質権者と譲受人の関係 即時取得


1.売主は買主に対して、絵画を売却しその旨を質権者に連絡している。それゆえ買主は指図による占有移転によって絵画の所有権を取得する。ところが、買主は質権に劣後するため、質権の負担のある所有権を取得するのが原則である(178条)。
しかし、売主は売却する際に、(質権者)には単に預けているだけだと言っており、買主は質権の負担を知らないといえるから保護されないのは不都合である。そこで、買主は絵画を即時取得できないか、指図による占有移転が「占有を始めた」(192条)といえるか、条文上明らかではなく問題となる。

2.即時取得の基礎として占有を要件とした趣旨は、原権利者の静的安全を保護するためである。とすれば、保護資格のためには原権利者の権利が奪われる程度のものであることが必要である。そして、指図による占有移転の場合、占有改定と異なり、外部から認識し得る明確な行為があるから、原権利者の権利を奪っても酷とはいえない。そこで、指図による占有移転は「占有を始めた」といえると解する。

3→質権の負担のない所有権を取得できる。