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1.物による権利侵害と損害賠償責任
・土地の工作物等から生じた権利侵害と、その工作物の占有者・所有者の損害賠償責任(717条)
・動物から生じた権利侵害と、その動物の占有者の損害賠償責任(718条)
・営造物から生じた権利侵害と、国・公共団体の損害賠償責任(国賠2条)
・製造物から生じた権利侵害と、その物の製造者らの損害賠償責任(製造物責任法3条)
2.工作物責任の概要
+(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
・請求原因
①甲が工作物であること
②Yが甲を事故時に占有していたこと
③甲の設置保存に瑕疵があったことの評価を根拠付ける具体的事実
④Xの権利侵害
⑤損害の発生(およびその金額)
⑥設置保存の瑕疵と権利侵害(・損害)との間の因果関係
・抗弁
損害を発生を防止するのに必要な注意をしたとの評価を根拠付ける具体的事実
3.工作物の意味
土地に接着している物のみならず、土地の工作物としての機能を有するもの
4.設置・保存の瑕疵
工作物が、その種類に応じて、通常予想される危険に対し、通常備えているべき安全性を欠いていること
=第三者や被害者の異常な行動による危険とか、異常な自然力(不可抗力)により生じた危険に対する安全性まで備えている必要はない
+判例(S45.8.20)高知落石事件
+判例(H5.3.30)
瑕疵が工作物の設置時に存在しているか(設置の瑕疵)、設置後に生じたものか(保存の瑕疵)を問わない。
・判断の仕方
まず、具体的に問題となった危険を視野の外に置いたうえで
工作物に対して通常予想される危険が何かを確定し
その通常予想される危険に対して工作物が通常備えているべき安全性は何かを確定する。
・工作物の設置保存の瑕疵を判断する際には、
工作物の設置管理者がどのような注意をつくして保存管理行為をすべきであったかということは問題にならない!!
通常予想される危険に対して通常備えているべき安全性を欠いていたかどうかを判断する(客観説)!
・基準時
事故時の評価を基準に「通常予想される危険に対して通常備えるべき安全性」を欠いていたかどうかを判断
その工作物が通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになったのはいつの時点からであるかを証拠に基づいて確定したうえで、さらに、被害者の権利・利益侵害がその時点以降に生じたものか否か、また、瑕疵と権利・法益侵害との間に因果関係を認めることができるか否かなどを審理して初めて判断できる
+判例(S61.3.25)点字ブロック訴訟
+判例(H25.7.12)アスベスト事件
5.因果関係
危険の種類・性質は通常予想される危険と同じであったけれども、程度が違っていたという場合や、第三者の行為が共同作用したという場合には、設置保存の瑕疵により生じた損害のすべてを占有者が負担するべきなのかという問題。
6.占有者の免責立証
(1)工作物の占有者
占有者
=工作物を事実上占有する者
直接占有者のみならず、間接占有者も含まれる
・占有機関による占有の場合には、工作物責任を負うのは占有者であって、占有機関ではない。
・通説は、工作物に直接占有者と間接占有者がいる場合に、間接占有者が工作物を支配することが必ずしも可能ではないことを理由に、直接占有者が第一次責任を負い、直接占有者が717条1項ただし書きの免責事由を立証したことによって免責される場合にはじめて、間接占有者が責任を負う。
(2)占有者の免責立証
717条1項ただし書き
7.所有者の無過失責任
・717条1項にいう所有者とは
被害者への権利・法益侵害が生じた時点の所有者
前所有者が所有していた時期に瑕疵が生じたものであっても、権利・法益侵害が生じた時点の所有者が同項に基づく責任を負う。
・所有者に損害賠償請求をする場合の請求原因
①甲が工作物である
②甲の設置保存に瑕疵があったとの評価を根拠付ける具体的事実
③Xの権利侵害
④損害の発生(およびその金額)
⑤設置保存の瑕疵と権利侵害(・損害)との間の因果関係
⑥権利侵害が生じた時点で、Aが甲を所有していたこと
・抗弁
権利侵害が生じた時点で、Yが甲を占有していたこと
・再抗弁
Yが損害の発生を防止するのに必要な注意を怠らなかったとの評価根拠事実
8.被害者に賠償した占有者・所有者の求償権
+(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
9.工作物責任と類似する制度~映像物責任
・国家賠償法
+第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
○2 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。
・公の営造物管理主体による危険の管理・支配に注目した無過失責任
・不可抗力を理由とした免責の余地はある。
←無過失責任とはいえ、みずからの危険の支配可能性を超えたところにある統制することの困難な出来事については、責任を問われるべきではない。
・公の営造物とは、
国・公共団体が特定の公の目的に供する有体物及び物的設備のこと
・営造物の設置・管理の瑕疵とは
営造物が通常予想される危険に対して通常備えておくべき安全性を欠いている状態
・請求原因
①Yが国・公共団体であること
②甲がYの営造物であること
③甲の設置・管理の瑕疵があったとの評価を根拠付ける具体的事実
④Xの権利侵害
⑤損害の発生(およびその金額)
⑥設置・管理の瑕疵と権利侵害(・損害)との間の因果関係
10.製造物責任
・製造物責任法
+(目的)
第一条 この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。
2 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。
3 この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
二 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三 前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者
(製造物責任)
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。
・製造物責任は欠陥を要件とする無過失責任
・引渡時とは、
製造物を物流に置いた時点
・欠陥および因果関係についての主張立証責任は被害者が負担する。
・請求原因
①甲が製造物であること
②甲について、Yが引き渡した時に欠陥が存在していたとの評価を根拠付ける具体的事実
③Xの権利侵害
④損害の発生(およびその金額)
⑤甲の欠陥と権利侵害(・損害)との因果関係
⑥Yが甲の製造業者等であること
・抗弁
ⅰ)製造物に引き渡し時に欠陥が存在していたとの評価を妨げる具体的事実(欠陥の評価障害事実)
ⅱ)開発危険の抗弁
+(免責事由)
第四条 前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
一 当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
二 当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。
ⅲ)部品・原材料製造者の抗弁
・4条2号
ⅳ)消滅時効の抗弁
+(期間の制限)
第五条 第三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したときも、同様とする。
2 前項後段の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。
ⅴ)除斥期間の抗弁
上記1項後段
11.動物占有者の損害賠償責任
+(動物の占有者等の責任)
第七百十八条 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
占有者保管者が動物の保管に必要な注意を怠った過失を理由とする責任
動物の保管に際しての過失についての立証責任を転換したもの
・請求原因
①甲が「動物」であること
②Xの権利侵害
③損害の発生(およびその金額)
④甲の行動と権利侵害(・損害)との間の因果関係
⑤事故当時Yが甲を占有していたこと
・抗弁
その動物の種類及び性質に従い相当の注意をもって保管したこと
相当の注意とは、
通常払うべき程度の注意義務
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