民法択一 物権 抵当権 抵当権と用益権の関係


抵当権設定当時において、土地及び建物の所有者が格別である以上、その土地又は建物に対する抵当権の実行による競落の際、たまたま、土地及び建物の所有者が同一の者に帰していたとしても、388条の規定が適用または準用されるいわれはない!!!

+第388条
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

・土地及び地上建物に共同抵当権が設定された後、建物が取り壊されて再築された場合、新建物の所有者が土地の所有者と同一であっても、土地の抵当権が実行されたことにより土地と新建物の所有者を異にするに至ったときに、新建物のために法定地上権が成立しない!!!←①新建物の所有者と土地の所有者が同一であり、かつ、②新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない!
+判例
土地と地上建物を別個の不動産とし、かつ、原則として土地の所有者が自己のために借地権を設定することを認めない我が国の法制上、同一所有者に属する土地又は地上建物に設定された抵当権が実行されて土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合、建物所有者が当該土地の占有権原を有しないことになるとすれば、これは、土地が競売によって売却されても、土地の買受人に対して土地の使用権を有しているものとする建物の所有者や土地の使用権があるものとして建物について担保価値を把握しているものとする抵当権者の合理的意思に反する結果となる。そこで、民法三八八条は、右合理的意思の推定に立って、このような場合には、抵当権設定者は競売の場合につき地上権(以下「法定地上権」という。)を設定したものとみなしているのである。その結果、建物を保護するという公益的要請にも合致することになる
それゆえ、土地及び地上建物の所有者が土地のみに抵当権を設定した場合建物のために地上権を留保するのが抵当権設定当事者の意思であると推定することができるから、建物が建て替えられたときにも、旧建物の範囲内で法定地上権の成立が認められている(大審院昭和一〇年(オ)第三七三号同年八月一〇日判決・民集一四巻一七号一五四九頁参照)。
また、所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した場合、抵当権者はこれにより土地及び建物全体の担保価値を把握することになるが、右建物が存在する限りにおいては、右建物のために法定地上権の成立を認めることは、抵当権設定当事者の意思に反するものではない(最高裁昭和三五年(オ)第九四一号同三七年九月四日第三小法廷判決・民集一六巻九号一八五四頁参照。なお、この判決は、所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した場合、民法三八八条の適用があるとするが、これは、抵当権設定当時の建物が存続している事案についてのものである。)。

これに対し、所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。!!!
けだし、土地及び地上建物に共同抵当権が設定された場合、抵当権者は土地及び建物全体の担保価値を把握しているから、抵当権の設定された建物が存続する限りは当該建物のために法定地上権が成立することを許容するが、建物が取り壊されたときは土地について法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが、抵当権設定当事者の合理的意思であり!!、抵当権が設定されない新建物のために法定地上権の成立を認めるとすれば、抵当権者は、当初は土地全体の価値を把握していたのに、その担保価値が法定地上権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限定されることになって、不測の損害を被る結果になり、抵当権設定当事者の合理的な意思に反するからである。なお、このように解すると、建物を保護するという公益的要請に反する結果となることもあり得るが、抵当権設定当事者の合理的意思に反してまでも右公益的要請を重視すべきであるとはいえない。

ムムムムム!!?!?!?

++解説・・・。
法定地上権の制度趣旨は、公益上建物を保護するとともに、建物に抵当権が設定されるときは、建物競落人のために土地の利用権を与える意思を、土地に抵当権が設定されるときには、設定者のために地上権を留保する意思をそれぞれ推定して、この意思を実現させようとしたものとされる。本件では、形式的には、抵当権設定時に土地上に建物が存在したが、抵当権の実行時における建物が旧建物の滅失後に再築された新建物であるため、法定地上権の成立を認めると抵当権者の当初の予測を害し、損害を及ぼすことにならないかである。

歴史・・・
土地のみに抵当権が設定されたが、その後、旧建物が取り壊されて新建物が建築された事案について、大判昭10・8・10民集一四巻一五四九頁は、原則として旧建物を基準とする法定地上権が成立するとした。さらに、土地建物に共同抵当権が設定された後、旧建物が焼失したため、妻名義で右土地上に新建物が建築された事案について、大判昭13・5・25民集一七巻一一〇〇頁は、新建物のために法定地上権が成立するとした。通説(我妻栄・新訂担保物権法三五三頁、高木多喜男・担保物権法〔新版〕二〇〇頁等)は、右判例を支持し、法定地上権の成立を肯定した。そして、その後、後掲東京地判平4・6・8執行処分までの間、東京地判昭46・7・20金法六二七号三七頁、名古屋高決昭60・1・24本誌五五〇号一六五頁、判時一一五五号二七一頁が新建物のための法定地上権の成立を否定するとしたほかは、法定地上権の成立を肯定するのが下級審の大勢(東京地判昭53・3・31本誌三六九号二三一頁、京都地判昭60・12・26金法一一三一号四五頁、東京高決昭63・2・19判時一二六六号二五頁、大阪高判昭63・2・24本誌六七四号二二二頁、判時一二八五号五五頁等)であった。ところが、東京地裁執行部は、平成4年6月8日、不動産執行について、原則として、新建物のために法定地上権は成立しない取扱いにすることを明言した(東京地裁執行処分平4・6・8本誌七八五号一九八頁、金法一三二四号三六頁)!!ナント。これがいわゆる「全体価値考慮説」といわれるものである(これに対し、従来の判例学説の立場を「個別価値考慮説」といわれる。)。そして、右執行処分以後、東京地裁においては、同様の決定例が出された(東京地決平4・3・10金法一三二〇号七二頁、東京地決平5・1・18金法一三五二号七七頁、東京地決平5・3・26判時一四五五号一一七頁、東京地判平5・10・27金法一三七八号一三七頁等)。また、右執行処分を契機として、法定地上権の成否について活発な議論が生じることになったが、大阪地裁においては、統一見解ではないとしながらも、個別価値考慮説を維持し、法定地上権の成立を肯定する旨が明らかにされた(富川照雄「民事執行における保全処分の運用」本誌八〇九号九頁)。

三 全体価値考慮説は、同一所有者に属する土地建物について共同抵当権の設定を受けた債権者としては、土地の交換価値のうち、法定地上権に相当する部分については、建物抵当権を実行して法定地上権付建物の売却代金から回収し、また、法定地上権の負担付土地価額は土地抵当権実行により回収し、いずれにしても債権者としては、土地の交換価値の全体を把握していることを重視し、建物が滅失し再築された場合にもこの点を強調し、法定地上権の成立を肯定すると、建物が滅失したため建物抵当権を実行することができず、土地の交換価値のうち法定地上権に相当する担保価値の回収を実現することができなくなる結果を招来し不合理であるとして、このような場合には法定地上権の成立は否定されるべきであるとする(前掲東京地裁執行処分平4・6・8、浅生重機=今井隆一「建物の建替えと法定地上権」金法一三二六号六頁等)。
これに対し、個別価値考慮説は、法定地上権の成否は土地建物に抵当権が設定された当時を基準とし、土地抵当権は建物の法定地上権を控除した価値をもって担保の目的としたものである以上、土地又は建物の一方のみが競売に付されたときは、土地抵当権については法定地上権の価値を控除した交換価値を実現すれば足り、新建物のために法定地上権の成立を認めても、地上権の内容を旧建物を基準として定める限り、土地抵当権を侵害することはないとする(富川・前掲論文、高木多喜男「共同抵当における最近の諸問題」金法一三四九号六頁等)。

四 以上のような学説の対立の中、本判決は、法定地上権の成否は抵当権設定当事者の合理的意思解釈によるべきであり土地のみに抵当権を設定した場合と土地建物に共同抵当権を設定した場合とでは、抵当権設定当事者の意思は異なり、後者の場合において建物が建て替えられたときは、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないとする全体価値考慮説を採用し、その限りで従来の判例である前記大判昭13・5・25を変更することにして、上告を棄却した。
ムーー

・法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するものであって、抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として388条の適用がないとしたうえで、抵当権者が建物の築造をあらかじめ承認した事実があっても、土地を更地として評価したことが明らかであるとの事情の下では、法定地上権は成立しない!!

・他の共有者の同意を得て共有地の上に建物を所有している共有者が、その持分権につき抵当権を設定した事案において、たまたま土地共有者の1人だけについて388条により地上権を設定したものとみなすべき事情が生じたとしても、他の共有者の意思にかかわらずその者の持分を無視して、当該共有地に地上権を設定したとみなすべきではない!!!!!!!ヘー
+まずは原判決から
原判決が、所論のごとく「元来土地の共有者は、自己の持分権の上に全部の占有支配を伴う地上権を設定することはできないものと解すべきであるが、他の共有者の同意があれば共有地の上にかような物権を設定し得るものであることは民法二五一条の規定上是認しなければならないところであるから、かような場合には土地利用の経済的目的からいえば、土地の単独所有の場合と異なるところがないものといわなければならない」と判示しながら、『したがつて、他の共有者の同意を得て共有地の上に建物を所有している共有者がその持分権につき、抵当権を設定した場合に、その共有者に属する持分権が抵当権の実行により競売に付され、これによつて、その権利を取得した者があるときは、抵当権設定者である共有者は、土地の単独所有者の場合におけると同様民法三八八条の規定の趣旨により建物のため共有地につき地上権を設定したものと看做されるものと解するを相当とする。尤も右の場合において他の共有者は単に抵当権を設定した共有者のため建物を所有することに同意したに過ぎないものではあるが、建物の存在を完うさせようとする国民経済上の必要上認められた同条の立法趣旨より考えれば、右の場合は土地の単独所有者がその土地上に建物を所有している場合と区別するの理由がないものといわなければならない。」と判示したことは、所論のとおりである。

しかし、元来共有者は、各自、共有物について所有権と性質を同じくする独立の持分を有しているのであり、しかも共有地全体に対する地上権は共有者全員の負担となるのであるから、共有地全体に対する地上権の設定には共有者全員の同意を必要とすること原判決の判示前段のとおりである。換言すれば、共有者中一部の者だけがその共有地につき地上権設定行為をしたとしても、これに同意しなかつた他の共有者の持分は、これによりその処分に服すべきいわれはないのであり、結局右の如く他の共有者の同意を欠く場合には、当該共有地についてはなんら地上権を発生するに由なきものといわざるを得ないのである。そして、この理は民法三八八条のいわゆる法定地上権についても同様であり偶々本件の如く、右法条により地上権を設定したものと看做すべき事由が単に土地共有者の一人だけについて発生したとしても、これがため他の共有者の意思如何に拘わらずそのものの持分までが無視さるべきいわれはないのであつて、当該共有土地については地上権を設定したと看做すべきでないものといわなければならない。しかるに、原審は右と異なる見解を採り、根拠として民法三八八条の立法趣旨を援用しているのであるが首肯し難い。けだし同条が建物の存在を全うさせようとする国民経済上の必要を多分に顧慮した規定であることは疑を容れないけれども、しかし同条により地上権を設定したと看做される者は、もともと当該土地について所有者として完全な処分権を有する者に外ならないのであつて、他人の共有持分につきなんら処分権を有しない共有者に他人の共有持分につき本人の同意なくして地上権設定等の処分をなし得ることまでも認めた趣旨でないことは同条の解釈上明白だからである。それ故原審の見解はその前段の判示とも矛盾するものというべく是認できない。

+第251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
+変更行為
共有物の性質もしくは形状又はその両者を変更すること。
=物理的変化を伴う行為トカ法律的に処分する行為トカ

・ABが土地を共有し、土地上の建物をACが共有していた場合、ABがAの債務を担保するためその土地の各持分に共同して抵当権を設定し、子の抵当権が実行されDが土地を買い受けた場合、建物のために法定地上権は成立しない!!!!!!!!←土地共有者の1人だけについて388条本文により地上権を設定したものとみなすべき事由が生じたとしても、他の共有者らが法定地上権の発生をあらかじめ認容していたとみることができるような特段の事情がある場合でない限り、共有土地について法定地上権は成立しないとした。そのうえで、地上建物の共有者の1人に過ぎない土地共有者の債務を担保するために、土地共有者の全員が共同して各持分に抵当権を設定したとの事情により、法定地上権の発生をあらかじめ認容していたとみることはできない。!!!!!ソウナンダ。
+判例
共有者は、各自、共有物について所有権と性質を同じくする独立の持分を有しているのであり、かつ、共有地全体に対する地上権は共有者全員の負担となるのであるから、土地共有者の一人だけについて民法三八八条本文により地上権を設定したものとみなすべき事由が生じたとしても、他の共有者らがその持分に基づく土地に対する使用収益権を事実上放棄し、右土地共有者の処分にゆだねていたことなどにより法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることができるような特段の事情がある場合でない限り、共有土地について法定地上権は成立しないといわなければならない
+あてはめ
これを本件についてみるのに、原審の認定に係る前示事実関係によれば、本件土地の共有者らは、共同して、本件土地の各持分について被上告人Aを債務者とする抵当権を設定しているのであり、A以外の本件土地の共有者らはAの妻子であるというのであるから、同人らは、法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとも考えられる。
しかしながら、土地共有者間の人的関係のような事情は、登記簿の記載等によって客観的かつ明確に外部に公示されるものではなく、第三者にはうかがい知ることのできないもの!!であるから、法定地上権発生の有無が、他の土地共有者らのみならず、右土地の競落人ら第三者の利害に影響するところが大きいことにかんがみれば、右のような事情の存否によって法定地上権の成否を決することは相当ではない。!!!そうすると、本件の客観的事情としては、土地共有者らが共同して本件土地の各持分について本件建物の九名の共有者のうちの一名である被上告人Aを債務者とする抵当権を設定しているという事実に尽きるが、このような事実のみから被上告人A以外の本件土地の共有者らが法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることはできない。
けだし、本件のように、九名の建物共有者のうちの一名にすぎない土地共有者の債務を担保するために他の土地共有者らがこれと共同して土地の各持分に抵当権を設定したという場合、なるほど他の土地共有者らは建物所有者らが当該土地を利用することを何らかの形で容認していたといえるとしても、その事実のみから右土地共有者らが法定地上権の発生を容認していたとみるならば、右建物のために許容していた土地利用関係がにわかに地上権という強力な権利に転化することになり、ひいては、右土地の売却価格を著しく低下させることとなる!!!のであって、そのような結果は、自己の持分の価値を十分に維持、活用しようとする土地共有者らの通常の意思に沿わないとみるべきだからである。!!!また、右の結果は、第三者、すなわち土地共有者らの持分の有する価値について利害関係を有する一般債権者や後順位抵当権者、あるいは土地の競落人等の期待や予測に反し、ひいては執行手続の法的安定を損なうものであって、許されないといわなければならない。

・抵当権設定当時、建物についての所有権移転登記が経由されておらず、前主名義のままであっても、土地の買受人は、法定地上権の成立を否定することはできない!!
+判例
土地とその地上建物が同一所有者に属する場合において、土地のみにつき抵当権が設定されてその抵当権が実行されたときは、たとえ建物所有権の取得原因が譲渡であり、建物につき前主その他の者の所有名義の登記がされているままで、土地抵当権設定当時建物についての所有権移転登記が経由されていなくとも、土地競落人は、これを理由として法定地上権の成立を否定することはできないものと解するのが相当である。その理由は、つぎのとおりである。
民法三八八条本文は、「土地及ヒ其上ニ在スル建物カ同一ノ所有者ニスル場合ニ於テ其土地又ハ建物ノミヲ抵当ト為シタルトキハ抵当権設定者ハ競売ノ場合ニ付キ地上権ヲ設定シタルモノト看做ス」と規定するが、その根拠は、土地と建物が同一所有者に属している場合には、その一方につき抵当権を設定し将来土地と建物の所有者を異にすることが予想される場合でも、これにそなえて抵当権設定時において建物につき土地利用権を設定しておくことが現行法制のもとにおいては許されないところから、競売により土地と建物が別人の所有に帰した場合は建物の収去を余儀なくされるが、それは社会経済上不利益であるから、これを防止する必要があるとともに、このような場合には、抵当権設定者としては、建物のために土地利用を存続する意思を有し、抵当権者もこれを予期すべきものであることに求めることができる。してみると、建物につき登記がされているか、所有者が取得登記を経由しているか否かにかかわらず、建物が存立している以上これを保護することが社会経済上の要請にそうゆえんであつて、もとよりこれは抵当権設定者の意思に反するものではなく、他方、土地につき抵当権を取得しようとする者は、現実に土地をみて地上建物の存在を了知しこれを前提として評価するのが通例であり、競落人は抵当権者と同視すべきものであるから、建物につき登記がされているか、所有者が取得登記を経由しているか否かにかかわらず、法定地上権の成立を認めるのが法の趣旨に合致するのである。このように、法定地上権制度は、要するに存立している建物を保護するところにその意義を有するのであるから、建物所有者は、法定地上権を取得するに当たり、対抗力ある所有権を有している必要はないというべきである。

・土地と建物を所有する者が土地に抵当権を設定した後に建物を第三者に売り渡した場合にも388条が適用され、法定地上権は成立しする。

・XYが乙建物を共有し、その敷地である甲土地をXが単独で所有する場合において、Xが甲土地に抵当権を設定し、その実行によりZが甲土地を買い受けたときは、乙土地のために法定地上権が成立する!!
+判例
建物の共有者の一人がその建物の敷地たる土地を単独で所有する場合においては、同人は、自己のみならず他の建物共有者のためにも右土地の利用を認めているものというべきであるから、同人が右土地に抵当権を設定し、この抵当権の実行により、第三者が右土地を競落したときは、民法三八八条の趣旨により、抵当権設定当時に同人が土地および建物を単独で所有していた場合と同様、右土地に法定地上権が成立するものと解するのが相当である。

・甲土地を目的とする先順位抵当権が設定された当時、甲土地・甲土地上の乙建物の所有者はそれぞれX・Yであった。その後、乙建物についてもXが所有権を取得し、さらに甲土地に後順位抵当権が設定された。その後、先順位抵当権が抵当権設定契約の解除により消滅した場合、後順位抵当権の実行により甲土地・乙建物の所有権者がZ・Xとなったときは、乙建物のために法定地上権が成立する!!
+判例
土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立するというべきである。その理由は、次のとおりである。
上記のような場合、乙抵当権者の抵当権設定時における認識としては、仮に、甲抵当権が存続したままの状態で目的土地が競売されたとすれば、法定地上権は成立しない結果となる(前掲平成2年1月22日第二小法廷判決参照)ものと予測していたということはできる。しかし、抵当権は、被担保債権の担保という目的の存する限度でのみ存続が予定されているものであって、甲抵当権が被担保債権の弁済、設定契約の解除等により消滅することもあることは抵当権の性質上当然のことであるから、乙抵当権者としては、そのことを予測した上、その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益とを考慮して担保余力を把握すべきものであったというべきである。したがって、甲抵当権が消滅した後に行われる競売によって、法定地上権が成立することを認めても、乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえない。そして、甲抵当権は競売前に既に消滅しているのであるから、競売による法定地上権の成否を判断するに当たり、甲抵当権者の利益を考慮する必要がないことは明らかである。そうすると、民法388条が規定する「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する」旨の要件(以下「同一所有者要件」という。)の充足性を、甲抵当権の設定時にさかのぼって判断すべき理由はない。 !!!
民法388条は、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その抵当権の実行により所有者を異にするに至ったときに法定地上権が設定されたものとみなす旨定めており、競売前に消滅していた甲抵当権ではなく、競売により消滅する最先順位の抵当権である乙抵当権の設定時において同一所有者要件が充足していることを法定地上権の成立要件としているものと理解することができる。原判決が引用する前掲平成2年1月22日第二小法廷判決(↓で扱うよ^^)は、競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に、その中の最先順位の抵当権の設定時を基準として同一所有者要件の充足性を判断すべきことをいうものであり、競売前に消滅した抵当権をこれと同列に考えることはできない。

+理由をまとめると・・・
理由として,①乙抵当権者としては,甲抵当権が消滅することもあることを予測した上,その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益を考慮して担保余力を把握すべきものであり,法定地上権の成立を認めても乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえないこと,②本件では甲抵当権は既に消滅しているのであるから,その利益を考慮する必要はなく,同一所有者要件の充足性を甲抵当権の設定時に遡って判断すべき理由はないこと,③民法388条の文言からは,競売により消滅する抵当権の設定時を基準に同一所有者要件を要求していると理解されること,④平成2年最判は,競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に,その中の最先順位の抵当権の設定時を基準として同一所有者要件の充足性を判断すべきことをいうものであり,競売前に消滅した抵当権をこれと同列に考えることはできないことを挙げている。

・甲土地、甲土地上の乙建物の所有者がX・Yである時点で、甲土地に先順位抵当権が設定された。その後、甲土地及び乙建物がXに属するに至り、さらに甲土地に後順位抵当権が設定された場合、抵当権実行により一番抵当権が消滅するときは法定地上権は成立しない。
+判例(H2.1.22)
土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。
けだし、民法三八八条は、同一人の所有に属する土地及びその地上建物のいずれか又は双方に設定された抵当権が実行され、土地と建物の所有者を異にするに至った場合、土地について建物のための用益権がないことにより建物の維持存続が不可能となることによる社会経済上の損失を防止するため、地上建物のために地上権が設定されたものとみなすことにより地上建物の存続を図ろうとするものであるが、土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていない場合には、一番抵当権者は、法定地上権の負担のないものとして、土地の担保価値を把握するのであるから、後に土地と地上建物が同一人に帰属し、後順位抵当権が設定されたことによって法定地上権が成立するものとすると、一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることになるからである。なお、原判決引用の判例(大審院昭和一三年(オ)第二一八七号同一四年七月二六日判決・民集一八巻七七二頁、最高裁昭和五三年(オ)第五三三号同年九月二九日第二小法廷判決・民集三二巻六号一二一〇頁)は、いずれも建物について設定された抵当権が実行された場合に、建物競落人が法定地上権を取得することを認めたものであり、建物についてはこのように解したとしても一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることにはならないから、土地の場合をこれと同視することはできない。

・建物のために法定地上権が成立した後、当該建物を譲り受けた者は、前主の未払い地代を当然には負担しない!!!!
+判例(H3.10.1)の解説
地上権は地代を要素としないが、合意で有償とすることができる。そして、有償とされた場合に、地代支払を基礎づける合意(債権契約)が対抗要件を具備するときは(必ずしも地代の登記を要しないとするのは、注釈民法(7)四二一頁〔鈴木禄弥〕)、地上権の移転と共に右契約関係も地上権に付随して承継されることになる。したがって、新地上権者は有償地上権を取得し、その後の地代支払債務を負担することになる(我妻=有泉・新訂物権法三七五頁、船橋・物権法四〇五頁、広中・物権法四五六頁、注釈民法(7)四二二頁〔鈴木禄弥〕等)。また、有償地上権は二年の地代不払で消滅請求の対象となるが(民法二六六条、二七六条)、これは物権としての地上権の内容であるから前主が地代滞納後に建物を譲渡しても、地主(設定者)の請求権に消長をもたらすものではなく、新旧両地上権者の滞納期間が通じて二年を超えるときは、右消滅請求が可能となる(大判大3・5・9民録二〇輯三七三頁、大判大12・1・23法律評論二六巻上二九七頁)。このように消滅請求の要件との関係では前主の滞納の結果を引き継ぐことになる!!!!が、前主について生じた未払地代債務は独立に処分の対象となる金銭債務であるから、債務引受でもしない限り、新地上権者が当然に右債務を承継するということにはならない。!!なお、既に二年分の地代滞納がある場合に消滅請求の行使を妨げるために、新地上権者は、前主の債務を弁済することに利害関係を有するといえよう(民法四七四条二項)。フムフム!

法定地上権は、競売によって土地と建物の所有権が異なることによって当然に成立する地上権であり、無償とする合意がない限り、原則として有償である(民法三八八条但書)!!!。そして、法定地上権の成立後に合意又は裁判によって地代が確定されたときは、法定地上権の発生の時から地代支払義務が生じていたものとされる(大判大5・9・20民録二二輯一八一三頁、大判昭14・11・25民集一八巻一四七一頁、我妻・新訂担保物権法三六九頁)。ヘーー
そして、地上権の発生時の当事者間での協定又は裁判(民法三八八条但し書)によって原始地代が確定した後の地代の増減は、借地法一二条の規定によってされることになる。すなわち、本件では、債務者とXとの間で原始地代を確定すべく(民法三八八条但し書)、Yとの間ではその増減を求めるべきであって、Yが支払義務を負担しない債務者の地代額を確定する必要はない(Yとの間で確定しても前主を拘束する根拠はない。)。なお、原始地代はその客観的金額の範囲において法定地上権の成立の時に発生していたのであるから、Yに対する地代額を算定するために原始地代の鑑定評価をすることが妨げられるものではなく、前主に対する原始地代の確定がされていないことが、Yに対する請求の妨げとなるものでもない。

・法定地上権の存続期間について当事者の間で協議が調わなかった場合は、その存続期間は30年となる。←法定地上権には借地借家法3条本文が適用されるとしている!
+借地借家法第3条  
借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

・法定地上権の取得も原則として、登記なくして第三者に対抗することはできない(177条)。ただし、借地借家法の適用があるので、土地の上に法定地上権者、借地権者が登記されている建物を所有するときは、第三者に対抗することができる(借地借家法10条1項)!!!
+借地借家法第10条
1項 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2項 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
3項 民法(明治29年法律第89号)第566条第1項 及び第3項 の規定は、前2項の規定により第三者に対抗することができる借地権の目的である土地が売買の目的物である場合に準用する。
4項 民法第533条 の規定は、前項の場合に準用する。

・土地に抵当権が設定された当時、その土地に建物が築造されていた場合、その建物の所有者が、その土地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有しないとしても、抵当権者は、土地と共に建物を競売することはできない!!!←一括競売(389条1項)は「抵当権設定後」に建物が築造された場合ににみ認められる!!
+第389条
1項 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる
2項 前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない

・抵当権設定者自身が築造した建物に限らず、第三者が築造した建物であっても、一括競売の対象とされている(389条1項本文)。

・優先権は土地の代価についてのみ行使することができる(389条1項ただし書き)!!!!

・抵当権が設定された建物を、抵当権者に対抗することができない賃貸借に基づいて使用する者は、競売手続開始前から使用していれば、競売によりその建物を買受人が買い受けたときから6か月を経過するまでは、その建物の買受人への引き渡しを猶予される(395条1項1号)!!!←保護すべき賃借人に合理的な範囲で確実な保護を与えるため!
+第395条
1項 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
競売手続の開始前から使用又は収益をする者
二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
2項 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

・抵当権設定登記後に抵当不動産を賃借した者が、その賃借権を抵当権者に対抗するためでは、抵当権者以外の者の承諾が必要な場合がある!
+第387条
1項 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
2項 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。←コレ!

・BがA所有の甲建物についてAから第1順位の抵当権の設定を受けてその登記を備え、続けてDが甲建物についてAから第2順位の抵当権の設定を受けて登記を備えた後に、CがAから甲建物を賃借し登記を備えた場合、BDが同意しただけでは、CはBDに対して甲建物の賃借権を対抗できない!!←同意の登記も必要!!!