佐々木毅 民主主義という不思議な仕組み 2 代表制を伴った民主政治の誕生

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1.「契約に基づく権力」と「法の支配」の新展開
(1)封建制から特権と「条件付」契約へ
マグナ・カルタ
最高権力者である王に封建領主らの特権を認めさせ、その限りで「法の支配」を実現した文書。
臣下の王に対する服従はあくまで「条件付」。支配服従契約。

法の支配と政治的支配を、契約関係として考える発想を生み出した。

政治的権力が契約関係に基づくということは、契約が解除されれば政治権力は崩壊する。

(2)人間の人間としての権利
・絶対主義
「法の支配」と「契約に基づく権力」という発想から権力者が自由になろうとする政治的企て。

・「人間の人間としての権利」(基本的人権)を擁護する立場の登場。
不変的、抽象的、一般的な権利を擁護するもの。
当時の特権擁護派(マグナ・カルタでよいとする派閥)には社会に無秩序と混乱を招くものに映った。

・自然権とは、
各人が、かれ自身の自然すなわちかれ自身の生命を維持するために、かれ自身の欲するままにかれ自身の力を用いるという、各人の自由。
byホッブス

=自然権における人間の平等
自分の生命を維持する権利
そのために必要なことを行う権利
何がそのために必要なことかを判断する権利
からなる自由が含まれている。

→自然権から他人の生命を奪う権利も容認
=「万人の万人による戦争状態」

そうした自由の暴走をとめるための自然法。
自然法による自然権の制限が承認されることによって、自然権は社会の構成原理として安定した地位を占めるようになった。

・基本的人権の台頭は支配服従契約の見直しをも促すものになる。
←人間が互いに自由平等であるということになれば、支配する者と支配される者がはっきりとした形で存在しているという前提が崩れる。

政治全体を組みなおす必要。
→社会契約という発想。

・社会契約
自由で平等な人間がお互いの契約によって、政治社会と政治権力を創設するという発想。

社会契約の目的は、
人間の自由と権利を確固としたものにすること。
「法の支配」の実現。

(3)フランス革命と国民国家
フランス革命
自由で平等な人間からなる政治社会、国民国家の誕生。
自然権が政治の仕組みの基本原則になる。

・「あらゆる主権の原理は、本質的に国民に存する」という大原則は、国民が憲法を制定する権利を持つという形で現れた。
しかし、憲法にどのような政治の仕組みを書き込むかは国民に憲法を制定する権利があることからすぐには導かれない。

2.アメリカ合衆国の政治的実験
(1)民主政治に内在する悩み
人民主権と民主政治を当然の出発点としながら、政治の仕組みをどう整備したらいいのかという問題。

・なぜ強力な連邦政府を今作る必要があるのか。
外交上の必要。
民衆の統治に付きまとう派閥の弊害を抑制できる。
=多数派の専制という問題。単なる多数決は問題の解決策にはならない。

(2)共和政と国家のサイズ
・政治参加の自由と派閥とは切り離せない関係にある。
可能なのは派閥の弊害を抑制すること。
単純な民主制は、派閥と多数派の横暴がむき出しになる。

・共和政は大きなサイズの国家にも適用可能。
サイズが大きければ優れた人材を代表者として登用し得る。
派閥の数が増え、互いに牽制しあう。同じ派閥もたがいに結びつくのが難しくなる。

・古代の民主制と異なり、濃密な共同体としての性格を失い、より機械的なメカニズムに近い者になる。

・権力分立制
立法権、行政権、司法権を分離するだけでなく、それらが互いに抑制均衡する仕組み。
←議会が国民の代表者としての地位を利用して強大化し、他の機関の権力を奪い取るのではないかという心配から。

さらに、議会を両院に分割し、議会のなかに抑制均衡の仕組みをもう一つ組み込んだ!!!

3.大統領制と議会制
(1)イギリス議会制の特徴
・アメリカの仕組みは権限分散的で、政策の精力的な遂行に必要な求心力を持っていない。
抑制均衡型の仕組みにおいては、政策の動向と国民の政治的関心との敏感な結合がみられず、政治的無関心が広がりやすい。

・イギリス議会制は、議会と内閣が一体となった集権型の仕組み。ダイナミック。

(2)二つのモデルとその後の変遷
近代の民主政治は古代のものと異なり、各人の自由と平等に基礎を持ち、道義的な強さをもっている。
民主政治は道義的な強みを持つが、そのことから直ちにもろもろの問題解決能力を保障することにはならない。


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