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1.作用法的行政機関概念
(1)行政機関・行政庁
ア 行政機関と行政庁

行政機関=行政主体のために行政活動を行うべき地位を行政機関という
行政庁=行政機関のうち、行政主体のために私人に対して法律行為を自己の名において行う権限を付与された機関

・審議会手続の瑕疵
+判例(S50.5.29)群馬中央バス事件
理由
上告代理人田代源七郎の上告理由第一点及び第四点の第一について。
論旨は、要するに、一般乗合旅客自動車運送事業及びその免許の性質をいかに解するかは、道路運送法六条一項所定の免許基準及び関係法令の解釈に著しい差異を生ずるところ、一般乗合旅客自動車運送事業を国家の独占事業としその免許を公企業の特許と解した原判決は、憲法前文第一段、憲法二二条一項に違背し、道路運送法四条、六条ないし八条、一二条、一五条、一六条、三三条、三四条、四一条、一二二条の二、運輸省設置法六条の解釈を誤つたものであるというのである。
原審は、まず、一般乗合旅客自動車運送事業を独占の一形態でありその免許を公企業の特許であるとしたうえで、運輸大臣は、道路運送法六条一項に定める基準のすべてに適合し、かつ、同法六条の二の欠格事由に該当しない場合でなければこれを免許することができず、右基準のいずれかに適合しないときは申請を却下しなければならないものであり、また、右免許基準に適合するかどうかの判断は覊束裁量に属すると解し、この見解に基づき、本件免許申請につき同法六条一項一号の基準に適合しないとした被上告人の判断の適否について検討し、右判断は相当であるとするとともに、他方、行政庁が行政処分を行うにあたつては、事実の認定、法律の適用等の実質的判断はもとより、その手続についても公正でなければならないと解し、この見解に基づき、本件免許申請に対する審理手続を検討し、右審理手続上においても違法は認められないとしたのである。
しかしながら自動車運送事業の免許の性質を公企業の特許と解するかどうかは、必ずしも、本件の結論に影響があるものとは考えられない。すなわち、自動車運送事業は高度の公益性を有し、その経営は直接社会公共の利益に関係があるものであるから、憲法二二条一項にいう職業選択の自由に対する公共の福祉に基づく制限として、道路運送法は、四条において、自動車運送事業を経営しようとする者は、運輸大臣の免許を受けなければならないとし、六条一項において、免許基準を設け、また、六条の二において、欠格事由を定めているのであり(当裁判所昭和三五年(あ)第二八五四号同三八年一二月四日大法廷判決・刑集一七巻一二号二四三四頁参照)、これにより、運輸大臣は、右免許基準のすべてに適合し、かつ、右欠格事由に該当しない場合でなければ免許を付与してはならない旨の拘束を受けるものと解されるのであつて、自動車運送事業の免許の性質を公企業の特許と解するかどうかによりこの理が左右されるものではない。もつとも、右免許基準は極めて抽象的、概括的なものであり、右免許基準に該当するかどうかの判断は、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできないが、このことも、自動車運送事業の免許の性質を公企業の特許と考えるかどうかによつて差異を生ずるものではない。また法は、道路運送法一二二条の二、運輸省設置法六条一項七号、八条以下、運輸審議会一般規則等において、右免許の許否の決定の適正と公正を保障するために制度上及び手続上特別の規定を設け、全体として適正な過程により右決定をなすべきことを法的に義務づけているのであり、このことから、右免許の許否の決定は手続的にも適正でなければならないものと解されるのであつて、自動車運送事業の免許の性質を公企業の特許と解するかどうかによつてこれが左右されるものではない。そして、本件却下処分が実体的判断においても審理手続上においても違法でないとした原判決が結論において正当であることは、後に判断するとおりである。したがつて、論旨は、ひつきよう、原判決の結論に影響のない事項についてこれを非難することに帰着し、採用することができない。

同第二点について。
所論は、要するに、上告人が、原審において、憲法三一条は刑事手続のみならず行政手続にも適用ないし準用があり、したがつて、一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否を決する手続は公正でなければならないと主張したのに対し、同条が行政手続にも適用ないし準用があるか否かにつき判断を示すことなく原判決の結論に導いたのは、憲法三一条の解釈を誤つたものであり、理由不備であるというのである。
一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否は、国民の基本的人権である職業選択の自由にかかわりをもつものであるから、法は、道路運送法六条において免許基準を法定するとともに、他方、右免許の許否の決定の適正と公正を保障するために制度上及び手続上特別の規定を設け、全体として適正な過程により右の決定をなすべきことを法的に義務づけていることは、前述のとおりである。そうすると、憲法三一条が行政手続にも適用ないし準用されるかどうかは、特にこれを論ずる必要はないところであり、原審がこの点の判断をしなかつたとしても、なんら違法ではない。論旨は、採用することができない。

同第三点について。
所論一の(一)指摘の原判決の判示は、本件免許申請に際し上告人が挙げた推定利用人員から上告人が本件申請路線に期待する輸送需要を推認したにすぎず、右推定利用人員の割合を正当として是認したものでないことは判文上明らかであるから、所論一の(三)指摘の原判決の判示となんら矛盾するものではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、原判決を正解しないでこれを非難するものであつて、採用することができない。
同第四点の第二について。
所論の点に関する原審の判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第四点の第三及び第四について。
論旨は、要するに、運輸大臣が東京陸運局長に指示して行わせた聴聞手続及び運輸審議会の審理手続は適正な手続といえないにもかかわらず、これを違法な手続でないとし、また、運輸審議会の審理手続に違法があつたとしてもその答申に基づく運輸大臣の処分は違法ではないとした原判決は、道路運送法一二二条の二、六条一項、三項、運輸省設置法六条の解釈を誤つたものであるというのである。
一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否を決するにつき、法が、その免許基準を法定するとともに、右基準に該当するかどうかの判断の適正と公正を担保するために、制度上及び手続上特別の措置を講じていることは、前述のとおりである。これを詳述すれば、道路運送法一二二条の二は、陸運局長は、同条二項所定の場合には、聴聞をしなければならない旨規定し、運輸省設置法六条一項七号は、運輸大臣が自動車運送事業の免許の許否を決する場合には、運輸審議会にはかり、その決定を尊重して、これをしなければならないと定め、同法八条以下において右審議会の機構及び手続を規定し、特に、同法一六条は、運輸審議会は、同法六条一項の規定により附議された事項については、必要があると認めるときは、公聴会を開くことができ、又は運輸大臣の指示若しくは運輸審議会の定める利害関係人の申請があつたときは、公聴会を開かなければならないと定め、更に運輸審議会一般規則一条は、運輸審議会は、事案に関し、できる限り公聴会を開き、公平かつ合理的な決定をしなければならないと規定している。これらの規定を通覧すると、一般乗合旅客自動車運送事業の免許の申請があつたときは、原則として、法定の免許基準に該当するかどうかにつき、陸運局長が利害関係人又は参考人に対する聴聞を行い、更に運輸大臣の諮問を受けて、運輸審議会は、公聴会を開いて審理し、これに基づいて許否に関する決定(答申)を行い、運輸大臣は右の決定を尊重して最終的な許否の決定を行うべきものとされていることが知られるのである。このように、法が前記免許の許否を決定するについて原則として陸運局長の聴聞や運輸審議会の公聴会における審理を要求しているのは、免許の許否の決定の重要性にかんがみ、聴聞又は公聴会の審理手続を通じて、免許基準該当の有無の判断に関係のある事項につき、免許申請者のみならず許否の決定について重大な利害関係を有する者に対しても、意見及び証拠その他の資料を提出する機会を与え、判断の基礎及びその過程の客観性と公正を保障しようとする趣旨に出たものであることが明らかである。
このように見てくると、一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否の決定手続において、陸運局長による聴聞及び運輸審議会における公聴会は、それぞれ重要な使命と役割を有するものというべきであるが、その重要性の程度、したがつてまたその手続上の瑕疵が運輸大臣による許否の決定の法的効力に及ぼすべき影響については、両者の間に差異があり、これを区別して考察する必要がある。すなわち、運輸審議会が機構的に運輸大臣から独立した地位と構成をもつ第三者的機関であるのに対し、陸運局長は運輸大臣の純然たる補助機関であり、またその行う聴聞も、運輸審議会における公聴会に比して簡略であることが予定されていると見受けられること、更に運輸審議会の決定に対しては運輸大臣がこれを尊重すべき旨を特に法が定めていること等から考えると、免許の許否の決定に関する審理手続において最も重要な意義を有するのは、運輸審議会における公聴会であり、陸運局長の聴聞は、主として運輸審議会における公聴会審理が行われない場合に特別の価値をもつものであつて、これが行われる場合には、単なる補充的な意義及び機能しか有しないものと解せられる。そうすると、陸運局長の聴聞が右のような従たる意義しかもたない場合には、たとえその聴聞手続に瑕疵があつたとしても、最終的な運輸大臣の許否の決定自体を取り消さなければならないほどの違法があるものとするには足りないと解するのが相当である。原審の確定したところによれば、本件免許申請については運輸審議会に諮問がなされ、同審議会において公聴会が開催されたというのであるから、仮に、陸運局長の聴聞手続に所論の瑕疵があつたとしても、本件却下処分を取り消すべき事由とはならないものといわなければならない。
しかしながら、運輸審議会における公聴会審理の瑕疵については、これと同一に論ずることはできない。さきに述べたように、運輸大臣は、自動車運送事業の免許の許否を決する場合には、原則として運輸審議会にはかり、その決定を尊重して、これをしなければならないとされている。法は、運輸大臣が運輸審議会の決定を尊重すべきことを要求するにとどまり、その決定が運輸大臣を拘束するものとはしていないから、運輸審議会は、ひつきよう、運輸大臣の諮問機関としての地位と権限を有するにすぎないものというべきであるが、しかしこのことは、運輸審議会の決定が全体としての免許の許否の決定過程において有する意義と重要性、したがつてまた、運輸審議会の審理手続のもつ意義と重要性を軽視すべき理由となるものではない一般に、行政庁が行政処分をするにあたつて、諮問機関に諮問し、その決定を尊重して処分をしなければならない旨を法が定めているのは、処分行政庁が、諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し、これに十分な考慮を払い、特段の合理的な理由のないかぎりこれに反する処分をしないように要求することにより、当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保することを法が所期しているためであると考えられるから、かかる場合における諮問機関に対する諮問の経由は、極めて重大な意義を有するものというべく、したがつて、行政処分が諮問を経ないでなされた場合はもちろん、これを経た場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどにより、その決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは、これを経てなされた処分も違法として取消をまぬがれないこととなるものと解するのが相当である。そして、この理は、運輸大臣による一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否についての運輸審議会への諮問の場合にも、当然に妥当するものといわなければならない。
ところで、一般乗合旅客自動車運送事業の免許の申請があつた場合には、運輸大臣は原則として運輸審議会に諮問すべく、これを受けた運輸審議会は原則として公聴会を開いて審理したうえ決定をしなければならないことは、右に述べたとおりであるが、右の運輸審議会における審理及びこれに基づく決定の手続については、運輸省設置法及び運輸審議会一般規則にかなり詳細な定めが置かれている。しかし、これらの手続規定がいかなる趣旨、目的を有するものであり、したがつてその手続の運用についていかなる配慮を施すべきものであるかは、これらの規定自体からは明らかではなく、専ら審理手続の意義と性格に照らしてこれを決すべきものであるところ、公聴会の審理を要求する趣旨が、前記のとおり、免許の許否に関する運輸審議会の客観性のある適正かつ公正な決定(答申)を保障するにあることにかんがみると、法は、運輸審議会の公聴会における審理を単なる資料の収集及び調査の一形式として定めたにとどまり、右規定に定められた形式を踏みさえすれば、その審理の具体的方法及び内容のいかんを問わず、これに基づく決定(答申)を適法なものとする趣旨であるとすることはできないのであつて、これらの手続規定のもとにおける公聴会審理の方法及び内容自体が、実質的に前記のような要請を満たすようなものでなければならず、かつ、決定(答申)が、このような審理の結果に基づいてなされなければならないと解するのが相当である。すなわち、道路運送法六条一項の定めるところによれば、一般自動車運送事業の免許基準は、当該事業の開始の輸送需要に対する適切性、当該事業の開始による当該路線又は事業区域に係る供給輸送力と輸送需要量との均衡、当該事業遂行計画の適切性、適確な事業遂行能力の有無、当該事業の開始の公益上の必要性及び適切性等広い範囲において相互に関連する幾多の考慮事項を含み、かつ、その判断基準自体が著しく抽象的、概括的であるため、これについて客観的に適正かつ公正な判断を可能とするためには、その基礎となるべき関連諸事項に関する具体的事実について、多面的で、かつ、できるだけ正確な客観的資料をあまねく収集し、その分析、究明に基づく事実の適切な認定のうえに立つて、輸送に関する技術上及び公益上の適正な評価と比較考量を施さなければならないのであり、しかもこの判断たるや、事柄の性質上、ある程度の見解の相違をまぬがれないものであるため、政策遂行上の責任者である決定権者に対して、この点につき、ある程度の裁量の余地を認めざるをえないのである。しかもこれに加えて、免許の許否が、ひとり免許申請者のみならず、これと競争関係に立つ他の輸送業者や、一般利用者、地域住民等の第三者にも重大な影響を及ぼすものであることにかんがみると、許否の決定過程における申請者やその他の利害関係人の関与が決定の適正と公正の担保のうえにおいて有する意義は格別のものがあるというべく、この要請にこたえて法が定めた運輸審議会の公聴会における審理手続もまた、右の趣旨に沿い、その内容において、これらの関係者に対し、決定の基礎となる諸事項に関する諸般の証拠その他の資料と意見を十分に提出してこれを審議会の決定(答申)に反映させることを実質的に可能ならしめるようなものでなければならないと解すべきである。特に免許申請者に対する関係においては、免許の許否が直ちにその者の職業選択の自由に影響するものである関係上、免許の許否の決定過程におけるその関与の方法につき特段の配慮を必要とするのであつて、前記のような免許基準の抽象性と基準該当の有無の不明確性のために、行政庁側からみてその申請計画に問題点があると思われる場合であつても、必ずしもその点が申請者には認識されず、そのために、これについて提出しうべき追加資料や意見の提出の機会を失なわせるおそれが多分にあることにかんがみるときは、これらの点について申請者の注意が喚起され、あるいはまた、他の利害関係人の反対意見や資料の提出に対しても反駁の機会が与えられるようにする等、申請者に意見と証拠を十分に提出させることを可能ならしめるような形で手続を実施することが、公聴会審理を要求する法の趣旨とするところであると解さなければならない。
右の見地に立つて本件を見るに、原審が確定した事実によれば、運輸審議会は「a町と高崎、伊勢崎、太田の諸都市とを結ぶ交通機関としては、長野原、渋川経由の経路により既設の交通機関の乗り継ぎによる方が、申請路線によるよりも運転時間、運賃等の面はおいて便利であると考えられるので、上告人による申請区間におけるバス運行の開始は、現状においては、その緊要性に乏しく、上告人の申請は、道路運送法六条一項一号及び五号に適合しない。」との理由で、本件免許申請は却下することが適当である旨の答申をしたものであつて、要するに、申請計画による申請者の事業内容が既設輸送機関のそれに比して運転時間、運賃等の面において便利性に劣ることを決定的要因として、輸送需要と供給能力との関係において適切性と公益上の必要性を欠くとされたのである。ところで、原審の認定したところによれば、上告人の本件申請計画における右の諸難点については、すでに、右公聴会において、一応、他の利害関係人からの指摘がなされており、また、運輸審議会の委員からも、上告人の申請計画に関して乗車回数の推定根拠、乗車密度、平均乗車粁、道路舗装状況等について質問がなされたというのであるから、上告人においても、右申請の問題点が何であるかについては、おおよそ推知することができたものと考えられるのであるが、さらに進んで問題をより具体化し、上告人の事業計画並びにその根拠資料における上記運賃、輸送時間の比較及びこれとの関係における輸送需要(見込)量と供給力との均衡等に関する問題点ないしは難点を具体的に明らかにし、上告人をして進んでこれらの点についての補充資料や釈明ないしは反駁を提出させるための特段の措置はとられておらず、この点において、本件公聴会審理が上告人に主張立証の機会を与えるにつき必ずしも十分でないところがあつたことは、これを否定することができない。しかしながら、原審が当事者双方の完全な主張・立証のうえに立つて認定したところによれば、運輸審議会が重視した上記のごとき既設輸送機関との運賃及び輸送時間の比較については、本件処分当時においても、申請路線によるそれが、所要時間において相当に劣り、また運賃も太田、草津間を除いては計画自体においてもすでに他の輸送機関のそれよりも高額であるのみならず、上告人が申請路線について旅客に対し適切な役務を提供するに足りる企業の採算性を維持しようとするためには、遠距離逓減率を考慮しても申請にかかる運賃を根本的に修正しなければならないこととなり、既設交通機関を選択した場合の運賃と比較すれば、その差異は、太田、草津間においても、またその他の区間においても相当の懸隔を生ずることが明らかであるというのであり、原審が右認定の理由として説くところから見ても、仮に運輸審議会が、公聴会審理においてより具体的に上告人の申請計画の問題点を指摘し、この点に関する意見及び資料の提出を促したとしても、上告人において、運輸審議会の認定判断を左右するに足る意見及び資料を追加提出しうる可能性があつたとは認め難いのである。してみると、右のような事情のもとにおいて、本件免許申請についての運輸審議会の審理手続における上記のごとき不備は、結局において、前記公聴会審理を要求する法の趣旨に違背する重大な違法とするには足りず、右審理の結果に基づく運輸審議会の決定(答申)自体に瑕疵があるということはできないから、右諮問を経てなされた運輸大臣の本件処分を違法として取り消す理由とはならないものといわなければならない。
そうすると、原判決は結論において正当であり、論旨は、右と異なる見解に立つて原判決を非難するものであつて、採用することができない。

同第四点の第五について。
所論の点に関する原審の判断は正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第五点について。
一般自動車運送事業の免許は、道路運送法六条一項各号所定の基準のすべてに適合する場合でなければこれをすることができないものと解すべきことは、さきに述べたところであり、右基準の一に適合しない場合には、運輸大臣は免許の申請を却下することができることは明らかである。所論の事由は同条一項五号の基準に関するものであるところ、原審の確定した事実関係のもとにおいて、本件免許申請が同条一項一号所定の免許基準に適合しないとした運輸大臣の判断を違法と断ずることはできず、したがつて、同条一項五号所定の免許基準に適合するか否かの運輸大臣の判断の適否につき判断するまでもなく本件却下処分は違法でないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、原判決を正解しないでこれを非難するものであつて、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 下田武三 裁判官 藤林益三 裁判官 岸盛一 裁判官 岸上康夫)

イ 独任制と合議制

(2)権限の委任・代理

権限の委任は、法律で定められた行政庁の権限を他の行政機関に移すのであるから、法律の根拠が必要である

・+(被告適格等)
行政事件訴訟法第11条
1項 処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。以下同じ。)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。
一  処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
二  裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体
2  処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない
3  前二項の規定により被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない。
4  第一項又は前項の規定により国又は公共団体を被告として取消訴訟を提起する場合には、訴状には、民事訴訟の例により記載すべき事項のほか、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める行政庁を記載するものとする。
一  処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁
二  裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁
5  第一項又は第三項の規定により国又は公共団体を被告として取消訴訟が提起された場合には、被告は、遅滞なく、裁判所に対し、前項各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める行政庁を明らかにしなければならない。
6  処分又は裁決をした行政庁は、当該処分又は裁決に係る第一項の規定による国又は公共団体を被告とする訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有する

(3)専決・代決

専決=行政庁の行為を補助機関が当該行政庁の名前で行うこと

・専決は事実上の補助執行であって、対外的に権限を変更するわけではないので、法律に基づかなくても可能

・住民訴訟において職員の個人責任が追及される場合
+判例(H3.12.20)
理由
上告代理人辻中一二三、同辻中栄世、同森薫生の上告理由第一点について
一 原審の確定した事実関係は、次のとおりである。
1 大阪府水道企業は、同府下の水道事業及び工業用水道事業を行うために地方公営企業法に基づいて設置された大阪府が経営する地方公営企業であり、その業務を執行させるため大阪府に管理者が置かれ(同法七条)、大阪府水道部は、右管理者の権限に属する事務を処理させるために設けられた組織である(同法一四条)。上告人は、昭和五七年四月二日から同五九年六月三〇日までの間、大阪府水道企業の管理者として、Aは、同五六年四月一日から同五八年四月三〇日までの間、大阪府水道部の総務課長として在職していた。

2 大阪府水道部事務決裁規程(昭和五三年大阪府水道企業訓令第三号。以下「本件事務決裁規程」という。)は、大阪府水道部における事務の円滑かつ適正な執行を確保するとともに責任の明確化を図るため、事務の決裁に関して必要な事項を定めることを目的として制定されたものであり、これによれば、管理者の権限に属する事務について、最終的にその意思を決定することを「決裁」といい、常時、管理者に代わって決裁することを「専決」というものとされ、「一件百万円未満の予算の執行及び義務的かつ軽易な予算の執行に関すること」は、総務課長の専決事項とされている。そして、本件事務決裁規程は、専決事項のうち、議会に付議すべき事項については管理者の、特命のあった事項又は特に重要若しくは異例と認める事項については上司の決裁を受けなければならず、また、専決をした者は、必要があると認めるとき、又は上司から報告を求められたときは、その専決した事項を上司に報告しなければならないものと定めている。

3 大阪府水道部会計規程(昭和三九年大阪府営水道企業管理規程第一号)及び本件事務決裁規程等によれば、大阪府水道部における会議接待費の支出事務の手続は、次のとおりである。すなわち、会議接待を開催する場合には、その主催課において、会議接待開催に先立って、会議接待の目的、開催年月日、開催場所、出席者、債権者、経費支出予定額、会計年度及び予算科目等を記載した経費支出伺を作成し、上司の決裁を受けて会議接待を開催し、右開催後、債権者からの請求に基づき、会議接待の主催課の課長が上司の決裁を受けた上で支出伝票を発行し、金銭出納員である会計課長又は会計課長代理が支出伝票を審査した上で支出決定し、小切手を振り出して支払を行うものとされ、会議接待一件の費用が一〇〇万円未満である場合には、その経費支出伺の決裁は総務課長が専決により処理するものとされている。

4 昭和五七年五月上旬ころ、当時、総務課長であったAは、総務課の担当職員に指示して、実際には開催されない埼玉県企業局職員及び岐阜市水道部職員と大阪府水道部職員との会議接待を行うものと仮装して、会議の目的をいずれも「七拡事業調査に伴い水道事業の諸問題についての種々懇談のため」とし、開催年月日、開催場所、出席者、債権者、会議費支出金額を第一審判決添付の別表一記載のとおりとした内容虚偽の経費支出伺を作成させて、自らその決裁を専決し、さらに、これに見合う支出伝票を作成させて、会計課長の審査を受けた。そして、同月三一日、前記の方法により、同表記載の各債権者に対し、それぞれ同表の会議費支出金額欄記載の各金額合計六七万八三七〇円が支出された(以下、右各支出を「本件各支出」という。)。
5 本件各支出が、第一審判決添付の別表二記載の各会議接待の費用に充てられたとの事実を認めることはできず、大阪府水道企業の経営に必要な正当な目的の会議や接待の費用として支出されたものとは認められない。

二 原審は、右事実を前提とし、地方公営企業の管理者が自己の権限に属する公金の支出行為を補助職員に専決させた場合において、管理者は、地方自治法(以下「法」という。)二四二条の二第一項四号の「当該職員」に該当し、右補助職員に違法な公金支出について故意又は過失の帰責事由があるときは、管理者は、現実に右支出行為に関与していなくとも、補助職員をいわば手足として自己の権限に属する行為を行わせる者として、補助職員の責任をそのまま自己の責任として負うものであると解した上、上告人は、本件各支出につき、内部的な事務処理の便宜上、総務課長であるAを自己の手足として、管理者である自己の権限に属する右支出行為の補助執行を行わせたものであり、また、Aは、本件各支出が違法なものであることを知りながら右支出手続を行ったものであるから、上告人は、違法な本件各支出によって大阪府に与えた損害を賠償する責任を免れない、と判断した。

三 しかしながら、原審の右判断のうち、地方公営企業の管理者が自己の権限に属する公金の支出行為を補助職員に専決させた場合であっても、管理者は、法二四二条の二第一項四号所定の「当該職員」に該当する旨の判断は是認することができるが、その余の原審の判断は、是認することができない。その理由は、次のとおりである。
法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」とは、当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至った者を広く意味するものである(最高裁昭和五五年(行ツ)第一五七号同六二年四月一〇日第二小法廷判決民集四一巻三号二三九頁)。地方公営企業の管理者は、地方公営企業の業務の執行に関し、当該地方公共団体を代表する者であり、種々の財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている(地方公営企業法八条、九条)ことからすると、地方公営企業の業務の執行に関しては、普通地方公共団体における長と同視すべき地位にあるものとみるべきである(同法三四条参照)。したがって、地方公営企業の管理者は、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、その権限に属する一定の範囲の財務会計上の行為をあらかじめ特定の補助職員に専決させることとしている場合であっても、地方公営企業法上、右財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている以上、右財務会計上の行為の適否が問題とされている当該代位請求住民訴訟において、法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当するものと解すべきである。そして、右専決を任された補助職員が管理者の権限に属する当該財務会計上の行為を専決により処理した場合は、管理者は、右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、普通地方公共団体に対し、右補助職員がした財務会計上の違法行為により当該普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である。けだし、管理者が右訓令等により法令上その権限に属する財務会計上の行為を特定の補助職員に専決させることとしている場合においては、当該財務会計上の行為を行う法令上の権限が右補助職員に委譲されるものではないが、内部的には、右権限は専ら右補助職員にゆだねられ、右補助職員が常時自らの判断において右行為を行うものとされるのであるから、右補助職員が、専決を任された財務会計上の行為につき違法な専決処理をし、これにより当該普通地方公共団体に損害を与えたときには、右損害は、自らの判断において右行為を行った右補助職員がこれを賠償すべきものであって、管理者は、前記のような右補助職員に対する指揮監督上の帰責事由が認められない限り、右補助職員が専決により行った財務会計上の違法行為につき、損害賠償責任を負うべきいわれはないものというべきだからである。

四 そうすると、以上判示したところと異なる見解に立って、上告人において、本件各支出につき、右に述べた帰責事由が存することを確定することなく、本件各支出につき専決をしたA総務課長に帰責事由があるときは、同課長に専決処理を任せた上告人は、同課長がした違法な本件各支出によって大阪府に与えた損害を賠償する責任があるとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるものといわざるを得ず、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。これと同旨をいう論旨は理由があり、その余の点について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、本件については、上告人において、本件各支出につき、右の帰責事由が存するか否かについて更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻すのが相当である。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大西勝也 裁判官 藤島昭 裁判官 中島敏次郎 裁判官 木崎良平)

++解説
《解  説》
一 Xら七名は大阪府の住民であり、昭和五七年五月ころ、Y1は地方公営企業である大阪府水道企業の管理者、Y2は大阪府水道部長、Y3は同部次長、Y4は同部の総務課長として在職していた。
Yらは、スナック、バー、割烹、焼肉屋等において会議接待をしたとして、昭和五七年度水道事業費の会議接待費の名目の下に公金を支出したが、Xらは、右各会議接待はいずれも実在せず、本件各支出は、他の目的のためになされたものであって、違法であると主張して、Yらに対して、地方自治法(以下「法」という。)二四二条の二第一項四号に基づき、大阪府に代位して、右違法な公金支出により大阪府が被った損害合計金九〇万八七九〇円の支払いを求めた。
これに対し、Yらは、本案前の主張として、本件請求中、その一部の支出(二三万〇四二〇円)については、監査請求を経ていないから不適法である、と主張し、さらに、本案の主張として、本件各支出の支出目的とされたものが、現実には行われなかった架空の会議接待であったことは認めるが、本件各支出は、大阪府営水道第七次拡張事業に関連する別の会議接待のために支出されたものであり、社会通念上是認される範囲内の接待・支出であり、その支出手続にも違法な点はない、と主張した。
二 第一審及び原審の判断
第一審は、右の一部の支出(二三万〇四二〇円)は監査請求の対象とはされず、したがって、監査を経ていない不適法なものというべきであるとして、本件請求のうち、右支出分についての請求に係る訴えを、却下した。
さらに、職権で、Yらが法二四二条の二第一項四号の「当該職員」に該当するか否かを検討し、本件会議接待費の支出につき、その原因となる契約を締結し、その支出決定をする権限を本来的に有するとされている者は管理者Y1であり、右権限が他のY2~Y4に委任されているとは認められないから、本件会議接待費の支出につき、その支出権限を有するのは、当時、水道企業管理者であったY1のみであり、その余のY2~Y4は、右権限を有しないから、Y1を除くY2~Y4に対する訴えは不適法であるとして却下した。
本案については、次のとおり判断した。
本件各支出は、昭和五七年五月上旬ころ、当時、総務課長であったY4が、総務課の担当職員に指示して、実際には開催されないS県企業局職員及びG市水道部職員との会議接待を行うものと仮装して、開催年月日、開催場所、出席者等について内容虚偽の記載をした経費支出伺を提出させて、自らその決裁を専決し、さらに、これに見合う支出伝票を作成させて、会計課長の審査を受け、同月三一日、所定の方法で各債権者に対してそれぞれの金額を支払うことにより行われたものである。そして、本件各支出が水道企業経営に必要な正当な目的の会議や接待の費用として支出されたものとは認められないから、本件各支出は違法な公金の支出に当たるものというべきである。
地方公営企業の管理者が自己の権限に属する公金の支出行為を補助職員を用いてする場合には、法二四二条の二第一項四号の「当該職員」に該当するのは管理者のみであって、補助職員はこれに該当しないと解される反面、補助職員に違法な公金支出について故意若しくは過失の帰責事由があるときは、管理者は、現実に右支出行為に関与していなくとも、補助職員をいわば手足として自己の権限に属する行為を行わせる者として、補助職員の責任をそのまま自己の責任として負うものというべきである。本件では、Y1は、本件各支出につき管理者としてその権限を有し、内部的な事務処理の便宜上、総務課長であるY4を自己の手足として自己の権限に属する右支出行為の補助執行を行わせたにすぎないのであり、また、Y4は、本件各支出が違法なものであることを知りながら右支出手続を行ったものというべきであるから、Y1は、違法な本件各支出によって大阪府に与えた損害を賠償する責任を免れない。
第一審判決は、右のとおり判示し、Y2~Y4に対する訴えを却下するとともに、Y1に対する請求の一部(六七万八三七〇円)を認容し、大阪府への支払いを命じた。
右第一審判決に対し、Xらは、Y1に対する請求のうちの却下部分及びY2~Y4に対する訴えをいずれも却下したことを不服として、控訴し(昭和六三年(行コ)第二七号事件)、Y1も、右認容部分を不服として、控訴した(昭和六三年(行コ)第二六号事件)。
原審は、第一審判決の判断を相当として、右各控訴をいずれも棄却した。
原判決を不服として、Xら及びY1が上告した(Y1上告=平成二年(行ツ)第一三七号事件=本判決、Xら上告=平成二年(行ツ)第一三八号事件本誌本号八三頁)。
三 本判決は、地方公営企業の管理者Y1は、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、その権限に属する財務会計上の行為をあらかじめ特定の補助職員に専決させることとしている場合であっても、右専決により処理された財務会計上の行為の適否が問題とされている本件代位請求住民訴訟において、法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当するとし、右の場合において、管理者Y1は、右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものであると判示した上、Y1(管理者)について右帰責事由が存することを確定しないで、Y4に専決処理を任せたY1は、Y4がした違法な本件各支出によって大阪府に与えた損害を賠償する責任があるとした原審の判断には、法令の解釈適用の誤りがあるとして、原判決を破棄し、Y1敗訴部分を原審に差し戻した。
四 法二四二条の二第一項四号所定の「普通地方公共団体に代位して行なう当該職員に対する損害賠償の請求」における「当該職員」の意義については、本判決が引用している最二小判昭62・4・10民集四一巻三号二三九頁、本誌六四〇号八三頁が、当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至った者を広く意味するものであり、およそ右のような権限を有する地位ないし職にあると認められない者を被告として提起された同号所定の「当該職員」に対する損害賠償請求に係る訴えは、法により特に出訴が認められた住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法と解するのが相当であると判示し、この点についての最高裁の見解を明らかにしたところである。
その後の下級審裁判例は、右最判の見解に従っているのであるが、右判例の見解を、本件のような専決処理が行われたケースに具体的に適用する場合において、見解の対立が生じた。
五 補助職員に専決処理させた長等と法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」
1 財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている地方公共団体の長その他の職員がその権限に属する事務を補助職員に専決させている場合、長等は、法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当するかという点に関し、下級審の裁判例の見解は分かれているが、積極に解するものが多数である(積極に解するものとして、浦和地判昭55・12・14行裁集三一巻一二号二六七九頁、東京地判昭57・9・16行裁集三三巻九号一七九六頁、本誌四八二号一三〇頁、その控訴審東京高判昭58・7・28行裁集三四巻七号一三八九頁、本誌五一〇号一四九頁、神戸地判昭61・10・29本誌六三七号九九頁、京都地判昭62・7・13行裁集三八巻六=七号五五〇頁、本誌六五三号九六頁、東京地判昭63・3・15本誌六六七号一〇九頁、判時一二六六号一七頁、その控訴審東京高判平1・3・30判時一三一一号五八頁、札幌高判昭63・2・18本誌六六九号一三八頁、判時一二九二号九二頁、大阪高判平1・1・27本誌六九〇号二六一頁、松山地判平1・3・17本誌六九六号五七頁、判時一三〇五号二六頁、仙台高判平3・1・10本誌七五〇号五八頁、判時一三七〇号三頁、本件訴訟の一、二審判決があり、消極に解するものとして、右仙台高判の原審盛岡地判昭62・3・5本誌六三〇号九〇頁、判時一二二三号三〇頁、右札幌高判の原審札幌地判昭62・7・24判時一二六三号一〇頁がある。)。
2 専決の場合は、行政機関がその権限に属する特定の事項を、権限を委譲せずに内部的に補助職員に処理させるものであり、内部委任的な補助執行の一態様であって、あくまで対外的には自己の名において事務処理を行うものであるから、法令上財務会計上の行為を行う権限を付与されている長等は、その権限に属する特定の事項を専決事項としたとしても、公金の支出権限等の財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者である以上、「およそ」右権限を有する地位ないし職にあると認められない者とはいえず、「当該職員」に該当することを肯定して良いであろう。消極に解する見解は、当該専決事項(財務会計上の行為)に現実に関与していない長に対して賠償責任を負わせるのは酷であるとの考えによるものと思われるが、専決の場合に、長等がどのような要件のもとに賠償責任を負うと解すべきかは本案の問題であり、右最判の趣旨からしても、当該財務会計上の行為につきこれを行う権限を法令上本来的に有するとされている者である長等を、訴訟の入口の段階で訴訟要件を欠くとする論拠は乏しいものと思われる(山崎敏充・昭62最判解説(民)一三五頁参照)。
本判決は、長(管理者)は、補助職員に専決処理をさせている場合であっても、「当該職員」に該当すると判示したが、これは、右のような見解に立つものであろう。
六 補助職員に専決処理をさせた長等の賠償責任
1 原審(第一審)は、Y1(管理者)に対する請求につき、いわば「補助職員手足論」ともいうべき見解に立って、管理者は専決をした補助職員の責任をそのまま自己の責任として負担すると解して、管理者に対する請求の一部を認容している。原審の右見解は、是認し得るものであるのか、換言すれば、管理者であるY1が法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当するとして、Y1はいかなる要件のもとに補助職員のした財務会計上の非違行為につき賠償責任を負うと解すべきか、これが次の問題である。
2 長等がその権限に属する事務を補助職員に専決処理させた場合に、当該補助職員が違法な財務会計上の行為を行ったときの長等の賠償責任の捉え方としては、①右補助職員の責任をそのまま長等の責任として長等の賠償責任を肯定する考え方(補助職員手足論)と、②補助職員とは独自に長等の帰責事由(補助職員に対する指揮監督責任等)の有無を判断すべきであるとする考え方とが対立している。下級審の裁判例は分かれているが、②の見解が多数である(①の見解に立つものとして、前掲東京地判昭63・3・15、本件の一、二審判決があり、②の見解に立つものとして、名古屋地判昭46・12・24行裁集二二巻一一=一二号二〇五八頁、その控訴審名古屋高判昭50・2・10行裁集二六巻二号一五五頁、前掲浦和地判昭55・12・14、前掲東京地判昭57・9・16、その控訴審前掲東京高判昭58・7・28、前掲京都地判昭62・7・13、前掲東京地判昭63・3・15の控訴審前掲東京高判平1・3・30、前掲大阪高判平1・1・27、前掲松山地判平1・3・17、前掲仙台高判平3・1・10がある。)。
3 本判決は②の見解を採用したが、以下の諸点を考慮したものであろう。
(1) 仮に、財務会計上の行為をする権限を有する長等が、例えば、個人的に信頼している職員に対し、私的に事務処理を依頼し、職印を預けて盲判を押させていたというような場合であれば、文字通り、右職員は長等の手足とみるべきであり、その者の非違行為は、すなわち長等の非違行為と評価すべきであろう。しかしながら、国及び地方公共団体において広く行われている専決処理は、右のようなものではなく、長等が、その権限に属する事務の処理を適切かつ能率的に行うために、一定の事項に限定して、その処理(意思決定を含む。)を相当の地位にある下部職員に委ねるものであり、専決処理をする者及びその対象となる事項は、訓令等によりあらかじめ明確に定められているのが通例である(本件における事務決裁規程は、大阪府公報に掲載されて公布され、住民にもその内容が知り得る状態になっている。大阪府水道企業管理規程等の公布に関する規程二条、五条)。要するに、事務の専決は、法の許容しない事務処理の方法とみるべきではなく、行政機関が組織的にその所管事項を処理し、決定するための法の許容する事務処理の方法とみるべきであろう。右のとおり、専決処理が内部的には正規の事務処理の方法であることを考慮すると、専決者のした行為につき組織体としての行政責任が問われたときには、長は、専決者のした行為につき行政責任を負うべきであるが、代位請求住民訴訟により当該地方公共団体に対する民法上の損害賠償責任が問われたときには、民法上の帰責事由(故意又は過失)がない限り、その責任を負わないものと解すべきである(自己責任の原則)。
(2) 前期①の見解は、債務者の履行補助者の故意・過失を債務者個人の故意・過失と同視する債権法の理論を専決の場合の長等の責任に当てはめようとするものであるが、その妥当性には疑問がある上、これを長(管理者)に対する不法行為による損害賠償責任が問われている本件のようなケースに適用することには、理論的にも問題がある(専決を任される補助職員は、いわゆるポスト指定であり、私的に選任されるものではない。)。
(3) 予算執行職員の賠償責任について定めた法二四三条の二第一項の後段の規定部分は、昭和三八年の法改正により新設されたものであるが、その趣旨は、予算執行職員の権限に属する事務を執行するに当たり実質的責任を有する者が賠償責任を負うべきであるとする観点から立法されたものであるといわれている(石川善則・昭61最判解説(民)七九頁、九一頁(注一九)参照)。しかるに、専決者が故意又は重過失により同条一項所定の非違行為を行い同項による損害賠償責任を負う場合に、長等について、指揮監督責任を問題とすることなく直ちに民法上の賠償責任を肯定したり、また、専決者が過失による非違行為を行った場合において、非違行為を行った専決者自身は法二四三条の二第一項の賠償責任を負わないのに(軽過失免責)、長等はその履行補助者の過失であるとして民法上の賠償責任を負わされるとの解釈は、右立法趣旨に反するものではないか。
(4) 本判決のように、長等の指揮監督責任の内容を限定的かつ具体的なものと捉える見解に立てば、財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている長等の補助職員に対する指揮監督の懈怠は、財務会計上の非違行為とみてよいから、非財務的行為につき長の責任を問うものであるとの批判は当たらない。
4 本判決は、以上のような点を考慮して、長(管理者)の権限に属する財務会計上の行為を補助職員が専決により処理した場合は、長(管理者)は、右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当であると判示したものであろう。そして、本判決が、右の場合において、長(管理者)の帰責事由としているものの内容は、上司の下部職員に対する一般的な選任監督責任ではなく、本来自己の権限に属する当該財務会計上の行為を補助職員が専決する際の個別具体的な指揮監督の懈怠であることは、判文上、明らかである。したがって、本判決の趣旨からすれば、長等は、自ら当該財務会計上の非違行為を行ったのと同視し得る程度の指揮監督の懈怠がある場合に限り、損害賠償責任を負うものと解すべきであろう。
違法な専決処理をした補助職員とその指揮監督を怠った長等が、いずれも地方公共団体に対し賠償責任を負う場合における両賠償責任の関係は、共同不法行為(民法七一九条)の場合と同様に考えるべきであろう。
七 本判決の意義
長等の権限に属する財務会計上の行為が補助職員の専決により処理された場合に、住民が、右財務会計上の行為が違法であるとして、法二四二条の二第一項四号の「当該職員」に対する損害賠償請求に係る訴えを提起するときに、長等は被告とされるべき「当該職員」に該当するか、長等は右補助職員がした財務会計上の違法行為につき、どのような要件のもとに地方公共団体に対し損害賠償責任を負うべきか、という代位請求住民訴訟の基本的な枠組みともいうべき重要な点につき、従来、下級審の見解が分かれていたのであるが、本判決は、これらの点につき、前記のような明確な判断を示し、解釈の統一を図ったものであり、住民訴訟の実務において重要な意義を有するものといえよう。

2.事務配分的行政機関概念

3.国の行政組織

4.地方公共団体

5.国と地方公共団体との関係

・通達
+判例(S43.12.24)墓地埋葬通達事件
理由
上告代理人池谷四郎の上告理由について。
論旨は、要するに、本件通達は従来慣習法上認められていた異宗派を理由とする埋葬拒否権の内容を変更し、新たに上告人に対して一般第三者の埋葬請求を受忍すべき義務を負わせたものであつて、この通達によれば、爾後このような理由による拒否に対しては刑罰を科せられるおそれがあり、また、右通達が発せられてからは現に多くの損害、不利益を被つている、従つて、右通達は上告人ら国民をも拘束し、直接具体的に上告人らに法律上の効果を及ぼしているのであつて、原判決が上告人のこのような主張を排斥して本訴を許すべからざるものとしたのは、本件通達の内容、効果を誤認し、ひいて法律の適用を誤つたものであり、また、審理不尽の違法を犯している、というのである。
しかし、本件通達は、厚生省公衆衛生局環境衛生部長から都道府県指定都市衛生主管部局長にあてて発せられたもので、その内容は、墓地、埋葬等に関する法律一三条に関し、昭和二四年八月二二日付東京都衛生局長あて回答に示した見解を改め、今後は内閣法制局第一部長の昭和三五年二月一五日付回答の趣旨にそつて解釈、運用することとしたことを明らかにすると同時に、諸機関において、この点に留意して埋葬等に関する事務処理をするよう求めたものであり、行政組織および右法律の施行事務に関する関係法令を参しやくすれば、本件通達は、被上告人がその権限にもとづき所掌事務について、知事をも含めた関係行政機関に対し、法律の解釈、運用の方針を示して、その職務権限の行使を指揮したものと解せられる。
元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても別段異なるところはない。このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。また、裁判所がこれらの通達に拘束されることのないことはもちろんで、裁判所は、法令の解釈適用にあたつては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは独自にその違法を判定することもできる筋合である。
このような通達一般の性質、前述した本件通達の形式、内容および原判決の引用する一審判決議定の事実(拳示の証拠に照らし肯認することができる。)その他原審の適法に確定した事実ならびに墓地、埋葬等に関する法律の規定を併せ考えれば、本件通達は従来とられていた法律の解釈や取扱いを変更するものではあるが、それはもつぱら知事以下の行政機関を拘束するにとどまるもので、これらの機関は右通達に反する行為をすることはできないにしても、国民は直接これに拘束されることはなく、従つて、右通達が直接に上告人の所論墓地経営権、管理権を侵害したり、新たに埋葬の受忍義務を課したりするものとはいいえない。また、墓地、埋葬等に関する法律二一条違反の有無に関しても、裁判所は本件通達における法律解釈等に拘束されるものではないのみならず、同法一三条にいわゆる正当の理由の判断にあたつては、本件通達に示されている事情以外の事情をも考慮すべきものと解せられるから、本件通達が発せられたからといつて直ちに上告人において刑罰を科せられるおそれがあるともいえず、さらにまた、原審において上告人の主張するような損害、不利益は、原判示のように、直接本件通達によつて被つたものということもできない。 
そして、現行法上行政訴訟において取消の訴の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は許されないものとして却下すべきものである。
以上のとおりであるから、これと同旨の原判決の判断は正当として首肯することができる。所論はるる主張するが、ひつきよう、原判決のした事実の認定を非難するか、原判示を誤解するか、または、原判示にそわない事実もしくは独自の見解を前提として原判決の違法を主張するものであり、原判決には所論の違法は認められない。所論はすべて採用することはできない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)

・自治事務だけでなく法定受託事務も国の事務ではなく地方公共団体の事務である(改正前の機関委任事務は国の事務だった)!!
→国が地方公共団体の事務処理に関与するには法律の根拠が必要。

6.独立行政法人等
(1)独立行政法人
(2)特殊法人
(3)公共組合
(4)認可法人
(5)指定法人
(6)独立行政法人等の法的取扱い

内部関係
+(国の機関等に対する処分等の適用除外)
行政手続法第4条
1項 国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しない。
2  次の各号のいずれかに該当する法人に対する処分であって、当該法人の監督に関する法律の特別の規定に基づいてされるもの(当該法人の解散を命じ、若しくは設立に関する認可を取り消す処分又は当該法人の役員若しくは当該法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、次章及び第三章の規定は、適用しない。
一  法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人
二  特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、その行う業務が国又は地方公共団体の行政運営と密接な関連を有するものとして政令で定める法人
3  行政庁が法律の規定に基づく試験、検査、検定、登録その他の行政上の事務について当該法律に基づきその全部又は一部を行わせる者を指定した場合において、その指定を受けた者(その者が法人である場合にあっては、その役員)又は職員その他の者が当該事務に従事することに関し公務に従事する職員とみなされるときは、その指定を受けた者に対し当該法律に基づいて当該事務に関し監督上される処分(当該指定を取り消す処分、その指定を受けた者が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる処分又はその指定を受けた者の当該事務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、次章及び第三章の規定は、適用しない。
4  次に掲げる命令等を定める行為については、第六章の規定は、適用しない。
一  国又は地方公共団体の機関の設置、所掌事務の範囲その他の組織について定める命令等
二  皇室典範 (昭和二十二年法律第三号)第二十六条 の皇統譜について定める命令等
三  公務員の礼式、服制、研修、教育訓練、表彰及び報償並びに公務員の間における競争試験について定める命令等
四  国又は地方公共団体の予算、決算及び会計について定める命令等(入札の参加者の資格、入札保証金その他の国又は地方公共団体の契約の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定める命令等を除く。)並びに国又は地方公共団体の財産及び物品の管理について定める命令等(国又は地方公共団体が財産及び物品を貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、若しくは出資の目的とし、又はこれらに私権を設定することについて定める命令等であって、これらの行為の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定めるものを除く。)
五  会計検査について定める命令等
六  国の機関相互間の関係について定める命令等並びに地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二編第十一章 に規定する国と普通地方公共団体との関係及び普通地方公共団体相互間の関係その他の国と地方公共団体との関係及び地方公共団体相互間の関係について定める命令等(第一項の規定によりこの法律の規定を適用しないこととされる処分に係る命令等を含む。)
七  第二項各号に規定する法人の役員及び職員、業務の範囲、財務及び会計その他の組織、運営及び管理について定める命令等(これらの法人に対する処分であって、これらの法人の解散を命じ、若しくは設立に関する認可を取り消す処分又はこれらの法人の役員若しくはこれらの法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分に係る命令等を除く。)

+判例(S53.12.8)成田新幹線事件
理由
上告代理人重富義男、同古山昭三郎、同大江忠の上告理由について
本件認可は、いわば上級行政機関としての運輸大臣が下級行政機関としての日本鉄道建設公団に対しその作成した本件工事実施計画の整備計画との整合性等を審査してなす監督手段としての承認の性質を有するもので、行政機関相互の行為と同視すべきものであり、行政行為として外部に対する効力を有するものではなく、また、これによつて直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。また、所論違憲の主張は、本件認可が直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定するものであることを前提とするものであつて、その前提を欠く。論旨は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を論難するにすぎないものであつて、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田豊 裁判官 本林讓 裁判官 栗本一夫)


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