商法293条ノ7第1号(被上告人Y1については有限会社法46条により準用される同号)所定の「株主ガ株主ノ権利ノ確保若ハ行使ニ関シ調査ヲ為ス為ニ非ズシテ請求ヲ為シタルトキ」(以下、同号中のこの部分を「第1号所定の拒絶事由」という。)に当たり、許されない。
(3) 上告人の本件株式等の時価算定の目的は、結局、遺産分割協議の進展を図ることにあると解されるから、上告人が理由〈2〉をもってする本件会計帳簿等の閲覧謄写請求は、株主等の地位を離れた純粋に個人的な目的でされたものであり、第1号所定の拒絶事由に当たり、許されない。

4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1) 商法及び有限会社法は、株主又は社員が会社に対し会計帳簿等の閲覧謄写を請求するための要件として、株式会社については総株主の議決権の100分の3以上、有限会社については総社員の議決権の10分の1以上を有することのほか、理由を付した書面をもって請求をすることを要求している(商法293条ノ6第1項、第2項、有限会社法44条ノ2第1項、46条本文)。そして、上記の請求の理由は、具体的に記載されなければならないが、上記の請求をするための要件として、その記載された請求の理由を基礎付ける事実が客観的に存在することについての立証を要すると解すべき法的根拠はない
上告人が、本件会計帳簿等の閲覧謄写請求をするに当たり、その理由として書面に記載した前記の理由〈1〉、〈3〉、〈4〉を、上記の具体的な記載とみることができるか否かについて検討するに、まず、前記の理由〈1〉の記載についてみると、同記載は、前記被上告人4社がC社に対する多額の無担保融資である本件貸付けをしたことが、違法、不当であり、本件貸付けの時期、内容(貸付け条件、弁済期等)等を調査する必要があることをいうものと解されるから、前記被上告人4社の本件貸付けに係る会計帳簿等の閲覧謄写を請求する理由の記載として、その具体性に欠けるところはないというべきである。
次に、前記の理由〈3〉の記載についてみると、同記載は、前記被上告人2社が多額の本件美術品を購入したことが、違法、不当であるとして、本件美術品の購入の時期、内容(代金、相手方等)等を調査する必要があることをいうものと解されるから、前記被上告人2社の本件美術品購入に係る会計帳簿等の閲覧謄写を請求する理由の記載として、その具体性に欠けるところはないというべきである。
また、前記の理由〈4〉の記載についてみると、同記載は、被上告人Y1がDに対して1株1円という安値で本件株式譲渡をしたことが、違法、不当であるとして、同被上告人における本件株式譲渡に係る会計処理の内容及び譲渡された本件C社株の取得価格等を調査する必要があることをいうものと解されるから、被上告人Y1の本件株式譲渡に係る会計処理及び譲渡された本件C社株の取得価格等に係る会計帳簿等の閲覧謄写を請求する理由の記載として、その具体性に欠けるところはないというべきである。
そして、上記の各請求につき、第1号所定の拒絶事由に該当すると認めるべき相当の理由があると解すべき事情は存しない。また、Aが本件貸付けに深く関与していたとしても、そのことをもって直ちに上告人の前記の理由〈1〉による本件会計帳簿等の閲覧謄写請求が信義則に違反するものということはできない。
そうすると、以上と異なる見解に立って、上告人の上記各理由による本件会計帳簿等の閲覧謄写の請求が許されないものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
(2) 次に、上告人の前記の理由〈2〉による本件会計帳簿等の閲覧謄写請求についてみるに、遺産分割協議のためという点はともかくとして、理由〈2〉は、相続税支払のための売却に備え、上告人が相続により取得した本件株式等の時価を適正に算定するために、本件会計帳簿等の閲覧謄写をする必要があるという理由も掲げており、その具体性に欠けるところはない。そこで、株式等の売却に備えてその時価を算定するための会計帳簿等の閲覧謄写請求が、第1号所定の拒絶事由に該当するかどうかについて検討する。
商法及び有限会社法においては、株式の譲渡につき定款で取締役会の承認を要する旨を定めている株式会社の株主が株式を譲渡しようとするとき、又は有限会社の社員がその持分を社員以外の者に譲渡しようとするときには、当該株主又は社員は、会社に対し、所定の事項を記載した書面をもって特定の相手方に対する譲渡を承認すべきこと又はこれを承認しないときには他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求するものとされ、この指定の請求がされた場合において、取締役会又は社員総会は、その譲渡を承認しないときは、他に譲渡の相手方を指定しなければならず、指定された者との間で売買価格についての協議が調わないときは、当事者は、裁判所に対して、売買価格の決定を請求することができるなど、株式又は持分の譲渡制限に伴う一連の手続が定められている(商法204条ノ2、204条ノ3、204条ノ3ノ2、204条ノ4、有限会社法19条)。上記のとおり、株式の譲渡につき定款で制限を設けている株式会社又は有限会社において、株主又は社員が、その有する株式又は持分を他に譲渡し、その対価を得ようとする場合には、会社との関係で上記の手続を執ることが要求され、会社が指定した者との間での売買価格についての協議を行うこと等も定められているのであるが、当該株主又は社員において、上記の手続に適切に対処するためには、その有する株式又は持分の適正な価格を算定するのに必要な当該会社の資産状態等を示す会計帳簿等の閲覧等をすることが不可欠というべきである。
したがって、株式の譲渡につき定款で制限を設けている株式会社又は有限会社において、その有する株式又は持分を他に譲渡しようとする株主又は社員が、上記の手続に適切に対処するため、上記株式等の適正な価格を算定する目的でした会計帳簿等の閲覧謄写請求は、特段の事情が存しない限り、株主等の権利の確保又は行使に関して調査をするために行われたものであって、第1号所定の拒絶事由に該当しないものと解するのが相当である。
そうすると、上記特段の事情の存することがうかがえない本件においては、上告人が、前記の理由〈2〉において、相続により取得した本件株式等の売却に備え、その適正な価格を算定するために必要であるとして行った本件会計帳簿等の閲覧謄写請求は、第1号所定の拒絶事由に該当しないものというべきである。以上と異なる見解に立って、上記の請求が第1号所定の拒絶事由に該当するとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
5 以上によれば、原判決のうち上告人敗訴部分は破棄を免れない。論旨は、上記の趣旨をいうものとして理由がある。そして、本件については、閲覧謄写を認めるべき会計帳簿等の範囲等について更に審理を尽くさせる必要があるから、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 泉德治 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴)

2.乙社の反論
・将来的に競争関係が発生する可能性がある場合でも、秘密利用や会社の損害が相当の蓋然性をもって想定されるのであれば、請求の拒絶を認めることが法の趣旨に合致する。

・主観的意図は求めない
+判例(H21.1.15)
理由
1 抗告代理人宮崎真の抗告理由三について
(1) 本件は、相手方が、抗告人の親会社であるA社の株主として、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ)293条の8第1項に基づき、原々決定別紙1記載の抗告人の会計帳簿等(以下「本件会計帳簿等」という。)の閲覧謄写の許可を申請した事案である(以下、この申請を「本件許可申請」という。)。所論は、相手方につき同法293条の7第2号に掲げる事由があるので、同法293条の8第2項に基づき、本件許可申請は却下されるべきである旨をいうものである。
(2) 記録によれば、本件の経緯等は次のとおりである。
ア 抗告人は、青果仲卸業務の受託等を目的とする株式会社であり、その発行済株式5000株はすべてA社が有している。
イ A社は、青果の仲買業等を目的とする株式会社である。A社は、名古屋市中央卸売市場北部市場において、青果部に属する仲卸業者として名古屋市長の許可を得ている。A社及び抗告人は、過去に果実類を取り扱っていた時期もあったが、平成17年6月以降はその取扱いを中止し、現在は専ら野菜類を取り扱っている。A社及び抗告人が近い将来において果実類を取り扱う予定はない。
ウ B社は、青果物の仲卸業等を目的とする株式会社である。B社は、名古屋市中央卸売市場本場において、青果部に属する仲卸業者として名古屋市長の許可を得ている。B社の取扱商品は専ら果実類であり、近い将来において野菜類を取り扱う予定はない。
エ 相手方は、A社の株式を5840株(総株主の議決権の約3.6%)有しており、相手方の子であるCは、A社の株式を3万4320株(同約21.5%)有している。Cは、B社の株式の30%以上を有し、同社の監査役に就任しているが、相手方はB社の株式を有していない。
オ 相手方は、Cと共に、商法293条の8第1項に基づき、原々審に対し、本件許可申請をした。Cについては、同法293条の7第2号に掲げる事由があるとして、同法293条の8第2項に基づき、許可申請を却下した原々決定が確定した。

(3) 原審は、次のとおり判断して、相手方が本件会計帳簿等のうち原々決定別紙1記載1、2、4、7(ただし、7についてはフレンドシップ1世に関するものに限る。)の会計帳簿等を閲覧謄写することを許可した。
ア 相手方は、Cの母親で同人と同居し、同人と同一の手続で本件許可申請をしたもので、代理人弁護士も共通であるから、両名の請求はその実質において一体のものと認められ、Cにつき商法293条の7第2号に規定する拒絶事由がある場合は、相手方についても同一の拒絶事由があると認めるのが相当である。
イ 会計帳簿等の閲覧謄写を求める株主が商法293条の7第2号に規定する競業会社の株主等であるという客観的事実があれば、原則として同号の拒絶事由に当たるが、当該株主が、会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る事実を自己の競業に利用し、又は他の競業者に利用させようとする主観的意図がないことを立証した場合は、同号の拒絶事由に当たらず、裁判所は閲覧謄写を許可できると解するのが相当である。
A社及び抗告人とB社は、いずれも名古屋市内の青果物の仲卸業者であって業務内容も同種であるが、現在、A社及び抗告人は専ら野菜類を、B社は専ら果実類を取り扱い、近い将来において取扱商品が競業する可能性はないこと、したがって、Cが、抗告人の本件会計帳簿等の閲覧謄写により得られた抗告人の取扱商品である野菜類についての営業秘密を、B社の果実類の商取引に利用することはあり得ないことなどからすると、Cには上記の主観的意図が存在しないことが立証されたといえるから、Cにつき同号に規定する事由はなく、したがって、相手方についても同号に規定する事由がない。

(4) 原審の上記判示は是認することができないが、相手方には商法293条の8第2項において不許可事由とされている同法293条の7第2号に掲げる事由がないとして、本件許可申請の一部につきこれを許可した原審の判断は、結論において是認することができる。その理由は、次のとおりである。
ア 商法293条の7第2号は、会計帳簿等の閲覧謄写を請求する株主が会社と競業をなす者であること、会社と競業をなす会社の社員、株主、取締役又は執行役であることなどを閲覧謄写請求に対する会社の拒絶事由として規定するところ、同号は、「会社ノ業務ノ運営若ハ株主共同ノ利益ヲ害スル為」などの主観的意図を要件とする同条1号と異なり、文言上、会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る事実を自己の競業に利用するためというような主観的意図の存在を要件としていない。そして、一般に、上記のような主観的意図の立証は困難であること、株主が閲覧謄写請求をした時点において上記のような意図を有していなかったとしても、同条2号の規定が前提とする競業関係が存在する以上、閲覧謄写によって得られた情報が将来において競業に利用される危険性は否定できないことなども勘案すれば、同号は、会社の会計帳簿等の閲覧謄写を請求する株主が当該会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば、会社は当該株主の具体的な意図を問わず一律にその閲覧謄写請求を拒絶できるとすることにより、会社に損害が及ぶ抽象的な危険を未然に防止しようとする趣旨の規定と解される
したがって、会社の会計帳簿等の閲覧謄写請求をした株主につき同号に規定する拒絶事由があるというためには、当該株主が当該会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば足り、当該株主に会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図があることを要しないと解するのが相当であり、同号に掲げる事由を不許可事由として規定する同法293条の8第2項についても、上記と同様に解すべきである。
イ そこで、相手方について、商法293条の7第2号に掲げる客観的事実の有無を検討する。前記認定事実によれば、相手方は、B社の株主であり監査役でもあるCの母であって、Cと共に本件許可申請をしたものであるが、相手方とCは、いずれも抗告人の親会社であるA社の総株主の議決権の100分の3以上を有する株主として、それぞれ各別に抗告人の会計帳簿等の閲覧謄写請求をする資格を有するものである。したがって、同号に掲げる客観的事実の有無に関しては、相手方及びCの各許可申請につき各別にこれを判断すべきであって、相手方とCが親子であり同一の手続で本件会計帳簿等の閲覧謄写許可申請をしたということのみをもって、一方につき同号に掲げる不許可事由があれば当然に他方についても同一の不許可事由があるということはできない。そして、前記(2)の事実によれば、相手方はB社の株主ではなく、B社の役員であるなどの事情もうかがわれないから、B社が抗告人と競業をなす会社に当たるか否かを判断するまでもなく、相手方については同号に掲げる事由がないというべきである
(5) 以上によれば、相手方につき商法293条の7第2号に掲げる事由がないとして本件許可申請の一部につきこれを許可した原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
2 その余の抗告理由について
所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
3 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 泉徳治 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 涌井紀夫 裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子)

++解説
《解  説》
 1 本件は,Xが,Yの親会社であるA社の株主として,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下「旧商法」という。)293条の8第1項に基づき,Yの会計帳簿等の閲覧謄写の許可を求めた事案である。同条2項は,同法293条の7(以下「本条」という。)第2号に掲げる事由があるとき,すなわち,当該株主が子会社の競業者であるときなどを不許可事由の一つとして規定しているが,本件では,Xにつき子会社と競業をなす会社の株主等であるときとの不許可事由が認められるか否かが問題となった。
 2 本件の事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) Y及びその親会社であるA社は,いずれも,青果物の仲卸業等を目的とする名古屋市内の株式会社であり,Yの発行済株式はすべてA社が保有している。Y及びA社は,現在は専ら野菜類を取り扱っている。
 (2) B社も,青果物の仲卸業等を目的とする名古屋市内の株式会社であるが,取扱商品は専ら果実類である。
 (3) X及びその実子であるCは,それぞれがA社の株式の100分の3以上を保有する株主である。Xは,Cと共同で,親会社であるA社の株主として,子会社であるYの会計帳簿等の閲覧謄写許可申請をした。また,Cは,B社の株式の30%以上を保有する株主兼監査役であるが,XはB社の株主ではない。
 3 原々審は,Cについては本条2号に掲げる事由があるとしてその申請を却下したが,Xについては同号に掲げる事由がないと判断して,その申請を一部許可した。同許可決定に対してYが抗告したところ,原審は,①XとCの請求はその実質において一体と認められるから,Cに不許可事由があればXにも不許可事由があると解すべきである,②親会社の株主が子会社と競業をなす者であるなどの客観的事実がある場合であっても,当該株主が,閲覧謄写によって知り得る事実を自己の競業に利用するなどの主観的意図がないことを立証した場合はこれを許可できると解すべきところ,Cにつきその立証があったと判断して,対象範囲を原々審より限定した上でXの申請を一部許可すべきものとした。これに対し,Yが抗告許可を申し立て,許可された。
 4 本決定は,まず,本条第2号に掲げる事由があるというためには,会計帳簿等の閲覧謄写許可申請をした親会社の株主が子会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば足り,当該株主に会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図があることを要しないと判断した。本決定は,さらに,上記の客観的事実の有無は,X及びCの各許可申請につき各別にこれを判断すべきところ,XはB社の株主等ではないから,Xについては同号に掲げる事由がないと判断し,原審の判断は結論において是認できるとして,Yの抗告を棄却した。
 5(1) 株式会社の総株主の議決権の100分の3以上を有する株主は,会社に対し会計帳簿等の閲覧謄写を請求する権利を有するが(旧商法293条の6第1項),会社は,本条各号の事由があることを主張立証すればこれを拒絶することができる(同条第2項)。本条各号は制限列挙であり,これを拡張して解釈することは許されないと解されている。また,親会社の総株主の議決権の100分の3以上を有する株主は,裁判所の許可を得て子会社の会計帳簿等の閲覧謄写を請求することができるが(同法293条の8第1項),裁判所は,本条各号に掲げる事由があるときは許可をすることができないとされる(同条第2項)。すなわち,本条各号は,株主による会計帳簿等の閲覧謄写請求に対する会社の拒絶事由を定めるものであるが,これらの事由は,親会社の株主による子会社の会計帳簿等の閲覧許可申請における不許可事由ともなるものである。
 (2) 本条2号の事由該当性の判断に当たり,当該株主が会社と競業をなすものであるなどという客観的事実のみで足りるか,それとも,当該株主が閲覧謄写によって知り得る情報を自己の競業に利用し又は他の競業者に利用させようとする具体的意図があることという主観的要件まで要するか否かにつき,学説は,①主観的要件不要説(大隅健一郎=今井宏『会社法論(中)〔第3版〕』510頁,田中誠二『三全訂会社法詳論(下)』918頁,田中耕太郎編『株式会社法講座(4)』1469頁等),②主観的要件必要説(伊沢孝平『註解新会社法』526頁等),③主観的意図推定説(客観的事実が存在すれば主観的意図が推定されるが,当該株主の側で主観的意図の不存在を立証すれば閲覧謄写請求権を行使できるとする説。大森忠夫=矢沢惇編『注釈会社法(9)有限会社』223頁〔和座一清〕等)に分かれるが,主観的要件不要説が多数説である。
 下級審裁判例では,主観的要件不要説を採ることを明示したものとして,名古屋高決平8.2.7判タ938号221頁,(本条に対応する会社法433条2項3号につき)東京高決平19.6.27商事1804号42頁等があり,裁判実務上も主観的要件不要説が趨勢であったと解されるが,本決定以前にはこの点に関する最高裁判例はなかった。
 (3) 本決定は,①本条2号の文言上,株主の主観的意図の存在は要件とされていないこと,②一般に主観的要件の立証は困難であること。③請求時の意図がどうであれ,競業関係が存する以上,閲覧謄写によって入手された情報が将来競業に利用される危険性は否定できないことなどを理由として,主観的要件不要説を採ることを明らかにしたものである。
 なお,本条2号に対応する平成17年改正後の会社法433条2項3号は,会計帳簿等の閲覧謄写請求の拒絶事由ないし不許可事由の一つとして,「請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み,又はこれに従事するものであるとき」と規定する。これは本条2号と実質的に同一の内容であるとされており(相澤哲『一問一答新・会社法』154頁),主観的要件の要否に関する本決定の判断は,会社法433条2項3号の解釈としても妥当すると考えられる。
 (4) 本決定は,さらに,客観的要件の有無に関し,XとCの各申請につきそれぞれ別個に判断すべきものとした上,Xについては本条2号の規定する客観的事実が認められないと判断し,同号の事由が認められないとした原審の判断を結論において是認した。2人以上の株主がその持株数を合わせて要件を充足して閲覧請求をするときは,その中の1人でも本号の事由に該当するときは,会社はその請求を拒絶し得ると解されている(和座・前掲224頁,東京地方裁判所商事研究会編『類型別会社訴訟Ⅱ』679頁~680頁等)。上記のような場合には,当該請求を合わせて1個の請求ということができると考えられるが,本件のようにそれぞれが少数株主権の要件を充足している場合には,もともと各別に請求できるはずのものであることから,本決定は,上記のとおり判断したものと解される。
 6 本決定は,本条2号の事由該当性の判断に当たり主観的要件の要否という従来見解の分かれていた論点について,最高裁として初めて判断を示したもので,裁判実務上重要な意義を有するものと思われる。
Ⅲ 株主名簿閲覧謄写請求など
1.株主提案権の行使
+第三百四条  株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次条第一項において同じ。)につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合は、この限りでない。
+第三百五条  株主は、取締役に対し、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、株主総会の目的である事項につき当該株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知すること(第二百九十九条第二項又は第三項の通知をする場合にあっては、その通知に記載し、又は記録すること)を請求することができる。ただし、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、当該請求をすることができる
2  公開会社でない取締役会設置会社における前項ただし書の規定の適用については、同項ただし書中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3  第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項ただし書の総株主の議決権の数に算入しない。
4  前三項の規定は、第一項の議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合には、適用しない。
2.株主名簿閲覧謄写請求
+(株主名簿の備置き及び閲覧等)
第百二十五条  株式会社は、株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあっては、その営業所)に備え置かなければならない。
2  株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない
一  株主名簿が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二  株主名簿が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
3  株式会社は、前項の請求があったときは、次のいずれかに該当する場合を除き、これを拒むことができない
一  当該請求を行う株主又は債権者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二  請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三  請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
四  請求者が、過去二年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
4  株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該株式会社の株主名簿について第二項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
5  前項の親会社社員について第三項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。
・平成26年改正において、株主名簿閲覧謄写請求の場合につき、協業者であることを理由とする拒絶事由は削除された。
Ⅳ おわりに