・動産の所有権留保付割賦売買契約において、代金完済前に買主の債権者が目的物を差し押さえた場合、売主は、留保した所有権に基づき第三者異議の訴えを提起することができる!!!
+判例(S49.7.18)
原審が適法に確定したところによれば、(一) 訴外湯浅金物株式会社は、昭和四二年一一月二二日その所有にかかる本件土運船を含む二隻の土運船を代金二七〇三万円で訴外中村海工株式会社に売り渡したが、代金支払方法として、契約と同時に二〇〇万円を支払い、残代金は昭和四四年九月二五日までにこれを二五回に分割して支払い、右代金完済に至るまで土運船の所有権は湯浅金物株式会社に留保し、代金完済のとき中村海工株式会社に移転することとし、その間湯浅金物株式会社は右土運船を中村海工株式会社に無償で使用させる旨の特約が締結されたこと、(二) ところが、中村海工株式会社は、残代金三一八万五〇〇〇円の未払を残したまま昭和四四年七月一九日大阪地方裁判所に和議開始の申立をしたので、湯浅金物株式会社は、中村海工株式会社がみずから破産、和議開始あるいは会社更生手続の開始等の申立をしたときは契約を解除して土運船の返還を求めることができる旨の特約に基づき、同月二三日契約を解除して、同会社から土運船二隻の返還を受けたうえ、同月三一日これを訴外丸嘉機械株式会社に代金三三〇万円で売り渡し、さらに被上告人が同年九月一三日同会社からこれを買い受けたこと、(三) 昭和四五年三月二日上告人は中村海工株式会社に対する債務名義に基づき本件土運船を差し押えたこと、以上の事実が認められる、というのである。
おもうに、動産の割賦払約款付売買契約において、代金完済に至るまで目的物の所有権が売主に留保され、買主に対する所有権の移転は右代金完済を停止条件とする旨の合意がなされているときは、代金完済に至るまでの間に買主の債権者が目的物に対して強制執行に及んだとしても、売主あるいは右売主から目的物を買い受けた第三者は、所有権に基づいて第三者異議の訴を提起し、その執行の排除を求めることができると解するのが相当である。いまこれを本件についてみるに、前記原審の確定した事実関係のもとにおいて、被上告人が湯浅金物株式会社から丸嘉機械株式会社を経て取得した本件土運船の所有権に基づき上告人の強制執行の排除を求めることができることは、右説示に照らして明らかであり、これと結論を同じくする原審の判断は、正当として是認することができる。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切とはいえない。原判決(その引用する第一審判決を含む。)に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
+++第三者異議の訴えとは
強制執行が行われた場合に,第三者が執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡または引渡しを妨げることのできる実体上の権利を主張し,執行の不許を求める訴え (民事執行法 38) 。訴えの性格については,学説が分れているが,第三者の異議権を訴訟物とする形成訴訟と解するのが通説である。
+民事執行法
(第三者異議の訴え)
第38条
1項 強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起することができる。
2項 前項に規定する第三者は、同項の訴えに併合して、債務者に対する強制執行の目的物についての訴えを提起することができる。
3項 第1項の訴えは、執行裁判所が管轄する。
4項 前二条の規定は、第一項の訴えに係る執行停止の裁判について準用する。